説明

透明蒸着用ポリエステルフイルム及び透明蒸着フイルム

【課題】
本発明の透明蒸着用ポリエステルフイルムは、薄い蒸着膜厚さで高いガスバリア性能及び防湿性能を安定して付与し格段に向上させる透明蒸着用ポリエステルフイルム及びその透明蒸着フイルムを提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の透明蒸着用ポリエステルフイルム及びその透明蒸着フイルムは、積層膜が設けられた蒸着側基材フイルムの表面の中心線面粗さ(SRa)が2〜80nm、山数(SPc)が5〜130ヶ/0.1mmであり、フイルムの融解サブピークが190〜240℃であり、蒸着側積層膜がガラス転移温度10〜40℃の水分散性ポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤とを含み、該水分散性ポリエステル樹脂が側鎖にカルボン酸およびまたはその塩を有し、厚さが5〜100μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明蒸着用ポリエステルフイルムに関するものである。詳しくは、透明蒸着層を設けることによりガスバリア性,防湿性に優れた透明蒸着用2軸配向ポリエステルフイルム及びその透明蒸着ポリエステルフイルム、更に詳しくは2軸配向ポリエステルフイルムに薄い厚さの蒸着層を設けることで優れたガスバリア性,防湿性を有する透明蒸着用ポリエステルフイルム及びその透明蒸着フイルム、特に薄い厚さの透明蒸着層で優れたガスバリア性,防湿性を有する透明蒸着用ポリエステルフイルム及びその透明蒸着フイルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2軸配向ポリエステルフイルムは、透明性,機械的特性,防湿性などに優れ、包装材料などに広く用いられている。更にフイルムの透明性を維持しつつガス遮断性を向上させる目的で、ポリ塩化ビニリデンをコーティングした2軸配向ポリエステルフイルムがガスバリア性の優れたフイルムで、K−PETとして広く知られている。しかし、ポリ塩化ビニリデンは防湿性が不十分で防湿包装には使用できない。また、ポリ塩化ビニリデンは廃棄焼却時に塩素系ガスが発生するため焼却炉の腐食や地球環境への悪影響が指摘されており、更に排ガスを浄化するための焼却炉への設備投資負担も大きいとされている。塩素系ガス問題対策として、エチレンビニルアルコ−ル共重合体を積層したフイルムが知られているが、ガスバリア性,防湿性が不十分で、特に高温での殺菌処理において著しく低下する。これらの問題を解決する包装フイルムとして、金属アルミニウムをポリエステルフイルム上に形成したり、金属酸化物をポリエステルフイルム上に形成したものがガスバリア性,防湿性に優れていることは従来より良く知られている。しかし、金属アルミニウムは高いガスバリア性,防湿性を確保するために厚い膜厚が必要とされ、生産性が落ちる。また、包装にした場合、内容物が見えない、金属探知器が使用できない、マイクロウェーブを通さず包装のまま電子レンジで加熱できない、等の問題がある。
【0003】
かかる金属アルミニウムの問題を解決するのが金属酸化物を蒸着した包装フイルムで、特に酸化珪素膜をポリエステルフイルム上に形成したものが特許文献1により、酸化アルミニウム膜をポリエステルフイルム上に形成したものが特許文献2により知られている。
【特許文献1】特開平6−278240号公報
【特許文献2】特開平11−10725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、様々な食品や菓子類が市場に登場するに従い、バリア性など特性向上や、品質の長期保存性がより一層重視されるようになってきた。特にスナック菓子や食品等の包装においては、内容物の酸化や湿りを防止し、より長期間に渡って品質を確保するため、これまで以上のガスバリア性が要求されている。
【0005】
また、かかる透明蒸着フイルムの製造は生産性向上により、設備の大型・高速化、それに伴う蒸着の薄膜化によって、ガスバリア性能安定化のため、ポリエステルフイルムへの要求も高度になってきた。
【0006】
本発明は上述のような問題を解決することを目的とする。すなわち本発明は、優れたガスバリア性,防湿性を格段に向上させる透明蒸着用ポリエステルフイルムおよび透明蒸着フイルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の物性を有するポリエステルフイルムを基材フイルムとして用いれば上記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち本発明の要旨は、
少なくとも基材フイルムの一方の面に積層膜が設けられ、蒸着側積層膜が設けられた基材フイルムの表面の中心線面粗さ(SRa)が2〜80nm、山数(SPc)が5〜130ヶ/0.1mmであり、フイルムの融解サブピークが190〜240℃であり、蒸着側積層膜がガラス転移温度10〜40℃の水分散性ポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤とを含み、該水分散性ポリエステル樹脂が側鎖にカルボン酸およびまたはその塩を有し、厚さが5〜100μmである透明蒸着用ポリエステルフイルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の透明蒸着用ポリエステルフイルムは、以下に説明するような構成としたため、薄い蒸着膜厚さで高いガスバリア性能及び防湿性能を安定して付与できるという特徴を持つ。
【0009】
本発明の蒸着2軸配向ポリエステルフイルムは、単独でも用いることができるが、更に、印刷を施したり、蒸着膜の上から保護層などをコーティングしたり、ヒートシール層を積層したり、他のフイルムと積層したり、あるいはこれらを組み合わせたりするなど、更に加工して用いることもできる。また、非蒸着面にヒートシール層を積層したり、他のフイルムと積層したり、印刷を施したり、あるいはこれらを組み合わせたりすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について詳細に説明する。本発明のポリエステルフイルムとはポリエステルからなるフイルムであり、2軸配向ポリエステルフイルムであることが好ましい。2軸配向ポリエステルイルムは無延伸状態のポリエステルシートまたはフイルムを、長手方向及び幅方向の、いわゆる2軸方向に延伸されて作られるものであり、広角X線回折で2軸配向のパターンを示すものをいう。2軸方向へ延伸する方法は、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法のどちらも使用できるが、同時2軸延伸法の方がフイルム表面に傷が発生しにくく望ましい。
【0011】
本発明のポリエステルフイルムに使用されるポリエステルとは、二塩基酸とグリコールを構成成分とするポリエステルであり、芳香族二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、ジブロモテレフタル酸などを用いることができる。脂環族二塩基酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などを用いることができる。また、脂肪族二塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などを用いることができる。グリコールとしては、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを用いることができ、芳香族ジオールとして、ナフタレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ハイドロキノン、テトラプロモビスフェノールAなどを用いることができ、脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどを用いることができる。
【0012】
更に、ポリエステルが実質的に線状である範囲内で3官能以上の多官能化合物、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、没食子酸などを共重合してもよく、また単官能化合物、例えばo−ベンゾイル安息香酸、ナフトエ酸等を添加反応させてもよい。またポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルやポリカプロラクトンに代表される脂肪族ポリエステルなどを共重合してもよい。
【0013】
ポリエステルは2種以上のものをブレンドしてもよく、例えば、ブレンド後の組成物の50重量%以上がポリエステルであれば、ポリエステル以外のものをブレンドしてもよい。
【0014】
ポリエステルは、耐熱性、製膜性の点から、融点が240℃以上280℃以下であることが望ましい。
【0015】
また、このポリエステル系樹脂の中に公知の添加剤、例えば、耐熱安定剤,耐酸化安定剤,耐候安定剤,紫外線吸収剤,有機の易滑剤,顔料,染料,充填剤,帯電防止剤,核剤などを配合しても良い。上記で述べたようなポリエステル系樹脂の極限粘度(25℃のオルソクロロフェノール中で測定)は、0.40〜1.20が好ましく、より好ましくは0.50〜0.80、更に好ましくは0.55〜0.75dl/gの範囲である。
【0016】
本発明のポリエステルフイルムに含有することができる粒子としては、各種核剤により重合時に生成した粒子,凝集体,二酸化珪素粒子,炭酸カルシウム粒子,アルミナ粒子,酸化チタン粒子,硫酸バリウム粒子,珪酸アルミ粒子,リン酸カルシウム粒子,マイカ,カオリン,クレーなどの無機粒子を、また、架橋ポリスチレン粒子,アクリル粒子,イミド粒子,シリコーン粒子等のような有機粒子を、或いは、それらの混合体をその代表例として挙げることができる。なかでも、二酸化珪素粒子,炭酸カルシウム粒子,アルミナ粒子,珪酸アルミ粒子等の無機粒子または、これら無機粒子と各種核剤により重合時に生成した粒子との混合物が好ましい。
【0017】
使用される各種粒子の径は特に限定されないが、通常は沈降法あるいは光散乱法により測定した平均粒径が0.05〜8.0μm、好ましくは0.1〜4.0μmをその代表として挙げることができる。かかる粒子の含有量は、好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.02〜1重量%が好ましい。
【0018】
本発明のポリエステルフイルムは、−COOH量が25〜55当量/tの樹脂からなるポリエステルフイルムが好適である。樹脂の−COOH量が25当量/t未満の場合、蒸着2軸配向ポリエステルフイルムのガスバリア性及び防湿性が十分発揮できない。樹脂の−COOH量が55当量/tを越えると、ポリエステルフイルムの外観が着色したり、透明蒸着フイルムの場合透明性が悪くなったり、ポリエステルフイルムの製膜性が悪化する等の問題がある。
【0019】
本発明のポリエステルフイルムの厚みは厚さ5〜100μmであり、好ましくは5〜25μmであるが、その中でも好適な範囲は用途によって任意に選べばよい。
【0020】
本発明に用いられる基材フイルム構成は、単層でもよいし、また、異なる組成のポリエステル組成物A,B,Cにより構成される積層構成、例えば、A/Bの2層構成、A/B/AあるいはA/B/Cの3層構成、3層よりも多層の積層構成、でもよい。その際の積層厚み比も任意に設定してよい。これらの積層構成は共押出しによる積層フイルムとして製造することができる。
【0021】
本発明のポリエステルフイルムは、基材フイルム中のジエチレングリコール量が2.0重量%以下である。好ましくは、1.5重量%以下、更に好ましくは1.2重量%以下である。基材フイルム中のジエチレングリコールが2.0重量%を越えた場合、ガスバリア性能及び防湿性が低下する。また、ポリエステルフイルムは蒸着工程を経て、さらに印刷や粘着剤塗工、あるいはラミネート加工が施されるが、いずれも熱履歴を受けるわけである。フイルム中のジエチレングリコールが2.0重量%を越えた場合、フイルムの耐熱性が落ちてそれぞれの加工工程で、フイルムが外力に対して伸びたりシワが発生したり、フイルムの走行性が不安定になり、加工性が悪化するという問題が生じる。
【0022】
本発明のポリエステルフイルムは、蒸着側基材フイルム表面の中心線面粗さ(SRa)が2〜80nm、山数(SPc)が5〜130ヶ/0.1mmである。中心線面粗さ(SRa)は好ましくは5〜60nm、さらに好ましくは10〜50nmが適している。ここでSRaは3次元表面粗さのパラメーターで、中心面平均粗さと定義する。SRaが2nm未満であれば滑りが悪くなってフイルムをロール状に巻くことができなくなったりブロッキングするおそれがある。一方、SRaが80nmを越えれば、蒸着後のガスバリア性及び防湿性が悪化する。ここでSRaは3次元表面粗さのパラメーターで、中心面平均粗さと定義する。
本発明において山数とは、以下の方法により計測したものである。粗さ曲面の中心面に平行でかつ中心面からの距離が5nmである平面を中心面の上下に設け、上下の2平面とも山と認めた山数を計測し、0.1mm当たりに換算して表したものである。山数(SPc)は好ましくは5〜120ヶ/0.1mm、 更に好ましくは10〜100ヶ/0.1mmが適している。
【0023】
山数(SPc)が2ヶ/0.1mm未満であれば、滑りが悪くなってフイルムをロール状に巻くことができなかったりブロッキングする等の問題があり、山数(SPc)が130ヶ/0.1mmを越える場合は、蒸着後のガスバリア性及び防湿性が悪化する。
【0024】
本発明のポリエステルフイルムは、フイルムの融解サブピーク Tsが190〜240℃である。好ましくは、195〜235℃であり、更に好ましくは195〜230℃であり、より好ましくは195〜225℃である。Tsが240℃を越えるとフイルムが脆化する。Tsが190℃未満であると、蒸着側積層膜の架橋が充分進まず透明蒸着層との密着性が悪化し印刷加工後やラミネート加工後にデラミネーションが発生する。また、高温における熱寸法安定性が悪化し、加工後に印刷ピッチズレ等の問題が生じる。本発明において、フイルムの融解サブピークは以下の測定によって得られるものである。フイルムを示差走査熱量計(パ−キン・エルマ−社製DSC−2型)により、20℃/分の昇温速度で測定し、融解ピーク温度(融点)を求めた。また、この測定の際に発生する、擬結晶の変態により発生するサブピーク温度をTsとした。Tsは製膜工程中の熱処理温度の履歴として出現する。単位は共に℃である。
【0025】
本発明のポリエステルフイルムは、蒸着側に積層膜が設けられているが、該積層膜は構成成分として水分散性ポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤とを含んでいる。このポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有し、かつ、側鎖にカルボン酸および/またはその塩を有するものである。このようなポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるポリエステル樹脂に、多価カルボン酸を共重合することによって得ることができる。
【0026】
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸等を使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p′−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを使用することができる。これらの芳香族ジカルボン酸は、積層膜の強度や耐熱性の点で、全ジカルボン酸成分の30モル%以上、好ましくは35モル%以上、更に好ましくは40モル%以上である。最も好ましくは、60〜100モル%の範囲である。
【0027】
脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などおよびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0028】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4′−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4′−メチレンジフェノール、4,4′−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4′−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4′−イソプロピリデンフェノール、4,4′−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
【0029】
また、多価カルボン酸としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−プタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2′,3,3′−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
これらの共重合によって得られるポリエステル樹脂は、そのガラス転移温度が40℃以下、10℃以上である必要がある。好ましくは35℃以下、10℃以上であること、より好ましくは30℃以下、15℃以上である。ガラス転移温度が上記範囲内にある場合、蒸着側積層膜は基材フイルムおよび透明蒸着層との密着性が向上する。
【0031】
本発明におけるガラス転移温度は示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC−2型)を用いて測定した値である。DSCの測定条件は次のとおりである。すなわち、試料10mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中に急冷する。この急冷試料を10℃/分で昇温し、ガラス転移点Tgを検知する。ガラス転移温度 (Tg)は下記式ガラス転移温度 =(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2により算出する。
【0032】
該ポリエステル樹脂は、各種製造技術によって製造することができる。また、カルボン酸を末端および/または側鎖に多く有するポリエステル樹脂を得る方法としては、特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報などに記載の3価以上の多価カルボン酸を共重合した樹脂により製造することができるが、これら以外の方法であってもよい。
【0033】
本発明のポリエステルフイルムは、蒸着側積層膜がメラミン系架橋剤を構成成分として含んでいる。このメラミン系架橋剤は、特に限定されるものではないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0034】
また、メラミン系架橋剤としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
【0035】
上記エーテル化に用いる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを好ましく使用することができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などを用いることができる。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いることもできる。
【0036】
ポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤は任意の比率で混合して用いてもよいが、本発明の効果をより顕著に発現させるには、下記の比率(固形分重量比)で混合するとよい。すなわち、ポリエステル樹脂100重量部に対し、メラミン系架橋剤を好ましくは0.5〜40重量部、より好ましくは0.75〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部である。メラミン系架橋剤が上記範囲内にある場合、蒸着側積層膜は基材フイルムおよび透明蒸着層との密着性が向上し、また、ガスバリア性及び防湿性が十分発揮できる。
【0037】
本発明のポリエステルフイルムは、蒸着側積層膜には本発明の効果が損なわれない範囲内で、他の樹脂、例えば上述の本発明に用いられるポリエステル以外のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが配合されていてもよい。
【0038】
さらに、本発明のポリエステルフイルムは、蒸着側積層膜には本発明の効果が損なわれない範囲内で各種の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、核剤などを配合して用いてもよい。
【0039】
本発明のポリエステルフイルムは、蒸着側積層膜が粒子を含まないことが好ましい。蒸着側積層膜に粒子を含んだ場合、粒子が脱落してその部分に透明蒸着膜を形成した場合蒸着欠陥になったり、蒸着側積層膜の粒子が形成する突起が原因となってクラック等の透明蒸着膜欠陥を生じて、ガスバリア性及び防湿性が十分発揮できない。
【0040】
本発明のポリエステルフイルムにおいて、蒸着側積層膜を設けるのに好ましい方法としては、共押出の他に、ポリエステルフイルムの製造工程中において積層膜成分をコーティングし、基材フイルムとともに延伸する方法が最も好適である。例えば溶融押し出しした結晶配向前のポリエステルフイルムを長手方向に2.0〜7.0倍程度延伸し、コーティングする面にコロナ放電処理を施し、連続的にその処理面に塗剤をコーティングする。こうしてコーティングされたフイルムを段階的に加熱されたゾーンを通過せしめつつ乾燥させ、幅方向に2.0〜6.0倍程度延伸をする。さらに連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導き結晶配向を完了させる方法等によって積層膜を設けることができる。この方法によって積層膜を設けた場合には透明蒸着膜との接着性、製造コストにも優れており、特に好ましい。
【0041】
その際、積層膜の厚みは特に限定されるものではないが、通常は0.001μm以上1μm以下、好ましくは0.005μm以上0.3μm以下、更に好ましくは0.01μm以上0.1μm以下、特に好ましくは0.02μm以上0.07μm以下であるのが望ましい。積層膜が厚すぎるとロールに巻いた際にブロッキングを発生する場合があり、薄すぎると透明蒸着層との密着性が悪化する場合がある。また、フイルムを再チップ化して用いる回収性の点からも上記厚み範囲が好ましい。
【0042】
本発明のポリエステルフイルムは、190℃,20分の熱収縮率が長さ方向(MD)で1.0〜6.0%、幅方向で0〜6.0%である。長さ方向では好ましくは1.0〜5.5%、更に好ましくは1.5〜5.0%である。幅方向では好ましくは0.5〜5.5%、より好ましくは1.0〜5.0%である。ポリエステルフイルムは蒸着工程を経て、さらに印刷や粘着剤塗工、あるいはラミネート加工が施されるが、いずれも熱履歴を受ける。長さ方向の熱収縮率が1.0%未満であったり、幅方向の熱収縮率が0%未満であった場合、ガスバリア性能及び防湿性が低下する。また、それぞれの加工工程でフイルムにシワが発生したり、フイルムの走行性が不安定になり、加工性が悪化するという問題が生じる。長さ方向の熱収縮率が6.0%を越えたり、幅方向の熱収縮率が6.0%越えた場合、高温における熱寸法安定性が悪化し、加工後に印刷ピッチズレ、或いはそれぞれの加工工程でフイルムにシワが発生する。
【0043】
本発明の透明蒸着用ポリエステルフイルムに設ける透明蒸着層としては、酸化アルミニウム、または酸化珪素、或いは酸化アルミニウムと酸化珪素の混合層である。その中で、食品衛生性,コスト,生産設備,着色について勘案すると酸化アルミニウム膜が有利である。
【0044】
本発明の透明蒸着フイルムの透明蒸着層の厚さは、1〜40nm、好ましくは2〜30nmである。1nm未満であればガスバリア性及び防湿性が悪化する。40nmを越えれば、生産性が落ちる。特に、金属酸化物の場合、膜厚を厚くするとカールしやすく、ハンドリングが悪くなり乱暴に扱うと蒸着膜にクラック(割れ)が入り、ガスバリア性,防湿性が低下したり、蒸着膜が着色したりする。
【0045】
本発明のポリエステルフイルムは、蒸着を行わない面が易接着性を有することが、蒸着工程後、さらに印刷や粘着剤塗工、あるいはラミネート加工の実施のために好ましい。蒸着を行わない面が易接着性を有するフイルムとする方法は、コロナ処理,プラズマ処理または樹脂積層膜を設ける方法などが上げられる。
【0046】
コロナ処理は、大気中の他、窒素中,二酸化炭素中,窒素と二酸化炭素の混合気体中などで代表される気体中で処理することができる。
【0047】
樹脂積層膜は、本発明の蒸着側積層膜で用いられるポリエステルの他、それ以外のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などやこれら樹脂に架橋剤を添加した樹脂、これら樹脂の混合物が用いられる。樹脂積層膜を設けるのに好ましい方法としては、共押出しの他に、蒸着側積層膜と同様に、ポリエステルフイルムの製造工程中において積層膜成分をコーティングし、基材フイルムとともに延伸する方法が最も好適である。
【0048】
次に本発明の透明蒸着用ポリエステルフイルムの代表的製造方法について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0049】
重合段階で−COOH量を調整し析出粒子または無機粒子または有機粒子を含有する樹脂(2軸配向ポリエステルフイルムを構成すべき樹脂)を所定の条件で乾燥を行い、押出機等での方法で溶融した後、フイルム状物に成形(通常は冷却ドラム上で)する。フイルム状物と冷却ドラムの密着性を向上させるには、通常、静電印加密着法および/または液面塗布密着法を採用することが好ましい。このフイルムを75〜130℃に加熱して、長手方向に2.0〜7.0倍に延伸して1軸配向フイルムとする。製膜で蒸着面へコーティング層を設けるには、この1軸配向フイルムの蒸着面にコロナ放電処理等の表面処理を必要に応じ適宜施した後、水系の樹脂を公知の方法(グラビアコーター,リバースコーター,キスコーター,ダイコーター,バーコーター,コンマコーターなど)を用いて塗布する。フイルムの蒸着側を行わない表面に易接着コーティングを行う場合はこの時に行う。この1軸配向フイルムを75〜130℃に加熱しつつ、幅方向に2.0〜6.0倍延伸し、引き続いて、170〜240℃の熱処理ゾーン中へ導いて、1〜10秒間熱処理する。この熱処理中に、幅方向に1〜12%の弛緩処理をする方がよい。熱処理されたフイルムを、中間冷却ゾーンを経て徐々に冷却し、室温まで至った時点で巻き取り機で巻き取りミルロールとした。次に、このミルロールをスリッターにかけて製品ロールとした。フイルムの蒸着側を行わない表面にコロナ処理を行う場合は、この製品ロールを巻き返しながら、フイルムの蒸着側を行わない表面にコロナ放電処理を行う。
【0050】
このようにして得られた2軸配向ポリエステルフイルムに蒸着層を設ける。反応性蒸着法において酸化アルミニウムを蒸着させるには、アルミニウム金属やアルミナを抵抗加熱のボート方式やルツボの高周波誘導加熱、電子ビーム加熱方式で蒸発させ、酸化雰囲気下で2軸配向ポリエステルフイルム上に酸化アルミニウムを堆積させる方式が採用される。酸化雰囲気を形成するための反応性ガスとして酸素を主体に水蒸気や希ガスを加えたりしても良い。更にオゾンを加えたりイオンアシストなどの反応を促進する手法も採用されて良い。これら真空プロセス中での2軸配向ポリエステルフイルム表面のプラズマ処理を併用すると、ガスバリア性,透湿性が向上しより好ましい。
【0051】
酸化珪素を反応性蒸着法で蒸着するには、Si金属,SiOやSiOを電子ビーム加熱方式で蒸発させ、酸化雰囲気下で2軸配向ポリエステルフイルム上に酸化珪素を堆積させる方式や、有機珪素化合物ガス,酸素ガスと不活性ガス中で酸化珪素を2軸配向ポリエステルフイルム上に堆積させるプラズマ化学蒸着法が採用される。酸化雰囲気を形成する方法は、上記の方法が用いられる。
【0052】
酸化アルミニウムと酸化珪素の混合層を蒸着するにも、上記の反応性蒸着法が採用される。
【0053】
[特性値の測定法]
(1)フイルム融解のサブピーク Ts
フイルムを示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC−2型)により、20℃/分の昇温速度で測定した。この測定により観測される擬結晶の変態により発生するサブピーク温度をTsとした。
【0054】
(2)ガラス転移温度 (Tg)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−2型)を用いて測定した。DSCの測定条件は次のとおりである。すなわち、試料10mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中に急冷する。この急冷試料を10℃/分で昇温し、ガラス転移点Tgを検知する。ガラス転移温度 (Tg)は下記式ガラス転移温度 =(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2により算出した。
【0055】
(3)ポリエステル中のジエチレングリコール
成分の含有量13C−NMRスペクトルによって測定した。
【0056】
(4)熱収縮率
フイルムサンプル標線間を200mmにとり、フイルムを10mmに切断し、フイルムサンプルを長さ方向に吊るし、1gの荷重を長さ方向に加えて、予め所定温度に設定した熱風オーブンを用い所定時間加熱した後、標線間の長さを測定し、フイルムの収縮量を原寸法に対する割合として百分率で表した。
【0057】
(5)中心線面粗さ(SRa)、山数(SPc)
3次元表面粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用い、次の条件で触針法により測定を行った。
【0058】
針径 2(μmR)
針圧 10(mg)
測定長 500(μm)
縦倍率 20000(倍)
CUT OFF 250(μm)
測定速度 100(μm/s)
測定間隔 5(μm)
記録本数 80本
ヒステリシス幅 ±5(nm)
基準面積 0.1(mm)。
【0059】
(6)カルボキシル末端基量(COOH)
原料チップをo−クレゾール中に入れ攪拌しながら100℃に加熱溶解し、室温まで冷却後、N/50のアルカリ溶液で滴定を行った。滴定量から次の式によりカルボキシル末端基量(COOH)を算出した。
【0060】
A=試料滴定量(ml)
B=ブランク滴定量(ml)(溶媒の滴定量)
W=試料重量(g)
COOH(当量/トン)=((A−B)× 1/50 ×10e)/ W。
【0061】
(7)蒸着層の膜厚
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−1200EX)を用い、加速電圧100kVで断面を超薄切片法で観察し、蒸着膜の膜厚を測定した。
【0062】
(8)ガスバリア性
A.水蒸気透過率
蒸着1週間後に、モダンコントロール社製水蒸気透過率計Permatran W 3/31を用いてJIS−K−7129−1992に記載されたB法に従い、40℃ 90RH%の条件で測定した。測定した水蒸気透過率で次のように評価した。○,◎を良好とした。
【0063】
◎:0(g/m・day)以上,2(g/m・day)未満
○:2(g/m・day)以上,3(g/m・day)未満
△:3(g/m・day)以上,4(g/m・day)未満
×:4(g/m・day)以上。
【0064】
B.酸素透過率
蒸着1週間後に、モダンコントロール社製酸素透過率測定装置OX−TRAN 2/20を用いて JIS−K−7126−1987に記載されたB法に従い、20℃ 0%RHの条件にて酸素透過率を測定した。測定した酸素透過率で次のように評価した。○,◎を良好とした。
【0065】
◎:0(cc/m・day)以上,2(cc/m・day)未満
○:2(cc/m・day)以上,3(cc/m・day)未満
△:3(cc/m・day)以上,4(cc/m・day)未満
×:4(cc/m・day)以上。
【0066】
(9)加工性
蒸着及び加工時のフイルムの取り扱い性(シワ、バタツキ、滑り性など)を○×で判定した。良好で問題なければ○である。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
平均粒子径1.0μmの析出粒子(重合工程中に析出した粒子)を0.15重量%及び粒径約1.5μmの二酸化珪素粒子を0.1重量%含有する−COOH量35当量/tのPETペレット(極限粘度0.63dl/g,ジエチレングリコール量1.0%)を水分率20ppmに真空乾燥した後、押出機に供給して、280℃で溶融押出し、10μmカットのフィルターで濾過した後、T字型口金からシート状に押出し、これを表面温度50℃の冷却ドラムに静電印加密着法で冷却固化せしめた。このようにして得られた未延伸PETフイルムを、95℃に加熱して長手方向に3.5倍延伸して1軸延伸フイルムとした。このフイルム片面にコロナ放電処理を施し、その処理面に以下に示す水系塗剤を塗布した。この1軸延伸フイルムを98℃で乾燥,予熱し、次いで105℃に加熱しつつ幅方向に3.9倍に延伸した。このフイルムを225℃の熱風中に導き入れ、1秒間緊張熱固定した後、同じ雰囲気温度内で幅方向に元のフイルム幅の8%リラックスを施し冷却する。最終的に室温まで冷却し、これを巻取り機に導いて巻き上げてミルロールとした。次に、このミルロールをスリッターにかけて製品ロールとした。この製品ロールを巻き返しながら、フイルムの蒸着側を行わない表面に20W・min/mの処理強度でコロナ放電処理を行った。
【0068】
水系塗料
ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 :28モル%
イソフタル酸 : 8モル%
トリメリット酸 :10モル%
セバシン酸 : 3モル%
・グリコール成分
エチレングリコール :14モル%
ネオペンチルグリコール:19モル%
・ 4−ブタンジオール :18モル%
上記酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:20℃)のアンモニウム塩型水分散体。
【0069】
メチロール化メラミン樹脂
上記ポリエステル樹脂の固形分100重量部に対し、メチロール化メラミン樹脂を固形分比で4重量部混合し、透明蒸着積層膜形成塗剤とした。
【0070】
このようにして得られた厚さ12μm、蒸着側積層膜の厚みが0.05μmのフイルムに、酸化アルミニウム蒸着を行った。この2軸配向ポリエステルフイルムの蒸着側積層膜表面へ酸化アルミニウムを蒸着する方法は、フイルムを連続式真空蒸着機の巻き出し装置にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフイルムを巻き取る。この時連続式真空蒸着機を10−4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製ルツボに純度99.99%の金属アルミニウムを装填して金属アルミニウムを加熱蒸発させ、その蒸気中に酸素を供給し酸化反応させながらフイルム上に付着堆積させ、厚さ20nmの酸化アルミニウム膜を形成した。この透明蒸着2軸配向ポリエステルフイルムの特性を表1に示した。
【0071】
(実施例2)
実施例1の中で、緊張熱固定温度を235℃に変更した。
【0072】
(実施例3)
実施例1の中で、フイルム幅のリラックスを5%、緊張熱固定温度を220℃、PETペレットをジエチレングリコール量0.8重量%のPETペレットに変更した。
【0073】
(実施例4)
実施例1の中で、フイルム幅のリラックスを5%、緊張熱固定温度を220℃、PETペレットをジエチレングリコール量0.6重量%のPETペレットに変更した。
【0074】
(実施例5)
実施例1の中で、水系塗剤のメチロール化メラミン樹脂を固形分比で4重量部から1重量部に変更した。
【0075】
(実施例6)
実施例1の中で粒径約1.5μmの二酸化珪素粒子を0.08重量%に変更し、酸化アルミニウム蒸着膜を変更し、コロナ放電処理後のフイルム表面に、3×10−5Torrの真空中で、10kwの電子ビーム加熱方式によってSiO及びSiOを加熱蒸発させて、フイルムの片面に厚み20nmの酸化珪素膜を形成した。
【0076】
(実施例7)
実施例1の中で粒径約1.5μmの二酸化珪素粒子を0.08重量%に変更し、酸化アルミニウム蒸着膜を変更し、コロナ放電処理後のフイルム表面に、10−4Torr以下の真空中で、10kwの電子ビーム加熱方式によってAl及びSiOの3:7の混合物を加熱蒸発させて、フイルムの片面に厚み30nmの透明蒸着膜を形成した。
【0077】
(比較例1)
蒸着側積層膜を設けていない以外は実施例1と同様にして、透明蒸着2軸配向ポリエステルフイルムを得た。
【0078】
(比較例2)
実施例1の中で、水系塗剤のメチロール化メラミン樹脂を固形分比で4重量部から0量部に変更した。
【0079】
(比較例3)
水系塗剤にφ0.3μmのシリカ粒子を2重量部添加した以外は、実施例1と同様にして、透明蒸着2軸配向ポリエステルフイルムを得た。
【0080】
(比較例4)
実施例1の中で、緊張熱固定温度を245℃に変更した。
【0081】
(比較例5)
実施例1の中で、PETペレットに0.1重量%含有する粒径約1.5μmの二酸化珪素粒子を、0.3重量%含有する粒径約2.5μmの二酸化珪素粒子に変更した。
各実施例、比較例での測定・評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材フイルムの一方の面に積層膜が設けられ、
蒸着側積層膜が設けられた基材フイルムの表面の中心線面粗さ(SRa)が2〜80nm、山数(SPc)が5〜130ヶ/0.1mmであり、
ポリエステルフイルムの融解サブピークが190〜240℃であり、
蒸着側積層膜がガラス転移温度10〜40℃の水分散性ポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤とを含み、該水分散性ポリエステル樹脂が側鎖にカルボン酸およびまたはその塩を有し、
厚さが5〜100μmである
透明蒸着用ポリエステルフイルム。
【請求項2】
190℃,20分の熱収縮率が長さ方向で1.0〜6.0%、幅方向で0〜6.0%である請求項1に記載の透明蒸着用ポリエステルフイルム。
【請求項3】
少なくとも一方の面に設けられた蒸着側積層膜が粒子を含まないことを特徴とする請求項1または2に記載の透明蒸着用ポリエステルフイルム。
【請求項4】
ポリエステルフイルム中のジエチレングリコール量が2.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明蒸着用ポリエステルフイルム。
【請求項5】
蒸着を行わない面が易接着性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明蒸着用ポリエステルフイルム。
【請求項6】
2軸配向ポリエステルフイルムである透明蒸着用ポリエステルフイルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の少なくとも片面の蒸着側積層膜に透明蒸着層を設けてなることを特徴とする透明蒸着ポリエステルフイルム。
【請求項8】
請求項7に記載の透明蒸着層が酸化アルミニウムを用いてなる層であることを特徴とする透明蒸着フイルム。
【請求項9】
請求項7に記載の透明蒸着層が酸化珪素を用いてなる層であることを特徴とする透明蒸着ポリエステルフイルム。
【請求項10】
請求項7に記載の透明蒸着層が酸化アルミニウムと酸化珪素を用いてなる層であることを特徴とする透明蒸着フイルム。

【公開番号】特開2007−118479(P2007−118479A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315923(P2005−315923)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】