説明

透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材

【課題】一回塗布することによって少なくとも2種以上の機能、例えば高屈折率性能、ハードコート機能、帯電防止性能等を有する透明被膜の形成に用いることのできる透明被膜形成用塗料を提供する。
【解決手段】(i)表面電荷量が20〜100μeq/gの範囲にあり、かつ有機ケイ素化合物で表面処理されてなる金属酸化物微粒子と、(ii)親水性マトリックス形成成分と疎水性マトリックス形成成分と、(iii)極性溶媒とからなる透明被膜形成用塗料であって金属酸化物微粒子の屈折率が1.60〜2.60の範囲にあり、該粒子の固形分としての濃度が0.1〜20重量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の固形分としての濃度が1〜50重量%の範囲にあり、親水性マトリックス形成成分の固形分としての濃度と疎水性マトリックス形成成分の固形分としての濃度との濃度比が0.005〜1の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種の塗料を一回塗布することによって少なくとも2種以上の機能、例えば高屈折率性能、ハードコート機能、帯電防止性能等を有する透明被膜の形成に用いることのできる透明被膜形成用塗料および該透明被膜形成用塗料を用いて形成された透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート膜を形成することが知られており、このようなハードコート膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
また、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の反射を防止するため、その表面に反射防止膜を形成することが知られており、たとえば、コート法、蒸着法、CVD法等によって、フッ素樹脂、フッ化マグネシウムのような低屈折率の物質の被膜をガラスやプラスチックの基材表面に形成したり、シリカ微粒子等の低屈折率微粒子を含む塗布液を基材表面に塗布して、反射防止被膜を形成する方法が知られている(たとえば、特開平7-133105号公報(特許文献1)など参照)。このとき、反射防止性
能を高めるために反射防止被膜の下層に高屈折率の微粒子等を含む高屈折率膜を形成することも知られている。
【0004】
さらに、基材に帯電防止性能、電磁波遮蔽性能を付与するために導電性の酸化物微粒子、金属微粒子等を含む導電性被膜を形成することも行われている。例えば、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などの表示パネルのような透明基材の表面の帯電防止および反射防止を目的として、これらの表面に帯電防止機能および反射防止機能を有する透明被膜を形成することが行われていた。
【0005】
特に、近年、このような各種機能性の被膜を積層して用いることが行われている。例えば、基材上にハードコート膜を形成し、導電性被膜あるいは高屈折率被膜を形成し、反射防止膜を形成することが行われている。
【0006】
また、本願発明者等は、特開2003-12965公報(特許文献2)において、平均
粒子径が異なり、粒子径の小さい導電性微粒子と粒子径の大きい低屈折率微粒子の異なる2種の微粒子を含む塗布液を用いることによって、1回の塗布で反射防止性能に優れた導電性被膜が形成できることを提案している。
【特許文献1】特開平7-133105号公報
【特許文献2】特開平2003-12965公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来2層以上形成する場合、各膜は、塗料を塗布し、乾燥し、必要に応じて硬化させる工程からなるために、上記多層膜を形成する場合に多くの工程を必要とし、各膜間の密着性が不充分であったり、生産性、経済性等に問題があった。
【0008】
また、特許文献2の方法では、2種の微粒子が上下完全に分離する形で微粒子層を形成できない場合があり、このため反射防止性能、帯電防止性能が不充分となることがあり、
さらにプラスチック等の基材への密着性が低く、かつ膜の強度が不充分となることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような問題点に鑑み鋭意検討した結果、4官能の有機珪素化合物で表面処理した高屈折率の金属酸化物粒子と親水性マトリックス形成成分と疎水性マトリックス形成成分と、極性溶媒とからなる透明被膜形成用塗料を用いて形成した透明被膜では、表面処理された高屈折率の金属酸化物粒子が透明被膜中に均一に分散することなく透明被膜の上部に層をなしていることを見出して本発明を完成するに至った。即ち、一回の被膜形成で2種以上の機能を有する被膜形成が可能であることを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の構成は以下の通りである。
[1](i)表面電荷量(QA-1)が20〜100μeq/gの範囲にあり、かつ有機ケイ素化
合物で表面処理されてなる金属酸化物微粒子(A-1)と、
(ii)親水性マトリックス形成成分と疎水性マトリックス形成成分と、
(iii)極性溶媒とからなる透明被膜形成用塗料であって
金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)が1.60〜2.60の範囲にあり、
該粒子(A-1)の固形分としての濃度(CPA-1)が0.1〜20重量%の範囲にあり、
マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CM)が1〜50重量%の範囲にあり、
親水性マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMB-1)と疎水性マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMB-2)との濃度比(CMB-1)/(CMB-2)が0.005〜1の範囲にある透明被膜形成用塗料。
[2]前記有機ケイ素化合物が下記式(1)で表される有機珪素化合物である[1]の透明被膜形
成用塗料。
aSiX4-a (1)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。aは0か1の整数)
[3]前記親水性マトリックス形成成分(B-1)が下記式(2)で表される有機珪素化合物または
これらの加水分解物、加水分解重縮合物または水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基から選ばれる1種以上の親水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂である[1]または[2]の透明被膜形成用塗料。
aSiX4-a (2)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。aは0か1の整数)
[4]前記金属酸化物微粒子(A-1)の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
[5]前記疎水性マトリックス形成成分(B-2)が下記式(3)で表される有機珪素化合物また
はこれらの加水分解物、加水分解重縮合物またはビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基から選ばれる1種以上の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂である[1]〜[4]の透明被膜形成用塗料。
n-SiX4-n (3)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数。ただし、式(2)のaが1の場合、nは2〜3となる)
[6]さらに、表面電荷量(QA-2)が5〜80μeq/gの範囲にあり、かつ有機ケイ素化合物で表面処理されてなる金属酸化物微粒子(A-2)を含んでなり、金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-2)が(nA-1)よりも低く、表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の表面電
荷量(QA-2)と表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の表面電荷量(QA-1)との差
(QA-1)−(QA-2)が10〜95μeq/gの範囲にある[1]〜[5]の透明被膜形成用塗料。
[7]前記金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)と前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の屈折率(nA-2)との屈折率差(nA-1)−(nA-2)が0.1〜1.4の範囲にある[1]〜[6]の透明被膜付基材。
[8]前記金属酸化物微粒子(A-2)が下記式(4)で表される有機珪素化合物で表面処理されて
なる[1]〜[7]の透明被膜形成用塗料。
n-SiX4-n (4)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数。ただし、式(1)のaが1の場合、nは2〜3となる))
[9]前記金属酸化物微粒子(A-2)の固形分としての濃度(CPA-2)が0.1〜20重量%の範囲にある[1]〜[8]の透明被膜形成用塗料。
[10]前記金属酸化物微粒子(A-2)の平均粒子径が5nm〜5μmの範囲にある[1]〜[9]
の透明被膜形成用塗料。
[11]基材上に透明被膜が形成された透明被膜付基材であって、透明被膜が表面電荷量(QA-1)が20〜100μeq/gの範囲にあり、有機ケイ素化合物で表面処理されてなる
金属酸化物微粒子(A-1)と、親水性マトリックス成分と疎水性マトリックス成分とから
なり、金属酸化物微粒子(A-1)が透明被膜の上部に層をなして偏在し、透明被膜中の金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)が1.60〜2.60の範囲にあり、該粒子の含有
量(WPA-1)が0.2〜90重量%の範囲にあり、マトリックス成分の含有量(WM)が
10〜99.8重量%の範囲にある透明被膜付基材。
[12]前記マトリックス成分は、親水性マトリックス成分の固形分としての含有量(WMB-1)と疎水性マトリックス成分の固形分としての含有量(WMB-2)との含有量の比(WMB-1)/(WMB-2)が0.005〜1の範囲にある[11]の透明被膜付基材。
[13]さらに表面電荷量(QA-2)が5〜80μeq/gの範囲にある表面処理された金属
酸化物微粒子(A-2)を含んでなり、表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の屈折率(
A-2)が表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)よりも低く、表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)が基材表面上に層をなして偏在しているか、前記表面処
理された金属酸化物微粒子(A-1)からなる層と基材表面の間に分散してなる[11]または[12]の透明被膜付基材。
[14]前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)と前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の屈折率(nA-2)との屈折率差(nA-1)−(nA-2)が0.1〜1.4の範囲にある[11]〜[13]の透明被膜付基材。
[15]前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の含有量が5〜70重量%の範囲にあ
る[11]〜[14]の透明被膜付基材。
[16]前記金属酸化物微粒子(A-1)の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、前記表
面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の平均粒子径が5nm〜5μmの範囲にある[11]
〜[15]の透明被膜付基材。
[17]前記透明被膜の表面が凹凸を有し、透明被膜の平均膜厚が1〜10μmの範囲にあり、透明被膜の凸部の平均高さ(T凸)と凹部の平均高さ(T凹)との差(T凸)−(T凹)が30〜1500nmの範囲にある[11]〜[16]の透明被膜付基材。
[18]前記透明被膜上に反射防止用低屈折率透明被膜が設けられている[11]〜[17]の透明被膜付基材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一回の塗布により、上下に分離した機能の異なる層を少なくとも2層形成することのできる透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材を提供することができる。また、一回の塗工で透明被膜が得られるため工程が大幅に短縮できるとともに歩留まりが向上し、得られる透明被膜は密着性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、先ず、本発明に係る透明被膜形成用塗料について具体的に説明する。
透明被膜形成用塗料
本発明に係る透明被膜形成用塗料は、表面電荷量(QA-1)が20〜100μeq/g
の範囲にあり、有機ケイ素化合物で表面処理されてなる金属酸化物微粒子(A-1)と親水性マトリックス形成成分と疎水性マトリックス形成成分と、極性溶媒とからなる透明被膜形成用塗料であって、表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)が1.60
〜2.60の範囲にあり、該粒子の固形分としての濃度(CPA-1)が0.1〜20重量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CM)が1〜50重量%の
範囲にあリ、親水性マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMB-1)と疎水性マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMB-2)との濃度比(CMB-1)/(CMB-2)が0.005〜1の範囲にあることを特徴としている。
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、親水性マトリックス形成成分と疎水性マトリックス形成成分が用いられる。
(i)親水性マトリックス形成成分(B-1)
親水性マトリックス形成成分としてはシリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分である下記式(2)で表される有機珪素化合物またはこれらの加水分解物、加水分解重縮
合物、が使用される。また有機樹脂系マトリックス形成成分である水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基から選ばれる1種以上の親水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂を用いることも可能である。
aSiX4-a (2)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。aは0か1の整数)
このような式(2)で表される有機珪素化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラ
エトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0013】
親水性の有機樹脂系マトリックス形成成分として具体的に、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の他、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクレート、2−ヒドロキシプロピルメタクレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクレート、2−ヒドロキシ3フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクロイロキシエチルコハク酸、2−アクロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクロイロキシエチルアシッドフォスフェート、およびこれらの混合物あるいはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体等が挙げられる。
(ii)疎水性マトリックス形成成分(B-2)
本発明では前記親水性マトリックス形成成分とともに疎水性マトリックス形成成分が含まれる。疎水性マトリックス形成成分としては、下記式(3)で表される有機珪素化合物ま
たはこれらの加水分解物、加水分解重縮合物であるシリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分が用いられる。
n-SiX4-n (3)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数。
【0014】
式(3)で表される化合物は、式(2)で表される化合物よりも疎水性であるものが使用され、式(2)のaが1の場合、nは2〜3となる)
具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン
、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ
)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、
γ-(メタ)アクリロキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロ
ピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等が挙げられる。なかでも、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシランおよびこれらの加水分解物、加水分解重縮合物は好適に用いることができる。
【0015】
また、疎水性の有機樹脂系マトリックス形成成分を用いることも可能であり、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂が挙げられる。具体的にはペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0016】
前記疎水性マトリックス形成成分(B-2)を親水性マトリックス形成成分(B-1)と混合して用いると親水性マトリックス形成成分が上層を形成し、疎水性マトリックス形成成分が下層を形成し、これに対応して後述する金属酸化物微粒子(A-1)が上層の表層に偏在し、
必要に応じて含まれる金属酸化物微粒子(A-2)が下層の下部に偏在し、一膜で二層に分
かれた膜を形成することができる。
【0017】
親水性マトリックス形成成分(B-1)の固形分としての濃度(CMB-1)と疎水性マトリッ
クス形成成分(B-2)の固形分としての濃度(CMB-2)との濃度比(CMB-1)/(CMB-2
)が0.005〜0.4、さらには0.01〜0.2の範囲にあることが好ましい。
【0018】
前記濃度比(CMB-1)/(CMB-2)が0.01未満の場合は親水性マトリックス形成成分が少なく、実質的に疎水性マトリックス形成成分のみに近くなり、表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)(上部)と表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)(下部)とを分離する効果が不充分となる。前記濃度比(CMB-1)/(CMB-2)が1を超えると、親水性マトリックス形成成分が多く表面電荷量の高い表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)
が上層に偏在しない場合がある。
【0019】
金属酸化物微粒子(A-1)
本発明で使用される金属酸化物微粒子(A-1)は、表面処理されてなり、かつ表面電荷
量(QA-1)が20〜100μeq/g、好ましくは25〜100μeq/gの範囲にあ
るものが使用される。
【0020】
表面電荷量が前記範囲にあると透明被膜を形成した際に金属酸化物微粒子(A-1)が親
水性マトリックス形成成分に随伴して透明被膜の上部に層を形成して偏在する。本発明で使用される金属酸化物微粒子(A-1)が高屈折率の粒子であるので、上部が高屈折率で下
部が樹脂のみからなるか、必要に応じて後述する屈折率の低い金属酸化物微粒子(A-2)
を含む低屈折率の透明被膜、すなわち、屈折率が勾配を有する透明被膜を一回の塗布で形成することができる。
【0021】
表面電荷量(QA-1)が小さいと、金属酸化物微粒子(A-1)の親水性が不充分となり親水性のマトリックス形成成分への分散性が低下し塗料中で金属酸化物微粒子(A-1)が凝
集することがあり、膜の上部に金属酸化物微粒子(A-1)の均一な層を形成しない場合が
ある。表面電荷量(QA-1)が高すぎると、親水性のマトリックス形成成分への分散性が
高く、塗料中で金属酸化物微粒子(A-1)が高分散するため膜の上部に金属酸化物微粒子
(A-1)の均一な層を形成しない場合がある。
【0022】
なお、表面電荷量の測定方法は、表面電位滴定装置(Mutek(株) pcd-03)を用いて、微粒子の分散液を0.001Nのpoly-塩化ジアリルジメチルアンモニウムを用いて滴定し
、粒子単位グラム当たりの表面電荷量(μeq/g)求めることができる。
【0023】
金属酸化物粒子(A-1)は用途によって適宜選択して用いることができる。屈折率(nA-1)が1.60〜2.60、好ましくは1.65〜2.40の範囲にあるものから選択さ
れる。
【0024】
金属酸化物粒子(A-1)の屈折率(nA-1)が小さいものは、透明被膜の上部の屈折率が
充分高くならず、透明被膜上に別途低屈折率の被膜を設けても充分な反射防止性能が得られないことがある。
【0025】
金属酸化物粒子(A-1)の屈折率が高すぎると、透明性を有する高屈折率の金属酸化物
微粒子を得ることが困難である。
このような金属酸化物微粒子(A-1)としてはZrO2、TiO2、Sb25、ZnO2、SnO2、In23、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、リンドープ酸化錫(
PTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等が挙げられる。
【0026】
本発明で使用される金属酸化物微粒子(A-1)は表面が有機珪素化合物で表面処理され
ている。
前記有機ケイ素化合物としては、下記式(1)で表される有機珪素化合物が好ましい。
aSiX4-a (1)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。aは0か1の整数)
このような式(1)で表される有機珪素化合物としては前記式(2)で例示したものが挙
げられる。
【0027】
金属酸化物微粒子(A-1)の表面処理は、例えば、前記した金属酸化物微粒子のアルコー
ル分散液に前記した有機珪素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて有機珪素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて有機珪素化合物を加水分解することによって行うことができる。
【0028】
金属酸化物微粒子(A-1)と有機珪素化合物との重量比(有機珪素化合物の固形分重量
/金属酸化物微粒子(A-1)重量)は、0.005〜0.2、好ましくは0.01〜0.
1の範囲にあることが望ましい。前記重量比が低い場合は金属酸化物微粒子(A-1)の親
水性が不充分となり、親水性マトリックス形成成分への分散性が低下し塗料中で金属酸化物微粒子(A-1)が凝集することがあり、膜の上部に金属酸化物微粒子(A-1)の均一な層を形成しない場合がある。前記重量比が大きすぎると、親水性が高くなり過ぎてしまい、塗料中で金属酸化物微粒子(A-1)が高分散するため膜の上部に金属酸化物微粒子(A-1)
の均一な層を形成しない場合がある。
【0029】
通常、表面処理後、必要に応じて有機溶媒に置換するが、有機溶媒としては、後述する極性溶媒を用いることが好ましい。
金属酸化物微粒子(A-1)が前記有機珪素化合物で表面処理されていると前記した範囲の表面電荷量を有し、即ち適度に親水性を有し、塗料中で凝集することなく分散し、透明被膜の上部に層をなして配列した透明被膜を得ることができる。
【0030】
金属酸化物微粒子(A-1)は平均粒子径が5〜500nm、さらには10〜100nm
の範囲にあることが好ましい。(なお、平均粒子径は、表面処理前後によって、ほとんど変化しない)
平均粒子径がこの範囲よりも小さいものは得ること自体が困難であり、平均粒子径が大きいものは透明被膜のヘーズ値が高く光学膜として使用できない場合がある。
【0031】
このような金属酸化物微粒子(A-1)は透明被膜形成用塗料中に固形分濃度(CPA-1
が0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%の範囲にあることが望ましい。
(CPA-1)が低ければ、膜の上部に偏在しても粒子の量が少ないため粒子の有する特性(低屈折率や導電性等)による反射防止性能、帯電防止性能等が不充分となる場合がある。また、(CPA-1)が高すぎると、得られる膜中の粒子の割合が多すぎて実質的に膜中に表面処理された金属酸化物微粒子が全域に亘って均一に分散した膜となり、本発明の2種以上の機能を有する膜が得られない場合がある。
金属酸化物微粒子(A-2)
本発明の透明被膜形成用塗料には、さらに表面電荷量(QA-2)が5〜80μeq/g
の範囲にあり、有機ケイ素化合物で表面処理されてなる金属酸化物微粒子(A-2)を含ん
でいてもよい。
【0032】
表面電荷量が前記範囲にあると透明被膜を形成した際に表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)が疎水性マトリックス形成成分に随伴して透明被膜下部に層を形成して偏在し
、例えば、上部が高屈折率で下部が屈折率の低い金属酸化物微粒子(A-2)を含む低屈折
率の透明被膜、すなわち、屈折率が勾配を有する透明被膜を一回の塗布で形成することができる。
【0033】
金属酸化物微粒子(A-2)としては、前記金属酸化物微粒子(A-1)より疎水性が高く、表面電荷量の差(QA-1)−(QA-2)が10〜95μeq/gの範囲にあり、なおかつ金属酸化物微粒子(A-1)よりも低い粒子を用いる。
【0034】
金属酸化物微粒子(A-2)は、表面が下記式(4)で表される有機珪素化合物で表面処理されている。
n-SiX4-n (4)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数。
【0035】
式(4)で表される化合物は、式(2)で表される化合物よりも疎水性であるものが使用され、式(1)のaが1の場合、nは2〜3となる)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数) 具体的には、前記下記式(3)で表される有機珪素化合物と同
様の有機珪素化合物が挙げられる。
【0036】
金属酸化物微粒子(A-2)の表面処理は、例えば、後述する金属酸化物微粒子のアルコ
ール分散液に前記した有機珪素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて有機
珪素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて有機珪素化合物を加水分解することによって行うことができる。
【0037】
金属酸化物微粒子(A-2)と有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物の固形分として
の重量/高屈折率微粒子の重量)は、金属酸化物微粒子(A-2)の平均粒子径や目的の膜
厚によっても異なるが0.005〜0.3、好ましくは0.01〜0.2の範囲にあることが望ましい。
【0038】
前記重量比が低すぎると、疎水性が不充分なために後述する疎水性マトリックス形成成分へ分散することなく親水性マトリックス形成成分に分散し、表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)との分離が不充分となり、金属酸化物微粒子(A-1)と(A-2)とを用いる効
果が発現しない場合がある。前記重量比が高くすると、疎水性が高くなり過ぎて(表面電荷量が5μq/g以下となり)疎水性マトリックス形成成分中で凝集することがある。
【0039】
表面処理では、必要に応じて、極性溶媒に置換してもよい。なお、極性溶媒に置換すると、表面処理後の分散液中に水が存在しているが、溶媒置換することで除かれる。
金属酸化物微粒子(A-2)としては前記した金属酸化物微粒子(A-1)に用いる金属酸化物微粒子と異なり、屈折率の低いものが選択される。
【0040】
具体的には、SiO2、Al23、SiO2-P25、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、リンドープ酸化錫(PTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)あるいはこれら粒子が鎖状に連結した鎖状粒子、あるいは屈折率が1.45以下のシリカ系微粒子等が挙げられる。
【0041】
表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の表面電荷量(QA-2)は、5〜80μeq/gの範囲にあり、好ましくは7〜70μeq/gの範囲にあることが望ましい。表面電荷量(QA-2)が低いと、疎水性マトリックス形成成分中で凝集することがあり、膜の下部
に均一な層を形成できない場合がある。表面電荷量(QA-2)が高すぎると、疎水性が低
く、親水性が増すために親水性マトリックス形成成分に分散し、膜の下部に偏在することなく金属酸化物微粒子(A-1)と混合して膜の上部に位置する傾向があり、金属酸化物微
粒子(A-1)の特性による効果、例えば低屈折率の特性による反射防止性能が不充分とな
ることがある。
【0042】
また、金属酸化物微粒子(A-1)の表面電荷量(QA-1)と表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の表面電荷量(QA-2)との差(QA-1)−(QA-2)が10〜95μeq/g、さらには15〜85μeq/gの範囲にあることが好ましい。(QA-1)−(QA-2)が少ないと、表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)と表面処理された金属酸化物微粒子
(A-2)の表面電荷量の差が小さく、これら微粒子の分離が不充分となり本発明の2種以
上の機能を有する膜が得られない場合がある。(QA-1)−(QA-2)が大きすぎると、表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)が凝集するとともに表面処理された金属酸化物微
粒子(A-2)も凝集し、得られる膜が白化したり、基材との密着性や強度が不充分となる
ことがある。
【0043】
また、表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の屈折率(nA-2)が表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)よりも低いことが好ましく、さらには屈折率差(nA-1)−(nA-2)が0.1〜1.4、さらには0.2〜1.2の範囲にあることが好ましい。屈折率差(nA-1)−(nA-2)が小さい場合では、屈折率(nA-2)と屈折率(nA-1)がともに高いと、干渉縞を生じることがあり、屈折率(nA-2)と屈折率(nA-1)がともに低いと、透明被膜上に反射防止膜を設けた場合に反射防止性能が不充分となることがある。
【0044】
屈折率差(nA-1)−(nA-2)が大きすぎると、光の散乱が起こり、画像がぼけたり、ヘイズが発生することがある。
金属酸化物微粒子(A-2)の平均粒子径は5nm〜5μm、さらには10nm〜3μm
の範囲にあることが好ましい。
【0045】
平均粒子径が前記下限未満のものは得ることが困難であり、大きすぎても透明被膜の凸部の高さ(T凸)と凹部の高さ(T凹)との差(T凸)−(T凹)が1.5μmを超えることがあり、充分な防眩性能が得られないことがあり、さらに透明被膜の耐擦傷性が問題となることがある。
【0046】
表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の透明被膜形成用塗料中の固形分としての濃度(CPA-2)が0.1〜20重量%、さらには0.2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の濃度(CPA-2)が少なすぎると、金属酸化物
微粒子(A-2)が膜の下部に偏在しても粒子の量が少ないため粒子の有する特性(高屈折
率や導電性等)による反射防止性能向上効果、帯電防止性能等が不充分となる場合がある。
【0047】
表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の濃度(CPA-1)が多すぎると、得られる膜
中の粒子の割合が多すぎて金属酸化物微粒子(A-1)と混合したり、膜中に金属酸化物微粒子(A-2)が全域に亘って分散した膜となり、本発明の2種以上の機能を有する膜が得られない場合がある。
極性溶媒
本発明に用いる極性溶媒としては前記マトリックス形成成分、必要に応じて含まれるマトリックス硬化用の重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)、表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)を均一に分散することができる、従来公知の溶媒を用いることができる。
【0048】
本発明では沸点の異なる2種以上の極性溶媒を混合して用いることが好ましい。
本発明では、前記溶媒で50〜100℃に沸点有する極性溶媒(A-1)と、100℃を
こえて〜200℃に沸点を有する極性溶媒(A-2)との混合溶媒が望ましく、混合溶媒中
の極性溶媒(A-1)の割合が50〜90重量%の範囲にあり、極性溶媒(A-2)の割合が10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0049】
極性溶媒は親水性のものでも疎水性のものでもいずれであってもよい。
極性溶媒(A-1)で親水性溶剤としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール
、2-プロパノール(IPA)などのアルコール類が挙げられ、疎水性溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0050】
極性溶媒(A-2)で親水性溶剤としては、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフ
リルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールものエチルエーテルなどのエーテル類が挙げられ、疎水性溶剤としては酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールものアセタートなどのエステル類;メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0051】
混合溶媒中の極性溶媒(A-1)の割合が多すぎると、塗膜の乾燥が速すぎて透明被膜が
緻密にならないことがあり硬度や耐擦傷性が不充分となることがある。(A-1)の割合が
少なすぎると、当然に極性溶媒(A-2)が多くなるので、塗膜の乾燥が遅くなり、溶剤の
残留で硬化不良が起こり硬度や耐擦傷性が不充分となることがある。
混合溶媒中の極性溶媒(A-2)のさらに好ましい割合は20〜40重量%の範囲の範囲で
ある。
【0052】
透明被膜形成用塗料中の溶媒の割合は概ね50〜99重量%、さらには60〜98重量%の範囲にあることが好ましい。
極性溶媒(A-2)は親水性溶剤と疎水性溶剤が混合されていてもよいが、一番沸点の高
い溶剤は親水性の溶剤であることが好ましい。
【0053】
一番沸点の高い溶剤が親水性であると、親水性の樹脂と親水性の粒子をともに透明被膜の上部に再現性よく、かつ容易に偏在させることができる。
このとき、極性溶剤(A-2)中の疎水性溶剤/親水性溶剤の比は0〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0054】
上記金属酸化物微粒子(A-1)、必要に応じて用いる金属酸化物微粒子(A-2)、マトリックス形成成分および極性溶媒とを公知の方法で混合すれば本発明に係る透明被膜形成用塗料を調製することができる。かかる、透明被膜形成用塗料をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理などの常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
透明被膜付基材
本発明に係る透明被膜付基材は、基材上に透明被膜が形成された透明被膜付基材であって、透明被膜が表面電荷量(QA-1)が20〜100μeq/gの範囲にある有機ケイ素
化合物で表面処理された属酸化物微粒子(A-1)と親水性マトリックス成分と疎水性マトリックス成分とからなり、表面処理された金属酸化物粒子(A-1)が透明被膜の上部に層をなして偏在し、透明被膜中の表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)が1.60〜2.60の範囲にあり、該粒子の含有量(WPA-1)が0.2〜90重量%の範囲にあり、マトリックス成分の含有量(WM)が10〜99.8重量%の範囲にあることを特徴としている。
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ガラス、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロポリオレフィン、ノルボルネン等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックパネル等があげられる。本発明では、樹脂系基材が好適に使用される。また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。
金属酸化物微粒子(A-1)
金属酸化物微粒子(A-1)としては前記と同様のものが用いられる。透明被膜中の金属
酸化物微粒子(A-1)の含有量(WPA-1)が0.2〜90重量%、さらには0.5〜80
重量%の範囲にあることが好ましい。金属酸化物微粒子(A-1)の含有量(WPA-1)が少
ないと、膜の上部に偏在しても粒子の量が少ないために低屈折率、高屈折率、導電性等の粒子の有する特性に基づく反射防止性能、帯電防止性能等の機能が充分発現できない場合
がある。金属酸化物微粒子(A-1)の含有量(WPA-1)が多すぎると、実質的に表面処理
された金属酸化物微粒子(A-1)が全域にわたって存在し、本発明の2種以上の機能を有する透明被膜にならず、また基材との密着性が不充分となることがある。
【0055】
本発明の透明被膜では、表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)は透明被膜中で上部に層をなして偏在している。このような状態を図1に模式的に示した。
金属酸化物微粒子(A-2)
本発明の透明被膜付基材の透明被膜は、さらに金属酸化物微粒子(A-2)を含んでいて
もよい。表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)は基材表面上(すなわち透明被膜の下
層)に層をなして偏在しているか、前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)からなる層と基材表面の間に分散している。金属酸化物微粒子(A-2)としては前記したと同様の粒子を用いることができる。
【0056】
このような状態を図2〜7に模式的に示した。
図2および3は、金属酸化物微粒子(A-2)の層が透明被膜内の下部に形成されたものの
模式図であり、図2は、金属酸化物微粒子(A-1)と(A-2)の層が離間したものであり、図3は金属酸化物微粒子(A-1)と(A-2)の層が近接したものであり、層間はマトリックスから構成される。図2および3は、透明被膜の膜厚や、金属酸化物微粒子(A-1)および(A-2)の量を調整することで、各層の厚さや中間のマトリックス層の厚さを調整可能となる。
【0057】
図4は、金属酸化物微粒子(A-2)が層を形成することなく分散したものである。このよ
うな構成にするには、疎水性マトリックス形成成分に高分散する程度の表面電荷量となるように表面処理した金属酸化物微粒子(A-2)が過剰にならないように使用すればよい。
【0058】
図5〜7は、金属酸化物微粒子(A-2)が高屈折率粒子(大粒子)であり、表面に、(A-2)に由来する凹凸が形成されたものである。
透明被膜中の金属酸化物微粒子(A-2)の含有量(WPA-2)は、固形分として0.1〜
70重量%、さらには0.2〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0059】
金属酸化物微粒子(A-2)の含有量(WPA-2)が少ない場合は、膜の下層に偏在しても
粒子の量が少ないため粒子の有する特性(導電性、低屈折率、基材との密着性向上等)が充分発現できない場合がある。平均粒子径の大きい粒子を用いて防眩性を有する透明被膜を得ようとする場合、透明被膜表面の凹凸が不充分となり防眩性能が不充分となることがある。
【0060】
金属酸化物微粒子(A-2)の含有量が多すぎると、透明被膜の膜厚が不均一となったり
、耐擦傷性が不充分となることがある。
また、上部に配列している金属酸化物微粒子(A-1)と混合した状態となり、本発明の2種以上の機能を有する透明被膜が得られない場合がある。
マトリックス成分
マトリックス成分としては、親水性マトリックス成分と疎水性マトリックス成分が用いられる。
【0061】
親水性マトリックス成分としてはシリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分である前記式(2)で表される有機珪素化合物の加水分解重縮合物または有機樹脂系マトリッ
クス成分である水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基から選ばれる1種以上の親水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂が好適に用いられる。
【0062】
このような親水性マトリックスに使用される有機珪素化合物については前記した通りである。親水性の有機樹脂系マトリックス形成成分としても、前記した通りである。
疎水性のマトリックス成分としては、前記式(3)で表される有機珪素化合物の加水分解
重縮合物であるシリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス成分が用いられる。また疎水性の有機樹脂系マトリックス成分を用いることもでき、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂が挙げられ、具体的には、前記したもののと同様のものが例示される。
【0063】
前記疎水性マトリックス成分を親水性マトリックス成分と混合して用いると親水性マトリックス成分が上層を形成し、疎水性マトリックス成分が下層を形成し、これに対応して表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)が上層の表層に偏在し、表面処理された金属酸
化物微粒子(A-2)が下層の下部に偏在し、表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)と表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)が分離しやすくなり、二層に分かれた膜を得るこ
とが容易となる。
【0064】
透明被膜中の親水性マトリックス成分の固形分としての含有量(WMB-1)と疎水性マトリックス成分の固形分としての含有量(WMB-2)との含有量の比(WMB-1)/(WMB-2)が0.005〜1、さらには0.01〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0065】
前記(WMB-1)/(WMB-2)が少ない場合は親水性マトリックス成分が少なく、実質的に疎水性マトリックス成分のみに近くなり、金属酸化物微粒子(A-1)(上部)と金属酸
化物微粒子(A-2)(下部)とを分離する効果が不充分となる。
【0066】
前記(WMB-1)/(WMB-2)が大きくしすぎると、親水性マトリックス成分が多く表面電荷量の高い金属酸化物微粒子(A-1)が上層(親水性マトリックス成分)の上部に偏在
しない場合がある。
【0067】
透明被膜中のマトリックス成分の含有量(WM)は10〜99.8重量%、さらには2
0〜99.5重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜中のマトリックス成分の含有量(WM)が少ない場合は、膜中の粒子の割合が
多すぎて実質的に膜中に金属酸化物微粒子が全域に亘って均一に分散した膜となり、本発明の2種以上の機能を有する膜が得られない場合がある。
【0068】
透明被膜中のマトリックス成分の含有量(WM)が多いと、粒子の量が少ないため粒子
の有する特性(高屈折率、導電性等)による帯電防止性能や、この被膜に上に後述する低屈折率被膜を積層した場合、反射防止性能等が不充分となる場合がある。
【0069】
本発明では、透明被膜の膜厚は、用途によっても異なるが概ね30nm〜10μm、さらには、70nm〜8μmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜の膜厚が薄いと、実質的に2層に分離した透明被膜を形成することが困難であり、膜厚が厚いと、透明被膜にクラックを生じたり、プラスチック等の基材ではカーリング(湾曲あるいは反り)を生じる場合がある。
【0070】
たとえば、上部が高屈折率膜で下部がハードコート膜、または導電性膜等である場合は、高屈折率膜部の膜厚が40nm〜10μm、さらには、60nm〜8μmの範囲にあることが好ましい。
【0071】
高屈折率膜の膜厚が40nm未満の場合は、フレネルの原理から外れた光学膜厚となり充分な反射防止性能が得られない場合がある。
高屈折率膜の膜厚が10μmを超えると膜の収縮により基材の種類によっては、例えば薄TACフィルムなどの場合はカーリングを生じる場合がある。
【0072】
このとき、膜の下部の屈折率は基材フィルムに近い概ね1.48〜1.67の範囲にあることが好ましく、上部の高屈折率部の屈折率は概ね1.60以上の範囲にあることが好ましい。
【0073】
なお、透明被膜は上層が高屈折率膜であれば表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)として五酸化アンチモン微粒子を含む場合は高いハードコート性能とともに帯電防止性能を有し、ATOやITO粒子を含む場合は帯電防止性能とともに熱線遮蔽性能を有し、酸化チタンを含む場合は、紫外線吸収性能を有している。
【0074】
上部が高屈折率の導電性膜である場合は、導電性膜部の膜厚は30nm〜10μm、さらには、60nm〜8μmの範囲にあることが好ましい。導電性膜部の膜厚が薄い場合は、機能の異なる分離した他の膜の形成が困難であり、また充分な導電パスが形成されないために導電性が不充分となることがある。導電性膜の膜厚が厚すぎると、膜の収縮が大きくなるために、基材が薄いプラスチックフィルム等の場合はカーリングを生じる場合がある。
【0075】
このような導電膜部を有する透明被膜の表面抵抗値は103〜1013Ω/□の範囲にあ
ることが好ましい。
高屈折率膜部の屈折率は概ね1.52〜2.00の範囲にあることが好ましい。
【0076】
上部が高屈折率膜の場合、下部は粒子が存在しない場合であってもハードコート性を有する。
また、上部が表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)としてATO,ITOを含む場合は、導
電性、帯電防止性能、赤外線遮蔽性能を有し、五酸化アンチモン、リンドープ酸化スズを含む場合は、帯電防止性能、ハードコート性能を有し、下部が表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)として低屈折率のシリカ粒子あるいは中空シリカ微粒子等を含む場合は、高いハードコート性能、低誘電率性能を有している。
【0077】
本発明では、透明被膜の膜厚が均一な場合であってもよく、本発明の透明被膜付基材では、透明被膜の表面が凹凸を有し、透明被膜の平均膜厚が1〜10μmの範囲にあり、透明被膜の凸部の平均高さ(T凸)と凹部の平均高さ(T凹)との差(T凸)−(T凹)が30〜1500nmの範囲にあるものであってもよい。このように凹凸を設けることによって、防眩性能を有する透明被膜付基材を提供できる。
【0078】
防眩性能を有する透明被膜付基材の場合、下層を形成する金属酸化物微粒子(A-2)の
平均粒子径は0.5〜5μm、さらには1〜3μmの範囲にあることが好ましい。金属酸化物微粒子(A-2)の平均粒子径が小さいと、透明被膜の凸部の高さ(T凸)と凹部の高
さ(T凹)との差(T凸)−(T凹)が小さくなってしまい、充分な防眩性能が得られないことがある。
【0079】
金属酸化物微粒子(A-2)の平均粒子径が大きすぎると、透明被膜の凸部の高さ(T凸
)と凹部の高さ(T凹)との差(T凸)−(T凹)が1.5μmを超えることがあり、この場合も充分な防眩性能が得られないことがある。また、透明被膜の耐擦傷性が問題となることがある。
【0080】
透明被膜の凸部の平均高さ(T凸)と凹部の平均高さ(T凹)との差(T凸)−(T凹)がのさらに好ましい範囲は50〜1000nmである。
凹凸を設ける場合、上記透明被膜の平均膜厚は1〜10μm、さらには2〜8μmの範囲にあることが好ましい。ここで、平均膜厚とは透明被膜の凸部の平均高さ(T凸)と凹部の平均高さ(T凹)との平均値をいう。
【0081】
透明被膜の平均膜厚が薄い場合は、2層に分離し且つ後述する凹凸を有する透明被膜の形成が困難であり、透明被膜の平均膜厚が厚すぎると、透明被膜にクラックを生じたり、基材がプラスチック等の場合はカーリング(湾曲あるいは反り)を生じる場合がある。
【0082】
また、透明被膜の凸部の平均高さ(T凸)と凹部の平均高さ(T凹)との差(T凸)−(T凹)が30〜1500nm、さらには50〜1000nmの範囲にあることが好ましい。(T凸)−(T凹)が30nm未満の場合は充分な防眩性が得られない場合がある。(T凸)−(T凹)が1500nmを超えると光の表面散乱が大きく白っぽく見える場合がある。
【0083】
さらに、透明被膜の上部に偏在する金属酸化物微粒子(A-1)の層の厚さは、概ね10
〜500nm、さらには20〜300nm、特に50〜200nmの範囲にあることが好ましい。金属酸化物微粒子(A-1)の層が薄ければ、機能の異なる分離した他の膜の形成
が困難であり、また、他の機能を有する粒子あるいはマトリックスの屈折率によっては所望の屈折率を有する層が形成できない場合がある。さらに透明被膜に上に低屈折率被膜を積層した場合、反射防止性能等が不充分となる場合がある。
【0084】
金属酸化物微粒子(A-1)の層が厚いと、フレネルの原理から外れた厚さとなる場合が
あり、反射防止性能が不充分となったり、明室コントラストが低下し、このため画面が白味を帯びることがある。
【0085】
本発明に係る透明被膜付基材は、前記した透明被膜形成用塗料を基材上に塗布し、乾燥し、硬化させることによって製造することができる。
具体的には、透明被膜形成用塗料をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。防眩性を有する透明被膜付基材を製造する場合はロールコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法が推奨される。
【0086】
前記透明被膜上に反射防止用低屈折率透明被膜が設けられていてもよい。反射防止用低屈折率透明被膜としては従来公知の反射防止用透明被膜を用いることができる。
例えば、本願出願人の出願による特開2006−21938号公報、特開2005−290149号公報に開示した低屈折率のシリカ系中空微粒子を用いた低屈折率の透明被膜は好適に用いることができる。また、本願出願人が特願2006−175773号に提案している低屈折率のシリカ系中空微粒子を含む透明被膜形成用塗布液は、基材あるいは本願の透明被膜が凹凸を有する場合であっても平坦化することなく反射防止用低屈折率透明被膜を形成することができるので防眩性を有する透明被膜を形成することができる。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
透明被膜形成用塗料(A-1)の調製
高屈折率成分として、チタニア微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:OPTLAK 1130Z平均粒子径20nm、濃度30.5重量%、分散媒:メタノ−ル 粒子屈折率2.10)を
用いた。このゾル100gに正珪酸エチル10.59g(多摩化学(株)製 エチルシリケ
ート28 SiO2成分28.8%)を混合し超純水を10g添加し50℃で5時間攪拌し表
面処理したチタニア微粒子分散ゾルを得た(固形分27.8%)。この表面処理したチタニア微粒子分散ゾルの表面電荷量を測定したところ39.2μeq/gであった。この表
面処理したチタニア微粒子分散ゾル10.8gと水酸基を有する親水性の樹脂2−ヒドロキシ3−アクリロイロキシプロピルメタクレート(共栄社化学(株):ライトエステルG−201P)3g、と疎水性の樹脂ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)54gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)2.3gおよび溶媒イソプロパノ−ル100g、メチルイソブチルケトン10g、プロピレングリコールモノメチルエーテル50gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(A-1)を調製した。
【0087】
反射防止透明被膜形成用塗料(B-1)の調製
低屈折率成分として、シリカ系中空微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:スルーリア1420、平均粒子径60nm、濃度20.5重量%、分散媒:イソプロパノ−ル 粒子屈折率1.30)を用いた。このゾル100gにメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン2.52g(信越化学(株)製;KBM−503、SiO2成分81.2%)を混合し50℃で5時間攪拌し表面処理したシリカ系中空微粒子分散ゾルを得た(固形分22.0%)。
【0088】
この表面処理したシリカ系中空微粒子分散ゾル6.67gにシリコン系樹脂(信越化学(株)製:X−12−2400、固形分濃度28.5%)4.74gと応力吸収用アクリル系樹脂1.6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製;ライトアクリレート1.6HX−A)0.15gと撥水化材用反応性シリコンオイル(信越化学(株);X−22−174DX、IPAで固形分濃度10%に溶解)0.3gと光重合開始剤(ビ−エ−エスエフジャパン(株))製:ルシリンTPO:IPAで固形分濃度10%に溶解)0.9gとイソプロピルアルコール58.24g、メチルイソブチルケトン15g、イソプロピルグリコール9g、エチレングリコールモノブチルエーテル5gを混合して、固形分濃度3.0重量%の反射防止膜形成用塗料(B-1)を調製した。
【0089】
透明被膜付基材(F-1)の調製
透明被膜形成用塗布液(A-1)をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーA−80:厚さ1
00μm、屈折率1.65、基材透過率88.0%、Haze2.0%、反射率5.1%)にバ−コ−タ−で塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(1)を調製した。このときの透明被膜の膜厚は5μmであった。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、上部にチタニア微粒子が厚さ100nmの層をなしており、下部はマトリックスのみで粒子の存在は認められなかった。
【0090】
反射防止透明被膜付基材(FA-1)の調製
ついで、透明被膜付基材(F-1)の上に、反射防止透明被膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止透明被膜付基材(FA-1)を作製した。このときの反射防止透明被膜の厚さは100nmであった。
【0091】
得られた反射防止透明被膜付基材(FA-1)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘ−ズ、波長550nmの光線の反射率を測定し、結果を表1に示す。
表面抵抗を表面抵抗計(三菱油化(株)製:LORESTA)で測定し、全光線透過率およびヘ−ズはヘ−ズメ−タ−(日本電色(株)製:NDH2000)により、反射率は分光光度計(日本分光(株)製:Ubest−55)により夫々測定した。
【0092】
また、防眩性、密着性、鉛筆硬度を以下の方法および評価基準で評価し、結果を表1に示した。
防眩性
反射防止透明被膜付基材(FA-1)の防眩性を基材の裏面を黒スプレーで均一に塗り、30W
の蛍光灯から2mはなれ蛍光灯の映り込みを目視に確認し防眩性を評価した。結果を表1
に示す。
蛍光灯が全く見えない :◎
蛍光灯がわずかに見える :○
蛍光灯は見えるが輪郭がぼける :△
蛍光灯がはっきり見える :×
密着性
反射防止透明被膜付基材(FA-1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテ−プを接着し、ついで、セロハンテ−プを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することにより密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数90〜99個 :○
残存升目の数85〜89個 :△
残存升目の数84個以下 :×
鉛筆硬度
JIS−K−5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
[実施例2]
透明被膜形成用塗料(A-2)の調製
低屈折率粒子としてシリカ微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:OSCAL 1132平均
粒子径12nm、濃度30.5重量%、分散媒:メタノ−ル 粒子屈折率1.46)を用いた。このゾル100gにγ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン7.45g(信
越シリコ−ン(株)製 KBM−5103 SiO2成分81.9%)を混合し超純水を10g添
加し50℃で5時間攪拌し表面処理したシリカ微粒子分散ゾルを得た(固形分31.2%)。この表面処理したシリカ微粒子分散ゾルの表面電荷量を測定したところ8.2μeq/gであった。
【0093】
この表面処理したシリカ微粒子ゾル86.3gと、実施例1と同様にして調製したチタ
ニア微粒子分散ゾル14.3gと水酸基を有する親水性のアクリレート樹脂(共栄社化学(株)製:MMH−40 プロピレングリコールモノメチルエーテル分散、固形分40%)
3.8gと、疎水性の樹脂ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)28.5g、に光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)2.4gおよび溶媒イソプロパノ−ル65.3gとメチルイソブチルケトン10g、エチレングリコールモノブチルエーテル20gとを充分に混合して透明被膜形成用塗料(A-2)を調製した。
透明被膜付基材(F-2)の調製
透明被膜形成用塗料(A-2)をTACフィルム(厚さ80μm、屈折率1.49、基材透
過率92.0% Haze0.2%、反射率5.0%)にバ−コ−タ−で塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(2)を調製した。このときの膜厚は5μmであった。透明被膜
の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、上部チタニア微粒子が厚さ100nmの層をなしており、下部はシリカ系微粒子の存在が認められた。
反射防止透明被膜付基材(FA-2)の調製
ついで、透明被膜付基材(A-2)の上に、実施例1と同様にして調製した反射防止透明被膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(8
0W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射・帯電防止膜付基材(FA-2)を作製した。このときの反射防止膜の厚さは100nmであった。
【0094】
得られた反射防止透明被膜付基材(FA-2)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘ−ズ、波長550nmの光線の反射率、防眩性、密着性、鉛筆硬度を測定し結果を表1に示す。
[実施例3]
透明被膜形成用塗料(A-3)の調製
導電成分として、五酸化アンチモン微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:ELCOM V−
4560、平均粒子径20nm、濃度30.5重量%、分散媒:イソプロパノ−ル 粒子屈折率1.60)を用いた。このゾル100gにγ-メタクリロキシプロピルトリメトキ
シシラン3.76g(信越シリコ−ン(株)製 KBM−503、SiO2成分81.9%)を
混合し超純水を10g添加し50℃で15時間攪拌し表面処理した五酸化アンチモン微粒子分散ゾルを得た(固形分29.5%)。この表面処理した五酸化アンチモン微粒子分散ゾルの表面電荷量を測定したところ9.8μeq/gであった。この表面処理した五酸化アンチモン微粒子ゾル84.4gと実施例1と同様にして調製したチタニア微粒子分散ゾ
ル14.3gと水酸基を有する親水性の樹脂:2−ヒドロキシ3−アクリロイロキシプロピルメタクレート(共栄社化学(株)製:ライトエステルG−201P)3gと疎水性の樹脂:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)27gに、光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)2.3gおよび溶媒イソプロパノ−ル9.1g、メチルイソブチルケトン10g、プロピレングリコールモノメチルエーテル50gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(A-3)を調製した。
透明被膜付基材(F-3)の調製
透明被膜形成用塗料(A-3)をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーA−80:厚さ10
0μm、屈折率1.65、基材透過率88.0%、Haze2.0%、反射率5.1%)にバ−コ−タ−で塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で60
0mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(F-3)を調製した。このときの膜厚は5μmであった。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、上部にチタニア微粒子が厚さ100nmの層をなしており、下部は五酸化アンチモン微粒子の存在が認められた。
反射防止透明被膜付基材(FA-3)の調製
ついで、透明被膜付基材(F-3)の上に、実施例1と同様にして調製した反射防止透明被膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(8
0W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射・帯電防止膜付基材(FA-3)を作製した。このときの反射防止膜の厚さは100nmであった。
【0095】
得られた反射防止透明被膜付基材(FA-3)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘーズ、波長550nmの光線の反射率、防眩性、密着性、鉛筆硬度を測定し結果を表1に示す。
[実施例4]
透明被膜形成用塗料(A-4)の調製
帯電防止高屈折率成分としてATO微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:ELCOM V−3
501、平均粒子径8nm、濃度20.5重量%、分散媒:エタノール、粒子屈折率1.75)を用いた。このゾル100gに正珪酸エチル7.11g(多摩化学(株)製 エチルシリケート28 SiO2成分28.8%)を混合し超純水を10g添加し50℃で15時間攪拌し表面処理したATO微粒子分散ゾルを得た(固形分19.3%)。この表面処理したATO微粒子分散ゾルの表面電荷量を測定したところ25.6μeq/gであった。
【0096】
この表面処理したATO微粒子分散ゾル14.3gと実施例2と同様にして調製したシリ
カ微粒子分散ゾル(固形分31.2%)100gと水酸基を有する親水性の樹脂2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株):ライトエステルHOP-A)3gと疎水性の樹
脂ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株):KAYARAD DPHA)27gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)2.3gおよび溶媒イソプロパノ−ル23.4g、エチレングリコールモノブチルエーテル20gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(A-4)を調製した。
透明被膜付基材(F-4)の調製
透明被膜形成用塗料(A-4)をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーA−80:厚さ10
0μm、屈折率1.65、基材透過率88.0% Haze2.0% 反射率5.1%)にバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で60
0mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(F-4)を調製した。このときの膜厚は3μmであった。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、上部にATO微粒子が厚さ100nmの層をなしており、下
部はシリカ微粒子の存在が認められた。
反射防止透明被膜付基材(FA-4)の調製
ついで、透明被膜付基材(F-4)の上に、実施例1と同様にして調製した反射防止透明被膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(
80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射・帯電防止膜付基材(FA-4)を作製した。このときの反射防止膜の厚さは100nmであった。
【0097】
得られた反射防止透明被膜付基材(FA-4)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘーズ、波長550nmの光線の反射率、防眩性、密着性、鉛筆硬度を測定し結果を表1に示す。
[実施例5]
透明被膜形成用塗料(A-5)の調製
凹凸形成成分としてシリカ粒子(触媒化成工業(株)製:シリカマイクロビードP−500、平均粒子径1.5μm、粒子屈折率1.46)を用いた。エチルアルコール79.5gの中に、このシリカ粒子20.5gを入れ、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.75g(信越化学(株)製:KBM−503、SiO2成分81.9%)を混合し超純水を10g添加し50℃で5時間攪拌して表面処理をしたシリカ粒子分散液を得た(固形分20.7%)。この表面処理したシリカ粒子分散液の表面電荷量を測定したところ9.0μeq/gであった。この表面処理したシリカ粒子分散液30gと実施例1と同様にして調製したチタニア微粒子分散ゾル7.7gとアミノ基を有する親水性の樹脂ジエチルアミノエチルメタクレート(共栄社化学(株):ライトエステルDE)2.7gと疎水性の樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−4A)24.3gに、光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)1.6gおよび溶剤としてイソプロパノ−ル13.2g、メチルイソブチルケトン2.7g、プロピレングリコールモノメチルエーテル10gとを充分に混合して透明被膜形成用塗料(A-5)を調製した。
透明被膜付基材(F-5)の調製
透明被膜形成用塗料(A-5)をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーA−80:厚さ10
0μm、屈折率1.65、基材透過率88.0% Haze2.0% 反射率5.1%)にバ−コ−タ−で塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で60
0mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(F-5)を調製した。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、上部にチタニア微粒子が厚さ100nmの層をなしており、下部はシリカ粒子の存在が認められた。
反射防止透明被膜付基材(FA-5)の調製
ついで、透明被膜付基材(F-5)の上に、実施例1と同様にして調製した反射防止透明被膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(
80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射・帯電防止膜付基材(FA-5)を作製した。このときの反射防止膜の厚さは100nmであった。
【0098】
得られた反射防止透明被膜付基材(FA-5)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘーズ、波長550nmの光線の反射率、防眩性、密着性、鉛筆硬度を測定し結果を表1に示す。
[比較例1]
透明被膜形成用塗料(R-1)の調製
実施例1と同様にして調製したチタニア微粒子分散ゾル14.3gと、疎水性の樹脂ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株):KAYARAD DPHA)57gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)2.3gおよび溶媒イソプロパノ−ル90g、メチルイソブチルケトン70gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(R-1)を調製した。
透明被膜付基材(RF-1)の調製
透明被膜形成用塗布液(R-1)をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーA−80:厚さ1
00μm、屈折率1.65、基材透過率88.0%、Haze2.0%、反射率5.1%)にバ−コ−タ−で塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(RF-1)を調製した。このときの透明被膜の膜厚は5μmであった。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、チタニア微粒子が膜全体に分散しており上部にも下部にもチタニア微粒子の存在と、凝集している部分が一部認められた。
反射防止透明被膜付基材(RFA-1)の調製
ついで、透明被膜付基材(RF-1)の上に、実施例1と同様にして調製した反射防止透明被
膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯
(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射・帯電防止膜付基材(RFA-1)を作製した。このときの反射防止膜の厚さは100nmであった。
【0099】
得られた反射防止透明被膜付基材(RFA-1)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘ−ズ、波長
550nmの光線の反射率、防眩性、密着性、鉛筆硬度を測定し結果を表1に示す。
[比較例2]
透明被膜形成用塗料(R-2)の調製
低屈折率粒子としてシリカ微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:OSCAL 1132平均
粒子径12nm、濃度30.5重量%、分散媒:メタノ−ル、粒子屈折率1.46)を用いた。このゾル100gに正珪酸エチル5.30g(多摩化学(株)製 エチルシリケート
28 SiO2成分28.8%)を混合し超純水を10g添加し50℃で5時間攪拌し表面処
理したシリカ微粒子分散ゾルを得た(固形分27.8%)。この表面処理したシリカ微粒子分散ゾルの表面電荷量を測定したところ32.0μeq/gであった。
【0100】
このシリカ微粒子ゾル84gと実施例1と同様にして調製したチタニア微粒子分散ゾル
14gと水酸基を有する親水性の樹脂2−ヒドロキシエチルメタクレート(共栄社化学(
株):ライトエステルHO)3gと疎水性の樹脂ジペンタエリスリトールヘキサアクリレー
ト(日本化薬(株):KAYARAD DPHA)27gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)2.3gおよび溶媒イソプロパノ−ル9.1g、メチルイソブチルケトン60gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(R-2)を調製した。
透明被膜付基材(RF-2)の調製
透明被膜形成用塗料(RA-2)をTACフィルム(厚さ80μm、屈折率1.49、基材透過率92.0%、Haze0.2%、反射率5.0%)にバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して
硬化させて透明被膜付基材(RF-2)を調製した。このときの膜厚は5μmであった。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、膜全体にシリカ微粒子とチタニア微粒子が分散しており上部にも下部にもシリカ微粒子と五酸化アンチモン微粒子が混合された状態での存在と、一部では凝集している部分が認められた。
反射防止透明被膜付基材(RFA-2)の調製
ついで、透明被膜付基材(RA-2)の上に、実施例1と同様にして調製した反射防止透明被
膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯
(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射・帯電防止膜付基材(RFA-2)を作製した。このときの反射防止膜の厚さは100nmであった。
【0101】
得られた反射防止透明被膜付基材(RFA-2)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘ−ズ、波長
550nmの光線の反射率、防眩性、密着性、鉛筆硬度を測定し結果を表1に示す。
[比較例3]
透明被膜形成用塗料(R-3)の調製
導電成分として、五酸化アンチモン微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:ELCOM V−
4560、平均粒子径20nm、濃度30.5重量%、分散媒:イソプロパノ−ル 粒子屈折率1.60)を用いた。この五酸化アンチモン微粒子分散ゾルの表面電荷量を測定したところ38.0μeq/gであった。
【0102】
この五酸化アンチモン微粒子ゾル84gと実施例1と同様にして調製したチタニア微粒
子分散ゾル14gと水酸基を有する親水性の樹脂2−ヒドロキシ3−アクリロイロキシプロピルメタクレート(共栄社化学(株)製:ライトエステルG−201P)3gと疎水性の樹脂ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株):KAYARAD DPHA)27gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)2.3gおよび溶媒イソプロパノ−ル9.1g、メチルイソブチルケトン60gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(R-3)を調製した。
透明被膜付基材(RF-3)の調製
透明被膜形成用塗料(R-3)をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーA−80:厚さ10
0μm、屈折率1.65、基材透過率88.0%、Haze2.0%、反射率5.1%)にバ−コ−タ−で塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で60
0mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(R-3)を調製した。このときの膜厚は5μmであった。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、膜全体にチタニア微粒子と五酸化アンチモン微粒子が分散しており上部にも下部にもチタニア微粒子と五酸化アンチモン微粒子が混合された状態での存在と、一部では凝集している部分が認められた。
反射防止透明被膜付基材(RFA-3)の調製
ついで、透明被膜付基材(RF-3)の上に、実施例1と同様にして調製した反射防止透明被
膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯
(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射・帯電防止膜付基材(RFA-3)を作製した。このときの反射防止膜の厚さは100nmであった。
【0103】
得られた反射防止透明被膜付基材(RFA-3)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘ−ズ、波長
550nmの光線の反射率、防眩性、密着性、鉛筆硬度を測定し結果を表1に示す。
[比較例4]
透明被膜形成用塗料(RA-4)の調製
凹凸形成成分としてシリカ粒子(触媒化成工業(株)製:シリカマイクロビードP−500、平均粒子径1.5μm、粒子屈折率1.46)を用いた。エチルアルコール79.5gの中に、このシリカ粒子20.5gを入れ、正珪酸エチル7.12g(多摩化学(株)製
エチルシリケート28 SiO2成分28.8%)を混合し超純水を10g添加し50℃で5時間攪拌し表面処理したシリカ微粒子分散ゾルを得た(固形分19.3%)。この表面処理したシリカ粒子分散液の表面電荷量を測定したところ20.0μeq/gであった。この表面処理したシリカ粒子分散液30gと実施例1と同様にして調製したチタニア微粒子
分散ゾル7.7gとアミノ基を有する親水性の樹脂ジエチルアミノエチルメタクレート(共栄社化学(株):ライトエステルDE)2.7gと疎水性の樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−4A)24.3gに、光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)1.6gおよび溶剤としてイソプロパノ−ル13.2g、メチルイソブチルケトン12.7gとを充分に混合して透明被膜形成用塗料(RA-4)を調製した。
透明被膜付基材(RFA-4)の調製
透明被膜形成用塗料(RA-4)をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーA−80:厚さ100μm、屈折率1.65、基材透過率88.0%、Haze2.0%、反射率5.1%)にバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(RF-4)を調製した。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、膜全体にシリカ微粒子とチタニア微粒子が分散しており上部にも下部にもシリカ微粒子と五酸化アンチモン微粒子が混合された状態での存在と、一部では凝集している部分が認められた。
反射防止透明被膜付基材(RFA-4)の調製
ついで、透明被膜付基材(RF-4)の上に、実施例1と同様にして調製した反射防止透明被
膜形成用塗料(B-1)をバーコーターで塗布し、70℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯
(80W/cm)で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射・帯電防止膜付基材(RFA-4)を作製した。このときの反射防止膜の厚さは100nmであった。
【0104】
得られた反射防止透明被膜付基材(RFA-4)の表面抵抗値、全光線透過率、ヘーズ、波長
550nmの光線の反射率、防眩性、密着性、鉛筆硬度を測定し結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係る透明被膜の断面の模式図を示す。
【図2】本発明に係る透明被膜の断面の模式図を示す。
【図3】本発明に係る透明被膜の断面の模式図を示す。
【図4】本発明に係る透明被膜の断面の模式図を示す。
【図5】本発明に係る透明被膜の断面の模式図を示す。
【図6】本発明に係る透明被膜の断面の模式図を示す。
【図7】本発明に係る透明被膜の断面の模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)表面電荷量(QA-1)が20〜100μeq/gの範囲にあり、かつ有機ケイ素化合物で表面処理されてなる金属酸化物微粒子(A-1)と、
(ii)親水性マトリックス形成成分と疎水性マトリックス形成成分と、
(iii)極性溶媒とからなる透明被膜形成用塗料であって
金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)が1.60〜2.60の範囲にあり、
該粒子(A-1)の固形分としての濃度(CPA-1)が0.1〜20重量%の範囲にあり、
マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CM)が1〜50重量%の範囲にあり、
親水性マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMB-1)と疎水性マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMB-2)との濃度比(CMB-1)/(CMB-2)が0.005〜1の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗料。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物が下記式(1)で表される有機珪素化合物であることを特徴とする
請求項1に記載の透明被膜形成用塗料。
aSiX4-a (1)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。aは0か1の整数)
【請求項3】
前記親水性マトリックス形成成分(B-1)が下記式(2)で表される有機珪素化合物またはこれらの加水分解物、加水分解重縮合物または水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基から選ばれる1種以上の親水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜形成用塗料。
aSiX4-a (2)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。aは0か1の整数)
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子(A-1)の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあることを特徴と
する請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項5】
前記疎水性マトリックス形成成分(B-2)が下記式(3)で表される有機珪素化合物またはこれらの加水分解物、加水分解重縮合物またはビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基から選ばれる1種以上の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
n-SiX4-n (3)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数。ただし、式(2)のaが1の場合、nは2〜3となる)
【請求項6】
さらに、表面電荷量(QA-2)が5〜80μeq/gの範囲にあり、かつ有機ケイ素化
合物で表面処理されてなる金属酸化物微粒子(A-2)を含んでなり、金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-2)が(nA-1)よりも低く、表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の表面電
荷量(QA-2)と表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の表面電荷量(QA-1)との差
(QA-1)−(QA-2)が10〜95μeq/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項7】
前記金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)と前記表面処理された金属酸化物微粒子(A
-2)の屈折率(nA-2)との屈折率差(nA-1)−(nA-2)が0.1〜1.4の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項8】
前記金属酸化物微粒子(A-2)が下記式(4)で表される有機珪素化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
n-SiX4-n (4)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数。ただし、式(1)のaが1の場合、nは2〜3となる))
【請求項9】
前記金属酸化物微粒子(A-2)の固形分としての濃度(CPA-2)が0.1〜20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項10】
前記金属酸化物微粒子(A-2)の平均粒子径が5nm〜5μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項11】
基材上に透明被膜が形成された透明被膜付基材であって、透明被膜が表面電荷量(QA-1)が20〜100μeq/gの範囲にあり、有機ケイ素化合物で表面処理されてなる金
属酸化物微粒子(A-1)と、親水性マトリックス成分と疎水性マトリックス成分とからな
り、金属酸化物微粒子(A-1)が透明被膜の上部に層をなして偏在し、透明被膜中の金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)が1.60〜2.60の範囲にあり、該粒子の含有量
(WPA-1)が0.2〜90重量%の範囲にあり、マトリックス成分の含有量(WM)が1
0〜99.8重量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項12】
前記マトリックス成分は、親水性マトリックス成分の固形分としての含有量(WMB-1)と疎水性マトリックス成分の固形分としての含有量(WMB-2)との含有量の比(WMB-1)/(WMB-2)が0.005〜1の範囲にあることを特徴とする請求項11に記載の透明被膜付基材。
【請求項13】
さらに表面電荷量(QA-2)が5〜80μeq/gの範囲にある表面処理された金属酸
化物微粒子(A-2)を含んでなり、表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の屈折率(nA-2)が表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)よりも低く、表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)が基材表面上に層をなして偏在しているか、前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)からなる層と基材表面の間に分散してなることを特徴とする請求項11または12に記載の透明被膜付基材。
【請求項14】
前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-1)の屈折率(nA-1)と前記表面処理された金
属酸化物微粒子(A-2)の屈折率(nA-2)との屈折率差(nA-1)−(nA-2)が0.1〜1.4
の範囲にあることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項15】
前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の含有量が5〜70重量%の範囲にあることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項16】
前記金属酸化物微粒子(A-1)の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、前記表面処理された金属酸化物微粒子(A-2)の平均粒子径が5nm〜5μmの範囲にあることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項17】
前記透明被膜の表面が凹凸を有し、透明被膜の平均膜厚が1〜10μmの範囲にあり、透明被膜の凸部の平均高さ(T凸)と凹部の平均高さ(T凹)との差(T凸)−(T凹)が30〜1500nmの範囲にあることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載
の透明被膜付基材。
【請求項18】
前記透明被膜上に反射防止用低屈折率透明被膜が設けられていることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の透明被膜付基材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−291175(P2008−291175A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140339(P2007−140339)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】