説明

透明電極つき基板

【課題】 透明電極つき基板において、そのパターン形成後も光学特性に変化が少なく、視認性が大幅に改善されたものを提供する。
【解決手段】 透明基板上に屈折率の異なる層が少なくとも3層積層されており、さらにその上に透明導電性薄膜が形成されている透明電極つき基板において、上記屈折率の異なる層は、550nmの波長での屈折率が1.35〜1.55である低屈折率化合物と、550nmの波長での屈折率が2.00〜2.35である高屈折率化合物からなり、且つ透明導電性薄膜は高屈折率層上に形成されており、透明導電性薄膜の屈折率(n1)とその直下の高屈折率層の屈折率(n2)の比n1/n2が0.75〜1.05の範囲であることを特徴とする透明電極つき基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にタッチパネルやフラットパネルディスプレイ(FPD)において、透明電極のパターニング後にもそのパターンが見えにくくすることが可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルやフラットパネルディスプレイに用いられる透明電極つき基板は、近年複雑なパターニングが施されるようになっている。これは、例えばタッチパネルであれば、抵抗膜方式、静電容量方式ともに多点検知方式とするために細かいパターニングが必要であり、フラットパネルディスプレイにおいては、より高解像度を実現するために細かいパターニングを必要とする。一方で、これらのパターニングは多くの場合、透明電極層をエッチングにより除去する。この場合、デバイスとして使用された時の重要な要素として「視認性」が考慮される。視認性とは、パターニングされた面(透明電極層が除去された面)とパターニングされていない面(透明電極層が除去されていない面)が目視で区別可能かどうかを示している。
【0003】
特許文献1には、高屈折率層と低屈折率層を交互に形成することで、光の干渉を利用して透過率を向上させる技術が記載されている。このような構造の透明電極つき基板は、その最表面にある透明導電層もその干渉による透過率向上のための成分とする。これは、通常透明導電層の膜厚が15nm以上であり、特に可視光領域の光は影響を受けるためである。このため、透明導電層をエッチングにより除去し、透明電極つき基板をパターニングすると、透明導電層が形成された部位と除去された部位で光学特性が異なり、そのパターン形状が見えてしまう。
【0004】
このような非視認性を改善するため、特許文献2にはパターニングした透明電極つき基板上に低屈折率オーバーコート層を被覆する技術が記載されている。しかし、このオーバーコート層は絶縁体であるため、この上にデバイス構造を設けて電気デバイスとして機能させたり、例えば抵抗膜式タッチパネルのように接触抵抗を活用するようなデバイスを設けたりすることができなくなるなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−98169号公報
【特許文献2】特許第4055019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、高屈折率層と低屈折率層を交互に組み合わせた透明電極つき基板において、さらに透明導電性薄膜の直下にある高屈折率層の屈折率を制御することで、パターンの非視認性を改善することが可能であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
1)透明基板上に屈折率の異なる層が少なくとも3層積層されており、さらにその上に透明導電性薄膜が形成されている透明電極つき基板において、上記屈折率の異なる層は、550nmの波長での屈折率が1.35〜1.55である低屈折率化合物と、550nmの波長での屈折率が2.00〜2.35である高屈折率化合物からなり、且つ透明導電性薄膜は高屈折率層に接して形成されており、透明導電性薄膜の屈折率(n1)とその直下の高屈折率層の屈折率(n2)の比n1/n2が0.75〜1.05の範囲であることを特徴とする透明電極つき基板。
2)上記1に記載の低屈折率層が酸化珪素を主成分とする化合物からなり、前記高屈折率層がニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなることを特徴とする、上記1に記載の透明電極つき基板
3)透明導電性薄膜が形成されている面と、該層がウェットまたは/及びドライプロセスによりエッチングされ、透明導電性薄膜が除去された面とに入射した550nmの波長の光の反射率の差が2%以下であることを特徴とする、上記1〜2に記載の透明電極つき基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、高い光線透過率を維持したまま、透明導電性薄膜のパターニング形状の非視認性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明に係る透明電極つき基板の断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は「透明基板上に屈折率の異なる層が少なくとも3層積層されており、さらにその上に透明導電性薄膜が形成されている透明電極つき基板において、上記屈折率の異なる層は、550nmの波長での屈折率が1.35〜1.55である低屈折率化合物と、550nmの波長での屈折率が2.00〜2.35である高屈折率化合物からなり、且つ透明導電性薄膜は高屈折率層上に形成されており、透明導電性薄膜の屈折率(n1)とその直下の高屈折率層の屈折率(n2)の比n1/n2が0.75〜1.05の範囲であることを特徴とする透明電極つき基板。」に関するものである。
【0011】
特許文献1に記載の透明電極つき基板は、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層したいわゆる光学設計が施された構造であるが、透明導電性薄膜の直下には酸化珪素などの低屈折率層が設けられている。これは、透明導電性薄膜も高屈折率層として設計されているためであり、その直下に高屈折率層が存在すると光の干渉効果が弱くなり、透過率が高くならないためである。このような設計の場合には、透明導電性薄膜をエッチングにより除去した場合には、除去された部位の表面は低屈折率層が現れており、空気との屈折率差を見ると高屈折率層/空気、低屈折率層/空気で異なるため光学特性が異なり、結果としてパターン形状が目に見えることとなる。
【0012】
本発明では、透明導電性薄膜の直下にさらに高屈折率層を設けることで非視認性を改善すると同時にその屈折率を制御することで透過率の低下を抑制するものである。
【0013】
以下、本発明に係る透明電極付き基板の代表的な態様を説明する。図1は本発明に係る透明電極つき基板の断面概略図である。透明基材1上に高屈折率層2と低屈折率層3が交互に積層された光学設計層が設けられている、さらに高屈折率層4が設けられ、その上に透明導電性薄膜5が形成されている。
【0014】
本発明における透明基材1は用途によって使い分けられるものであり、特に限定されない。透明電極の基材として使用する場合には、硬質または軟質材料は特に限定されない。例えば、前記透明基材用の硬質材料としては、ガラス、サファイヤなどの酸化物を用いることができる。ガラスの具体例としては、アルカリガラスやホウ珪酸ガラス、無アルカリガラスなどがあげられる。
【0015】
ガラスあるいはサファイヤを用いる場合の基板の厚みは、使用目的により任意に選択することができるが、取り扱いと重量のバランスを加味して、0.5mm〜4.5mmが好ましい範囲として例示できる。ガラス等の基板が薄すぎると強度が不足するために、衝撃により割れやすい傾向がある。また厚すぎると重量が重くなることと、機器の厚みに影響を及ぼすことから、ポータブル機器への利用は困難となる上、透明性とコストの面からも好ましくない。
【0016】
一方、前記基材用の軟質材料としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂があげられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂やポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマーなどが、熱硬化製性樹脂としては、例えば、ポリウレタンがあげられる。中でも、特に優れた光学等方性と水蒸気遮断性に優れているシクロオレフィンポリマー(COP)を主成分とする基材が好ましい。COPとしては、ノルボルネンの重合体やノルボルネンとオレフィンとの共重合体、シクロペンタジエンなどの不飽和脂環式炭化水素の重合体などが挙げられる。水蒸気遮断性の観点から、構成分子の主鎖および側鎖には大きな極性を示す官能基、例えばカルボニル基やヒドロキシル基を含まないことが好ましい。その他耐熱性に優れるという観点から、前記軟質材料として、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエーテルスルホン(PES)なども使用できる。これらは適宜単独若しくは組み合わせて使用できる。
【0017】
これら軟質材料を用いた基材の厚みとしては、使用目的により任意に選択することができるが、好ましくは0.03mm〜3.0mm程度をあげることができる。前記基板の厚みが薄いとハンドリングが困難であることと、強度が不足する点が課題となる。また逆に厚みが厚いと透明性とコストに課題があり、機器の厚みも増すことから、ポータブル機器には使用が困難となる傾向がある。
【0018】
これらの軟質材料には、強度の観点からハードコートやアンダーコートなどのコーティング処理を施すことができる。コーティング処理の材料としては、熱硬化型や放射線硬化型樹脂などを任意に選択することができ、例えばポリウレタンやポリアクリル樹脂などが選択される。さらに防眩効果やアンチニュートンリング効果を目的として、コーティング樹脂中にフィラーを添加することができる。フィラーの種類はコーティング樹脂と同種のものやその高分子量状化合物などを選択することができ、さらにシリカ微粒子などの無機化合物も使用することができる。
【0019】
高屈折率層2は、550nmの波長での屈折率が1.85〜2.60である材料によって形成される。このような材料は、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、亜鉛から少なくとも1種の金属を含む酸化物や薄膜状のシリコンカーバイドやダイヤモンドライクカーボンから選択される。これらの膜を気相堆積によって製膜することで高屈折率層2を形成することができる。ゾルゲル材料を用いたウェットプロセスによっても形成することは可能であるが、膜厚の制御や廃液の観点から気相堆積が好ましい。気相堆積では、化学気相堆積(CVD)や物理気相堆積(PVD)があり、任意の方法を選択できるが、特にフィルム基板上に製膜する場合には、基板−電極間距離の制御などの観点からPVD法が向いている。PVD法の中でも、大面積の形成ではスパッタリング法が適している。スパッタリング法では、基板の温度は0度からフィルムのガラス転移温度まで任意に選択することができる。低温であれば製膜処理が速く生産性の向上が見込まれる。高温で製膜することで、高屈折率層の付着性が向上することが見込まれる。高屈折率層2の膜厚は6〜30nmの範囲で任意に設計することができ、黄色度を低くし見た目のきれいさを向上するという観点からは8〜22nm、さらには10〜20nmが好ましく設計される。これらの膜厚は断面TEMにより容易に確認することができ、また分光エリプソメトリーなどからも評価することが可能である。
【0020】
低屈折率層3は、550nmの波長での屈折率が1.30〜1.60である材料によって形成される。この範囲の屈折率の材料としてはリチウムフルオライドやマグネシウムフルオライドや酸化珪素が挙げられるが、強度の観点から酸化珪素が特に好ましく使用される。これらの膜を気相堆積によって製膜することで低屈折率層3を形成することができる。ゾルゲル材料を用いたウェットプロセスによっても形成することは可能であるが、膜厚の制御や廃液の観点から気相堆積が好ましい。気相堆積では、化学気相堆積(CVD)や物理気相堆積(PVD)があり、任意の方法を選択できるが、特にフィルム基板上に製膜する場合には、基板−電極間距離の制御などの観点からPVD法が向いている。PVD法の中でも、大面積の形成ではスパッタリング法が適している。スパッタリング法では、基板の温度は0度からフィルムのガラス転移温度まで任意に選択することができる。低温であれば製膜処理が速く生産性の向上が見込まれる。高温で製膜することで、高屈折率層の付着性が向上することが見込まれる。低屈折率層3の膜厚は25〜80nmの範囲で任意に設計することができ、黄色度を低くし見た目のきれいさを向上するという観点からは45〜70nm、さらには50〜65nmが好ましく設計される。これらの膜厚は断面TEMにより容易に確認することができ、また分光エリプソメトリーなどからも評価することが可能である。
【0021】
高屈折率層4の直下には低屈折率層3が設けられることが光学的な観点から好ましい。
【0022】
高屈折率層4は、550nmの波長での屈折率が1.90〜2.60である材料によって形成される。さらにこの層の上に形成される透明導電性薄膜の屈折率との相関も考慮する必要がある。具体的には透明導電性薄膜の屈折率をn1、高屈折率層4の屈折率をn2とした時にn1/n2が0.75〜1.05の範囲であることが重要である。この比をこの範囲内とすることで、透明導電性薄膜をエッチング除去した後でもそのパターンを見えにくくすることが可能となる。このようにパターンを見えにくくすることが、すなわち非視認性の向上となる。このような材料は、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、亜鉛から少なくとも1種の金属を含む酸化物や薄膜状のシリコンカーバイドやダイヤモンドライクカーボンから選択される。これらの膜を気相堆積によって製膜することで高屈折率層4を形成することができる。ゾルゲル材料を用いたウェットプロセスによっても形成することは可能であるが、膜厚の制御や廃液の観点から気相堆積が好ましい。気相堆積では、化学気相堆積(CVD)や物理気相堆積(PVD)があり、任意の方法を選択できるが、特にフィルム基板上に製膜する場合には、基板−電極間距離の制御などの観点からPVD法が向いている。PVD法の中でも、大面積の形成ではスパッタリング法が適している。スパッタリング法では、基板の温度は0度からフィルムのガラス転移温度まで任意に選択することができる。低温であれば製膜処理が速く生産性の向上が見込まれる。高温で製膜することで、高屈折率層の付着性が向上することが見込まれる。高屈折率層4の膜厚は6〜30nmの範囲で任意に設計することができ、黄色度を低くし見た目のきれいさを向上するという観点からは8〜26nm、さらには10〜24nmが好ましく設計される。これらの膜厚は断面TEMにより容易に確認することができ、また分光エリプソメトリーなどからも評価することが可能である。
【0023】
透明導電性薄膜5には公知の透明電極材料を用いることができる。例えば、酸化インジウムや酸化錫・酸化亜鉛およびその複合酸化物、アルミニウムやボロン、ガリウムや珪素をドーピングした酸化亜鉛などが挙げられる。
【0024】
透明導電性酸化物層4の製膜方法は、マグネトロンスパッタリング法により容易に製膜が可能である。マグネトロンスパッタリングに用いるターゲットは、透明導電性酸化物層4と同組成の材料を用いる。このターゲットをアルゴンガスなどのキャリアガスをイオン化し、ターゲットをスパッタすることで製膜する。キャリアガスにはアルゴンガスの他にも窒素などの不活性ガスを使用することができる。
【0025】
スパッタリングに用いる電源は直流(DC)電源や低周波(AC)電源の他に高周波電源を用いることができる。高周波電源にはRFやVHFなどの周波数があるが、どの周波数においても本発明の透明導電性酸化物層を好適に製膜することができる。製膜時のパワー密度は1.5〜15.0W/cmが好ましく、さらには3.5〜12.0W/cm、その中でも特に7.0〜12.0W/cmが好ましい。
【0026】
透明導電性酸化物層4の膜厚は光学計算により設計されるが、10〜30nm、さらには12〜25nmが、より好ましくは15〜25nmが好ましい。
【0027】
このようにして作製された透明電極つき基板のシート抵抗は10〜800Ω/□の範囲で任意に選択することができる。
【0028】
本発明の透明電極つき基板は、エッチングにより透明導電性薄膜を除去したときの見た目に特徴がある。エッチング方法にはウェットプロセス・ドライプロセスがあり、どのような方法でも任意に選択することができるが、透明導電性薄膜のみを除去しなければならない。この点ではウェットプロセスが適している。ウェットプロセスはフォトリソグラフィに代表されるプロセスが適用される。ここで使用されるフォトレジスト・現像液・エッチング液・リンス剤は透明電極付き基板が侵されることなく、所定のパターンを形成するために透明導電性薄膜が除去されるものであれば任意に選択して用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1〜5、比較例1)
透明基板1には、フィラーを含むポリアクリル樹脂のコーティング処理、即ち、ハードコート処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。
【0031】
高屈折率層2・4、低屈折率層3、透明導電性薄膜5はマグネトロンスパッタリングにより製膜した。高屈折率層2には酸化ニオブ(V)を16nm製膜した。製膜条件は、ターゲットに金属ニオブを用いて、アルゴン/酸素を200/125sccmとして、0.5Paの圧力で製膜した。基板の温度は30℃とした。スパッタリングにはDC電源を用いて、4W/cmのパワー密度で製膜した。低屈折率層3は酸化珪素を60nm製膜した。製膜条件はシリコンをターゲットとして、アルゴン/酸素を200/125sccmとして、0.5Paの圧力で製膜した。基板の温度は30℃とした。スパッタリングにはDC電源を用いて、4W/cmのパワー密度で製膜した。高屈折率層4には酸化ニオブ(V)(屈折率2.25)(実施例1)、酸化ジルコニウム(II)(屈折率2.35)(実施例2)、酸化ハフニウム(IV)(屈折率2.10)(実施例3)、酸化チタン(IV)(屈折率2.40)(実施例4)、酸化亜鉛(II)(屈折率1.95)(実施例5)酸化アルミニウム(屈折率1.70)(比較例2)を12nm製膜した。製膜条件は金属ニオブ(実施例1)、金属ジルコニウム(実施例2)、金属ハフニウム(実施例3)、金属チタン(実施例4)、金属亜鉛(実施例5)、金属アルミニウム(比較例2)をターゲットとし、アルゴン/酸素を200/125sccmとして、0.5Paの圧力で製膜した。基板の温度は30℃とした。スパッタリングにはDC電源を用いて、4W/cmのパワー密度で製膜した。比較例1では高屈折率層1を製膜しなかった。透明導電性薄膜5には10重量%の酸化錫(IV)を含有する酸化インジウム(III)(ITO、屈折率2.00)を20nm製膜した。製膜条件は、ターゲットに同組成のITOを用いて、アルゴン/酸素を200/10sccmとして、0.5Paの圧力で製膜した。基板の温度は30℃とした。スパッタリングにはDC電源を用いて、4W/cmのパワー密度で製膜した。
【0032】
このようにして作成した実施例、比較例のサンプルにつき、製膜面に光を入射して、透明導電性薄膜5の製膜前の反射率と製膜後の反射率(%)の絶対値の差をとって評価した。この反射率の測定には、分光光度計U−4000(日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0033】
このようにした測定した550nmの波長の光の反射率(%)の製膜前後での差は、0.8(実施例1)、1.0(実施例2)、1.5(実施例3)、0.7(実施例4)、1.7(実施例5)、2.8(比較例1)、2.4(比較例2)となった。また、製膜前の反射率、後述するパターニングで透明導電性薄膜5を除去した後の反射率と同一であった。
【0034】
パターニングは透明導電性薄膜5を形成後の透明電極付き基板をフォトリソグラフィにより形成した。まず透明電極付き基板にフォトレジスト(製品名TSMR−8900(東京応化工業製))をスピンコートにより2ミクロン程度の膜厚に塗布した。これを90℃のオーブンでプリベークした後、フォトマスクを当てて、40mJの紫外光を照射した。その後110℃でポストベークした後、現像液(製品名NMD−W(東京応化工業製))を用いてフォトレジストをパターニングした。さらに、エッチング液(製品名:ITO02(関東化学製))を用いて透明導電性薄膜をエッチングすることでパターニングした。最後にリンス液(製品名104(東京応化工業製))を用いて残ったフォトレジストを除去した。非視認性はこのようにして作製されたパターンが見えるかどうかを目視により判定した。
【0035】
非視認性の評価をしたところ、実施例1〜5ではパターンが見えなかったが、比較例1〜2ではパターンが見えた。
【0036】
以上から、透明導電性薄膜の直下にある層の屈折率を制御することで、パターニング後の非視認性を改善可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0037】
1 透明基板
2 高屈折率層
3 低屈折率層
4 高屈折率層
5 透明導電性薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に屈折率の異なる層が少なくとも3層積層されており、さらにその上に透明導電性薄膜が形成されている透明電極つき基板において、上記屈折率の異なる層は、550nmの波長での屈折率が1.35〜1.55である低屈折率化合物と、550nmの波長での屈折率が2.00〜2.35である高屈折率化合物からなり、且つ透明導電性薄膜は高屈折率層に接して形成されており、透明導電性薄膜の屈折率(n1)とその直下の高屈折率層の屈折率(n2)の比n1/n2が0.75〜1.05の範囲であることを特徴とする透明電極つき基板。
【請求項2】
前記低屈折率層が酸化珪素を主成分とする化合物からなり、前記高屈折率層がニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなることを特徴とする、請求項1に記載の透明電極つき基板
【請求項3】
透明導電性薄膜が形成されている面と、該層がウェットまたは/及びドライプロセスによりエッチングされ、透明導電性薄膜が除去された面とに入射した550nmの波長の光の反射率の差が2%以下であることを特徴とする、請求項1〜2に記載の透明電極つき基板。


【図1】
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【公開番号】特開2012−22460(P2012−22460A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159027(P2010−159027)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】