説明

透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムおよびその製造方法

延伸処理が施されており、かつ50パーセント伸張時の永久伸びが約10パーセント以下である、透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムが提供される。透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法が開示されている。繊維織物に積層されたポリエステル系エラストマーフィルムを含んでなる透湿性の耐水性織物がさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムおよびその製造方法に関し、特に、優れた機械的性質、不粘着特性、および透湿性を有する延伸処理が施されたポリエステル系エラストマーフィルムおよびその製造方法に関する。また具体的には、衣服材料、家の内装材、屋根の下張り材、医療用材料(healthcare material)、農業用材料などで使用できる非多孔質の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服材料、家の内装材、医療用材料、および農業用材料として、耐水性および透湿性のある材料が求められてきた。そのような材料は、汗または結露によるべとつきやむしむしした感じを抑え、同時に雨水などの液体の水が外部から浸透するのを最小限に抑えることにより、快適さを改善するであろう。
【0003】
ポリウレタン樹脂、ポリアミノ酸樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの親水性樹脂を繊維織物に塗布する場合に、例えば、(特許文献1)に開示されているように、透湿性を付与する処理が使用されてきた。しかし、この種の手法は、洗濯に対する耐性に問題があり、長期間使用すると透湿性が低下した。
【0004】
また、フッ素樹脂の多孔質フィルムおよび微孔質ポリウレタン系樹脂タイプのフィルムは、衣料材料および工業材料における高透湿性材料として使用されている。これらの多孔質フィルムは、延伸またはレーザー処理によって空隙を生じさせる必要がある。例えば、(特許文献2)は、主にフッ素樹脂からなっている多孔質フィルムを提案しており、(特許文献3)は、ゴム弾性を有するポリマー(ポリウレタンなど)からなる微孔質のフィルムを提案している。しかし、こうした手順で実質的に製造される多孔質製造物は、透湿速度(moisture transmission rate)を増大させようとするときに、孔の生成にかかる製造コストが高くつくだけでなく、そのような孔の生成を制御するのが困難である。また透湿速度を増大させようとすると、外部からの液体の水の浸透を防ぐ能力に悪影響を与え、その結果耐水性が低下する。加えて、これらの樹脂は燃焼時に有毒ガスを発生するという欠陥を持っていた。これは環境上好ましくない問題である。
【0005】
高透湿性の非多孔質フィルムの例として、未延伸ポリエステル系エラストマーフィルムがある。例えば、(特許文献4)は、ポリウレタン樹脂層をエラストマー層に積層して得られるフィルムであって、これらの材料を離型支持体上に塗布して積層が行われるフィルムを提案している。しかし、この手法の場合、織物などへの積層の前または後に離型支持体を剥がす必要があるという問題があった。さらに、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、および(特許文献8)は、ポリエステル系エラストマー樹脂を繊維織物に直接溶融押出しして製造される透湿性の耐水性織物を提案している。しかし、ゴム弾性があるため、そのような未延伸フィルムは機械処理時の問題があった。ミシンの針で穴を開けるときに、針がフィルムにくっついてしまう傾向があること、あるいはさらにそのような織物の衣服を着ようとするとき、着用者が衣料品で身動きできなくなることがあるといった問題である。
【0006】
(特許文献9)は、1〜30重量パーセントのポリテトラメチレンオキシドグリコールを含有したポリエステルフィルムを提案しており、(特許文献10)および(特許文献11)は、5〜30重量パーセントのポリテトラメチレンオキシドグリコールを含有させて得られるポリエステルフィルムを提案している。しかし、これらのフィルムは十分な透湿性を示さなかった。
【0007】
(特許文献12)は、20重量パーセント以下の含有エチレンオキシド単位を含んでなる疎水性層および25〜68重量パーセントの含有エチレンオキシド単位を含んでなる親水性層を含む、特定の透湿度を有するフィルムを提案している。しかし、このフィルムは残留ひずみが非常に大きいので、フィルム弾性回復が不十分である。したがって、このフィルムを繊維織物に積層して衣服材料として使用した場合、繰り返し強く引っ張るような動作(肘の付近での頻繁な屈曲を含む)を行った後に元の形状に戻らず、伸びた状態のままになり、フィルムにたるみまたはしわが生じ、最終的には繊維織物から剥離してしまう。さらに、フィルムは未延伸なので、絶対機械的性質が十分ではなく、その結果、織物と組み合わせると、例えば、耐静水圧性(hydrostatic pressure resistance)および耐洗濯性(laundering resistance)の問題があった。
【0008】
(特許文献13)は、特定の炭素/酸素原子比を有するソフトセグメントが50〜80パーセント含有されているポリエステル樹脂組成物を提案している。しかし、この樹脂組成物は非常に粘着性があるため、フィルムの粘着傾向が高くなるなど、取り扱いやすさ(operability)がかなり低下するという問題が生じた。この文献の実施例に記載されているように、未伸張のフィルムは絶対機械的性質が十分ではないため、織物と組み合わせたときに、耐静水圧性(resistance to hydrostatic pressure)および耐洗濯性の点で問題があった。その同じ文献は樹脂を延伸して得られるフィルムについて記載しているが、それらの場合、延伸するのにテンター延伸機を用いたとき、延伸操作が極めて困難であり、生産性が悪く、非常に低い延伸比しか可能ではないという点で問題があった。そのように低い延伸比で得られたフィルムは、未延伸フィルムもそうであるが、欠陥があり、どちらも大きな永久伸びおよび/または不十分な機械的性質といった問題があった。
【0009】
したがって、未延伸ポリエステル系エラストマーフィルムに関係した上記の問題を解決するために、この種の未伸張のフィルムを延伸することは考えられることである。しかし、ポリエステル系エラストマーは、極めて強い弾性回復を示し、そのため一軸延伸または二軸延伸されるフィルムを製造するのが非常に困難であり、それゆえにそのような延伸フィルムを製造することは今まで試みられたことがなかった。すなわち、延伸のむらが最も少なく、かつかき傷がないかまたは(エラストマーのガラス転移温度が低いことによる)延伸ロールへの粘着がない延伸フィルムをロール延伸によって製造する上で技術的な問題があった。これらの問題は、例えば、(特許文献14)に記載されているような、最初にポリエステル系エラストマーを別のポリエステル層に積層し、次いで延伸するという方法を採用することによって回避されてきた。したがって、ポリエステル系エラストマー層自体から延伸フィルムを製造することは困難であった。
【0010】
【特許文献1】特開昭58−144178号公報
【特許文献2】特開昭63−21647号公報
【特許文献3】特開平4−300823号公報
【特許文献4】特開平10−258484号公報
【特許文献5】特開平11−48417号公報
【特許文献6】特開平11−170461号公報
【特許文献7】特開2002−337294号公報
【特許文献8】特開2003−49492号公報
【特許文献9】特開平11−166045号公報
【特許文献10】特開2001−158071号公報
【特許文献11】特開2001−172409号公報
【特許文献12】特開平2−20425号公報
【特許文献13】日本国特許第3083136号公報
【特許文献14】特開2002−219774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、優れた透湿性、機械的性質(残留ひずみ、耐穿孔性(piercing resistance)など)、小さい永久伸び、および製造時における優れた取扱性能(handling capability)を有する透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
エステル結合で頭−尾結合された複数個の繰り返されている長鎖エステル単位(I)と短鎖エステル単位(II)とを有する少なくとも1種のコポリエーテルエステル(copolyetherester)エラストマーを含む透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムであって、前記フィルムは延伸処理が施されておりかつ50パーセント伸張時の永久伸びが約10パーセント以下である透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムが本明細書に開示されており、特許請求の範囲に記載されている。
【0013】
本発明のフィルムは、有機粒子および/または無機粒子および/または少なくとも1種の脂肪酸アミドをさらに含むことができる。さらに、透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法ならびに繊維織物を積層したポリエステル系エラストマーフィルムを含む透湿性の耐水性織物も開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を詳しく説明する。使用するポリエステル系エラストマーはポリエステルブロックコポリマーを含み、前記コポリマーは、エステル結合で頭−尾結合された複数個の繰り返されている長鎖エステル単位(I)(式(i)で表される)と短鎖エステル単位(II)(式(ii)で表される)とを有する1種以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含んでおり、前記フィルムは延伸処理が施されており、長鎖エステル単位(I)はソフトセグメントを構成し、短鎖エステル単位(II)はハードセグメントを構成する。
【0015】
【化1】

【0016】
式(i)および(ii)において:
Gは、平均分子量が約400〜約4000であるポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残る二価の基であり、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールによって前記1種または複数種のコポリエーテルエステルに含有されているエチレンオキシド基の量はコポリエーテルエステルの全重量を基準にして約20〜約68重量パーセント、好ましくは約25〜約68重量パーセントであり;
Rは、分子量が約300未満であるジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残る二価の基であり;
Dは、分子量が約250未満のジオールからヒドロキシル基を除去した後に残る二価の基であり;
前記コポリエーテルエステルは約25〜約80重量パーセントの短鎖エステル単位を含む。
【0017】
好ましくは、ポリエステル系エラストマーは、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル誘導体と少なくとも1種の脂肪族ジオールとから生成されることが好ましい。
【0018】
好ましい芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどがある。芳香族ジカルボン酸成分の一部は、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、マレイン酸無水物、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸で、または4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのヒドロキシカルボン酸で置換されていてもよい。
【0019】
好ましい脂肪族ジオールとしては、脂肪族ジオール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなど)、脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)などがある。脂肪族ジオールの一部は、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールで置換されていてもよい。
【0020】
ハードセグメントは、上記のジカルボキシル成分とジオール成分とから得られるポリエステルであるか、またはそれらのジカルボキシル成分およびジオール成分の2種以上の組合せから共重合されたポリエステルであってよい。
【0021】
短鎖エステル単位(II)の含量は、コポリエーテルエステルの重量の約25〜約80重量パーセント、好ましくは約40〜約60重量パーセントである。短鎖エステル単位(II)が約25重量パーセント未満のレベルであると、実質的に晶析速度が遅くなり、コポリエーテルエステルは粘着性がありすぎて容易に取り扱うことができなくなる。約80重量パーセントを超えるレベルになると、コポリエステルは硬くなりすぎて好適に使用できなくなることがある。
【0022】
特に、非晶質成分のソフトセグメントと共重合させる場合、得られる樹脂の結晶性の保持率を最適化するために、ハードセグメントは、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルおよび1,4−ブタンジオールから形成されるポリ(ブチレンテレフタレート)であることが好ましい。
【0023】
長鎖エステル単位(I)は、分子量が300未満であるジカルボン酸成分(R)および数平均分子量が400〜4000であるポリ(アルキレンオキシド)グリコール(G)を含むことが好ましい。
【0024】
短鎖エステル単位(II)に用いるのに好適なジカルボン酸は、ジカルボン酸成分(R)に使用してもよい。
【0025】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分(G)としては、脂肪族ポリエーテル単位、具体的には、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、エチレンオキシド/テトラメチレンオキシドコポリマーなどがある。特に、フィルム透湿性を付与するには、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールなど、炭素/酸素原子比が4以下の脂肪族ポリエーテル成分を有することが好ましい。さらに、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、脂肪族ポリエステル成分が付加されていてもよい。脂肪族ポリエステル成分としては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(エナトラクトン)(poly(enantholactone))、ポリ(エチレンアジペート)などを挙げることができる。
【0026】
成分Gは、成分Gの全重量を基準にして、0〜100重量パーセント、好ましくは約10〜100重量パーセント、より好ましくは約10〜約80重量パーセント、さらにより好ましくは約20〜約80重量パーセントのポリ(エチレンオキシド)単位を含むことができる。
【0027】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、グリコール成分の少なくとも70重量パーセントが、好ましくは2.0:1〜0.4:1の炭素原子と酸素原子との比を有するグリコールである1種または複数種のグリコールであってよい。炭素と酸素との原子比が2.4:1を超えると、透湿性が減少することがある。
【0028】
ポリエステルブロックコポリマーは、任意の公知の方法で製造することができる。その例としては、(1)芳香族ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、脂肪族ジオール、およびソフトセグメント成分を触媒の存在下でエステル交換反応させ、得られた反応生成物を重縮合させるもの、(2)芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、およびソフトセグメント成分を触媒の存在下でエステル化反応させ、得られた反応生成物を重縮合させるもの、(3)各成分をエステル交換によってランダム化させることができる、ソフトセグメント成分をハードセグメント成分に付加させるもの、および(4)鎖状化剤(chain linking agent)によってハードセグメントをソフトセグメントに結合するものなどがある。
【0029】
ポリエステル系エラストマーは、単一タイプか、または幾つかのポリマータイプのブレンドであってよい。例えば、使用されるポリエステルは、「ハイトレル(Hytrel(登録商標))」という商品名で本願特許出願人から入手可能なポリマー、または2種以上のコポリエーテルエステルエラストマーのブレンドなどの、コポリエーテルエステルエラストマー(以下に説明する)であってよい。
【0030】
有機または無機粒子を本発明のエラストマーフィルムに添加して、不粘着特性を改善することができる。透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムは、約0.2〜約5.0重量パーセント、好ましくは約0.5〜約3.0重量パーセント、より好ましくは約0.8〜約2.5重量パーセントの、平均粒径が約1.0〜約7.0μm、好ましくは約1.5〜約5.0μm、より好ましくは約2.0〜約4.5μmである有機または無機粒子を含むことが好ましい。平均粒径が約1.0μm未満である粒子は、フィルムの表面上に突起部を生成させることが十分にできないことがあり、十分な不粘着特性を得るのが困難になることがある。平均粒径が約7.0μmを超える粒子ではフィルムから取れてしまいがちになるであろう。あるいはテンター式延伸法で延伸する場合に、ポリマーと粒子の間の界面に生じる空隙のせいでフィルムが破れがちになって、生産性は低下するであろう。添加する有機または無機粒子の量に関して言えば、(フィルムの重量を基準にして)約0.2重量パーセント未満のレベルでは、十分な不粘着特性が付与されないことが起こり、約3.0重量パーセントを超えるレベルではフィルムが破れがちになり得る。好適な無機粒子の例としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ、カオリナイト、ハロイサイト(haloysite)、タルク、粘土、雲母、スメクタイト(semectite)、バーミキュライトがある。好適な有機粒子の例としては、架橋ポリメタクリル酸メチル樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、低分子量のポリエチレンなどがある。これらは単独でまたは2種以上の混合物として使用してよい。
【0031】
有機または無機粒子は、例えば電子顕微鏡で観察した場合に、好ましくは球形またはほぼ球形である。かかる粒子形状を使用すると、フィルム中の粒子の分散は大幅に改善され、その結果、延伸時のフィルムの破損を減少させることができる。球形でもほぼ球形でもない粒子を使用すると、粒径分布は一様にならないことが多い。得られる凝集体は、単一粒子の直径の数倍の粒径を有することがあり、テンター延伸法で延伸すると、破損する恐れがある。そのため生産性が減少することになる。有機または無機粒子は、シランカップリング剤などで表面処理してよい。
【0032】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムは、約0.01〜約2.0重量パーセント、より好ましくは約0.05〜約1.0重量パーセント、さらにより好ましくは約0.1〜約0.5重量パーセントの脂肪酸アミドを含むことが好ましい。ここで重量パーセントは、ポリエステル系エラストマーと脂肪酸アミドを合わせた重量を基準にしたものである。添加する脂肪族アミドの量が約0.01重量パーセント未満であると、フィルムを製造するのが実質的に難しくなる。これは、ポリエステルエラストマーを押出機から溶融押出しし、冷却ドラム(chill drum)と接触させて急冷すると、フィルムが冷却ドラムから容易に離れなくなり、時間が経つにつれて、最後には冷却ドラムの周囲に巻き付いてしまうことになるからである。脂肪酸アミドの量が約2.0重量パーセントを超えると、無駄に過剰になるだけでなく、製造時に脂肪酸アミドが時としてロールに粘着することになり得る。特にフィルムが溶融押出しされた後に冷却ドラムに粘着する。
【0033】
好ましい脂肪族アミドは、C12~30の飽和第一アミド、飽和第二アミド、および飽和第三アミドである。具体的には、ラウリン酸アミド(lauramide)、ミリストアミド、パルミトアミド、ステアルアミド、アラキドアミド(arachidamide)、ベヘンアミド、ビスアミド(エチレンビスステアルアミド、エチレンビスベヘンアミド、メチレンビスステアルアミド、メチレンビスベヘンアミドなど)などである。特に好ましいのは、広く入手可能で安価なステアルアミド、エチレンビスステアルアミド、エチレンビスベヘンアミドなどである。
【0034】
必要に応じて、本発明の透湿性ポリエステルエラストマーフィルムは、上記の有機または無機および脂肪酸アミドに加えて、さらに任意選択的に平滑剤と組み合わせて配合することもできる。平滑剤の例としては、不飽和酸アミド(エルカミド、エチレンビスエルカミド、エチレンビスオレアミドなど)、脂肪族炭化水素化合物(流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィンなど)、脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油など)、C12~30の脂肪酸(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなど)の金属石鹸つまり金属塩、多価アルコールの脂肪酸エステル(グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、長鎖エステルワックス(ステアリン酸ブチルエステル、モンタン酸ワックスなど)がある。これらは単独でまたは2種以上の混合物として使用してよい。
【0035】
有機または無機粒子および/または脂肪酸アミドおよび他の添加剤を、当該技術分野において知られている任意の好適な方法でポリエステルエラストマーに添加することができ、その方法としては、ポリエステルエラストマー中の添加剤のマスターバッチを作るか、またはポリエステルエラストマーの重合時に添加剤を添加するなどがあるが、それらに限定されない。
【0036】
本発明の透湿性ポリエステルエラストマーフィルムは、任意選択的に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、無機添加剤、帯電防止剤、顔料、耐候性剤(antiweathering agent)などのさまざまな添加剤を含むことができる。
【0037】
本発明のフィルムは、例えば、ペレット化ポリエステルブロックコポリマーおよびマスターバッチ(有機または無機粒子および脂肪酸アミドをポリエステルコポリマーに添加して製造したもの)を押出機に供給し、約180〜約200℃に加熱し溶融させ、Tダイで押し出してシート形態にし、静電キャスティング法でそれを28℃以下の温度に制御された冷却ドラムと密着させて急冷し、次いで得られた未延伸シートをテンター式延伸法により少なくとも一軸延伸して所望の厚さにすることにより、製造できる。
【0038】
テンター式延伸法は、テンター式延伸機を用いて実施する。フィルムの商業生産で広く使用されているこの延伸機は、予熱器、伸長機、ヒートセット領域、および緩和領域の各セクションを含んでおり、加熱は一般に熱風によって行われ、シートはシートの端部がクリップで把持された状態で各セクションを通過させられる。本発明では、横方向に最低500mmの幅がある製品を連続生産できる装置を使用できる。テンター式延伸プロセスでは、同時二軸テンター式延伸機を用いて縦横両方向に同時に延伸する同時二軸延伸法を使用できる。あるいはまた、未延伸シートをロール加熱(roll heating)または赤外線加熱によって加熱し、縦方向の周速が異なる2つ以上のロールでロール延伸しした後にテンター式横延伸機で延伸する順次延伸法を使用できる。広範囲の延伸比に対応しかつ延伸して高い延伸比にすることが可能なテンター式同時二軸延伸法は、その優れた生産性ゆえに特に好ましい。テンター式同時二軸延伸法では、未延伸シートを縦方向または横方向のいずれかに1〜3の延伸比となるように事前延伸し、その後、テンター式同時二軸延伸機で二軸延伸することができる。
【0039】
通常、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂などの延伸フィルムの場合、延伸比が大きいほど、透湿性は小さい。しかし、延伸ポリエステルブロックコポリマーフィルムの場合は、大きな延伸比となるまで延伸しても透湿性の低下は実質的にない。本発明における好ましい面積延伸比(area stretch ratio)は、延伸法によって異なるが、約5:1〜約25:1、より好ましくは約7:1〜約16:1である。約5:1より比率が小さいと、十分な機械的性質を有するフィルムを提供することができず、その結果、得られたフィルムを織物に積層して衣服材料にしても、耐静水圧性は低くなってしまうであろう。一方、比率が約25:1を超えると、延伸時にいっそう多くのフィルム破損が起こりえるので、生産性の問題が生じることになる。
【0040】
テンター式延伸機では、たいていの場合、熱風吹込み(blown hot air)でシートを加熱する必要があり、シート温度は放射温度計(例えば、堀場製作所社(Horiba Seisakusho Co.)製のModel IT−550)で測定される。シート温度は所望の延伸温度Tcとなるように制御される。延伸温度Tcは、使用されるポリエステルブロックコポリマーの組成によって異なり、通常は約0〜約100℃、好ましくは約20〜約80℃、より好ましくは約30〜約60℃である。
【0041】
本発明では、テンター式延伸機での延伸時のテンタークリップグリップ(tenter clip grip)部分の温度TEと延伸温度TCとの間の関係は、好ましくは、(TC−20)≦TE≦(TC+20)、より好ましくは(TC−10)≦TE≦(TC+10)である。(TC−20)>TEである場合、シートの中央部分からの破損の頻度が増えることになるが、TE>(TC+20)である場合、端の部分からの破損の頻度が増えることになる。加えて、テンタークリップグリップ部分の温度も上述の放射温度計で測定できる。
【0042】
クリップグリップ部分の温度を制御する際に、延伸後のヒートセットセクションの処理温度が約140℃以上である場合、TE>(TC+20)となる確率は高く、その場合には、クリップを冷風などで冷やすことが好ましいであろう。(Tc−20)>TEである場合、クリップを赤外線加熱などで加熱する必要が生じうる。
【0043】
テンター式延伸機へ供給する前のシートは、横方向に沿った端の部分が中央部分よりも厚いことが好ましいであろう。具体的には、シートの横方向に沿ってクリップから内向きに(シートの中央部分に向かって)約50mmの範囲にわたるシートの厚さは、中央のシート部分の厚さよりも厚いことが好ましい。さらに具体的に言うと、シートの横方向のクリップ間のシートの厚さに関しては、クリップから内向きに約50mmの範囲の厚さは、クリップからすぐ内側の約50mmの部分を除く範囲全体にわたるシートの平均厚さよりも(好ましくは10パーセント以上)厚いことが好ましい。
【0044】
シートの厚さは、Tダイのスリットの間隙を調整することにより調整できる。Tダイのスリットの間隙は、調整用プッシュ・プル・ボルト(adjustment push and pull bolt)を操作して調整でき、そのようにしてTダイのスリットの特定位置を調整できる。
【0045】
本発明に従った同時二軸延伸法によるフィルムの製造について以下に説明する。最初に未伸張のシートの端部をテンター式同時二軸延伸機のクリップで把持し、縦横両方向にそれぞれ約2:1および4:1の比率になるまで約20〜約80℃で同時二軸延伸を行う。次いで、熱処理を約120〜約190℃で約3〜約20秒間、数パーセントの緩和率で実施し、シートを冷まして室温にし、約20〜約200m/分の速度で巻いて所望の厚さのフィルムを得た。
【0046】
フィルムの熱収縮を減らすために延伸後の熱処理が好ましい。この熱処理は、熱風吹込み法、赤外線照射法、マイクロ波照射法などの公知の方法から選択して実施できる。熱風吹込み法は、正確に均一加熱が行えるので好ましい。熱処理の好ましい温度は、約(Tm−100℃)〜(Tm−3℃)であり、ここでTmはポリエステル系エラストマーの溶融温度である。
【0047】
160℃で15分間保持したときのフィルムの熱収縮は、好ましくは約20パーセント以下、より好ましくは約15パーセント以下、さらにより好ましくは約10パーセント以下である。約15パーセントを超えて熱収縮するフィルムを1枚の織物に加熱積層(hot laminated)すると、積層織物は反る傾向がある。
【0048】
特定の特性をさらに付与するために、フィルムは、紫外線、α線、β線、γ線、電子ビームなどによる照射、コロナ処理、プラズマ照射、火炎(flaming)処理などの従来知られているさまざまな処理を施すことができる。さらに、フィルムは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシなどの樹脂を塗布するか、または積層することができる。時としてフィルムに、酸化アルミニウムなどの物質を蒸着させるか、または酸化ケイ素、酸化チタンなどを塗布してもよい。
【0049】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムは、50gのスリップ片を用いてJIS K7125で測定した場合の動摩擦係数が、好ましくは約1.5以下、より好ましくは約1.0以下である。JIS K7125では200gのスリップ片を使用するよう定めているが、ここでは上記のとおりもっと軽い50g片を使用している。これは、本発明のポリエステル系エラストマーフィルムが高い衝撃吸収力を有しており、そのためスリップ片が200gもの重さの場合にすべり性(slippage)に影響するためである。フィルムが1.5を超える動摩擦係数を有している場合、フィルム製造または二次的な製造後の処理ステップにおいてパスロール(pass−rolls)にかけると、フィルムはロールの周囲に巻きつく傾向がある。さらに、そのようなフィルムを織物または不織布に積層し、前記織物または不織布を衣料品に利用するために機械的に処理すると、鏡面仕上げのめっき部品に対するそのスリップ性が乏しくなる。
【0050】
本発明の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムは延伸されているので、50パーセント伸張時の残留ひずみが好ましくはたったの約10パーセント以下、より好ましくは約7パーセント以下、さらにより好ましくは約5パーセント以下である。フィルムの残留ひずみが約10パーセントを超えている場合に、このフィルムを繊維織物に積層して衣服材料として使用すると、フィルムは、繰り返し強く引っ張るような動作(例えば、肘の付近のような頻繁な屈曲を含む)を行った後に、場合によっては元の形状に戻らなくなり、そのため伸びた状態のままになり、フィルムのたるみまたはしわが生じ、最終的には繊維織物から剥離してしまう。
【0051】
本発明では、「残留ひずみ」は次のようにして測定する。幅10mm、長さ150mmの試料を作製し(典型的には5個の試料について行う)、オートグラフ(Autograph)AGS−100G(島津製作所社(Shimadzu Seisakusho Co.)の製品)を用いて、60パーセントの相対湿度および35℃で把持し、チャック間の距離100mmを原点(L0)として設定する。試料を100mm/分の速度で50パーセントだけ延伸し(すなわち、試料をチャック間の距離150mmまで延伸する)、10秒間保持してから、同じ速度で試料が原点(L0)(すなわち、チャック間の距離100mm)に戻るようにさせる。試料をチャックから取り外し、上記の操作の後のチャックのグリップ間の距離(L1)を測定する。50パーセント伸張時の永久伸びは、以下の式から計算する。
(50%伸張時の永久伸び)={(L1−L0)/L0}×100
【0052】
本発明の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムは、JIS L1099(A1法)で測定した場合の透湿速度が約300g/m2・24時間以上、好ましくは約1000g/m2・24時間以上、より好ましくは約2500g/m2・24時間以上、さらにより好ましくは約4000g/m2・24時間以上である。フィルムの透湿速度が約300g/m2・24時間未満である場合、通常の使用条件下では、湿気を外部環境に放散するのが難しくなる。
【0053】
本発明の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムは、ASTM D−882で規定された引張り強さ(縦横方向の引張り強さを平均して計算したもの)が、30MPa以上、好ましくは50MPa以上である。引張り強さが30MPa未満のフィルムは、機械的性質が不十分であり、フィルムを織物に積層して衣料織物(garment fabric)として使用すると、その織物の耐静水圧性は不良になりうる。
【0054】
本発明の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムは、耐穿孔性が好ましくは約150N/mm以上、より好ましくは約200N/mm以上となるであろう。フィルムは、耐穿孔性が約150N/mm未満であると、織物に積層して衣料織物として使用した場合、フィルムにはピンホール形成の問題が起こりえるので、長期間にわたって洗濯時に突起物に接触することになるとき容易に損傷しうる。本発明では、フィルムの耐穿孔性は、所定の厚さを持つ幅50mmおよび長さ50mmの試料(典型的には5つの試料について行う)を、しわのよらない条件下で、アルミニウムの円板(70mmの外径および2mmの厚さを有し、内径30mmの穴が貫通しているもの)に固定して測定する。半径0.5mmの半円形の先端部を有する直径1.0mmのアルミニウムの針を、アルミニウムの円板を貫通している穴の上に位置しているフィルム部分のその部分に突き刺す。フィルムに穴をあけるのに必要な力を記録する。測定用の好適な装置は、100mm/分の穴あけ速度のオートグラフ(Autograph)(AG−100E)(島津製作所社(Shimadzu Seisakusho Co.)の製品)である。
【0055】
本発明の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムは、好ましくは約5〜約30μmの厚さ、より好ましくは約7〜約20μmの厚さを有する。厚さが約5μm未満のフィルムは機械的性質が劣ることになるが、厚さが約30μmを超えるフィルムは透湿性が劣ることになる。
【0056】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムは、紙、フィルム、網、シートなどに積層してもよい。
【0057】
好適な繊維織物としては、織物またはメリヤス材、不織布などがある。それらは、羊毛、絹、綿などの天然繊維;ポリアミド系繊維(ナイロン6およびナイロン66を含む)、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む)、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などの合成繊維;トリアセテートなどの半合成繊維;あるいはナイロン6/綿、ポリエチレンテレフタレート/綿などの混合紡糸繊維で作製されていてよい。
【0058】
ポリエステル系エラストマーフィルムを繊維織物に積層する方法では、好ましくは接着剤または接着可能な不織布を使用する。好適な接着剤の例としては、ポリオールとジイソシアネートとの付加反応生成物であるポリウレタン接着剤、ジアミンとジカルボン酸との縮合反応生成物であるポリアミド接着剤、ポリオールとジカルボン酸との縮合反応生成物であるポリエステル接着剤、アクリル接着剤(アクリル酸エチル系およびメタクリル酸ブチル系など)、ビニル系接着剤(酢酸ビニル系および塩化ビニル系など)、ブチルゴム系接着剤、およびゴム系接着剤(クロロプレンゴム接着剤など)がある。接着剤自体の透湿性を考えると、ポリウレタン接着剤が好ましい。
【0059】
好適な積層方法としては、標準的なグラビアコーター、ロータリースクリーン、フラットスクリーン、アプリケーターなどを用いて、ポリエステル系エラストマーフィルムおよび繊維織物に、表面全体が覆われないように、スポット、線、チェッカー盤パターン、ハニカムパターンなどの形で接着剤を塗布するものがある。接着剤は、全表面積の約20〜約70パーセント、好ましくは約25〜約50パーセントだけ塗布すべきである。塗布する接着剤が表面積の約20パーセント未満である場合、ポリエステル系エラストマーフィルムと繊維織物との間の接着が不良となりうる。その結果、界面のはく離が生じることがある。一方、塗布する接着剤が表面積の約70パーセントを超えると、透湿性の性能を低下させうる。
【0060】
繊維織物は好ましくは撥水処理が行われる。撥水処理により、撥水性がJIS(日本工業規格)L1096のスプレー法で約90以上となることが好ましい。撥水剤としては、パラフィン系撥水剤、シリコーン撥水剤、フッ素系撥水剤などを、水、アルコール、または有機溶媒中に入れて希釈して作製されるものなど、当該技術分野において知られている薬剤がある。撥水処理は、繊維織物を撥水剤中に浸し、マングルでしぼり、得られた織物を約170℃で熱処理する方法、繊維織物の両側またはフィルムが積層されていない表面側に撥水剤をスプレーする方法など、当該技術分野において知られている方法を用いて施すことができる。撥水処理は、ポリエステル系エラストマーフィルムを繊維織物に積層する前または後のいずれかに実施できる。
【0061】
JIS L1092に従って測定した場合の透湿性の耐水性織物の耐静水圧性は、繊維織物の材料および厚さによって異なり、スポーツウェアなどでの用途の必要に応じて約50kPa以上、好ましくは約100kPa以上、より好ましくは約150kPa以上であるべきである。約50kPa未満の耐静水圧性の織物では、時として雨またはその他の源からの湿気が内側に浸透することがある。
【0062】
透湿性の耐水性織物は、JIS L0217(規則103)に従って測定した場合の100回洗濯後の耐静水圧性保持率が約90パーセント以上、好ましくは約95パーセント以上であるべきであることが好ましい。100回洗濯後の耐静水圧性保持率が約90パーセント未満であると、織物は洗濯の繰り返しに対する耐性が弱くなりかねない。
【0063】
透湿性の耐水性織物は、JIS L1099(A−1法)に従って測定した場合の透湿速度が約500g/m2・24時間以上、好ましくは約1000g/m2・24時間以上であるべきであることが好ましい。透湿性の耐水性織物の透湿速度が約500g/m2・24時間未満である場合、織物はスポーツウェアなどでの用途の場合に汗を十分に放散させるのが困難になることがある。
【0064】
本発明の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムは、透湿速度が約300g/m2・24時間以上であって透湿性が優れており、機械的性質(引張り強さ、耐穿孔性など)も優れており、50パーセント伸張時の永久伸びが約10パーセント以下と小さい。そのため衣服材料などに好適に使用され、また製造時の取扱適性も優れている。
【実施例】
【0065】
(重合の実施例1)
44重量部のテレフタル酸ジメチル、65重量パーセントのエチレンオキシド由来の単位と35重量パーセントのプロピレンオキシド由来の単位とを含んでなる51重量部のポリ(アルキレンオキシド)グリコール、19重量部の1,4−ブタンジオール(化学量論量)、0.3重量部のチタン酸テトラブチル、0.4重量部のトリメリット酸トリメチル、0.1重量部のイルガノックス(Irganox)1098(日本チバ・ガイギー社(Japan Ciba Geigy Company)の製品)を、オートクレーブに充填し、220℃でエステル交換反応させた。次いで反応混合物を133Pa(1トル)以下の減圧状態に保持して250℃で重合反応させて、ポリエステルブロックコポリマーAを得た。
【0066】
(重合の実施例2)
49重量部のテレフタル酸ジメチル、(アルキレンオキシド基に関して)30重量パーセントのエチレンオキシド由来の単位と70重量パーセントのプロピレンオキシド由来の単位とを含んでなる46重量部のポリ(アルキレンオキシド)グリコール、21重量部の1,4−ブタンジオール(化学量論量)、0.3重量部のチタン酸テトラブチル、0.4重量部のトリメリット酸トリメチル、0.1重量部のイルガノックス(Irganox)1098(日本チバ・ガイギー社(Japan Ciba Geigy Company)の製品)を、オートクレーブに充填し、220℃でエステル交換反応させた。次いで反応混合物を133Pa(1トル)以下の減圧状態に保持して250℃で重合反応させて、ポリエステルブロックコポリマーBを得た。
【0067】
(有機または無機粒子)
無機粒子A:シーホスター(SEAHOSTAR)KE−P250(日本触媒社(Nippon Shokubai Co.,Ltd.)の製品)(球形シリカ、平均粒径2.5μm)
無機粒子B:シーホスター(SEAHOSTAR)KE−P50(日本触媒社(Nippon Shokubai Co.,Ltd.)の製品)(球形シリカ、平均粒径0.5μm)
無機粒子C:シリシア(SILISIA)310P(富士シリシア社(Fuji Sylysia co.,Ltd.)の製品)(非晶質シリカ、平均粒径2.7μm)
無機粒子D:サイロスフェア(SYLOSPHERE)C−1510(富士シリシア社(Fuji Sylysia co.,Ltd.)の製品)(非晶質シリカ、平均粒径10μm)
有機粒子E:エポスター(EPOSTAR)MA1004(日本触媒社(Nippon Shokubai Co.,Ltd.)の製品)(球形の架橋ポリメタクリル酸メチル、平均粒径4.5μm)
有機粒子F:エポスター(EPOSTAR)S12(日本触媒社(Nippon Shokubai Co.,Ltd.)の製品)(球形のメラミン−ホルムアルデヒド縮合物、平均粒径1.5μm)
【0068】
(脂肪酸アミド)
脂肪酸アミドA:アルフロー(ALFLOW)−S−10(ステアルアミド)(日本油脂社(Nippon Oils and Fats Co.,Ltd.)の製品)
脂肪酸アミドB:アルフロー(ALFLOW)−B−10(ベヘンアミド)(日本油脂社(Nippon Oils and Fats Co.,Ltd.)の製品)
【0069】
以下の方法を使用して、表に示す特性を測定した。
残留ひずみ:上述のようにして測定した。
透湿速度:JIS L1099(A−1法)に従って測定した。
引張り強さ:ASTM D−882に従って縦横方向に測定した測定値を平均して求めた。
耐穿孔性:上述のようにして測定した。
動摩擦係数:50gのスリップ片を用いてJIS K 7125に準じて測定した。
【0070】
(実施例1)
ポリエステルブロックコポリマーAを、無機粒子Aと脂肪酸アミドAとをポリエステルブロックコポリマーAに添加して製造したマスターバッチと混合して、1.0重量パーセントの無機粒子Aと0.2重量パーセントの脂肪酸アミドAとを含む混合物を製造した。この混合物を、Tダイを装着した90mm押出機から250℃の溶融温度で溶融押出しし、表面温度が18℃の冷却ドラムに接触させて冷却して、未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートをテンター式同時二軸延伸機で二軸延伸した。使用した予熱温度は50℃、延伸温度(TC)も50℃、クリップセクション温度(クリップによって把持される領域のフィルムの温度)(TE)は55℃(延伸機の供給セクションの前に冷却用空気で十分に冷却される)であり、縦(長手)方向に延伸比が3.05倍および横方向に延伸比が3.3倍となるようにし、こうして面積延伸比が10:1となるようにした。延伸の後に、15秒間180℃のヒートセットセクション温度にさらし、170℃の緩和セクション温度で熱処理してから室温まで冷やして、厚さ10μmの二軸延伸されたポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示すとおりである。
【0071】
(実施例2および実施例3)
表1に示すように、用いた無機粒子Aおよび脂肪酸アミドAの量は実施例1の量とは異なっている。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示すとおりである。
【0072】
(実施例4)
無機粒子Aを有機粒子Eに置き換えた。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示すとおりである。
【0073】
(実施例5)
無機粒子Aを有機粒子Fに置き換えた。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示すとおりである。
【0074】
(実施例6)
脂肪酸アミドAを脂肪酸アミドBに置き換えた。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示すとおりである。
【0075】
(実施例7)
ポリエステルブロックコポリマーAをポリエステルブロックコポリマーBに置き換えた。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示すとおりである。
【0076】
実施例1〜7のフィルムの場合、ポリエステルエラストマーを押出機から溶融押出しし、冷却ドラムと接触させて急冷しても、フィルムは冷却ドラムにまったく粘着しないことが示された。その上、取り扱いやすさが良好であり、テンター式二軸延伸機による延伸性も良好であり、これらのフィルムは、満足のゆく小さい残留ひずみ、ならびに優れた透湿速度、不粘着特性、および機械的性質(引張り強さ、耐穿孔性など)を有していた。
【0077】
(比較例1)
表1に示すように、配合した無機粒子Aの量は、実施例1とは異なっている。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。実施例8で得られたフィルムは、50パーセント伸張時の永久伸びが3.1パーセントであり、10パーセント以下という本発明の範囲に含まれる。しかし、配合した無機粒子Aの量が少なくなっているため、フィルムの動摩擦係数が大きく、スリップ性がやや劣っていた。
【0078】
(比較例2)
無機粒子Aを無機粒子Bに置き換えた。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを製造した。実施例9のフィルムでは、50パーセント伸張時の永久伸びが3.0パーセントであり、10パーセント以下という本発明の範囲内であった。しかし、無機粒子Bの粒径が小さかったため、連続延伸性および生産性は良好ではないように思われた。得られたフィルムのスリップ性もやや劣っていた。このフィルムの特性を表1に示す。
【0079】
(比較例3)
無機粒子Aを無機粒子Cに置き換えた。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを製造した。実施例10のフィルムでは、50パーセント伸張時の永久伸びが3.0パーセントであり、10パーセント以下という本発明の範囲内であった。しかし、無機粒子Cが非晶質シリカであったため、連続延伸性および生産性が良好ではないように思われた。得られたフィルムのスリップ性もやや劣っていた。このフィルムの特性は表1に示すとおりである。
【0080】
(比較例4)
厚さ30μmの低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社(Tohcello Co.,Ltd)の製品のFC−S No.300)を支持体として使用した。ポリエステルブロックコポリマーAを、無機粒子Aと脂肪酸アミドAとをポリエステルブロックコポリマーAに添加して製造したマスターバッチと混合することにより、1.0重量パーセントの無機粒子Aと0.2重量パーセントの脂肪酸アミドAとを含み、残りがポリエステルブロックコポリマーAである混合物を製造した。この混合物を、Tダイを装着した50mm押出機から250℃の溶融温度で溶融押出しし、表面温度が18℃の冷却ドラムに接触させて冷却して、ポリエチレン/ポリエステル系エラストマーの積層フィルムを得た。次いでポリエチレンをポリエステルブロックコポリマーフィルムから剥がして、厚さ10μmの未延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムは未延伸であったので、引張り強さが小さく、耐穿孔性が低く、永久伸びが大きかった。このため衣料織物用としては劣った材料となった。このフィルムの特性は表1に示すとおりである。
【0081】
(比較例5)
表1に示されているとおり、配合した無機粒子Aの量を変えた。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。比較例2の材料は配合した無機粒子Aの量が過剰であったため、延伸時にあまりに頻繁に破れて、有用なフィルムを形成させることができなかった。
【0082】
(比較例6)
無機粒子Aを無機粒子Dに置き換えた。その他の点では、実施例1の手順と同様の手順を実施して、厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを製造した。無機粒子Dの粒径が大きすぎたため、延伸時にフィルムはあまりに頻繁に破れて、有用なフィルムを集めることができなかった。
【0083】
(比較例7)
脂肪酸アミドの量を0.005重量パーセントに変えた。その他の点では、実施例1の方法と同様にして溶融押出しを実施した。しかし、フィルムは冷却ドラムに大々的に粘着した。冷却ドラムから押し出し物が剥がれる傾向が徐々に悪化したので、フィルム形成が不可能と判断され、その時点でさらなる延伸ステップは中止した。
【0084】
(比較例8)
実施例1では、上記のようにテンター式同時二軸延伸機のシート供給セクションでクリップによってシートを把持するセクションの直前に、上述のようにクリップは空気で十分に冷却して、55℃での延伸時のクリップグリップ部分の温度TEを制御した。一方、参考例1では、実施例1の方法と同様にして安定した延伸操作を確保し、また未伸張のシートの横断面を上記のように維持し、延伸温度TCを50℃としたが、延伸機の供給セクションの前のクリップの冷却は止めた。その後、クリップグリップ部分の温度Teは75℃に達した。言い換えれば、クリップグリップ部分の温度TEは高温であり、延伸温度TCよりも20℃高かった。そのような条件で延伸を続行すると、シートは約15分でクリップの位置において破れ始めた。
【0085】
(比較例9)
参考例1とは異なり、ここでは、延伸機の供給セクションの前でクリップに向かって液体窒素を吹きつけ、それによってクリップグリップ部分の温度を20℃に維持した。このようにして、クリップグリップ部分の温度TEは、延伸温度TCより20℃を超えるほど低くなった。その他の点では参考例1の方法と同様にして延伸を続行すると、約10分でシートは中央部分から破れ始めた。
【0086】
(実施例8)
実施例1で得られた厚さ10μmの二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを使用した。使用した接着剤は固形分39パーセントのポリウレタン接着剤であり、100重量部のUD−108(セイコー化成社(Seiko Kasei KK)製のポリウレタン接着剤)、3重量部のプラタミド(PLATAMID)H−103(エルフ・アトケム・ジャパン社(Elf Atochem、Japan Company)のポリアミドホットメルト接着剤)、5重量部のコロネート(Coronate)HL(イソシアネート化合物で、日本ポリウレタン工業社(Nippon Polyurethane Industry Co.,Ltd)の製品)、および15重量部のメチルエチルケトンを配合して製造したものであった。次いで、25メッシュのドットパターン(ここでドットの深さは250μm、直径は0.7mm、間隔は0.35mmである)を有するグラビア印刷ロールを用いて、接着剤をフィルムAに塗布した。接着剤は表面の約40パーセントを覆った。
【0087】
使用した繊維織物は、たて糸とよこ糸の両方に関してポリエステル(PET)マルチフィラメント(83デシテックス/72フィラメント)から、110フィラメント/2.54cmのたて糸密度および90フィラメント/2.54cmのよこ糸密度で平織で織られ、精練し、撥水処理が行われたポリエステル織物材料であった。
【0088】
次いで上記の接着剤を塗布したフィルムをポリエステル織物材料に積層し、130℃の温度、30kPaの圧力および30m/分の速度で熱接着(hot bonded)して、フィルム積層織物Aを得た。このフィルムと織物Aの特性を表2に示す。
【0089】
(実施例9)
実施例7で得られたフィルムを、実施例11に記載の手順を用いてフィルム積層織物Bの形にした。表2は、フィルムおよびフィルム積層織物の特性を示している。
【0090】
(実施例10)
使用した繊維織物は、たて糸とよこ糸の両方に関してナイロンのマルチフィラメント(83デシテックス/72フィラメント)から、110フィラメント/2.54cmのたて糸密度および90フィラメント/2.54cmのよこ糸密度で平織で織られ、精練し、撥水処理が行われたナイロン織布であった。その他の点では、実施例11の手順に従ってフィルム積層織物Cを得た。表2は、フィルムおよびフィルム積層織物の特性を示している。
【0091】
優れた透湿性および機械的性質を有する実施例8〜10のフィルムを使用したフィルム積層織物は、優れた特性、すなわち高い耐静水圧性保持率および長期間にわたる洗濯に対する耐性を示した。
【0092】
(比較例10)
比較例4で得られた厚さ10μmの未延伸ポリエステル系エラストマーフィルムを実施例8の手順に従って使用して、フィルム積層織物Dを形成させた。表2は、フィルムおよびフィルム積層織物の特性を示している。
【0093】
比較例10のフィルム積層織物Dでは、耐穿孔性の劣った未延伸フィルムを使用したため、この製造物はミシンなどでの針による穴あけを含んだ機械処理には不向きであった。また、着用者が着ようとするときに身動きがとれなくなるという点で着用性(wear adaptability)が劣る。さらにまた、永久伸びの大きなフィルムが使用されていたため、着用時の肘の付近での反復屈曲サイクルの後に、フィルムのたるみも見られた。その上、耐静水圧性保持率が低く、長期間の耐洗濯性に適していなかった。
【0094】
(比較例11)
固形分が21パーセントであり粘度が5000mPa(25℃)であるポリウレタン樹脂溶液であって、100重量部のHI−ムレン(MUREN)NPU−5(エーテル型ポリウレタン樹脂で、大日精化社(Dainichiseika Co.Ltd)の製品)、10重量部のイソプロピルアルコール、および10重量部のトルエンから得られる溶液を、コンマコーターによってEV130TPO(リンテックス社(Lintex Company)製の離型紙)の離型側に塗布して、塗膜の厚さを20g/m2にした。次いでその堆積物を100℃で2分間乾燥させてポリウレタン樹脂フィルムを得た。実施例1の方法と同様に、その後フィルムに接着剤を塗布した。表2はポリウレタン樹脂フィルムの特性を示している。これは離型紙からの剥離後のポリウレタン樹脂フィルムの形態で測定した。
【0095】
繊維織物の場合、実施例8で用いたポリエステル織布を使用して、接着剤が塗布されたポリウレタン樹脂フィルムに積層し、130℃の温度、30kPaの圧力および30m/分の速度で熱接着してフィルム積層織物Eを得た。表2はその特性を示している。
【0096】
この比較例11のフィルム積層織物Eでは、本発明のポリエステル系エラストマーフィルムの代わりに上記のポリウレタン樹脂フィルムを使用したので、耐静水圧性保持率が劣っており、したがって、繊維織物としては、長期間にわたる洗濯に対する耐性の点で劣り、長期間の使用には適さなかった。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルブロックコポリマーを含む透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムであって、前記コポリマーが、
エステル結合で頭−尾結合された複数個の繰り返されている長鎖エステル単位(I)と短鎖エステル単位(II)とを有する1種以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含み、前記フィルムは延伸処理が施されておりかつ残留ひずみが10パーセント以下であることを特徴とする透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項2】
前記フィルムの透湿速度が約300g/m2・24時間以上であることを特徴とする請求項1に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの引張り強さが約30MPa以上でありかつ耐穿孔性が約150N/mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項4】
前記コポリエーテルエステルエラストマーが、約1.0μm〜約7.0μmの平均直径を有する有機または無機粒子を約0.2〜約3.0重量パーセント含むことを特徴とする請求項1に記載の透湿性ポリエステル系エラストマー。
【請求項5】
前記コポリエーテルエステルが、約0.01〜約2.0重量パーセントの少なくとも1種の脂肪酸アミドを含むことを特徴とする請求項1に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項6】
前記有機または無機粒子が球形またはほぼ球形の粒子であることを特徴とする請求項4に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項7】
前記長鎖エステル単位(I)が以下の式(i)で表され、前記短鎖エステル単位(II)が式(ii)で表され、
【化1】

式中、Gは数平均分子量が約400〜約4000であるポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残る二価の基であり、Rは分子量が約300未満であるジカルボン酸から末端カルボキシル基を除去した後に残る二価の基であり、Dは分子量が約250未満であるジオールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残る二価の基であり、
前記コポリエーテルエステルが約25〜約80重量パーセントの短鎖エステル単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項8】
Gが、Gの全重量を基準にして約10〜約80パーセントのポリ(エチレンオキシド)単位を含むことを特徴とする請求項7に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項9】
前記短鎖エステル単位(II)がブチレンテレフタレート単位であることを特徴とする請求項7に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項10】
透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法であって、
エステル結合で頭−尾結合された複数個の繰り返されている長鎖エステル単位(I)と短鎖エステル単位(II)とを有する1種以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含むポリエステルブロックコポリマーと、
約0.2〜約3.0重量パーセントの、平均粒径が約1.0〜約7.0μmの有機または無機粒子および約0.01〜約2.0重量パーセントの脂肪酸アミドとを混合する工程と、
得られたブレンドをシート形態に成形する工程と、
得られた未延伸シートに延伸処理を施し、それによってそのシートを永久伸びが約10パーセント以下でありかつ透湿速度が約300g/m2・24時間以上であるフィルムに変える工程と
を含むことを特徴とする透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記有機または無機粒子が非晶質でない粒子であることを特徴とする請求項10に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記長鎖エステル単位(I)が以下の式(i)で表され、前記短鎖エステル単位(ii)が以下の式(ii)で表され、
【化2】

式中、Gは数平均分子量が約400〜約4000であるポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残る二価の基であり、Rは分子量が約300未満であるジカルボン酸から末端カルボキシル基を除去した後に残る二価の基であり、Dは分子量が約250未満であるジオールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残る二価の基であり、
前記コポリエーテルエステルが約25〜約80重量パーセントの短鎖エステル単位を含むことを特徴とする請求項10に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項13】
Gが、Gの全重量を基準にして約10〜約80パーセントのポリ(エチレンオキシド)単位を含むことを特徴とする請求項12に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記短鎖エステル単位(II)がブチレンテレフタレート単位であることを特徴とする請求項12に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記延伸処理でテンター式延伸機を使用することを特徴とする請求項12に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項16】
前記テンター式延伸機が同時二軸延伸機であることを特徴とする請求項15に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記フィルムの前記未延伸シートに対する面積比が約5:1と25:1との間であることを特徴とする請求項16に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記未延伸シートがテンタークリップグリップを有するテンター延伸機によって延伸され、前記クリップグリップが温度TEに維持されかつ延伸温度がTcに維持されるようにし、
(TC−20)≦TE≦(TC+20)
であることを特徴とする請求項15に記載の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの製造方法。
【請求項19】
ポリエステルブロックコポリマーを含む透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムであって、前記コポリマーが、
エステル結合で頭−尾結合された複数個の繰り返されている長鎖エステル単位(I)と短鎖エステル単位(II)とを有する1種以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含み、前記フィルムは延伸処理が施されておりかつ透湿速度が約300g/m2・24時間以上であることを特徴とする透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項20】
ポリエステル系エラストマーフィルムとそれに積層された繊維織物とを含む透湿性の耐水性織物であって、
前記ポリエステル系エラストマーフィルムは、少なくとも一軸方向に延伸されており、かつ引張り強さが約30MPa以上であり、耐穿孔性が約150N/μm以上であり、50パーセント伸張時の永久伸びが約10パーセント以下であり、透湿速度が約300g/m2・24時間以上であるフィルムであり、前記コポリマーが、
エステル結合で頭−尾結合された複数個の繰り返されている長鎖エステル単位(I)と短鎖エステル単位(II)とを有する1種以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含むことを特徴とする透湿性の耐水性織物。
【請求項21】
前記長鎖エステル単位(I)が以下の式(i)で表され、前記短鎖エステル単位(II)が式(ii)で表され、
【化3】

式中、Gは数平均分子量が約400〜約4000であるポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残る二価の基であり、Rは分子量が約300未満であるジカルボン酸から末端カルボキシル基を除去した後に残る二価の基であり、Dは分子量が約250未満であるジオールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残る二価の基であり、
前記コポリエーテルエステルが約25〜約80重量パーセントの短鎖エステル単位を含むことを特徴とする請求項19に記載の透湿性の耐水性織物。
【請求項22】
Gが、Gの全重量を基準にして約10〜約80パーセントのポリ(エチレンオキシド)単位を含むことを特徴とする請求項21に記載の透湿性の耐水性織物。
【請求項23】
前記短鎖エステル単位(II)がブチレンテレフタレート単位であることを特徴とする請求項21に記載の透湿性の耐水性織物。
【請求項24】
前記織物が90パーセント以上の100回洗濯後耐静水圧性を保持することを特徴とする請求項20に記載の透湿性の耐水性織物。

【公表番号】特表2009−506198(P2009−506198A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529204(P2008−529204)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/033766
【国際公開番号】WO2007/027715
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(393025921)デュポン株式会社 (5)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】