説明

透湿防水迷彩布帛及びその製造方法

【課題】洗濯を繰り返しても、耐水圧が低下しにくい透湿防水迷彩布帛を提供する。
【解決手段】この透湿防水迷彩布帛は、表面に迷彩模様が施されている表地の裏面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜が積層される。微多孔膜には、シリカ微粉末15〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%が含有されている。この透湿防水迷彩布帛は、表地裏面に、ポリウレタン樹脂を主体とし、シリカ微粉末15〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%を、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解又は分散させてなる微多孔膜形成用樹脂組成物を塗布した後、N,N−ジメチルホルムアミドを5〜30質量%含有する水溶液に浸漬して、微多孔膜形成用樹脂組成物を凝固させて微多孔膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な山野にとけ込み、可視光線〜近赤外線によって視認しにくい迷彩模様を有した迷彩布帛に関し、特に優れた透湿性能及び防水性能をも有する透湿防水迷彩布帛及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
迷彩布帛は、軍隊等が着用する戦闘服の素材として、或いは軍隊等が装備するテント等の素材として、従来より重宝されている。軍隊は豪雨の中で作業することも少なくないため、着用する戦闘服には、高い防水性能が要求されている。また、作業によって多量の発汗を伴うので、この汗を外部に放出するため、高い透湿性能が要求されている。
【0003】
かかる透湿防水迷彩布帛は、一般的に、迷彩模様が施された表地の裏面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜形成用樹脂組成物を塗布した後、水中に浸漬して前記組成物を湿式凝固させ、表地の裏面に微多孔膜を形成して製造されている。たとえば、特許文献1には、ポリウレタン樹脂とシリカ微粉末を含有する微多孔膜形成用樹脂組成物を、迷彩模様が施された表地の裏面に塗布した後、水中に浸漬し、前記組成物を湿式凝固させて透湿防水迷彩布帛を製造することが記載されている。このような方法で得られた透湿防水迷彩布帛は、高い透湿度を持っているため透湿性能に優れており、また高い耐水圧を持っているため防水性能に優れたものであり、好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−265308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の透湿防水迷彩布帛は、当初は高い耐水圧を持っているが、洗濯を繰り返すと、耐水圧が低下し、所望の防水性能を失ってしまうという欠点があった。特に、迷彩布帛を素材とする戦闘服は、汚れもひどく、何度も洗濯を繰り返すので、このような欠点は問題視されることが多かった。本発明は、洗濯を繰り返しても、耐水圧が低下しにくい透湿防水迷彩布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は微多孔膜形成用樹脂組成物中にフッ素系撥水剤及び油溶性のフッ素系界面活性剤を混合させておき、得られる微多孔膜中に当該フッ素系撥水剤及びフッ素系界面活性剤を含有せしめて、これにより洗濯を繰り返しても耐水圧が低下しにくいようにしたものである。すなわち、本発明は、表面に迷彩模様が施されている表地の裏面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜が積層されてなる透湿防水迷彩布帛において、前記微多孔膜には、シリカ微粉末15〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%が含有されていることを特徴とする透湿防水迷彩布帛及びその製造方法に関するものである。
【0007】
本発明に用いる表地の生地としては、従来、戦闘服等に用いられている編織物や不織布等の生地が用いられる。一般的には、ナイロン6、ナイロン66で代表されるポリアミド系合成繊維糸条を主体とする織物が用いられる。これは、強度面で優れており、損傷しにくいからである。織物の組織としては、引き裂きに優れたリップストップ組織であるのが好ましい。また、リップストップ組織で採用される太番手の糸条としては、強度面から、アラミド繊維糸条やポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル系合成繊維糸条を用いるのが好ましい。
【0008】
表地には、その表面に迷彩模様が施されている。迷彩模様としては、従来公知のものが採用される。具体的には、夜間において近赤外線による探査でも視認しにくい迷彩模様が好ましく、可視光線の領域である600nmから近赤外線の領域である1200nmの光線の反射率が2%以上65%以下の範囲内であるのが好ましい。特に、迷彩模様は従来公知の分割迷彩模様であるのが好ましく、少なくとも3種類の色彩が分割されて印捺されており、各色彩の600〜1200nmの光線反射率は2%以上65%以下の範囲内であって、かつ、異なった反射率となっているのが好ましい。さらに、反射率も、2%以上65%以下の範囲内で、なるべく均等に異なっているのが好ましい。
【0009】
分割迷彩模様を印捺する際に使用する色としては、淡グリーン、濃グリーン、茶及び黒から、3色又は4色を用いるのが好ましい。これらの色からなる分割迷彩模様は、昼間においても、迷彩効果が大きいからである。また、淡グリーンは600〜1200nmの光線反射率が10〜55%程度であり、濃グリーンは6〜45%程度であり、茶は6〜30%程度であり、黒は3〜9%程度である。そして、波長が800nm以上になると、各色の反射率で近接する反射率であっても、約10〜20%の差となる。したがって、近赤外線の領域においても、これらの各色は迷彩効果の高いものである。これらの各色を印捺する方法としては、表地全面に一色に染色した後、その後、所定の箇所に他の色を印捺してもよいし、表地全面を染色することなく、各箇所に所定の色を印捺してもよい。また、これらの色を実現するには、以下のような染料又は顔料を混色すればよい。すなわち、CI Acid Blue 2,40,58,113,120,171,232,296、CI Acid Green 28,109、CI Acid Blown 289,298、CI Acid Black 58,112,132,170,194,222、CI Acid Orenge 149、CI Acid Yellow 127、CI Acid Red 266、カーボンブラック等の染料又は顔料を混色して作成すればよい。
【0010】
また、各色を構成する染料又は顔料だけでは、近赤外線反射率を調整するのが困難なときは、近赤外線を吸収しやすい赤外線吸収色素を混合してもよい。赤外線吸収色素としては、たとえば、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ナフトキノン・アントラキノン系色素、トリフェニールメタン系色素、アミニウム・ジインモニウム系色素、メルカプトナフトール金属錯塩系色素等を用いることができる。また、カーボンブラックは、近赤外線領域の全波長を吸収しやすく、適宜用いうるものである。
【0011】
顔料又は色素を用いたときには、迷彩模様を印捺するのに、バインダーを併用するのが好ましい。すなわち、バインダーを含む捺染液を、表地本体に所定模様となるよう塗布して乾燥させ、迷彩模様を印捺するのである。バインダーによって、表地本体に強固に迷彩模様を印捺しうるからである。バインダーとしては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の従来公知の樹脂が用いられる。このバインダーは、表地本体表面に塗布されるので、透湿性が低下しないような量に調整するのが好ましい。
【0012】
表地は撥水加工されているのが好ましい。すなわち、従来公知の撥水剤エマルジョンに表地を浸漬するか、又は表地の少なくとも裏面に塗布して、撥水加工を施すのが好ましい。撥水剤エマルジョンとしては、従来公知のフッ素系撥水剤エマルジョン、シリコーン系撥水剤エマルジョン或いはパラフィン系撥水剤エマルジョン等を使用しうる。本発明においては、フッ素系撥水剤エマルジョンを使用するのが好ましく、この中でも、フッ素系撥水剤中にパーフルオロオクタン酸が残留していたり或いはフッ素系撥水剤から経時的にパーフルオロオクタン酸が生成しにくいものを用いるのが好ましい。この理由は、パーフルオロオクタン酸は難分解性で、環境に残留する性質があるため、地球環境に好ましくないからである。かかるフッ素系撥水剤としては、側鎖に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するアクリレート化合物を重合して得られたものが代表的である。具体的には、旭硝子株式会社製「アサヒガード AG−E061」、ダイキン工業株式会社製「ユニダイン TG−5521」、日華化学株式会社製「NKガード SCH−02」、クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」等が挙げられる。
【0013】
表地を撥水加工する方法としても、従来公知の方法を採用しうる。具体的には、パディング法、コーティング法、グラビアコーティング法、スプレー法等の手段を採用しうる。たとえば、パディング法では、撥水剤エマルジョンに表地を浸漬後、マングルで絞り、所定の付与量に調整し、80〜150℃の温度で乾燥後、150〜180℃の温度で30秒〜2分間のキュアリングを行う。これによって、両面に撥水加工が施された表地が得られる。また、グラビアコーティング法では、高メッシュのグラビアロールを用いて表地の裏面のみに撥水剤エマルジョンを付着させ、その後、同様にして乾燥及びキュアリングを行う。これによって、裏面のみに撥水加工が施された表地が得られる。また、乾燥及びキュアリングを行った後、鏡面ロールを具備するカレンダー加工機を用いて、表地裏面の目潰し加工を行うのが好ましい。これは、後で表地裏面に塗布する微多孔膜形成用樹脂組成物が、表地に深く浸透するのを防止するためである。
【0014】
撥水剤の付与量は、表地中に、固形分換算で0.1〜3質量%が好ましく、0.3〜2質量%がより好ましい。付与量が0.1質量%未満になると、表地に十分な撥水性能を付与し難く、一方、3質量%を超えると、得られる透湿防水迷彩布帛の風合いが硬化しやくなったり、微多孔膜との接着性が低下したり、或いは微多孔膜の透湿性能に悪影響を及ぼす恐れが生じる。
【0015】
撥水剤エマルジョン中には、撥水耐久性を向上させる目的で、トリアジン化合物、イソシアネート化合物等を混合してもよい。これらの中では、環境面からイソシアネート化合物が好適である。また、撥水剤エマルジョンの加工安定性の面からは、イソシアネート基をアセトオキシム、フェノール、カプロラクタム等でブロックした熱解離タイプのブロックイソシアネート化合物がより好適である。
【0016】
表地裏面に積層されるポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜は、以下のような微多孔膜形成用樹脂組成物を、湿式凝固させて得られるものである。すなわち、かかる微多孔膜形成用樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂を主体とし、シリカ微粉末15〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%を含有する液状のものである。
【0017】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られる従来公知のものを採用しうる。ポリイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が単独で又は混合して用いられる。具体的には、トリレン−2,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート又は1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等を主成分として用い、必要に応じ3官能以上のポリイソシアネートを使用してもよい。一方、ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等が用いられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラエチレングリコール等が用いられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコールやプロピレングリコール等のジオールと、アジピン酸やセバチン酸等の二塩基酸との反応生成物、又はカプロラクトン等の開環重合物を用いることができ、勿論、オキシ酸モノマー或いはそのプレポリマーの重合物も用いることができる。
【0018】
ポリウレタン樹脂は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中において、50質量%以上含有しているのが好ましい。ポリウレタン樹脂含有量が少なくなると、相対的にシリカ微粉末等の含有量が多くなり、微多孔膜が脆くなる傾向が生じる。もちろん、微多孔膜が脆くならなければ、50質量%よりも若干少なくなっても差し支えない。
【0019】
シリカ微粉末としては、二酸化珪素よりなる微粉末であれば、従来公知のものを用いることができる。一般的に、一次粒子径が7〜40nm程度の二酸化珪素よりなる微粉末が用いられる。一次粒子径が40nmを超えると、微多孔膜中に形成される孔の径が大きくなり、耐水圧が低下する傾向が生じる。本発明においては、シリカ微粉末として、アモルファスのガラス状で細孔のない球状一次粒子からなるがフュームドシリカ微粉末を用いるのが好ましい。具体的には、親水性フュームドシリカ微粉末又は疎水性フュームドシリカ微粉末が用いられるが、本発明では特に疎水性フュームドシリカ微粉末を用いるのが好ましい。かかるシリカ微粉末は市販されているものであり、たとえば、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL 90」、「AEROSIL 130」、「AEROSIL 150」、「AEROSIL 200」、「AEROSIL 300」といった親水性フュームドシリカ微粉末、「AEROSIL R104」、「AEROSIL R106」、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RX300」、「AEROSIL R972」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL R976」、「AEROSIL R7200」、「AEROSIL R8200」、「AEROSIL R9200」といった疎水性フュームドシリカ微粉末が用いられる。また、シリカ微粉末として、フュームドシリカとフュームド酸化アルミニウムを混合させた微粉末である「AEROSIL COK84」も用いることができる。
【0020】
シリカ微粉末は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中において、15〜45質量%含有されている。本発明は迷彩布帛に係るものであることから、蒸れにくいことが要求され、シリカ微粉末の含有量が15質量%未満になると、透湿性が低下し蒸れやすくなるので、好ましくない。また、シリカ微粉末の含有量が45質量%を超えると、形成された微多孔膜が脆くなり、耐水圧が低下すると共に洗濯耐久性も低下するので、好ましくない。シリカ微粉末は微多孔膜形成用樹脂組成物中に比較的多量に含有されているが、均一に分散した状態で含有されているのが好ましい。シリカ微粉末を均一に分散するためには、予め、3本ロールミル機、ニーダー機又はサンドミル機等の混合機を用いて、ポリウレタン樹脂と混合しておき、その後、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製するのが好ましい。
【0021】
フッ素系撥水剤としては、従来公知のものが用いられる。本発明において、フッ素系撥水剤を使用するのは、フッ素系界面活性剤と混合しやすく、調製しやすく且つ塗布しやすい微多孔膜形成用樹脂組成物を得ることができるからである。本発明においては、フッ素系撥水剤の中でも、そこにパーフルオロオクタン酸が残留していたり或いはそこから経時的にパーフルオロオクタン酸が生成しにくいものを用いるのが好ましい。この理由は、パーフルオロオクタン酸は難分解性で、環境に残留する性質があるため、地球環境に好ましくないからである。かかるフッ素系撥水剤は、側鎖に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するアクリレート化合物を重合して得られたものである。具体的には、旭硝子株式会社製「アサヒガード AG−E061」、ダイキン工業株式会社製「ユニダイン TG−5521」、日華化学株式会社製「NKガード SCH−02」、クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」等が挙げられる。
【0022】
フッ素系撥水剤は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中において、1〜9質量%含有されている。フッ素系撥水剤の含有量が1質量%未満であると、洗濯を繰り返したとき、微多孔膜中の微孔に洗剤が吸着しやすくなるので、好ましくない。すなわち、微孔に洗剤が吸着していると、水を呼び込みやすくなり、洗濯耐久性(耐水圧の洗濯耐久性)が低下するので、好ましくない。また、フッ素系撥水剤の含有量が9質量%を超えると、微多孔膜形成用樹脂組成物の安定性が悪くなり、塗布しにくくなって、均一な微多孔膜が形成しにくくなる。この結果、微多孔膜に班が生じ、耐水圧及び洗濯耐久性共に低下するので、好ましくない。
【0023】
油溶性のフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基よりなる疎水基と、ポリオキシアルキレン基、スルホン酸基又はカルボン酸基等の親水基とを有し、界面活性能のあるものが採用される。ここで、油溶性とは、トルエンに対して50質量%以上溶解又は相溶するという意味である。すなわち、トルエン100質量部に対してフッ素系界面活性剤50質量部を混合攪拌したとき、1時間経過後においても、相分離を起こさないということである。本発明において、油溶性のフッ素系界面活性剤を用いる理由は、微多孔膜形成用樹脂組成物の溶媒が有機溶媒であることから、ここにフッ素系界面活性剤を均一に溶解又は分散させるためである。そして、フッ素系界面活性剤の界面活性能により、フッ素系撥水剤を均一に微多孔膜中に存在させるためである。油溶性のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−651」 、「SURFLON S−611」 、「SURFLON S−386」 及び「SURFLON S−243」等が用いられる。
【0024】
また、本発明においては、油溶性で且つ水溶性のフッ素界面活性剤を用いるのが、特に好ましい。微多孔膜形成用樹脂組成物中には水も存在しているため、フッ素系界面活性剤が油溶性で且つ水溶性である方が、微多孔膜形成用樹脂組成物中により均一に溶解又は分散するからである。ここで、水溶性とは、油溶性の場合と同様に、水に対して50質量%以上溶解又は相溶するという意味である。すなわち、水100質量部に対してフッ素系界面活性剤50質量部を混合攪拌したとき、1時間経過後においても、相分離を起こさないということである。油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」 や「SURFLON S−243」 等が用いられる。
【0025】
なお、本発明においては、水溶性であるが油溶性ではないフッ素系界面活性剤や、水溶性でも油溶性でもないフッ素系界面活性剤は使用することができない。たとえば、前者のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−241」 、「SURFLON S−221」 、「SURFLON S−211」 等が存在するが、このようなフッ素系界面活性剤は使用できない。また、後者のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−420」 等が存在するが、このようなフッ素系界面活性剤も使用できない。
【0026】
本発明で用いるフッ素系界面活性剤の化学構造の代表例は、疎水基として炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を持ち、親水基としてポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を持つものである。たとえば、側鎖に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と共にポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基を持つアクリレート化合物を重合させたオリゴマーが用いられる。また、ポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基を持つ化合物に、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を側鎖に持つアクリレート化合物を重合させたオリゴマーを付加させたものが用いられる。ここで、疎水基として、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基が用いられる理由は、フッ素系撥水剤の説明中でも述べたのと同様である。すなわち、地球環境に悪影響を与えるパーフルオロオクタン酸がフッ素系界面活性剤中に残留していたり或いはフッ素系界面活性剤から経時的に生成しにくいからである。
【0027】
油溶性のフッ素系界面活性剤は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中において、0.1〜2質量%含有されている。フッ素系界面活性剤の含有量が0.1質量%未満であると、微多孔膜形成用樹脂組成物の安定性や塗布性が悪くなり、形成される微多孔膜の耐水圧が低下すると共に洗濯耐久性も低下するので、好ましくない。また、フッ素系界面活性剤の含有量が2質量%を超えると、形成される微多孔膜の撥水性が低下し、耐水圧が低下すると共に洗濯耐久性も低下するので、好ましくない。
【0028】
微多孔膜形成用樹脂組成物中には、前記したポリウレタン樹脂、シリカ微粉末、フッ素系撥水剤及び油溶性のフッ素系界面活性剤の他に、第三成分として架橋性イソシアネート化合物が含有されているのが好ましい。これは、微多孔膜を形成するポリウレタン樹脂を架橋させ、微多孔膜の強度の向上や、微多孔膜と表地裏面との接着力の向上を図るためである。架橋性イソシアネート化合物は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中に1〜10質量%程度含有させるのが好ましい。架橋性イソシアネート化合物の含有量が1質量%未満であると、微多孔膜の強度向上や、微多孔膜と表地裏面との接着力向上が図りにくくなる。また、架橋性イソシアネート化合物の含有量が10質量%を超えると、微多孔膜の風合いが硬くなる傾向が生じる。
【0029】
架橋性イソシアネート化合物としては、トリレン2,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が用いられる。また、これらのジイソシアネート類3モルと、活性水素を含有する化合物1モルとの付加反応によって得られるトリイソシアネート類も用いられる。なお、活性水素を含有する化合物としては、たとえば、トリメチロールプロパン、グリセリン等を用いることができる。架橋性イソシアネート化合物のうち、特にブロックイソシアネートを用いると、微多孔膜形成用樹脂組成物の安定性及びポットライフの点で有利である。ブロックイソシアネートとしては、熱処理によって解離するタイプが好ましく、具体的には、フェノール、ラクタム、メチルケトオキシム等で付加ブロック体を形成させたものが好適である。
【0030】
さらに、第三成分としては、ポリウレタン樹脂以外の樹脂が少量、たとえば固形分中に20質量%以下程度含有されていてもよい。かかる樹脂としては、たとえば、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアミノ酸、ポリカーボネート等の重合体又は共重合体が用いられる。また、これらの重合体又は共重合体をフッ素やシリコン等で変成したものも用いられる。その他にも、第三成分として、顔料、フィラーなどの各種添加剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤等の各種機能材を含有させてもよい。
【0031】
微多孔膜形成用樹脂組成物中には、ポリウレタン樹脂、シリカ微粉末、フッ素系撥水剤及び油溶性のフッ素系界面活性剤を均一に溶解又は分散させるために、公知の有機溶媒が用いられる。特に、ポリウレタン樹脂に対する親溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドを用いるのが好ましい。有機溶媒の含有量も、従来公知の割合であって、概ね70〜85質量%程度である。
【0032】
表地裏面に、コンマコーターやナイフコーター等の公知の手段で微多孔膜形成用樹脂組成物を塗布した後、湿式凝固液に浸漬させることにより、微多孔膜が形成される。湿式凝固液としては、水又はN,N−ジメチルホルムアミドを5〜30質量%含有する水溶液が用いられる。凝固液の温度は5〜35℃程度が好ましく、凝固時間は30秒〜5分間程度である。湿式凝固液にて微多孔膜形成用樹脂組成物を凝固させ、微多孔膜が得た後、N,N−ジメチルホルムアミドを除去するため、35〜80℃の温度下で1〜10分間湯洗する。そして、湯洗後、50〜150℃の温度下で1〜10分間乾燥することにより、微多孔膜が形成された透湿防水迷彩布帛が得られるのである。微多孔膜の厚さは適宜設定しうる事項であるが、一般的には10〜50μm程度である。微多孔膜の厚さが薄くなると、耐水圧が低下する傾向があり、厚くなると風合いが低下する傾向が生じる。
【0033】
本発明においては、微多孔膜の表面に更に無孔膜を積層しても差し支えない。もちろん、無孔膜としては透湿性の無孔膜を採用するのであるが、無孔膜を積層すると、耐水圧が更に向上する。無孔膜としては、微多孔膜がポリウレタン樹脂を主体とするものであるから、微多孔膜との接着性が良好なポリウレタン樹脂膜を用いるのが好ましい。無孔膜を形成するには、無孔膜形成用樹脂組成物を微多孔膜表面に塗布して乾燥すればよい。また、離型紙等の離型基材表面に無孔膜形成用樹脂組成物を塗布して乾燥し、無孔膜を得た後、これを微多孔膜表面に積層貼合してもよい。無孔膜形成用樹脂組成物としては、一般的に、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に溶解させたものを用いる。有機溶媒としては、微多孔質膜表面に直接に無孔膜形成用樹脂組成物を塗布する場合は、N,N−ジメチルホルムアミドの含有率が少ない、或いはこれを全く含まないものを用いる方が好ましい。なぜなら、N,N−ジメチルホルムアミドは、ポリウレタン樹脂の親溶媒に当たるので、有機溶媒中にこれが多く含まれていると、微多孔膜の表層が侵蝕される恐れがあるからである。なお、離型基材表面に無孔膜形成用樹脂組成物を塗布して、一旦無孔膜を形成した後、微多孔質膜と熱圧着或いは接着剤にて貼合する方法を採用する場合には、有機溶媒中のN,N−ジメチルホルムアミドの含有率にこだわる必要はなく、乾燥性や圧着性等を考慮して行えばよい。
【0034】
無孔膜形成用樹脂組成物の粘度は、塗布しやすいように、100〜10000mPa・s(25℃)程度が好ましい。また、無孔膜形成用樹脂組成物の固形分含有量は、10〜30質量%程度であるのが好ましい。無孔膜形成用樹脂組成物を塗布して無孔膜を形成する手段としては、従来公知の方法を採用すればよい。たとえば、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター又は高メッシュ・低深度のグラビアロールを用いて、無孔膜形成用樹脂組成物を微多孔膜表面又は離型基材表面に塗布した後、乾燥して無孔膜を形成すればよい。
【0035】
無孔膜の厚さは、0.5〜12μm程度が好ましい。無孔膜の厚さが0.5μm未満であると、目的とする耐水圧の向上が不十分となる傾向が生じる。無孔膜の厚さが12μmを超えると、無孔膜自体の透湿度にもよるが、一般的に透湿度が低下する。
【0036】
本発明では、縫製の簡略化や着用多汗時のべたつき防止等の観点から、微多孔膜表面或いは無孔膜表面に接着剤を用いて、裏地を貼合するのが一般的である。すなわち、微多孔膜或いは無孔膜と裏地とを接着剤を介して貼合してもよい。このようにして得られた透湿防水性布帛は、表地/微多孔膜/接着剤/裏地、或いは表地/微多孔膜/無孔膜/接着剤/裏地の順で積層された形態となっている。
【0037】
裏地としては、コスト、風合い、軽量性及びシームテープ接着性等から鑑みて、繊度が15〜78デシテックスのポリアミド系合成繊維やポリエステル系合成繊維、或いは前記と同繊度クラスのポリアミド系合成繊維/木綿やポリエステル系合成繊維/木綿の混合繊維よりなる織編物、不織布などが好ましい。その中でも、繊度が15〜44デシテックスのポリアミド系長繊維或いはポリエステル系長繊維よりなる編織物又は不織布が、縫製部へのシームテープ接着の容易さやシーリング部分の防水性能、並びにそれらの耐久性が有利となるので、より好ましい。なお、シームテープとは、縫製品の縫い目に防水の目的で貼合する接着テープのことである。
【0038】
裏地を貼合するための接着剤としては、従来公知のものを採用すればよい。たとえば、天然ゴム、ニトリルゴム系やクロロプレンゴム系等の合成ゴム、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂等が単独で又は混合して用いられる。接着剤の種類としては、接着耐久性の観点から、硬化型接着剤を用いるのが好ましい。硬化型接着剤は、水酸基、イソシアネート基、アミノ基又はカルボキシル基等の反応基を持ついわゆる架橋性を有したポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等が自己架橋するか、或いはイソシアネート系化合物又はエポキシ系化合物等の架橋剤と架橋して、硬化するものである。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂が柔軟性に富み、かつ透湿性にも優れているので好ましい。
【0039】
また、接着剤の性状は、エマルジョン型、溶剤型或いはホットメルト型等のいずれであってもよい。エマルジョン型又は溶剤型の接着剤の場合は、粘度を500〜5000mPa・s程度として、グラビアロールやコンマコーター等の塗布手段で、微多孔膜表面、無孔膜表面又は裏地表面に、全面に又は部分的に塗布する。塗布後、微多孔膜又は無孔膜と裏地とをラミネート機で圧着又は熱圧着して貼合すればよい。また、ホットメルト型の接着剤の場合は、80〜180℃程度の温度をホットメルト型接着剤に与えて、溶融させた後、微多孔膜表面、無孔膜表面又は裏地表面に、全面に又は部分的に塗布する。そして、必要により冷却しながら、ラミネート機で微多孔膜又は無孔膜と裏地とを圧着して貼合すればよい。
【0040】
接着剤は、前記したように、微多孔膜等の表面に全面に又は部分的に適用される。透湿性能や風合いの観点からは、部分的に適用するのが好ましい。たとえば、点状、線状、市松模様、亀甲模様等の形態で、微多孔膜等の表面全体に亙って均一に適用するのが好ましい。接着剤の占有面積は、10〜80%程度が好ましい。接着剤の占有面積が10%未満では、接着剤の膜厚を厚くしても接着力が不十分となって、裏地が剥離しやすくなる傾向が生じる。また、接着剤の占有面積が80%を超えると、接着力は十分となりやすいが、特に透湿性能が低下する恐れが生じる。しかしながら、接着剤として透湿性のあるポリウレタン系接着剤を使用すれば、接着剤の占有面積が80%を超えても、差し支えない。適用した接着剤の厚さは、接着剤の占有面積や裏地の凹凸性やスパン感などにも依るが、5〜100μm程度でよい。接着剤の厚さが5μm未満では、裏地との接着力が不十分となる傾向が生じる。接着剤の厚さが100μmを超えると、透湿防水迷彩布帛の透湿性能が低下したり、風合いが硬化したりする傾向となる。
【0041】
以上の説明したように、本発明に係る透湿防水迷彩布帛は、布帛本体/微多孔膜、布帛本体/微多孔膜/無孔膜、布帛本体/微多孔膜/接着剤/裏地及び布帛本体/微多孔膜/無孔膜/接着剤/裏地の順で積層された各種のものがある。かかる透湿防水迷彩布帛に、さらに耐水圧を向上させるため、撥水加工を施してもよい。撥水加工の方法は、目潰し加工を行うことは少ないが、基本的には、表地を撥水加工する方法と同様にして行うことができる。なお、微多孔膜、無孔膜又は裏地面には、各種の柄印刷が施されていてもよい。透湿防水迷彩布帛を戦闘服等の素材ではなく、ファッション用迷彩衣料の素材として使用する場合には、かかる柄印刷は有益である。
【0042】
本発明にかかる透湿防水迷彩布帛は、耐水圧、透湿性及び洗濯耐久性に優れており、軍隊で採用される戦闘服の素材としてはもちろん、軍隊の装備品であるテント等の素材としても使用しうるものである。さらに、ファッション用の迷彩衣料の素材としても、使用しうるものである。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る透湿防水迷彩布帛は、表面に迷彩模様が施されている表地の裏面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜が積層されてなるものであって、微多孔膜が、シリカ微粉末15〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%が含有されてなる微多孔膜形成用樹脂組成物を用いて形成されたものである。このため、シリカ微粉末の存在により、孔径の小さな微孔が多数形成されると共に、フッ素系撥水剤と油溶性のフッ素系界面活性剤を併用しているため、微孔の細部までもフッ素系撥水剤が均一に付与される。また、透湿防水迷彩布帛に洗濯を繰り返すと、洗剤が微孔に残留してゆくが、油溶性のフッ素系界面活性剤は、その作用は定かではないが、この洗剤を水洗によって脱離しやすくする。したがって、本発明に係る透湿防水迷彩布帛は、当初の耐水圧及び透湿度にも優れているが、洗濯を繰り返しても当初の耐水圧が低下しにくく、洗濯耐久性に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1で得られた透湿防水迷彩布帛表面の迷彩模様に関して、淡グリーン、濃グリーン、茶及び黒の光線反射率を表したグラフである。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、微多孔膜形成用樹脂組成物中に、シリカ微粉末、フッ素系撥水剤及び油溶性のフッ素系界面活性剤を所定量含有させて微多孔膜を形成すると、洗濯耐久性に優れた透湿防水迷彩布帛が得られるとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0046】
実施例1
[表地の準備]
経糸、緯糸の双方に、ナイロン6マルチフィラメント122dtex/24fを用いて、経糸密度80本/2.54cm、緯糸密度76本/2.54cmで、格子間隔が縦・緯共に9mmのリップストップタフタを製織した。このリップストップタフタを、通常の方法により精錬を行った後、タフタ表面を多数の領域に分割し、下記4色の捺染液を用いて、各色が重ならないように印捺し、次いで120℃で5分間乾燥して迷彩模様をタフタ表面に施した。その後、高温スチーマーにより102℃で20分間加熱蒸熱処理を行った後、さらに150℃で1分間加熱処理を行った。そして、水洗後、界面活性剤1g/L及びソーダ灰1g/Lからなる水溶液で60℃で10分間洗浄した。その後、ナイロン用固着剤2g/L及び酢酸0.3g/Lからなる水溶液で60℃で5分間処理した後、水洗及び乾燥を行い、表面に迷彩模様が施された表地を得た。
【0047】
〈淡グリーン捺染液〉
Acid Yellow 127 0.3質量部
Acid Red 266 0.1質量部
Acid Blue 120 0.2質量部
カーボンブラック微粒子 0.04質量部
グアーガム(15質量%水溶液) 30質量部
尿素 5質量部
エチレングリコール 1質量部
ブチルセロソルブ 1質量部
エステル系ウレタン樹脂 8質量部
(DIC株式会社製「RYUDYE−W BINDER UF−770」)
ブロック化イソシアネート架橋剤 0.8質量部
(DIC株式会社製「RYUDYE−W FIXER 185」)
水 47.8質量部
【0048】
〈濃グリーン捺染液〉
Acid Yellow 127 1.5質量部
Acid Red 266 0.2質量部
Acid Blue 120 0.5質量部
カーボンブラック微粒子 0.1質量部
グアーガム(15質量%水溶液) 30質量部
尿素 5質量部
エチレングリコール 1質量部
ブチルセロソルブ 1質量部
エステル系ウレタン樹脂 10質量部
(DIC株式会社製「RYUDYE−W BINDER UF−770」)
ブロック化イソシアネート架橋剤 1質量部
(DIC株式会社製「RYUDYE−W FIXER 185」)
水 50質量部
【0049】
〈茶色捺染液〉
Acid Yellow 127 1.7質量部
Acid Red 266 1.0質量部
Acid Blue 120 0.2質量部
カーボンブラック微粒子 0.3質量部
グアーガム(15質量%水溶液) 30質量部
尿素 5質量部
エチレングリコール 1質量部
ブチルセロソルブ 1質量部
エステル系ウレタン樹脂 10質量部
(DIC株式会社製「RYUDYE−W BINDER UF−770」)
ブロック化イソシアネート架橋剤 1質量部
(DIC株式会社製「RYUDYE−W FIXER 185」)
水 50質量部
【0050】
〈黒色捺染液〉
Acid Black 194 8.0質量部
カーボンブラック微粒子 3.5質量部
グアーガム(15質量%水溶液) 30質量部
尿素 5質量部
エチレングリコール 1質量部
ブチルセロソルブ 1質量部
エステル系ウレタン樹脂 10質量部
(DIC株式会社製「RYUDYE−W BINDER UF−770」)
ブロック化イソシアネート架橋剤 1質量部
(DIC株式会社製「RYUDYE−W FIXER 185」)
水 44質量部
【0051】
続いて、表地へフッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード GS10」)の5%水分散液をパディング法(ピックアップ率40%)にて付与した後、乾燥し、その後170℃×40秒の熱処理を行った。続いて、一本が鏡面ロールである一対のカレンダーロールを用い、表地の裏面が鏡面ロールに当接するようにして、温度175℃、圧力300kPa、速度25m/分の条件でカレンダー加工して、表地の裏面が目潰し加工されると共に全体に撥水加工が施された表地を得た。
【0052】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
まず、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)30質量部、シリカ微粉末である疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL R−972」、一次粒子径16nm、N,N−ジメチルホルムアミドの吸着量260mL/100g)10質量部及びN,N−ジメチルホルムアミド10質量部を混合して粗練り後、3本ロールミル機を用いて均一練りを行い、無色透明の樹脂溶液A50質量部を準備した。
【0053】
次に、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド42質量部に相溶させた後、フッ素系撥水剤エマルジョン(クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」、固形分31質量%)6質量部を混合分散させて、樹脂溶液B48.2質量部を準備した。
【0054】
そして、樹脂溶液A50質量部と、樹脂溶液B48.2質量部と、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)50質量部と、架橋性イソシアネート化合物(大日精化工業株式会社製「レザミンX」)2質量部と、着色剤(DIC株式会社製「DILAC GREEN L−5799K」、顔料分約20質量%)8質量部を混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が11000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は5質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0055】
[裏地の準備]
ナイロンフィラメント22デシテックス/7 フィラメントを用いて、28ゲージのトリコット地を編成し、通常の方法により、精練を行い、裏地を準備した。
【0056】
[透湿防水性布帛の製造]
表地裏面(鏡面ロールが当接した面)に、微多孔膜形成用樹脂組成物をコンマコーターにて塗布量110g/m2で塗布した。その後、濃度15質量%のN,N−ジメチルホルムアミド水溶液(20℃)からなる凝固浴に2分間浸漬することで、ポリウレタン樹脂を凝固させた。そして、50℃で5分間の湯洗を行い、表地をマングルで絞り、続いて、130℃で2分間の乾燥を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成した。その後、170℃で1分間のセット加工を行って、表地裏面に微多孔膜を形成した。なお、得られた微多孔膜の厚さは約30μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0057】
形成された微多孔膜表面に、ドット柄が彫刻されたグラビアロール(20メッシュ)を用いて、湿気硬化型ポリウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(三井武田ケミカル株式会社製「タケメルト MA3229」)を塗布量10g/ m2にて塗布した。そして、塗布面に前記裏地を積層し、圧力300kPaで圧着した。その後、常温で3日間のエージングを行って透湿防水迷彩布帛を得た。得られた迷彩布帛の光線反射率を図1に示した。同図によれば、全ての色で段階的に反射率が異なっており、特に800〜1200nmの波長領域において略均等な差をもって反射率が異なっており、その結果、優れた迷彩効果を発揮することが理解できる。
【0058】
実施例2
[無孔膜形成用樹脂組成物の調製]
下記に示す無孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この無孔膜形成用樹脂組成物は、固形分が13重量%であり、粘度が2000mPa・s/25℃であった。なお、無孔膜形成用樹脂組成物の溶媒中に、N,N−ジメチルホルムアミドは殆ど含有されておらず、その含有率は1質量%未満であった。
[無孔膜形成用樹脂組成物]
無黄変型ポリウレタン樹脂 100質量部
(大日精化工業株式会社製「ハイムレン Y301−3」)
イソプロピルアルコール 20質量部
トルエン 40質量部
【0059】
実施例1で得られた微多孔膜表面に、前記無孔膜形成用樹脂組成物をナイフコーターを用いて、固形分の塗布量が15g/m2となるように塗布した。そして、120℃で2分間の乾燥により約2μm厚の無孔膜を形成した。その後、無孔膜表面に実施例1と同一の方法により、接着剤を塗布し、裏地を貼合して、透湿防水迷彩布帛を得た。
【0060】
比較例1
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1で準備した無色透明の樹脂溶液A15質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)85質量部及びN,N−ジメチルホルムアミド35質量部を混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が22質量%であり、粘度が11000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は10質量%含有されており、フッ素系撥水剤及びフッ素系界面活性剤は含有されていない。
【0061】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1で使用した微多孔膜形成用樹脂組成物に代えて、前記微多孔膜形成用樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同一の方法で透湿防水迷彩布帛を得た。表地と裏地の間に存在する微多孔膜の厚さは約60μmであり、全体に亙って10〜40μm程度の孔径を主体とする孔が多数形成されていた。
【0062】
比較例2
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1で準備した無色透明の樹脂溶液A100質量部及びN,N−ジメチルホルムアミド40質量部を混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が26質量%であり、粘度が11000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は54質量%含有されており、フッ素系撥水剤及びフッ素系界面活性剤は含有されていない。
【0063】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1で使用した微多孔膜形成用樹脂組成物に代えて、前記微多孔膜形成用樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同一の方法で透湿防水迷彩布帛を得た。表地と裏地の間に存在する微多孔膜の厚さは約30μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0064】
比較例3
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1で使用したフッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード AG710」、固形分19質量%)の量を5質量部から、20質量部に変更する他は、実施例1と同一の方法で微多孔膜形成用樹脂組成物を調整した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が23質量%であり、粘度が11000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は25質量%含有されており、フッ素系撥水剤は15質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.5質量%含有されているものである。
【0065】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1で使用した微多孔膜形成用樹脂組成物に代えて、前記微多孔膜形成用樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同一の方法で透湿防水迷彩布帛を得た。表地と裏地の間に存在する微多孔膜の厚さは約30μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0066】
比較例4
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1で使用した油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)の量を0.2質量部から、1質量部に変更する他は、実施例1と同一の方法で微多孔膜形成用樹脂組成物を調整した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が23質量%であり、粘度が11000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は27質量%含有されており、フッ素系撥水剤は4質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は3質量%含有されているものである。
【0067】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1で使用した微多孔膜形成用樹脂組成物に代えて、前記微多孔膜形成用樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同一の方法で透湿防水迷彩布帛を得た。表地と裏地の間に存在する微多孔膜の厚さは約30μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0068】
実施例1、2及び比較例1〜4で得られた透湿防水迷彩布帛に関して、耐水圧、洗濯耐久性及び透湿度を、以下の方法で測定した。そして、その結果を表1に示した。
(1)耐水圧(kPa)
JIS L−1092(高水圧法)に準じて測定した。
(2)洗濯耐久性(%)
JIS L−0217(103法)に準じた洗濯を100回繰り返した後の透湿防水性布帛の耐水圧(B)を測定し、下記式に準じて洗濯前の耐水圧(A)に対する洗濯後の耐水圧(B)の保持率を算出し、この値を透湿防水性布帛の洗濯耐久性(%)とした。
洗濯耐久性(%)=(B/A)×100
(3)透湿度(g/m2・24hrs)
JIS L−1099 A−1法(塩化カルシウム法)に準じて測定した。
【0069】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
耐 水 圧
━━━━━━━━━━━━━━
洗濯前 100回洗濯後 洗濯耐久性 透湿度
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 227 173 76 10145
実施例2 450 405 90 8796
───────────────────────────────────
比較例1 145 75 52 7650
比較例2 212 96 45 8373
比較例3 108 60 56 9879
比較例4 122 41 34 9660
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0070】
実施例1、2と比較例1〜4とを対比すると、実施例に係る透湿防水迷彩布帛は、比較例に係るものに比べて、いずれも耐水圧が高く、洗濯耐久性も良好であることが分かる。この理由は、以下のとおりであると考えられる。比較例1に係る方法で得られた透湿防水迷彩布帛は、シリカ微粉末の使用量が少ないため、微多孔膜に比較的大きな孔が形成されており、このため、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例2に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、シリカ微粉末の使用量が多すぎるため、形成された微多孔膜が脆くなり、このため、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例3に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜形成用樹脂組成物中に含有されているフッ素系撥水剤の量が多すぎるため、微多孔膜形成時に班が生じる。この結果、微多孔膜が均一に形成されないので、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例4に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜中に含有されている油溶性のフッ素系界面活性剤の量が多すぎるため、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。すなわち、微多孔膜に所定量のシリカ微粉末とフッ素系撥水剤と油溶製のフッ素系界面活性剤が存在すると、高耐水圧のものが得られると共に、洗濯耐久性が向上するのである。
【0071】
次に、油溶性のフッ素系界面活性剤を用いなければ、洗濯耐久性の良好な透湿防水布帛が得られないことを、以下の実施例及び比較例により実証する。
【0072】
実施例11
[表地の準備]
経糸、緯糸の双方に、ナイロン6マルチフィラメント78dtex/68fを用いて、経糸密度115本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmの平組織織物を製織した。得られた平組織織物を精練した後、酸性染料(日本化薬株式会社製「Kayanol Blue N2G」)1.0%omfを用いて染色して、染色織物を得た。その後、染色織物へフッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード GS10」)の5%水分散液をパディング法(ピックアップ率40%)にて付与した後、乾燥し、その後170℃×40秒の熱処理を行った。続いて、一本が鏡面ロールである一対のカレンダーロールを用い、表地の裏面が鏡面ロールに当接するようにして、温度170℃、圧力300kPa、速度30m/分の条件でカレンダー加工して、表地を得た。
【0073】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
まず、実施例1で用いた無色透明の樹脂溶液A50質量部を準備した。次に、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド40質量部に相溶させた後、フッ素系撥水剤エマルジョン(クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」、固形分31質量%)7質量部を混合分散させて、樹脂溶液B47.2質量部を準備した。
【0074】
そして、樹脂溶液A50質量部と、樹脂溶液B47.2質量部と、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)50質量部と、架橋性イソシアネート化合物(大日精化工業株式会社製「レザミンX」)2質量部とを混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は6質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0075】
[透湿防水布帛の製造]
表地裏面(鏡面ロールが当接した面)に、微多孔膜形成用樹脂組成物をコンマコーターにて塗布量90g/m2で塗布した。その後、濃度15質量%のN,N−ジメチルホルムアミド水溶液(20℃)からなる凝固浴に2分間浸漬することで、ポリウレタン樹脂を凝固させた。そして、50℃で5分間の湯洗を行い、表地をマングルで絞り、続いて、130℃で2分間の乾燥を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成した。その後、170℃で1分間のセット加工を行って、透湿防水布帛を得た。なお、得られた微多孔膜の厚さは約25μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0076】
実施例12
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)を0.2質量部用いるのに代えて、これを0.5質量部を用いて混合分散させる他は、実施例11と同一の方法により、防水透湿布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は6質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は1.4質量%含有されていることになる。
【0077】
実施例13
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、油溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−611」。これは水溶性ではない。)0.2質量部を用いて混合分散させる他は、実施例11と同一の方法により、防水透湿布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は6質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0078】
実施例14
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、油溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−651」。これは水溶性ではない。)0.2質量部を用いて混合分散させる他は、実施例11と同一の方法により、防水透湿布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は6質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0079】
実施例15
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−243」)0.2質量部を用いて混合分散させる他は、実施例11と同一の方法により、防水透湿布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は6質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0080】
比較例11
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−241」。固形分濃度30質量%。これは油溶性ではない。)0.6質量部を用いて混合分散させる他は、実施例11と同一の方法により、防水透湿布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は6質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0081】
比較例12
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−241」。固形分濃度30質量%。これは油溶性ではない。)1.5質量部を用いて混合分散させる他は、実施例11と同一の方法により、防水透湿布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は6質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は1.4質量%含有されていることになる。
【0082】
比較例13
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−221」。固形分濃度30質量%。これは油溶性ではない。)0.6質量部を用いて混合分散させる他は、実施例11と同一の方法により、防水透湿布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は6質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0083】
実施例11〜15及び比較例11〜13で得られた透湿防水布帛に関して、耐水圧、洗濯耐久性及び透湿度を、実施例1で採用した方法と同一の方法で測定した。その結果を表2に示した。
【0084】
[表2]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
耐 水 圧
━━━━━━━━━━━━━━
洗濯前 100回洗濯後 洗濯耐久性 透湿度
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例11 192 136 71 11892
実施例12 180 133 74 11824
実施例13 162 115 71 11790
実施例14 152 93 61 12707
実施例15 118 78 66 12129
───────────────────────────────────
比較例11 82 43 52 11391
比較例12 76 37 49 11832
比較例13 92 44 48 12206
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0085】
実施例11〜15と比較例11〜13とを対比すると、実施例に係る透湿防水布帛は、比較例に係るものに比べて、いずれも耐水圧が高く、洗濯耐久性も良好であることが分かる。この理由は、以下のとおりであると考えられる。比較例11〜13に係る方法で得られた透湿防水布帛は、いずれも、微多孔膜中に油溶性のフッ素系界面活性剤が含有されておらず、油溶性ではなく水溶性のフッ素系界面活性剤が含有されているので、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。すなわち、微多孔膜中に、油溶性のフッ素系界面活性剤と、シリカ微粉末と、フッ素系撥水剤とが所定量存在していると、得られる透湿防水布帛の洗濯耐久性が向上するのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に迷彩模様が施されている表地の裏面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜が積層されてなる透湿防水迷彩布帛において、前記微多孔膜には、シリカ微粉末15〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%が含有されていることを特徴とする透湿防水迷彩布帛。
【請求項2】
迷彩模様が、少なくとも3種類の色彩が分割されて印捺されており、各色彩の600〜1200nmの光線反射率は2%以上65%以下の範囲内であって、かつ、異なった反射率となっている請求項1記載の透湿防水迷彩布帛。
【請求項3】
フッ素系界面活性剤は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基よりなる疎水基と、ポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基よりなる親水基を有している請求項1記載の透湿防水迷彩布帛。
【請求項4】
シリカ微粉末がフュームドシリカ微粉末である請求項1記載の透湿防水迷彩布帛。
【請求項5】
フッ素系撥水剤が、側鎖に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するアクリレート化合物を重合して得られたものである請求項1記載の透湿防水迷彩布帛。
【請求項6】
表地の少なくとも裏面が撥水加工されている請求項1記載の透湿防水迷彩布帛。
【請求項7】
微多孔膜表面に、ポリウレタン樹脂を主体とする無孔膜が積層されてなる請求項1記載の透湿防水迷彩布帛。
【請求項8】
微多孔膜と裏地とが、接着剤を介して貼合されてなる請求項1記載の透湿防水迷彩布帛。
【請求項9】
無孔膜と裏地とが、接着剤を介して貼合されてなる請求項8記載の透湿防水迷彩布帛。
【請求項10】
表面に迷彩模様が施されている表地の裏面に、ポリウレタン樹脂を主体とし、シリカ微粉末15〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%を、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解又は分散させてなる微多孔膜形成用樹脂組成物を塗布した後、N,N−ジメチルホルムアミドを5〜30質量%含有する水溶液に浸漬して、該微多孔膜形成用樹脂組成物を凝固させて微多孔膜を形成することを特徴とする透湿防水迷彩布帛の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法により微多孔膜を形成した後、該微多孔膜と裏地とを接着剤によって貼合する透湿防水迷彩布帛の製造方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法により微多孔膜を形成した後、該微多孔膜表面に、ポリウレタン樹脂を主体とする無孔膜を形成し、その後、該無孔膜と裏地とを接着剤によって貼合する透湿防水迷彩布帛の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−163729(P2010−163729A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9388(P2009−9388)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(592197315)ユニチカトレーディング株式会社 (84)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
【Fターム(参考)】