説明

通信システム

【課題】第2端末装置で受信する伝送信号の信号レベルの変動幅を低減する。
【解決手段】主装置Mでは、第1の伝送路Ls1における伝送損失を第1の中継アンプ60の利得調整によって補償するとともに、第2の伝送路Ls2に対する第2端末装置TU2の接続台数に応じた減衰量を第2の中継アンプ61の利得調整によって補償している。従って、第2端末装置TU2において第2の伝送路Ls2を介して受信する映像信号の信号レベルの変動幅を低減することができる。その結果、通信システムにおいて第2の伝送路Ls2に接続可能な第2端末装置TU2の台数に課される制約を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の通信システムの一例として、カメラ付きドアホン子器(第1端末装置)とインターホン親機(主装置)が2線式の信号線(第1の伝送路)を介して接続されるとともに、インターホン親機とインターホン副親機(第2端末装置)が同じく2線式の信号線(第2の伝送路)を介して接続され、カメラ付きドアホン子器から信号線(第1の伝送路)を介して送信される映像信号(伝送信号)をインターホン親機で受信し、インターホン親機が具備する表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイなど)にカメラ付きドアホン子器で撮像された映像を表示するとともに、インターホン親機から信号線(第2の伝送路)を介してインターホン副親機に映像信号(伝送信号)を中継し、インターホン副親機が具備する表示デバイスでも同一の映像を表示することができるテレビインターホンシステムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、カメラ付きドアホン子器から第1の伝送路を介して伝送される映像信号が第1の伝送路の伝送損失によって減衰するため、インターホン親機では受信した映像信号の信号パワーを求めて第1の伝送路の伝送損失を推定し当該伝送損失を補償するように映像信号を増幅している。また、インターホン副親機にはインターホン親機で増幅された映像信号が第2の伝送路を介して中継されるが、インターホン副親機で受信する映像信号も第2の伝送路の伝送損失によって減衰するから、インターホン副親機においても受信した映像信号の信号パワーを求めて第2の伝送路の伝送損失を推定し当該伝送損失を補償するように映像信号を増幅している。
【0004】
この種の主装置の一例を図5に示す。この従来システムではTDMA(時分割多重接続)方式の通信を行っており、図6に示すように図示しない同期信号で規定される複数のタイムスロットTM1,TM2,…で伝送信号が送受信される。かかる従来システムの主装置では、信号処理部100によってディジタル変調された伝送信号(同期信号)がD/A変換部101でディジタル−アナログ変換され、ローパスフィルタ102を介して送信用増幅回路103で所望の信号パワーまで増幅された後、伝送路Ls1を介して送信される。また、タイムスロットTM1やTM3で第1の伝送路Ls1から受信した伝送信号は、ローパスフィルタ104を介して受信用増幅回路105で増幅された後にA/D変換部106でアナログ−ディジタル変換され、信号処理部100でディジタル復調される。さらに、第1の伝送路Ls1から受信した伝送信号はローパスフィルタ104を介して中継用増幅回路107で増幅された後に第2の伝送路Ls2に送信(中継)される。ここで、一般にディジタル−アナログ変換された信号は高帯域側に折り返し雑音(エイリアス)を含んでいるため、D/A変換部101の後段にローパスフィルタ102を設けることで不要な高周波数成分を除去している。同様に、受信系のアナログ−ディジタル変換においても折り返し雑音による影響を抑制するため、A/D変換部106の前段にローパスフィルタ104を設けることで不要な高周波数成分を除去している。
【0005】
信号処理部100では、第1の伝送路Ls1から受信した伝送信号(フレーム)の先頭部分(プリアンブル)で信号パワーを求めて第1の伝送路Ls1の伝送損失を推定するとともに当該伝送損失を補償するために必要な受信用増幅回路105の利得(利得制御値)を演算し、伝送信号の先頭部分を受信しているタイミングで受信用増幅回路105の利得を利得制御値に制御する。そして、受信用増幅回路105で増幅した伝送信号を第2の伝送路Ls2に中継すれば、第1の伝送路Ls1の伝送損失が補償されているために第2の伝送路Ls2に接続される第2端末装置(例えば、インターホン副親機など)の受信感度が向上できる。
【0006】
ここで、第2の伝送路Ls2に接続される第2端末装置において第2の伝送路Ls2の伝送損失を補償するために伝送信号(受信信号)を増幅する増幅回路の利得を制御しようとした場合、伝送信号の信号パワーがフレームの途中で変動することは避けなければならない。従って、受信用増幅回路105においてフレーム途中で利得制御された伝送信号をそのまま第2の伝送路Ls2に中継することができないので、図5に示す従来例では、受信用増幅回路105とは別に中継用増幅回路107を備え、第2の伝送路Ls2に中継する伝送信号についてはタイムスロットTMの間で利得制御することでフレームの先頭から増幅されるようにしている(図6参照)。
【特許文献1】特開2001−45469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、第2の伝送路Ls2を介して主装置から送信(中継)される伝送信号の信号レベルは、中継用増幅回路107の出力インピーダンスと、第2の伝送路Ls2に接続される負荷インピーダンス、すなわち、第2の伝送路Ls2に接続される第2端末装置の入力インピーダンスの合成インピーダンスとによって決まるため、第2の伝送路Ls2に対する第2端末装置の接続台数によって変動し、第2の伝送路Ls2を介して主装置から伝送(中継)される伝送信号の信号レベルにばらつきが生じる。そのため、第2端末装置においては、主装置から伝送される伝送信号の信号レベルのばらつきに第2の伝送路Ls2における伝送損失が加わることで受信した信号レベルの変動幅が大きくなってしまい、その結果、第2の伝送路Ls2を介して主装置に接続可能な第2端末装置の台数に制約を受けることになる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、第2端末装置で受信する伝送信号の信号レベルの変動幅を低減することができる通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、第1の伝送路を介して伝送信号を伝送する1乃至複数の第1端末装置と、第1端末装置から第1の伝送路を介して伝送される伝送信号を受信する主装置と、主装置より第2の伝送路を介して中継される前記伝送信号を受信する1乃至複数の第2端末装置とで構成され、主装置は、第1の伝送路と第2の伝送路を繋ぐ中継経路と、当該中継経路を介して伝送される伝送信号を受信する受信手段と、受信手段で受信する伝送信号に基づいて第1の伝送路における伝送損失を推定する伝送損失推定手段と、受信手段の受信点よりも第1の伝送路側で中継経路に挿入されて伝送損失推定手段が推定した推定値に応じて伝送信号の信号レベルを調整する第1の調整手段と、中継経路から第2の伝送路へ伝送される伝送信号の減衰量を推定する減衰量推定手段と、受信手段の受信点よりも第2の伝送路側で中継経路に挿入されて減衰量推定手段が推定した減衰量に応じて伝送信号の信号レベルを調整する第2の調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1の発明によれば、第1端末装置から第1の伝送路を介して受信した伝送信号の伝送損失を第1の調整手段による信号レベル調整で補償するとともに、中継経路から第2の伝送路へ伝送される伝送信号の信号レベルを第2の調整手段で調整しているので、第2端末装置で受信する伝送信号の信号レベルの変動幅を低減することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、第1の調整手段は、伝送信号が伝送されていないタイミングで信号レベルの調整を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明によれば、従来例のように主装置において受信と中継とで個別に信号レベルの調整を行う必要がないから構成の簡素化が図れる。
【0013】
請求項3の発明は、上記目的を達成するために、第1の伝送路を介して伝送信号を伝送する1乃至複数の第1端末装置と、第1端末装置から第1の伝送路を介して伝送される伝送信号を受信する主装置と、主装置より第2の伝送路を介して中継される前記伝送信号を受信する1乃至複数の第2端末装置とで構成され、主装置は、第1の伝送路と第2の伝送路を繋ぐ中継経路と、当該中継経路を介して伝送される伝送信号を受信する受信手段と、受信手段で受信する伝送信号に基づいて中継経路から第2の伝送路へ伝送される伝送信号の減衰量を推定する減衰量推定手段と、受信手段の受信点よりも第1の伝送路側で中継経路に挿入されて減衰量推定手段が推定した減衰量に応じて伝送信号の信号レベルを調整する調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明によれば、中継経路から第2の伝送路へ伝送される伝送信号の信号レベルを調整手段で調整しているので、第2端末装置で受信する伝送信号の信号レベルの変動幅を低減することができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、調整手段は、伝送信号が伝送されていないタイミングで信号レベルの調整を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明によれば、調整手段が伝送信号の先頭部分のタイミングと伝送信号が伝送されていないタイミングの双方で信号レベルを調整する場合と比較して構成の簡素化が図れる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、第1端末装置は、第1の伝送路を介して伝送信号を送信する送信手段と、送信手段から送信される伝送信号の減衰量を推定する減衰量推定手段と、減衰量推定手段が推定した減衰量に応じて送信手段が送信する伝送信号の信号レベルを調整する調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明によれば、第1端末装置から第1の伝送路を介して主装置へ伝送される伝送信号の伝送損失を調整手段による信号レベル調整で補償するので、主装置を経由して第2端末装置で受信する伝送信号の信号レベルの変動幅をさらに低減することができる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、主装置は、第1の伝送路を介して伝送信号を送信する送信手段を備え、第1端末装置は、第1の伝送路を介して伝送信号を送信する送信手段と、第1の伝送路を介して伝送信号を受信する受信手段と、受信手段で受信する伝送信号に基づいて第1の伝送路における伝送損失を推定する伝送損失推定手段と、伝送損失推定手段が推定した推定値に応じて受信手段で受信する伝送信号の信号レベルを調整する第1の調整手段と、伝送損失推定手段が推定した伝送損失に応じて送信手段が送信する伝送信号の信号レベルを調整する第2の調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明によれば、第1端末装置から第1の伝送路を介して主装置へ伝送される伝送信号の伝送損失を第1の調整手段による信号レベル調整で補償するとともに、第1の伝送路を介して伝送される伝送信号の信号レベルを第2の調整手段で調整しているので、主装置を経由して第2端末装置で受信する伝送信号の信号レベルの変動幅をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第2端末装置で受信する伝送信号の信号レベルの変動幅を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態の通信システムは、図1に示すように第1の伝送路Ls1を介して映像信号(伝送信号)を送信する複数台の第1端末装置TU1と、同期信号を送信するとともに第1端末装置TU1から時分割多重伝送される映像信号を第1の伝送路Ls1を介して受信して映像を表示する主装置Mと、第1端末装置TU1から時分割多重伝送される映像信号を主装置M経由で第2伝送路Ls2を介して受信して映像を表示する複数台の第2端末装置TU2とで構成されている。ここで、第1及び第2の伝送路Ls1,Ls2にはペア線などの平衡線路を用いているが、同軸線のような不平衡線路であっても構わない。あるいは、LANケーブルなどのツイストペアケーブルの1ペアやCPEVケーブルの1ペアを伝送路Ls1,Ls2として利用しても構わない。
【0024】
第1端末装置TU1は、CPUを主構成要素とする端末制御部7と、第1の伝送路Ls1を介して主装置Mから伝送される同期信号を受信する受信部8と、第1の伝送路Ls1を介して主装置Mへ伝送信号(映像信号)を時分割多重伝送する送信部9と、固体撮像素子やレンズ等の光学系を有する撮像手段(図示せず)とを備え、端末制御部7において撮像手段の出力をディジタル信号に変換し、ディジタルの映像信号(映像データ)を変調するとともに変調した映像信号を送信部9より第1の伝送路Ls1を介して時分割多重伝送するものである。
【0025】
送信部9は、ローパスフィルタからなる送信フィルタ90と、利得調整用のアンプ91と、出力用のアンプ92と、線路に挿入された出力抵抗93と、アンプ91の利得を調整する利得調整部94とで構成される。また、受信部8は、受信用のバッファ80と、ローパスフィルタからなる受信フィルタ81と、利得調整用の受信アンプ82とで構成される。
【0026】
主装置Mは、CPUを主構成要素とする制御部1と、第1の伝送路Ls1が接続される第1の信号端子2と、第1の信号端子2より第1の伝送路Ls1を介して同期信号(後述する)を送信する送信部3と、第2の伝送路Ls2が接続される第2の信号端子4と、第1の信号端子2から第2の信号端子4へ至る中継経路に設けられて映像信号(伝送信号)を受信する受信部5と、中継経路において受信部5の後段(第2の信号端子4に近い側)に設けられて映像信号を第2の信号端子4から第2の伝送路Ls2へ送信(中継)する中継部6とを備えている。
【0027】
送信部3は、ローパスフィルタからなる送信フィルタ30と、利得調整用のアンプ31と、出力用のアンプ32と、線路に挿入された出力抵抗33とで構成される。また、受信部5は、受信用のバッファ50と、ローパスフィルタからなる受信フィルタ51とで構成される。さらに、中継部6は、利得が可変であって受信フィルタ51から出力される映像信号を増幅する第1の中継アンプ60と、同じく利得が可変であって第1の中継アンプ60から出力される映像信号を増幅する第2の中継アンプ61と、第2の中継アンプ61の出力側に接続された出力用のアンプ62と、アンプ62の出力端と第2の信号端子4との間に挿入された出力抵抗63と、第2の中継アンプ61の利得を調整する利得調整部64とで構成される。ここで、制御部1では中継経路における第1の中継アンプ60の出力端と第2の中継アンプ61の入力端との間の位置(以下、「受信点」と呼ぶ。)Xから映像信号を取り込んでいる。
【0028】
制御部1は、受信した映像信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換した後に復調(ディジタル復調)し、復調した映像信号(映像データ)から元の映像を再構成するとともに、再構成した映像を図示しない表示デバイス(液晶ディスプレイなど)に表示させる映像再生処理と、後述する映像信号の利得制御処理と、時分割多重伝送するためのタイムスロットを規定する同期信号の送信処理とを行っている。
【0029】
第2端末装置TU2は、主装置Mと同様に液晶ディスプレイなどの表示デバイスを有し、第2の伝送路Ls2を介して主装置M経由で受信した映像信号の増幅、復調、信号処理(映像の再構成)を行って表示デバイスに表示するものである。
【0030】
次に、本発明の要旨である主装置Mの利得制御処理と第1端末装置TU1の利得制御処理について説明する。
【0031】
主装置Mの制御部1は、中継経路の受信点Xから取り込んだ映像信号(フレーム)の先頭部分(プリアンブル)で信号レベルを求めて第1の伝送路Ls1の伝送損失を推定するとともに当該伝送損失を補償するために第1の中継アンプ60において必要な利得(利得制御値)を演算する機能モジュール1aを有している。すなわち、この機能モジュール1aが伝送損失推定手段に相当し、第1の中継アンプ60が第1の調整手段に相当する。尚、かかる機能モジュール1aはソフトウェアによって実現される。
【0032】
また機能モジュール1aは、2つの出力バッファB1,B2を介して第1の中継アンプ60に対して利得制御を行うための利得制御信号を出力する。以下では説明を簡単にするため、一方の出力バッファB1から出力する利得制御信号を第1の利得制御信号と呼び、他方の出力バッファB2から出力する利得制御信号を第2の利得制御信号と呼ぶことにする。これら2つの出力バッファB1,B2から第1の中継アンプ60へは第1又は第2の利得制御信号の何れか一方が択一的に出力される。尚、第1の中継アンプ60では第1及び第2の利得制御信号によって利得が調整される。
【0033】
而して、従来技術で説明したように複数のタイムスロットTM1,TM2,…でそれぞれ異なる第1端末装置TU1から送信された映像信号を主装置Mが受信するとした場合、制御部1の機能モジュール1aでは、各タイムスロットTM1,TM2,…で受信する映像信号の先頭部分(プリアンブル)で当該映像信号の信号レベルを求めて各タイムスロットTM1,TM2,…毎の第1の伝送路Ls1の伝送損失を推定するとともに各伝送損失を補償するために必要な利得制御値をそれぞれ演算する。ここで、各タイムスロットTM1,TM2,…で映像信号を送信する個々の第1端末装置TU1までの第1の伝送路Ls1の伝送距離が異なっているような場合、タイムスロットTM1,TM2,…毎に第1の伝送路Ls1の伝送損失が異なり、その結果、伝送損失を補償するために必要な利得制御値も異なってくる。
【0034】
そこで、各タイムスロットTM1,TM2,…毎の伝送損失を演算して利得制御値を確定するまでは、映像信号の先頭部分を受信しているタイミングで出力バッファB1から第1の利得制御信号を出力することで第1の中継アンプ60の利得を一定の利得制御値に調整する。一方、各タイムスロットTM1,TM2,…毎に第1の伝送路Ls1の伝送損失を補償するための利得制御値が確定すれば、次回の各タイムスロットTM1,TM2,…の開始前のタイミングで各タイムスロットTM1,TM2,…に対応した利得制御値とするための第2の利得制御信号を出力バッファB2から出力する。その結果、第1の中継アンプ60からは第1の伝送路Ls1における伝送損失がその先頭部分より補償された映像信号が出力されることになる。故に、本実施形態によれば、従来例のように主装置1において受信用の増幅器と別に中継用の増幅器を設ける必要がないから、構成の簡素化が図れる。
【0035】
一方、中継部6の利得調整部64は、出力抵抗63と第2の信号端子4の接続点から映像信号を取り込み、当該映像信号の先頭部分(プリアンブル)において信号レベルを求める。すなわち、第2の伝送路Ls2に接続される第2端末装置TU2の台数が増えるにつれて第2の信号端子4より第2の伝送路Ls2へ送出される映像信号の減衰量も増大するので、利得調整部64では第2端末装置TU2の接続台数に応じた映像信号の減衰量を推定し、推定した減衰量を補償するために必要な利得制御値を演算するとともに、当該利得制御値を第2の中継アンプ61に与えて利得を調整している。つまり、本実施形態では利得調整部64が減衰量推定手段、第2の中継アンプ61が第2の調整手段に相当する。
【0036】
而して、第1の伝送路Ls1における伝送損失を第1の中継アンプ60の利得調整によって補償するとともに、第2の伝送路Ls2に対する第2端末装置TU2の接続台数に応じた減衰量を第2の中継アンプ61の利得調整によって補償しているので、第2端末装置TU2において第2の伝送路Ls2を介して受信する映像信号の信号レベルの変動幅を低減することができる。その結果、通信システムにおいて第2の伝送路Ls2に接続可能な第2端末装置TU2の台数に課される制約を軽減することができる。
【0037】
一方、第1端末装置TU1においては、受信部8から取り込んだ同期信号(伝送信号)の先頭部分(プリアンブル)で信号レベルを求めて第1の伝送路Ls1の伝送損失を推定するとともに当該伝送損失を補償するために受信アンプ82において必要な利得(利得制御値)を演算する機能モジュール7aを端末制御部7が有している。尚、かかる機能モジュール7aはソフトウェアによって実現される。
【0038】
送信部9の利得調整部94は、出力抵抗93と第1の伝送路Ls1の接続点から映像信号を取り込み、当該映像信号の先頭部分(プリアンブル)において信号レベルを求める。すなわち、第1の伝送路Ls1に接続される第1端末装置TU1の台数が増えるにつれて送信部9から第1の伝送路Ls1へ送出される映像信号の減衰量も増大するので、利得調整部94では第1の伝送路Ls1に対する第1端末装置TU1の接続台数に応じた映像信号の減衰量を推定し、推定した減衰量を補償するために必要な利得制御値を演算するとともに、当該利得制御値をアンプ91に与えて利得を調整している。つまり、本実施形態では利得調整部94が減衰量推定手段、アンプ91が調整手段に相当する。
【0039】
而して、第1端末装置TU1から第1の伝送路Ls1を介して主装置Mへ伝送される映像信号の伝送損失を利得調整部94とアンプ91による信号レベル調整で補償しているので、主装置Mで受信される映像信号の信号レベルの変動幅を低減することができ、その結果、主装置Mを経由して第2端末装置TU2で受信される映像信号の信号レベルの変動幅をさらに低減することができる。
【0040】
(実施形態2)
本実施形態は主装置Mにおける中継部6の構成に特徴があり、中継部6以外の主装置Mの構成等については実施形態1と共通である。よって、実施形態1と共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略し、本実施形態の特徴である中継部6についてのみ説明する。
【0041】
実施形態1で説明したように、出力抵抗63から第2の信号端子4へ送信(中継)される映像信号は、第1の伝送路Ls1における伝送損失、並びに第2の伝送路Ls2に接続される第2端末装置TU2の接続台数に応じた減衰量によって信号レベルが低下(減衰)している。
【0042】
そこで本実施形態では、図2に示すように中継部6から第2の中継アンプ61と利得調整部64を削除するとともに出力抵抗63から第2の信号端子4へ送信(中継)される映像信号を受信信号として制御部1に取り込み、制御部1の機能モジュール1aが各タイムスロットTM1,TM2,…で受信する映像信号の先頭部分(プリアンブル)で当該映像信号の信号レベルを求めて各タイムスロットTM1,TM2,…毎の映像信号の信号レベルの低下量(減衰量)を推定するとともに各減衰量を補償するために必要な利得制御値をそれぞれ演算するようにしている。そして、各タイムスロットTM1,TM2,…毎の減衰量を推定して利得制御値を確定するまでは、映像信号の先頭部分を受信しているタイミングで出力バッファB1から第1の利得制御信号を出力することで第1の中継アンプ60の利得を一定の利得制御値に調整し、各タイムスロットTM1,TM2,…毎に映像信号の減衰量を補償するための利得制御値が確定すれば、次回の各タイムスロットTM1,TM2,…の開始前のタイミングで各タイムスロットTM1,TM2,…に対応した利得制御値とするための第2の利得制御信号を出力バッファB2から出力する。その結果、第1の中継アンプ60からは第1の伝送路Ls1における伝送損失、並びに第2の伝送路Ls2に接続される第2端末装置TU2の接続台数に応じた減衰量がその先頭部分より補償された映像信号が出力されることになる。
【0043】
而して、第1の伝送路Ls1における伝送損失と第2の伝送路Ls2に対する第2端末装置TU2の接続台数に応じた減衰量とを第1の中継アンプ60の利得調整によって補償しているので、第2端末装置TU2において第2の伝送路Ls2を介して受信する映像信号の信号レベルの変動幅を低減することができ、通信システムにおいて第2の伝送路Ls2に接続可能な第2端末装置TU2の台数に課される制約を軽減することができる。しかも、本実施形態では受信点Xから制御部1に取り込む映像信号(受信信号)を図示しないアッテネータで減衰させることにより、受信に必要な映像信号の信号レベルと送信(中継)に必要な映像信号の信号レベルとの差を調整できるので、第2の中継アンプ61と利得調整部64を削除することで回路規模も低減することが可能である。
【0044】
ここで、図3(b)に示すように機能モジュール1aから第1の中継アンプ60へは、各タイムスロットTM1,TM2,…の開始前のタイミングで第2の利得制御信号のみを与えるようにすれば、第1の利得制御信号と第2の利得制御信号を択一的に第1の中継アンプ60に与えるための出力バッファB1,B2が不要となって構成の簡素化(回路規模の低減)を図ることができる(図3(a)参照)。
【0045】
(実施形態3)
本実施形態は第1端末装置TU1における送信部9の構成に特徴があり、送信部9以外の第1端末装置TU1の構成等については実施形態1又は実施形態2と共通である。よって、実施形態1又は実施形態2と共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略し、本実施形態の特徴である送信部9についてのみ説明する。
【0046】
本実施形態では、図4に示すように送信部9から利得調整部94を削除し、制御部7の機能モジュール7aによって送信部9のアンプ91の利得調整を行う点に特徴がある。
【0047】
而して、本実施形態では第1端末装置TU1における送信部9の回路規模を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態1を示すシステム構成図である。
【図2】実施形態2における主装置のブロック図である。
【図3】(a)は同上における主装置の他の構成を示すブロック図、(b)は動作説明図である。
【図4】実施形態3における第1端末装置のブロック図である。
【図5】従来例の主装置を示すブロック図である。
【図6】同上の動作説明図である。
【符号の説明】
【0049】
M 主装置
TU1 第1端末装置
TU2 第2端末装置
Ls1 第1の伝送路
Ls2 第2の伝送路
1 制御部
1a 機能モジュール
5 受信部
6 中継部
60 第1の中継アンプ
61 第2の中継アンプ
64 利得調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の伝送路を介して伝送信号を伝送する1乃至複数の第1端末装置と、第1端末装置から第1の伝送路を介して伝送される伝送信号を受信する主装置と、主装置より第2の伝送路を介して中継される前記伝送信号を受信する1乃至複数の第2端末装置とで構成され、
主装置は、第1の伝送路と第2の伝送路を繋ぐ中継経路と、当該中継経路を介して伝送される伝送信号を受信する受信手段と、受信手段で受信する伝送信号に基づいて第1の伝送路における伝送損失を推定する伝送損失推定手段と、受信手段の受信点よりも第1の伝送路側で中継経路に挿入されて伝送損失推定手段が推定した推定値に応じて伝送信号の信号レベルを調整する第1の調整手段と、中継経路から第2の伝送路へ伝送される伝送信号の減衰量を推定する減衰量推定手段と、受信手段の受信点よりも第2の伝送路側で中継経路に挿入されて減衰量推定手段が推定した減衰量に応じて伝送信号の信号レベルを調整する第2の調整手段とを備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
第1の調整手段は、伝送信号が伝送されていないタイミングで信号レベルの調整を行うことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
第1の伝送路を介して伝送信号を伝送する1乃至複数の第1端末装置と、第1端末装置から第1の伝送路を介して伝送される伝送信号を受信する主装置と、主装置より第2の伝送路を介して中継される前記伝送信号を受信する1乃至複数の第2端末装置とで構成され、
主装置は、第1の伝送路と第2の伝送路を繋ぐ中継経路と、当該中継経路を介して伝送される伝送信号を受信する受信手段と、受信手段で受信する伝送信号に基づいて中継経路から第2の伝送路へ伝送される伝送信号の減衰量を推定する減衰量推定手段と、受信手段の受信点よりも第1の伝送路側で中継経路に挿入されて減衰量推定手段が推定した減衰量に応じて伝送信号の信号レベルを調整する調整手段とを備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
調整手段は、伝送信号が伝送されていないタイミングで信号レベルの調整を行うことを特徴とする請求項3記載の通信システム。
【請求項5】
第1端末装置は、第1の伝送路を介して伝送信号を送信する送信手段と、送信手段から送信される伝送信号の減衰量を推定する減衰量推定手段と、減衰量推定手段が推定した減衰量に応じて送信手段が送信する伝送信号の信号レベルを調整する調整手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
主装置は、第1の伝送路を介して伝送信号を送信する送信手段を備え、
第1端末装置は、第1の伝送路を介して伝送信号を送信する送信手段と、第1の伝送路を介して伝送信号を受信する受信手段と、受信手段で受信する伝送信号に基づいて第1の伝送路における伝送損失を推定する伝送損失推定手段と、伝送損失推定手段が推定した推定値に応じて受信手段で受信する伝送信号の信号レベルを調整する第1の調整手段と、伝送損失推定手段が推定した伝送損失に応じて送信手段が送信する伝送信号の信号レベルを調整する第2の調整手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−303055(P2009−303055A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156960(P2008−156960)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】