説明

通信制御ユニット

【課題】筐体内のスイッチ部に不用意に人の手指が接触することを防止して、静電気を原因とした回路破損を防止できる通信制御ユニットを提供する。
【解決手段】電気錠用ユニット(通信制御ユニット)4は、基板4c上に設けられておりユーザ操作により所定の設定値を設定するためのスイッチ部4dと、筐体41に取り付けられて少なくともスイッチ部4dの前面に対応する位置に開口部43が形成されたユニットカバー4aと、ユニットカバー4aの開口部43に対して装着されてスライド移動によりスイッチ部4dを操作できる開状態又は操作できない閉状態にするカバー部4bとを備える。この構成により、カバー部4bに用いた固着具の紛失を防止できると共に、不用意にスイッチ部4dに人の手指が接触し静電気が印加され、この静電気を原因として回路破損が生じることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のセキュリティ領域への入退室を管理する入退室管理システムなどにおいて用いる通信制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザを特定する認証用IDに基づいた認証処理結果に応じてセキュリティ領域の入退室を管理する入退室管理システムが知られている。
【0003】
このような入退室管理システムは、例えばIDカードから個別の識別番号を非接触で読み取るカードリーダや、カードリーダに接続され、ユーザIDに基づく判定結果により、電気的に接続されたマグネット錠の施錠又は解錠を行うコントロールユニットを備える。また、入退室情報を一元管理するためコントロールユニットと通信接続された管理サーバや管理用PCが備えられている。
【0004】
この入退室管理システムに用いられるコントロールユニット60は、例えば、図6に示すように、筐体61内に通信用アドレス設定などのスイッチ部62を有した基板63が収容され、その前面にユニットカバー64が取り付けられている。
【0005】
そして、指紋読取装置やICカードリーダ、電気錠に通信接続された入退室制御装置を備え、ユーザの認証処理を行って所定のセキュリティ領域に対する入退室管理を行う入退室管理システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−49490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の入退室管理システムに用いるコントロールユニット60では、図6に示すように、前面側の扉を開いた際、基板63上に配置されたスイッチ部62が露出するので、不用意に人の手指がスイッチ部62に接触し易い構成となっている。このため、不用意にスイッチ部62に静電気が印加され易く、この静電気が原因となって基板63などの回路を破損することがあった。
【0008】
本発明は、上記問題を解消するものであり、不用意に筐体内の通信用アドレス設定などのために設けられたスイッチ部に人の手指が接触することを防止し、静電気を原因とした基板の回路破損を防止した通信制御ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、筐体内に基板を収容し、他の制御機器と通信接続する通信制御ユニットにおいて、前記基板上に設けられており、ユーザ操作により所定の設定値を設定するためのスイッチ部と、前記筐体に取り付けられ、少なくとも前記スイッチ部の前面に対応する位置に開口部が形成されたユニットカバーと、前記ユニットカバーの開口部に対して装着され、スライド移動により前記スイッチ部を操作できる開状態又は操作できない閉状態にするカバー部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この通信制御ユニットにおいて、固着具を挿通するため前記カバー部のスライド方向を長手方向とした長方形状又は略楕円形状の挿通孔を有し、この挿通孔に挿通された固着具を緩めることでスライド移動を可能とすることが好ましい。
【0011】
この通信制御ユニットにおいて、前記カバー部は、前記スイッチ部の設定値を視認するための開口部を有することが好ましい。
【0012】
この通信制御ユニットにおいて、前記所定の設定値は、前記通信制御ユニットの通信用アドレスであることが好ましい。
【0013】
この通信制御ユニットにおいて、前記制御機器がマグネット錠であり、このマグネット錠の開閉状態を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る通信制御ユニットにおいて、ユニットカバーの開口部に装着されたカバー部は、スライド移動でスイッチ部を操作できる開状態と操作できない閉状態とになる。このため、開状態としておくことで不用意に人の手指が通信制御ユニットの筐体内に配置されたスイッチ部に接触することを防止することができ、静電気を原因とした基板の回路破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る入退室管理システムの構成図を示す。
【図2】(a)同上実施の形態に係る電気錠用ユニットの正面図、(b)電気錠用ユニットの斜視図を示す。
【図3】電気錠用ユニットの筐体内部に収容されるユニットカバーの正面図を示す。
【図4】電気錠用ユニットの扉を開けた際の筐体内部の一部拡大図を示す。
【図5】(a)電気錠用ユニットのユニットカバーに取り付けられるカバー部の正面図、(b)同カバー部の右側面図、(c)同カバー部の断面図を示す。
【図6】従来の入退室管理システムに用いるコントロールユニットの扉を開けた際の筐体内部の一部拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る通信制御ユニットについて図1乃至図5を参照して説明する。
【0017】
(実施の形態)
本実施の形態に係る入退室管理システム1は、図1に示すように、管理サーバ2、管理用PC3、電気錠用ユニット(通信制御ユニット)4、マグネット錠(制御機器)5、カードリーダ6、熱線センサ7及びアラーム8を備えている。この入退室管理システム1では、ICカード6aから取得するユーザIDを用いてユーザを一意に特定し、認証処理結果に応じてマグネット錠5の施錠又は解錠の制御を行い、セキュリティ領域への入退室を管理する。
【0018】
管理サーバ2は、管理用PC3及び電気錠用ユニット4と専用LAN9を介して通信接続され、入退室したユーザのユーザIDや入退室履歴に関するデータを一元管理する。また、管理サーバ2は、例えば、ユーザIDの新規登録や変更を行うと、各拠点の管理サーバ2に自動配信して情報共有化を図ることができる。
【0019】
管理用PC3は、管理サーバ2及び電気錠用ユニット4と専用LAN9を介して通信接続され、入退室の履歴管理、マグネット錠5の開閉やユーザIDの新規登録などを、専用メニュー画面や履歴画面を通して行うための操作端末である。この管理用PC3は、既存のパソコンを活用して実現でき、ドアなどに配置される監視用カメラからのリアルタイム映像を連動表示することもできる。
【0020】
電気錠用ユニット4は、室内の壁面などにネジなどの固着具を用いて取り付けられる箱形状の筐体を備え、マグネット錠5、カードリーダ6、熱線センサ7及びアラーム8と接続される。電気錠用ユニット4は、入退室管理のため、マグネット錠5の施錠又は解錠の制御、カードリーダ6との通信やアラーム8の発動制御を行う。また、電気錠用ユニット4は、カードリーダ6からユーザID(識別番号)の判定結果を受信すると、この判定結果に基づいてマグネット錠5の施錠又は解錠を行う。
【0021】
マグネット錠5は、電気的開閉が可能な扉錠であり、ユーザIDに基づいて許可されたユーザのみが入室できるように電気錠用ユニット4の制御(通電時解錠、又は通電時施錠など)に基づいて施錠又は解錠される。このマグネット錠5は、鍵による機械的開閉も可能な場合もある。
【0022】
カードリーダ6は、入口扉付近及び出口扉付近の少なくとも一方に設置され、ICカード6aとの間で無線通信を行ってユーザIDを読み取り、ユーザIDが内部メモリに保持されたユーザIDと一致するか否かを判定する。カードリーダ6は、この判定結果を通信線を介して電気錠用ユニット4に送信する。なお、カードリーダ6とICカード6aとの間の無線通信は所定周波数領域で行われ、例えば、ICカード6aがカードリーダ6から約1.5m以内に入ると、カードリーダ6からのLF起動信号をICカード6aのLF帯送受信部で受信し起動する。起動したICカード6aは、メモリに記憶しているユーザIDを送信部からカードリーダ6に送信する。
【0023】
カードリーダ6におけるユーザIDの判定は、ICカード6aとの非接触通信に限定されるものではなく、ICカード6aとの非接触通信及び暗証番号入力の場合などがあり、また、ID認証に用いるのはICカード6aに限定されるものではなく携帯電話となる場合もある。また、カードリーダ6は、ICカード6aのユーザIDの登録機能やユーザデータ変更機能をも有する。
【0024】
熱線センサ7は、電気錠用ユニット4と接続され、赤外線を用いて温度で人を感知するセンサであり、本実施の形態では防犯用センサとして用いられる。アラーム8は、電気錠用ユニット4と接続され、熱線センサ7で不審者が検出され、電気錠用ユニット4から検知入力された場合に警告音の出力や警報ランプの点滅を行う。
【0025】
以下、電気錠用ユニット4の筐体41内の構造に関して説明する。
電気錠用ユニット4は、図2に示すように、前面が開口して中空を有する略箱体状の筐体41と、筐体41の前面側を塞ぎ、例えば矢印W1で示す方向に開く扉42とを備え、任意の壁面にネジなどの固着具で取り付けられる。筐体41内には、基板やユニットカバー、電源供給用の電源線や、通信接続のための信号線などが備えられる。
【0026】
筐体41内には、図3に示すようなユニットカバー4aが配置される。このユニットカバー4aは、筐体41に収容される基板の保護のため当該基板の前面側に取り付けられる。ユニットカバー4aは、開口部43を有し、この開口部43のスイッチ部に対する位置にカバー部4bが装着される。図3においては、カバー部4bは、ユーザ操作によりスイッチ操作が可能な開状態を示しており、矢印W2の方向にカバー部4bをスライド移動させることでスイッチ操作ができない閉状態とすることができる。なお、ユニットカバー4aの大きさは、例えば縦幅357mm、横幅340mmであり、筐体41内の基板や配線などの形状に合わせて側面視で凹凸形状を有している。
【0027】
筐体41内には、図4に示すように、通信接続されるマグネット錠5やカードリーダ6の制御用CPUなどを有する基板4cが収容されている。基板4c上には、電気錠用ユニット4の通信用アドレスなどを設定するためのスイッチ部4dが配置され、このスイッチ部4dの配列を変更することで、例えば電気錠用ユニット4の通信用アドレスを8ビットの256アドレスから任意に選択設定できる。
【0028】
図4において、ユニットカバー4aは筐体41にネジを用いて固着され、スイッチ部4dの前面側には開口部43が形成されている。この開口部43のスイッチ部4dに対する位置には、ネジなどの固着具を用いてカバー部4bが取り付けられている。なお、図4において、カバー部4bは、ユーザ操作によりスイッチ操作ができない閉状態であり、固着具を少し緩めて矢印W3の方向にカバー部4bをスライド移動させることでスイッチ操作ができる開状態とすることができる。この構成により、カバー部4bに用いた固着具の紛失を防止できると共に、不用意にスイッチ部4dに人の手指が接触することを防止することができ、静電気を原因とした電気回路の破損を防止できる。
【0029】
カバー部4bは、図5に示すように、カバー部4bのスライド方向を長手方向とした長方形状、又は略楕円形状の挿通孔51を2箇所に有する。また、カバー部4bは、基板4c上に配置されるスイッチ部4dを視認するための開口部52(本図では2箇所)を有する。この開口部52により、ユーザは、カバー部4bがユニットカバー4aに装着された状態でもスイッチ部4dの設定値を確認することができる。なお、カバー部4bの大きさは、例えば正面視で縦幅27.5mm、横幅36mmである。
【0030】
以上の構成により、本実施の形態に係る電気錠用ユニット(通信制御ユニット)4では、カバー部4bをユーザによるスイッチ操作ができない閉状態とすることで、不用意にスイッチ部4dに人の手指が接触して静電気が印加し、この静電気を原因として電子回路が破損することを防止できる。また、通信用アドレス設定時などにおいては、ネジを緩めてカバー部4bをスライドさせて開状態とすることで静電気対策を講じた上でスイッチ部4dへの設定操作ができる。さらに、カバー部4bに用いた固着具の紛失を防止でき、また、カバー部4bを落下しないように固着具で固定できる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、電気錠用ユニット4の制御機器はマグネット錠5に限定されるものではない。また、電子錠用ユニット4やカバー部4bの形状は異なる形状でもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 入退室管理システム
2 管理サーバ
3 管理用PC
4 電気錠用ユニット(通信制御ユニット)
4a ユニットカバー
4b カバー部
4c 基板
4d スイッチ部
5 マグネット錠
6 カードリーダ
6a ICカード
7 熱線センサ
8 アラーム
9 専用LAN
41 筐体
42 扉
43 開口部
51 挿通孔
52 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に基板を収容し、他の制御機器と通信接続する通信制御ユニットにおいて、
前記基板上に設けられており、ユーザ操作により所定の設定値を設定するためのスイッチ部と、
前記筐体に取り付けられ、少なくとも前記スイッチ部の前面に対応する位置に開口部が形成されたユニットカバーと、
前記ユニットカバーの開口部に対して装着され、スライド移動により前記スイッチ部を操作できる開状態又は操作できない閉状態にするカバー部と、を備えたことを特徴とする通信制御ユニット。
【請求項2】
前記カバー部は、固着具を挿通するため前記カバー部のスライド方向を長手方向とした長方形状又は略楕円形状の挿通孔を有し、この挿通孔に挿通された固着具を緩めることでスライド移動を可能とすることを特徴とする請求項1記載の通信制御ユニット。
【請求項3】
前記カバー部は、前記スイッチ部の設定値を視認するための開口部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の通信制御ユニット。
【請求項4】
前記所定の設定値は、前記通信制御ユニットの通信用アドレスであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の通信制御ユニット。
【請求項5】
前記制御機器がマグネット錠であり、このマグネット錠の開閉状態を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の通信制御ユニット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−112164(P2012−112164A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261570(P2010−261570)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】