説明

通信制御方法及び通信制御システム

【課題】通信機及びその周辺に関する故障発生の監視方法の提供。
【解決手段】地上装置30と車上装置20とからなる無線通信システムにおいて、地上装置30は、同一構成の2台の制御装置100−1,100−2及び無線機200−1,200−2を備え、一方の制御装置及び無線機の組を主系とし、他方の制御装置及び無線機の組を従系とした二重系の構成となっている。両系の制御装置では、車上装置20に宛てた通信用データと、従系の無線機に宛てた監視用データとを含む送信データを生成するが、主系のみから送信データが送信される。主系から送信された送信データのうち、通信用データは車上装置20にて受信され、監視用データは従系の無線機にて受信されて両系の制御装置に入力される。そして、両系の制御装置では、自装置内で生成した監視用データと、従系の無線機から入力された監視データとの一致を判定し、地上装置30における故障箇所を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一処理を実行する2台の通信制御装置と、所定の通信相手装置との間で通信を行う2台の通信機とを備えた通信制御システムの通信制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、稼働率及び信頼性の向上を図るためにシステムを二重化する技術が広く知られており、システム構成全てを二重化して主系と従系の両方が同一処理を実行するシステムとして、デュアルシステムが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、通信制御システムのデュアルシステムの例が開示されており、IDU(Indoor Unit)と、無線装置を有するODU(Outdoor Unit)とからなる現用系基地局(主系)と、同じくIDUとODUとからなる予備系基地局(従系)とが記載されている。この特許文献1のように、従来のデュアルシステムの通信制御システムは、通信に係るデータ等を処理する制御装置(特許文献1のIDU)と、実際に通信を行う通信機(特許文献1のODU)とで1つの系統を構成して、主系と従系の2つの系統で二重化しているのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−201971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通信機を含めて系統を構成する従来の通信制御システムでは、通信機のみが故障した場合であっても、その通信機を含む系統を切り離して他方の系統のみで稼働を続行する形態をとっている。この場合、故障した通信機のみを切り離して稼働することが可能であれば、稼働率・信頼性を一層向上させることができる。
【0006】
そこで、通信機が正常に動作しているかを確認する機能を組み込む方法が考えられるが、対策としては不十分である。通信機単体が正常であっても、通信機と制御装置間の通信経路に故障が発生する場合も考えられ、その場合には、故障が発生しているにもかかわらず、正常と誤判断してしまうからである。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、通信機及びその周辺に関する故障発生を監視可能な新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態は、
同一処理を実行する2台の通信制御装置(例えば、図2の制御装置100−1,100−2)と、所定の通信相手装置(例えば、図2の車上装置20)との間で通信を行う2台の通信機(例えば、図の無線機200−1,200−2)とを備えた通信制御システム(例えば、図2の地上装置30)の通信制御方法であって、
前記2台の通信制御装置それぞれが送信データを生成する送信データ生成ステップ(例えば、図7のステップT7)と、
一方の通信制御装置(例えば、図3の主系の制御装置100)が、一方の通信機(例えば、図3の主系の無線機200に、自身が生成した送信データを送信させる送信ステップ(例えば、図7のステップT9)と、
他方の通信機(例えば、図3の従系の無線機200)が、前記一方の通信機から送信された送信データを受信する受信ステップ(例えば、図7のステップT13)と、
他方の通信制御装置(例えば、図3の従系の制御装置100)が、1)前記他方の通信機による前記送信データの受信の有無の判定、及び、2)前記他方の通信機により受信された送信データと自身が生成した送信データとの一致/不一致の判定、のうちの少なくとも一方の判定を行う他方判定ステップ(例えば、図7のステップT15)と、
前記他方判定ステップでの判定結果を用いて前記通信制御システムの異常発生を監視する監視ステップ(例えば、図7のステップT19)と、
を含む通信制御方法である。
【0009】
また、他の形態として、
同一処理を実行する2台の通信制御装置(例えば、図2の制御装置100−1,100−2)と、所定の通信相手装置(例えば、図2の車上装置20)との間で通信を行うとともに、互いに通信可能な2台の通信機(例えば、図2の無線機200−1,200−2)とを備えた通信制御システム(例えば、図2の地上装置30)であって、
前記2台の通信制御装置それぞれは、
送信データを生成する送信データ生成手段(例えば、図4の処理部110)と、
一方の通信機(例えば、図3の主系の無線機200)に、自身が生成した送信データを送信させる送信制御手段(例えば、図4の処理部110)と、
1)他方の通信機(例えば、図3の従系の無線機200)による前記一方の通信機からの送信データの受信の有無の判定、及び、2)前記他方の通信機により受信された送信データと、自身が生成した送信データとの一致/不一致の判定、のうちの少なくとも一方の判定を行って、前記通信制御システムにおける異常発生を監視する監視手段(例えば、図4の処理部110)と、
を備えた通信制御システムを構成することとしてもよい。
【0010】
この第1の形態等によれば、2台の通信制御装置それぞれが送信データを生成するが、一方の通信制御装置のみが一方の通信機に送信データを送信させる。また、他方の通信機が一方の通信機から送られた送信データを受信するが、その受信の有無を他方の通信制御装置が判定する。受信されない場合には、一方の通信制御装置〜一方の通信機〜他方の通信機〜他方の通信制御装置までの間の経路のどこかで故障が発生していると推定することができ、通信機及びその周辺に関する故障発生を監視可能となる。
【0011】
また、他方の通信制御装置は、他方の通信機が受信した送信データと、他方の通信制御装置が生成しておいた送信データとが一致するか否かを判定する。2台の通信制御装置間で生成される送信データが同一であることが担保されるのであれば、他方の通信機が受信した送信データと、他方の通信制御装置が生成しておいた送信データとが一致しない場合には、一方の通信制御装置〜一方の通信機〜他方の通信機〜他方の通信制御装置までの間の経路のどこかで故障が発生していると推定することができ、通信機及びその周辺に関する故障発生を監視可能となる。
【0012】
また、第2の形態として、第1の形態の通信制御方法であって、
前記一方の通信制御装置が、a)前記他方の通信機による前記送信データの受信の有無の判定、及び、b)当該受信された送信データと自身が生成した送信データとの一致/不一致の判定うちの少なくとも一方の判定を行う自己判定ステップ(例えば、図7のステップT15)を更に含み、
前記監視ステップは、前記自己判定ステップ及び前記他方判定ステップの判定結果を用いて前記通信制御システムの異常発生を監視するステップである、
通信制御方法を構成することとしてもよい。
【0013】
この第2の形態によれば、他方の通信機が、一方の通信機から送られた送信データを受信するが、その受信の有無を一方の通信制御装置及び他方の通信制御装置のそれぞれで判定することとなる。従って、例えば、一方の通信制御装置は受信有りと判定したが、他方の通信制御装置は受信無しと判定した場合には、他方の通信機〜他方の通信制御装置間の信号経路で故障が発生していると推定することができ、第1の形態に比べて故障箇所を絞り込むことが可能となる。
【0014】
また、一方の通信制御装置及び他方の通信制御装置のそれぞれが、他方の通信機が受信した送信データと、他方の通信制御装置が生成しておいた送信データとが一致するか否かを判定することとなる。従って、例えば、一方の通信制御装置が一致したと判定し、他方の通信制御装置が一致しないと判定した場合には、他方の通信機〜他方の通信制御装置間の信号経路で故障が発生していると推定することができ、第1の形態に比べて故障箇所を絞り込むことが可能となる。
【0015】
なお、この場合、より具体的な第3の形態として、
前記2台の通信制御装置は、それぞれ前記2台の通信機と回線接続されており、
前記送信データ生成ステップは、前記送信データとして、前記通信相手装置に送信する通信用データと、前記他方の通信機に送信する監視用データとを生成するステップであり、
前記受信ステップは、前記他方の通信機が、前記一方の通信機から送信された送信データのうち、前記監視用データを受信するステップであり、
前記他方の通信機が、前記監視用データの受信に応じて、当該前記監視用データを前記2台の通信制御装置それぞれに出力する受信データ出力ステップを更に含み、
前記自己判定ステップ及び前記他方判定ステップは、前記受信データ出力ステップにおいて出力された前記監視用データを用いて前記判定を行うステップである、
通信制御方法を構成することとしてもよい。
【0016】
更に、第4の形態として、
前記監視ステップは、前記自己判定ステップ及び前記他方判定ステップの判定結果に基づいて、前記2台の通信機及び前記回線のうちの故障範囲を推定する故障範囲推定ステップを含む、
通信制御方法を構成することとしてもよい。
【0017】
また、第5の形態として、第2〜第4の何れかの形態の通信制御方法であって、
前記2台の通信制御装置の一方/他方と前記2台の通信機の一方/他方との組合せを変えて、各組合せについて、前記送信ステップ、前記受信ステップ、前記他方判定ステップ、前記自己判定ステップ及び前記監視ステップを実行する組合せ変更制御ステップを更に含む通信制御方法を構成することとしてもよい。
【0018】
この第5の形態によれば、2台の通信制御装置の一方/他方と、2台の通信機の一方/他方との組合せを変更して、各組合せについて、送信ステップ、受信ステップ、他方判定ステップ、自己判定ステップ及び監視ステップを実行する。従って、各組合せにおいて実行される自己判定ステップ及び他方判定ステップの判定結果を用いることで、故障発生又は故障発生箇所をより確実に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】無線通信システムの構成図。
【図2】地上装置の構成図。
【図3】地上装置から車上装置への送信時のデータの流れ図。
【図4】制御装置の機能構成図。
【図5】故障箇所推定テーブルのデータ構成例。
【図6】通信制御処理のフローチャート。
【図7】通信制御処理中に実行される送受信処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下では、本発明を、列車の車上装置と無線通信を行う地上装置に適用した場合を説明するが、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0021】
[システム構成]
図1は、本実施形態における無線通信システム1の構成図である。図1に示すように、無線通信システム1は、軌道を走行する列車10に搭載される車上装置20と、軌道に沿って設置される複数の地上装置30とを備えて構成され、車上装置20と各地上装置30との間で所定の近距離無線通信が可能となっている。
【0022】
車上装置20は、通信圏内に位置する地上装置30と無線通信を行うことで、自列車の運転制御などを行う。具体的には、例えば、地上装置30から受信した速度照査パターンに従った制動制御(ブレーキ制御)を行う。また、車軸に取り付けられた速度発電機の回転数を計数しその計数値から現在の走行位置を算出したり、或いは、GPSを有しこれによって現在位置を取得し、更に、地上装置30から受信した地上装置IDをもとに、算出した走行位置を補正する。
【0023】
地上装置30は、通信圏内に位置する車上装置20と所定の無線通信を行うことで、この車上装置20が搭載された列車の走行制御などを行う。具体的には、例えば、車上装置20に自装置のIDを送信したり、車上装置20から受信した列車の走行位置や走行速度に応じた速度照査パターンを該車上装置20に送信する。
【0024】
[地上装置の構成]
図2は、地上装置30の構成図である。図2に示すように、地上装置30は、同一構成の制御装置100(100−1,100−2)及び無線機200(200−1,200−2)を2台ずつ備えた主系及び従系の二重系の構成となっている。
【0025】
2台の制御装置100−1,100−2の間は通信ケーブルなどで有線接続されており、互いにデータ通信が可能となっている。
【0026】
また、制御装置100−1,100−2それぞれと無線機200−1,200−2それぞれとの間は、何れも通信ケーブルなどで有線接続されており、更に、各回線は上り/下りの2回線構成となっている。つまり、制御装置100−1,100−2は、無線機200−1,200−2の何れを用いても車上装置20との無線通信が可能となっている。
【0027】
ここで、無線機200−1と制御装置100−1,100−2との間の通信回線を、それぞれ「回線A1,A2」とし、この回線A1,A2をまとめて「回線A」とする。また、無線機200−2と制御装置100−1,100−2との間の通信回線を、それぞれ「回線B1,B2」とし、この回線B1,B2をまとめて「回線B」とする。
【0028】
この地上装置30は、それぞれ2台の制御装置100−1,100−2及び無線機200−1,200−2のうち、一方の制御装置100及び無線機200の組が主系となり、他方の制御装置100及び無線機200の組が従系となる。そして、主系のみが車上装置20へのデータ送信を行い、従系ではデータ送信を行わないホットスタンバイ方式となっている。なお、主系・従系となる制御装置100及び無線機200の組合せは、任意のタイミングで切り替わる。
【0029】
無線機200−1,200−2は、それぞれ、軌道に沿って敷設された漏洩同軸ケーブル(LCXケーブル)210−1,210−2に接続されており、このLCXケーブル210を介して車上装置20との無線通信を行う。すなわち、無線機200は、制御装置100から入力された送信データをパケット化し、LCXケーブル210に出力して送信するとともに、LCXケーブル210で受信されたデータを制御装置100に出力する。また、LCXケーブル210−1,210−2は互いに接近して敷設されており、このLCXケーブル210−1,210−2間でデータ通信が可能となっている。
【0030】
[送信時]
図3は、地上装置30から車上装置20へのデータ送信時のデータの流れを示す概要図である。図3に示すように、地上装置30から車上装置20へのデータ送信は、主系によって行われる。すなわち、主系の制御装置100から主系の無線機200に対して、送信データが出力される。この送信データには、車上装置20に向けた「通信用データ」と、該無線通信システム1の通信異常を監視するための「監視用データ」とが含まれる。
【0031】
主系の無線機200に入力された送信データは、パケット化されてLCXケーブル210に出力される。このとき、送信データに含まれる通信用データは車上装置20を宛先とされ、監視用データは従系の無線機200を宛先とされる。そして、LCXケーブル210に出力された監視用データ(パケット)は、電波として空間に放射され、車上装置20にて受信される。一方、監視フレーム(パケット)は、従系の無線機200のLCXケーブル210を介して従系の無線機200にて受信される。そして、従系の無線機200から、主系及び従系の制御装置100それぞれに入力される。
【0032】
[制御装置の構成]
制御装置100−1,100−2は、ともに同一構成且つ同一処理を行うものであり、図4に示すように、機能部として、処理部110と、通信制御部120と、記憶部130とを有する。
【0033】
処理部110は、例えばCPU等の演算装置で実現され、記憶部130に記憶されたプログラムやデータ、通信制御部120を介した受信データ等に基づいて、制御装置100の全体制御を行う。
【0034】
また、本実施形態では、処理部110は、通信制御プログラム131に従って、車上装置20との通信を制御する通信制御処理を行う。この通信制御処理では、主系・従系となる制御装置100及び無線機200の組合せを切り替えながら、車上装置20とのデータ通信を行う。この主系・従系の切り替えは、例えば、車上装置20との1回のデータ送受信毎に行う。
【0035】
具体的には、処理部110は、車上装置20へのデータ送信の際には、先ず、車上装置20に向けた通信用データと、従系の無線機200に向けた監視用データとを含む送信データを生成する。次いで、自装置が主系の場合には、生成した送信データを主系の無線機200に出力し、該無線機200から送信させる。一方、自装置が従系の場合には、送信データの送出は行わない。そして、この送信データに応答して車上装置20から送信される応答データを主系の無線機200から取得するとともに、従系の無線機200から入力される監視データを取得する。
【0036】
続いて、処理部110は、従系の無線機200から入力される監視データにもとづく、地上装置30における故障箇所の推定を行う。具体的には、従系の無線機200からの監視データの入力有無を判定し、入力されたときには、次いで、この入力された監視データと送信データの生成時に自装置内で生成した監視データとの一致を判定する。続いて、この監視データの一致判定結果を、他方の制御装置100に通知する。そして、自装置での監視データの一致判定結果と、通知された他方の制御装置での監視データの一致判定結果とをもとに、故障箇所推定テーブル132を参照して故障箇所を推定し、更に、推定された故障箇所に応じた対処処理を行う。
【0037】
図5は、故障箇所推定テーブル132の一例を示す図である。図5に示すように、故障箇所推定テーブル132は、車上装置20との通信成否132a、及び、主系及び従系それぞれでの監視データの一致判定結果132bの組み合せ毎に、推定される故障箇所132cと、推定故障箇所に応じた故障対処132dとを対応付けて格納している。
【0038】
車上装置20との通信成否132aは、応答データの受信有無によって判定する。通信成否132aにおける「○」は通信成功(応答データ有り)を表し、「×」は通信失敗(応答データ無し)を表している。また、一致判定結果132bにおける「○」は、監視データが入力され且つ一致することを表し、「×」は、監視データが入力されない或いは一致しないことを表している。
【0039】
また、推定故障箇所132cにおいて、「従系回線」とは、従系の無線機200に接続された回線であり、例えば従系が無線機200−2の場合には、回線Bが従系回線となる。「主系回線」も同様に、主系の無線機200に接続された回線であり、例えば主系が無線機200−1の場合には、回線Aが主系回線となる。「従系回線の従系部分」とは、従系の無線機と従系の制御装置100との間の回線であり、例えば、従系が「制御装置100−2及び無線機200−2」の組合せの場合には、回線B2が「従系回線の従系部分」となる。「従系回線の主系部分」及び「主系回線の主系部分/従系部分」についても同様である。
【0040】
図4に戻り、通信制御部120は、処理部110の制御に従って、指定された無線機200に送信データを出力して送信させる。
【0041】
記憶部130は、ROMやRAM、ハードディスク等の記憶装置で実現され、処理部110が制御装置100を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部110の作業領域として用いられ、処理部110が各種プログラムを実行した演算結果や、通信制御部120からの受信データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部130には、通信制御プログラム131と、故障箇所推定テーブル132とが記憶される。
【0042】
[処理の流れ]
図6は、処理部110が実行する通信制御処理の流れを説明するフローチャートである。図6によれば、処理部110は、先ず、初期設定として、主系とする制御装置100及び無線機200の組合せを決定する(ステップS1)。続いて、送受信処理を実行し、車上装置20との1回のデータの送受信を行う(ステップS3)。
【0043】
図7は、送受信処理の流れを示すフローチャートである。図7において、左側は主系における処理であり、右側は従系における処理である。先ず、主系及び従系の両系において、処理部110は、例えば、車上装置20や集中管理センタ(不図示)などからの要求に対する応答処理や、車上装置20に対する要求処理といった所定の要求/応答処理を行う(ステップT1)。
【0044】
次いで、処理結果を他方の制御装置100に対して通知し(ステップT3)、その一致を確認する(ステップT5)。処理結果の一致を確認すると、続いて、処理結果に基づく車上装置20に対する通信用データと、監視用データとを含む送信データの生成を行う(ステップT7)。
【0045】
続いて、主系における処理部110のみが、生成した送信データを、主系の無線機200に入力して該無線機200から送信させる送信制御を行う(ステップT9)。このとき、宛先として、通信用データは車上装置20とし、監視用データは従系の無線機200とする。続いて、主系及び従系の両系において、主系の無線機200から入力される、車上装置20からの応答データを取得する(ステップT11)。また、従系の無線機200から入力される監視用データを取得する(ステップT13)。
【0046】
その後、送信データの生成時に自装置内で生成した監視用データと、受信された監視用データとの一致(異同)を判定し(ステップT15)、一致判定結果を他方の制御装置に通知する(ステップT17)。そして、自装置での監視データの一致判定結果や、通知された他装置での監視データの一致判定結果をもとに、地上装置30における故障推定を行う。また、推定故障箇所に応じて、以降は主系/従系を固定(切り替えを行わない)とするといった故障対処を行う(ステップT19)。以上の処理を行うと、処理部110は、送受信処理を終了する、
【0047】
送受信処理を終了すると、図6に戻り、処理部110は、この送受信処理の結果によって主系/従系は固定とされたか否かを判断し、固定とされていないならば(ステップS5:NO)、主系である制御装置100及び無線機200の一方又は両方を変更する主系/従系の切り替えを行う(ステップS7)。その後、ステップS3に戻り、同様に送受信処理を行う。
【0048】
[作用・効果]
このように、本実施形態によれば、地上装置30と車上装置20とからなる無線通信システム1において、地上装置30は、同一構成の2台の制御装置100−1,100−2及び無線機200−1,200−2を備え、一方の制御装置100及び無線機200の組を主系とし、他方の制御装置100及び無線機200の組を従系とした二重系の構成となっている。
【0049】
両系の制御装置100では、車上装置20に宛てた通信用データと、従系の無線機200に宛てた監視用データとを含む送信データを生成するが、主系のみから送信データが送信される。主系から送信された送信データのうち、通信用データは車上装置20にて受信され、監視用データは従系の無線機200にて受信されて両系の制御装置100に入力される。そして、両系の制御装置100では、自装置内で生成した監視用データと、従系の無線機200から入力された監視データとの一致を判定し、その判定結果をもとに地上装置30における故障箇所を推定する。
【0050】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0051】
例えば、上述の実施形態では、本発明の通信制御システムとして地上装置30に適用した場合を説明したが、車上装置20にも同様に適用可能である。更に、地上装置や車上装置に限らず、通信機能を有する二重系のシステムであれば、同様に適用可能である。またこの場合、通信制御システムと通信相手装置との間の通信線路は、無線通信に限らず有線通信としても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 無線通信システム
10 列車、20 車上装置
30 地上装置
100 制御装置
110 処理部、120 通信制御部
130 記憶部
131 通信制御プログラム、132 故障箇所推定テーブル
200 無線機、210 LCXケーブル
A1,A2,B1,B2 回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一処理を実行する2台の通信制御装置と、所定の通信相手装置との間で通信を行う2台の通信機とを備えた通信制御システムの通信制御方法であって、
前記2台の通信制御装置それぞれが送信データを生成する送信データ生成ステップと、
一方の通信制御装置が、一方の通信機に、自身が生成した送信データを送信させる送信ステップと、
他方の通信機が、前記一方の通信機から送信された送信データを受信する受信ステップと、
他方の通信制御装置が、1)前記他方の通信機による前記送信データの受信の有無の判定、及び、2)前記他方の通信機により受信された送信データと自身が生成した送信データとの一致/不一致の判定、のうちの少なくとも一方の判定を行う他方判定ステップと、
前記他方判定ステップでの判定結果を用いて前記通信制御システムの異常発生を監視する監視ステップと、
を含む通信制御方法。
【請求項2】
前記一方の通信制御装置が、a)前記他方の通信機による前記送信データの受信の有無の判定、及び、b)当該受信された送信データと自身が生成した送信データとの一致/不一致の判定うちの少なくとも一方の判定を行う自己判定ステップを更に含み、
前記監視ステップは、前記自己判定ステップ及び前記他方判定ステップの判定結果を用いて前記通信制御システムの異常発生を監視するステップである、
請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記2台の通信制御装置は、それぞれ前記2台の通信機と回線接続されており、
前記送信データ生成ステップは、前記送信データとして、前記通信相手装置に送信する通信用データと、前記他方の通信機に送信する監視用データとを生成するステップであり、
前記受信ステップは、前記他方の通信機が、前記一方の通信機から送信された送信データのうち、前記監視用データを受信するステップであり、
前記他方の通信機が、前記監視用データの受信に応じて、当該前記監視用データを前記2台の通信制御装置それぞれに出力する受信データ出力ステップを更に含み、
前記自己判定ステップ及び前記他方判定ステップは、前記受信データ出力ステップにおいて出力された前記監視用データを用いて前記判定を行うステップである、
請求項2に記載の通信制御方法。
【請求項4】
前記監視ステップは、前記自己判定ステップ及び前記他方判定ステップの判定結果に基づいて、前記2台の通信機及び前記回線のうちの故障範囲を推定する故障範囲推定ステップを含む、
請求項3に記載の通信制御方法。
【請求項5】
前記2台の通信制御装置の一方/他方と前記2台の通信機の一方/他方との組合せを変えて、各組合せについて、前記送信ステップ、前記受信ステップ、前記他方判定ステップ、前記自己判定ステップ及び前記監視ステップを実行する組合せ変更制御ステップを更に含む請求項2〜4の何れか一項に記載の通信制御方法。
【請求項6】
同一処理を実行する2台の通信制御装置と、所定の通信相手装置との間で通信を行うとともに、互いに通信可能な2台の通信機とを備えた通信制御システムであって、
前記2台の通信制御装置それぞれは、
送信データを生成する送信データ生成手段と、
一方の通信機に、自身が生成した送信データを送信させる送信制御手段と、
1)他方の通信機による前記一方の通信機からの送信データの受信の有無の判定、及び、2)前記他方の通信機により受信された送信データと、自身が生成した送信データとの一致/不一致の判定、のうちの少なくとも一方の判定を行って、前記通信制御システムにおける異常発生を監視する監視手段と、
を備えた通信制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−61268(P2011−61268A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205555(P2009−205555)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】