説明

通信容量評価装置、無線中継装置及び通信容量評価方法

【課題】通信容量を把握するとともに、中継装置の設置後に不感地対策の内容の変更を不要にすること。
【解決手段】システム情報解析部121は、MIMO方式による通信の使用帯域情報を受信信号より取得する。S/N算出部122は、受信信号を解析して信号対雑音比を求める。チャネル推定部123は、受信信号を解析してチャネル行列を求める。スループット限界算出部124は、使用帯域情報及び基地局180の送信アンテナ本数の情報と、あらかじめ記憶しておいた無線中継装置100の受信アンテナ本数の情報と、信号対雑音比と、チャネル行列とに基づいて通信容量の限界値を算出する。表示部133は、限界値とあらかじめ設定された通信容量の所望値との比較結果を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信容量評価装置、無線中継装置及び通信容量評価方法に関し、特にMIMO(Multi-Input Multi-Output)方式による通信の中継処理を行う無線中継装置の設置場所において、通信容量を把握する通信容量評価装置、無線中継装置及び通信容量評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代通信の1つであるMIMO方式による通信の不感地対策として、MIMO方式による通信が可能な中継装置を設置することが求められている。このような中継装置を設置する際には、設置場所においてMIMO方式による通信の通信容量(スループット)を把握し、通信容量を一定以上確保できる条件で中継装置を設置する必要がある。
【0003】
また、従来、MIMO方式による通信の通信状態を判定するものが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1によれば、伝達関数の全てまたは一部を用いて、現在の通信状態を示す状態指標を算出する状態指標演算手段と、状態指標の値に応じて表示内容が変化する通信状態表示手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−211566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、伝達関数のみから算出される通信状態指標からは通信容量を算出することができないので、通信容量を把握することができないという問題がある。また、特許文献1においては、通信状態指標を表示しても、通信容量の限界値が分からず、中継装置の設置場所として適しているか否かを判断することができないという問題がある。また、特許文献1においては、設置場所として適しているか否かを判断できないので、中継装置を設置した後に、通信容量の限界値が所望の値を満たしていないことが判明した際に、不感地対策の内容を変更する必要が生じるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、通信容量を把握することができるとともに、中継装置の設置後に不感地対策の内容の変更を不要にすることができる通信容量評価装置、無線中継装置及び通信容量評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通信容量評価装置は、MIMO方式による通信の通信容量を評価する通信容量評価装置であって、前記MIMO方式による通信の使用帯域情報を受信信号より取得するとともに、受信信号を解析して信号対雑音比とチャネル行列とを求める取得手段と、前記使用帯域情報と、前記信号対雑音比と、前記チャネル行列と、通信相手の送信アンテナ本数と、受信アンテナ本数とに基づいて通信容量の限界値を算出する限界値算出手段と、前記限界値とあらかじめ設定された通信容量の所望値との比較結果を表示する表示手段と、を具備する構成を採る。
【0008】
本発明の無線中継装置は、MIMO方式による通信の中継処理を行う無線中継装置であって、前記MIMO方式による通信の使用帯域情報を受信信号より取得するとともに、受信信号を解析して信号対雑音比とチャネル行列とを求める取得手段と、前記使用帯域情報と、前記信号対雑音比と、前記チャネル行列と、通信相手の送信アンテナ本数と、受信アンテナ本数とに基づいて通信容量の限界値を算出する限界値算出手段と、前記限界値とあらかじめ設定された通信容量の所望値との比較結果を表示する表示手段と、を具備する構成を採る。
【0009】
本発明の通信容量評価方法は、MIMO方式による通信の通信容量を評価する通信容量評価方法であって、前記MIMO方式による通信の使用帯域情報を受信信号より取得するとともに、受信信号を解析して信号対雑音比とチャネル行列とを求めるステップと、前記使用帯域と、前記信号対雑音比と、前記チャネル行列と、通信相手の送信アンテナ本数と、受信アンテナ本数とに基づいて通信容量の限界値を算出するステップと、前記限界値とあらかじめ設定された通信容量の所望値との比較結果を表示するステップと、を具備するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信容量を把握することができるとともに、中継装置の設置後に不感地対策の内容の変更を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線中継装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係る基地局と無線中継装置との間のチャネル行列を求める方法について説明する図
【図3】本発明の実施の形態2に係る無線中継装置の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態2に係るアンテナ本数が送信と受信の双方で2本である場合において、固有値を変えた場合の通信容量の限界値と固有値との関係を示す図
【図5】本発明の実施の形態3に係る通信容量評価装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る無線中継装置100の構成を示すブロック図である。
【0014】
無線中継装置100は、主に中継増幅装置150と、通信容量演算部160と、表示制御部170を備えている。
【0015】
中継増幅装置150は、基地局180からMIMO方式で送信された信号を受信し、受信した信号を増幅して図示しない通信端末装置または図示しない他の中継装置に送信する。また、中継増幅装置150は、MIMO方式による通信において、図示しない通信端末装置または図示しない他の中継装置からMIMO方式で送信された信号を受信して増幅し、増幅した信号を基地局180へ送信する。即ち、中継増幅装置150は、MIMO方式による通信における信号の中継処理を行う。
【0016】
通信容量演算部160は、中継増幅装置150が基地局180から受信した信号の通信容量の限界値を算出して表示制御部170へ出力する。
【0017】
表示制御部170は、通信容量演算部160から入力した通信容量の限界値の算出結果に基づいて通信容量の所望値を算出するとともに、限界値と所望値との比較結果を表示する制御を行う。
【0018】
次に、中継増幅装置150の構成の詳細について、図1を用いて説明する。
【0019】
中継増幅装置150は、第1のアンテナ101と、第2のアンテナ102と、フィルタ103と、フィルタ104と、分離部105と、分離部106と、増幅器107と、増幅器108と、増幅器109と、増幅器110と、フィルタ111と、フィルタ112と、第3のアンテナ113と、第4のアンテナ114とから主に構成される。
【0020】
第1のアンテナ101は、基地局180から送信された信号を受信してフィルタ103へ出力する。また、第1のアンテナ101は、フィルタ103から入力した信号を基地局180へ送信する。
【0021】
第2のアンテナ102は、基地局180から送信された信号を受信してフィルタ104へ出力する。また、第2のアンテナ102は、フィルタ104から入力した信号を基地局180へ送信する。ここで、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102とは、MIMO方式による通信を行うために用いられる。
【0022】
フィルタ103は、第1のアンテナ101から入力した信号に対して帯域制限を行って分離部105へ出力する。また、フィルタ103は、増幅器108から入力した信号に対して帯域制限を行って第1のアンテナ101へ出力する。
【0023】
フィルタ104は、第2のアンテナ102から入力した信号に対して帯域制限を行って分離部106へ出力する。また、フィルタ104は、増幅器110から入力した信号に対して帯域制限を行って第2のアンテナ102へ出力する。
【0024】
分離部105は、フィルタ103から入力した信号を分離して増幅器107と、システム情報解析部121と、S/N算出部122と、チャネル推定部123とに出力する。
【0025】
分離部106は、フィルタ104から入力した信号を分離して増幅器109と、システム情報解析部121と、S/N算出部122と、チャネル推定部123とに出力する。
【0026】
増幅器107は、分離部105から入力した信号を増幅してフィルタ111へ出力する。
【0027】
増幅器108は、フィルタ111から入力した信号を増幅してフィルタ103へ出力する。
【0028】
増幅器109は、分離部106から入力した信号を増幅してフィルタ112へ出力する。
【0029】
増幅器110は、フィルタ112から入力した信号を増幅してフィルタ104へ出力する。
【0030】
フィルタ111は、増幅器107から入力した信号に対して帯域制限を行って第3のアンテナ113へ出力する。また、フィルタ111は、第3のアンテナ113から入力した信号に対して帯域制限を行って増幅器108へ出力する。
【0031】
フィルタ112は、増幅器109から入力した信号に対して帯域制限を行って第4のアンテナ114へ出力する。また、フィルタ112は、第4のアンテナ114から入力した信号に対して帯域制限を行って増幅器110へ出力する。
【0032】
第3のアンテナ113は、フィルタ111から入力した信号を図示しない通信端末装置または他の中継装置に送信する。また、第3のアンテナ113は、図示しない通信端末装置または他の中継装置から受信した信号をフィルタ111へ出力する。
【0033】
第4のアンテナ114は、フィルタ112から入力した信号を図示しない通信端末装置または他の中継装置に送信する。また、第4のアンテナ114は、図示しない通信端末装置または他の中継装置から受信した信号をフィルタ112へ出力する。
【0034】
次に、通信容量演算部160の構成の詳細について、図1を用いて説明する。
【0035】
通信容量演算部160は、システム情報解析部121と、S/N算出部122と、チャネル推定部123と、スループット限界算出部124とから主に構成される。システム情報解析部121と、S/N算出部122と、チャネル推定部123とは、使用帯域情報を取得するとともに、通信品質とチャネル行列とを求める取得手段を構成する。
【0036】
システム情報解析部121は、分離部105及び分離部106から入力した信号を解析する。そして、システム情報解析部121は、MIMO方式による通信の使用帯域情報(BW)と基地局180の送信アンテナ本数の情報とを取得する。また、システム情報解析部121は、取得した使用帯域情報と送信アンテナ本数の情報とをスループット限界算出部124へ出力する。
【0037】
S/N算出部122は、分離部105及び分離部106から入力した既知のパイロット信号を解析してS/N比(信号対雑音比)を算出する。そして、S/N算出部122は、S/N比の算出結果をスループット限界算出部124へ出力する。
【0038】
チャネル推定部123は、分離部105及び分離部106から入力した既知のパイロット信号を解析して、基地局180の送信アンテナと第1のアンテナ101及び第2のアンテナ102との間のチャネル行列(伝達関数)を推定する。そして、チャネル推定部123は、チャネル行列の推定結果をスループット限界算出部124へ出力する。
【0039】
スループット限界算出部124は、システム情報解析部121から入力した使用帯域情報及び送信アンテナ本数の情報と、あらかじめ記憶しておいた無線中継装置100の受信アンテナ本数の情報と、S/N算出部122から入力したS/N比の算出結果と、チャネル推定部123から入力したチャネル行列の推定結果とに基づいて、通信容量の限界値を算出する。そして、スループット限界算出部124は、限界値の算出結果を比較部132へ出力する。なお、スループットの限界値を算出する方法については後述する。
【0040】
次に、表示制御部170の構成の詳細について、図1を用いて説明する。
【0041】
表示制御部170は、スループット所望値設定部131と、比較部132と、表示部133とから主に構成される。
【0042】
スループット所望値設定部131は、所望値と許容する範囲とをあらかじめ設定する。ここで、上記の設定は、ユーザー(例えば通信事業者)が行う。
【0043】
比較部132は、スループット限界算出部124から入力した限界値と、スループット所望値設定部131から入力した所望値とを比較して比較結果を表示部133へ出力する。
【0044】
表示部133は、比較部132から入力した比較結果を表示する。表示部133は、例えば、限界値と所望値との差に応じたアンテナバーの本数により比較結果を表示することができる。また、表示部133は、限界値と所望値との差に応じた色により比較結果を表示することができる。色により比較結果を表示する際には、例えば、限界値と所望値との差が閾値以上の場合に表示画面の一部または全部を赤色とし、限界値と所望値との差が閾値未満の場合に表示画面の一部または全部を緑色にすることができる。なお、比較結果の表示は、アンテナバーの本数及び色に限らず、任意の方法により表示することができる。
【0045】
次に、無線中継装置100における通信容量の限界値を求める方法について説明する。本実施の形態では、次世代通信方式の1つであるLTE(Long Term Evolution)規格に基づく通信を一例として説明する。なお、通信方式は、LTEに限らず適宜変更可能である。
【0046】
システム情報解析部121は、LTEの下り信号の中のPBCH(Physical broadcast channel)を復調してMIB(Master Information Brock)を取得するとともに、取得したMIBを解析する。システム情報解析部121は、MIBの解析し、MIBに格納されているシステムの使用帯域情報及び送信アンテナ本数の情報を取得することにより、使用帯域幅と送信アンテナ本数とを知ることができる。なお、システム情報解析部121は、基地局180と無線中継装置100との間において、無線中継装置100の送信アンテナ本数が既知の場合には、送信アンテナ本数の情報の取得を不要にすることができる。この場合、送信アンテナ本数を受信アンテナ本数の情報と同様にあらかじめ図示しないメモリ等に記憶しておく。
【0047】
また、S/N算出部122は、受信信号に埋め込まれた既知のパイロット信号を解析することによりS/N比を算出する。例えば、S/N算出部122は、(1)式に示すように、隣接するパイロット信号の差分を求め、求めた差分のアンサンブル平均を求める。これにより、S/N算出部122は、雑音成分σを算出することができる。
【数1】

【0048】
また、S/N算出部122は、(2)式に示すように、隣接するパイロット信号を加算し、加算結果のアンサンブル平均を求める。そして、S/N算出部122は、加算結果のアンサンブル平均を、(1)式より求めた雑音成分σで除算することにより信号成分Sを算出する。
【数2】

【0049】
また、S/N算出部122は、(2)式より求めた信号成分Sと、(1)式より求めた雑音成分σとの比を求めることにより、S/N比を算出する。
【0050】
また、チャネル推定部123は、受信信号に埋め込まれた既知のパイロット信号を解析することにより、基地局180の複数の送信アンテナと第1のアンテナ101及び第2のアンテナ102との間のチャネル行列(伝達関数)を推定する。
【0051】
また、基地局180と無線中継装置100との間のチャネル行列は、チャネル推定部123において以下の方法により求めることができる。図2は、基地局180と無線中継装置100との間のチャネル行列を求める方法について説明する図である。
【0052】
複数のアンテナから送信された信号を複数のアンテナにより受信した場合には、受信信号は(3)式のようになる。
【数3】

【0053】
また、(3)式は、図2より(4)式のように表すことができる。
【数4】

【0054】
ここで、パイロット信号を解析の対象にするので、(5)式のように、受信信号をパイロット信号で除算することによりチャネル行列Hを求めることができる。
【数5】

【0055】
スループット限界算出部124は、上記の方法により求めたチャネル行列と、使用帯域情報と、送信アンテナ本数の情報と、受信アンテナ本数の情報と、S/N比の算出結果とに基づいて、通信容量の限界値を算出する。
【0056】
具体的には、スループット限界算出部124は、(6)式より、単位周波数あたりのチャネル容量(スループットの限界値)を求める。
【数6】

【0057】
即ち、スループット限界算出部124は、チャネル行列から算出できる行列の固有値を用いてスループットの算出を行う。OFDM伝送の場合には、スループット限界算出部124は、サブキャリアあたりのスループットを算出し、算出したスループットを用いて全てのサブキャリアの平均を求めることにより、スループットの限界値を算出する。
【0058】
また、スループット限界算出部124は、(6)式により求めたスループットの限界値にシステムの使用帯域幅を乗算することにより、伝送帯域幅におけるスループットの限界値を算出する。
【0059】
このように、本実施の形態によれば、通信容量を把握することができるとともに、所望の通信容量の限界値を満たしているか否かを判断し、中継装置の設置後の不感地対策の内容の変更を不要にすることができる。
【0060】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る無線中継装置300の構成を示すブロック図である。
【0061】
図3に示す無線中継装置300は、図1に示す実施の形態1に係る無線中継装置100に対して、中継増幅装置150の代わりに中継増幅装置350を有し、通信容量演算部160の代わりに通信容量演算部360を有する。なお、図3において、図1と同一構成である部分には同一の符号を付している。
【0062】
中継増幅装置350は、MIMO方式による通信において、基地局180から送信された信号を受信し、受信した信号を増幅して図示しない通信端末装置または図示しない他の中継装置に送信する。即ち、中継増幅装置350は、MIMO方式による通信における信号の中継処理を行う。また、中継増幅装置350は、通信容量演算部360の制御により、可変の利得を設定して信号を増幅する。
【0063】
通信容量演算部360は、中継増幅装置350が基地局180から受信した信号の通信容量の限界値を算出して表示制御部170へ出力する。また、通信容量演算部360は、中継増幅装置350において信号を増幅する際の利得を調整する。
【0064】
表示制御部170は、通信容量演算部360から入力した通信容量の算出結果に基づいて、通信容量の限界値と所望値との比較結果を表示する制御を行う。
【0065】
次に、中継増幅装置350の構成の詳細について、図3を用いて説明する。
【0066】
中継増幅装置350は、第1のアンテナ301と、第2のアンテナ302と、増幅器303と、可変増幅器304と、増幅器305と、加算器306と、分離部307と、分離部308と、第3のアンテナ309と、第4のアンテナ310とから主に構成される。増幅器303と増幅器305とは、第1のアンテナ301により受信した信号を増幅するとともに、第2のアンテナ302により受信した信号を増幅する増幅手段を構成する。
【0067】
第1のアンテナ301は、基地局180から送信された信号を受信して増幅器303及び可変増幅器304へ出力する。
【0068】
第2のアンテナ302は、基地局180から送信された信号を受信して増幅器305へ出力する。
【0069】
増幅器303は、第1のアンテナ301から入力した信号を増幅して分離部307へ出力する。
【0070】
可変増幅器304は、スループット限界算出部321の制御により、所定の利得を設定する。また、可変増幅器304は、設定した利得により、第1のアンテナ301から入力した信号を増幅して加算器306へ出力する。即ち、可変増幅器304は、可変の利得で信号を増幅する。なお、可変増幅器304における利得の調整方法については後述する。
【0071】
増幅器305は、第2のアンテナ302から入力した信号を増幅して加算器306へ出力する。
【0072】
加算器306は、可変増幅器304から入力した信号と、増幅器305から入力した信号とを加算して分離部308へ出力する。
【0073】
分離部307は、増幅器303から入力した信号を分離して第3のアンテナ309と、システム情報解析部121と、S/N算出部122と、チャネル推定部123とに出力する。
【0074】
分離部308は、加算器306から入力した信号を分離して第4のアンテナ310と、システム情報解析部121と、S/N算出部122と、チャネル推定部123とに出力する。
【0075】
第3のアンテナ309は、分離部307から入力した信号を図示しない通信端末装置または他の中継装置に送信する。
【0076】
第4のアンテナ310は、分離部308から入力した信号を図示しない通信端末装置または他の中継装置に送信する。
【0077】
次に、通信容量演算部360の構成の詳細について、図3を用いて説明する。
【0078】
図3に示す通信容量演算部360は、図1に示す実施の形態1に係る通信容量演算部160に対して、スループット限界算出部124の代わりにスループット限界算出部321を有する。なお、図3において、図1と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
通信容量演算部360は、システム情報解析部121と、S/N算出部122と、チャネル推定部123と、スループット限界算出部321とから主に構成される。
【0080】
システム情報解析部121は、分離部307及び分離部308から入力した信号を解析する。そして、システム情報解析部121は、MIMO方式による通信の使用帯域情報と基地局180の送信アンテナ本数の情報とを取得する。また、システム情報解析部121は、取得した使用帯域情報と送信アンテナ本数の情報とをスループット限界算出部321へ出力する。なお、システム情報解析部121は、基地局180と無線中継装置100との間において、送信アンテナ本数が既知の場合には、送信アンテナ本数の情報の取得を不要にすることができる。この場合、送信アンテナ本数を無線中継装置300の受信アンテナ本数の情報と同様にあらかじめ図示しないメモリ等に記憶しておく。
【0081】
S/N算出部122は、分離部307及び分離部308から入力した既知のパイロット信号を解析してS/N比(信号対雑音比)を算出する。この際、S/N算出部122は、スループット限界算出部321により調整された利得で可変増幅器304において増幅された信号を用いて、S/N比を算出する。そして、S/N算出部122は、S/N比の算出結果をスループット限界算出部321へ出力する。
【0082】
チャネル推定部123は、分離部307及び分離部308から入力した既知のパイロット信号を解析して、基地局180の送信アンテナと第1のアンテナ301及び第2のアンテナ302との間のチャネル行列(伝達関数)を推定する。そして、チャネル推定部123は、チャネル行列の推定結果をスループット限界算出部321へ出力する。
【0083】
スループット限界算出部321は、システム情報解析部121から入力した使用帯域情報及び送信アンテナ本数の情報と、無線中継装置100の受信アンテナ本数の情報と、S/N算出部122から入力したS/N比の算出結果と、チャネル推定部123から入力したチャネル行列の推定結果とに基づいて、通信容量の限界値を算出する。また、スループット限界算出部321は、算出した限界値が最適になるように、可変増幅器304の利得を調整する。また、スループット限界算出部321は、限界値の算出結果を比較部132へ出力する。なお、スループットの限界値を算出する方法は、上記の実施の形態1と同一であるので、その説明を省略する。
【0084】
比較部132は、スループット限界算出部321から入力した限界値と、スループット所望値設定部131から入力した所望値とを比較して比較結果を表示部133へ出力する。
【0085】
次に、チャネル推定部123及びスループット限界算出部321の動作について説明する。
【0086】
スループット限界算出部321は、可変増幅器304の利得を変化させることにより、チャネル推定部123において推定するチャネル行列を変化させることができる。これにより、通信容量を向上させることができる。
【0087】
具体的には、可変増幅器304の利得を変化させることにより、上記の(4)式は(7)式のようになる。(7)式のAは固定値(例えばユーザが設定可能)、A´とBは変数であり、B=0、A=A´とすると、単純に2本のアンテナで受信した場合の(4)式と同じになる。その状態から、Bを増加させ、無線中継装置300の出力電力が同一となるようにA´を減少させることにより、(4)式の状態を変化させることができる。なお、(7)式のAは、例えば基地局180と無線中継装置300間のパスロスに基づいて決定するようにしてもよい。
【数7】

【0088】
従って、チャネル推定部123は、(7)式よりチャネル行列を求める。
【0089】
即ち、可変増幅器304の利得を変化させることは、チャネル行列を操作することと同じであり、(6)式の固有値を変化させることに等しい。
【0090】
図4は、アンテナ本数が送信と受信の双方で2本である場合において、(6)式の固有値λ1を変えた場合の通信容量の限界値と固有値との関係を示す図である。図4において、縦軸は通信容量の限界値であり、横軸は固有値である。
【0091】
図4に示すように、スループット限界算出部321は、例えば、通信容量の限界値が最大となるように、可変増幅器304において設定する利得を調整し、通信容量向上の効果を得る。
【0092】
このように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1の効果に加えて、利得を可変にして固有値を補正することにより、通信容量の限界値の劣化要因をキャンセルするので、通信容量の低下を抑制することができる。
【0093】
なお、本実施の形態において、無線中継装置は基地局から受信した信号のみを中継処理するようにしたが、本実施の形態はこれに限らず、基地局へ送信する信号を中継処理しても良い。この場合には、図1と同様に、アンテナ直下に帯域制限フィルタを設けることにより、送信信号と受信信号とを分離することができる。
【0094】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る通信容量評価装置500の構成を示すブロック図である。
【0095】
通信容量評価装置500は、通信容量演算部550及び表示制御部560から主に構成される。
【0096】
通信容量演算部550は、基地局180から受信した信号を用いて、MIMO方式による通信の通信容量の限界値を算出して表示制御部560へ出力する。
【0097】
表示制御部560は、通信容量演算部550から入力した通信容量の限界値の算出結果に基づいて、通信容量の所望値を算出するとともに、限界値と所望値との比較結果を表示する制御を行う。
【0098】
次に、通信容量演算部550の構成の詳細について、図5を用いて説明する。
【0099】
通信容量演算部550は、第1のアンテナ501と、第2のアンテナ502と、システム情報解析部503と、S/N算出部504と、チャネル推定部505と、スループット限界算出部506とから主に構成される。システム情報解析部503と、S/N算出部504と、チャネル推定部505とは、使用帯域情報を取得するとともに、通信品質とチャネル行列とを求める取得手段を構成する。
【0100】
第1のアンテナ501は、基地局180から送信された信号を受信してシステム情報解析部503と、S/N算出部504と、チャネル推定部505とへ出力する。
【0101】
第2のアンテナ502は、基地局180から送信された信号を受信してシステム情報解析部503と、S/N算出部504と、チャネル推定部505とへ出力する。
【0102】
システム情報解析部503は、第1のアンテナ501及び第2のアンテナ502から入力した信号を解析する。そして、システム情報解析部503は、MIMO方式による通信の使用帯域情報と基地局180の送信アンテナ本数の情報とを取得する。そして、システム情報解析部503は、取得した使用帯域情報と送信アンテナ本数の情報とをスループット限界算出部506へ出力する。なお、システム情報解析部503は、基地局180と通信容量評価装置500との間において、送信アンテナ本数が既知の場合には、送信アンテナ本数の情報の取得を不要にすることができる。この場合、送信アンテナ本数を通信容量評価装置500の受信アンテナ本数の情報と同様にあらかじめ図示しないメモリ等に記憶しておく。
【0103】
S/N算出部504は、第1のアンテナ501及び第2のアンテナ502から入力した既知のパイロット信号を解析してS/N比(信号対雑音比)を算出する。そして、S/N算出部504は、S/N比の算出結果をスループット限界算出部506へ出力する。
【0104】
チャネル推定部505は、第1のアンテナ501及び第2のアンテナ502から入力した既知のパイロット信号を解析して、基地局180の送信アンテナと第1のアンテナ501及び第2のアンテナ502との間のチャネル行列(伝達関数)を推定する。そして、チャネル推定部505は、チャネル行列の推定結果をスループット限界算出部506へ出力する。
【0105】
スループット限界算出部506は、システム情報解析部503から入力した使用帯域情報及び送信アンテナ本数の情報と、通信容量評価装置500の受信アンテナ本数の情報と、S/N算出部504から入力したS/N比の算出結果と、チャネル推定部505から入力したチャネル行列の推定結果とに基づいて、通信容量の限界値を算出する。そして、スループット限界算出部506は、限界値の算出結果を比較部512へ出力する。なお、スループットの限界値を算出する方法は、上記の実施の形態1と同一であるので、その説明を省略する。
【0106】
次に、表示制御部560の構成の詳細について、図5を用いて説明する。
【0107】
表示制御部560は、スループット所望値設定部511と、比較部512と、表示部513とから主に構成される。
【0108】
スループット所望値設定部511は、所望値と許容する範囲とをあらかじめ設定する。
【0109】
比較部512は、スループット限界算出部506から入力した限界値と、スループット所望値設定部511から入力した所望値とを比較して比較結果を表示部513へ出力する。
【0110】
表示部513は、比較部512から入力した比較結果を表示する。表示部513は、例えば、限界値と所望値との差に応じたアンテナバーの本数により比較結果を表示することができる。また、表示部513は、限界値と所望値との差に応じた色により比較結果を表示することができる。色により比較結果を表示する際には、例えば、限界値と所望値との差が閾値以上の場合に表示画面の一部または全部を赤色とし、限界値と所望値との差が閾値未満の場合に表示画面の一部または全部を緑色にすることができる。なお、比較結果の表示は、アンテナバーの本数及び色に限らず、任意の方法により表示することができる。
【0111】
このように、本実施の形態によれば、通信容量を把握することができるとともに、所望の通信容量の限界値を満たしているか否かを判断し、中継装置の設置後の不感地対策の内容の変更を不要にすることができる。また、本実施の形態によれば、無線中継装置とは別体の通信容量評価装置により通信容量を算出するので、無線中継装置に通信容量評価装置を設ける場合に比べて、無線中継装置の製造コストを低減することができる。
【0112】
なお、上記の実施の形態1〜実施の形態3において、基地局と、無線中継装置と、通信容量評価装置の各々のアンテナの本数を2本にしたが、本発明はこれに限らず、3本以上の任意の本数にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明にかかる通信容量評価装置、無線中継装置及び通信容量評価方法は、特にMIMO方式による通信の中継処理を行う無線中継装置の設置場所において、通信容量を把握するのに好適である。
【符号の説明】
【0114】
100 無線中継装置
101 第1のアンテナ
102 第2のアンテナ
103、104、111、112 フィルタ
105、106 分離部
107、108、109、110 増幅器
113 第3のアンテナ
114 第4のアンテナ
121 システム情報解析部
122 S/N算出部
123 チャネル推定部
124 スループット限界算出部
131 スループット所望値設定部
150 中継増幅装置
160 通信容量演算部
170 表示制御部
180 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMO方式による通信の通信容量を評価する通信容量評価装置であって、
前記MIMO方式による通信の使用帯域情報を受信信号より取得するとともに、受信信号を解析して信号対雑音比とチャネル行列とを求める取得手段と、
前記使用帯域情報と、前記信号対雑音比と、前記チャネル行列と、通信相手の送信アンテナ本数と、受信アンテナ本数とに基づいて通信容量の限界値を算出する限界値算出手段と、
前記限界値とあらかじめ設定された通信容量の所望値との比較結果を表示する表示手段と、
を具備する通信容量評価装置。
【請求項2】
MIMO方式による通信の中継処理を行う無線中継装置であって、
前記MIMO方式による通信の使用帯域情報を受信信号より取得するとともに、受信信号を解析して信号対雑音比とチャネル行列とを求める取得手段と、
前記使用帯域情報と、前記信号対雑音比と、前記チャネル行列と、通信相手の送信アンテナ本数と、受信アンテナ本数とに基づいて通信容量の限界値を算出する限界値算出手段と、
前記限界値とあらかじめ設定された通信容量の所望値との比較結果を表示する表示手段と、
を具備する無線中継装置。
【請求項3】
第1のアンテナと、
第2のアンテナと、
前記第1のアンテナにより受信した受信信号を増幅するとともに、前記第2のアンテナにより受信した受信信号を増幅する第1の増幅手段と、
前記第1のアンテナにより受信した受信信号を可変の利得で増幅する第2の増幅手段と、
前記第1の増幅手段により増幅した前記第1のアンテナの受信信号に、前記第2の増幅手段により増幅した信号を加算して出力する加算手段とをさらに具備し、
前記取得手段は、前記第1の増幅手段により増幅した前記第1のアンテナの受信信号と前記加算手段の出力信号とを解析して前記チャネル行列を求める請求項2記載の無線中継装置。
【請求項4】
前記限界値算出手段は、前記限界値が最適になる利得を前記第2の増幅手段に対して設定する請求項3記載の無線中継装置。
【請求項5】
MIMO方式による通信の通信容量を評価する通信容量評価方法であって、
前記MIMO方式による通信の使用帯域情報を受信信号より取得するとともに、受信信号を解析して信号対雑音比とチャネル行列とを求めるステップと、
前記使用帯域と、前記信号対雑音比と、前記チャネル行列と、通信相手の送信アンテナ本数と、受信アンテナ本数とに基づいて通信容量の限界値を算出するステップと、
前記限界値とあらかじめ設定された通信容量の所望値との比較結果を表示するステップと、
を具備する通信容量評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−109266(P2011−109266A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260222(P2009−260222)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】