説明

通信指令システムの障害通知方法、およびそれを用いた通信指令システム

【課題】指令システムで発生する障害の情報を各事案に対応して必要最小限だけ表示させる方法、及びそれを用いた指令システムを安価に提供する。
【解決手段】システムを、緊急通報を受信し、緊急通報に対応するための事案を決定して指令を出力すると共に、同指令と対応した事案状態データを生成する指令台1と、指令台1および装置の障害状況監視結果である監視結果データを生成する監視手段29と、多目的表示装置6aと、監視結果データと事案状態データとに対応して多目的表示装置6aへの障害情報の表示可否を決定する報知内容データが予め設定されたハードディスク62と、監視結果データが障害のあることを示すときに、監視結果データ内容と事案状態データの内容とで指し示される報知データ内の被参照データに従って障害情報の多目的表示装置6aへの表示/非表示を行なう障害通知手段56とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信指令システムに係わり、より詳細には、システム全体の障害状況を消防署などの室内に設置された表示装置に表示させる障害通知方法、およびそれを用いた通信指令システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信指令システム内における通知方法は図6に示すパトライトの点滅や、図7に示すプロジェクタを用いたものがあった。
【0003】
従来の警察/消防などの通信指令システムは、警察署/消防署などに設置されており、110番通報や119番通報などに応じて所定の署所に緊急出動を迅速に指令することが出来るようになっている。例えば図6で示すような指令台91上の電話機92に緊急通報が入ると、指令室内にあるパトライト93、94が黄色の点滅を始める。これを確認した担当者が通報の内容を電話機92で確認し、緊急出動が必要と判断すると指令台91を通して所定の署所に出動命令を発すると同時に、指令室全体に出動状態に入った事を知らせるため、パトライト93、94を赤色に点灯させる。
【0004】
また、これに代わるものとして図7に示すように、指令台91より送出される指令データを受信して映像信号に変換する機能を備えたパソコン96と、同パソコン96で変換された映像信号を投射により映像化する指令台91の上に備えられたプロジェクタ87が通信指令システムとして設けられている。また指令室内には、プロジェクタ87から投射される緊急映像83を映し出す天井80や壁89などの被映写面とが備えられており、通信指令システムの各種の状態を表示させるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このように、パトライトやプロジェクタを用いる理由は、指令室内の他の表示機器への視野を妨げないようにし、かつ、必要な情報を確実に伝達するためである。
【0006】
一方、このような通信指令システムは、近年、デジタル化が進められており、複雑な機器が通信ケーブルを介して接続されている。また、システムの性格上、システムの障害による出動や消火作業の遅れは許されないため、システム自体の障害を監視する障害監視装置が導入されている。これはシステムを構成する各機器のセルフテストや主要機器の温度や動作、ハードディスク装置の残容量を逐次検出し、異常を検知した場合に、例えば図7の多目的情報表示用ディスプレイ95に、その異常内容を表示させて注意を促すものである。
【0007】
このような方法は、通信指令システムに限らず、例えば複数の監視カメラの画像を表示装置で順に切り換えて監視する場合にも採用されており、特定の監視カメラで異常を検出すると、この異常を捉えた監視カメラの画像を特定の表示装置に連続して表示させるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかしながら、パトライトやプロジェクタを用いた方法では、障害通知のための新たな装置が必要であり経費が増大する。また、特定の表示装置に切り換える方法では、切り換えるための優先順序が規定されていないため、先に表示されていた重要な情報(例えば火災場所の住所や地図)が、軽微な障害情報(例えばハードディスク装置の残容量が減少)により書き換えられてしまい、業務の遂行に支障をきたす場合があった。
【0009】
【特許文献1】特開2002−56477号公報(第1−4頁、図1、図5)
【特許文献2】実開平5−83894号公報(第13−14頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上述べた問題点を解決し、指令システムで発生する障害の情報を各事案に対応して必要最小限だけ表示させる方法、及びそれを用いた指令システムを安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するため、通報に対応するための事案を指令として出力すると共に、同指令と対応した事案状態データを生成する指令手段と、同指令手段からの指令を受けて稼動する装置と、前記指令手段および前記装置の障害状況監視結果である監視結果データを生成する監視手段と、情報を総合的に表示する表示手段とを備えた通信指令システムを用いて、前記監視結果データを前記表示手段に表示する通信指令システムの障害通知方法において、
前記監視結果データと前記事案状態データとに対応して前記表示手段への障害情報の表示可否を決定する報知内容データを予め設定テーブルとして記憶し、
前記監視結果データが障害のあることを示すときに、前記監視結果データの内容と前記事案状態データの内容とで指し示される前記設定テーブルの被参照データに従って前記障害情報の前記表示手段への表示/非表示を行なう方法にする。
【0012】
もしくは、通報に対応するための事案を指令として出力すると共に、同指令と対応した事案状態データを生成する指令手段と、同指令手段からの指令を受けて稼動する装置と、前記指令手段および前記装置の障害状況監視結果である監視結果データを生成する監視手段と、情報を総合的に表示する表示手段とを備えた通信指令システムにおいて、
前記監視結果データと前記事案状態データとに対応して前記表示手段への障害情報の表示可否を決定する報知内容データが、予め設定テーブルとして記憶された報知内容データ記億部と、前記監視結果データが障害のあることを示すときに、前記監視結果データの内容と前記事案状態データの内容とで指し示される前記設定テーブルの被参照データに従って前記障害情報の前記表示手段への表示/非表示を行なう障害通知手段とを設ける。
【発明の効果】
【0013】
以上の手段を用いることにより、本発明による通信指令システムの障害通知方法、およびそれを用いた通信指令システムによれば、
請求項1に係わる発明は、監視結果データと事案状態データとに対応して表示手段への障害情報の表示可否を決定する報知内容データを予め設定テーブルとして記憶し、
監視結果データが障害のあることを示すときに、監視結果データの内容と事案状態データの内容とで指し示される設定テーブルの被参照データに従って障害情報の表示手段への表示/非表示を行なう方法にすることにより、
指令システムで発生する障害の情報を各事案に対応して必要最小限だけ表示させることができ、システム障害発生時のオペレータの無用な混乱を避けることができる。また、この機能を安価に実現できる。
【0014】
請求項2に係わる発明は、監視結果データと事案状態データとに対応して表示手段への障害情報の表示可否を決定する報知内容データが、予め設定テーブルとして記憶された報知内容データ記億部と、監視結果データが障害のあることを示すときに、監視結果データの内容と事案状態データの内容とで指し示される設定テーブルの被参照データに従って障害情報の表示手段への表示/非表示を行なう障害通知手段とを設けることにより、
指令システムで発生する障害の情報を各事案に対応して必要最小限だけ表示させることができ、システム障害発生時のオペレータの無用な混乱を避けることができる。また、この機能を安価に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1の消防指令システムのブロック図を参照して、実施例の機能、動作を説明する。本部装置10は、指令手段である指令台1、自動出動指定装置2、地図等検索装置3、指令伝送送信装置4、障害監視装置5、大型の表示手段である多目的情報表示用ディスプレイ6aを備えたサーバ6、ネットワークプリンタ7で構成されるとともに、相互に、例えばLAN(local area network:構内情報通信網)で、回線接続している。
【0017】
本部装置10に設けた指令台1は、119番通報等の緊急通報1aを受信しオペレータが通報者と通話して通報の内容を確認する。自動出動指定装置2は、緊急通報1aの内容をオペレータが、マウス、タッチパネルなどの入力装置を用いて、逐次入力するとともに入力された通報の内容に基づき自動的に緊急出動車両、例えば、救急車や消防車などを指定し、また、指令書をネットワークプリンタ7で出力する。
【0018】
地図等検索装置3は、入力された通報の内容に基づき緊急発生地点を含む地図、特殊危険物の処理方法等を検索し出力する。指令伝送送信装置4は、指令書及び地図を送信データとして生成し、回線網9を介して各署所装置20へ送信するとともに音声合成による予告指令、本指令の音声データを送信する。
【0019】
サーバ6は、システム全体の統括的な管理を行なうと共に、現在の事案(緊急通報と対応する業務や関連する情報)が事案状態データとして記憶されており、必要に応じて他の機器や回線を介して署所装置20へ送出するようになっている。
【0020】
また、サーバ6には、システムに接続されている各機器の障害の監視結果データも逐次入力されて記憶されており、どの機器が今どのような障害状況であるかを把握できるようになっている。また、この監視結果データと事案状態データとは、障害監視装置5からLANを介して確認できるようになっている。
【0021】
なお、各機器は、各機器ごとにマルチタスクで実行されている障害監視プログラムを用いて障害の監視が行なわれており、各機器で実行されているアプリケーションソフトの状態やハードディスクの残容量、ハードディスクの状態、マザーボードの温度や冷却ファンの回転状態などを一定時間ごとに検出し、この結果を監視結果データとしてサーバ6に送信するようになっている。
【0022】
障害監視装置5はLANの回線状態を逐次監視することにより、各装置間のネットワークが正常に機能しているか否かを監視し、この監視結果をサーバ6へ送信する。
また、障害監視装置5は、一定時間毎にサーバ6から事案データと監視結果データとを読み出し、現在の事案状態に対応する監視結果を多目的情報表示用ディスプレイ6aに表示する。
【0023】
署所装置20は、本部装置10と回線接続し、指令伝送送信装置4が送信した送信データを受信し、指令書及び地図を復元し、画面表示用データを生成するとともに、音声データを復元し音声出力し、また、画面表示用データを画面表示し、指令書及び地図を印刷出力する。
【0024】
図2は本部装置10の各ブロックの内部を詳細に説明するブロック図である。なお、本願の特徴以外の部分については、一般的なデジタル消防指令システムと同じため、図示を省略しているが、実際には前述の機能を実現する手段が備えられている。
【0025】
図2には、自動出動指定装置2、障害監視装置5、多目的情報表示用ディスプレイ6aを備えたサーバ6、そして、その他装置がLANの回線で接続されている。ここで、その他装置とは、指令台1、地図等検索装置3、指令伝送送信装置4などを示している。
これらの装置はパソコンをベースとして作成されており、基本的には各装置で実行されるアプリケーションプログラムにより、その機能が決定される。本願の特徴機能を中心に考えると同じ機能となるため、説明上では1種類の装置として考える。
【0026】
自動出動指定装置2は、自分自身の主要な状態を監視するため、以下に説明する複数の監視手段を備えており、故障や障害を検知したり、事前の警告を可能としている。
監視手段29は、マルチタスクにより並列に動作しているアプリケーションプログラムの実行状態を監視するアプリケーション実行監視手段23と、実装メモリ容量に対する空きメモリ容量比率を監視する空きメモリ監視手段24と、予め算出された標準ハードディスク残容量に対する現在のハードディスクの残容量を監視するハードディスク容量監視手段25と、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks )におけるハードディスクの状態を監視するハードディスク動作監視手段26と、マザーボード上のCPUの温度上昇を監視するCPUの温度監視手段27と、パソコン筐体の送風ファンの回転状態を監視する送風ファン回転監視手段28がある。
【0027】
これらの監視手段29は定期的に監視を行い、その監視結果データは通信手段21を介してサーバ6の内部に備えられたハードディスク62に送信され蓄積される。また、これとは別に、事案状態監視手段22は、指令台1から送信される事案状態データに基づいて、事案状態を監視しており、事案が変化するごとに事案状態データを通信手段21を介してサーバ6の内部に備えられたハードディスク62に送信して事案状態データを更新する。
【0028】
サーバ6はハードディスク62上に障害監視データを各装置単位で記憶しており、また、自動出動指定装置2から送信される事案状態データを通信手段21を介して受信して記憶している。また、サーバ6には自動出動指定装置2の監視手段29と同じものが備えられており、サーバ6自身の障害を監視すると共に、直接、自分と対応する障害監視データの所定のハードディスク領域を更新するようになっている。さらに、システムの障害監視を行なうための設定データも設定テーブルの形式でハードディスク62上に記憶しており、このデータに従って多目的情報表示用ディスプレイ6aに表示される障害情報の内容と、障害情報表示のタイミングが決定される。なお、設定データが記憶されたハードディスク62が報知内容データ記憶部である。
【0029】
なお、多目的情報表示用ディスプレイ6aには様々な内容を表示するため、表示メモリ部63へ格納される表示データを書き換えることにより、様々な情報を表示することができる。システムに障害がない場合は、現場周辺の地図や住所などの現在の事案データが表示されている。システムに障害が発生した場合は、障害の程度と現在の事案状態と障害が発生した装置によって、障害情報を表示する程度(全画面か子画面かなど)が決定される。この障害の程度、現在の事案状態、障害が発生した装置の組合せは、ハードディスク62上に設定データとして記憶されている。
【0030】
このように障害の程度と現在の事案状態と障害が発生した装置によって、表示する程度を決定することが本願の特徴であり、必要な障害情報を必要なタイミングで表示させることにより、システムの障害発生時に事案処理に影響を与えることがないため、無用な混乱を避けることができ、かつ、オペレータに明確に周知させることができる。
【0031】
障害監視装置5は、LANを介して通信する通信手段21と、LAN回線の使用率やLANを使用しての各装置間の通信実績回数を監視するネットワーク監視手段52と、障害監視装置5自身の障害を監視する前述した監視手段29と、サーバ6から事案状態データと監視結果データとを読み出して比較と判断とを行なう比較・判断手段53と、比較・判断した障害情報を常に表示する表示部55と、比較・判断手段53の指示により、システム障害による異常や警告の表示データをサーバ6の表示メモリ部63へ送信する異常・警告データ送出部54とから構成されている。
なお、ネットワーク監視手段52と監視手段29とからの監視結果データは、通信手段21を介してサーバ6のハードディスク62上に記憶される。また、比較・判断手段53と異常・警告データ送出部54とで障害通知手段56を構成している。
【0032】
その他の装置である指令台1や地図等検索装置3や指令伝送送信装置4等は、それぞれ通信手段21と監視手段29とを備えており、各装置の障害状態を監視結果データとしてサーバ6のハードディスク62上に記憶する。
【0033】
次に図3の表を用いて本願に係わるデータ内容と動作について説明する。図3はサーバ6内のハードディスクに記憶されている設定データを示す表であり、(A)は各装置での監視項目と障害の程度を分類したものであり、(B)は障害監視装置での監視項目、(C)は各事案に対する報知対象装置と報知内容を分類したものである。
【0034】
図3(A)では監視項目、つまり、各監視手段で監視する内容を示しており、各監視手段毎に3つのレベルに分類している。つまり、監視結果データが正常の範囲か、また、警告の範囲か、異常の範囲かを区分している。この表に記載されている値と各監視手段で定期的に更新される監視結果データとを比較することにより、どの装置が正常か、異常か、又は、異常ではないが放置しておくと異常となりうる可能性があり、操作員に警告すべきかを判定することができる。
【0035】
図3(B)も監視項目の一つであるが、ネットワーク、つまりこの例ではLANの状態を監視しており、障害監視装置5のみに使用される。この監視では、LANの回線状態を直接、ネットワーク監視手段52で監視しており、所定時間内に各装置間で通信を行なったか、つまり、各装置の通信機能は正常かどうかを監視している。また、LANの回線使用率も同時に監視しており、回線障害によるデータの輻輳がないかも監視している。
【0036】
図3(C)は本願の特徴である「事案状態に対応して障害の報知内容と報知装置とを選択」するための分類、すなわち、報知内容データをテーブル化したものである。
システム全体には複数の装置が備えられているが、全ての時間で動作している訳ではない。ここで言う動作とは電源が投入されていることではなく、各装置固有の処理を行なっている状態をいう。つまり、動作状態でない場合は待機状態となっている。また、全ての装置が正常であれば、障害はなく、従って報知も不要である。さらに、「事案なし」の場合、基本的にシステムは待機状態であり、警告や異常の状態に優先する事項はない。従って図3(C)に示すように、全ての装置(装置番号:1〜6)において、警告や異常を報知する。
【0037】
この報知内容データのテーブルに記載されている装置番号が表示対象の装置を表すとともに、表示可否データの機能も併せ持っており、装置番号が記載されていれば障害情報の表示が「可」であり、記載されていなければ「不可」となる。
従って、各装置からの監視結果データが警告、又は異常のときに、現在の事案状態データと監視結果データで指し示される報知内容データ内の被参照データ、つまり、表示可否データを読み出して、警告、又は異常である監視結果データの装置番号が記載されていれば多目的情報表示用ディスプレイへ対応する障害情報を表示し、記載されていなければ表示しない。
【0038】
事案の状態が「現場検索中」であれば、地図等検索装置が主として可動しており、出動に欠かすことのできない情報処理を行なっている。従って、事案の状態が「現場検索中」の時はいかなる装置でも警告は報知しない。しかしながら、地図等検索装置が異常であれば、その検索結果自体が信用できないため、地図等検索装置の異常を報知する。
【0039】
事案の状態が「出動指令発令前」であれば、各装置が出動指令を発令するためにフル可動中であり、いかなる装置でも警告は報知しない。しかしながら、自動出動指定装置2と指令伝送送信装置4、及び指令台1とが異常であれば、出動指令の発令できないため、この3つの装置については異常を報知する。
【0040】
事案の状態が「出動指令発令後」であれば、出動した車両が現場に到着し、新たな情報が連絡されるまで、システム全体は一時的に待機状態となる。従ってこの間は警告や異常の状態に優先する事項はないため、全ての装置(装置番号:1〜6)において、警告や異常を報知する。
図3の設定内容は一例であり、システムに接続される装置や監視項目、事案の内容により運用に最適な設定にすることができる。
【0041】
このように事案の状態と、対象となる装置と、報知の内容(警告、異常)との条件により、システムの中心となる表示装置、つまり、多目的情報表示用ディスプレイ6aに表示する、しないを決定するため、先に表示されていた重要な情報(例えば火災場所の住所や地図)が、軽微な障害情報(例えばハードディスク装置の残容量が減少)により書き換えられて業務の遂行に支障をきたすことがなくなり、円滑なシステム運用をおこなうことができる。
【0042】
図4は本発明における各装置の処理手順を説明するフローチャートであり、(A)は自動出動指定装置、(B)はその他装置、(C)は障害監視装置を示している。
また、図5はサーバの処理手順を説明するフローチャートである。フローチャートでは、各ステップを”ST番号”であらわし、判断ステップで”Y”、”N”はそれぞれYesとNoを表している。
これらの処理を行なうプログラムはマルチタスクで起動されるため、システムの電源投入後に自動的に起動され、連続的に実行を行なうようになっている。
【0043】
図4(A)の自動出動指定装置では、自分自身に備えられている各監視手段、つまり、アプリケーション実行監視手段と空きメモリ監視手段とハードディスク動作監視手段とCPU温度監視手段と送風ファン回転監視手段とから、現在の各値を監視結果データとして取込み、通信手段を介してサーバのハードディスク上に確保された自動出動指定装置の監視結果データ領域を更新する(ST1)。
【0044】
次に指令台からの事案変更データが有るか確認し(ST2)、事案変更データがあれば(ST2−Y)、事案状態を更新し、通信手段を介してサーバのハードディスク上に確保された事案状態データ領域を更新する(ST3)。事案変更データがなければ(ST2−N)、ST1へジャンプして一連の動作を繰り返す。
【0045】
図4(B)のその他装置では、前述した自動出動指定装置と同様に、自分自身に備えられている各監視手段から現在の各値を監視結果データとして取込み、通信手段を介してサーバのハードディスク上に確保されたそれぞれの装置の監視結果データ領域を更新する(ST4)。そして、一連の動作を繰り返す。
【0046】
図4(C)の障害監視装置では、前述した自動出動指定装置と同様に、自分自身に備えられている各監視手段から現在の各値を監視結果データとして取込み、通信手段を介してサーバのハードディスク上に確保された自動出動指定装置の監視結果データ領域を更新する(ST5)。
【0047】
次にネットワーク監視手段から現在の値を監視結果データとして取込み、通信手段を介してサーバのハードディスク上に確保された障害監視装置の監視結果データ領域を更新する(ST6)。
そして、設定データと事案状態データと監視結果データとを読み出すために、それぞれのデータを要求する要求電文をサーバへ送信し、サーバのハードディスクから設定データと事案状態データと監視結果データとを読み出し(ST7)、図3(A)及び図3(B)の値とそれぞれ比較し、各装置および各監視項目ごとに「正常」、「警告」、「異常」を比較・判断手段で判別し、この結果を障害状況リストとして、障害監視装置に備えられている表示部に表示する(ST8)。
【0048】
そして、図3(C)に示す設定データの現在の事案と対応する「警告」と「異常」欄で示される装置が前述した障害状況リストの「警告」と「異常」に含まれる場合は、その対応する装置名と「警告」又は「異常」の報知内容を異常・警告データ送出部で表示データとして生成し、通信手段を介してサーバの表示メモリ部へ送信する(ST−9)。つまり、多目的情報表示用ディスプレイに表示されていた内容が障害の報知情報に自動的に切り換えられることになる。
【0049】
このとき、「警告」又は「異常」の報知内容に優先順位をつけてもよい。例えば、「警告」の報知内容ならば、その内容を子画面で表示し、すでに表示されている内容を主として表示させるようにし、また、「異常」の報知内容であれば、障害の内容を主画面とし、すでに表示されている内容を子画面で表示させるようにしてもよい。
【0050】
次に図5を用いてサーバの処理手順を説明する。まず、サーバは受信データがあるか確認し(ST10)、データがなければ(ST10−N)、他の装置と同様に自分自身に備えられている各監視手段から現在の各値を監視結果データとして取込み、直接、サーバのハードディスク上に確保された監視結果データ領域を更新し(ST15)、ST10へジャンプする。
【0051】
受信データがあれば(ST10−Y)、受信データが事案状態に関連するものか確認し(ST−11)、事案状態に関連するものであれば(ST11−Y)、受信データが障害監視装置からの要求電文か確認する(ST16)。受信データが要求電文であれば(ST16−Y)、ハードディスク上の事案状態データを読み出して返送する(ST17)。そして、ST10へジャンプする。
【0052】
受信データが要求電文でなければ(ST16−N)、事案状態データであるため、サーバのハードディスク上に確保された事案状態データ領域を更新し(ST18)、ST10へジャンプする。
【0053】
一方、受信データが事案状態に関連するものでなければ(ST11−N)、受信データが監視結果に関連するものか確認し(ST−12)、監視結果に関連するものであれば(ST12−Y)、受信データが要求電文か確認する(ST19)。受信データが要求電文であれば(ST19−Y)、ハードディスク上の監視結果データを読み出して返送する(ST20)。そして、ST10へジャンプする。
【0054】
受信データが要求電文でなければ(ST19−N)、監視結果データであるため、サーバのハードディスク上に確保された監視結果データ領域を更新し(ST21)、ST10へジャンプする。
【0055】
また、受信データが監視結果に関連するものでなければ(ST12−N)、受信データが設定データの要求電文か確認し(ST−12A)、設定データの要求電文であれば(ST12A−Y)、設定データを読み出して返送する(ST22)。そして、ST10へジャンプする。
【0056】
また、受信データが設定データの要求電文でなければ(ST12A−N)、受信データが表示データか確認する(ST−13)。表示データでなければ(ST13−N)、無視してST10へジャンプする。表示データであれば(ST13−Y)、受信データを表示メモリ部へ書き込み(ST14)、ST10へジャンプする。
【0057】
なお、ここには記載しないが、サーバには指令台からの指示により、表示メモリ部の内容を任意に書き換える機能を備えており、必要に応じて障害報知の画面から通常の画面に切り換えたり、また、障害報知の画面に戻したり、所定の動作に制御することが可能になっている。さらに、障害監視装置では指令台からの指示により、異常・警告データ送出部を一時的に停止させることも可能であり、多目的情報表示用ディスプレイの表示内容を自動的に書き換え禁止とすることもできる。
【0058】
以上説明したように本発明は、監視手段を備えている指令システムであれば、ソフトウェアの追加だけで実現できるため、機能の追加を安価に実現でき、さらに、指令システムで発生する障害の情報を各事案に対応して必要最小限だけ表示させることができ、システム障害発生時のオペレータの無用な混乱を避けることができる。
【0059】
なお、障害監視手段をすでに備えているシステムであれば、各装置のプログラムの変更だけで本発明を実現できるため、前述したフローチャートを実現するプログラムを記憶媒体に格納しておけば、記憶媒体の内容を他のシステムに読み込ませて本発明のシステムを容易に移植することができる。
また、この実施例では消防指令システムを例として説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、警察指令システムやタクシー無線を用いたタクシーの配車システムなどに幅広く応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による消防指令システムのブロック図である。
【図2】本発明による本部装置の内部を示すブロック図である。
【図3】設定データを示す表であり、(A)は各装置での監視項目と障害の程度を分類したもの、(B)は障害監視装置での監視項目、(C)は各事案に対する報知対象装置と報知内容を分類したものである。
【図4】本発明による各装置の処理手順を説明するフローチャートであり、(A)は自動出動指定装置、(B)はその他装置、(C)は障害監視装置を示している。
【図5】本発明によるサーバの処理手順を説明するフローチャートである。
【図6】従来の通信指令システムの通知方法を示す斜視図である。
【図7】従来の他の通信指令システムの通知方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 指令台(指令手段)
1a 緊急通報
2 自動出動指定装置
3 地図等検索装置
4 指令伝送送信装置
5 障害監視装置
6 サーバ
6a 多目的情報表示用ディスプレイ(表示手段)
7 ネットワークプリンタ
9 回線網
10 本部装置
20 署所装置
21 通信手段
22 事案状態監視手段
23 アプリケーション実行監視手段
24 メモリ監視手段
25 ハードディスク容量監視手段
26 ハードディスク動作監視手段
27 CPU温度監視手段
28 送風ファン回転監視手段
29 監視手段
52 ネットワーク監視手段
53 比較・判断手段
54 異常・警告データ送出部
55 表示部
56 障害通知手段
62 ハードディスク
63 表示メモリ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通報に対応するための事案を指令として出力すると共に、同指令と対応した事案状態データを生成する指令手段と、同指令手段からの指令を受けて稼動する装置と、前記指令手段および前記装置の障害状況監視結果である監視結果データを生成する監視手段と、情報を総合的に表示する表示手段とを備えた通信指令システムを用いて、前記監視結果データを前記表示手段に表示する通信指令システムの障害通知方法において、
前記監視結果データと前記事案状態データとに対応して前記表示手段への障害情報の表示可否を決定する報知内容データを予め設定テーブルとして記憶し、
前記監視結果データが障害のあることを示すときに、前記監視結果データの内容と前記事案状態データの内容とで指し示される前記設定テーブルの被参照データに従って前記障害情報の前記表示手段への表示/非表示を行なうことを特徴とする通信指令システムの障害通知方法。
【請求項2】
通報に対応するための事案を指令として出力すると共に、同指令と対応した事案状態データを生成する指令手段と、同指令手段からの指令を受けて稼動する装置と、前記指令手段および前記装置の障害状況監視結果である監視結果データを生成する監視手段と、情報を総合的に表示する表示手段とを備えた通信指令システムにおいて、
前記監視結果データと前記事案状態データとに対応して前記表示手段への障害情報の表示可否を決定する報知内容データが、予め設定テーブルとして記憶された報知内容データ記億部と、前記監視結果データが障害のあることを示すときに、前記監視結果データの内容と前記事案状態データの内容とで指し示される前記設定テーブルの被参照データに従って前記障害情報の前記表示手段への表示/非表示を行なう障害通知手段とを設けてなることを特徴とする通信指令システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−31241(P2006−31241A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207114(P2004−207114)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】