説明

通信端末及び移動体通信システム

【課題】 第1の通信端末が適用しているグレーディング方式の漏洩伝送路のどの区間でも、良好な無線通信を安定して行うことができ、通信エリアを延ばすことができるようにする。
【解決手段】 本発明の移動体通信システムは、特性が異なる漏洩伝送路部分を直列に接続した漏洩伝送路をアンテナとして適用している第1の通信端末と、この第1の通信端末と通信する第2の通信端末とを備え、第2の通信端末が漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動するものである。そして、第2の通信端末が、第1の通信端末における漏洩伝送路のそれぞれの部分の輻射方向と、輻射方向が正対する複数のアンテナ要素を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信端末及び移動体通信システムに関し、特に、無線基地局のアンテナとして漏洩伝送路が適用されているシステムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、移動通信端末の移動経路が定まっている移動体通信システムにおいて、移動通信端末が漏洩伝送路を介してデータ通信を行うシステムが検討されている。例えば、列車と路側装置との通信や、無人搬送車とその制御局との通信には、路側装置や制御局などの無線基地局に繋がっている漏洩伝送路が利用可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、双方の通信装置が共に漏洩同軸ケーブルを利用した移動体通信システムが記載されている。具体的には、図9に示すように、一端に送(受)信機2を接続し他端に終端抵抗器3を接続した固定側漏洩同軸ケーブル1と、一端に送(受)信機5を接続し他端に終端抵抗器6を接続した移動体側漏洩同軸ケーブル4とを、互いに送(受)信機と終端抵抗器の位置が長手方向に見て反対側にあるように平行に対向させた状態で、移動体側漏洩同軸ケーブル4を、固定側漏洩同軸ケーブル6の長手方向に沿って移動させるように移動路を形成する移動体通信システムが記載されている。このシステムにより、移動体側漏洩同軸ケーブル4と固定側漏洩同軸ケーブル6の電波の輻射方向が平行でかつ反対向きになることで両者の電磁結合効率が最大になり、小電力で能率の良い通信が可能となる。
【0004】
また、漏洩同軸ケーブルの通信エリアを延ばすため、異なる輻射特性の複数の漏洩同軸ケーブル部分を直列的(段階的)に接続させる、グレーディング方式の漏洩同軸ケーブルを適用することも良く行われている(特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開2007−97026
【特許文献2】特開2006−229790
【特許文献3】特開平4−113708
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、漏洩伝送路(漏洩同軸ケーブル)から漏れる電波は、無線基地局に近いほど強く、終端方向に向かうにつれて弱くなる。特許文献1の記載技術において、固定側漏洩同軸ケーブル(及び移動体側漏洩同軸ケーブル)が単一の漏洩同軸ケーブルで構成されているため、漏洩同軸ケーブルの長手方向に対して通信エリアを延ばすことができないという課題があった。
【0006】
特許文献2や特許文献3に記載のようなグレーディング方式の漏洩伝送路では、漏洩伝送路の通信エリアを延ばすことができる。しかしながら、グレーディング方式の漏洩伝送路では、各漏洩同軸ケーブル部分のそれぞれの輻射特性によって、電波の輻射方向が長手方向の区間毎に異なる。一般に、このグレーディング方式の漏洩伝送路に沿って移動する移動通信端末のアンテナは指向性を有するが、その指向性は、必ずしも、全ての漏洩同軸ケーブル部分の輻射特性に対応できるものとはなっていない。一方、移動通信端末のアンテナを無指向のもの又は指向範囲が広いものとした場合には、漏洩伝送路との電磁結合効率が悪くなってしまう。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、第1の通信端末がアンテナとしてグレーディング方式の漏洩伝送路を適用しても、漏洩伝送路のどの区間でも、第2の通信端末との良好な無線通信を安定して行うことができ、通信エリアを延ばすことができる通信端末及び移動体通信システムを提供しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、特性が異なる漏洩伝送路部分を直列に接続した漏洩伝送路をアンテナとして適用している基地局と通信を行う通信端末において、当該通信端末が上記基地局の上記漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動するものであり、上記各漏洩伝送路部分のそれぞれの部分の輻射方向と、輻射方向が正対する複数のアンテナ要素を有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、特性が異なる漏洩伝送路部分を直列に接続した漏洩伝送路をアンテナとして適用している第1の通信端末と、この第1の通信端末と通信する第2の通信端末とを備え、上記第2の通信端末が上記第1の通信端末の上記漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動する移動体通信システムであって、上記第2の通信端末として、第1の本発明の通信端末を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の通信端末がグレーディング方式の漏洩伝送路を適用しても、漏洩伝送路のどの区間でも、第2の通信端末との良好な無線通信を安定して行うことができ、通信エリアを延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第1の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、図1(A)〜(C)はそれぞれ、移動体の位置の相違を示している。
【0013】
図1において、第1の実施形態に係る移動体通信システム20は、無線基地局(AP)30及び移動体40を備えている。
【0014】
無線基地局30は、既存のものと同様な構成を有している。すなわち、無線基地局30は、アンテナとして直線状に延びている漏洩伝送路31を備え、漏洩伝送路31は終端器(終端抵抗器)32によって終端されている。
【0015】
漏洩伝送路31は、グレーディング方式に従っているものであり、N(Nは2以上の整数;図1では「3」の例を示している)本の漏洩伝送路部分31−1〜31−3(31−N)が直列的に接続されたものである。
【0016】
各漏洩伝送路部分31−1〜31−3間の接続方法は任意である。例えば、1本の漏洩伝送路に対し、開口部(スロット)の間隔を変えることなどにより、複数の漏洩伝送路部分31−1〜31−3を作り込むようにしても良い。また例えば、図2(A)に、漏洩伝送路部分31−1及び31−2間の接続について示すように、漏洩伝送路部分31−1、31−2の端部に接続端子50−1、50−2を設け、接続ケーブル51を介して両接続端子50−1及び50−2を接続するようにしても良い。この際に、図2(B)に示すように、増幅器52を介在させるようにしても良い。さらに例えば、図2(C)に、漏洩伝送路部分31−1及び31−2間の接続について示すように、漏洩伝送路部分31−1、31−2の端部にコネクタ53−1、53−2を設け、両コネクタ53−1及び53−2によって接続するようにしても良い。
【0017】
各漏洩伝送路部分31−1〜31−3は、単位長さ当たりの伝送損失などは異なるが輻射方向は同様なことが望ましい。しかしながら、ケーブルの仕様などにより、各漏洩伝送路部分31−1〜31−3について、輻射方向が異なっていることが多い。図1では、輻射方向その他諸々を含めて、「特性A」、「特性B」、「特性C」と記載している。
【0018】
移動体40は、漏洩伝送路31の延長方向に対して平行に移動するものであり、移動通信端末(41〜43)を搭載している。移動通信端末は、通信処理を実行する移動通信端末本体41と、そのアンテナとして機能する漏洩伝送路42と、漏洩伝送路42を終端する終端器(終端抵抗器)43とを有する。
【0019】
漏洩伝送路42は、移動通信端末本体41からの延長方向が、無線基地局30からの漏洩伝送路31の延長方向の逆方向になっているものである。延長方向は逆であるが、漏洩伝送路42及び漏洩伝送路31は平行なものである。漏洩伝送路42は、漏洩伝送路31の部分数(N=3)と同じ数の漏洩伝送路部分42−1〜42−3(42−N)が直列的に接続されたものである。
【0020】
第1の実施形態の場合、漏洩伝送路42は、グレーディング方式に従っているように見えるが、移動通信端末本体41からの距離による伝送損失を考慮して複数の漏洩伝送路部分42−1〜42−3を設けたものではなく、漏洩伝送路31の各漏洩伝送路部分31−1〜31−3と輻射方向が正対する部分を有するように、複数の漏洩伝送路部分42−1〜42−3を設けた。すなわち、漏洩伝送路部分42−1は漏洩伝送路部分31−1と輻射方向が正対する部分であり、漏洩伝送路部分42−2は漏洩伝送路部分31−2と輻射方向が正対する部分であり、漏洩伝送路部分42−3は漏洩伝送路部分31−3と輻射方向が正対する部分である。例えば、対応する両漏洩伝送路部分(例えば、42−1及び31−1)には、長さは異なるが、特性の同じ漏洩同軸ケーブルを適用する。
【0021】
なお、各漏洩伝送路の漏洩伝送路部分の輻射方向が正対するとは、それぞれの漏洩伝送路部分から輻射される電波の輻射角度がほぼ一致し、輻射方向が向き合うことを意味する。
【0022】
漏洩伝送路部分42−1〜42−3間の接続方法としても、漏洩伝送路部分31−1〜31−3間の接続方法と同様な方法を適用することができる。但し、図2(B)の接続方法を適用しても良いが、漏洩伝送路部分42−1〜42−3の直列的な接続は通信エリアの拡大を意図したものではないので、図2(B)に示すような増幅器を介在させるような複雑な方法を除外するようにしても良い。
【0023】
移動体40(漏洩伝送路42)が、図1(A)に示すように、漏洩伝送路部分31−1の近傍に位置しているとする。この場合、無線基地局30に関しては漏洩伝送路部分31−1が有効に機能し、漏洩伝送路部分31−1の輻射方向(特性A)が通信に影響する。移動体40側に関しては、全ての漏洩伝送路部分42−1〜42−3が通信に関与できる。しかしながら、漏洩伝送路部分31−1の輻射方向(特性A)と逆方向の輻射方向を有するのは(輻射方向が正対しているのは)、漏洩伝送路部分42−1であるので、漏洩伝送路部分31−1の近傍においては、漏洩伝送路部分31−1の輻射方向に正対する漏洩伝送路42−1が有効に機能する。
【0024】
図3及び図4は、通信に供する漏洩伝送路部分の輻射方向が、逆方向になっている場合(図3(B))と、逆方向にはなっていない場合(図4(B))の受信レベル(図3(A)、図4(A))を示している。
【0025】
通信に供する漏洩伝送路部分の輻射方向が逆方向になっている場合(輻射方向が正対している場合)には、移動通信端末での受信レベルは高く、しかも、無線基地局からの距離の変化に対する変動も小さなものとなっている。これに対して、通信に供する漏洩伝送路部分の輻射方向が逆方向になっていない場合(輻射方向が正対していない場合)には、移動通信端末での受信レベルは低く、しかも、無線基地局からの距離の変化に対する変動も大きなものとなっている。
【0026】
これら図3及び図4から、無線基地局30の漏洩伝送路部分31−1の輻射方向(特性A)と逆方向の輻射方向を有する漏洩伝送路部分42−1が移動通信端末(41〜43)に存在することにより、無線基地局30及び移動通信端末(41〜43)間の通信が良好に実行できることが分かる。
【0027】
また、移動体40(漏洩伝送路42)が、図1(B)に示すように、漏洩伝送路部分31−2の近傍に位置しているとする。この場合、無線基地局30に関しては漏洩伝送路部分31−2が有効に機能し、漏洩伝送路部分31−2の輻射方向(特性B)が通信に影響する。移動体40側に関しては、全ての漏洩伝送路部分42−1〜42−3が通信に関与できる。しかしながら、漏洩伝送路部分31−2の輻射方向(特性B)と逆方向の輻射方向を有するのは、漏洩伝送路部分42−2であるので、漏洩伝送路部分31−2の近傍においては、漏洩伝送路部分31−2の輻射方向に正対する漏洩伝送路42−2が有効に機能する。
【0028】
詳述は避けるが、移動体40(漏洩伝送路42)が、図1(C)に示すように、漏洩伝送路部分31−3の近傍に位置しているときには、漏洩伝送路部分31−3の輻射方向に正対する漏洩伝送路42−3が有効に機能する。
【0029】
上記第1の実施形態によれば、移動通信端末が、無線基地局における各漏洩伝送路部分と正対する漏洩伝送路部分をそれぞれ備えるので、無線基地局がアンテナとしてグレーディング方式の漏洩伝送路を適用しても、無線基地局の漏洩伝送路のどの区間でも、良好な無線通信を安定して行うことができ、通信エリアを延ばすことができる。
【0030】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第2の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
図5は、第2の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。図5においても、図5(A)〜(C)はそれぞれ、移動体の位置の相違を示している。
【0032】
図5において、第2の実施形態に係る移動体通信システム20Aも、無線基地局30及び移動体40Aを備え、移動体40Aの内部(移動通信端末)の構成が第1の実施形態のものと異なっている。
【0033】
第2の実施形態の移動体40Aにおける移動通信端末は、通信処理を実行する、内部にダイバーシティ回路を有する移動通信端末本体41Aを有する。移動通信端末本体41Aからは、無線基地局30の漏洩伝送路31の部分数(N=3)と同じ数の漏洩伝送路42−1〜42−3(42−N)が並列的に接続されており、各漏洩伝送路42−1〜42−3の先端はそれぞれ、終端器(終端抵抗器)43−1〜43−3によって終端されている。
【0034】
移動通信端末本体41Aのダイバーシティ回路は、受信レベルなどに応じて、漏洩伝送路42−1〜42−3のいずれかを有効とする選択ダイバーシティ回路であっても良く、また、漏洩伝送路42−1〜42−3に対して所定比率(例えば1/3ずつ)で合成する合成ダイバーシティ回路であっても良い。
【0035】
各漏洩伝送路42−1〜42−3はそれぞれ、移動通信端末本体41Aからの延長方向が、無線基地局30からの漏洩伝送路31の延長方向の逆方向になっているものである。延長方向は逆であるが、各漏洩伝送路42−1〜42−3及び漏洩伝送路31は平行なものである。第2の実施形態の場合、漏洩伝送路42−1が漏洩伝送路部分31−1と輻射方向が正対し、漏洩伝送路42−2は漏洩伝送路部分31−2と輻射方向が正対し、漏洩伝送路42−3は漏洩伝送路部分31−3と輻射方向が正対する。
【0036】
移動体40A(漏洩伝送路42−1〜42−3)が、図5(A)に示すように、漏洩伝送路部分31−1の近傍に位置しているとする。この場合、無線基地局30に関しては漏洩伝送路部分31−1が有効に機能し、漏洩伝送路部分31−1の輻射方向(特性A)が通信に影響する。移動体40A側に関しては、全ての漏洩伝送路42−1〜42−3が通信に関与できる。しかしながら、漏洩伝送路部分31−1の輻射方向(特性A)と逆方向の輻射方向を有するのは(輻射方向が正対しているのは)、漏洩伝送路42−1であるので、漏洩伝送路部分31−1の近傍においては、漏洩伝送路部分31−1の輻射方向に正対する漏洩伝送路42−1が有効に機能する。
【0037】
移動通信端末本体41Aのダイバーシティ回路が選択ダイバーシティ回路の場合であれば、漏洩伝送路42−1〜42−3の受信レベルに基づき、受信レベルが高い漏洩伝送路42−1が選択される。移動通信端末本体41Aのダイバーシティ回路が合成ダイバーシティ回路の場合であれば、受信レベルが高い漏洩伝送路42−1を含めて、漏洩伝送路42−1〜42−3の入出力が合成されるので、全ての漏洩伝送路42−1〜42−3の輻射方向に正対しない場合より、受信レベルは高くなる。
【0038】
すなわち、移動体40Aが、図5(A)に示すように漏洩伝送路部分31−1の近傍に位置しているときには、漏洩伝送路部分31−1の輻射方向に正対する漏洩伝送路42−1が有効に機能し、移動通信端末と無線基地局との通信が適切に実行される。
【0039】
また、詳述は避けるが、移動体40Aが、図5(B)に示すように、漏洩伝送路部分31−2の近傍に位置しているときには、漏洩伝送路部分31−2の輻射方向に正対する漏洩伝送路42−2が有効に機能し、移動通信端末と無線基地局との通信が適切に実行される。
【0040】
さらに、詳述は避けるが、移動体40Aが、図5(C)に示すように、漏洩伝送路部分31−3の近傍に位置しているときには、漏洩伝送路部分31−3の輻射方向に正対する漏洩伝送路42−3が有効に機能し、移動通信端末と無線基地局との通信が適切に実行される。
【0041】
上記第2の実施形態によれば、移動通信端末が、無線基地局における各漏洩伝送路部分と輻射方向が正対する漏洩伝送路をそれぞれ備えるので、無線基地局がアンテナとしてグレーディング方式の漏洩伝送路を適用しても、無線基地局の漏洩伝送路のどの区間でも、良好な無線通信を安定して行うことができ、通信エリアを延ばすことができる。
【0042】
(C)第3の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第3の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0043】
図6は、第3の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第2の実施形態に係る図5との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。図6においても、図6(A)〜(C)はそれぞれ、移動体の位置の相違を示している。
【0044】
図6において、第3の実施形態に係る移動体通信システム20Bも、無線基地局30及び移動体40Bを備え、移動体40Bの内部(移動通信端末)の構成が既述した実施形態のものと異なっている。
【0045】
図5及び図6の比較から明らかなように、第3の実施形態に係る移動体40Bは、無線基地局30の各漏洩伝送路部分31−1〜31−3と輻射方向が正対するアンテナ42−1〜42−3が、漏洩伝送路ではなく、一般的な指向性アンテナで形成されている点が、第2の実施形態と異なっており、その他は第2の実施形態と同様である。
【0046】
指向性アンテナ42−1〜42−3の具体的な形式などは任意であっても良い。例えば、移動体の一面に形成し易いような平面アンテナであっても良く、八木アンテナなどを適用しても良い。また、指向性アンテナ42−1〜42−3は、無線基地局30における各漏洩伝送路部分31−1〜31−3の輻射方向との対向性を高められるように指向性を調整できるものであっても良い。
【0047】
移動通信端末のアンテナが漏洩伝送路で構成されているか他の形式のアンテナで構成されているかの相違はあるが、この第3の実施形態によっても、第2の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0048】
(D)第4の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第4の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0049】
図7は、第4の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0050】
図7において、第4の実施形態に係る移動体通信システム20Cも、無線基地局30C及び移動体40Cを備え、無線基地局30C及び移動体40Cの構成が第1の実施形態のものと異なっている。
【0051】
第4の実施形態に係る無線基地局30Cは、自己を挟んだ左右に、グレーディング方式の漏洩伝送路31R及び31Lを備えたものである。
【0052】
第4の実施形態に係る移動体40Cは、このような無線基地局30Cの構成に対応すべく、移動通信端末本体41Cを挟んだ左右に、漏洩伝送路42R及び42Lを備えている。図7において、無線基地局30Cの漏洩伝送路部分31R−1が移動通信端末本体41Cの漏洩伝送路42R−1に対応し、他の符号関係も同様である。
【0053】
以上の点を除けば、第4の実施形態も第1の実施形態と同様である。なお、移動通信端末本体41Cは、2本の漏洩伝送路42R及び42Lの信号を処理するための選択性又は合成のダイバーシティ回路を有する。
【0054】
第4の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0055】
(E)第5の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第5の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0056】
図8は、第5の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第2の実施形態に係る図5との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0057】
図8において、第5の実施形態に係る移動体通信システム20Dも、無線基地局30及び移動体40Dを備え、移動体40Dの内部(移動通信端末)の構成が第2の実施形態のものと異なっている。
【0058】
第5の実施形態に係る移動体40Dは、第2の実施形態の移動体40Aと比較すると、移動通信端末本体41Dに、無線基地局30の漏洩伝送路部分31−1〜31−3と輻射方向が正対する漏洩伝送路42−1〜42−3に加え、弱指向性アンテナ44が接続されている点が異なっている。
【0059】
弱指向性アンテナ44は、無線基地局30における全ての漏洩伝送路部分31−1〜31−3の輻射方向をカバーし得る指向性を有するものである。移動通信端末本体41Dの図示しないダイバーシティ回路は、この弱指向性アンテナ44も1要素としてダイバーシティ処理するものである。
【0060】
上述したように、漏洩伝送路42−1が漏洩伝送路部分31−1と輻射方向が正対し、漏洩伝送路42−2が漏洩伝送路部分31−2と輻射方向が正対し、漏洩伝送路42−3が漏洩伝送路部分31−3と輻射方向が正対しているが、ダイバーシティ回路との接続部分における接続不良などにより、無線基地局30におけるいずれかの漏洩伝送路部分31−1〜31−3に対応する漏洩伝送路42−1〜42−3が機能し得なくなることが皆無とは言い難い。輻射方向が正対している漏洩伝送路部分31−i及び漏洩伝送路42−i間での通信が不可能であっても、弱指向性アンテナ44の存在により、最低限の通信を保証可能になっている。
【0061】
第5の実施形態によっても、第2の実施形態と同様な効果を奏することができる。さらに、通信を最低限、保証することができる。
【0062】
(F)他の実施形態
上記各実施形態の技術思想で組み合わせ可能なものは組み合わせて適用するようにしても良い。例えば、第2及び第4の実施形態の技術思想を組み合わせるようにしても良い。
【0063】
上記各実施形態においては、無線基地局のグレーディング方式に従っている漏洩伝送路の部分数と同じ数のアンテナ要素を、移動通信端末本体に直列的又は並列的に接続したものを示したが、直列及び並列を組み合わせて移動通信端末本体に接続させるようにしても良い。例えば、無線基地局の漏洩伝送路の部分数が4個の場合であれば、移動体における4つのアンテナ要素のうち、2つずつを直列に接続させ、そのような2つの直列体を移動通信端末本体に並列に接続させるようにしても良い。
【0064】
また、上記各実施形態においては(第5の実施形態を除く)、無線基地局のグレーディング方式に従っている漏洩伝送路の部分数と同じ数のアンテナ要素を移動通信端末本体に接続したものを示したが、移動通信端末本体に接続するアンテナ要素の数を無線基地局のグレーディング方式に従っている漏洩伝送路の部分数より多くしても少なくしても良い。但し、無線基地局の各漏洩伝送路部分と輻射方向が正対するアンテナ要素が、移動通信端末本体に接続されていることを要する。
【0065】
例えば、無線基地局の各漏洩伝送路部分に対応するアンテナ要素として2つずつを設け、一方が漏洩伝送路(若しくは漏洩伝送路部分)で、他方が漏洩伝送路以外の構成のアンテナにするようにしても良い。
【0066】
また例えば、移動通信端末本体における、複数の中の1個のアンテナ要素が、無線基地局の複数の漏洩伝送路部分に対応させる場合としては、輻射方向が同一若しくは微差である複数の漏洩伝送路部分を対応させる場合を挙げることができる。また、無線基地局側に近い複数の漏洩伝送路部分には1個のアンテナ要素を対応させ、それより遠い位置の各漏洩伝送路部分にはそれぞれ1個のアンテナ要素を対応させるようにしても良い。
【0067】
上記各実施形態の説明では、無線基地局側が固定のものを示したが、逆に、上記各実施形態の無線基地局が移動し、上記各実施形態の移動体が固定のものであっても良い。また、上記各実施形態における無線基地局及び移動体が移動するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図2】無線基地局に係る漏洩伝送路部分間の接続方法の説明図である。
【図3】通信に供する2つの漏洩伝送路部分の輻射方向が正対している場合の通信特性を示す説明図である。
【図4】通信に供する2つの漏洩伝送路部分の輻射方向が正対していない場合の通信特性を示す説明図である。
【図5】第2の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図6】第3の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図7】第4の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図8】第5の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図9】漏洩同軸ケーブルを用いた従来の移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
20、20A〜20D…移動体通信システム、
30、30C…無線基地局(AP)、
31、31R、31L…漏洩伝送路、
31−1〜31−3、31R−1〜31R−3、31L−1〜31L−3…漏洩伝送路部分、
32、32R、32L…終端器、
40、40A〜40D…移動体、
41、41A〜41D…移動通信端末本体、
42…漏洩伝送路、
42−1〜42−3、42R−1〜42R−3、42L−1〜42L−3…アンテナ要素(漏洩伝送路部分、漏洩伝送路、指向性アンテナ)、
43、43R、43L、43−1〜42−3…終端器、
44…弱指向性アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性が異なる漏洩伝送路部分を直列に接続した漏洩伝送路をアンテナとして適用している基地局と通信を行う通信端末において、
当該通信端末が上記基地局の上記漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動するものであり、
上記各漏洩伝送路部分のそれぞれの部分の輻射方向と、輻射方向が正対する複数のアンテナ要素を有する
ことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
上記各アンテナ要素がそれぞれ漏洩伝送路でなり、これら漏洩伝送路を直列接続させ、この直列接続体を通信端末本体に接続したことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
上記各アンテナ要素を通信端末本体に並列に接続したことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項4】
上記各アンテナ要素がそれぞれ漏洩伝送路でなることを特徴とする請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
上記通信端末本体は、複数の上記アンテナ要素から択一的に1つを有効とする選択手段を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の通信端末。
【請求項6】
上記通信端末本体は、複数の上記アンテナ要素からの受信信号を合成処理する合成手段を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の通信端末。
【請求項7】
特性が異なる漏洩伝送路部分を直列に接続した漏洩伝送路をアンテナとして適用している第1の通信端末と、この第1の通信端末と通信する第2の通信端末とを備え、上記第2の通信端末が上記第1の通信端末の上記漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動する移動体通信システムであって、
上記第2の通信端末として、請求項1〜6のいずれかに記載の通信端末を適用したことを特徴とする移動体通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−171047(P2009−171047A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4765(P2008−4765)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】