説明

通信装置、キャリブレーション方法及びプログラム

【課題】 キャリブレーションのために使用される回路のキャリブレーションに与える影響を軽減すること。
【解決手段】 キャリブレーション部50からアンテナx部10−xを介して基地局送受信部40に対し送信されるキャリブレーション信号と、基地局送受信部40からアンテナx部10−xを介してキャリブレーション部50に対し送信されるキャリブレーション信号と、にそれぞれ基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量と、第2キャリブレーションウエイト基礎量とを算出し、該第1キャリブレーションウエイト基礎量と、該第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置、キャリブレーション方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アダプティブアレイアンテナを使用する基地局装置においては、複数のアンテナにおいてそれぞれ受信される信号に基づいて、送信信号について、アンテナごとの送信電力のウエイトを算出する。そして、該ウエイトに基づいて重み付けされた送信信号を、各アンテナから送出する処理を行う。
【0003】
ここで、精度よく重み付けを算出するためには、受信信号の各アンテナにおける受信電力や位相回転量と、送信信号を送信する際に生ずる基地局装置内部での電力ロスや遅延と、を把握しておき、これらを考慮した上で重み付けを算出する必要がある。このための技術として種々のキャリブレーション技術が開発されており、例えば特許文献1には、各アンテナとケーブルがアイソレーションや損失等について異なる特性を有することによる上記電力ロスや遅延を考慮に入れて重み付けを算出するキャリブレーション技術が記載されている。
【特許文献1】特開2001−053661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のキャリブレーション技術においては、キャリブレーションのために使用される回路自体の特性もキャリブレーションに影響する。すなわち、従来は図5に示すように、キャリブレーション部150から送信されるキャリブレーション信号を基地局送受信部140において受信し、該受信される信号に基づいてキャリブレーションウエイト算出部148にてキャリブレーションウエイトを算出していたため、キャリブレーション部150から基地局送受信部140に至るケーブルや内部回路等のキャリブレーションのために使用される回路の特性がキャリブレーションウエイトに影響していた。このため、キャリブレーションの精度を保つためには、キャリブレーションのために使用される回路における電力ロスや遅延を各アンテナで揃えておく必要があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、キャリブレーションのために使用される回路のキャリブレーションに与える影響を軽減することを可能とする通信装置、キャリブレーション方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、キャリブレーション部と、送受信部と、該キャリブレーション部及び該送受信部とそれぞれ接続される複数のアンテナ部と、を含む通信装置において、キャリブレーション信号を取得するキャリブレーション信号取得手段、をさらに含み、前記キャリブレーション部は、前記キャリブレーション信号取得手段により取得されるキャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第1送信手段、を含み、前記アンテナ部は、前記第1送信手段により送信される前記キャリブレーション信号を取得し、前記送受信部に対し送信する第1取得送信手段、を含み、前記送受信部は、前記第1取得送信手段により送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第1キャリブレーションウエイト基礎量算出手段と、前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第2送信手段と、を含み、前記アンテナ部は、前記第2送信手段により送信される前記キャリブレーション信号を取得し、前記キャリブレーション部に対し送信する第2取得送信手段、をさらに含み、前記キャリブレーション部は、前記第2取得送信手段により送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第2キャリブレーションウエイト基礎量算出手段と、をさらに含み、前記第1キャリブレーションウエイト基礎量と、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出するキャリブレーションウエイト算出手段、をさらに含むことを特徴とする。
【0007】
このようにすることにより、キャリブレーションウエイトを、前記第1キャリブレーションウエイト基礎量と、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて決定することができるので、キャリブレーションのために使用される回路のキャリブレーションに与える影響を軽減することが可能となる。
【0008】
また、上記通信装置において、前記送受信部は、前記複数のアンテナ部ごとに設けられ、前記各アンテナ部に到来する信号を受信する信号受信手段と、前記各信号受信手段によりそれぞれ受信される信号の位相及び振幅の前記アンテナ部間における相違量を示す受信ウエイトであって、前記各アンテナ部にそれぞれ対応する複数の受信ウエイトを算出する受信ウエイト算出手段と、送信信号を取得する送信信号取得手段と、前記受信ウエイトと、前記キャリブレーションウエイト算出手段により算出されるキャリブレーションウエイトと、に基づいて、前記各アンテナ部から前記送信信号を送信する際の、位相及び振幅の前記アンテナ部間における相違量を示す送信ウエイトであって、前記各アンテナ部にそれぞれ対応する送信ウエイトを決定する送信ウエイト決定手段と、前記複数のアンテナ部ごとに設けられ、前記送信ウエイト決定手段により決定される送信ウエイトに基づいて重み付けされた前記送信信号を、前記各アンテナ部から送信する複数の送信信号送信手段と、を含む、こととしてもよい。
【0009】
このように、無線にて信号を送受信するための複数のアンテナと、前記複数のアンテナごとに設けられ、前記各アンテナに到来する信号を受信する複数の信号受信手段と、前記各信号受信手段によりそれぞれ受信される信号の位相及び振幅の前記アンテナ間における相違量を示す受信ウエイトであって、前記各アンテナにそれぞれ対応する複数の受信ウエイトを算出する受信ウエイト算出手段と、送信信号を取得する送信信号取得手段と、前記受信ウエイトに基づいて、各アンテナから前記送信信号を送信する際の、位相及び振幅の前記アンテナ間における相違量を示す送信ウエイトであって、前記各アンテナにそれぞれ対応する送信ウエイトを決定する送信ウエイト決定手段と、前記複数のアンテナごとに設けられ、前記送信ウエイト決定手段により決定される送信ウエイトにて、前記各アンテナから前記送信信号を送信する複数の送信信号送信手段と、を含む通信装置において、キャリブレーション信号を取得するキャリブレーション信号取得手段と、前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号を前記各アンテナに対し送信するキャリブレーション信号送信手段と、をさらに含み、前記各信号受信手段は、前記キャリブレーション信号送信手段により送信される前記キャリブレーション信号をさらに受信し、前記通信装置は、前記各信号受信手段によりそれぞれ受信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第1キャリブレーションウエイト基礎量算出手段、をさらに含み、前記送信信号取得手段は、前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号を送信信号として取得し、前記送信信号送信手段は、前記送信信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号を送信し、前記通信装置は、前記各送信信号送信手段により送信される前記キャリブレーション信号をそれぞれ受信するキャリブレーション信号受信手段と、前記キャリブレーション信号受信手段により受信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第2キャリブレーションウエイト基礎量算出手段と、前記第1キャリブレーションウエイト基礎量と、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出するキャリブレーションウエイト算出手段と、をさらに含み、前記送信ウエイト決定手段は、前記キャリブレーションウエイトにさらに基づいて、前記各アンテナ部から前記送信信号を送信する際の送信ウエイトを決定する、こととすれば、キャリブレーションのために使用される回路のキャリブレーションに与える影響を軽減させて算出されるキャリブレーションウエイトを、前記各アンテナ部から前記送信信号を送信する際の送信ウエイトに反映させることができるので、より精度の高い送信ウエイトを決定することができる。
【0010】
また、上記通信装置において、前記第1キャリブレーションウエイト基礎量は、前記送受信部により受信される前記キャリブレーション信号の、前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号に対する位相回転量及び振幅変化量に基づいて算出され、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量は、前記キャリブレーション部により受信される前記キャリブレーション信号の、前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号に対する位相回転量及び振幅変化量に基づいて算出される、こととしてもよい。
【0011】
また、上記通信装置において、前記キャリブレーション信号は、一定周波数の信号である、こととしてもよい。
【0012】
また、本発明に係るキャリブレーション方法は、キャリブレーション部と、送受信部と、該キャリブレーション部及び該送受信部とそれぞれ接続される複数のアンテナ部と、を含む通信装置を制御するキャリブレーション方法において、キャリブレーション信号を取得するキャリブレーション信号取得ステップ、を含み、前記キャリブレーション部において、前記キャリブレーション信号取得ステップにおいて取得されるキャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第1送信ステップ、を含み、前記アンテナ部において、前記第1送信ステップにおいて送信される前記キャリブレーション信号を前記送受信部に対し送信する第1取得送信ステップ、を含み、前記送受信部において、前記第1取得送信ステップにおいて送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第1キャリブレーションウエイト基礎量算出ステップと、前記キャリブレーション信号取得ステップにおいて取得される前記キャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第2送信ステップと、を含み、前記アンテナ部において、前記第2送信ステップにおいて送信される前記キャリブレーション信号を前記キャリブレーション部に対し送信する第2取得送信ステップ、をさらに含み、前記キャリブレーション部において、前記第2取得送信ステップにおいて送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第2キャリブレーションウエイト基礎量算出ステップと、をさらに含み、前記第1キャリブレーションウエイト基礎量と、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出するキャリブレーションウエイト算出ステップ、をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、キャリブレーション部と、送受信部と、該キャリブレーション部及び該送受信部とそれぞれ接続される複数のアンテナ部と、を含む通信装置として機能させる機能させるためのプログラムにおいて、キャリブレーション信号を取得するキャリブレーション信号取得手段、を含む前記通信装置として前記コンピュータをさらに機能させ、前記キャリブレーション信号取得手段により取得されるキャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第1送信手段、を含む前記キャリブレーション部として前記コンピュータをさらに機能させ、前記第1送信手段により送信される前記キャリブレーション信号を前記送受信部に対し送信する第1取得送信手段、を含む前記アンテナ部として前記コンピュータをさらに機能させ、前記第1取得送信手段により送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第1キャリブレーションウエイト基礎量算出手段、及び前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第2送信手段、を含む前記送受信部として前記コンピュータをさらに機能させ、前記第2送信手段により送信される前記キャリブレーション信号を前記キャリブレーション部に対し送信する第2取得送信手段、を含む前記アンテナ部として前記コンピュータをさらに機能させ、前記第2取得送信手段により送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第2キャリブレーションウエイト基礎量算出手段と、を含む前記キャリブレーション部として前記コンピュータをさらに機能させ、前記第1キャリブレーションウエイト基礎量と、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出するキャリブレーションウエイト算出手段、を含む前記通信装置として前記コンピュータをさらに機能させる、ことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る移動体通信システム1の構成図である。該移動体通信システム1は、図1に示すように、基地局装置2と、移動局装置3と、通信ネットワーク4と、を含んで構成されている。
【0016】
基地局装置2は、図2に示すように、制御部20と、無線通信部21と、記憶部22と、ネットワークインターフェイス部23と、キャリブレーション部24と、を含んで構成されている。制御部20は、基地局装置2の各部を制御し、通話やデータ通信に関わる処理を実行している。無線通信部21は、複数のアンテナを備え、移動局装置3からの音声信号や通信用パケット等をそれぞれ受信して復調し、制御部20に出力したり、制御部20から入力される指示に従って、制御部20から入力される音声信号や通信用パケット等を変調してアンテナを介して出力したり、といった処理を行う。また、複数のアンテナを従来公知のアダプティブアレイアンテナとして使用することにより、後述する空間分割多重方式(SDMA,Space Division Multiple Access)にて通信を行う。記憶部22は、制御部20のワークメモリとして動作する。また、この記憶部22は、制御部20によって行われる各種処理に関わるプログラムやパラメータを保持している。ネットワークインターフェイス部23は、通信ネットワーク4と接続されており、通信ネットワーク4からの音声信号や通信用パケット等を受信して制御部20に出力したり、制御部20の指示に従って音声信号や通信用パケット等を通信ネットワーク4に対して送信したりする。キャリブレーション部24は、後述するように、キャリブレーション信号の送受信を行い、基地局装置2内での電力ロスや遅延をアンテナごとの送信電力のウエイトに反映させるためのキャリブレーション処理の一部を行う。
【0017】
移動局装置3は、従来公知の携帯電話端末やPHS端末等の移動体通信システムで使用される端末装置と同様の端末装置であり、基地局装置2から無線送信される信号を受信し、基地局装置2に対し信号を無線送信することにより、基地局装置2と通信を行う。そして、該通信には上記空間分割多重方式を使用するとともに、時分割複信方式(TDD,Time Division Duplex)を使用することにより、移動局装置3から基地局装置2へ送信される信号(上り信号)と、基地局装置2から移動局装置3へ送信される信号(下り信号)と、を同一の周波数チャネルを使用して通信するようにしている。
【0018】
通信ネットワーク4は移動体通信システム1の交換機ネットワークであってもよいし、該移動体通信システム1がIP電話による通信システムである場合などにはTCP/IP網であってもよい。
【0019】
図3は、本実施の形態に係る基地局装置2の機能ブロックを示す図である。図3に示すように、基地局装置2は、機能的には、アンテナx部10−x(x=1〜n)と、基地局送受信部40と、キャリブレーション部50と、合成・分配部60と、キャリブレーション信号生成部70と、ケーブル80−x(x=1〜n)と、ケーブル81−x(x=1〜n)と、を含んで構成されている。アンテナx部10−xは、アンテナ11−xと、カプラ(連結器)12−xと、T(Transfer)/R(Receive)スイッチ14−xと、パワーアンプ(電力増幅器)15−xと、T/Rスイッチ16−xと、ローノイズアンプ(低雑音増幅器)17−xと、を含んで構成されている。基地局送受信部40は、T/Rスイッチ41−x(x=1〜n)と、周波数変換部42−x(x=1〜n)と、周波数変換部43−x(x=1〜n)と、送信部44と、受信部45と、送信ウエイト生成部46と、第1キャリブレーションウエイト基礎量算出部47と、キャリブレーションウエイト算出部48と、を含んで構成されている。キャリブレーション部50は、T/Rスイッチ51と、周波数変換部52と、周波数変換部53と、送信部54と、受信部55と、第2キャリブレーションウエイト基礎量算出部56と、を含んで構成されている。
【0020】
アンテナx部10−xは、無線通信部21によって実現され、アンテナ11−xに到来する電波を取得し、該電波に含まれる信号を基地局送受信部40に入力する信号入力処理と、基地局送受信部40から出力される信号をアンテナ11−xから無線区間に送出する信号送出処理を行う。そして通常は、移動局装置3との間での電波の送受信を行う。
【0021】
またアンテナx部10−xは、アンテナ11−xに到来する電波に含まれる信号の増幅処理及び基地局送受信部40から出力される信号の増幅処理も行う。具体的には、本実施の形態では上述のように時分割複信方式を使用しており、T/Rスイッチ14−x及びT/Rスイッチ16−xにより上り信号と下り信号のタイムスロットに含まれる信号をそれぞれ異なる経路に振り分け、それぞれの経路に設置される増幅器を経由して通信を行う。そして、上り信号の場合には、パワーアンプ15−xにより信号の電力を増幅することで、アンテナ11−xから信号を送信する際の送信電力を制御している。また、下り信号の場合にはローノイズアンプ17−xにより雑音レベルが非常に低い増幅を行い、受信信号の雑音レベルをできるだけ上げることなく、該信号の受信電力を増幅している。カプラ12−xについては、後述する。
【0022】
またアンテナ部10−xは通常該基地局装置2が設置される鉄塔の先端部に設置される。一方の基地局送受信部40は鉄塔の地面に近い部分に設置される。そのため、T/Rスイッチ16−xと、T/Rスイッチ41−xと、の間には10m以上の距離があることも多く、その間はケーブル80−xによって接続されている。
【0023】
次に、基地局送受信部40は、無線通信部21、制御部20及び記憶部22によって実現され、アンテナx部10−xから出力される信号を復調及び復号する復調・復号処理及びアンテナx部10−xへ出力する信号を変調及び符号化する変調・符号化処理を行う。そしてさらに、図示していないが、ネットワークインターフェイス部23との間での信号の送受信も行い、通信ネットワーク4と、移動局装置3との間での通信を中継する。
【0024】
T/Rスイッチ41−xは、ケーブル80−xと接続され、アンテナx部10−xから出力される信号を含むタイムスロットと、アンテナx部10−xへ出力する信号を含むタイムスロットと、で経路を切り替えることにより、アンテナx部10−xから出力される信号を周波数変換部43−xに出力し、周波数変換部42−xから出力される信号をケーブル80−xに送出する。なお、T/Rスイッチ41−x、周波数変換部42−x、周波数変換部43−xはそれぞれアンテナx部10−xに対応して設けられ、各アンテナx部10−xとの間で信号の入出力を行う。
【0025】
周波数変換部43−xは、アンテナx部10−xから出力される信号を、無線周波数からベースバンド周波数に変換する周波数変換処理を行い、該信号を受信部45に出力する。逆に、周波数変換部42−xは、アンテナx部10−xへ出力する信号を、ベースバンド周波数から無線周波数に変換する周波数変換処理を行い、該信号をT/Rスイッチ41−xに送出する。
【0026】
受信部45は、各周波数変換部43−xから入力される信号の合成と、検波処理を行う。検波処理としては、具体的には、該信号に図示しないバンドパスフィルタによるDFT(Digital Fourier Transpose)処理を施すことにより、特定の周波数の成分のみを取り出す。そして、該特定の周波数の信号に対し、復調及び復号処理を行い、移動局装置3が送出した信号をビット列で取得する。併せて、各周波数変換部43−xから入力される信号の位相及び振幅を取得し、送信ウエイト生成部46に出力する。
【0027】
送信部44は、ネットワークインターフェイス部23から出力される信号であるビット列を無線区間に送出するために、該信号の符号化及び変調処理を行う。そして、該信号を周波数変換部42−xに対して出力する。そしてこの出力を行う際に、以下に説明する送信ウエイト生成部46において生成される送信ウエイトに基づいて各周波数変換部42−xへの出力ごとに重み付けを行う。より具体的には、変調処理された信号に、送信ウエイト生成部46において生成される該信号の位相及び振幅の各アンテナx部10−x間における相違量を示す送信ウエイトを乗算することにより、各アンテナx部10−xにおいて該信号が無線区間に送出される際の位相及び振幅を、アンテナx部10−xごとに決定する。そしてこのようにすることにより、アンテナ11−xによるアダプティブビームフォーミング及びアダプティブヌルステアリング、すなわち空間分割多重方式を実現し、xの数nはアダプティブアレイアンテナの数となる。該処理を数式で表すと以下の式(1)のようになる。なお、変調処理された信号をS(t)、周波数変換部42−xに対して出力される信号をS(t)、該S(t)についての送信ウエイトをwTxとする。
【0028】
(t)=S(t)×wTx (x=1,2,・・・,n) ・・・(1)
【0029】
送信ウエイト生成部46は、受信部45から出力される信号の位相及び振幅に基づいて、受信される信号の位相及び振幅の各アンテナx部10−x間における相違量を示す受信ウエイトを算出する。受信ウエイトは相対的なものであり、1の周波数変換部43−xから出力される信号の位相及び振幅を基準として、該基準となる位相及び振幅と、他の周波数変換部43−xから出力される信号の位相及び振幅と、の差異をアンテナx部10−xにおける受信ウエイトとして用いることができる。そして送信ウエイト生成部46は、該受信ウエイトと、後述するキャリブレーションウエイト算出部において算出される、各アンテナx部10−xにそれぞれ対応する複数のキャリブレーションウエイトと、に基づいて送信ウエイトwTxを生成する。該処理を数式で表すと以下の式(2)のようになる。なお、周波数変換部43−xから出力される信号の受信ウエイトをwRx、キャリブレーションウエイトをwCxとする。
【0030】
Tx=wRx×wCx (x=1,2,・・・,n) ・・・(2)
【0031】
次に、キャリブレーションウエイトを算出する処理について説明する。
【0032】
まず、制御部20によって実現されるキャリブレーション信号生成部70がキャリブレーション信号を生成する。該キャリブレーション信号の種類としては、例えば一定周波数の信号の一種であるトーン信号(正弦波)や周波数が信号内容に応じて変更されるバースト信号(ビット列)が考えられる。トーン信号を用いる場合には、固定シンボルでトーン信号を用意しておき、該固定シンボルのコピーを繰り返すことにより、該キャリブレーション信号を生成することができる。バースト信号を使用する場合には、PN(Pseudo Noise)符号を用いたり、乱数によって信号を生成したりすることにより、該キャリブレーション信号を生成することができる。そして該キャリブレーション信号を送信部44、受信部45、送信部54、受信部55、第1キャリブレーションウエイト基礎量算出部47、第2キャリブレーションウエイト基礎量算出部56に対し、出力する。
【0033】
キャリブレーション部50はキャリブレーション部24によって実現される。該キャリブレーション部50においては、まず送信部54が、キャリブレーション信号生成部70から入力されるキャリブレーション信号を取得し、該キャリブレーション信号について、キャリブレーション信号の種類に応じた符号化・変調処理を行い、周波数変換部52に出力する。
【0034】
そして周波数変換部52では、キャリブレーション信号を、ベースバンド周波数から無線周波数に変換し、T/Rスイッチ51に出力する。T/Rスイッチ51は合成・分配部60から出力される信号を含むタイムスロットと、合成・分配部60へ出力する信号を含むタイムスロットと、で経路を切り替えることにより、合成・分配部60から出力される信号を周波数変換部53に出力し、周波数変換部52から出力される信号を合成・分配部60に送出する。
【0035】
そして、合成・分配部60はケーブル81−nと接続されており、T/Rスイッチ51から出力されるキャリブレーション信号を各アンテナx部10−xのカプラ12−nに対して分配して送信する。なお、該合成・分配部60はキャリブレーション部24に含まれていてもよいし、無線通信部21に含まれていてもよい。無線通信部21に含まれる場合には、T/Rスイッチ51と合成・分配部60との間の距離がT/Rスイッチ16−xと、T/Rスイッチ41−xと、の間の距離と同程度の長さになり、キャリブレーション部24に含まれる場合には、合成・分配部60とカプラ12−xとの間の距離がT/Rスイッチ16−xと、T/Rスイッチ41−xと、の間の距離と同程度の長さになる。
【0036】
カプラ12−xは、T/Rスイッチ14−xとアンテナ11−xとの間に設置される通信線と、ケーブル81−xと、を電気的に連結する。そして、カプラ12−xにより、T/Rスイッチ14−xとアンテナ11−xとの間に設置される通信線を流れる信号はケーブル81−xにも流れることとなり、逆にケーブル81−xに流れる信号はT/Rスイッチ14−xとアンテナ11−nとの間に設置される通信線にも流れることとなる。つまり、例えばT/Rスイッチ14−xからアンテナ11−xに流れる信号は、カプラ12−xによって取得され、ケーブル81−xに流されるため、合成・分配部60において取得することが可能となる。また、合成・分配部60からケーブル81−xに流される信号も、カプラ12−xによって取得され、T/Rスイッチ14−xとアンテナ11−xとの間に設置される通信線に流されるため、T/Rスイッチ14−xにおいて取得することが可能となる。
【0037】
このようにしてT/Rスイッチ14−xは、合成・分配部60により分配送信されるキャリブレーション信号を取得する。なお、該キャリブレーション信号は時分割複信方式の上り信号に使用されるタイムスロットに入るようにキャリブレーション部50において時間を調節して送信される。このためには、図示しないクロックを用いて制御部20と、無線通信部21と、記憶部22と、キャリブレーション部24と、の同期を取ることが望ましい。
【0038】
そしてこのようにしてT/Rスイッチ14−xにより取得された複数の上記キャリブレーション信号は、上述した処理により、受信部45において検波される。該検波においては、該キャリブレーション信号がトーン信号である場合には、周波数変換部43−xから出力される信号にDFT処理を施すことにより元のトーン信号を取得することができる。
【0039】
一方該キャリブレーション信号がバースト信号である場合には、キャリブレーション信号生成部70から入力されるキャリブレーション信号を参照信号として、該参照信号との相関から復調・復号を行うことになる。具体的には、周波数変換部43−xから出力される信号と、該参照信号の少なくとも一部とで、相関が最大となるタイミングをサーチし、相関が最大となるタイミングで該参照信号と周波数変換部43−xから出力される信号との相関を取得して出力することにより、検波される。すなわち、周波数変換部43−xから出力される信号から搬送波成分を抽出して送信側の周波数及び位相に合わせる搬送波成分抽出処理を行う。このような搬送波成分抽出処理は、キャリブレーション信号がトーン信号である場合には不要である。
【0040】
そしてさらに受信部45が受信したキャリブレーション信号に基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量算出部47は、第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する。第1キャリブレーションウエイト基礎量は、後述するキャリブレーションウエイト算出部48においてキャリブレーションウエイト算出処理に用いられる量であり、基地局送受信部40により受信されるキャリブレーション信号の、キャリブレーション生成部70より取得されるキャリブレーション信号に対する位相回転量及び振幅変化量に基づいて算出される。具体的には、キャリブレーション信号生成部70により生成されるキャリブレーション信号をC(t)、周波数変換部43−xから出力される信号をC’(t)、キャリブレーション部50から合成分配部60での電力ロス及び位相回転をそれぞれB及びβ、ケーブル81−xでの電力ロス及び位相回転をそれぞれD及びδ、アンテナx部10−xから受信部45での電力ロス及び位相回転をそれぞれE及びε、第1キャリブレーションウエイト基礎量をEr(x)、雑音をN1xとすると、C’(t)及びEr(x)はそれぞれ以下の式(3)及び式(4)で表される。なお、E[ ]は平均値を取る関数であり、*は複素共役であり、xは1からnの間の整数である。また、C(t)の振幅は1としている。またjは虚数単位である。
【0041】
C’(t)=C(t)×Bexp(jβ)×Dexp(jδ)×Eexp(jε)+N1x
・・・(3)
【0042】
Er(x)=E[C’(t)]×C(t)=BDexp(j(β+δ+ε))
・・・(4)
【0043】
次に、送信部44が、キャリブレーション信号生成部70から入力されるキャリブレーション信号を取得し、該キャリブレーション信号について、キャリブレーション信号の種類に応じた符号化・変調処理を行い、周波数変換部42−xに出力する。このとき、送信部44は特定の周波数変換部42−xにのみ該キャリブレーション信号を出力することが望ましい。具体的には、特定の周波数変換部42−x以外に出力する信号の送信ウエイトをゼロとすることにより、該特定の周波数変換部42−xにのみ該キャリブレーション信号を出力することができる。以下では、周波数変換部42−iにのみ該キャリブレーション信号を出力するものとして説明する。
【0044】
周波数変換部42−iでは、キャリブレーション信号を、ベースバンド周波数から無線周波数に変換し、T/Rスイッチ41−iに出力する。そして上述した処理により、アンテナi部10−iは、該信号をアンテナ11−iから送信する。この際、T/Rスイッチ14−iからアンテナ11−iに流れる信号は、カプラ12−iによって取得され、ケーブル81−iに流されるため、合成・分配部60において取得することが可能となる。
【0045】
このようにして合成・分配部60は該キャリブレーション信号を取得する。そして該キャリブレーション信号はT/Rスイッチ51に対して出力される。T/Rスイッチ51は該キャリブレーション信号を周波数変換部53に対して出力し、周波数変換部53は、該キャリブレーション信号を、無線周波数からベースバンド周波数に変換する周波数変換処理を行う。そして受信部55に対して周波数変換処理された該キャリブレーション信号を出力し、受信部55において検波される。該検波においては、該キャリブレーション信号がトーン信号である場合には、周波数変換部53から出力される信号にDFT処理を施すことにより元のトーン信号の位相成分を抽出する。
【0046】
一方該キャリブレーション信号がバースト信号である場合には、キャリブレーション信号生成部70から入力されるキャリブレーション信号を参照信号として、該参照信号との相関から復調・復号を行うことになる。具体的には、周波数変換部53から出力される信号と、該参照信号の少なくとも一部とで、相関が最大となるタイミングをサーチし、相関が最大となるタイミングで該参照信号と周波数変換部53から出力される信号との相関を取得して出力することにより、検波される。
【0047】
そしてさらに受信部55が受信したキャリブレーション信号に基づいて、第2キャリブレーションウエイト基礎量算出部56は、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する。第2キャリブレーションウエイト基礎量は、第1キャリブレーションウエイト基礎量同様、後述するキャリブレーションウエイト算出部48においてキャリブレーションウエイト算出処理に用いられる量であり、キャリブレーション部50により受信されるキャリブレーション信号の、キャリブレーション生成部70より取得されるキャリブレーション信号に対する位相回転量及び振幅変化量に基づいて算出される。具体的には、キャリブレーション信号生成部70により生成されるキャリブレーション信号をC(t)、周波数変換部53から出力される信号をC’(t)、送信部44からアンテナi部10−iでの電力ロス及び位相回転をそれぞれF及びζ、ケーブル81−iでの電力ロス及び位相回転をそれぞれG及びη、合成・分配部60からキャリブレーション部50での電力ロス及び位相回転をそれぞれH及びκ、第2キャリブレーションウエイト基礎量をEt(i)、雑音をN2iとすると、C’(t)及びEt(i)はそれぞれ以下の式(5)及び式(6)で表される。なお、C(t)の振幅は1としている。
【0048】
C’(t)=C(t)×Fexp(jζ)×Gexp(jη)×Hexp(jκ)+N2i
・・・(5)
【0049】
Et(i)=E[C’(t)]×C(t)=FHexp(j(ζ+η+κ))
・・・(6)
【0050】
以上のようにして得られる第1キャリブレーションウエイト基礎量及び第2キャリブレーションウエイト基礎量は、それぞれ第1キャリブレーションウエイト基礎量算出部48及び第2キャリブレーションウエイト基礎量算出部56によりキャリブレーションウエイト算出部48に出力される。なお、第1キャリブレーションウエイト基礎量算出部48は各アンテナx部10−xに対応する複数の第1キャリブレーションウエイト基礎量を1回のキャリブレーション信号の受信により算出し、キャリブレーションウエイト算出部48に出力する。一方、第2キャリブレーションウエイト基礎量算出部56は各アンテナx部10−xに対応する複数の第2キャリブレーションウエイト基礎量を、n回のキャリブレーション信号の受信により算出し、それぞれを算出するごとにキャリブレーションウエイト算出部48に出力する。もちろん、算出したものを記憶しておき、全てのアンテナx部10−xにそれぞれ対応する第2キャリブレーションウエイト基礎量が算出できた時点でキャリブレーションウエイト算出部48に出力することとしてもよい。そしてキャリブレーションウエイト算出部48は、入力される第1キャリブレーションウエイト基礎量及び第2キャリブレーションウエイト基礎量に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出する。具体的には、キャリブレーションウエイトwCxは以下の式(7)で表される。
【0051】
Cx=Er(x)/Et(x)=(BD)/(FH)exp(j(β+δ+ε−ζ−η−κ))・・・(7)
【0052】
ここで、ケーブル81−xでの電力ロス及び位相回転は該ケーブル81−xに信号が流れる方向に拘わらず同一であると考えられる。このため、D及びδはそれぞれG及びηに等しいとすることができる。また、キャリブレーション部50から合成・分配部60での電力ロス及び位相回転と、合成・分配部60からキャリブレーション部50での電力ロス及び位相回転と、の差は無視できるほど小さいとすれば、B及びβはそれぞれH及びκに等しいとすることができる。このようにすると、式(7)は以下の式(8)のようになる。
【0053】
Cx=(E)/(F)exp(j(ε−ζ)) ・・・(8)
【0054】
こうして、式(8)に示されるように、そもそものキャリブレーションの目的である、アンテナx部10−xから基地局送受信部40に至るまでの経路における電力ロス及び位相回転のみによるキャリブレーションウエイトを取得することができる。
【0055】
そして、このようにして取得されるキャリブレーションウエイトは、キャリブレーションウエイト算出部48から、送信ウエイト生成部46に対して出力される。そして送信ウエイト生成部46は、式(2)による計算により、送信ウエイトwTxを式(9)のように算出する。なお、受信ウエイトを=ARxexp(jαRx)とし、xは1からnの間の整数であるとする。
【0056】
Tx=wRx×wCx=(ARx)/(F)exp(j(αRx+ε−ζ))
・・・(9)
【0057】
そして、式(9)と式(1)に基づいて、送信部44から周波数変換部42−xに対して出力される信号S(t)は以下の式(10)で表される。
【0058】
(t)=S(t)×(ARx)/(F)exp(j(αRx+ε−ζ))
・・・(10)
【0059】
このようにして求められるS(t)を周波数変換等してアンテナ11−xから送信する際の送信信号ST(t)は、S(t)に送信部44からアンテナi部10−iでの電力ロス及び位相回転をそれぞれF及びζを与えて得られる信号となるので、以下の式(11)で表される。
【0060】
ST(t)=S(t)×Fexp(jζ)=S(t)×ARxexp(j(αRx+ε))
・・・(11)
【0061】
ここでEexp(jε)は、受信時の基地局装置2内部における電力ロス及び位相回転であり、該電力ロス及び位相回転をwLxとすると、式(11)は以下の式(12)のように書き直される。
【0062】
ST(t)=S(t)×wRx×wLx ・・・(12)
【0063】
つまり、受信ウエイトをwRx×wLxとすると、該受信ウエイトには受信時の基地局装置2内部における電力ロス及び位相回転を反映していることになる。すなわち、アンテナ11−xでの振幅及び位相に基づいて、受信ウエイトを算出したことと等価となる。このようにして、本実施の形態によれば、受信時の基地局装置2内部における電力ロス及び位相回転及び送信時の基地局装置2内部における電力ロス及び位相回転をともに反映して、送信ウエイトを決定することができる。そして、キャリブレーション信号基地局送受信部140とキャリブレーション部150との間で送受信する構成としたことにより、キャリブレーションのために使用される回路のキャリブレーションに与える影響が上り/下りを使用して軽減することができる。さらに、アンテナx部10−xまでキャリブレーション信号送受信用のケーブル81−xを引き込み、カプラ12−xを使用してキャリブレーション信号を通信用ケーブル80−xとキャリブレーション用ケーブル81−xに相互に流すことにより、アンテナx部10−x及びケーブル80−xにおける電力ロスや位相回転もキャリブレーションウエイトに含めることが可能となる。
【0064】
以上のキャリブレーションウエイトを算出する処理を、処理シーケンス図を参照しながら、再度詳細に説明する。
【0065】
図4は、キャリブレーションウエイトを検証する処理の処理フロー図である。まず、キャリブレーション部50からキャリブレーション信号生成部70により生成されたキャリブレーション信号を各アンテナi部10−iに対し送信する(S100−i)(i=1,2,・・・,n)。そして各アンテナi部10−iは該キャリブレーション信号をカプラ12−iにより通信用信号の通信経路と連結することにより取得し、基地局送受信部40に対して送信する(S102−i)。そして基地局送受信部40は、該受信した信号と、別途取得するキャリブレーション信号生成部70により生成されたキャリブレーション信号を参照信号として、第1−iキャリブレーションウエイト基礎量を算出する(S104)。
【0066】
次に、基地局送受信部50からキャリブレーション信号生成部70により生成されたキャリブレーション信号をアンテナi部10−iに対し送信する(S106−i)。そしてアンテナi部10−iは該キャリブレーション信号をカプラ12−iによりキャリブレーション部50とアンテナi部10−iとの通信経路であるケーブル81−iと連結することにより取得し、キャリブレーション部50に対して送信する(S108−i)。そしてキャリブレーション部50は、該受信した信号と、別途取得するキャリブレーション信号生成部70により生成されたキャリブレーション信号を参照信号として、第2−iキャリブレーションウエイト基礎量を算出する(S110−i)。そして該算出した第2−iキャリブレーションウエイト基礎量を基地局送受信部40に対して送信する(S112−i)。以上のS106−iからS112−iまでの処理を、i=1,2,・・・,nとなるiについて繰り返し行う。
【0067】
そして基地局送受信部40は、算出した第1−iキャリブレーションウエイト基礎量と、受信した第2−iキャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、アンテナi部10−iに対応するキャリブレーションウエイトを算出する(S114)。このようにして、全てのiについてアンテナi部10−iに対応するキャリブレーションウエイトを算出し、上述のように送信ウエイトに乗算することにより、キャリブレーションのために使用される回路による影響を軽減したキャリブレーションを行うことができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する処理と、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する処理とは、どちらを先に行ってもよいし、並行して行ってもよい。また、第1キャリブレーション基礎量算出部47が第1キャリブレーション基礎量を算出する際には、受信部45が受信した信号がキャリブレーション信号であるか否かを判断し、該判断が肯定の結果である場合に算出するとしてもよい。該判断は、受信した信号の内容を確認することにより行ってもよいし、基地局送受信部40及びキャリブレーション部50が、制御部20からキャリブレーションの実施を指示される場合には、該指示に基づいて決定されるキャリブレーション信号送信タイミングに受信される信号をキャリブレーション信号であると判断することとしてもよい。また、上記実施の形態では移動体通信システムの基地局装置に適用される場合を例にとって説明したが、アダプティブアレイ方式のように送信ウエイトをアンテナごとに変えて信号出力する通信装置であれば、どのような通信装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態にかかる移動体通信システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる基地局装置の構成ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる基地局装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる基地局装置の処理シーケンス図である。
【図5】本発明の背景となる技術にかかる基地局装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
1 移動体通信システム、2 基地局装置、3 移動局装置、4 通信ネットワーク、20 制御部、10 アンテナ部、11 アンテナ、12 カプラ、14,16,41,51 T/Rスイッチ、21 無線通信部、22 記憶部、23 ネットワークインターフェイス部、24,50 キャリブレーション部、40 基地局送受信部、42,43,52,53 周波数変換部、44,54 送信部、45,55 受信部、46 送信ウエイト生成部、47 第1キャリブレーションウエイト基礎量算出部、48 キャリブレーションウエイト算出部、56 第2キャリブレーションウエイト基礎量算出部、60 合成・分配部、70 キャリブレーション信号生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリブレーション部と、送受信部と、該キャリブレーション部及び該送受信部とそれぞれ接続される複数のアンテナ部と、を含む通信装置において、
キャリブレーション信号を取得するキャリブレーション信号取得手段、をさらに含み、
前記キャリブレーション部は、前記キャリブレーション信号取得手段により取得されるキャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第1送信手段、を含み、
前記アンテナ部は、前記第1送信手段により送信される前記キャリブレーション信号を取得し、前記送受信部に対し送信する第1取得送信手段、を含み、
前記送受信部は、前記第1取得送信手段により送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第1キャリブレーションウエイト基礎量算出手段と、
前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第2送信手段と、を含み、
前記アンテナ部は、前記第2送信手段により送信される前記キャリブレーション信号を取得し、前記キャリブレーション部に対し送信する第2取得送信手段、をさらに含み、
前記キャリブレーション部は、前記第2取得送信手段により送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第2キャリブレーションウエイト基礎量算出手段と、をさらに含み、
前記第1キャリブレーションウエイト基礎量と、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出するキャリブレーションウエイト算出手段、
をさらに含むことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記送受信部は、
前記複数のアンテナ部ごとに設けられ、前記各アンテナ部に到来する信号を受信する信号受信手段と、
前記各信号受信手段によりそれぞれ受信される信号の位相及び振幅の前記アンテナ部間における相違量を示す受信ウエイトであって、前記各アンテナ部にそれぞれ対応する複数の受信ウエイトを算出する受信ウエイト算出手段と、
送信信号を取得する送信信号取得手段と、
前記受信ウエイトと、前記キャリブレーションウエイト算出手段により算出されるキャリブレーションウエイトと、に基づいて、前記各アンテナ部から前記送信信号を送信する際の、位相及び振幅の前記アンテナ部間における相違量を示す送信ウエイトであって、前記各アンテナ部にそれぞれ対応する送信ウエイトを決定する送信ウエイト決定手段と、
前記複数のアンテナ部ごとに設けられ、前記送信ウエイト決定手段により決定される送信ウエイトに基づいて重み付けされた前記送信信号を、前記各アンテナ部から送信する複数の送信信号送信手段と、
を含む、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信装置において、
前記第1キャリブレーションウエイト基礎量は、前記送受信部により受信される前記キャリブレーション信号の、前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号に対する位相回転量及び振幅変化量に基づいて算出され、
前記第2キャリブレーションウエイト基礎量は、前記キャリブレーション部により受信される前記キャリブレーション信号の、前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号に対する位相回転量及び振幅変化量に基づいて算出される、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置において、
前記キャリブレーション信号は、一定周波数の信号である、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項5】
キャリブレーション部と、送受信部と、該キャリブレーション部及び該送受信部とそれぞれ接続される複数のアンテナ部と、を含む通信装置を制御するキャリブレーション方法において、
キャリブレーション信号を取得するキャリブレーション信号取得ステップ、を含み、
前記キャリブレーション部において、前記キャリブレーション信号取得ステップにおいて取得されるキャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第1送信ステップ、を含み、
前記アンテナ部において、前記第1送信ステップにおいて送信される前記キャリブレーション信号を前記送受信部に対し送信する第1取得送信ステップ、を含み、
前記送受信部において、前記第1取得送信ステップにおいて送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第1キャリブレーションウエイト基礎量算出ステップと、
前記キャリブレーション信号取得ステップにおいて取得される前記キャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第2送信ステップと、を含み、
前記アンテナ部において、前記第2送信ステップにおいて送信される前記キャリブレーション信号を前記キャリブレーション部に対し送信する第2取得送信ステップ、をさらに含み、
前記キャリブレーション部において、前記第2取得送信ステップにおいて送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第2キャリブレーションウエイト基礎量算出ステップと、をさらに含み、
前記第1キャリブレーションウエイト基礎量と、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出するキャリブレーションウエイト算出ステップ、
をさらに含むことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項6】
コンピュータを、キャリブレーション部と、送受信部と、該キャリブレーション部及び該送受信部とそれぞれ接続される複数のアンテナ部と、を含む通信装置として機能させる機能させるためのプログラムにおいて、
キャリブレーション信号を取得するキャリブレーション信号取得手段、を含む前記通信装置として前記コンピュータをさらに機能させ、
前記キャリブレーション信号取得手段により取得されるキャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第1送信手段、を含む前記キャリブレーション部として前記コンピュータをさらに機能させ、
前記第1送信手段により送信される前記キャリブレーション信号を前記送受信部に対し送信する第1取得送信手段、を含む前記アンテナ部として前記コンピュータをさらに機能させ、
前記第1取得送信手段により送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第1キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第1キャリブレーションウエイト基礎量算出手段、及び
前記キャリブレーション信号取得手段により取得される前記キャリブレーション信号を前記各アンテナ部に対し送信する第2送信手段、を含む前記送受信部として前記コンピュータをさらに機能させ、
前記第2送信手段により送信される前記キャリブレーション信号を前記キャリブレーション部に対し送信する第2取得送信手段、を含む前記アンテナ部として前記コンピュータをさらに機能させ、
前記第2取得送信手段により送信される前記キャリブレーション信号に基づいて、第2キャリブレーションウエイト基礎量を算出する第2キャリブレーションウエイト基礎量算出手段と、を含む前記キャリブレーション部として前記コンピュータをさらに機能させ、
前記第1キャリブレーションウエイト基礎量と、前記第2キャリブレーションウエイト基礎量と、に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出するキャリブレーションウエイト算出手段、
を含む前記通信装置として前記コンピュータをさらに機能させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−19991(P2006−19991A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195006(P2004−195006)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】