説明

通信装置、プログラムおよび画像形成装置

【課題】通信回線に接続された機器が端末機器からのアクセスにより消費する電力の低減を図る。
【解決手段】制御部10への電力供給を停止した場合にその旨をネットワークに接続された複数の外部装置に対して通信部20から通知した後に、ネットワークに接続された一の外部装置から信号を受信した場合には、通信部20がその一の外部装置に対して制御部10への電力供給を停止した旨の再度の通知を行う。そして、その場合に、一の外部装置の識別情報をアドレス記憶部24やNVM104に記憶し、パケット判定部23または制御部10は、通信部20にて受信した信号の送信元がアドレス記憶部24やNVM104に記憶された識別情報と一致する識別情報を有する外部装置である場合には、受信した信号を破棄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、プログラムおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のオフィス等においては、パーソナルコンピュータ等の端末装置とプリンタ等の画像形成装置とをネットワーク環境下で接続して、画像形成装置の共有使用または選択使用を行うシステムが構築されている。このようなシステムでは、不特定の端末装置等から画像形成装置に対してネットワークを介し頻繁に信号が送信される。そのため、受信した信号がその画像形成装置にて処理の必要がないものであっても、信号を受信する度毎に画像形成装置内のCPUが起動され、無駄な電力消費が発生する。そこで、ネットワークからの不特定の信号に起因する画像形成装置での電力消費の削減が求められている。
例えば特許文献1には、プリンタがノーマルモードからスリープモードに移行した場合には、ホストコンピュータのステータスモニタ(プリンタ状態管理プログラム)がプリンタへのポーリング動作を停止し、プリンタがスリープモードからノーマルモードに移行した場合には、ホストコンピュータのステータスモニタがプリンタへのポーリング動作を再開させ、プリンタ側の状態に応じてホストコンピュータ上のステータスモニタのプリンタへのポーリング動作を停止または再開するという技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−215686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、ネットワーク等の通信回線に接続された例えば画像形成装置等の機器に対して信号を送信する端末装置の中には、かかる機器が省電力状態にあることを解釈する機能を有しないものも含まれる。そのため、このような端末装置は通信回線に接続された機器が省電力状態にあっても端末機器からのアクセスにより、省電力状態にある機器が起動され、そのための処理電力を消費してしまう。
本発明は、通信回線に接続された機器が端末機器からのアクセスにより消費する電力の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、通信回線を介して外部装置と通信を行う通信手段と、動作を制御する制御部への電力供給を停止した場合に、前記通信手段から前記外部装置に対して当該制御部への電力供給を停止した旨を通知する通知手段と、前記通知手段が通知を行った後に一の前記外部装置から信号を受信し、当該通知手段が当該一の外部装置に対して再度の当該通知を行った場合に、当該一の外部装置の識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、前記通信手段にて前記外部装置から受信した信号を処理する信号処理手段とを備え、前記信号処理手段は、前記通信手段にて受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致する当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、受信した当該信号を破棄することを特徴とする通信装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記信号処理手段は、前記通信手段にて受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致しない当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、当該信号の内容に応じて当該信号を破棄することを特徴とする請求項1記載の通信装置である。
請求項3に記載の発明は、前記信号処理手段は、前記信号の内容に基づき当該信号を破棄すると判断した場合に、当該信号を送信した前記外部装置の識別情報を前記識別情報記憶手段に記憶することを特徴とする請求項2記載の通信装置である。
請求項4に記載の発明は、前記識別情報記憶手段は、前記外部装置のMACアドレスを記憶する第1識別情報記憶部と当該外部装置のIPアドレスを記憶する第2識別情報記憶部とを含み、前記信号処理手段は、当該第1識別情報記憶部に記憶された当該MACアドレスに基づき前記信号を破棄する第1信号処理部と、当該第2識別情報記憶部に記憶された当該IPアドレスに基づき前記信号を破棄する第2信号処理部とを含むことを特徴とする請求項1記載の通信装置である。
【0007】
請求項5に記載の発明は、前記識別情報記憶手段は、記憶した前記外部装置の識別情報を所定時間の経過の後に消去することを特徴とする請求項1記載の通信装置である。
請求項6に記載の発明は、前記信号処理手段は、前記信号を破棄する処理を行う時間帯が設定されたことを特徴とする請求項1記載の通信装置である。
請求項7に記載の発明は、前記通知手段が一度目の前記通知を行った前記外部装置の識別情報を記憶する第2の識別情報記憶手段をさらに備え、前記信号処理手段は、前記通信手段にて受信した前記信号の送信元が前記第2の識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致する当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、受信した当該信号を破棄することを特徴とする請求項1記載の通信装置である。
【0008】
請求項8に記載の発明は、コンピュータに、通信手段を用いて複数の外部装置と通信を行う機能と、各部の動作を制御する制御部への電力供給を停止した場合に、前記通信手段から当該制御部への電力供給を停止した旨の通知を前記外部装置に対して行う機能と、前記通信手段から前記通知を行った後に一の前記外部装置から信号を受信した場合に、当該通信手段から当該一の外部装置に対する再度の当該通知を行う機能と、再度の前記通知を行った場合に前記一の外部装置の識別情報を識別情報記憶手段に記憶させる機能と、受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致する当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、受信した当該信号を破棄する機能とを実現させることを特徴とするプログラムである。
【0009】
請求項9に記載の発明は、受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致しない当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、当該信号の内容を調査する機能と、前記信号の内容を調査した結果に応じて当該信号を破棄する機能とをさらに実現させることを特徴とする請求項8記載のプログラムである。
請求項10に記載の発明は、前記信号の内容を調査した結果に応じて当該信号を破棄した場合に、当該信号を送信した前記外部装置の識別情報を前記識別情報記憶手段に記憶させる機能をさらに実現させることを特徴とする請求項9記載のプログラムである。
請求項11に記載の発明は、前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報を所定時間の経過後に当該識別情報記憶手段から消去させる機能をさらに実現させることを特徴とする請求項8記載のプログラムである。
請求項12に記載の発明は、前記信号を破棄する処理を行う時間帯を設定する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項8記載のプログラムである。
【0010】
請求項13に記載の発明は、通信回線を介して複数の外部装置と通信を行う通信機能部と、前記通信機能部にて受信された信号に含まれる画像データに基づき画像形成する画像形成部と、前記通信機能部および前記画像形成部を含む各部の動作を制御する制御部と、前記制御部からの制御信号に基づき前記各部の一または複数を選択して電力を供給する電源部を有し、前記通信機能部は、前記電源部から前記制御部への電力供給を停止した場合に当該制御部への電力供給を停止した旨の通知を前記複数の外部装置に対して行う通知手段と、前記通知手段が前記通知を行った後に前記複数の外部装置の中の一の外部装置から信号を受信し、当該通知手段が当該一の外部装置に対して再度の当該通知を行った場合に、当該一の外部装置の識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、前記通信手段が前記外部装置から受信した信号を処理する信号処理手段とを備え、前記信号処理手段は、前記通信手段が受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致する当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、受信した当該信号を破棄することを特徴とする画像形成装置である。
【0011】
請求項14に記載の発明は、前記通信機能部の前記信号処理手段は、前記通信手段にて受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致しない当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、当該信号の内容に応じて当該信号を破棄することを特徴とする請求項13記載の画像形成装置である。
請求項15に記載の発明は、前記通信機能部の前記信号処理手段は、前記信号の内容に基づき当該信号を破棄すると判断した場合に、当該信号を送信した前記外部装置の識別情報を前記識別情報記憶手段に記憶することを特徴とする請求項14記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、通信回線に接続された機器が端末機器からのアクセスにより消費する電力の低減を図ることができる。
本発明の請求項2によれば、信号の送信元の外部装置を識別情報により判断できない場合にも処理の必要がある信号か否かを判断できるので、本発明を採用しない場合に比べて、処理の必要のない信号に起因する電力消費の増加を抑制することができる。
本発明の請求項3によれば、処理の必要のない信号を信号の内容から特定した場合には、次回からは信号の送信元の識別情報により判断できるので、本発明を採用しない場合に比べ、制御部への電力供給を停止した状態が保たれ、低い消費電力状態を維持することができる。
【0013】
本発明の請求項4によれば、MACアドレスを用いることにより処理の必要のない信号を特定することができる場合には制御部への電力供給を停止した状態が保たれるので、本発明を採用しない場合に比べて、制御部を起動させる回数を減らすことができ、また、IPアドレスを用いることにより処理の必要のない信号を特定することができる場合には受信した信号に対する応答信号を作成する電力を消費しないので、本発明を採用しない場合に比べて、省電力状態での消費電力を低減することができる。
本発明の請求項5によれば、識別情報記憶手段の記憶容量を確保できるとともに、ネットワーク環境の変化に対応することができる。
本発明の請求項6によれば、本発明を採用しない場合に比べて、制御部への電力供給を停止した状態が設定される時間が多い時間帯での消費電力の効果的な低減を図ることができる。
本発明の請求項7によれば、本発明を採用しない場合に比べ、制御部への電力供給を停止した状態が保たれ、低い消費電力状態をさらに維持することができる。
【0014】
本発明の請求項8によれば、本発明を採用しない場合に比べて、通信回線に接続された機器が端末機器からのアクセスにより消費する電力の低減を図ることができる。
本発明の請求項9によれば、信号の送信元の外部装置を識別情報により判断できない場合にも処理の必要がある信号か否かを判断できるので、本発明を採用しない場合に比べて、処理の必要のない信号に起因する電力消費の増加を抑制することができる。
本発明の請求項10によれば、処理の必要のない信号を信号の内容から特定した場合には、次回からは信号の送信元の識別情報により判断できるので、本発明を採用しない場合に比べ、制御部への電力供給を停止した状態が保たれ、低い消費電力状態を維持することができる。
本発明の請求項11によれば、識別情報記憶手段の記憶容量を確保できるとともに、ネットワーク環境の変化に対応することができる。
本発明の請求項12によれば、本発明を採用しない場合に比べて、制御部への電力供給を停止した状態が設定される時間が多い時間帯での消費電力の効果的な低減を図ることができる。
【0015】
本発明の請求項13によれば、本発明を採用しない場合に比べて、通信回線に接続された機器が端末機器からのアクセスにより消費する電力の低減を図ることができる。
本発明の請求項14によれば、信号の送信元の外部装置を識別情報により判断できない場合にも処理の必要がある信号か否かを判断できるので、本発明を採用しない場合に比べて、処理の必要のない信号に起因する電力消費の増加を抑制することができる。
本発明の請求項15によれば、処理の必要のない信号を信号の内容から特定した場合には、次回からは信号の送信元の識別情報により判断できるので、本発明を採用しない場合に比べ、制御部への電力供給を停止した状態が保たれ、低い消費電力状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の画像形成装置が接続される通信システムの一例を示す概略構成図である。図1に示した通信システムでは、例えばユーザの作業スペース(例えば、デスク)等に設置された外部装置の一例であるクライアント装置2A〜2C(以下、単に「クライアント装置2」とも総称する)と、クライアント装置2A〜2Cにて生成・保存等された画像データに基づき記録紙等の媒体(用紙)上に画像を形成する画像形成装置の一例である画像形成装置3A〜3C(以下、単に「画像形成装置3」とも総称する)とが、通信回線の一例であるケーブルを利用したLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等のネットワーク1を介して双方向に通信可能に接続されている。通信回線としては、電話回線や衛星通信回線(例えば、デジタル衛星放送における空間伝送路)を含んでもよい。なお、ネットワーク1上には通常、複数のクライアント装置2と複数の画像形成装置3とが接続可能であるが、図1に示した構成では、その一例として、それぞれ3台のクライアント装置2A〜2Cと3台の画像形成装置3A〜3Cとが接続されている場合を示している。
【0017】
ネットワーク1に接続されるクライアント装置2は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられ、文書や図形、写真等からなる画像データを作成・保存する。そして、クライアント装置2は、作成された画像データや保存された画像データを印刷するに際し、画像データを画像形成装置3A〜3Cの何れかに対する印刷命令である印刷ジョブに変換して出力する。この印刷ジョブを構成するデータ(印刷ジョブデータ)は、画像データに加えて、各種印刷機能の設定や印刷を行う画像形成装置3A〜3Cの何れかの指定等を行うための情報である属性データを含んで構成される。
クライアント装置2から出力された印刷ジョブは、ネットワーク1を介して画像形成装置3A〜3Cの何れかに送信される。
【0018】
次に、画像形成装置3の構成について説明する。
図2は、本実施の形態の画像形成装置3の構成を説明するブロック図である。図2に示したように、画像形成装置3は、予め定められた処理プログラムに従って画像形成装置3全体の動作を制御する制御部10、ネットワーク1との間の通信を行う通信部20を備えている。また、ネットワーク1を介してクライアント装置2から送信される印刷ジョブデータの解析や印刷ジョブデータに含まれる画像データに対する各種処理を施す画像処理部30、画像処理部30にて各種処理等を行う際の作業用メモリとして用いられる画像処理用記憶部31、画像処理部30にて各種処理が施された画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像出力部32を備えている。画像出力部32としては、例えば電子写真方式の画像形成エンジンが用いられる。また、画像処理部30および画像出力部32、さらには必要に応じて他の機能部が画像形成部として機能する。
【0019】
ここで、通信部20および画像処理部30は、外部バス41に接続されている。また、制御部10は、外部バス41とバスブリッジ43を介して接続されている。それにより、制御部10、通信部20、および画像処理部30は、外部バス41およびバスブリッジ43を介して相互に信号の送受信を行う。
さらに、画像形成装置3は、商用電源から供給される例えば100Vの電力を所定の電圧(例えば、24V,12V,5V)に変換する電源部の一例としての電源部50を備え、電源部50から各機能部に対して所定の電圧の電力が供給される。また、各種のプログラムや画像データ等の各種のデータが記憶される外部記憶部60を備えている。
【0020】
制御部10は、制御部の一例であって、図2に示したように、画像形成装置3全体を制御する際の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)101、CPU101にて実行される処理プログラム等が格納されるRAM(Random Access Memory)102、CPU101により実行される処理プログラム等にて用いられる設定値等のデータが格納されるROM(Read Only Memory)103、所定のデータが格納されるSRAM(Static Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ(NVM:Non-Volatile Memory)104を備えている。そして、これらはバスブリッジ43に接続された内部バス42を介して相互に接続されている。
制御部10にて実行される処理プログラムは、例えば外部記憶部60としてのハードディスク(HDD)等から、例えば画像形成装置1の立ち上げ時等に、RAM102にロードされて提供される。また、その他の提供形態としては、予めROM103に格納され、ROM103からRAM102にロードされて提供される形態がある。さらに、EEPROM等の書き換え可能なROM103を備えている場合には、制御部10がアッセンブリされた後に、プログラムだけが提供されてROM103にインストールされ、ROM103からRAM102にロードされて提供される形態がある。また、インターネット等のネットワークを介して制御部10にプログラムが伝送され、制御部10のRAM102にインストールされる形態がある。さらには、CD−ROM等の記憶媒体に格納された状態にて提供される形態がある。
【0021】
そして制御部10は、信号処理手段としても機能し、ネットワーク1を介して送信されるパケットを処理する。例えば、受信したパケットが印刷ジョブに関するものである場合には、これを画像処理部30に送る。また、識別情報記憶手段の一例であるNVM104には、制御部10にて処理の必要のないパケットに含まれるアドレス情報等(後段参照)が記憶されており、受信したパケットがNVM104に記憶されたアドレス情報等を含む制御部10にて処理の必要のないものである場合には、制御部10はそのパケットを破棄する等の処理を行う。
【0022】
また制御部10は、画像形成装置3の動作モードを制御する。図3は、本実施の形態の画像形成装置3にて設定される動作モードを説明する図である。図3に示したように、各画像形成装置3には、動作時の省電力効果を高めるために、動作モードとして「画像形成動作モード」と「スタンバイモード」と「低電力モード」と「スリープモード」とが選択的に設定される。
画像形成動作モードは、画像出力部32にて画像データに関する用紙上への画像形成動作を実行している動作状態である。またスタンバイモードは、画像データの入力に対してオンデマンドに対応する動作状態であって、画像データの入力に応じて画像形成動作モードに移行する。画像形成動作モードやそれに準ずるスタンバイモードでは、電源部50から画像形成装置3内のすべての機能部に電力が供給され、画像形成動作のための電力や、画像データ等の入力に対してオンデマンドに対応するための電力が供給される。
【0023】
低電力モードは、例えば第1の期間が経過しても画像データ等の入力がない場合に設定される動作状態である。低電力モードでは、電源部50から画像出力部32の少なくとも画像形成エンジン(例えば定着器等を含む画像形成動作を行う機能部)への電力供給が停止される。一方、制御部10や通信部20等といった画像出力部32の画像形成エンジン以外の機能部への電力供給は継続される。
また、スリープモードは、第1の期間よりも長い時間である第2の期間が経過しても画像データ等の入力がない場合に設定される動作状態である。スリープモードでは、電源部50から通信部20への電力供給だけが継続され、制御部10のCPU101を含めたその他の機能部への電力供給が停止される。それにより、スリープモードでは低電力モードよりも高い省電力効果が得られる。
【0024】
続いて、通信部20は、通信手段および通信機能部の一例であって、受信部21、切換部22、パケット判定部23、アドレス記憶部24、送信部25を備えている。
受信部21は、ネットワーク1と接続され、ネットワーク1から送信されるパケットを受信する。そして、受信したパケットを切換部22に送る。
切換部22は、受信部21がネットワーク1から受信したパケットの出力先を切り換える。すなわち、切換部22は制御部10から動作モードの移行に関する情報(動作モード移行情報)を取得する。制御部10にて設定される動作モードが画像形成動作モード、スタンバイモード、および低電力モードの何れかである場合には、動作モード移行情報の取得後は、受信部21がネットワーク1から受信したパケットを制御部10に直接送る。一方、制御部10にて設定される動作モードがスリープモードである場合には、動作モード移行情報の取得後は、受信部21がネットワーク1から受信したパケットをパケット判定部23に送る。
【0025】
パケット判定部23は、信号処理手段の一例であって、動作モードがスリープモードに設定された状態でネットワーク1から受信したパケットが、制御部10に送る必要のあるパケットか否かを判定する。
アドレス記憶部24は、識別情報記憶手段の一例であって、制御部10に送る必要のないパケットに関する送信元のアドレス情報を記憶する。すなわち、パケット判定部23は、制御部10に送る必要のないパケットをパケットに含まれる送信元(クライアント装置2)のアドレス情報に基づき判定する。アドレス記憶部24は、その際のクライアント装置2に関するアドレス情報を記憶する。
送信部25は、制御部10が動作モードをスリープモードに設定した際に、制御部10からスリープモードに移行する旨の動作モード移行情報を取得する。そして、動作モード移行情報を取得した場合に、例えば画像形成装置3Aがスリープモードに移行することをネットワーク1に接続されたクライアント装置2に対して通知するパケット(スリープモード移行通知パケット)を送信する。したがって、制御部10および送信部25は通知手段として機能する。また、制御部10が受信したパケットに対して応答するパケット(応答パケット)を作成した場合には、制御部10から応答パケットを受け取り、送信元のクライアント装置2に対して送信する。
【0026】
このように、通信部20は、制御部10が動作モードをスリープモードに移行させる際に、ネットワーク1に接続されたクライアント装置2に対してスリープモードに移行したことを通知するスリープモード移行通知パケットを送信する。そしてその後、制御部10は画像形成装置3の動作モードをスリープモードに移行させる。それにより、スリープモード移行通知パケットを受信したクライアント装置2は、スリープモード移行通知パケットを解釈するソフトウェア等を備えている場合には、印刷ジョブ以外のパケット、例えば、SNMP(Simple Network Management Protocol)を用いて、画像形成装置3に対して通信をしたいか否かの問い合わせメッセージを順番に送り、返答があれば送信権を与えて送信させるポーリングアクセス等のパケット送信を停止する。
【0027】
ところが、スリープモード移行通知パケットを受信したクライアント装置2には、スリープモード移行通知パケットを解釈するソフトウェア等を備えていないものも存在する。そのようなクライアント装置2は、スリープモード移行通知パケットを送信した画像形成装置3に対してポーリングアクセス等の印刷ジョブ以外のパケットの送信を継続する。そうすると、スリープモードに設定された制御部10は、処理の必要のある印刷ジョブが送信された場合以外にも、ポーリングパケット等が送られる度に起動されることとなる。そのため、スリープモードを設定しても画像形成装置3での消費電力の削減は限定的なものとなる。
【0028】
そこで、通信部20は、ネットワーク1に接続されたクライアント装置2に対してスリープモード移行通知パケットを送信した場合には、その後にポーリングアクセス等を行う外部装置の一例であるクライアント装置2の識別情報(アドレス情報)を記憶する。
そして、ポーリングアクセス等を行うクライアント装置2に対して、再度スリープモード移行通知パケットを送る。スリープモード移行通知パケットの再送の後、さらにポーリングアクセス等を行うクライアント装置2に関しては、このようなクライアント装置2から受信したポーリングパケット等の印刷ジョブ以外のパケットは破棄し、制御部10には渡さないように制御する。それにより、制御部10は処理の必要のないパケットが送信されたとしても、CPU101が起動されることがなく、スリープモード設定時の画像形成装置3の消費電力を低く維持する。
【0029】
ここで、スリープモードが設定された画像形成装置3でのパケット処理について説明する。
まず図4は、スリープモード設定時にネットワーク1を介してパケットが送信された際の通信部20での動作の一例を示したフローチャートである。図4では、通信部20からネットワーク1に接続されたクライアント装置(外部装置)2に対してスリープモード移行通知パケットが送信された後の動作を示している。
図4に示したように、通信部20では、スリープモード移行通知パケットを送信した後には、パケット判定部23が切換部22から受信部21にて受信したパケットを取得する(ステップ101)。そして、パケット判定部23は、取得したパケットに記述された送信元のクライアント装置2を識別する識別情報の一例であるMAC(Media Access Control)アドレスが、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスと一致するか否かを判定する(ステップ102)。ここで、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスは、スリープモードへの移行時に通信部20からスリープモード移行通知パケットを送信した後に、印刷ジョブ以外のポーリングパケット等を画像形成装置3に対して送信したクライアント装置2のMACアドレスである。
【0030】
ステップ102での判定の結果、取得したパケットに記述されたMACアドレスがアドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスと一致する場合には(ステップ103)、受信したパケットを破棄する(ステップ104)。すなわち、後段で示すように、スリープモードへの移行時にスリープモード移行通知パケットを送信した後にポーリングパケット等を画像形成装置3に送信したクライアント装置(外部装置)2に対しては、アドレス記憶部24にMACアドレスを記憶するとともに、再度のスリープモード移行通知パケットを送信している(後段のステップ217参照)。そのため、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスと一致するMACアドレスが記述されたパケットは、再度2回目のスリープモード移行通知パケットを送信したクライアント装置2からのものである。そこで、ステップ104の処理では、スリープモード移行通知パケットの再送後にポーリングパケット等を送信するクライアント装置2は、画像形成装置3にスリープモードが設定されていることを解釈する機能を有しないものであると判断して、かかるクライアント装置2からのポーリングパケット等を破棄している。
一方、ステップ102での判定の結果、取得したパケットに記述されたMACアドレスが、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスと一致しない場合には(ステップ103)、制御部10(CPU101)に対する電力供給の開始を指示する復帰指示信号を生成し、制御部10に送信する(ステップ105)。そして、制御部10が起動した後、受信したパケットを制御部10(CPU101)に送る(ステップ106)。
【0031】
次の図5および図6は、通信部20から復帰指示信号を取得した制御部10での動作の一例を示したフローチャートである。制御部10は、通信部20のパケット判定部23から復帰指示信号を取得し、電源部50からの電力供給を受けて起動を開始する(ステップ201)。そして、起動した後、制御部10はパケット判定部23から送られたパケットを取得する(ステップ202)。制御部10は、通信部20(パケット判定部23)から送られたパケットに記述された送信元のクライアント装置2を識別する識別情報の一例であるIP(Internet Protocol)アドレスが、NVM104に記憶されたIPアドレスと一致するか否かを判定する(ステップ203)。ここで、NVM104に記憶されたIPアドレスは、スリープモードへの移行時に通信部20からスリープモード移行通知パケットを送信した後に、印刷ジョブ以外のポーリングパケット等を画像形成装置3に送信したクライアント装置2のIPアドレスである。
【0032】
ステップ203での判定の結果、取得したパケットに記述されたIPアドレスがNVM104に記憶されたIPアドレスと一致する場合には(ステップ204)、受信したパケットを破棄する(ステップ205)。図4のステップ104での処理と同様である。すなわち、画像形成装置3にスリープモードが設定されていることを解釈できないクライアント装置2をMACアドレスでは判断できない場合に制御部10がIPアドレスに基づき判断し、かかるクライアント装置2からのポーリングパケット等を破棄する。
制御部10は、受信したパケットを破棄した場合には、破棄したパケットに記述されたMACアドレスを通信部20のパケット判定部23に送る(ステップ206)。パケット判定部23は、破棄したパケットに記述されたMACアドレスを取得し、取得したMACアドレスをアドレス記憶部24に記憶する。それにより、破棄したパケットと送信元が同じパケットが次回送信された場合に、そのパケットは通信部20にて破棄される(図4のステップ104参照)。そのため、次回からは制御部10(CPU101)は起動されず、スリープモード時での低い消費電力状態が維持される。
【0033】
次に、ステップ203での判定の結果、取得したパケットに記述されたIPアドレスが、NVM104に記憶されたIPアドレスと一致しない場合には(ステップ204)、制御部10は、パケットに記述されたポート番号がNVM104に記憶されたポート番号と一致するか否かを判定する(ステップ207)。そしてステップ207での判定の結果、NVM104に記憶されたポート番号と一致する場合には(ステップ208)、受信したパケットを破棄する(ステップ209)。ポート番号は、IPアドレスにて特定された送信先(画像形成装置3)との通信に使用するプログラムを識別するものであることから、ポート番号によりパケットの内容を判定できる。そこで、例えばSNMPを用いるポーリングアクセス等を識別するためのポート番号をNVM104に記憶しておく。それにより、画像形成装置3にスリープモードが設定されていることを解釈できないクライアント装置2をクライアント装置2の識別情報であるMACアドレスおよびIPアドレスでは判断できない場合に、パケットのポート番号を用いたパケットの内容により印刷ジョブ以外のパケットを判断し、かかるパケットを破棄している。
【0034】
制御部10は、ステップ209にて受信したパケットを破棄した際に、破棄したパケットに記述されたMACアドレスを通信部20のパケット判定部23に送る(ステップ210)。パケット判定部23は、破棄したパケットに記述されたMACアドレスを取得し、取得したMACアドレスをアドレス記憶部24に記憶する。それにより、破棄したパケットと送信元が同じパケットが次回送信された場合に、そのパケットは通信部20にて破棄される(図4のステップ104参照)。そのため、次回からは制御部10(CPU101)は起動されず、スリープモード時の低い消費電力状態が維持される。
また、制御部10は、破棄したパケットに記述されたIPアドレスを制御部10のNVM104に記憶する(ステップ211)。それにより、通信部20を通過した場合にも、受信したパケットが処理の必要のないものであることが、スリープモードが設定されていることを解釈できないクライアント装置2をIPアドレスとの一致により判定するステップ204の時点で直ちに判断される。
【0035】
一方、ステップ207での判定の結果、NVM104に記憶されたポート番号と一致しない場合には(ステップ208)、制御部10はパケットのデータ内容を調査する(ステップ212)。そして、制御部10は、調査したパケットのデータ内容に基づき、受信したパケットが印刷ジョブであるか、または、例えばポーリングパケットのような印刷ジョブ以外のパケットであるかを判定する(ステップ213)。
ステップ213での判定の結果、パケットが印刷ジョブである場合には、送信元のクライアント装置2への印刷ジョブに対する応答パケットを作成する(ステップ214)。そして、作成した応答パケットを通信部20に送る(ステップ215)。
それにより、通信部20の送信部25は、制御部10から応答パケットを取得し、取得した応答パケットをネットワーク1を介して送信元のクライアント装置2に送信する。
【0036】
また、ステップ213での判定の結果、パケットが印刷ジョブ以外の例えばポーリングパケット等である場合には、送信元のクライアント装置2への応答パケットを作成する(ステップ216)。ここでのポーリングパケット等は、スリープモード移行通知パケットを送信した後に送信元である特定のクライアント装置2から最初に受け取ったポーリングパケット等である。そのため、このポーリングパケット等に対する応答パケットは、スリープモード移行通知パケットとなる。そして、作成した応答パケット(スリープモード移行通知パケット)を通信部20の送信部25に送る(ステップ217)。
また、この場合には、制御部10は、印刷ジョブ以外のパケットに記述されたMACアドレスを通信部20のパケット判定部23に送る(ステップ218)。パケット判定部23は、印刷ジョブ以外のパケットに記述されたMACアドレスを取得し、取得したMACアドレスをアドレス記憶部24に記憶する。それにより、印刷ジョブ以外のパケットと送信元が同じパケットが次回送信された場合に、そのパケットは通信部20にて破棄される(図4のステップ104参照)。そのため、次回からは制御部10(CPU101)は起動されず、スリープモード時の低い消費電力状態が維持される。
また、制御部10は、印刷ジョブデータ以外のパケットに記述されたIPアドレスを制御部10のNVM104に記憶する(ステップ219)。それにより、通信部20を通過した場合にも、受信したパケットが処理の必要のないものであることが、IPアドレスとの一致を判定するステップ204の時点で直ちに判断される。
【0037】
またその場合に、通信部20の送信部25は、制御部10から応答パケット(スリープモード移行通知パケット)を取得する。そして、送信部25は、取得した応答パケットをネットワーク1を介して送信元のクライアント装置2に送信する。
【0038】
上記のように、本実施の形態の画像形成装置3では、パケットの送信元がスリープモード移行通知パケットをすでに2度送信したクライアント装置2であるか否かを、ステップ202およびステップ103での処理において、通信部20のアドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスや、制御部10のNVM104に記憶されたIPアドレスに基づいて判定する。それにより、画像形成装置3にスリープモードが設定されていることを解釈できない送信元(クライアント装置2)を特定して、このような送信元からのパケットは制御部10にて処理の必要のないポーリングパケット等であると判断する。そして、通信部20または制御部10にて破棄する。それによって、通信部20にてパケットを破棄する場合には、CPU101は起動されず、スリープモード時の低消費電力状態が維持される。また、制御部10にてパケットを破棄する場合には、送信元への応答パケットを作成するための電力を消費しないので、低電力モード時の消費電力が低減される。
【0039】
その際のアドレス記憶部24やNVM104に記憶されたMACアドレスやIPアドレスは、ネットワーク1に接続されたクライアント装置2に対して通信部20からスリープモード移行通知パケットを送信した後、再度2度目のスリープモード移行通知パケットを送信したクライアント装置2に関するものである。すなわち、スリープモード移行通知パケットが2度送信された後にも、再びパケットを送信するクライアント装置2は、画像形成装置3にスリープモードが設定されていることを解釈できないクライアント装置2であると判断し、そのMACアドレスやIPアドレスをアドレス記憶部24やNVM104に記憶している。
ここで、このような送信元のクライアント装置2を判断する際のスリープモード移行通知パケットの送信回数を、上記のように2回に設定する他に、3回以上に設定したり、送信回数の設定を適宜変更できるように構成してもよい。
さらには、このような送信元のクライアント装置2を特定するMACアドレスやIPアドレスを、操作パネル(不図示)等のユーザインターフェースからユーザが予め登録するように構成してもよい。それにより、ユーザが当初から特定していたクライアント装置2に関するMACアドレスやIPアドレスが予めアドレス記憶部24やNVM104に記憶される。
【0040】
また、例えば画像形成装置3がスリープモードに移行することをネットワーク1に接続されたクライアント装置2に対してスリープモード移行通知パケットを通知する際に、スリープモード移行通知パケットを通知したクライアント装置2の識別情報を記憶する記憶部(第2の識別情報記憶手段)をさらに設け、かかる記憶部に記憶された識別情報と同一の識別情報を有するクライアント装置2からの信号を破棄するように構成してもよい。それにより、さらに低電力モード時の消費電力が低減される。
【0041】
また、画像形成装置3にスリープモードが設定されていることを解釈できないクライアント装置2をクライアント装置2の識別情報であるMACアドレスおよびIPアドレスでは判断できない場合には、ステップ207およびステップ212での処理において、パケットに記述されたポート番号やパケットのデータ内容の調査により、パケットの内容を判断する。それにより、印刷ジョブ以外の例えばSNMPを用いるポーリングパケット等を特定し、これを破棄する。そして、このようなパケットを送信するクライアント装置2の識別情報であるMACアドレスおよびIPアドレスをアドレス記憶部24やNVM104に記憶しておき、次回送信されるポーリングパケット等に関しては、識別情報であるMACアドレスにより判断して、通信部20にて破棄する。または、識別情報であるIPアドレスにより判断して、制御部10にて破棄する。それにより、通信部20にてパケットを破棄する場合には、CPU101は起動されず、スリープモード時の消費電力が低減される。また、制御部10にてパケットを破棄する場合には、パケット内容ついての判断処理が不要であり、かつ送信元への応答パケットを作成するための電力を消費しないので、低電力モード時の消費電力が低減される。
ここで、NVM104に記憶されるポート番号は、例えばユーザにより予め登録されたものである。また、例えば画像形成装置3でのデフォルトとして予め設定しておき、ユーザが変更できるように構成してもよい。
【0042】
なお、上記の構成において、画像形成装置3にスリープモードが設定されていることを解釈できない送信元のクライアント装置2を特定する識別情報として、例えばクライアント装置2のコンピュータ名やユーザ名等を用いてもよい。
また、アドレス記憶部24やNVM104に記憶されたMACアドレスやIPアドレスを、画像形成装置3の表示パネル(不図示)等のユーザインターフェースに表示して、ユーザに対して通知するように構成してもよい。
さらには、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスをパケット判定部23から送信部25を介してネットワーク1の管理サーバであるクライアント装置2に送信するように構成してもよい。それにより、管理サーバは、不要にポーリングパケット等を送信するクライアント装置2を把握し、送信元のユーザへの通知を行う。また、同様に、制御部10が起動された際に、NVM104に記憶されたIPアドレスを通信部20から管理サーバに送信するように構成してもよい。さらには、画像形成動作モードが設定された際に、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスやNVM104に記憶されたIPアドレスを画像出力部32にて印刷するように構成してもよい。それにより、印刷された紙媒体による送信元のユーザへの通知が行われる。
その一方で、特定のMACアドレスやIPアドレスを有するクライアント装置2から送信されるパケットに関しては、廃棄せず、常に制御部10で内容を判断するように設定してもよい。
【0043】
続いて、通信部20のアドレス記憶部24に記憶されるMACアドレスと、制御部10のNVM104に記憶されるIPアドレスおよびポート番号とについて説明する。
図7は、ネットワーク1から受信されるパケットのデータ構造の一例を示した図である。図7に示したように、ネットワーク1から受信されるパケット(一般には「フレーム」とも呼ばれる)は、例えば、プレアンブル、SFD(Start Frame Delimiter)、MAC(Media Access Control)ヘッダ、IP(Internet Protocol)ヘッダ、TCP(Transmission Control Protocol)ヘッダ、データフィールド、PAD、FCS(Frame Check Sequence)で構成される。なお、IPヘッダ、TCPヘッダ、データフィールドおよびPADからなる領域を「MACフレーム」と称する。
【0044】
プレアンブルは、同期のためのデータであり、SFDは、直後にMACフレームの先頭が続くことを示すデータである。
MACヘッダは、宛先MACアドレスと送信元MACアドレスとタイプとで構成される。宛先MACアドレスは、MACフレームを届ける送信先を示すアドレスである。送信元MACアドレスは、自身のMACアドレスであり、通常は送信元であるクライアント装置2内のROMに焼き込まれた固有の番号が割り当てられている。タイプは、データフィールドに格納する上位層プロトコルを示す識別情報(プロトコルタイプ)である。
IPヘッダは、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、パケット長等を含むデータ列で構成される。TCPヘッダは、送信元ポート番号、宛先ポート番号、シーケンス番号、応答確認番号等を含むデータ列で構成される。
データフィールドには、46〜1500バイトの範囲でアプリケーションのデータが格納される。例えば、画像形成装置3にて印刷される印刷ジョブデータ等が格納される。また、PADは、MACフレームの長さを最小の64バイトにするためのビット列である。FCSは、MACフレームが壊れていないかをチェックするためのビット列である。
【0045】
アドレス記憶部24に記憶されるMACアドレスは、パケットの送信元のクライアント装置2を特定する識別情報の一つであって、図7のMACヘッダに送信元MACアドレスとして記述されたものである。通信部20のパケット判定部23では、パケットのMACヘッダに記述された送信元MACアドレスを参照する。そして、MACヘッダに記述された送信元MACアドレスとアドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスとのパターンマッチングにより、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスと一致するか否かを判定する。それにより、パケットの送信元がスリープモード移行通知パケットをすでに2度送信したクライアント装置2か否かを判別する。
なお、MACヘッダに記述された宛先MACアドレスは、画像形成装置3のMACアドレスであり、例えばIPアドレスから物理層のMACアドレスを求めるために利用されるARP(Address Resolution Protocol)により取得される。
【0046】
NVM104に記憶されるIPアドレスは、パケットの送信元のクライアント装置2を特定する識別情報の一つであって、図7のIPヘッダに送信元IPアドレスとして記述されたものである。制御部20では、パケットのIPヘッダに記述された送信元IPアドレスを参照する。そして、IPヘッダに記述された送信元IPアドレスがNVM104に記憶されたIPアドレスの何れかに一致するか否かを判定する。それにより、パケットの送信元がスリープモード移行通知パケットをすでに2度送信したクライアント装置2か否かを判別する。
【0047】
NVM104に記憶されるポート番号は、IPアドレスにて特定された送信先(画像形成装置3)との通信に使用するプログラムを識別するものであり、TCPヘッダの宛先ポート番号として記述されたものである。例えばHTTP(Hypertext Transfer Protocol)のポート番号は80番、SNMP(Simple Network Management Protocol) のポート番号は161番と規定されている。制御部20では、パケットのTCPヘッダに記述された宛先ポート番号を参照する。そして、TCPヘッダに記述された宛先ポート番号がNVM104に記憶された宛先ポート番号の何れかに一致するか否かを判定する。それにより、送信元のクライアント装置2から送られたパケットの内容が特定され、制御部10にて処理の必要があるパケットか否かが判定される。
【0048】
次に、図8は、(a)が通信部20のアドレス記憶部24にてMACアドレスを管理する管理テーブル(MACアドレス管理テーブル)の一例、(b)が制御部10のNVM104にてIPアドレスを管理する管理テーブル(IPアドレス管理テーブル) の一例、制御部10のNVM104にてポート番号を管理する管理テーブル(ポート番号管理テーブル) の一例をそれぞれ示した図である。
アドレス記憶部24には、図8(a)に一例として示したMACアドレス管理テーブルが作成され、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスを管理する。アドレス記憶部24内のMACアドレス管理テーブルでは、記憶されたMACアドレスと、そのMACアドレスが記述されたパケットを受信した時間、そのMACアドレスが記述されたパケットに対する破棄処理等の対応の有無を、それぞれ対応付けて記憶する。
【0049】
通信部20のパケット判定部23は、図8(a)のMACアドレス管理テーブルにより、受信したパケットのMACアドレスを判定する。
また、パケット判定部23は、アドレス記憶部24にMACアドレスを記憶しておく時間(例えば、24時間)を設定している。そのため、パケット判定部23はMACアドレス管理テーブルのパケットの受信時間を参照して、所定の記憶時間を経過したものに関しては、MACアドレスを消去していく。所定の記憶時間を経過したものから順にMACアドレスを消去することで、アドレス記憶部24の記憶容量を確保するとともに、ネットワーク環境の変化に対応させている。
さらに、図8(a)のMACアドレス管理テーブルのパケットに対する対応の有無により、その後にパケットが送信されたか否かが把握される。すなわち、対応の有無の欄が「無し」であれば、スリープモード移行通知パケットを2回送信した後は、そのクライアント装置2からはパケットの送信が無いことが把握される。それにより、パケット判定部23は、対応の有無が「無し」のパケットに関しては、上記した所定の記憶時間が経過する前に、アドレス記憶部24に記憶されたMACアドレスを消去する。
【0050】
同様に、NVM104には、図8(b)に一例として示したIPアドレス管理テーブルが作成され、NVM104に記憶されたIPアドレスを管理する。NVM104内のIPアドレス管理テーブルでは、記憶されたIPアドレスと、そのIPアドレスが記述されたパケットを受信した時間、そのIPアドレスが記述されたパケットに対する破棄処理等の対応の有無を、それぞれ対応付けて記憶する。
【0051】
制御部10は、図8(b)のIPアドレス管理テーブルにより、受信したパケットのIPアドレスを判定する。
また、制御部10は、通信部20でのMACアドレスと同様に、NVM104にIPアドレスを記憶しておく時間(例えば、24時間)を設定している。そのため、IPアドレス管理テーブルのパケットの受信時間を参照して、所定の記憶時間を経過したものに関しては、IPアドレスを消去していく。
さらに、図8(a)のIPアドレス管理テーブルのパケットに対する対応の有無により、その後にパケットが送信されたか否かが把握される。すなわち、対応の有無の欄が「無し」であれば、スリープモード移行通知パケットを2回送信した後は、そのクライアント装置2からはパケットの送信が無いことが把握される。それにより、制御部10は、対応の有無が「無し」のパケットに関しては、上記した所定の記憶時間が経過する前に、NVM104に記憶されたIPアドレスを消去する。
【0052】
また、NVM104には、図8(c)に一例として示したポート番号管理テーブルが作成され、NVM104に記憶されたポート番号を管理する。制御部10は、図8(c)のポート番号管理テーブルにより、受信したパケットの内容を判断する。
【0053】
次の図9は、画像形成装置3にスリープモードが設定された場合に、図4〜図6に示したパケット処理を行う時間帯の一例を示した図である。図9に示したように、画像形成装置3の通信部20および制御部10において、上記のパケット処理を行う時間帯を設定してもよい。図9に示した例では、21:00:00から翌朝の7:59:59までは、パケット処理が「ON」に設定され、図4〜図6にて示したパケット処理が実行される。
一方、8:00:00から20:59:59までは、パケット処理が「OFF」に設定され、図4〜図6にて示したパケット処理は実行されない。すなわち、通信部20の切換部22は、受信部21がネットワーク1から受信したパケットの出力先を常に制御部10に直接送るように設定される。
このように、画像形成装置3の使用頻度が低い夜間に限り、上記のパケット処理を実行してもよい。それにより、スリープモードが設定される時間が多い時間帯での消費電力の低減が図られる。その一方で、画像形成装置3の使用頻度が高い日中は、スリープモードが設定される時間が少ないので、通常の処理を行うように設定してもよい。
なお、図4〜図6に示したパケット処理を行う時間帯を曜日により設定を変更してもよい。例えば、土曜日曜や祝日は、終日に亘り図4〜図6に示したパケット処理を行うように設定してもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置3では、画像形成装置3にスリープモードが設定されていることを解釈できないクライアント装置2を、クライアント装置2の識別情報やパケットの内容から判別する。そして、かかるクライアント装置2から再度送信されるパケットに関しては、制御部10にて処理の必要のないパケットであると判断して、通信部20または制御部10にて破棄する。それによって、通信部20にてパケットを破棄する場合には、CPU101は起動されず、スリープモード時の低消費電力状態が維持される。また、制御部10にてパケットを破棄する場合には、送信元への応答パケットを作成するための電力を消費しないので、低電力モード時の消費電力が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施の形態の画像形成装置が接続される通信システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】画像形成装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】画像形成装置にて設定される動作モードを説明する図である。
【図4】スリープモード設定時にネットワークを介してパケットが送信された際の通信部での動作の一例を示したフローチャートである。
【図5】通信部から復帰指示信号を取得した制御部での動作の一例を示したフローチャートである。
【図6】通信部から復帰指示信号を取得した制御部での動作の一例を示したフローチャートである。
【図7】ネットワークから受信されるパケットのデータ構造の一例を示した図である。
【図8】通信制御部のアドレス記憶部にてMACアドレスを管理するMACアドレス管理テーブルの一例、制御部のNVMにてIPアドレスを管理するIPアドレス管理テーブルの一例、およびポート番号を管理するポート番号管理テーブルの一例をそれぞれ示した図である。
【図9】画像形成装置にスリープモードが設定された場合に、図4〜図6に示したパケット処理を行う時間帯の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0056】
1…ネットワーク、2(2A〜2C)…クライアント装置、3(3A〜3C)…画像形成装置、10…制御部、20…通信部、21…受信部、22…切換部、23…パケット判定部、24…アドレス記憶部、25…送信部、30…画像処理部、32…画像出力部、101…CPU、102…RAM、103…ROM、104…NVM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して外部装置と通信を行う通信手段と、
動作を制御する制御部への電力供給を停止した場合に、前記通信手段から前記外部装置に対して当該制御部への電力供給を停止した旨を通知する通知手段と、
前記通知手段が通知を行った後に一の前記外部装置から信号を受信し、当該通知手段が当該一の外部装置に対して再度の当該通知を行った場合に、当該一の外部装置の識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、
前記通信手段にて前記外部装置から受信した信号を処理する信号処理手段とを備え、
前記信号処理手段は、前記通信手段にて受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致する当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、受信した当該信号を破棄することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記信号処理手段は、前記通信手段にて受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致しない当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、当該信号の内容に応じて当該信号を破棄することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記信号処理手段は、前記信号の内容に基づき当該信号を破棄すると判断した場合に、当該信号を送信した前記外部装置の識別情報を前記識別情報記憶手段に記憶することを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記識別情報記憶手段は、前記外部装置のMACアドレスを記憶する第1識別情報記憶部と当該外部装置のIPアドレスを記憶する第2識別情報記憶部とを含み、前記信号処理手段は、当該第1識別情報記憶部に記憶された当該MACアドレスに基づき前記信号を破棄する第1信号処理部と、当該第2識別情報記憶部に記憶された当該IPアドレスに基づき前記信号を破棄する第2信号処理部とを含むことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記識別情報記憶手段は、記憶した前記外部装置の識別情報を所定時間の経過の後に消去することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
前記信号処理手段は、前記信号を破棄する処理を行う時間帯が設定されたことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項7】
前記通知手段が一度目の前記通知を行った前記外部装置の識別情報を記憶する第2の識別情報記憶手段をさらに備え、
前記信号処理手段は、前記通信手段にて受信した前記信号の送信元が前記第2の識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致する当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、受信した当該信号を破棄することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項8】
コンピュータに、
通信手段を用いて複数の外部装置と通信を行う機能と、
各部の動作を制御する制御部への電力供給を停止した場合に、前記通信手段から当該制御部への電力供給を停止した旨の通知を前記外部装置に対して行う機能と、
前記通信手段から前記通知を行った後に一の前記外部装置から信号を受信した場合に、当該通信手段から当該一の外部装置に対する再度の当該通知を行う機能と、
再度の前記通知を行った場合に前記一の外部装置の識別情報を識別情報記憶手段に記憶させる機能と、
受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致する当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、受信した当該信号を破棄する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致しない当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、当該信号の内容を調査する機能と、
前記信号の内容を調査した結果に応じて当該信号を破棄する機能とをさらに実現させることを特徴とする請求項8記載のプログラム。
【請求項10】
前記信号の内容を調査した結果に応じて当該信号を破棄した場合に、当該信号を送信した前記外部装置の識別情報を前記識別情報記憶手段に記憶させる機能をさらに実現させることを特徴とする請求項9記載のプログラム。
【請求項11】
前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報を所定時間の経過後に当該識別情報記憶手段から消去させる機能をさらに実現させることを特徴とする請求項8記載のプログラム。
【請求項12】
前記信号を破棄する処理を行う時間帯を設定する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項8記載のプログラム。
【請求項13】
通信回線を介して複数の外部装置と通信を行う通信機能部と、
前記通信機能部にて受信された信号に含まれる画像データに基づき画像形成する画像形成部と、
前記通信機能部および前記画像形成部を含む各部の動作を制御する制御部と、
前記制御部からの制御信号に基づき前記各部の一または複数を選択して電力を供給する電源部を有し、
前記通信機能部は、
前記電源部から前記制御部への電力供給を停止した場合に当該制御部への電力供給を停止した旨の通知を前記複数の外部装置に対して行う通知手段と、
前記通知手段が前記通知を行った後に前記複数の外部装置の中の一の外部装置から信号を受信し、当該通知手段が当該一の外部装置に対して再度の当該通知を行った場合に、当該一の外部装置の識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、
前記通信手段が前記外部装置から受信した信号を処理する信号処理手段とを備え、
前記信号処理手段は、前記通信手段が受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致する当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、受信した当該信号を破棄することを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記通信機能部の前記信号処理手段は、前記通信手段にて受信した前記信号の送信元が前記識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報と一致しない当該識別情報を有する前記外部装置である場合に、当該信号の内容に応じて当該信号を破棄することを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記通信機能部の前記信号処理手段は、前記信号の内容に基づき当該信号を破棄すると判断した場合に、当該信号を送信した前記外部装置の識別情報を前記識別情報記憶手段に記憶することを特徴とする請求項14記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−239626(P2009−239626A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83239(P2008−83239)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】