説明

通信装置

【課題】反射歪みの補正を行う際の補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を、伝送路の信号伝播状態に応じて最適に制御することにより、回路規模の小型化や演算量の効率化を図る。
【解決手段】複数の通信装置が伝送路を介して接続される通信システムで用いられる通信装置であって、複数の通信装置が接続されることにより生じる信号波形の反射歪みを、既知の信号波形の送信に基づいて推定した反射歪み特性に基づいて補正する反射歪み補正手段と、上記反射歪み補正手段による補正処理を行うための補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を上記伝送路の信号伝播状態に応じて制御する反射歪み補正制御手段とを備え、上記反射歪み補正手段は、上記反射歪み補正制御手段により決定された上記補正処理対象時間範囲内で、上記補正処理時間間隔毎に、上記信号波形の反射歪みを補正することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置に関し、特に、基板配線やケーブルにより複数の通信装置が接続されるデジタル信号伝送において、複数の通信装置が接続されることにより生じる反射歪みを補正する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有線デジタル信号伝送における信号の補正方法としてイコライザ回路があり、これは、信号を伝送する伝送路の周波数に対する振幅損失が、周波数が低いほど小さく、高いほど大きいという、伝送路の周波数特性による信号の歪みを補正するためのものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、無線通信などにおいてもイコライザが用いられており、DFE(Decision Feedback Equalizer)やトランスバーサルフィルタといったタイプのものが知られている。これらのイコライザは、より複雑な伝送路の周波数特性による信号の歪みを補正するものである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−229791号公報
【特許文献2】特開平06−120774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント配線基板上で複数のメモリチップを1本のパターン配線で接続する場合や、複数の基板同士の通信を共通のバスラインをもつバックパネルを介して接続する場合、さらには、一つながりのケーブルでバス状またはツリー状に接続するような通信システムでは、伝送ラインの分岐や通信装置のI/F回路によりインピーダンスの不整合が生じ、信号反射が生じる。このような反射のある伝送路の周波数特性は、高い周波数ほど振幅損失が大きくなるといった単純な特性ではないため、特許文献1にあるような従来のイコライザ回路では補正することができないという問題点があった。
【0006】
また、複数の反射点から反射した信号が受信点で合成され信号の歪みを生じることから、複雑な伝送路特性となり、特許文献2にあるような無線通信に用いられているようなイコライザ回路を用いれば有線によるデジタルベースバンド信号の歪みについても補正することは可能である。しかしながら、このようなタイプのイコライザを構成する場合のタップ間の遅延時間や、タップ数は固定的であり、必ずしも効率的ではない。すなわち、従来のイコライザをそのまま適用する場合、生じうる反射歪みの影響範囲をカバーするため、その通信システムの仕様上、最も大規模な場合を想定して、イコライザのタップ数を設計することになるが、ケーブル接続された通信システムでは装置間の距離が非常に長い場合があり、また、有線通信における信号の伝播速度は無線通信に比べると遅いことから、反射歪みの影響が生じる時間範囲が広く、多くのタップを必要とする。さらに、デジタルベースバンド通信では、伝送データの変化周期(ユニットインターバル)の数倍の早いクロックを用いたオーバーサンプリングを行い、信号の受信値判定を行う場合があるが、このようなシステムではイコライザを構成するタップ数はさらに増大してしまう。このようなタップ数の増大は、回路規模や演算量の増大となり、好ましくないという問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、反射歪みの補正を行う際の補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を、伝送路の信号伝播状態に応じて最適に制御することにより、回路規模の小型化や演算量の効率化を図ることが可能な通信装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、複数の通信装置が伝送路を介して接続される通信システムで用いられる通信装置であって、複数の通信装置が接続されることにより生じる信号波形の反射歪みを、上記伝送路を介して伝播されてきた既知の信号波形に基づいて推定した反射歪み特性に基づいて補正する反射歪み補正手段と、上記反射歪み補正手段による補正処理を行うための補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を上記伝送路の信号伝播状態に応じて制御する反射歪み補正制御手段とを備え、上記反射歪み補正手段は、上記反射歪み補正制御手段により決定された上記補正処理対象時間範囲内で、上記補正処理時間間隔毎に、上記信号波形の反射歪みを補正することを特徴とする通信装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、複数の通信装置が伝送路を介して接続される通信システムで用いられる通信装置であって、複数の通信装置が接続されることにより生じる信号波形の反射歪みを、上記伝送路を介して伝播されてきた既知の信号波形に基づいて推定した反射歪み特性に基づいて補正する反射歪み補正手段と、上記反射歪み補正手段による補正処理を行うための補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を上記伝送路の信号伝播状態に応じて制御する反射歪み補正制御手段とを備え、上記反射歪み補正手段は、上記反射歪み補正制御手段により決定された上記補正処理対象時間範囲内で、上記補正処理時間間隔毎に、上記信号波形の反射歪みを補正することを特徴とする通信装置であるので、反射歪みの補正を行う際の補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を、伝送路の信号伝播状態に応じて最適に制御することにより、回路規模の小型化や演算量の効率化を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】有線通信ネットワークの構成例を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る通信装置に設けられた反射歪み補正機能の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る通信装置に設けられた反射歪み補正機能の構成を示したブロック図である。
【図4】反射歪み特性の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明に関わる有線通信ネットワークの構成例である。図1において、1は基幹配線(伝送路)であり、2a〜2dはそれぞれ通信装置である。これらの複数の通信装置2a〜2dは、基幹配線(伝送路)1を介して互いに接続される。図1の構成において、例えば、通信装置2aから通信装置2bに通信を行う場合、通信装置2aから送信された信号は、通信装置2aと2bとの間の伝播時間経過後に、通信装置2bに到達する(この到達時刻を、第1の到達時刻とする。)と同時に、当該信号は通信装置2c及び2dの方にも伝播してゆく。従って、当該信号は、第1の到達時刻からさらに通信装置2bと2cとの間の伝播時間経過後に、通信装置2cに到達する。通信装置2cで当該信号は反射され、その反射波は、通信装置2bに向かって戻っていき、通信装置2bと2cとの間の伝播時間経過後に、通信装置2bに再び到達する(この到達時刻を、第2の到達時刻とする。)。また、通信装置2dに向かった信号は、通信装置2cの到達時刻からさらに通信装置2cと2dとの間の伝播時間経過後に、通信装置2dに到達する。通信装置2dで当該信号は反射され、その反射波は、通信装置2bと2dとの間の伝播時間経過後に、通信装置2bに到達する(この到達時刻を、第3の到達時刻とする。)。このように、各通信装置で生じる反射波は、通信装置間の伝播時間に応じた異なるタイミングで(すなわち、第2〜第3の到達時刻で)、最初に通信装置2bに到達した信号と合成される(すなわち、第1の到達時刻に到達した信号と合成される)。その結果として、信号波形は歪んでしまい、正しくデータを伝送できなくなる場合がある。
【0012】
このように、ひとつながりの伝送路に複数の通信装置を接続した通信システムでは、伝送路の分岐や通信装置のI/F回路等によりインピーダンスの不整合が生じ、信号反射が生じてしまい、そのため、伝送される信号に歪み(反射歪み)が生じ、正しく伝送することが困難となる場合がある。そこで、本実施の形態に係る通信装置2a〜2bは、そのような反射歪みを補正するための反射歪み補正機能を備える。以下では、この反射歪み補正機能について主に説明する。なお、以下の説明においては、通信装置2a〜2dをまとめて単に通信装置2と呼ぶこととする。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態1に係る通信装置2に設けられた反射歪み補正機能の構成を示した構成図である。なお、図2においては、図の簡略化のため、通信装置2の反射歪み補正機能の部分のみを記載しているが、実際には、信号の送信及び/または受信を行うために必要な、一般的な通信装置に設けられている各種機能も当然に設けられていることは言うまでもない。
【0014】
図2において、3はネットワーク構成入力/保持部である。ネットワーク構成入力/保持部3は、各通信装置間を接続するネットワーク構成の情報を外部から入力し保持するものである。ネットワーク構成とは、互いに接続される通信装置の物理的な接続状態であり、例えば、電子回路基板上の複数のメモリスロットとCPUとの接続状態、バックパネル基板上の配線を通して接続される複数のドーターカード間の接続状態、および、ケーブルを介して接続される複数の通信装置2間の接続状態などが挙げられる。本実施の形態で、ネットワーク構成の情報として、入力される情報は、基幹配線(伝送路)1に接続されている通信装置のうち、最も遠い通信装置間の信号伝播時間と、最も近い通信装置間の信号伝播時間である。これらの伝播時間のデータを直接入力してもよいが、あるいは、伝播時間はそのネットワークを構成する伝送路の単位長さ当りの伝播時間と伝送距離とがわかれば算出できるので、これら単位長さ当りの伝播時間と、最も遠い通信装置間の距離と、最も近い通信装置間の距離、という形にして、データを入力しても良い。また、その通信システムの仕様として使用される伝送路の単位長さ当りの伝播時間や、最も遠い通信装置間の距離と、最も近い通信装置間の距離が一定に固定されているような場合は、必ずしもそれらのデータの全てを外部から入力せず、あらかじめ一部ないし全部のデータを保持しておき、変化する可能性のある構成情報だけを入力するようにしても良い。また、上述した情報の他に、必要に応じて、接続されている通信装置の台数の情報なども入力するようにしても良い。
【0015】
また、図2において、4aは、補正間隔調整部である。補正間隔調整部4aは、後述する補正処理部8にて反射歪みの補正処理を行う際の、時間的な補正間隔(補正処理時間間隔)を、基幹配線(伝送路)1の信号伝播状態に応じて、調整するものである。補正処理における時間的な補正間隔とは、例えば、補正処理がDFE(Decision Feedback Equalizer)やトランスバーサルフィルタといったタイプで構成される場合の隣接タップ間の遅延時間(タップ間の時間間隔)に相当する。補正間隔調整部4aは、ネットワーク構成入力/保持部3から、最も近い通信装置間の信号伝播時間の情報を受け取り、例えば、その最も近い通信装置間の信号伝播時間を補正間隔として決定する。または、信号伝送の1シンボル時間と最も近い通信装置間の信号伝播時間とを比較し、1シンボル時間≧最も近い通信装置間の信号伝播時間であれば、補正間隔を1シンボル時間とし、一方、1シンボル時間<最も近い通信装置間の信号伝播時間であれば、補正間隔を通信装置間の信号伝播時間とするようにしても良い。現実には補正間隔として設定可能な最小単位があり、最も近い通信装置間の信号伝播時間=補正間隔とできない場合は、最も近い通信装置間の信号伝播時間≧補正間隔となる最大の補正間隔と設定すればよい。
【0016】
また、図2において、5aは、補正期間調整部である。補正期間調整部5aは、後述する補正処理部8にて反射歪みの補正処理を行う際の、補正期間(補正処理対象時間範囲)を、基幹配線(伝送路)1の信号伝播状態に応じて、調整するものである。補正処理における補正期間とは、例えば、補正処理がDFE(Decision Feedback Equalizer)やトランスバーサルフィルタといったタイプで構成される場合の隣接タップ間の遅延時間(タップ間の時間間隔)とタップ数により決定される。補正期間調整部5は、ネットワーク構成入力/保持部3から、最も遠い通信装置間の信号伝播時間の情報を受け取り、例えば、その最も遠い通信装置間の信号伝播時間の2倍を補正期間として決定する。2倍としたのは最も遠い通信装置間で反射が起こる場合、往復分の伝播時間がかかるためである。したがって、反射波がさらに反射を繰り返すような多重反射も考慮する場合は2倍以上の倍数とするようにしても良い。また、伝送路による信号減衰により、反射波の影響が無視できる時間が予測できる場合には、この時間を上限として補正期間を制限しても良い。補正期間についても、現実には補正間隔として設定可能な最小単位により、最も遠い通信装置間の信号伝播時間のn倍=補正期間とできない場合は、最も遠い通信装置間の信号伝播時間のn倍≦補正期間となる最小の補正期間と設定すればよい。
【0017】
通常、後述する補正処理部8の回路や計算能力等のリソースには限界があり、補正間隔調整部4aや補正期間調整部5aで決定した補正間隔および補正期間を満たす補正処理ができない場合が想定され、このような場合に備え、補正間隔調整部4aと補正期間調整部5aは相互に設定値を交換し、例えば、補正間隔を優先し、補正期間は補正処理部のリソースの範囲内に限定する、または、補正期間を優先し、補正間隔を補正処理部のリソースの範囲内に限定するようにしても良い。
【0018】
また、図2において、6は、反射歪み特性推定部である。反射歪み特性推定部6は、特定の通信装置2から信号を送信された際に生じる反射歪みの特性を推定するものである。反射歪み特性の推定方法としては、信号の送信元となる自装置以外の他の通信装置2から既知の信号波形を送信してもらい、自装置で当該信号波形を受信して、反射歪み特性推定部6に入力し、反射歪み特性推定部6で、入力された当該受信信号波形と、予め記憶しておいた既知の信号波形(参照データ)とを比較して、その変化(それらの信号波形の差分)を観測することで、反射歪み特性を推定する。既知の信号波形としては、例えば、0Vの状態から特定の電圧値V1に遷移するようなステップ波形を用いることができる。
【0019】
図2において、7は、補正係数調整部である。補正係数調整部7は、後述する補正処理部8にて反射歪みの補正処理を行う際の、補正係数を調整するものである。補正処理における補正係数とは、例えば、補正処理がDFE(Decision Feedback Equalizer)やトランスバーサルフィルタといったタイプで構成される場合に各タップ毎に特定の値を乗算し、それらを加減算することで補正が行われるので、この各タップ毎に設定される乗算値に相当する。補正係数調整部7では、反射歪み特性推定部6で推定された反射歪み特性と、補正間隔調整部4aで決定された補正間隔、および、補正期間調整部5aで決定された補正期間から、補正期間中の補正間隔毎の補正係数を決定する。
【0020】
図2において、8は、補正処理部である。補正処理部8は、基幹配線(伝送路)1から受信した信号波形の反射歪みを補正し、補正後の信号波形を後段のbit判定(図示せず)に出力する。補正処理部8は、例えば、DFE(Decision Feedback Equalizer)やトランスバーサルフィルタといったタイプで構成され、補正間隔調整部4aで決定された補正間隔、補正期間調整部5aで決定された補正期間、および、補正係数調整部7で決定された補正係数の入力により、補正間隔、補正期間、補正係数に基づいて、基幹配線(伝送路)1から受信した信号波形の反射歪みを補正する。
【0021】
次に、動作について説明する。
本実施の形態1に係る通信装置は、まず、ネットワーク構成入力/保持部3に、ネットワーク構成の情報を外部入力する。ここでは、ネットワークの情報として、基幹配線(伝送路)1に接続されている通信装置2のうちの最も遠い通信装置間の信号伝播時間と、最も近い通信装置間の信号伝播時間とを、外部入力することとする。ネットワーク構成入力/保持部3は、それらの情報を記憶保持する。次に、補正間隔調整部4が、ネットワーク構成入力/保持部3から、ネットワーク構成の情報を受け取り、それに基づいて、補正処理部8の補正処理で用いるための補正間隔を決定する。ここでは、最も近い通信装置間の信号伝播時間を補正間隔として決定することとする。また、補正間隔調整部4の処理と略々並行に、補正期間調整部5aが、ネットワーク構成入力/保持部3から、ネットワーク構成の情報を受け取り、それに基づいて、補正処理部8の補正処理で用いるための補正期間を決定する。ここでは、最も遠い通信装置間の信号伝播時間の2倍を補正期間として決定することとする。一方、反射歪み特性推定部6は、本来の通信動作の前に、予め、信号を送信する送信元の通信装置2に対して、既知の信号波形を送信してもらうように依頼し、当該信号波形を受信して、受信した当該信号波形と、予め記憶しておいた既知の信号波形(参照データ)とを比較して、それらの信号波形の差分を求めて、反射歪み特性として出力する。次に、補正係数調整部7は、反射歪み特性推定部6で推定された反射歪み特性と、補正間隔調整部4aで決定された補正間隔と、補正期間調整部5aで決定された補正期間とが入力され、補正期間中の補正間隔毎に、反射歪み特性に基づいて、送信元の通信装置から受信した信号の信号波形に乗算するための補正係数を決定する。補正処理部8は、補正係数調整部7で決定された補正係数と、補正間隔調整部4aで決定された補正間隔と、補正期間調整部5aで決定された補正期間とが入力され、補正期間中の補正間隔毎に、反射歪みを含む受信した信号の信号波形に補正係数を乗算して、反射歪みを補正する。
【0022】
なお、本実施の形態においては、ネットワーク構成入力/保持部3と、補正間隔調整部4aと、補正期間調整部5aとが、複数の通信装置を接続している伝送路の信号伝播状態に応じて、受信信号の反射歪みを補正する補正処理を行うための補正間隔(補正処理時間間隔)および補正期間(補正処理対象時間範囲)を制御する反射歪み補正制御手段を構成している。
また、反射歪み特性推定部6と、補正係数調整部7と、補正処理部8とが、反射歪み特性を推定し、反射歪み補正制御手段によって決定された補正間隔(補正処理時間間隔)および補正期間(補正処理対象時間範囲)に基づいて、当該補正期間中の補正間隔毎に、上記反射歪み特性から反射歪みを補正するための補正係数を求めて、受信した信号の信号波形における反射歪みを補正する反射歪み補正手段を構成している。
【0023】
なお、先に示したDFE(Decision Feedback Equalizer)やトランスバーサルフィルタのような処理は、H/W回路(ハードウエア回路)でも、S/W処理(ソフトウエア処理)でも実現可能であり、S/W処理であれば補正間隔、補正期間、補正係数を動的に変更可能とすることが容易に可能であることは言うまでもない。また、H/W回路の場合でも、例えば、補正間隔は、補正間隔ごとに値を保持するラッチ回路のクロック周波数を変えることで変更可能であり、補正期間もラッチ回路の接続数をスイッチ等で切り替えるなどして変更することができる。また、補正係数は乗算回路への乗算係数をレジスタから参照するようにし、このレジスタを書き換えるような構造とすればよい。
【0024】
以上のように、本実施の形態に係る通信装置は、複数の通信装置が接続されることにより生じる反射歪みを補正する反射歪み補正手段と、この補正を行うための補正処理時間間隔、および、補正処理対象時間範囲を制御する反射歪み補正制御手段とを備え、入力された最も近い通信装置間の信号伝播時間から反射歪みを補正するための補正処理時間間隔を決定するとともに、最も遠い通信装置間の信号伝播時間から補正処理対象時間範囲を決定するようにして、補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を、伝送路の信号伝播状態(すなわち、伝送路の構成や長さ、伝送路の単位長さ当たりの伝搬時間、伝送路に接続される通信装置の台数、及び/または、各通信装置間の距離などによる、伝送路の信号伝播状態)に応じて最適に制御するようにしたので、回路規模や演算量の効率化が図れるという効果を奏する。
【0025】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2に係る通信装置の反射歪み補正機能の構成図である。図3の構成において、図2に示した実施の形態1の構成と異なる点は、補正間隔と補正期間の調整に外部入力のネットワーク構成情報を用いず、反射歪み特性推定部6で推定した反射歪み特性から補正間隔と補正期間を決定する点である。従って、図3の構成においては、図2で示したネットワーク構成入力/保持部3が設けられておらず、図2で示した補正間隔調整部4a及び補正期間調整部5aの代わりに、補正間隔調整部4bおよび補正期間調整部5bがそれぞれ設けられている点と、反射歪み特性推定部6からの信号が補正間隔調整部4bおよび補正期間調整部5bに入力されている点とが異なる。他の構成については、基本的に、図2に示した実施の形態1の構成と同じであるため、ここではその説明を省略する。また、本実施の形態に係る通信装置が接続される有線通信ネットワークの構成については、図1の構成例を参照すればよいため、ここではその説明も省略する。
【0026】
本実施の形態における反射歪み特性推定部6は、上述の実施の形態1と基本的に同じであり、信号の送信元の通信装置2から既知の信号波形を送信してもらい、受信した信号波形を予め記憶してある既知の信号波形と比較して、その変化(それらの信号波形の差分)を観測することで、反射歪み特性を得る。図4は、反射歪み特性の一例であり、図4(a)は送信側から送信される既知の波形としてのステップ波形、図4(b)は受信側の反射歪み特性推定部に入力される受信波形である。図4(c)は、図4(a)の波形から図4(b)の波形の差分を求めた反射歪み特性である。
【0027】
補正間隔調整部4bは、補正処理部8にて反射歪みの補正処理を行う際の、時間的な補正間隔(補正処理時間間隔)を、基幹配線(伝送路)1の信号伝播状態に応じて、調整するものである。実施の形態1との違いは、反射歪み特性推定部6で推定された反射歪み特性を入力としている点である。補正間隔調整部4bは、推定された反射歪み特性の変化タイミングに基づき、それらの変化タイミングのうち、隣接する変化タイミングの間隔が最小のもの(すなわち、最小間隔)を求める。図4(c)の例では、反射歪み特性の変化タイミングはt0、t1、t2、t3、t4に生じており、t1とt2の間の間隔が最小であるため、これが変化タイミングの最小間隔となる。補正間隔については、例えば、変化タイミングの最小間隔を補正間隔として決定する。または、信号伝送の1シンボル時間と最も近い通信装置間の信号伝播時間を比較し、1シンボル時間≧変化タイミングの最小間隔であれば、補正間隔を1シンボル時間とし、1シンボル時間<変化タイミングの最小間隔であれば、補正間隔を通信装置間の信号伝播時間とするようにしても良い。現実には補正間隔として設定可能な最小単位があり、変化タイミングの最小間隔=補正間隔とできない場合は、変化タイミングの最小間隔≧補正間隔となる最大の補正間隔と設定すればよい。
【0028】
補正期間調整部5bは、補正処理部8にて反射歪みの補正処理を行う際の、補正期間(補正処理対象時間範囲)を、基幹配線(伝送路)1の信号伝播状態に応じて、調整するものである。実施の形態1との違いは、反射歪み特性推定部6で推定された反射歪み特性を入力としている点である。補正期間調整部5bは、推定された反射歪み特性の変化タイミングに基づき、最後の変化タイミングまでの期間を求める。図4(c)の例では、反射歪み特性の変化タイミングはt0、t1、t2,t3、t4に生じており、t4が最後の変化タイミングとなる。補正期間については、例えば、最後の変化タイミングまでの期間を補正期間として決定する(図4(c)の例では、t0からt4までの期間)。現実には補正間隔として設定可能な最小単位により、最も遠い通信装置間の信号伝播時間のn倍=補正期間とできない場合は、最も遠い通信装置間の信号伝播時間のn倍≦補正期間となる最小の補正期間と設定すればよい。
【0029】
なお、変化タイミングの判別については変化量に閾値を用いて、閾値以上の変化がある場合のみを、変化タイミングとして識別するようにしても良い。また、通常、補正処理部8の回路や計算能力等のリソースには限界があり、補正間隔調整部4bや補正期間調整部5bで決定した補正間隔および期間を満たす補正処理ができない場合が想定され、このような場合に備え、補正間隔調整部4bと補正期間調整部5bとは相互に設定値を交換し、例えば補正間隔を優先し、補正期間は補正処理部のリソースの範囲内に限定する、または、補正期間を優先し、補正間隔を補正処理部のリソースの範囲内に限定する、さらには、変化タイミングの判別に用いる閾値を変え、リソースの範囲内となるよう調整するようにしても良い。
【0030】
次に、動作について説明する。
本実施の形態2に係る通信装置は、反射歪み特性推定部6は、本来の通信動作の前に、予め、信号を送信してくる送信元の通信装置2から、既知の信号波形を送信してもらうように依頼し、当該信号波形を受信して、受信した当該信号波形と、予め記憶しておいた既知の信号波形(参照データ)とを比較して、それらの信号波形の差分を反射歪み特性として出力する。次に、補正間隔調整部4bが、反射歪み特性推定部6から反射歪み特性の情報を受け取り、それに基づいて、補正処理部8の補正処理で用いるための補正間隔を決定する。ここでは、反射歪み特性の変化タイミングとそれの持続時間とから、それらの変化タイミングのうち、隣接する変化タイミングの間隔が最小のもの(すなわち、最小間隔)を、補正間隔として決定する。また、補正間隔調整部4bの処理と略々並行に、補正期間調整部5bが、反射歪み特性推定部6から反射歪み特性の情報を受け取り、それに基づいて、補正処理部8の補正処理で用いるための補正期間を決定する。ここでは、反射歪み特性の変化タイミングに基づき、最後の変化タイミングまでの期間を補正期間として決定する。次に、補正係数調整部7に、反射歪み特性推定部6で推定された反射歪み特性と、補正間隔調整部4aで決定された補正間隔と、補正期間調整部5aで決定された補正期間とが入力され、補正係数調整部7は、補正期間中の補正間隔毎に、反射歪み特性に基づいて、送信元の通信装置から受信した信号の信号波形に乗算するための補正係数を決定する。次に、補正処理部8は、補正係数調整部7で決定された補正係数と、補正間隔調整部4aで決定された補正間隔と、補正期間調整部5aで決定された補正期間とが入力され、補正期間中の補正間隔毎に、反射歪みを含む受信した信号の信号波形に補正係数を乗算して、反射歪みを補正する。
【0031】
なお、本実施の形態においては、補正間隔調整部4bと、補正期間調整部5bとが、反射歪み特性推定部6により推定された反射歪み特性に基づいて、伝送路の特性や接続状態に応じて、受信信号の反射歪みを補正する補正処理を行うための補正間隔(補正処理時間間隔)および補正期間(補正処理対象時間範囲)を制御する反射歪み補正制御手段を構成している。
また、反射歪み特性推定部6と、補正係数調整部7と、補正処理部8とが、反射歪み特性を推定し、反射歪み補正制御手段によって決定された補正間隔(補正処理時間間隔)および補正期間(補正処理対象時間範囲)に基づいて、当該補正期間中の補正間隔毎に、上記反射歪み特性から反射歪みを補正するための補正係数を求めて、受信した信号の信号波形における反射歪みを補正する反射歪み補正手段を構成している。
【0032】
以上のように、本実施の形態に係る通信装置は、実施の形態1と同様に、複数の通信装置が接続されることにより生じる反射歪みを補正する反射歪み補正手段と、この補正を行うための補正間隔および補正期間を制御する反射歪み補正制御手段とを備え、反射歪み特性として、観測された複数の信号の変化タイミングのうち、最も短い変化タイミングの間隔から反射歪みを補正するための補正処理時間間隔を決定するとともに、最後の変化タイミングまでの持続時間から補正処理対象時間範囲を決定するようにし、補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を、伝送路の信号伝播状態(すなわち、伝送路の構成や長さ、伝送路の単位長さ当たりの伝搬時間、伝送路に接続される通信装置の台数、及び/または、各通信装置間の距離などによる、伝送路の信号伝播状態)に応じて最適に制御できるようにしたので、回路規模や演算量の効率化が図れるという効果を奏する。
【0033】
なお、以上の実施の形態1および2の説明は、複数の通信装置が接続されたネットワークについて述べたが、1対1接続の伝送であっても、途中で伝送路のインピーダンスが変わるような伝送線路を用いた場合に生じる反射歪みにも利用できる。
【0034】
また、伝送路の分岐があるような場合には、通信装置の接続点での反射以外に、伝送路の分岐点でも反射が生じることがあり、このような反射点により生じる反射歪みにも、本発明は利用できる。
【0035】
さらに、以上の実施の形態1および2の説明においては、通信装置2として送受信動作が可能なものを例として挙げて説明したが、その場合に限らず、受信動作のみ行う受信装置や、送信動作のみ行う送信装置にも、本発明が適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 基幹配線(伝送路)、2,2a,2b,2c,2d 通信装置、3 ネットワーク構成入力/保持部、4a,4b 補正間隔調整部、5a,5b 補正期間調整部、6 反射歪み特性推定部、7 補正係数調整部、8 補正処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置が伝送路を介して接続される通信システムで用いられる通信装置であって、
複数の通信装置が接続されることにより生じる信号波形の反射歪みを、上記伝送路を介して伝播されてきた既知の信号波形に基づいて推定した反射歪み特性に基づいて補正する反射歪み補正手段と、
上記反射歪み補正手段による補正処理を行うための補正処理時間間隔および補正処理対象時間範囲を上記伝送路の信号伝播状態に応じて制御する反射歪み補正制御手段と
を備え、
上記反射歪み補正手段は、上記反射歪み補正制御手段により決定された上記補正処理対象時間範囲内で、上記補正処理時間間隔毎に、上記信号波形の反射歪みを補正する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
上記反射歪み補正制御手段は、
上記通信システム内の最も近い通信装置間の信号伝播時間と、最も遠い通信装置間の信号伝播時間とが外部から入力され、それらを記憶保持するネットワーク構成入力/保持部と、
上記ネットワーク構成入力/保持部に入力された上記最も近い通信装置間の信号伝播時間に基づいて上記補正処理時間間隔を決定する補正間隔調整部と、
上記ネットワーク構成入力/保持部に入力された上記最も遠い通信装置間の信号伝播時間に基づいて上記補正処理対象時間範囲を決定する補正期間調整部と
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
上記反射歪み補正制御手段は、
上記反射歪み補正手段によって推定された上記反射歪み特性に基づいて、上記反射歪み特性における信号の変化タイミングを観測し、観測された複数の信号の変化タイミングから、隣接する変化タイミング間の間隔のうちの最小値に基づいて上記補正処理時間間隔を決定する補正間隔調整部と、
上記反射歪み補正手段によって推定された上記反射歪み特性に基づいて、上記反射歪み特性における信号の変化タイミングのうちの最後の変化タイミングまでの時間に基づいて、上記補正処理対象時間範囲を決定する補正期間調整部と
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−239091(P2011−239091A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107570(P2010−107570)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】