通信装置
【課題】コンパクトな装置構成で、通信装置の通信可能範囲を十分に拡張する。
【解決手段】通信装置100は、複数のループコイル111a〜111dが凸形状に組み合わされたアンテナ部110と、アンテナ部110を用いて他の通信装置200と非接触通信する通信部150とを備える。通信装置100において、複数のループコイル111a〜111dは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる。
【解決手段】通信装置100は、複数のループコイル111a〜111dが凸形状に組み合わされたアンテナ部110と、アンテナ部110を用いて他の通信装置200と非接触通信する通信部150とを備える。通信装置100において、複数のループコイル111a〜111dは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触IC(Integrated Circuit)カードや、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、非接触ICチップを搭載した携帯電話などの非接触通信装置と、リーダライタとを用いた非接触通信が広く行われている。非接触通信の普及に伴い、様々な場所にリーダライタが設置されるケースが多くなっている。そのため、リーダライタの小型化が求められているだけでなく、リーダライタの通信可能範囲の拡張も求められている。リーダライタの通信可能範囲が広ければ、非接触通信装置をリーダライタにかざしたときの位置ずれをある程度許容することができる。
【0003】
そこで、複数のループアンテナを用いて、リーダライタの通信可能範囲を拡張する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、複数のループアンテナを同一平面上に一部重ね合わせて配置することによって通信可能範囲を拡張する技術が記載されている。また、特許文献2には、5つのループアンテナを立体的に組み合わせることによって通信可能範囲を拡張する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−232397号公報
【特許文献2】特開2005−33629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のように、同一平面上に複数のループアンテナを配置する場合、これらのアンテナの設置面積が増大し、当該平面上における通信可能範囲を拡張しようとすると、その分リーダライタが大型化するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載のように、複数のループアンテナを立体的に組み合わせる場合、相隣接する2つのループアンテナ間で、それぞれのループアンテナの発生する磁界が相互に干渉してしまう。そのため、通信可能範囲を十分に拡張できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、コンパクトな装置構成で、通信可能範囲を十分に拡張することが可能な、新規かつ改良された通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数のループコイルが多角錐形状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数のループコイルが円錐形状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、複数のループコイルが凸形状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【0011】
かかる構成によって、複数のループアンテナを、磁界が相互に干渉することなく組み合わせることができ、それぞれのループアンテナの指向性が異なるので、アンテナ部全体として十分に広い通信可能範囲を得ることができる。
【0012】
上記アンテナ部は、上記複数のループコイルがそれぞれ設けられる複数のアンテナ基板をさらに備え、上記複数のアンテナ基板が立体的に組み合わされた立体的形状を有してもよい。
【0013】
上記立体的形状は、多角錐形状であり、上記アンテナ部は、上記各アンテナ基板が上記多角錐形状の各側面に対応するように組み合わされることにより、上記多角錐形状をなしてもよい。
【0014】
上記多角錐形状のアンテナ部の底面が、上記通信装置に上記他の通信装置をかざすときの基準面に対して平行となるように、上記アンテナ部が配置されてもよい。
【0015】
上記複数のループコイルの設置数は、偶数であってもよい。
【0016】
上記各ループコイルの裏面には、磁性体が設けられてもよい。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、複数のループコイルが相互に角度を有する形状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、複数のループコイルが半球状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、コンパクトな装置構成で、通信可能範囲を十分に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリーダライタの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部について説明するための模式的な上面図である。
【図3】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部について説明するための模式的な斜視図である。
【図4】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部によって得られる通信可能範囲について説明するための模式的な縦断面図である。
【図5】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部の配線の一例を説明するための説明図である。
【図6】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部に発生する磁界を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るリーダライタのアンテナ部について説明するための模式的な底面図である。
【図8】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部に発生する磁界を説明するための模式的な縦断面図である。
【図9】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部に発生する磁界を説明するための模式的な縦断面図である。
【図10】従来のリーダライタのアンテナ部について説明するための模式的な斜視図である。
【図11】従来のリーダライタのアンテナ部によって得られる通信可能範囲について説明するための模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することによって重複説明を省略する。
【0022】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1−1.非接触通信の概要
1−2.リーダライタの構成
1−3.リーダライタのアンテナ部の構成
1−4.まとめ
2.第2の実施形態
3.補足
【0023】
<1.第1の実施形態>
[1−1.非接触通信の概要]
まず、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタが行う非接触通信の概要について説明する。
【0024】
ここでは、非接触ICカードを非接触通信装置の例として説明する。非接触ICカードは、薄型のカード外装内に、リーダライタと非接触通信するためのアンテナと、所定の演算処理を実行可能な集積回路(IC)が搭載されたICチップとを備えている。これによって、非接触ICカードは、リーダライタとの間で、電磁波を用いて非接触通信することが可能である。従って、非接触ICカードを、リーダライタが発する電磁波の有効範囲内に位置させるだけで(すなわち、非接触ICカードをリーダライタにかざすだけで)、非接触ICカード内のデータを読み書きすることができる。かかる非接触ICカードは、リーダライタへの抜き差しなどによって位置を固定する必要がないため使い易く、迅速にデータを送受信でき、改造・変造しにくいため安全性が高く、データを書き換えることでカード自体を何度も再利用可能であるといった利点がある。そのため、非接触ICカードの用途は多様化している。非接触ICカードは現在、例えば、電子マネーカード、交通機関カード、個人認証用カード、ポイントカード、クーポンカード、電子チケットカード、電子決済カードなどに用いられている。
【0025】
本実施形態にかかるリーダライタは、上記の非接触ICカードと非接触通信する。かかるリーダライタは、一般にはホスト装置に内蔵または外付けして用いられる。非接触ICカードの用途の多様化に伴って、リーダライタ装置が内蔵または外付けされて用いられるホスト装置の種類も多様化している。本実施形態にかかるリーダライタは、例えば、自動改札機、店舗に設置される会計装置、パーソナルコンピュータ、情報家電などのユーザ端末、各種の商品や乗車券用の自動販売機、POS端末、キオスク端末、金融機関のATM、携帯電話などの携帯端末など、様々な電子機器をホスト装置として、当該ホスト装置に内蔵または外付けされて用いられる。ここで、特に、リーダライタがホスト装置に内蔵される場合において、リーダライタの大きさは、ホスト装置における設置スペースによって制限される。
【0026】
上記の非接触ICカードとリーダライタとの間で行われる非接触通信は、例えば数cm程度の近接した距離での無線通信である。かかる非接触通信は、例えば、搬送波として所定周波数(例えば13.56MHz)の周波数帯を利用し、212kbpsの通信速度で行われ、副搬送波を使用しない「対称通信」である。また、変調方式としてはASK(Amplitude Shift Keying)変調方式、符号化方式としてはマンチェスター符号化方式を使用できる。このような非接触通信によって、例えば、リーダライタがホスト装置からの命令に従って非接触ICカードに対して各種のコマンドを発行し、非接触ICカードがこのコマンドに対して応答する方式でトランザクションが繰り返され、所定のサービスに関する情報が送受信される。
【0027】
ここで、上述のように、非接触ICカードは、リーダライタへの抜き差しなどによって位置を固定されることがない。よって、非接触ICカードとリーダライタとが非接触通信する際には、リーダライタに対する非接触ICカードの位置ずれが生じうる。非接触ICカードの使い易さの向上のために、かかる位置ずれを可能な限り許容し、ユーザが非接触ICカードの位置に格別の注意を払わなくとも、当該非接触ICカードと非接触通信できるリーダライタが求められている。リーダライタが、非接触ICカードのリーダライタに対する位置ずれをどの程度許容することができるかは、リーダライタの通信可能範囲に依存する。以下で、図10および図11を用いて、従来のリーダライタのアンテナ部の構成と、かかるアンテナ部によって得られる通信可能範囲について説明する。
【0028】
図10は、従来のリーダライタ1のアンテナ部について説明するための模式的な斜視図である。図10を参照すると、リーダライタ1のアンテナ部は、ループアンテナ11からなる。ループアンテナ11は、所定のインダクタンスを有するコイルである。ループアンテナ11は、RF基板15に接続され、RF基板15から交流電流を供給されることによって、所定の周波数の磁界(搬送波)を発生する。ループアンテナ11は、方形のアンテナ基板13上に設けられている。ループアンテナ11は、アンテナ基板13と略同一形状である。RF基板15は、ループアンテナ11の発生する搬送波を用いて非接触ICカード2と非接触通信する。
【0029】
非接触ICカード2は、アンテナ部21とICチップ22とを備える。非接触ICカード2がリーダライタ1にかざされると、アンテナ部21は、ループアンテナ11が発生する搬送波を受信する。ICチップ22は、当該搬送波の直流成分を駆動電圧として用いる。また、ICチップ22は、当該搬送波の交流成分をデータとして取り出して処理する。ここで、リーダライタ1に、かかる非接触ICカード2をかざすときの基準となる平面を、基準面P0とする。基準面P0は、例えば、リーダライタ1に、ICカード2が最も接近しうる面(0距離面)でありうる。
【0030】
図11は、図10に示した従来のリーダライタ1のアンテナ部によって得られる通信可能範囲Rについて説明するための模式的な縦断面図である。通信可能範囲とは、ループアンテナ11が発生する磁界(搬送波)が、非接触通信するために必要な磁界強度で非接触ICカード2のアンテナ部21に受信されうる範囲である。ここでは、基準面P0上の通信可能範囲を、特に通信可能範囲RP0として図示している。通信可能範囲RP0によって、基準面P0上での、リーダライタ1に対する非接触ICカード2の位置ずれが、どの程度許容されるかが決定される。通信可能範囲RP0が大きい場合、上記位置ずれは、ある程度の距離まで許容される。この場合、非接触ICカード2は、リーダライタ1に対する位置が多少ずれても、リーダライタ1と非接触通信することができる。一方、通信可能範囲RP0が小さい場合、上記位置ずれは、わずかな距離しか許容されない。この場合、非接触ICカード2は、リーダライタ1に対する位置が少しずれただけで、リーダライタ1と非接触通信することが困難になる。
【0031】
ここで、通信可能範囲RP0は、基準面P0における通信可能範囲Rの断面として定義される。図示されているように、ループアンテナ11が、ループ面(コイルのループがなす面)が基準面P0に対して平行になるように設けられている場合、通信可能範囲RP0の大きさは、ループアンテナ11の大きさと略同一となる。よって、通信可能範囲RP0を拡張しようとする場合、ループアンテナ11も同時に大きくなり、リーダライタ1が大型化する。従って、リーダライタ1の大きさが制限される場合には、ループアンテナ11を大きくすることができず、従って通信可能範囲RP0を拡張することは難しい。そのため、例えばリーダライタ1がホスト装置の限られたスペースに内蔵される場合、リーダライタ1の通信可能範囲RP0を拡張することは困難である。
【0032】
なお、上記の例において、ループアンテナ11に供給される電流を増加させた場合、通信可能範囲Rは、ループアンテナ11のループ面に対して垂直な方向に拡張される。しかし、通信可能範囲Rは、それ以外の方向についてはほとんど拡張されない。これは、ループアンテナ11が、ループ面に対して垂直な方向への指向性を有するためである。従って、上記の例において、ループアンテナ11に供給される電流を増加させることによっては、通信可能範囲RP0を十分に拡張させることができない。
【0033】
また、図示されていないが、同一平面上に複数のループアンテナ11を配置してアンテナ部を構成する場合、それぞれのループアンテナ11によって得られる通信可能範囲RP0の大きさは、ループアンテナ11の大きさと略同一である。よって、アンテナ部全体で得られる基準面P0上の通信可能範囲は、それぞれの通信可能範囲RP0の和を超えることはない。従って、かかる場合についても、アンテナ部が1つのループアンテナ11で構成される場合と同様に考えることができる。すなわち、通信可能範囲RP0を拡張しようとする場合、ループアンテナ11全体の設置面積も大きくなり、従ってリーダライタ1が大型化する。
【0034】
[1−2.リーダライタの構成]
次に、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100の構成の一例について説明する。図1は、本実施形態に係るリーダライタ100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、リーダライタ100は、本実施形態における非接触通信装置である非接触ICカード200と非接触通信する。
【0035】
リーダライタ100は、アンテナ部110およびRF基板150を備える。RF基板150はさらに、RF通信部120、制御部130、および記憶部140を含む。RF基板150は、本発明のリーダライタが備える通信部の一例である。
【0036】
アンテナ部110は、立体的に組み合わされた4つのループアンテナ111a〜111dからなる。ループアンテナ111a〜111dはいずれも、所定のインダクタンスを有するコイルである。ループアンテナ111a〜111dは、RF基板150から交流電流を供給されることによって、所定の周波数の磁界(搬送波)を発生する。かかるループアンテナ111a〜111dの形状および配置の態様については後述する。
【0037】
RF通信部120は、アンテナ部110を1つの広指向性アンテナとして用いて、非接触ICカード200に電力を供給し、また非接触ICカード200との間で所定のコマンドやデータを送受信する機能を有する。詳細には、RF通信部120は、アンテナ部110から、所定の周波数帯域(例えば13.56MHz)の磁界(搬送波)を発生し、当該搬送波によって非接触ICカード200に電力を供給する。また、RF通信部120は、制御部130の指示に応じて当該搬送波を変調し、非接触ICカード200に所定のコマンドやデータを送信する。さらに、RF通信部120は、アンテナ部110を用いて、非接触ICカード200が負荷変調した搬送波を受信する。さらに、RF通信部120は当該搬送波を復調して、非接触ICカード200から送信されたコマンドやデータを取得し、制御部130に出力する。
【0038】
制御部130は、マイクロプロセッサなどで構成され、リーダライタ100内の各部を制御するとともに、所定の演算処理を行う。かかる制御部130は、記憶部140に記憶されたプログラムに従って動作し、所定のサービスに関する演算処理や、コマンド生成、各種情報の送受信の制御などを実行する。これによって、リーダライタ100は、非接触ICカード200に対するカード検出(ポーリング)、相互認証、データの読み書きなど、一連の処理を実行できる。
【0039】
記憶部140は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ、ハードディスクドライブなどの記憶装置で構成され、各種の情報を永続的または一時的に記憶する。例えば、記憶部140は、非接触通信によって所定のサービスを提供するために制御部130を動作させるためのプログラム、非接触ICカード200から取得したデータ、制御部130によって演算されたデータなどといった各種データを記憶する。
【0040】
リーダライタ100は、この他に、ホスト装置や他の回路などと接続するためのインターフェース(図示せず)を備えてもよい。インターフェースは、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)や、ネットワーク端子などである。かかるインターフェースによって、リーダライタ100は、例えばホスト装置からの送信命令に応じて非接触ICカード200にコマンドを送信したり、非接触ICカード200から取得したデータをホスト装置に送信したりすることができる。
【0041】
一方、リーダライタ100と非接触通信する非接触ICカード200は、アンテナ部210およびICチップ220を備える。非接触ICカード200は、アンテナ部210によって、リーダライタ100からの電磁波(搬送波)を受信する。ICチップ220は、当該搬送波の直流成分を駆動電圧として用いる。また、ICチップ220は、当該搬送波の交流成分をデータとして取り出して処理する。
【0042】
[1−3.リーダライタのアンテナ部の構成]
次に、図2〜図6を参照して、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110について説明する。図2は、本実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110について説明するための模式的な上面図である。
【0043】
図2を参照すると、本実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110は、立体的に組み合わされた4つのループアンテナ111a〜111dからなる。各ループアンテナ111a〜111dは、アンテナ基板113a〜113dに設けられている。ここで、アンテナ基板113a〜113dは、例えば誘電体で形成された三角形状の板状部材である。かかるアンテナ基板113a〜113dは、四角錐形状に組み立てられている。ループアンテナ111a〜111dは、例えば銅やアルミニウムなどの金属による配線からなるコイルであり、アンテナ基板113a〜113d上に設けられる。ループアンテナ111a〜111dのコイルの形状は、アンテナ基板113a〜113dと略同一の三角形状である。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110についてさらに説明するための模式的な斜視図である。図3を参照すると、ループアンテナ111a、111bが設けられるアンテナ基板113a、113bは、四角錐形状の各側面に対応するように組み立てられている。ループアンテナ111c、111dおよびアンテナ基板113c、113dは、アンテナ部110の背面側に位置するため図示されていないが、図示されているループアンテナ111a、111bおよびアンテナ基板113a、113bと同様に組み立てられている。このように、アンテナ部110は、アンテナ基板113a〜113dが立体的に組み合わされた四角錐形状を有する。換言すれば、アンテナ部110が有する四角錐形状の各側面は、アンテナ基板113a〜113dで構成される。
【0045】
RF基板150は、ループアンテナ111a〜111dからなるアンテナ部110を1つのアンテナとして用いて、非接触ICカード200と非接触通信する。四角錐形状に組み立てられたアンテナ基板113a〜113dに設けられるループアンテナ111a〜111dにおいて、それぞれのループ面(コイルのループがなす面)は、相互に傾いている。よって、それぞれのループ面に対して垂直な、ループアンテナ111a〜111dの指向方向Da〜Ddは、相互に異なる方向になる。従って、RF基板150は、相互に異なる4つの指向方向Da〜Ddをあわせもつ広指向性アンテナとしてアンテナ部150を用いて、非接触ICカード200と非接触通信することができる。
【0046】
ここで、リーダライタ100に、非接触ICカード200をかざすときの基準となる平面を、基準面P0とする。基準面P0は、例えば、リーダライタ100に、ICカード200が最も接近しうる面(0距離面)でありうる。本実施形態において、アンテナ基板113a〜113dが組み立てられた四角錐形状の底面は、基準面P0に対して平行である。言い換えると、当該四角錐形状の頂点は、基準面P0に正対する。かかる四角錐形状において、その側面にそれぞれ相当するアンテナ基板113a〜113dは、いずれも基準面P0に対して同一の傾斜角で傾いている。従って、アンテナ基板113a〜113dに設けられたループアンテナ111a〜111dのそれぞれのループ面に対して垂直な指向方向Da〜Ddは、いずれも基準面P0に対して傾く。具体的には、図示するように、ループアンテナ111a〜111dの指向方向Da〜Ddは、基準面P0に向かって放射状に広がる4つの方向になる。
【0047】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110を構成する各ループアンテナによって得られる通信可能範囲を説明するための模式的な縦断面図である。ここでは、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cを例として説明する。図4を参照すると、アンテナ基板113aおよびアンテナ基板113cにそれぞれ設けられた、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cが図示されている。アンテナ基板113aおよびアンテナ基板113cは、四角錐形状に組み立てられたアンテナ基板113a〜113dのうち、当該四角錐形状の対向する2つの側面に相当する。通信可能範囲とは、ループアンテナ111aまたはループアンテナ111cが発生する磁界(搬送波)が、非接触通信するために必要な磁界強度で非接触ICカード200のアンテナ部210に到達しうる範囲である。ループアンテナ111aによる通信可能範囲は通信可能範囲Raとして、ループアンテナ111cによる通信可能範囲は通信可能範囲Rcとして、それぞれ図示されている。
【0048】
ループアンテナ111aが備えられるアンテナ基板113aと、ループアンテナ111cが備えられるアンテナ基板113cとは、角度θをなすように組み立てられている。また、アンテナ基板113aは、さらに、基準面P0と角度φaをなすように組み立てられている。さらに、アンテナ基板113cは、基準面P0と角度φcをなす。上記の角度θ、角度φaおよび角度φcを調整することによって、ループアンテナ111a、111cのそれぞれの指向方向Da、Dcを調整することができる。
【0049】
例えば、図示されているように、基準面P0とアンテナ基板113aとがなす角度φaを調整することによって、指向方向Daに広がる通信可能範囲Raを、基準面P0に対して傾けて、基準面P0と交わらせることができる。この場合、基準面P0上の通信可能範囲RaP0の大きさは、ループアンテナ111aの大きさよりも大きくなる。つまり、ループアンテナ111aのループ面の面積以上に、通信可能範囲RaP0を拡張することができる。同様に、基準面P0とアンテナ基板113cとがなす角度φcを調整することによって、ループアンテナ111cのループ面の面積以上に、基準面P0上の通信可能範囲RcP0を拡張することができる。なお、図4ではループアンテナ111a、111cについて説明しているが、同様に基準面に対する角度を調整することができる、ループアンテナ111b、111dについても、同様にループアンテナのループ面の面積以上に通信可能範囲を拡張することができる。
【0050】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110の配線の一例を説明するための説明図である。図5を参照すると、ループアンテナ111a〜111dは、それぞれ交流電源ACに並列に接続されている。ループアンテナ111a〜111dには、交流電源ACによって、それぞれ電流Ia〜Idが供給される。なお、交流電源ACは、アンテナ部110に交流電流を供給するRF基板150を模式的に表している。ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cは、ループアンテナ111bおよびループアンテナ111dとは逆位相の電流が供給されるように交流電源ACに接続されている。つまり、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cは、図中での左右を入れ替えて交流電源ACに接続されている。これによって、電流Iaおよび電流Icと、電流Ibおよび電流Idとの間では、1/2周期だけ位相がずれる、つまり、電流Iaおよび電流Icと、電流Ibおよび電流Idとは、相互に逆位相になる。例えば、ループアンテナ111aにおいて、上面から見て時計回りとなる電流Iaが流れる瞬間には、ループアンテナ111bにおいては、上面から見て反時計回りとなる電流Ibが流れるといったように、相隣接するループアンテナにおいては、ある瞬間において相互に逆回りの電流が流れる。このような関係は、他の相隣接する2つのループアンテナ、すなわち、ループアンテナ111bとループアンテナ111c、ループアンテナ111cとループアンテナ111d、およびループアンテナ111dとループアンテナ111aのそれぞれの間で、同様に成り立つ。
【0051】
なお、上記で説明したような位相差での電流の供給が可能であれば、ループアンテナ111a〜111dは、交流電源ACに並列ではなく直列で接続されてもよい。また、それぞれのループアンテナに供給される電流の位相差は、上記のように回路配置によって生じるものでなくてもよい。例えば、一部のループアンテナに電流を供給する回路のみに位相反転回路を介在させることによって、相隣接するループアンテナに相互に逆位相の電流が供給されるようにしてもよい。
【0052】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110において、ある瞬間に発生する磁界を説明するための説明図である。図6を参照すると、上面から見たアンテナ部110が図示されている。また、ループアンテナ111a〜111dが発生する磁界Ma〜Mdが、それぞれ模式的な磁力線によって現されている。
【0053】
ここで、電流及び磁界の向きについて定義する。まず、ループアンテナを流れる電流の向きは、アンテナ部110を上面から見た場合の「時計回り」および「反時計回り」によって定義される。また、ループアンテナが発生する磁界の向きは、アンテナ基板113a〜113dが組み立てられた四角錐形状の内部に向かう「内向き」および、当該四角錐形状の外部に向かう「外向き」によって定義される。
【0054】
まず、ループアンテナ111aを例として説明する。図示されている瞬間において、ループアンテナ111aには、矢印で示されているように、時計回りに電流が流れている。この場合、ループアンテナ111aのコイルの内側においては、実線で表される内向きの磁界Maが発生する。一方、磁界Maは、当該磁界を発生するループアンテナ111aのコイルの内側以外では逆の向き、つまり外向きになる。よって、ループアンテナ111aに隣接するループアンテナ111bのコイルの内側では、破線で表される外向きの磁界Maが発生する。
【0055】
ここで、上記で図5を参照して説明したように、ループアンテナ111aに隣接するループアンテナ111bは、ループアンテナ111aとは逆位相の電流が供給されるように配置されている。そのため、この瞬間において、ループアンテナ111bに流れる電流は、矢印で示されているように反時計回りである。従って、ループアンテナ111bのコイルの内側においては、実線で表される外向きの磁界Mbが発生する。この磁界Mbの向きは、ループアンテナ111bのコイルの内側において、破線で表される磁界Maの向きと一致している。同様に、ループアンテナ111aのコイルの内側においても、実線で表される磁界Maが内向きであるのに対して、破線で表される磁界Mbも内向きとなり、2つの磁界の向きは一致する。よって、磁界Maと磁界Mbとは、相互に干渉しないといえる。
【0056】
さらに、上記で図5を参照して説明したように、アンテナ部110を構成するループアンテナ111a〜111dは、相隣接する2つのループアンテナのすべての組み合わせ(ループアンテナ111aとループアンテナ111b、ループアンテナ111bとループアンテナ111c、ループアンテナ111cとループアンテナ111d、ループアンテナ111dとループアンテナ111a)において、相互に逆位相の電流が供給されるように配置されている。従って、相隣接する2つのループアンテナのすべての組み合わせにおいて、相隣接する2つのループアンテナの発生する磁界は、上記の磁界Maおよび磁界Mbの例と同様に、相互に逆位相となる。よって、相隣接する2つのループアンテナの発生する磁界も、相互に干渉しないといえる。
【0057】
[1−4.まとめ]
以上説明した本発明の第1の実施形態においては、異なる方向の指向性を有する複数のループアンテナ111からなるアンテナ部110を、1つの広指向性アンテナとして用いる。かかる構成によって、それぞれのループアンテナ111の指向方向に通信可能範囲を拡張することができる。また、指向方向を調整することによって、リーダライタが設置される環境に適合した形状に通信可能範囲を設定することができる。
【0058】
また、本実施形態において、アンテナ部110を構成する複数のループアンテナ111は、相隣接する2つのループアンテナ111の発生する磁界が相互に逆位相となるように配置される。かかる構成によって、これらのループアンテナの発生する磁界が相互に干渉せず、それぞれのループアンテナの指向方向に通信可能範囲を拡張する効果を十分に得ることができる。
【0059】
また、本実施形態において、アンテナ部110を構成する複数のループアンテナ111は、それぞれアンテナ基板113に設けられ、複数のアンテナ基板113は、立体的に組み合わされる。かかる構成により、複数のループアンテナ111を容易に、かつ安定して立体的に組み合わせることができる。
【0060】
また、本実施形態において、アンテナ基板113は四角錐形状の各側面に対応するように組み合わされている。よって、アンテナ部110は四角錐形状をなす。また、上記四角錐形状の底面は、基準面P0と平行である。かかる構成によって、それぞれのループアンテナ111の指向方向が基準面P0に向かって放射状になり、基準面P0上で放射状に広がる複数の方向に、三次元的に通信可能範囲を拡張することができる。
【0061】
また、本実施形態において、ループアンテナの設置数は4、すなわち偶数である。かかる構成によって、相隣接する2つのループアンテナのすべての組み合わせにおいて、2つのループアンテナの発生する磁界が相互に逆位相になるように、各ループアンテナを配置することができる。
【0062】
なお、アンテナ部の形状を四角錐形状として説明したが、これには限定されない。上記で説明した、基準面P0上で放射状に広がる複数の方向に、三次元的に通信可能範囲を拡張する効果は、ループアンテナが任意の多角錐形状をなす場合に得ることができる。
【0063】
また、ループアンテナの設置数は4として説明したが、この数には限定されない。上記で説明した、相隣接するループアンテナのすべての組み合わせについて、磁界が相互と逆位相になるように配置することができるという効果は、ループアンテナの設置数が6、8など任意の偶数である場合に得ることができる。
【0064】
また、アンテナ基板が組み立てられた四角錐形状は、図面においては正四角錐形状として図示されているが、正四角錐形状には限定されない。任意の方向とループアンテナの指向方向とを一致させるために、アンテナ基板を頂点が偏心した四角錐形状に組み立ててもよい。
【0065】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、リーダライタ100のアンテナ部110を構成するループアンテナ111a〜111dの裏面に、それぞれ磁性体115a〜115dが設けられることを特徴としている。
【0066】
なお、本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態と比べて、ループアンテナ111a〜111dの裏面にそれぞれ磁性体115a〜115dが貼り付けられる点において相違し、その他の機能構成は、第1の実施形態と略同一であるので詳細説明は省略する。
【0067】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110について説明するための模式的な底面図である。アンテナ部110は、四角錐形状に組み立てられたアンテナ基板113a〜113dにそれぞれ設けられた、4つのループアンテナ111a〜111dからなる。本実施形態においては、各ループアンテナ111a〜111dの裏面にあたるアンテナ基板113a〜113dの面に、それぞれ磁性体115a〜115dが設けられている。磁性体115a〜115dは、例えば、樹脂層の中に軟磁性粉末を混入させたいわゆる磁性シートであって、アンテナ基板113a〜113dの面に貼り付けることができる。磁性体115a〜115dは、それぞれループアンテナ111a〜111dと略同一形状とすることができる。
【0068】
なお、ループアンテナ111a〜111dの裏面とは、それぞれのループアンテナにおいて、基準面P0に対向しない面である。ここでいう対向とは、必ずしも平行な面が向かい合うことを意味せず、角度をもって向かい合う面をも含む。かかる定義によれば、ループアンテナ111a〜111dにおいては、アンテナ基板113a〜113dを組み立てた四角錐形状の内側に向かう面が裏面である。
【0069】
続いて、図8および図9を参照して、本実施形態において新たにアンテナ部110に備えられる磁性体115a〜115dの効果について説明する。
【0070】
図8は、各ループアンテナの裏面に磁性体が備えられない場合に、アンテナ部110において発生する磁界を説明するための模式的な縦断面図である。ここでは、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cを例として説明する。図示されているように、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cは、四角錐形状に組み立てられたアンテナ基板113a〜113dのうち、当該四角錐形状の対向する2つの側面に相当する、アンテナ基板113aおよびアンテナ基板113cにそれぞれ設けられている。ある瞬間において、ループアンテナ111aに発生する磁界Maと、ループアンテナ111cに発生する磁界Mcとが、それぞれ模式的な磁力線として図示されている。
【0071】
ここで、ループアンテナ111a〜111dのうち、相隣接する2つのループアンテナの発生する磁界は相互に逆位相である。ループアンテナ111cは、ループアンテナ111aに隣接するループアンテナ111bにさらに隣接するループアンテナである。よって、ループアンテナ111cの発生する磁界は、ループアンテナ111aの発生する磁界に対して逆位相の逆位相、すなわち同位相の磁界となる。この場合、ループアンテナ111aのコイルの内部における磁界Maの向き(ループアンテナ111aとの交点での磁力線の接線として、白い矢印で図示されている)が、上記四角錐形状の中心に向かう瞬間において、ループアンテナ111cのコイルの内部における磁界Mcの向き(ループアンテナ111cとの交点での磁力線の接線として、別の白い矢印で図示されている)も同様に、上記四角錐形状の中心に向かう。つまり、磁界Maと磁界Mcとは、同位相の磁界である。かかる磁界の向きを、図8の模式的な縦断面図において図示すると、磁界Maは反時計回り、磁界Mcは時計回りの向きになる。
【0072】
図示されているように、ループアンテナ111aとループアンテナ111cとは、角度θをもって立体的に組み合わされ、四角錐の対向する2つの側面を形成している。この場合、磁界Maと磁界Mcとが重なり合う部分が生じる。図8の例のように角度θが設定されている場合、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cのコイル内部を含むほとんどの部分において、磁界Maと磁界Mcとが重なり合う。上記の通り、磁界Maは反時計回り、磁界Mcは時計回りであるため、この重なり合う部分において、磁界Maと磁界Mcとは相互に干渉し、互いに弱めあう。磁界Maと磁界Mcとが弱めあう結果、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cによって得られる通信可能範囲が小さくなってしまう。同様の位置関係にあるループアンテナ111bとループアンテナ111dにおいても、同様の現象が発生する。
【0073】
一方、図9は、各ループアンテナの裏面に磁性体が備えられる場合に、アンテナ部110において発生する磁界を説明するための模式的な縦断面図である。ここでは、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cを例として説明する。ループアンテナ111aとループアンテナ111cとの位置関係については、図8に示す場合と同様であるためここでは詳述しない。
【0074】
ここで、磁性体115aおよび磁性体115cは、磁性体に磁界が集中する性質を利用して、磁界Maおよび磁界Mcを制御するために設けられている。例えば、ループアンテナ111aの裏面に貼り付けられた磁性体115aには、ループアンテナ111aのコイル内部に発生した磁界Maが集中する。この結果、磁界Maを示す模式的な磁力線は、磁性体115aに集中することで、ループアンテナ111aの裏面に沿った向きに曲げられる。磁界Maは、ループアンテナ111aの裏面に沿って、基準面P0に近い方の磁性体115aの端部に至り、そこから図中の上方に流れる。図示されているように、磁界Mcについても同様に、ループアンテナ111cの裏面に沿った向きに磁界が曲げられる。
【0075】
このように、磁性体115aおよび磁性体115cによって磁界Maおよび磁界Mcを制御することによって、磁界Maと磁界Mcとが重なり合う部分を少なくすることができる。これによって、磁界Maと磁界Mcとの間の干渉を低減し、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cによって得られる通信可能範囲が小さくなってしまうことを防ぐことができる。なお、同様の位置関係にあるループアンテナ111bとループアンテナ111dにおいても、磁性体115bおよび磁性体115dを設けることによって、同様の効果を得ることができる。
【0076】
以上説明した本発明の第2の実施形態においては、アンテナ部110を構成する複数のループアンテナ111のうち、対向する2つのループアンテナ111の一方または両方の裏面に磁性体115を貼り付ける。かかる構成によって、対向する2つのループアンテナ111の発生する磁界が相互に及ぼす影響を低減し、これらの磁界の干渉を低減することができる。磁界の干渉を低減することによって、アンテナ部110を構成する複数のループアンテナ111が通信可能範囲を拡張する効果を十分に発揮させるができる。
【0077】
なお、磁性体は、必ずしもすべてのループアンテナの裏面に設けられなくてもよい。例えば、四角錐の対向する2つの側面に配置されるループアンテナのいずれか一方のみの裏面に磁性体を設けても、それぞれのループアンテナの発生する磁界相互間の干渉をある程度低減することができる。また、磁性体は、必ずしもループアンテナと略同一形状でなくてもよい。例えば、磁性体が、ループアンテナの一部のみをカバーするような形状であっても、それぞれのループアンテナの発生する磁界相互間の干渉をある程度低減することができる。
【0078】
<3.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、上記実施形態では、各ループアンテナは、三角形状のアンテナ基板に設けられ、アンテナ基板は多角錐形状に組み立てられたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、アンテナ基板は正方形または台形であって、多角錐以外の凸形状に組み立てられてもよい。凸形状は、例えば、円筒状、円錐状、円錐台状、半球状、または、多角錐の上部を切り取った形状など、基準面に向かって凸な形状であれば、どのような形状でもよい。かかる構成は、既存のループアンテナを流用したり、ホスト装置組み込みにあたって空間上の制約がある場合などに、必要に応じて用いることができる。
【0080】
また、上記実施形態では、ループアンテナの設置数を偶数としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ループアンテナの設置数は奇数であってもよい。例えば、3つの方向への通信可能範囲のみを拡張すればよい場合、3つのループアンテナを、四角錐の側面のうち1面を欠いた形状に組み合わせれば、当該3つの方向について上記実施形態と同様に通信可能範囲を拡張することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、リーダライタのアンテナ部を構成するループアンテナが設置されるアンテナ基板が相互に接しているように図示したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ホスト装置組み込みにあたって空間上の制約がある場合などに、アンテナ基板同士は一定の間隔をもって配置されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、複数のループアンテナはそれぞれアンテナ基板に設けられるが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、複数のループアンテナは、アンテナ基板に設けられていない独立したコイルであって、結合部材を介して相互に結合され、立体的に組み合わされていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、非接触通信装置の例として非接触ICカードを用いて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、非接触通信装置として、RFIDタグや、非接触ICチップを搭載した携帯電話などが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 リーダライタ
110 アンテナ部
150 RF基板
111a〜111d ループアンテナ
115a〜115d 磁性体
200 非接触ICカード
Ma〜Md 磁界
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触IC(Integrated Circuit)カードや、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、非接触ICチップを搭載した携帯電話などの非接触通信装置と、リーダライタとを用いた非接触通信が広く行われている。非接触通信の普及に伴い、様々な場所にリーダライタが設置されるケースが多くなっている。そのため、リーダライタの小型化が求められているだけでなく、リーダライタの通信可能範囲の拡張も求められている。リーダライタの通信可能範囲が広ければ、非接触通信装置をリーダライタにかざしたときの位置ずれをある程度許容することができる。
【0003】
そこで、複数のループアンテナを用いて、リーダライタの通信可能範囲を拡張する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、複数のループアンテナを同一平面上に一部重ね合わせて配置することによって通信可能範囲を拡張する技術が記載されている。また、特許文献2には、5つのループアンテナを立体的に組み合わせることによって通信可能範囲を拡張する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−232397号公報
【特許文献2】特開2005−33629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のように、同一平面上に複数のループアンテナを配置する場合、これらのアンテナの設置面積が増大し、当該平面上における通信可能範囲を拡張しようとすると、その分リーダライタが大型化するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載のように、複数のループアンテナを立体的に組み合わせる場合、相隣接する2つのループアンテナ間で、それぞれのループアンテナの発生する磁界が相互に干渉してしまう。そのため、通信可能範囲を十分に拡張できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、コンパクトな装置構成で、通信可能範囲を十分に拡張することが可能な、新規かつ改良された通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数のループコイルが多角錐形状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数のループコイルが円錐形状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、複数のループコイルが凸形状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【0011】
かかる構成によって、複数のループアンテナを、磁界が相互に干渉することなく組み合わせることができ、それぞれのループアンテナの指向性が異なるので、アンテナ部全体として十分に広い通信可能範囲を得ることができる。
【0012】
上記アンテナ部は、上記複数のループコイルがそれぞれ設けられる複数のアンテナ基板をさらに備え、上記複数のアンテナ基板が立体的に組み合わされた立体的形状を有してもよい。
【0013】
上記立体的形状は、多角錐形状であり、上記アンテナ部は、上記各アンテナ基板が上記多角錐形状の各側面に対応するように組み合わされることにより、上記多角錐形状をなしてもよい。
【0014】
上記多角錐形状のアンテナ部の底面が、上記通信装置に上記他の通信装置をかざすときの基準面に対して平行となるように、上記アンテナ部が配置されてもよい。
【0015】
上記複数のループコイルの設置数は、偶数であってもよい。
【0016】
上記各ループコイルの裏面には、磁性体が設けられてもよい。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、複数のループコイルが相互に角度を有する形状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、複数のループコイルが半球状に組み合わされたアンテナ部と、上記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部とを備え、上記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、コンパクトな装置構成で、通信可能範囲を十分に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリーダライタの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部について説明するための模式的な上面図である。
【図3】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部について説明するための模式的な斜視図である。
【図4】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部によって得られる通信可能範囲について説明するための模式的な縦断面図である。
【図5】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部の配線の一例を説明するための説明図である。
【図6】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部に発生する磁界を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るリーダライタのアンテナ部について説明するための模式的な底面図である。
【図8】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部に発生する磁界を説明するための模式的な縦断面図である。
【図9】同実施形態に係るリーダライタのアンテナ部に発生する磁界を説明するための模式的な縦断面図である。
【図10】従来のリーダライタのアンテナ部について説明するための模式的な斜視図である。
【図11】従来のリーダライタのアンテナ部によって得られる通信可能範囲について説明するための模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することによって重複説明を省略する。
【0022】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1−1.非接触通信の概要
1−2.リーダライタの構成
1−3.リーダライタのアンテナ部の構成
1−4.まとめ
2.第2の実施形態
3.補足
【0023】
<1.第1の実施形態>
[1−1.非接触通信の概要]
まず、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタが行う非接触通信の概要について説明する。
【0024】
ここでは、非接触ICカードを非接触通信装置の例として説明する。非接触ICカードは、薄型のカード外装内に、リーダライタと非接触通信するためのアンテナと、所定の演算処理を実行可能な集積回路(IC)が搭載されたICチップとを備えている。これによって、非接触ICカードは、リーダライタとの間で、電磁波を用いて非接触通信することが可能である。従って、非接触ICカードを、リーダライタが発する電磁波の有効範囲内に位置させるだけで(すなわち、非接触ICカードをリーダライタにかざすだけで)、非接触ICカード内のデータを読み書きすることができる。かかる非接触ICカードは、リーダライタへの抜き差しなどによって位置を固定する必要がないため使い易く、迅速にデータを送受信でき、改造・変造しにくいため安全性が高く、データを書き換えることでカード自体を何度も再利用可能であるといった利点がある。そのため、非接触ICカードの用途は多様化している。非接触ICカードは現在、例えば、電子マネーカード、交通機関カード、個人認証用カード、ポイントカード、クーポンカード、電子チケットカード、電子決済カードなどに用いられている。
【0025】
本実施形態にかかるリーダライタは、上記の非接触ICカードと非接触通信する。かかるリーダライタは、一般にはホスト装置に内蔵または外付けして用いられる。非接触ICカードの用途の多様化に伴って、リーダライタ装置が内蔵または外付けされて用いられるホスト装置の種類も多様化している。本実施形態にかかるリーダライタは、例えば、自動改札機、店舗に設置される会計装置、パーソナルコンピュータ、情報家電などのユーザ端末、各種の商品や乗車券用の自動販売機、POS端末、キオスク端末、金融機関のATM、携帯電話などの携帯端末など、様々な電子機器をホスト装置として、当該ホスト装置に内蔵または外付けされて用いられる。ここで、特に、リーダライタがホスト装置に内蔵される場合において、リーダライタの大きさは、ホスト装置における設置スペースによって制限される。
【0026】
上記の非接触ICカードとリーダライタとの間で行われる非接触通信は、例えば数cm程度の近接した距離での無線通信である。かかる非接触通信は、例えば、搬送波として所定周波数(例えば13.56MHz)の周波数帯を利用し、212kbpsの通信速度で行われ、副搬送波を使用しない「対称通信」である。また、変調方式としてはASK(Amplitude Shift Keying)変調方式、符号化方式としてはマンチェスター符号化方式を使用できる。このような非接触通信によって、例えば、リーダライタがホスト装置からの命令に従って非接触ICカードに対して各種のコマンドを発行し、非接触ICカードがこのコマンドに対して応答する方式でトランザクションが繰り返され、所定のサービスに関する情報が送受信される。
【0027】
ここで、上述のように、非接触ICカードは、リーダライタへの抜き差しなどによって位置を固定されることがない。よって、非接触ICカードとリーダライタとが非接触通信する際には、リーダライタに対する非接触ICカードの位置ずれが生じうる。非接触ICカードの使い易さの向上のために、かかる位置ずれを可能な限り許容し、ユーザが非接触ICカードの位置に格別の注意を払わなくとも、当該非接触ICカードと非接触通信できるリーダライタが求められている。リーダライタが、非接触ICカードのリーダライタに対する位置ずれをどの程度許容することができるかは、リーダライタの通信可能範囲に依存する。以下で、図10および図11を用いて、従来のリーダライタのアンテナ部の構成と、かかるアンテナ部によって得られる通信可能範囲について説明する。
【0028】
図10は、従来のリーダライタ1のアンテナ部について説明するための模式的な斜視図である。図10を参照すると、リーダライタ1のアンテナ部は、ループアンテナ11からなる。ループアンテナ11は、所定のインダクタンスを有するコイルである。ループアンテナ11は、RF基板15に接続され、RF基板15から交流電流を供給されることによって、所定の周波数の磁界(搬送波)を発生する。ループアンテナ11は、方形のアンテナ基板13上に設けられている。ループアンテナ11は、アンテナ基板13と略同一形状である。RF基板15は、ループアンテナ11の発生する搬送波を用いて非接触ICカード2と非接触通信する。
【0029】
非接触ICカード2は、アンテナ部21とICチップ22とを備える。非接触ICカード2がリーダライタ1にかざされると、アンテナ部21は、ループアンテナ11が発生する搬送波を受信する。ICチップ22は、当該搬送波の直流成分を駆動電圧として用いる。また、ICチップ22は、当該搬送波の交流成分をデータとして取り出して処理する。ここで、リーダライタ1に、かかる非接触ICカード2をかざすときの基準となる平面を、基準面P0とする。基準面P0は、例えば、リーダライタ1に、ICカード2が最も接近しうる面(0距離面)でありうる。
【0030】
図11は、図10に示した従来のリーダライタ1のアンテナ部によって得られる通信可能範囲Rについて説明するための模式的な縦断面図である。通信可能範囲とは、ループアンテナ11が発生する磁界(搬送波)が、非接触通信するために必要な磁界強度で非接触ICカード2のアンテナ部21に受信されうる範囲である。ここでは、基準面P0上の通信可能範囲を、特に通信可能範囲RP0として図示している。通信可能範囲RP0によって、基準面P0上での、リーダライタ1に対する非接触ICカード2の位置ずれが、どの程度許容されるかが決定される。通信可能範囲RP0が大きい場合、上記位置ずれは、ある程度の距離まで許容される。この場合、非接触ICカード2は、リーダライタ1に対する位置が多少ずれても、リーダライタ1と非接触通信することができる。一方、通信可能範囲RP0が小さい場合、上記位置ずれは、わずかな距離しか許容されない。この場合、非接触ICカード2は、リーダライタ1に対する位置が少しずれただけで、リーダライタ1と非接触通信することが困難になる。
【0031】
ここで、通信可能範囲RP0は、基準面P0における通信可能範囲Rの断面として定義される。図示されているように、ループアンテナ11が、ループ面(コイルのループがなす面)が基準面P0に対して平行になるように設けられている場合、通信可能範囲RP0の大きさは、ループアンテナ11の大きさと略同一となる。よって、通信可能範囲RP0を拡張しようとする場合、ループアンテナ11も同時に大きくなり、リーダライタ1が大型化する。従って、リーダライタ1の大きさが制限される場合には、ループアンテナ11を大きくすることができず、従って通信可能範囲RP0を拡張することは難しい。そのため、例えばリーダライタ1がホスト装置の限られたスペースに内蔵される場合、リーダライタ1の通信可能範囲RP0を拡張することは困難である。
【0032】
なお、上記の例において、ループアンテナ11に供給される電流を増加させた場合、通信可能範囲Rは、ループアンテナ11のループ面に対して垂直な方向に拡張される。しかし、通信可能範囲Rは、それ以外の方向についてはほとんど拡張されない。これは、ループアンテナ11が、ループ面に対して垂直な方向への指向性を有するためである。従って、上記の例において、ループアンテナ11に供給される電流を増加させることによっては、通信可能範囲RP0を十分に拡張させることができない。
【0033】
また、図示されていないが、同一平面上に複数のループアンテナ11を配置してアンテナ部を構成する場合、それぞれのループアンテナ11によって得られる通信可能範囲RP0の大きさは、ループアンテナ11の大きさと略同一である。よって、アンテナ部全体で得られる基準面P0上の通信可能範囲は、それぞれの通信可能範囲RP0の和を超えることはない。従って、かかる場合についても、アンテナ部が1つのループアンテナ11で構成される場合と同様に考えることができる。すなわち、通信可能範囲RP0を拡張しようとする場合、ループアンテナ11全体の設置面積も大きくなり、従ってリーダライタ1が大型化する。
【0034】
[1−2.リーダライタの構成]
次に、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100の構成の一例について説明する。図1は、本実施形態に係るリーダライタ100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、リーダライタ100は、本実施形態における非接触通信装置である非接触ICカード200と非接触通信する。
【0035】
リーダライタ100は、アンテナ部110およびRF基板150を備える。RF基板150はさらに、RF通信部120、制御部130、および記憶部140を含む。RF基板150は、本発明のリーダライタが備える通信部の一例である。
【0036】
アンテナ部110は、立体的に組み合わされた4つのループアンテナ111a〜111dからなる。ループアンテナ111a〜111dはいずれも、所定のインダクタンスを有するコイルである。ループアンテナ111a〜111dは、RF基板150から交流電流を供給されることによって、所定の周波数の磁界(搬送波)を発生する。かかるループアンテナ111a〜111dの形状および配置の態様については後述する。
【0037】
RF通信部120は、アンテナ部110を1つの広指向性アンテナとして用いて、非接触ICカード200に電力を供給し、また非接触ICカード200との間で所定のコマンドやデータを送受信する機能を有する。詳細には、RF通信部120は、アンテナ部110から、所定の周波数帯域(例えば13.56MHz)の磁界(搬送波)を発生し、当該搬送波によって非接触ICカード200に電力を供給する。また、RF通信部120は、制御部130の指示に応じて当該搬送波を変調し、非接触ICカード200に所定のコマンドやデータを送信する。さらに、RF通信部120は、アンテナ部110を用いて、非接触ICカード200が負荷変調した搬送波を受信する。さらに、RF通信部120は当該搬送波を復調して、非接触ICカード200から送信されたコマンドやデータを取得し、制御部130に出力する。
【0038】
制御部130は、マイクロプロセッサなどで構成され、リーダライタ100内の各部を制御するとともに、所定の演算処理を行う。かかる制御部130は、記憶部140に記憶されたプログラムに従って動作し、所定のサービスに関する演算処理や、コマンド生成、各種情報の送受信の制御などを実行する。これによって、リーダライタ100は、非接触ICカード200に対するカード検出(ポーリング)、相互認証、データの読み書きなど、一連の処理を実行できる。
【0039】
記憶部140は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ、ハードディスクドライブなどの記憶装置で構成され、各種の情報を永続的または一時的に記憶する。例えば、記憶部140は、非接触通信によって所定のサービスを提供するために制御部130を動作させるためのプログラム、非接触ICカード200から取得したデータ、制御部130によって演算されたデータなどといった各種データを記憶する。
【0040】
リーダライタ100は、この他に、ホスト装置や他の回路などと接続するためのインターフェース(図示せず)を備えてもよい。インターフェースは、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)や、ネットワーク端子などである。かかるインターフェースによって、リーダライタ100は、例えばホスト装置からの送信命令に応じて非接触ICカード200にコマンドを送信したり、非接触ICカード200から取得したデータをホスト装置に送信したりすることができる。
【0041】
一方、リーダライタ100と非接触通信する非接触ICカード200は、アンテナ部210およびICチップ220を備える。非接触ICカード200は、アンテナ部210によって、リーダライタ100からの電磁波(搬送波)を受信する。ICチップ220は、当該搬送波の直流成分を駆動電圧として用いる。また、ICチップ220は、当該搬送波の交流成分をデータとして取り出して処理する。
【0042】
[1−3.リーダライタのアンテナ部の構成]
次に、図2〜図6を参照して、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110について説明する。図2は、本実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110について説明するための模式的な上面図である。
【0043】
図2を参照すると、本実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110は、立体的に組み合わされた4つのループアンテナ111a〜111dからなる。各ループアンテナ111a〜111dは、アンテナ基板113a〜113dに設けられている。ここで、アンテナ基板113a〜113dは、例えば誘電体で形成された三角形状の板状部材である。かかるアンテナ基板113a〜113dは、四角錐形状に組み立てられている。ループアンテナ111a〜111dは、例えば銅やアルミニウムなどの金属による配線からなるコイルであり、アンテナ基板113a〜113d上に設けられる。ループアンテナ111a〜111dのコイルの形状は、アンテナ基板113a〜113dと略同一の三角形状である。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110についてさらに説明するための模式的な斜視図である。図3を参照すると、ループアンテナ111a、111bが設けられるアンテナ基板113a、113bは、四角錐形状の各側面に対応するように組み立てられている。ループアンテナ111c、111dおよびアンテナ基板113c、113dは、アンテナ部110の背面側に位置するため図示されていないが、図示されているループアンテナ111a、111bおよびアンテナ基板113a、113bと同様に組み立てられている。このように、アンテナ部110は、アンテナ基板113a〜113dが立体的に組み合わされた四角錐形状を有する。換言すれば、アンテナ部110が有する四角錐形状の各側面は、アンテナ基板113a〜113dで構成される。
【0045】
RF基板150は、ループアンテナ111a〜111dからなるアンテナ部110を1つのアンテナとして用いて、非接触ICカード200と非接触通信する。四角錐形状に組み立てられたアンテナ基板113a〜113dに設けられるループアンテナ111a〜111dにおいて、それぞれのループ面(コイルのループがなす面)は、相互に傾いている。よって、それぞれのループ面に対して垂直な、ループアンテナ111a〜111dの指向方向Da〜Ddは、相互に異なる方向になる。従って、RF基板150は、相互に異なる4つの指向方向Da〜Ddをあわせもつ広指向性アンテナとしてアンテナ部150を用いて、非接触ICカード200と非接触通信することができる。
【0046】
ここで、リーダライタ100に、非接触ICカード200をかざすときの基準となる平面を、基準面P0とする。基準面P0は、例えば、リーダライタ100に、ICカード200が最も接近しうる面(0距離面)でありうる。本実施形態において、アンテナ基板113a〜113dが組み立てられた四角錐形状の底面は、基準面P0に対して平行である。言い換えると、当該四角錐形状の頂点は、基準面P0に正対する。かかる四角錐形状において、その側面にそれぞれ相当するアンテナ基板113a〜113dは、いずれも基準面P0に対して同一の傾斜角で傾いている。従って、アンテナ基板113a〜113dに設けられたループアンテナ111a〜111dのそれぞれのループ面に対して垂直な指向方向Da〜Ddは、いずれも基準面P0に対して傾く。具体的には、図示するように、ループアンテナ111a〜111dの指向方向Da〜Ddは、基準面P0に向かって放射状に広がる4つの方向になる。
【0047】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110を構成する各ループアンテナによって得られる通信可能範囲を説明するための模式的な縦断面図である。ここでは、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cを例として説明する。図4を参照すると、アンテナ基板113aおよびアンテナ基板113cにそれぞれ設けられた、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cが図示されている。アンテナ基板113aおよびアンテナ基板113cは、四角錐形状に組み立てられたアンテナ基板113a〜113dのうち、当該四角錐形状の対向する2つの側面に相当する。通信可能範囲とは、ループアンテナ111aまたはループアンテナ111cが発生する磁界(搬送波)が、非接触通信するために必要な磁界強度で非接触ICカード200のアンテナ部210に到達しうる範囲である。ループアンテナ111aによる通信可能範囲は通信可能範囲Raとして、ループアンテナ111cによる通信可能範囲は通信可能範囲Rcとして、それぞれ図示されている。
【0048】
ループアンテナ111aが備えられるアンテナ基板113aと、ループアンテナ111cが備えられるアンテナ基板113cとは、角度θをなすように組み立てられている。また、アンテナ基板113aは、さらに、基準面P0と角度φaをなすように組み立てられている。さらに、アンテナ基板113cは、基準面P0と角度φcをなす。上記の角度θ、角度φaおよび角度φcを調整することによって、ループアンテナ111a、111cのそれぞれの指向方向Da、Dcを調整することができる。
【0049】
例えば、図示されているように、基準面P0とアンテナ基板113aとがなす角度φaを調整することによって、指向方向Daに広がる通信可能範囲Raを、基準面P0に対して傾けて、基準面P0と交わらせることができる。この場合、基準面P0上の通信可能範囲RaP0の大きさは、ループアンテナ111aの大きさよりも大きくなる。つまり、ループアンテナ111aのループ面の面積以上に、通信可能範囲RaP0を拡張することができる。同様に、基準面P0とアンテナ基板113cとがなす角度φcを調整することによって、ループアンテナ111cのループ面の面積以上に、基準面P0上の通信可能範囲RcP0を拡張することができる。なお、図4ではループアンテナ111a、111cについて説明しているが、同様に基準面に対する角度を調整することができる、ループアンテナ111b、111dについても、同様にループアンテナのループ面の面積以上に通信可能範囲を拡張することができる。
【0050】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110の配線の一例を説明するための説明図である。図5を参照すると、ループアンテナ111a〜111dは、それぞれ交流電源ACに並列に接続されている。ループアンテナ111a〜111dには、交流電源ACによって、それぞれ電流Ia〜Idが供給される。なお、交流電源ACは、アンテナ部110に交流電流を供給するRF基板150を模式的に表している。ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cは、ループアンテナ111bおよびループアンテナ111dとは逆位相の電流が供給されるように交流電源ACに接続されている。つまり、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cは、図中での左右を入れ替えて交流電源ACに接続されている。これによって、電流Iaおよび電流Icと、電流Ibおよび電流Idとの間では、1/2周期だけ位相がずれる、つまり、電流Iaおよび電流Icと、電流Ibおよび電流Idとは、相互に逆位相になる。例えば、ループアンテナ111aにおいて、上面から見て時計回りとなる電流Iaが流れる瞬間には、ループアンテナ111bにおいては、上面から見て反時計回りとなる電流Ibが流れるといったように、相隣接するループアンテナにおいては、ある瞬間において相互に逆回りの電流が流れる。このような関係は、他の相隣接する2つのループアンテナ、すなわち、ループアンテナ111bとループアンテナ111c、ループアンテナ111cとループアンテナ111d、およびループアンテナ111dとループアンテナ111aのそれぞれの間で、同様に成り立つ。
【0051】
なお、上記で説明したような位相差での電流の供給が可能であれば、ループアンテナ111a〜111dは、交流電源ACに並列ではなく直列で接続されてもよい。また、それぞれのループアンテナに供給される電流の位相差は、上記のように回路配置によって生じるものでなくてもよい。例えば、一部のループアンテナに電流を供給する回路のみに位相反転回路を介在させることによって、相隣接するループアンテナに相互に逆位相の電流が供給されるようにしてもよい。
【0052】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110において、ある瞬間に発生する磁界を説明するための説明図である。図6を参照すると、上面から見たアンテナ部110が図示されている。また、ループアンテナ111a〜111dが発生する磁界Ma〜Mdが、それぞれ模式的な磁力線によって現されている。
【0053】
ここで、電流及び磁界の向きについて定義する。まず、ループアンテナを流れる電流の向きは、アンテナ部110を上面から見た場合の「時計回り」および「反時計回り」によって定義される。また、ループアンテナが発生する磁界の向きは、アンテナ基板113a〜113dが組み立てられた四角錐形状の内部に向かう「内向き」および、当該四角錐形状の外部に向かう「外向き」によって定義される。
【0054】
まず、ループアンテナ111aを例として説明する。図示されている瞬間において、ループアンテナ111aには、矢印で示されているように、時計回りに電流が流れている。この場合、ループアンテナ111aのコイルの内側においては、実線で表される内向きの磁界Maが発生する。一方、磁界Maは、当該磁界を発生するループアンテナ111aのコイルの内側以外では逆の向き、つまり外向きになる。よって、ループアンテナ111aに隣接するループアンテナ111bのコイルの内側では、破線で表される外向きの磁界Maが発生する。
【0055】
ここで、上記で図5を参照して説明したように、ループアンテナ111aに隣接するループアンテナ111bは、ループアンテナ111aとは逆位相の電流が供給されるように配置されている。そのため、この瞬間において、ループアンテナ111bに流れる電流は、矢印で示されているように反時計回りである。従って、ループアンテナ111bのコイルの内側においては、実線で表される外向きの磁界Mbが発生する。この磁界Mbの向きは、ループアンテナ111bのコイルの内側において、破線で表される磁界Maの向きと一致している。同様に、ループアンテナ111aのコイルの内側においても、実線で表される磁界Maが内向きであるのに対して、破線で表される磁界Mbも内向きとなり、2つの磁界の向きは一致する。よって、磁界Maと磁界Mbとは、相互に干渉しないといえる。
【0056】
さらに、上記で図5を参照して説明したように、アンテナ部110を構成するループアンテナ111a〜111dは、相隣接する2つのループアンテナのすべての組み合わせ(ループアンテナ111aとループアンテナ111b、ループアンテナ111bとループアンテナ111c、ループアンテナ111cとループアンテナ111d、ループアンテナ111dとループアンテナ111a)において、相互に逆位相の電流が供給されるように配置されている。従って、相隣接する2つのループアンテナのすべての組み合わせにおいて、相隣接する2つのループアンテナの発生する磁界は、上記の磁界Maおよび磁界Mbの例と同様に、相互に逆位相となる。よって、相隣接する2つのループアンテナの発生する磁界も、相互に干渉しないといえる。
【0057】
[1−4.まとめ]
以上説明した本発明の第1の実施形態においては、異なる方向の指向性を有する複数のループアンテナ111からなるアンテナ部110を、1つの広指向性アンテナとして用いる。かかる構成によって、それぞれのループアンテナ111の指向方向に通信可能範囲を拡張することができる。また、指向方向を調整することによって、リーダライタが設置される環境に適合した形状に通信可能範囲を設定することができる。
【0058】
また、本実施形態において、アンテナ部110を構成する複数のループアンテナ111は、相隣接する2つのループアンテナ111の発生する磁界が相互に逆位相となるように配置される。かかる構成によって、これらのループアンテナの発生する磁界が相互に干渉せず、それぞれのループアンテナの指向方向に通信可能範囲を拡張する効果を十分に得ることができる。
【0059】
また、本実施形態において、アンテナ部110を構成する複数のループアンテナ111は、それぞれアンテナ基板113に設けられ、複数のアンテナ基板113は、立体的に組み合わされる。かかる構成により、複数のループアンテナ111を容易に、かつ安定して立体的に組み合わせることができる。
【0060】
また、本実施形態において、アンテナ基板113は四角錐形状の各側面に対応するように組み合わされている。よって、アンテナ部110は四角錐形状をなす。また、上記四角錐形状の底面は、基準面P0と平行である。かかる構成によって、それぞれのループアンテナ111の指向方向が基準面P0に向かって放射状になり、基準面P0上で放射状に広がる複数の方向に、三次元的に通信可能範囲を拡張することができる。
【0061】
また、本実施形態において、ループアンテナの設置数は4、すなわち偶数である。かかる構成によって、相隣接する2つのループアンテナのすべての組み合わせにおいて、2つのループアンテナの発生する磁界が相互に逆位相になるように、各ループアンテナを配置することができる。
【0062】
なお、アンテナ部の形状を四角錐形状として説明したが、これには限定されない。上記で説明した、基準面P0上で放射状に広がる複数の方向に、三次元的に通信可能範囲を拡張する効果は、ループアンテナが任意の多角錐形状をなす場合に得ることができる。
【0063】
また、ループアンテナの設置数は4として説明したが、この数には限定されない。上記で説明した、相隣接するループアンテナのすべての組み合わせについて、磁界が相互と逆位相になるように配置することができるという効果は、ループアンテナの設置数が6、8など任意の偶数である場合に得ることができる。
【0064】
また、アンテナ基板が組み立てられた四角錐形状は、図面においては正四角錐形状として図示されているが、正四角錐形状には限定されない。任意の方向とループアンテナの指向方向とを一致させるために、アンテナ基板を頂点が偏心した四角錐形状に組み立ててもよい。
【0065】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、リーダライタ100のアンテナ部110を構成するループアンテナ111a〜111dの裏面に、それぞれ磁性体115a〜115dが設けられることを特徴としている。
【0066】
なお、本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態と比べて、ループアンテナ111a〜111dの裏面にそれぞれ磁性体115a〜115dが貼り付けられる点において相違し、その他の機能構成は、第1の実施形態と略同一であるので詳細説明は省略する。
【0067】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るリーダライタ100のアンテナ部110について説明するための模式的な底面図である。アンテナ部110は、四角錐形状に組み立てられたアンテナ基板113a〜113dにそれぞれ設けられた、4つのループアンテナ111a〜111dからなる。本実施形態においては、各ループアンテナ111a〜111dの裏面にあたるアンテナ基板113a〜113dの面に、それぞれ磁性体115a〜115dが設けられている。磁性体115a〜115dは、例えば、樹脂層の中に軟磁性粉末を混入させたいわゆる磁性シートであって、アンテナ基板113a〜113dの面に貼り付けることができる。磁性体115a〜115dは、それぞれループアンテナ111a〜111dと略同一形状とすることができる。
【0068】
なお、ループアンテナ111a〜111dの裏面とは、それぞれのループアンテナにおいて、基準面P0に対向しない面である。ここでいう対向とは、必ずしも平行な面が向かい合うことを意味せず、角度をもって向かい合う面をも含む。かかる定義によれば、ループアンテナ111a〜111dにおいては、アンテナ基板113a〜113dを組み立てた四角錐形状の内側に向かう面が裏面である。
【0069】
続いて、図8および図9を参照して、本実施形態において新たにアンテナ部110に備えられる磁性体115a〜115dの効果について説明する。
【0070】
図8は、各ループアンテナの裏面に磁性体が備えられない場合に、アンテナ部110において発生する磁界を説明するための模式的な縦断面図である。ここでは、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cを例として説明する。図示されているように、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cは、四角錐形状に組み立てられたアンテナ基板113a〜113dのうち、当該四角錐形状の対向する2つの側面に相当する、アンテナ基板113aおよびアンテナ基板113cにそれぞれ設けられている。ある瞬間において、ループアンテナ111aに発生する磁界Maと、ループアンテナ111cに発生する磁界Mcとが、それぞれ模式的な磁力線として図示されている。
【0071】
ここで、ループアンテナ111a〜111dのうち、相隣接する2つのループアンテナの発生する磁界は相互に逆位相である。ループアンテナ111cは、ループアンテナ111aに隣接するループアンテナ111bにさらに隣接するループアンテナである。よって、ループアンテナ111cの発生する磁界は、ループアンテナ111aの発生する磁界に対して逆位相の逆位相、すなわち同位相の磁界となる。この場合、ループアンテナ111aのコイルの内部における磁界Maの向き(ループアンテナ111aとの交点での磁力線の接線として、白い矢印で図示されている)が、上記四角錐形状の中心に向かう瞬間において、ループアンテナ111cのコイルの内部における磁界Mcの向き(ループアンテナ111cとの交点での磁力線の接線として、別の白い矢印で図示されている)も同様に、上記四角錐形状の中心に向かう。つまり、磁界Maと磁界Mcとは、同位相の磁界である。かかる磁界の向きを、図8の模式的な縦断面図において図示すると、磁界Maは反時計回り、磁界Mcは時計回りの向きになる。
【0072】
図示されているように、ループアンテナ111aとループアンテナ111cとは、角度θをもって立体的に組み合わされ、四角錐の対向する2つの側面を形成している。この場合、磁界Maと磁界Mcとが重なり合う部分が生じる。図8の例のように角度θが設定されている場合、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cのコイル内部を含むほとんどの部分において、磁界Maと磁界Mcとが重なり合う。上記の通り、磁界Maは反時計回り、磁界Mcは時計回りであるため、この重なり合う部分において、磁界Maと磁界Mcとは相互に干渉し、互いに弱めあう。磁界Maと磁界Mcとが弱めあう結果、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cによって得られる通信可能範囲が小さくなってしまう。同様の位置関係にあるループアンテナ111bとループアンテナ111dにおいても、同様の現象が発生する。
【0073】
一方、図9は、各ループアンテナの裏面に磁性体が備えられる場合に、アンテナ部110において発生する磁界を説明するための模式的な縦断面図である。ここでは、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cを例として説明する。ループアンテナ111aとループアンテナ111cとの位置関係については、図8に示す場合と同様であるためここでは詳述しない。
【0074】
ここで、磁性体115aおよび磁性体115cは、磁性体に磁界が集中する性質を利用して、磁界Maおよび磁界Mcを制御するために設けられている。例えば、ループアンテナ111aの裏面に貼り付けられた磁性体115aには、ループアンテナ111aのコイル内部に発生した磁界Maが集中する。この結果、磁界Maを示す模式的な磁力線は、磁性体115aに集中することで、ループアンテナ111aの裏面に沿った向きに曲げられる。磁界Maは、ループアンテナ111aの裏面に沿って、基準面P0に近い方の磁性体115aの端部に至り、そこから図中の上方に流れる。図示されているように、磁界Mcについても同様に、ループアンテナ111cの裏面に沿った向きに磁界が曲げられる。
【0075】
このように、磁性体115aおよび磁性体115cによって磁界Maおよび磁界Mcを制御することによって、磁界Maと磁界Mcとが重なり合う部分を少なくすることができる。これによって、磁界Maと磁界Mcとの間の干渉を低減し、ループアンテナ111aおよびループアンテナ111cによって得られる通信可能範囲が小さくなってしまうことを防ぐことができる。なお、同様の位置関係にあるループアンテナ111bとループアンテナ111dにおいても、磁性体115bおよび磁性体115dを設けることによって、同様の効果を得ることができる。
【0076】
以上説明した本発明の第2の実施形態においては、アンテナ部110を構成する複数のループアンテナ111のうち、対向する2つのループアンテナ111の一方または両方の裏面に磁性体115を貼り付ける。かかる構成によって、対向する2つのループアンテナ111の発生する磁界が相互に及ぼす影響を低減し、これらの磁界の干渉を低減することができる。磁界の干渉を低減することによって、アンテナ部110を構成する複数のループアンテナ111が通信可能範囲を拡張する効果を十分に発揮させるができる。
【0077】
なお、磁性体は、必ずしもすべてのループアンテナの裏面に設けられなくてもよい。例えば、四角錐の対向する2つの側面に配置されるループアンテナのいずれか一方のみの裏面に磁性体を設けても、それぞれのループアンテナの発生する磁界相互間の干渉をある程度低減することができる。また、磁性体は、必ずしもループアンテナと略同一形状でなくてもよい。例えば、磁性体が、ループアンテナの一部のみをカバーするような形状であっても、それぞれのループアンテナの発生する磁界相互間の干渉をある程度低減することができる。
【0078】
<3.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、上記実施形態では、各ループアンテナは、三角形状のアンテナ基板に設けられ、アンテナ基板は多角錐形状に組み立てられたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、アンテナ基板は正方形または台形であって、多角錐以外の凸形状に組み立てられてもよい。凸形状は、例えば、円筒状、円錐状、円錐台状、半球状、または、多角錐の上部を切り取った形状など、基準面に向かって凸な形状であれば、どのような形状でもよい。かかる構成は、既存のループアンテナを流用したり、ホスト装置組み込みにあたって空間上の制約がある場合などに、必要に応じて用いることができる。
【0080】
また、上記実施形態では、ループアンテナの設置数を偶数としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ループアンテナの設置数は奇数であってもよい。例えば、3つの方向への通信可能範囲のみを拡張すればよい場合、3つのループアンテナを、四角錐の側面のうち1面を欠いた形状に組み合わせれば、当該3つの方向について上記実施形態と同様に通信可能範囲を拡張することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、リーダライタのアンテナ部を構成するループアンテナが設置されるアンテナ基板が相互に接しているように図示したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ホスト装置組み込みにあたって空間上の制約がある場合などに、アンテナ基板同士は一定の間隔をもって配置されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、複数のループアンテナはそれぞれアンテナ基板に設けられるが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、複数のループアンテナは、アンテナ基板に設けられていない独立したコイルであって、結合部材を介して相互に結合され、立体的に組み合わされていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、非接触通信装置の例として非接触ICカードを用いて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、非接触通信装置として、RFIDタグや、非接触ICチップを搭載した携帯電話などが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 リーダライタ
110 アンテナ部
150 RF基板
111a〜111d ループアンテナ
115a〜115d 磁性体
200 非接触ICカード
Ma〜Md 磁界
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のループコイルが多角錐形状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項2】
複数のループコイルが円錐形状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項3】
複数のループコイルが凸形状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項4】
前記アンテナ部は、前記複数のループコイルがそれぞれ設けられる複数のアンテナ基板をさらに備え、前記複数のアンテナ基板が立体的に組み合わされた立体的形状を有する、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記立体的形状は、多角錐形状であり、
前記アンテナ部は、前記各アンテナ基板が前記多角錐形状の各側面に対応するように組み合わされることにより、前記多角錐形状をなす、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記多角錐形状のアンテナ部の底面が、前記通信装置に前記他の通信装置をかざすときの基準面に対して平行となるように、前記アンテナ部が配置される、請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記複数のループコイルの設置数は、偶数である、請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記各ループコイルの裏面には、磁性体が設けられる、請求項3に記載の通信装置。
【請求項9】
複数のループコイルが相互に角度を有する形状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項10】
複数のループコイルが半球状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項1】
複数のループコイルが多角錐形状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項2】
複数のループコイルが円錐形状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項3】
複数のループコイルが凸形状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項4】
前記アンテナ部は、前記複数のループコイルがそれぞれ設けられる複数のアンテナ基板をさらに備え、前記複数のアンテナ基板が立体的に組み合わされた立体的形状を有する、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記立体的形状は、多角錐形状であり、
前記アンテナ部は、前記各アンテナ基板が前記多角錐形状の各側面に対応するように組み合わされることにより、前記多角錐形状をなす、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記多角錐形状のアンテナ部の底面が、前記通信装置に前記他の通信装置をかざすときの基準面に対して平行となるように、前記アンテナ部が配置される、請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記複数のループコイルの設置数は、偶数である、請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記各ループコイルの裏面には、磁性体が設けられる、請求項3に記載の通信装置。
【請求項9】
複数のループコイルが相互に角度を有する形状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【請求項10】
複数のループコイルが半球状に組み合わされたアンテナ部と、
前記アンテナ部を用いて他の通信装置と非接触通信する通信部と、
を備え、
前記複数のループコイルは、相隣接する2つのループコイルを含み、該2つのループコイルの発生する磁界が相互に逆位相になる、通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−259366(P2011−259366A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134112(P2010−134112)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]