説明

連続ベルトコンベアシステム

【課題】従来連続ベルトコンベアシステムを採用できなかったような狭隘な現場でも採用でき、しかも、その据付工程を短縮し安全性を向上することが可能な連続ベルトコンベアシステムの提供。
【解決手段】トンネル掘削により発生する土砂をベルト14により立坑15まで搬送する伸長可能な土砂搬送部A1を坑内に配置するとともに、その土砂を地上に搬出する垂直搬出コンベアBを立坑15内に配置し、上記土砂搬送部A1の伸長に伴って上記ベルト14を送り出しかつ追加ベルトを収納しストックするベルトカセット部A5を備えてなる連続ベルトコンベアシステムにおいて、上記立坑15下と地上との間において上記ベルト14を縦送りするベルト垂直送り部A3を設け、上記ベルトカセット部A5を地上に配置した連続ベルトコンベアシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削時に発生する土砂(掘削ずり)を搬送しながらその先端の積込み部分を延伸していくことが可能な、連続ベルトコンベアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、NATM,TBM,シールド掘削等によるトンネル掘削現場において、掘削の進行に伴い発生する土砂を搬出する土砂搬出設備の一つとして、連続ベルトコンベアシステム(たとえば特許文献1)が採用されている。
【0003】
その連続ベルトコンベアシステムは、たとえば、図9に示すように、トンネル坑内1の切羽側に、土砂を搬送する伸長可能な土砂搬送部2を設けるとともに、ベルトを駆動する駆動部3をその土砂搬送部2の基端側に設けているものである。
また、上記駆動部3を挟んだ上記土砂搬送部2の反対側の坑内5に、上記土砂搬送部2の伸長に伴ってベルトを送り出すとともに、必要な追加ベルトを収納するカセット部4を、上記土砂搬送部2と同一の平面上に位置させて配置している。
【特許文献1】特開平11−210382号公報
【特許文献2】特許第3557496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような連続ベルトコンベアシステムは、たとえば、特許文献2に開示されているように、搬送路を急曲線に対応させて長距離搬送を行うことも可能であるが、その設置のためには、少なくとも、上記のように土砂搬送部2とカセット部4とを、同一平面上に配置する必要があったので、相当のスペースを確保できることが条件とされていた。
【0005】
したがって、スペースが不十分な狭隘な現場では、土砂搬送設備として連続ベルトコンベアシステムを採用することができなかった。
また、坑内にカセット部4を配置した場合、その据付け工事を狭隘なトンネル断面内で行わざるを得ないので、その工程が長期化し、安全確保も難しくなる。
【0006】
そこで、本発明は、従来連続ベルトコンベアシステムを採用できなかったような狭隘な現場でも採用でき、しかも、その据付工程を短縮し安全性を向上することが可能な連続ベルトコンベアシステムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明は、トンネル掘削により発生する土砂をベルト14により立坑15まで搬送する伸長可能な土砂搬送部A1を坑内に配置するとともに、その土砂を地上に搬出する垂直搬出コンベアBを立坑15内に配置し、上記土砂搬送部A1の伸長に伴って上記ベルト14を送り出しかつ追加ベルトを収納しストックするベルトカセット部A5を備えてなる連続ベルトコンベアシステムにおいて、上記立坑15下と地上との間において上記ベルト14を縦送りするベルト垂直送り部A3を設け、上記ベルトカセット部A5を地上に配置した連続ベルトコンベアシステムである。
【0008】
請求項2記載の本発明は、上記土砂搬送部A1と上記ベルトカセット部A5の間にベルト変位部A4を設けることにより、上記ベルトカセット部A5を上記土砂搬送部A1が配置されている仮想垂直面に対して偏位配置している請求項1記載の連続ベルトコンベアシステムである。
【0009】
請求項3記載の本発明は、上記ベルト変位部A4が地上に配置されている請求項1または2記載の連続ベルトコンベアシステムである。
【0010】
請求項4記載の本発明は、上記ベルト変位部A4が、上記ベルト垂直送り部A3の上方に立設され、該ベルト垂直送り部A3より垂直に送られるキャリアベルト14aを、キャリアベルト変位装置25によって、水平方向に変位させて上記ベルトカセット部A5に送出し、また、そのベルトカセット部A5からのリターンベルト14bを、リターンベルト変位装置26によって、水平方向に変位させて上記ベルト垂直送り部A3に送出するようにしてなる請求項3記載の連続ベルトコンベアシステムである。
【0011】
請求項5記載の本発明は、上記ベルト変位部A4が地下に配置されている請求項1または2記載の連続ベルトコンベアシステムである。
【0012】
請求項6記載の本発明は、2組の上記ベルト変位部A4,A4’が、地上と地下とに分割して配置されている請求項1または2記載の連続ベルトコンベアシステムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明連続ベルトコンベアシステムは、狭隘な現場でも採用でき、しかも、その据付工程を短縮し安全性を向上することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
トンネル掘削により発生する土砂をベルト14により立坑15まで搬送する伸長可能な土砂搬送部A1を坑内に配置するとともに、その土砂を地上に搬出する垂直搬出コンベアBを立坑15内に配置し、上記土砂搬送部A1の伸長に伴って上記ベルト14を送り出しかつ追加ベルトを収納しストックするベルトカセット部A5を備えてなる連続ベルトコンベアシステムにおいて、上記立坑15下と地上との間において上記ベルト14を縦送りするベルト垂直送り部A3を設け、上記ベルトカセット部A5を地上に配置した連続ベルトコンベアシステム。
【実施例】
【0015】
本実施例の連続ベルトコンベアシステムAは、シールド現場に設置されているもので、掘削に伴い前進するシールドマシン11のシールドベルコン11aの後方に配置され、その掘削の進行に伴って伸張可能な土砂搬送部A1によって土砂を立坑12まで搬送するものである。
立坑12まで搬送された土砂は、上記土砂搬送部A1の終端に対向させて配置されている複数のバケットを備えた垂直搬出コンベアBにより地上に搬出され、さらにその垂直搬出コンベアBの終端に対向させて配置されいる横引きベルトコンベアCを介して土砂ピット13に排出されるようになっている(図1)。
【0016】
上記連続ベルトコンベアシステムAは、土砂を搬送するベルト14を有する坑内に配置された上記土砂搬送部A1と、そのベルト14を駆動する駆動部A2と、上記垂直搬出コンベアBの背面側を通して、立坑15下と地上との間においてこのベルト14を縦送りするベルト垂直送り部A3と、地上においてベルト14を捻転し水平方向(図1,2において紙面に垂直な方向)に変位(移動)させるベルト変位部A4と、上記土砂搬送部A1の伸長に伴ってベルト14を送り出すとともに、追加ベルトを収納しストックするベルトカセット部A5とからなる(図1,2)。
【0017】
上記土砂搬送部A1、駆動部A2、ベルト垂直送り部A3、ベルト変位部A4、およびベルトカセット部A5により形成されているベルト走行路は、上記ベルト変位部A4によってベルト14を水平方向に変位させることで、上記土砂搬送部A1(のキャリアベルト14a)、垂直搬出コンベアB、および横引きベルトコンベアCにより形成される土砂搬送路を迂回するよう構成されている。
【0018】
すなわち、上記土砂搬送部A1とベルトカセット部A5の間に設けたベルト変位部A4で、上記ベルト14を水平方向に変位させたことにより、上記ベルトカセット部A5を、上記土砂搬出路に干渉しない位置に、換言すれば、土砂搬出路が形成されている仮想垂直面(図1,2において紙面に平行な面)に対して偏位配置しているものである(図5)。
本連続ベルトコンベアシステムAは、このベルト変位部A4を設けることで、ベルトカセット部A5を土砂搬送部A1と分離して地上配置できるようにした点に特徴を有するものである。
【0019】
以下、上記連続ベルトコンベアシステムAの詳細な構成を説明する。
【0020】
上記土砂搬送部A1は、トンネルの掘削に伴い前進する台車16に設けたヘッドローラ17と、上記垂直搬出コンベアBの下端の積込み部のバケットに対向する位置に設けたテールローラ17’の間に上記ベルト14を掛け回しているもので、上記シールドマシン11のシールドベルコン11aより受け渡される土砂を上記垂直搬出コンベアBのバケットに投入する。
【0021】
上記駆動部A2は、駆動ローラ18により上記ベルト14を駆動するもので、これにより駆動され土砂を運搬するキャリアベルト14aは、上記土砂搬送部A1において土砂を搬送した後、ローラ19,20,21により上記垂直搬出コンベアBの背面側を通じて上記ベルト垂直送り部A3、ベルト変位部A4,ベルトカセット部A5へと順に送られる。
ベルトカセット部A5から土砂搬送部A1へ送られるリターンベルト14bは、そのベルトカセット部A5からベルト変位部A4,ベルト垂直送り部A3を通じ立坑15下へ送られるとともに、ローラ22,23,24によって垂直搬出コンベアBおよび駆動部A2の下側を案内され上記土砂搬送部A1のヘッドローラ17へと送られる。
【0022】
上記ベルト垂直送り部A3には、上記キャリアベルト14aとリターンベルト14bの両面を押さえる押さえローラ18,19とそれらの両側縁部を押さえる縁部押さえローラ20,21を備えた、複数のベルト案内装置A3’が設けられている。
【0023】
上記ベルト変位部A4は、ベルト垂直送り部A3の上方に立設されているものでベルト垂直送り部A3により垂直に送られる上記キャリアベルト14aを、キャリアベルト変位装置25によって、水平方向(図1,2,4では手前側、図5では下方)に変位させて上記ベルトカセット部A5に送出し、また、そのベルトカセット部A5からのリターンベルト14bを、リターンベルト変位装置26によって、水平方向に変位させて上記ベルト垂直送り部A3に送出する。
【0024】
上記キャリアベルト変位装置25は、互いに直交させて軸支したプーリ27,28を有する支持枠29と、その側方(図5で下側)の上記ベルトカセット部A5に対向する位置に立設され、互いに直交させて軸支したプーリ30,31を有する支持枠32とからなる。
上記支持枠29は、立坑15下から、その両面を図4,5で左右方向に向けた状態で送られてきたキャリアベルト14aを、上記プーリ27,28によって上方に送りながら反時計回りに90°捻転して、上記支持枠32へ案内する。
その支持枠32は、支持枠29からのキャリアベルト14aを、上記プーリ30,31によって下方に送りながら時計回りに90°捻転し、上記ベルトカセット部A5へ案内する。
【0025】
上記リターンベルト変位装置26は、上記支持枠32を挟んだ上記ベルトカセット部A5の反対側の位置(図5で支持枠32の左側)に立設され、互いに直交させて軸支したプーリ35,36を有する支持枠37と、その側方(図5で上側)に立設され、互いに直交させてプーリ38,39を軸支した支持枠40とからなる。
上記支持枠37は、プーリ33,34によって上方に送って上記支持枠32の上側を通して上記ベルトカセット部A5から送られるリターンベルト14bを、上記プーリ35,36によって反時計回りに90°捻転し、上記支持枠40へ案内する。
その支持枠40は、支持枠37からのリターンベルト14bを、上記プーリ38,39により下方に送りながら反時計回りに90°捻転し、上記ベルト垂直送り部A3へ案内する。
【0026】
上記ベルトカセット部A5は、300mのベルトをストック可能なもので、上記土砂搬送部A1の伸長に伴い、カセット本体を収縮させて上記ベルト14が引き出されるようになっている。シールドマシン11による掘削が150m進みストックされた300mぶんのベルト14が全て引き出された後には、順次新しいベルト14が追加される。
【0027】
上記の通り、本連続ベルトコンベアシステムAは、ベルト変位部A4を設けることにより、ベルトカセット部A5を、土砂搬出路に干渉させることなく土砂搬送部A1と異なる平面上に分離配置したので、従来連続ベルトコンベアシステムを採用できなかったような狭隘な現場でも採用でき、しかも、その据付工程を短縮し安全性を向上することが可能である。
【0028】
上記ベルト変位部A4の配置は、現場の状況に応じて適宜変更することもできる。
図7(a)は、立坑上にベルト変位部A4を地上配置した、上記連続ベルトコンベアシステムAの概略図であるが、たとえば、同図(b)の連続ベルトコンベアシステムDのように、立坑下にベルト変位部A4を地下配置したり、同図(c)の連続ベルトコンベアシステムEのように、地上と地下の2組のベルト変位部A4およびA4’に分割して、立坑の上下2箇所でベルト14を適宜捻転しまた方向を変えて送るように配置することも可能である。
さらには、同図(d)の連続ベルトコンベアシステムFのように、ベルト垂直送り部をその下半部A3と上半部A3’とに分離し、それらの間に、ベルト変位部A4を地下配置することもできる。
また、同図(e)の連続ベルトコンベアシステムGのように、ベルト変位部A4は、立坑の直上位置に配置するのではなく、水平搬送部A6を介して水平方向に離れた位置に地上配置するようにしてもよい。
【0029】
また、ベルトカセット部A5は、土砂搬送部A1に対し平行にして配置するほか、ベルト変位部A4のベルト14を捻転しあるいは方向を変える各プーリを、適宜配置することによって、土砂搬送部A1に対し直交する方向に向けて配置したシステムFやHとしたり(図7(d)、図8(a))、また、任意の方向に斜めに向けて配置するシステムIやJとすること(図8(b)、(c))ができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る連続ベルトコンベアシステムの全体側面図である。
【図2】同上の拡大側面図である。
【図3】同上の駆動部の拡大側面図である。
【図4】同上のベルト変位部の拡大側面図である。
【図5】その平面図である。
【図6】その概略構成を示す斜視図である。
【図7】(a)は、上記ベルトコンベアシステムの全体配置を示す概略斜視図、(b)〜(e)は、それぞれ、連続ベルトコンベアシステムの他の配置例を示す概略斜視図である。
【図8】(a)〜(c)はそれぞれ、さらに他の配置例を示す概略斜視図である。
【図9】従来の連続ベルトコンベアシステムの配置を示す全体側面図である。
【符号の説明】
【0031】
A,D,E,F,G,H,I,H 連続ベルトコンベアシステム
A1 土砂搬送部
A2 駆動部
A3 ベルト垂直送り部
A4 ベルト変位部
A5 ベルトカセット部
B 垂直搬出コンベア
C 横引きベルトコンベア
11 シールドマシン
13 土砂ピット
14 ベルト
14a キャリアベルト
14b リターンベルト
15 立坑
25 キャリアベルト変位装置
26 リターンベルト変位装置
29,32、37,40 支持枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削により発生する土砂をベルトにより立坑まで搬送する伸長可能な土砂搬送部を坑内に配置するとともに、その土砂を地上に搬出する垂直搬出コンベアを立坑内に配置し、上記土砂搬送部の伸長に伴って上記ベルトを送り出しかつ追加ベルトを収納しストックするベルトカセット部を備えてなる連続ベルトコンベアシステムにおいて、
上記立坑下と地上との間において上記ベルトを縦送りするベルト垂直送り部を設け、上記ベルトカセット部を地上に配置したことを特徴とする連続ベルトコンベアシステム。
【請求項2】
上記土砂搬送部と上記ベルトカセット部の間にベルト変位部を設けることにより、上記ベルトカセット部を上記土砂搬送部が配置されている仮想垂直面に対して偏位配置していることを特徴とする請求項1記載の連続ベルトコンベアシステム。
【請求項3】
上記ベルト変位部が地上に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の連続ベルトコンベアシステム。
【請求項4】
上記ベルト変位部が、上記ベルト垂直送り部の上方に立設され、該ベルト垂直送り部より垂直に送られるキャリアベルトを、キャリアベルト変位装置によって、水平方向に変位させて上記ベルトカセット部に送出し、また、そのベルトカセット部からのリターンベルトを、リターンベルト変位装置によって、水平方向に変位させて上記ベルト垂直送り部に送出するようにしてなることを特徴とする請求項3記載の連続ベルトコンベアシステム。
【請求項5】
上記ベルト変位部が地下に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の連続ベルトコンベアシステム。
【請求項6】
2組の上記ベルト変位部が、地上と地下とに分割して配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の連続ベルトコンベアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−214928(P2008−214928A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52500(P2007−52500)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】