説明

連続入力可能なゼンマイ装置

【課題】連続した入力でもゼンマイに蓄力でき、総和で連続した出力が可能であり、逆に、間欠的に出力を出したり、ゼンマイの特長を生かして出力を大きく(短時間)、小さく(長時間)したりできる連続入力可能なゼンマイ装置を提供する。
【解決手段】連続する一の入力軸に対して、その入力を動力源としてゼンマイに蓄力される複数の間欠出力装置が選択クラッチ機構を中心に介して配置されてなり、該選択クラッチ機構は、間欠出力装置のうちの一においてゼンマイが完全に巻締められる前に、次の間欠出力装置においてゼンマイを巻き取るように、入力軸が交互にないし順次にいずれかの間欠出力装置に変更して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゼンマイに機械的エネルギーを蓄え、そのエネルギーを出力として放出し利用できるとともに、連続する入力でもゼンマイに蓄力が可能であるゼンマイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼンマイ装置は、一般的に、出力軸と一体回転ドラムにゼンマイのほゞ全体を弾力に抗して巻き取らせることにより、ゼンマイに機械的エネルギーを蓄え、入力を停止し蓄力を解放して出力が得られるようにしたもので、間欠出力となるものであった。また、この場合、出力軸に平行であってゼンマイが初期的に巻かれている自由回転ドラムが装備されるが、入力により出力軸側の回転ドラムに過剰にゼンマイが巻き取られると、自由回転ドラムにおいて、ゼンマイが突っ張る等により巻き戻り不能となり酷いときには破損するトラブルが生じる難点があった。
【0003】
図2は、この問題を解決するために、本願発明と同時並行的に開発し、先行して出願したものである(2008年10月8日提出:特願2008−261289)。未公開ではあって所謂特許文献とはなっていないものの、本願発明の趣旨・内容を明らかにするために説明すると、入力軸107の先端には原動歯車123が、出力軸112の先端には従動歯車129が取り付けられ、また、その出力軸112には複合ドラム106が固着され、それには複数のゼンマイ108a,108b,108b,108bを巻き取る溝110a,110b,110b,110bを有する。他方、これに対応する側には、1溝の自由回転の単一ドラム120と、3溝の自由回転の複合ドラム122とが軸承されている。
【0004】
同図ではゼンマイが初期時点にあり、自由回転ドラム120と122に原所的に巻着されているが、入力軸107の回転により出力軸側の複合ドラム106に各ゼンマイを巻取ると、単一ドラム120において先行して巻き戻しが完了するようにした関係で、そこでゼンマイ108a,108a,108aに突っ張りが生じて巻き戻し能力を喪失したとしても、他のゼンマイ108bがゼンマイ108aより多く(長く)巻かれているためにゼンマイ108bは突張らず、正常に巻き戻る力を有し、巻き戻ることで回復し正常に出力が得られる。つまり、この優勢な巻き戻りによりゼンマイ108aの巻き戻り不能が解消されるようにしたものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いずれにしても(図2のものを含め)、従来のゼンマイによる入出力装置によれば、入力を解放することにより出力を得ることが基本であるから、入力中には出力が中断され、出力中は入力が中断されて不都合であり、殊に、連続した入力が可能な風力、水力、電動モーター等の力を利用するとなると、入力軸を遊ばせて間欠的に入力損失が生じるという問題があった。この点に関して、従来、連続して回転している軸を利用してゼンマイを巻き取る場合は、スリップ機構を設けてもエネルギーが無駄に消費されるものであった。
【0006】
また、本出願人においては、ゼンマイを過剰に巻き取ることによる出力不能やゼンマイの破損等のトラブルを防止するため、図2のもの以外に別途の手段を見いだすことも重要であると考えられた。この点に関しては、従来、ゼンマイの破損防止のため、ゼンマイの使用範囲を制限する場合が多く、特に、玩具のプルバック機構などでは、ゼンマイの外端を固定せずに、巻きすぎるとスリップする機構として、カチ・カチの音で巻き取り完了のサインを出しゼンマイの破断を防止していたが、これでは複雑過ぎるため、この問題等の解決を一層図る必要を痛感したからであった。
【0007】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、図2に示した手段の具備の有無にかかわらず、出力側でゼンマイの過剰巻取りがあって、巻き戻しに支承が生じたとしても、自動的に回復が可能であり、また、連続した入力でもゼンマイに蓄力でき、総和で連続した出力が可能であり、逆に、間欠的に出力を出したり、ゼンマイの特長を生かして出力を大きく(短時間)、小さく(長時間)したりできる連続入力可能なゼンマイ装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明は、連続する一の入力軸に対して、その入力を動力源としてゼンマイに蓄力される複数の間欠出力装置が選択クラッチ機構を中心に介して配置されてなり、該選択クラッチ機構は、間欠出力装置のうちの一においてゼンマイが完全に巻締められる前に、次の間欠出力装置においてゼンマイを巻き取るように、入力軸が交互にないし順次にいずれかの間欠出力装置に変更して接続するように構成されていることを特徴とする連続入力可能なゼンマイ装置を提供する。
【0009】
複数の間欠出力装置が配置され、選択クラッチ機構を介して入力軸の動力がいずれか一の間欠出力装置に接続され、その接続が間欠出力装置が2個であれば交互に、3個以上であると順次になされるために、入力が無駄なく連続的になされ、また、出力が間欠的となる場合と連続的となる場合とに設定できる。しかも、ゼンマイの戻りに支承が生じたとしても、後続するゼンマイの戻りで回復されることになる。
【0010】
請求項2、請求項3によれば、間欠出力装置が2個の場合において、合理的な構造となる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、この発明によれば、出力側でゼンマイの過剰巻取りがあって、巻き戻しに支承が生じたとしても、即回復が可能であるため、出力不能となるトラブルを確実に防止でき、また、連続した入力でもゼンマイに蓄力できので、入力損失がなく合理的、経済的となり、さらに、総和で連続した出力が可能であり、逆に、間欠的に出力を出したり、ゼンマイの特長を生かして出力を大きく、または小さくしたりできるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施に使用されるゼンマイのばねの種類としては、ゼンマイばね、定荷重ばね、又は定トルクばねを対象とする。また、用途については特に限定されるものではないが、水力(水車)を利用したゼンマイ蓄力装置、風力を利用したゼンマイ蓄力装置、人力を利用したゼンマイ蓄力装置等が好適に実施される。また、間欠出力装置は2又はそれを超える数個においてそれが選択クラッチ機構を中心に配置されるが、その個数に応じて選択クラッチ機構の構造が異なってくる。次に、2個の場合について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、一実施例を示したもので、本体ケース1内に、第1・第2の2つの間欠出力装置2,3を横方向の両端に同軸上に位置して設けるとともに、連続回転する入力軸7による入力が交互となるようタイミングをとるために、両装置2,3の間に選択クラッチ機構10が設けられる。入力軸7は、一方の間欠出力装置2側(図では向かって右側)において設けられ、その入力車9が本体ケース1の一端から突出して具備される。入力軸7は、両間欠出力装置2,3にばかりでなく、選択クラッチ機構10にも及ぶようになっている。両出力軸12,13は同軸上にあるが、入力軸7はそれと平行に設けられる。両間欠出力装置2,3ついてそれぞれ出力発電機4,4が駆動されるようにそれが本体ケース1に設けられる。
【0014】
この実施例の場合は、両間欠出力装置2,3について、複数のゼンマイ8a,8b,8b,8bに蓄力する複合ドラム6,6が用いられ、これに対応する単一ドラム(図2の符号120に当たる)および複合ドラム(符号122に当たる)は省略した。しかし、図2に記載の構造のものによることは必ずしも要しない。これからは主として入出力切替について説明する。それには選択クラッチ機構10と、その往復駆動装置19等が具備される。
【0015】
選択クラッチ機構10については、入力軸7の先端部に一方向接続クラッチ15を介して同一軸16が接続され、同一軸16には選択クラッチ盤14が一体回転可能で左右スライド可能に設けられるほか、第1原動歯車23と第2原動歯車24とが同一軸16とは回転フリーでスライド不能に取り付けられている。選択クラッチ盤14は、第1・第2の回転駆動基板17,18がスライド基材21を間にして背中合わせに一体化したもので、両原動歯車23,24の間を左右スライド範囲として置かれている。
【0016】
間欠出力装置2,3の両出力軸12,13の先端には、トルクリミター27,27を介して前記の第1原動歯車23および第2原動歯車24にそれぞれ対応する第1従動歯車29および第2従動歯車30が設けられるので、選択クラッチ盤14による原動歯車23,24のいずれかの選択により、その側の従動歯車29又は30、つまりその側の間欠出力装置2又は3に入力軸7の回転が及び、他方の間欠出力装置3又は2では出力する。
【0017】
このように入力軸7からの回転力の伝達は、選択クラッチ盤14がいずれの原動歯車23,24に接続するかによる。これについては、回転駆動基板17,18にそれぞれ複数の突起33,33が突設され、第1原動歯車23および第2原動歯車24には突起33,33が突入する掛止孔35,35が設けられるので、選択クラッチ盤14がスライドした側において、突起33と掛止孔35が結合して、入力軸7による回転駆動基板17,18の回転が一方の原動歯車23又は24に伝達される。その結果、一方の間欠出力装置2又は3でゼンマイに蓄力し、他方の間欠出力装置3又は2ではゼンマイが解放されて出力する。
【0018】
選択クラッチ盤14の下方には、往復駆動装置19の主体となるカムドラム41が設けられ、その外周面には外周両側で往復となるように進路変向する案内溝42が設けられている。カムドラム41は、入力軸7により同時に減速して回転するように軸承され、そのために、入力軸7との間には減速機構20が設けられる。これについては、入力軸7の先端細軸に小歯車43を取り付け、それに噛み合う大歯車45の回転軸にも小歯車49を取り付け、それに噛み合う大歯車51がカムドラム41の回転軸53に取り付けられる。
【0019】
カムドラム41と選択クラッチ盤14との間には、スライド基材21が常時連結するスライダー43が介在しており、スライダー43は、案内横軸55に沿って左右交互に移動するように嵌合する筒形であって、その下端にカムドラム41の案内溝42と常時係合する案内突起57が設けられる。案内溝42には、両面で斜めに進路変向部42a,42aが設けられているので、カムドラム41の回転により、進路変向部42aが案内突起57に至ると、それを一方に押しやりその方向側で選択クラッチ盤14が原動歯車23又は24と接続し、他方側では原動歯車24又は23を解放する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の連続入力可能なゼンマイ駆動装置を示す部分的に断面した正面図である。
【図2】この発明の要点を明らかにするために、本出願人が既に出願したゼンマイ装置の断面参考図である。
【符号の説明】
【0021】
2,3 間欠出力装置
7 入力軸
10 選択クラッチ機構
12,13 出力軸
14 選択クラッチ盤
16 同一軸
19 往復駆動装置
20 減速機構
41 カムドラム
42 案内溝
42a 進路変向部
57 案内突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する一の入力軸に対して、その入力を動力源としてゼンマイに蓄力される複数の間欠出力装置が選択クラッチ機構を中心に介して配置されてなり、該選択クラッチ機構は、間欠出力装置のうちの一においてゼンマイが完全に巻締められる前に、次の間欠出力装置においてゼンマイを巻き取るように、交互にないし順次にいずれかの間欠出力装置に変更して接続するように構成されていることを特徴とする連続入力可能なゼンマイ装置。
【請求項2】
同軸上に出力軸が位置するように左右一対において間欠出力装置を配置するとともに、出力軸と平行に入力軸を設けることにより前記選択クラッチ機構が構成され、その構成については、入力軸の先端の同一軸に両間欠出力装置の各原動歯車を離反して且つ回転フリーに取り付け、両原動歯車の間においては、入力軸にいずれか一方の原動歯車にスライドで交互に接続する選択クラッチ盤を同一軸に固定して取り付け、選択クラッチ盤には、入力軸の回転を動力源として、選択クラッチ盤を交互にスライドさせる往復駆動装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の連続入力可能なゼンマイ装置。
【請求項3】
前記往復駆動装置は、入力軸に平行にカムドラムを設けるとともに、その間にカムドラムを低速回転させる減速機構を設け、カムドラムの外周面に案内溝を設けるとともに、案内溝に相対向する両面に両方で往復となる進路変向部を形成し、選択クラッチ盤には案内溝に常時係合する案内突起を具備してなることを特徴とする請求項2記載の連続入力可能なゼンマイ装置。










【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−151275(P2010−151275A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332012(P2008−332012)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(303031169)東洋ゼンマイ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】