説明

連続水相と分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態の化粧品組成物、及びその調製方法

【課題】連続水相がリポソームの分散液を含有し、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含み、また油相が極性脂質又はあまり非極性ではない脂質で構成される、水中油型エマルジョンを提供すること。
【解決手段】本発明は、連続水相と分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態の組成物において、前記水相が、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル、脂肪アルコールポリプロピレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される非イオン性界面活性剤、並びに少なくとも1種の水溶性形態の多糖類の存在下で、リポソームを含有することを特徴とする組成物に関する。本発明はまた、この組成物を調製する方法にも関する。本発明はまた、この組成物の水相の調製に使用可能なリポソームの安定な分散液にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、リポソームを含有する連続水相と分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態の化粧品組成物、及びその調製方法に関する。
【0002】
リポソームは、単層小胞、すなわち包膜を形成する両親媒性脂質の単一の二重層で構成される小胞、又は多層小胞、すなわちいくつかの重層した二重層で構成される小胞である。
【0003】
親水性の頭部及び疎水基で構成されている両親媒性脂質の構造、並びにその二重層における配列が、これらの二重層内の親水性部分又は疎水性部分の形成を可能にする。
【0004】
リポソームの周知の欠点は、それらが分散されている媒体の組成、とりわけそれらを分解することができる化合物、特に、その安定性を改善するためにエマルジョン等の分散系に添加される界面活性剤の存在に対する感受性である。
【0005】
水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物は、通常、その乾燥を誘引することなく快適な質感を有する。
【0006】
このため、これらの水中油型エマルジョンの連続相にリポソームを組み込むことにより、当業者は、そのように調製された化粧品組成物、例えばクリームの種々の質感を作り出すことができる。
【0007】
さらに、リポソームはまた、表皮における有効薬剤のベクター化のための化粧品用途において大きな価値を有する。
【0008】
しかし、水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物の連続水相における界面活性剤の存在に対するリポソームの感受性は、当業者に対し配合上の大きな制限を課す。
【0009】
これまで、これらの制限により、リポソームの化粧品組成物への組み込みを望む当業者は、リポソームを分解することができる界面活性剤を排除するか、或いは、特にエマルジョンの場合、該エマルジョンの油相として、リポソームを構成する両親媒性脂質が極めて溶けにくい非常に非極性の油のみを、例えばシリコーン油又はスクアランを使用するようになった。
【0010】
連続水相が分散リポソームを含み、分散油相がより非極性の物質より成る、最も具体的には、一般に化粧品エマルジョン配合物に好まれているトリグリセリドより成る、安定した水中油型(O/W)エマルジョンの形態の化粧品組成物を開発する真の必要性が存在する。
【0011】
アルギン酸ゲルにおけるリポソームの使用は従来技術から知られている。
【0012】
著者ら(Cohenら、Biochimica et Biophysica Acta, 1063(1991)95〜102)は、Ca2+イオンで架橋されたアルギン酸ナトリウムのマトリックスに単層リポソーム(その二重層は特にパルミトイルホスファチジルコリンで構成される)が被包されている系を研究した。
【0013】
出願人は、連続水相中にリポソームを含有する水中油型エマルジョンの水相への、水溶性形態の多糖類、最も具体的にはアルギネート、好ましくはアルギン酸アルカリ金属の組み込みが、該水中油型エマルジョンの同じ連続水相中に界面活性剤の存在下で投入されたリポソームを保護する役割を果たすことを実証した。
【0014】
このように、全く驚くべきことに、出願人は、リポソームエマルジョンの連続水相に溶解した水溶性形態の多糖類が、該連続相に存在する界面活性剤の作用からリポソームを保護することを実証した。
【0015】
したがって、本発明の本質的な目的は、連続水相がリポソームの分散液を含有し、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含み、また油相が極性脂質又はあまり非極性ではない脂質で構成される、水中油型エマルジョンを提供することである。
【0016】
この結果は、エマルジョンの安定性を確実にするために同じ水相に存在する界面活性剤の作用からリポソームを保護する溶解した状態の多糖類を、本発明の化粧品組成物の水相中に組み込むことにより得られる。
【0017】
したがって、第1の主題によれば、本発明は連続水相と分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態の組成物に関する。
【0018】
この第1の主題の本質的な特徴によれば、この組成物の水相は、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル、脂肪アルコールポリプロピレングリコールエーテル、及びこれらの混合物より成る群から選択される非イオン性界面活性剤、並びに少なくとも1種の水溶性形態の多糖類の存在下で、リポソームを含有する。
【0019】
第2の主題によれば、本発明はそのようなエマルジョンを調製する方法に関する。
【0020】
より具体的には、この方法は、エマルジョンの水相中に分散したリポソームと、上に定義された脂肪アルコールポリアルキレングリコールエーテルから選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤とを含有する安定したエマルジョンの調製を可能にし、前記方法は、一方で前記リポソーム及び少なくとも1種の水溶性形態の多糖類を含有する水相を調製するステップと、また他方で前記非イオン性界面活性剤で安定化されたストックエマルジョンを調製するステップと、前記ストックエマルジョンを、前記リポソームを含有する前記水相と混合し、それにより前記安定なエマルジョンを得るステップとを含む。
【0021】
さらに、第3の主題によれば、本発明は、特に第1の主題の化粧品組成物の調製を可能にするリポソームの安定な分散液に関する。
【0022】
本発明の他の特質及び利点は、後述する詳細な説明及び実施例を考慮して明らかとなる。
【0023】
リポソームは、単層であっても多重層であってもよく、好ましくは多重層リポソームである。
【0024】
本発明によるリポソームは、リポソームの懸濁液としてレーザ粒度分布測定により測定するか、又は凍結切片法でのサンプル調製による透過型電子顕微鏡により測定して、約150μmから200μmの直径を有する。
【0025】
本発明によれば、リポソームを形成する脂質は、両親媒性脂質、すなわち、親水基(平等にイオン性であっても非イオン性であってもよい)と親油基とを有する分子である。
【0026】
本明細書及び請求項において、「脂質」という用語は、親油基、つまり5個を超える炭素原子を含有する「脂肪族」炭素鎖を含む全ての物質を包含する。
【0027】
同様に、本発明の目的において、「脂肪アルコール」という用語は、炭素鎖が少なくとも5個の炭素原子を含有するアルコールを意味するよう意図される。
【0028】
両親媒性脂質は、リン脂質、ホスホアミノ脂質、糖脂質、又はこれらの脂質の混合物であってもよい。そのような物質は、例えば、卵レシチン、大豆レシチン、スフィンゴミエリン、セレブロシド、又はオキシエチレン化ステアリン酸ポリグリセリルより成る。
【0029】
リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、又はそれらの混合物であってもよい。
【0030】
リポソームの二重層は、好ましくはレシチン由来、特に大豆レシチン由来のリン脂質より成る。
【0031】
好ましい実施形態において、これらのリン脂質は2種類の大豆レシチンの混合物であり、大豆レシチンの第1の種類は、90%を超えるホスファチジルコリンを含むリン脂質混合物であり、第2の種類は15%から30%の間のホスファチジルコリンを含むリン脂質混合物である。
【0032】
本発明のリポソームに使用されるものに従ったレシチンは、例えば、ルーカスマイヤー(Lucas Meyer)社によりEmulmetik(登録商標)300及びEmulmetik(登録商標)930の商標で販売されている。
【0033】
非イオン性界面活性剤は、有利には、異なるHLBを有利に有する脂肪アルコールポリアルキレングリコールエーテルの混合物より成る。
【0034】
非イオン性界面活性剤は、好ましくは、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル及びそれらの混合物、特に式(A)のステアリルアルコールのエトキシル化誘導体及びそれらの混合物から選択される。
【0035】
CH(CH17(OCHCHOH (A)
【0036】
特に有利な実施形態において、1つはどちらかといえば実質的に親水性であり、2つ目はどちらかといえば実質的に親油性である、非イオン性界面活性剤の混合物が使用される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤は、Brij(登録商標)72の名前で販売され、HLB値が4.9である式(A)に従うステアレス−2(式中平均的にn=2)、及びBrij(登録商標)721Pの名前で販売され、HLB値が15.3である式(A)に従うステアレス21(式中平均的にn=21)を含む非イオン性界面活性剤の混合物である。
【0038】
ステアレス−2/ステアレス−21の比率は、リポソームを分解することなくエマルジョンを安定化するように調節される。
【0039】
水溶性形態の多糖類は、広範な水溶性多糖類から選択することができる。多糖類は、特に、デンプン又はその誘導体、セルロース誘導体、ペクチン、ガム、アルギネート、デキストラン、カラギネート、及びヒアルロン酸より成る群から選択することができる。
【0040】
セルロース誘導体のうち、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、酢酸セルロース又はメチルセルロースが特に選択される。
【0041】
ガムのうち、キサンタンガム又はグアーガムが特に選択される。
【0042】
一方、アルギネート、特にアルギン酸アルカリ金属、最も具体的にはナトリウム塩若しくはカリウム塩、又はそれらを含有する抽出物、例えば藻類抽出物が、有利に選択される。
【0043】
好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも1種のアルギン酸アルカリ金属と、水溶性形態の少なくとも第2の多糖類、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムとを含有する。
【0044】
多糖類の濃度は、連続水相に存在しエマルジョンを安定化することを意図する非イオン性界面活性剤の作用による分解から、リポソームを効果的に保護するように選択される。
【0045】
好ましくは、水溶性多糖類の総量は、組成物の0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間である。
【0046】
また、確実に組成物の[リン脂質/水溶性多糖類]の比率が0.1から20の間、好ましくは1から10の間となるように注意する。
【0047】
少なくとも1種の水溶性多糖類を必然的に含む本発明による化粧品組成物はまた、好ましくはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の親水性ポリマーを有利に含有することができる。
【0048】
さらに、本発明による化粧品組成物は、他の水溶性親水性化合物を含んでもよい。
【0049】
水溶性分子は、例えば、C糖又はC12糖であって、ブドウ糖、ソルビトール、ショ糖、ラクチトール、グリセロールから有利に選択される糖であるか、又はそれらのエーテル若しくはエステルの1つ又は誘導体の1つであってもよい。
【0050】
これらの水溶性分子は、好ましくは植物抽出物から得られる。
【0051】
本発明の一変形形態において、化粧品組成物は1つ又は複数の化粧有効薬剤を含んでもよい。
【0052】
この(又はこれらの)化粧有効薬剤の選択は、当然ながら化粧品としての所望の特性に依存することが、当業者には理解される。
【0053】
また、この薬剤の性質に依存して、該薬剤は脂肪相若しくは水相に存在するか、又は少なくとも部分的にリポソーム中に組み込まれることが、当業者には容易に理解される。
【0054】
好ましくは、化粧有効薬剤の少なくとも一部は、化粧品組成物中に存在するリポソーム内に被包される。
【0055】
化粧品として許容できる有効薬剤は、次いでその固有の親和性に従ってリポソームの親水性部分又は疎水性部分に蓄積する。
【0056】
このように、脂質に対する強い親和性を有する有効薬剤は疎水性の膜内空間に優先的に位置し、一方、例えばイオン形態の親水性の有効薬剤は親水性の膜内空間に位置し、特にリポソーム小胞の場合にはそのコアにも位置する。
【0057】
リポソーム内に被包される化粧有効薬剤は、皮膚漂白活性若しくは皮膚美白活性を有する物質;痩身活性を有する物質;水分補給活性を有する物質;沈静、緩和、若しくは弛緩活性を有する物質;肌の色、特に顔面の輝きを改善するように皮膚の微小循環を刺激する活性を有する物質;油性スキンケアのための皮脂調整活性を有する物質;皮膚を洗浄若しくは清浄化するための物質;フリーラジカルスカベンジャー活性を有する物質、又は老化防止活性を有する物質より成る群から有利に選択することができる。
【0058】
本発明による組成物は、同じ群から選択されるか、或いは化粧品としての作用が異なる物質の群から選択されるいくつかの化粧有効物質を有利に含むことができる。
【0059】
皮膚漂白活性又は皮膚美白活性を有する物質としては、好ましくは、アスコルビン酸誘導体、とりわけアスコルビルグルコシド及びリン酸アスコルビル等のエステル、特にリン酸アスコルビルマグネシウム、並びにブラックエルダー(セイヨウニワトコ(Sambucus nigra))の果実又は花の抽出物より成る群から選択される物質が使用される。
【0060】
皮膚漂白活性又は皮膚美白活性を有する物質は、組成物の総重量に対し0.001重量%から5重量%の間、特に0.01重量%から3重量%の間の濃度で有利に使用される。
【0061】
水分補給作用を有する物質としては、例えば、グリセロール、アルキレングリコール等の少なくとも1種のアルコール、特にプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、及びそれらの任意の割合の混合物、特に市販されているPEG−60タイプのもの等を使用することができる。組成物は、0.001重量%から5重量%、好ましくは0.1%から5%を有利に含む。
【0062】
沈静、緩和、又は弛緩作用を有する物質としては、例えば、特にカリウム塩の形態のグリシルリチン酸塩を使用することができる。
【0063】
フリーラジカルスカベンジャー活性又は老化防止活性を有する物質としては、例えば、トコフェリル酢酸塩又はトコフェリルホスフェート、好ましくはトコフェリルホスフェートを使用することができる。
【0064】
具体的な変形実施形態によれば、これらの物質のそれぞれの重量割合は、0.001%から5%の間となる。
【0065】
皺を減少させるための物質としては、(Remixyl(登録商標))Matrixyl、特に(Remixyl)Matrixyl(登録商標)3000の名前で販売されているパルミトイルペンタペプチド−3、アオイ科植物抽出物(Vitactyl(登録商標))、トウモロコシ粒抽出物(Deliner(登録商標)、トウモロコシ穀粒抽出物)又はオート麦ふすま抽出物(Osilift(登録商標)、燕麦ふすま抽出物)を有利に使用することができる。
【0066】
痩身作用を有する物質としては、例えば、カフェイン等のキサンチンを使用することができる。具体的な変形実施形態によれば、痩身作用を有する物質の重量割合は、0.001%から5%の間となる。
【0067】
皮膚の微小循環を刺激する物質としては、例えばルスコゲニンを使用することができる。
【0068】
具体的な変形実施形態によれば、皮膚の微小循環を刺激する物質の重量割合は、0.001%から5%の間となる。
【0069】
油性スキンケアのための皮脂調整活性を有する物質としては、例えば、酸化亜鉛又は少なくとも1種の亜鉛ベースの誘導体、特に、グルコン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、又は亜鉛ピドレート等の有機亜鉛塩を使用することができる。
【0070】
具体的な変形実施形態によれば、皮脂調整活性を有する物質の重量割合は、0.01%から10%の間となる。
【0071】
本発明のさらに他の具体的な実施形態によれば、前記化粧品組成物に、例えば、メントール又はその誘導体、例えばメントキシプロパンジオール等の少なくとも1種の清涼剤を有利に加えることができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の分散相は、極性脂質相又はあまり非極性ではない脂質相である。
【0073】
本発明の好ましい変形形態において、前記エマルジョンの油相は、比較的極性の化合物、特にトリグリセリドを含んでもよい。
【0074】
本発明の特に有利な変形形態によれば、本発明の組成物は、エマルジョンの脂肪相がそれ自体油中水型(W/O)エマルジョンである多重エマルジョンの形態であってもよい。
【0075】
最後に、本発明による組成物はまた、顔料、染料、レオロジー剤、香料、金属イオン封鎖剤、電解質、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、及びそれらの混合物、テクスチャリング剤、及び抗日光剤又は日焼け防止剤より成る群から選択される、1つ又は複数の化粧品として許容できる賦形剤をさらに含んでもよい。
【0076】
また、本発明は、上に定義された化粧品組成物を調製する方法に関し、該方法は、
前記リポソーム及び少なくとも1種の水溶性形態の多糖類を含有する水相を調製するステップと、
前記非イオン性界面活性剤で安定化されたストックエマルジョンを調製するステップと、
前記ストックエマルジョンを、前記リポソームを含有する前記水相と混合し、それにより安定なエマルジョンを得るステップとを含む。
【0077】
本発明による方法の好ましい実施形態において、せん断することによりリポソームを形成するステップの前に、多糖類を水和脂質相と接触させる。
【0078】
したがって、この方法の第1の特に有利な変形形態によれば、この方法は、
水和層状脂質相を調製するステップと、
少なくとも1種の水溶性多糖類を含む水溶液中に前記水和層状脂質相を組み込むステップと、
上記混合物をせん断することによりリポソームを形成するステップと、
前記非イオン性界面活性剤を含有するストックエマルジョンに上記混合物を組み込むステップと
を連続ステップとして含む。
【0079】
方法の上述の変形形態において、水和層状相の調製は、両親媒性脂質がグリセロール及び1,3−ブチレングリコール中に溶解され、次いで水に溶解されて水和層状相を形成する、濃縮界面活性剤相を調製することにより得られる。
【0080】
次に、前に形成された水和層状相を、多糖類を含有する水溶液中に組み込み、例えばUltra Turraxにより激しく撹拌してリポソームの水分散液を形成する。
【0081】
この変形形態によれば、水溶性多糖類総量の一部分を直接ストック溶液に組み込むことができる。
【0082】
調製方法のこの第1の変形形態を適用することにより、多糖類の量の一部分を前記リポソーム内に被包し、他の部分を自由な状態、すなわち「非被包」状態で水相に溶解させることができる。
【0083】
この方法の第2の特に有利な変形形態によれば、この方法は、
水和層状脂質相を調製するステップと、
上記混合物をせん断することによりリポソームを形成するステップと、
少なくとも1種の水溶性多糖類を含む水溶液中にリポソームの分散液を組み込むステップと、
前記非イオン性界面活性剤を含有するストックエマルジョンに上記混合物を組み込むステップと
を連続ステップとして含む。
【0084】
方法の上述の変形形態において、水和層状相の調製は、両親媒性脂質をグリセロール及び1,3−ブチレングリコール中に溶解させ、次いで水に溶解させて水和層状相を形成する、濃縮界面活性剤相を調製することにより得られる。
【0085】
次に、前に形成された水和層状相を、例えばUltra Turraxにより激しく撹拌し、リポソームの水分散液を形成する。
【0086】
次いでアルギン酸アルカリ金属塩を含む水溶液中にリポソームの分散液を組み込むと、該水溶液を本発明によるエマルジョンの連続水相とすることができる。
【0087】
この調製方法を適用することにより、多糖類の全量を自由な状態、すなわち「非被包」状態で水相に溶解させることができる。
【0088】
任意選択で添加される化粧有効薬剤は、リポソームの分散液の水相においてリポソームの外にあってもよく、又は、部分的若しくは完全にリポソーム内に被包されてもよい。
【0089】
代替の実施形態において、ステップ3において得られるリポソームの水懸濁液の水を霧化又はフリーズドライにより排除して懸濁液の成分を含む粉末を得、次いで該粉末を、少なくとも非イオン性界面活性剤を含む第2の水相中に再び分散させることができる。
【0090】
上に開示されたように、本発明はまた、リポソームの安定な分散液に関する。この分散液は、特に、本発明の第1の主題を構成するエマルジョンの形態の組成物の水相の調製に使用することができる。この安定な分散液は、少なくとも1種の水溶性多糖類を含む水溶液中に水和脂質相を組み込み、得られた混合物をせん断して前記分散液を形成することにより得られる。
【0091】
[実施例]
実施例1−リポソームを含むリッチクリーム
【0092】
【表1】

【0093】
D相のリン脂質をUltra Turraxで均質化する。
【0094】
次いでリン脂質をブチレングリコール及びグリセロールと20分間均質化し、混合物を少なくとも60分間静置する。
【0095】
D相の他の化合物を添加した後、純水を添加する。
【0096】
リポソームの分散液を形成するために、得られた層状相を20分間Ultra Turraxでせん断する。
【0097】
A相及びB相を、2つの均質な溶液を得るために別個に85℃に加熱する。
【0098】
次いでB相を油相A中に乳化する。
【0099】
得られたO/Wエマルジョンを撹拌しながら徐々に冷却し、次いで、特にポリマーを中和するために70℃でC相の化合物を添加する。
【0100】
リポソームの分散液を、前に調製されたO/Wエマルジョンに撹拌しながら空気を取り込まないように添加する。
【0101】
得られたエマルジョンは、連続水相中に多重層リポソームを含む。
【0102】
これらのリポソームは、エマルジョンを安定化する界面活性剤の作用により破壊されない。
【0103】
実施例2−リポソームを含む流体クリーム
【0104】
【表2】

【0105】
方法は実施例1に従う。
【0106】
得られた生成物はエマルジョンの形態のライトクリームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続水相と分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態の組成物において、前記水相が、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル、脂肪アルコールポリプロピレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される非イオン性界面活性剤、並びに少なくとも1種の水溶性形態の多糖類の存在下で、リポソームを含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記リポソームが多重層リポソームであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リポソームが、リン脂質、ホスホアミノ脂質、糖脂質、及びそれらの混合物より成る群から選択される両親媒性脂質で構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記リポソームが、卵レシチン、大豆レシチン、スフィンゴミエリン、セレブロシド、及びオキシエチレン化ステアリン酸ポリグリセリルより成る群から選択される両親媒性脂質で構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、及びそれらの混合物より成る群から選択され、好ましくは、2種類の大豆レシチンの混合物であり、大豆レシチンの第1の種類は、90%を超えるホスファチジルコリンを含むリン脂質混合物であり、第2の種類は15%から30%の間のホスファチジルコリンを含むリン脂質混合物であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の非イオン性界面活性剤の混合物を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記非イオン性界面活性剤が、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル及びその混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤が、ステアリルアルコールポリエチレングリコールエーテルから選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤が、ステアレス−2及びステアレス−21の混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記水溶性形態の多糖類が、デンプン又はその誘導体、セルロース誘導体、ペクチン、ガム、アルギネート、デキストラン、カラギネート、及びヒアルロン酸より成る水溶性多糖類群から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
水溶性形態の前記多糖類が、アルギン酸アルカリ金属、特にアルギン酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、少なくとも1種の水溶性形態のアルギネート、特にアルギン酸アルカリ金属と、請求項10に記載の第2の水溶性形態の多糖類とを含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の多糖類が、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
水溶性形態の多糖類の総量が、前記界面活性剤の作用による分解から前記リポソームを保護するために効果的な量であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
水溶性多糖類の総量が、前記組成物の0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間の量であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項16】
前記組成物の[リン脂質/水溶性多糖類]の比率が、0.1から20の間、好ましくは1から10の間であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項17】
特にポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の親水性ポリマーも含有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
又はC12糖、そのエーテル、そのエステル、及びその誘導体より成る群から選択される少なくとも1種の水溶性親水性化合物も含有することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項19】
前記エマルジョンの前記脂肪相がトリグリセリドを含有することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記エマルジョンの前記脂肪相がそれ自体油中水型(W/O)エマルジョンであることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記エマルジョンの前記水相及び/又は前記脂肪相に含有される少なくとも1種の化粧有効薬剤と、少なくとも1種の化粧品として許容できる賦形剤とを含有することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項22】
少なくとも1種の有効薬剤が、少なくとも部分的に前記リポソームに組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項23】
前記有効薬剤が、皮膚漂白活性若しくは皮膚美白活性を有する物質;痩身活性を有する物質;水分補給活性を有する物質;沈静、緩和、若しくは弛緩活性を有する物質;肌の色、特に顔面の輝きを改善するように皮膚の微小循環を刺激する活性を有する物質;油性スキンケアのための皮脂調整活性を有する物質;皮膚を洗浄若しくは清浄化するための物質;フリーラジカルスカベンジャー活性を有する物質、又は老化防止活性を有する物質より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項24】
前記リポソーム及び少なくとも1種の水溶性形態の多糖類を含有する水相を調製するステップと、
前記非イオン性界面活性剤で安定化されたストックエマルジョンを調製するステップと、
前記ストックエマルジョンを、前記リポソームを含有する前記水相と混合し、それにより前記安定なエマルジョンを得るステップと
を含むことを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法。
【請求項25】
水和層状脂質相を調製するステップと、
少なくとも1種の水溶性多糖類を含む水溶液中に前記水和層状脂質相を組み込むステップと、
上記混合物をせん断することにより前記リポソームを形成するステップと、
前記非イオン性界面活性剤を含有する前記ストックエマルジョンに上記混合物を組み込むステップと
を連続ステップとして含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
水溶性多糖類の総量の一部が、前記ストック溶液中に直接組み込まれることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
水和層状脂質相を調製するステップと、
上記混合物をせん断することにより前記リポソームを形成するステップと、
少なくとも1種の水溶性多糖類を含む水溶液中にリポソームの分散液を組み込むステップと、
前記非イオン性界面活性剤を含有する前記ストックエマルジョンに上記混合物を組み込むステップと
を連続ステップとして含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物の水相の調製に使用可能なリポソームの安定な分散液において、少なくとも1種の水溶性多糖類を含む水溶液中に水和脂質相を組み込み、得られた混合物をせん断して前記分散液を形成することにより得られることを特徴とする、リポソームの安定な分散液。

【公開番号】特開2009−120584(P2009−120584A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−248554(P2008−248554)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】