説明

連続的な造形製造を行うための装置及び方法

【課題】生産時間が短く生産性の高い造形物の製造方法ないしは製造装置を提供する。
【解決手段】本発明は、個別的な形状をもつ複数の造形物、とくに歯科用補綴物又は歯科用補助部品を製造する方法に関する。そして、この方法は、選択的硬化、とくに選択的な焼結又は溶融により、基板プレート表面で複数の造形物を製造するステップを有する。このステップにおいては、材料は連続する複数の材料層の形態で供給され、各材料層が供給された後に、供給された材料層の1つ又は複数の予め設定された領域が、高エネルギの放射線により選択的に硬化させられ、その下側の材料層の1つ又は複数の領域と結合させられる。ここで、予め設定された領域は、各材料層における造形物の断面形状に基づいて予め設定される。本発明によれば、連続する複数の材料層は、基板プレートの表面に対して傾斜する材料層平面に供給される。本発明は、上記方法を実施する装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別的な幾何学的形状(individual geometry)をもつ複数の造形物(products)、とくに歯科用補綴物又は歯科用補助部品を製造する方法に関する。この方法は、選択的硬化、とくに選択的焼結又は選択的溶融により、基板プレート(substrate plate)表面上で複数の造形物を製造するステップを有する。このステップにおいて、材料は、連続する複数の材料層の形態で供給される(applied in successive layers)。各材料層が供給された後、供給された各材料層内の1つ又は複数の予め設定された領域が、高エネルギ放射線(energy-rich radiation)により選択的に硬化させられ、その下側の材料層内の1つ又は複数の領域と結合させられる。ここで、予め設定された領域は、各材料層における造形物の断面の幾何学的形状に基づいて予め設定される。本発明は、もう1つの態様においては、上記方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
造形製造プロセス(generative production process)、すなわち順次の付加的な製造工程により個別的な造形物を形成するように材料を成形する製造プロセスは、プロトタイプ(prototypes)の製造の技術分野で用いられる。また、このような造形製造プロセスは、とくに個別的に成形される造形物又は小規模な組物(small-scale series)の製造において用いられる。例えば、特許文献1は、所定のパラメータを含む選択的レーザ焼結プロセスにより、個別的に成形される歯科用補綴物又は歯科用補助部品の製造手法を開示している。
【0003】
金属の粉体を用いたレーザ焼結プロセス(SLS)又はレーザ溶融プロセス(SLM)は、とくに歯科用補綴物の製造に適しているが、その他の造形製造プロセスも、このような造形物の製造に適している。このような造形製造プロセスとしては、例えば粒状材料又はその他の形態の固体材料を、例えばレーザビーム又は電子ビームなどの高エネルギビームによって焼結又は溶融させ、結合させて硬化させるプロセスが挙げられる。また、固体又は液体の形態のプラスチック材料を、例えばレーザ光又は集中光ビーム(focused light beam)などの高エネルギビームを用いて、光重合(photopolymerisation)により選択的に硬化させるプロセスも挙げられる。
【0004】
これらの造形製造プロセスは、通常、硬化可能な材料層を基板プレートに連続的に供給するといった手法で行われる。これは、例えば硬化可能な液体浴槽(liquid bath)に連続的に又は間欠的に基板プレートを浸漬することにより行われる。あるいは、粉体供給装置を用いて、互いに重なり合う位置関係で、基板プレートに連続的に材料層を供給することにより行われる。各材料層の供給操作の後に、該材料層の一部分を選択的に硬化させ、積層方式で(layer-wise)造形物を構築する。最後の材料層の硬化により造形物を完成させた後、材料の非硬化領域を除去することができ、大抵は除去したこの材料を再使用することができる。特許文献2には、SLSプロセス又はSLMプロセスの原理が開示されているが、これらの開示事項は全面的に本明細書に組み入れられている。
【0005】
造形製造プロセスについての基本的な問題は、製造データの生成から造形物の完成までに長時間を要するということである。かくして、与えられた時間内に製造することができる造形物の数を増やすために、1つの基板プレートに複数の造形物を同時に構築するといった手法が提案されている。この手法は、とくに、その寸法が基板プレートの寸法に比べて非常に小さい造形物を製造するときには好ましいものであり、造形物の生産性を効果的に高めることができる。
【0006】
特許文献2はまた、製造工程の改善により製造装置の停止時間を短縮するといった技術を開示している。この技術によれば、担持体上に取り外し可能に固定された基板プレートを用いて、基板プレート上で造形物が完成した直後に、基板プレートを除去して新たな基板プレートと交換することができ、新たな製造プロセスを開始することができる。この技術によれば、基板プレートから造形物を除去するのに必要な時間は、製造装置の停止時間とはならない。しかし、この製造装置にはなお、基板プレート上で製造されるすべての造形物の製造データが利用できる場合にのみ製造プロセスを開始することができるだけであるので、とくに多数の小さい造形物を個別的に製造する場合は、造形製造のための全工程時間を十分に短縮することができないといった問題がある。
【0007】
特許文献3は、前記の基本的概念を踏襲し、製造装置内に輸送装置を設けた製造装置を開示している。この輸送装置でもって、1つ又は複数の構築コンテナと、計量コンテナ又は供給コンテナとを輸送することができ、これにより製造装置内において、高速かつ単純に信頼性の高い粉体処理操作(powder handling)を行うことができる。この製造装置を用いることにより、粉体材料を用いる構築コンテナにおける造形物の製造を迅速に行うことができる。その結果、これらの造形物が完成した後、第2の構築コンテナで、異なる粉体材料を用いて造形物を製造することができる。しかしながら、この製造装置でも、基板プレート上のすべての造形物の製造データの生成から造形物の完成までに多くの時間を要するということが注目されるべきである。その結果、形成される多数の造形物のうちの個別的な各造形物の製造にはなお、比較的長時間を要するといった問題がある。
【0008】
特許文献4は、3次元の目的物を得るための積層方式の造形製造プロセスを開示している。このプロセスでは、複数の目的物が2つの構築領域で同時に製造される。ここで、一方の構築領域では1つの材料層が供給され、他方の構築領域では放射線(radiation)により選択的硬化が行われる。特許文献4に開示された製造装置には、4つの処理室が設けられている。これらの処理室は、空間的に互いに仕切られた個々の室の形態であるか、又は2室もしくは4室を有する小領域(subregions)の形態である。さらに、特許文献4には、切り替え装置(switching-over arrangement)により複数の処理室の各々にレーザ装置を接続するといったことが開示されている。特許文献4に開示された製造装置、及び、この製造装置を用いた造形製造プロセスでは、各処理室における材料層の供給及び交互の硬化により、造形物を同時に製造する場合、各処理室において材料供給操作を個々に制御しなければならないといった問題がある。この製造装置及び製造方法は、異なる処理室において異なる開始材料でもって複数の造形物を製造する複雑かつ高価な特別な応用分野では適切である。しかし、その構造においてもまたその制御においても、製造方式及び製造装置が複雑であり、かつ製造装置が高価である。したがって、多数の小さい造形物の製造の能率ないしは生産性に関しては、さらに改善ないしは最適化の余地がある。また、造形物の製造データの最終的な生成から造形物の完成までに要する時間についても、改善ないしは最適化の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1021997号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0734842号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/128502号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/014636号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの既知の製造方法及び製造装置は、その寸法が基板プレートの寸法と比べて非常に小さい造形物の場合は、製造モードの操作において個別的な各造形物に対して実施可能な製造時間でもって、基板プレートのほぼ全領域を占有する寸法をもつ個別的な造形物を製造するのに用いることができるだけである。また、1つの基板プレート上で複数の造形物を連携させて製造することにより、生産性を確保することができるだけである。しかし、この場合、個々の造形物のための製造時間は、所望の短い時間にすることはできない。すなわち、基板プレート上で製造すべきすべての造形物に対して製造データを生成し、かつこの後すべての造形物を同時に製造することになるので、製造時間は長くなる。
【0011】
小さい造形物の造形製造におけるさらなる問題は、個別的な造形物の形状を含んでいる多数の領域において、造形製造が、例えば歯科技工室における歯科用補綴物の製造などといった、個別的な注文の製造形態で実施されるということである。ここで、「小さい造形物」との語は、その基本領域が基板プレートの表面よりも小さい造形物、とくに大きさが少なくとも1桁小さい造形物を意味することが意図されている。この場合、個々の注文は、典型的には、製造装置のユーザに同時には到達せず、異なる時間的関係で到達する。この場合、製造装置の利用性及び生産性を向上っせるために、ユーザは、複数の注文を組み合わせて、同時に基板プレート上で、組み合わせた注文に係る造形物を製造することになる。しかしながら、とくに最初に受け取った注文に対しては、注文の受け取りから造形物の完成までにかなりの時間遅れが生じる。これに対して、ユーザが可能な限り短い時間で各注文に応じてこの注文に対応する個々の造形物を製造することを望む場合、ユーザは、1つの基板プレート上で1つ又は少数の造形物のみを製造する製造プロセスを実施せざるを得ないので、通常は製造装置の利用性のレベル低下を招き、生産性が低下する。
【0012】
本発明の目的は、その寸法が基板プレートの寸法に比べて小さい造形物を製造する(deal with)ときに、個別的な各造形物に対して高い生産性及び短い製造時間の両方を実現することができるよう、既知の製造プロセスをさらに改善することである。本発明のさらなる目的は、製造プロセス又は製造装置の生産性に大きい影響を及ぼすことなく、個別的に製造すべき小さい造形物の注文の受け取りから該造形物の完成までの所要時間を短縮することができる製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記目的は、本明細書の冒頭部分に記載された種類の方法によって達成される。この方法においては、基板プレート(substrate plate)の表面に対して傾斜して延びる材料層平面(layer planes)に、連続的な材料層(successive layers)を付着させて供給する(apply)ようにしている。
【0014】
本発明に係る方法はまた、積層方式の形態で(layer-wise fashion)選択的硬化を実施することにより、1つの基板プレートの表面上で複数の造形物(すなわち製品)を同時に製造することができる。本発明に係る方法においては、従来の仕様の基板プレート、すなわち円形、正方形又は矩形の単一の(one-piece)基板プレートを用いる必要はないということが理解されるべきである。むしろ、本発明に係る基板プレートは、例えば複数の基板プレートセグメント(substrate plate segment)からなる1つの基板プレートの形態又は基板輸送ベルトの形態のものであってもよい。この場合、これらの複数の基板プレートセグメントは、例えば1つの方向に並んで(in a row)配置される。
【0015】
本発明に係る方法は、材料層平面が基板プレートの表面に対して平行な方向に延びる形態で、硬化可能な複数の材料層が供給される(applied)のではなく、材料層平面が基板プレートの表面に対して傾斜して延びる形態、すなわち基板プレートの表面に対して0°より大きく90°より小さい角度をなすように延びる形態で複数の材料層が供給される点において、従来技術と相違する。基板プレート上に傾斜して材料層を供給することにより、基板プレート上の種々の位置に全体的に配置された材料床(material bed)の厚さは、各位置において同一ではなく、互いに異なることになる。とくに、供給された材料床の厚さは、基板プレート上に正確に1層分の厚さが存在する領域を起点として、基板プレートの上方に最大限に供給された材料層が配置された領域に向かって、連続的に増加する。ここで、材料層は常に基板プレートの領域の上に供給されるが、これは基板プレート全体にわたって延びる必要はない。材料層は、一般的には、基板プレート上に構築された複数の造形物が配置された領域の上で延びているということが理解されるべきである。
【0016】
本発明に係る方法においては、材料層が傾斜供給(inclined application)され、基板プレート上で複数の小さい造形物が同時に構築されるが、これは、これらの造形物が異なる製造段階にあるということを意味する。かくして、材料層の傾斜供給に起因して、基板プレート上に単一の材料層のみが存在する領域において新たな製造が始まる。一方、以前にすでに供給された複数の材料層に材料層が傾斜して供給される領域では製造を終了することができる。これらの2つの端点(end points)の間には、開始点と終了点の間における製造段階、すなわちすでに供給されて選択的に硬化させられた例えば50層又は100層の層が存在する段階において、1つ又は複数の造形物が存在することができる。
【0017】
その結果、本発明に係る製造方法は、造形物のための製造データの生成が終了した直後に造形物の製造を開始し、完成後に造形物を製造プロセスから除去することを可能にする。この場合、他の造形物の製造データの生成が終了するまで待機する必要はなく、また他の造形物の製造が終了するまで待機する必要もない。同様に、個別的な造形物の連続製造を行う場合において擬似連続的な製造開始が本発明に係る方法でもって実施される際に、個別的な各造形物の製造時間を最小にするために、完成した個々の造形物の擬似連続的な除去を行うことができるということが理解されるべきである。かくして、本発明に係る方法においては、個々の材料層の供給及びその硬化のために必要とされる製造ステップにより必要とされる製造時間において、小寸法の造形物を製造することが可能となる。それにもかかわらず、複数の造形物の並行的な製造により、高レベルの生産性を実現することが可能となる。基板プレートに対して傾斜して粉体を供給する場合、基板プレート上での製造における異なる段階で、共通の材料層供給でもって、造形物を製造することが可能となる。粉体の供給は、材料層が水平方向に対して傾斜して延びているときには、重力によって惹起される、材料層内における粉体の流れ方向と反対の位置関係にあるシール(seal)に沿って実施するのが好ましい。
【0018】
第1の好ましい実施態様においては、連続的な材料層は、互いに平行な位置関係で供給される。これらの材料層を互いに平行に供給することにより、すべての供給操作において、材料層の厚さを均一化することが可能となり、かつプロセス制御システムを簡素化することが可能となる。ここで、各材料層は同一の厚さである必要はなく、とくに材料層の厚さは、この材料層の厚さによって予め決定される幾何学的な解像度(resolution)を造形物の幾何学的形状に適応させる(adapt)ために、造形物の幾何学的形状に応じてより大きくし、又はより小さくすることができるということが理解されるべきでる。
【0019】
もう1つの好ましい実施態様によれば、連続的な材料層の各々は、基板プレート上の材料の安息角より小さい角度又は安息角と同一の角度をなすように供給される。ここで、基本的には、材料層を供給する角度は、基板プレートの表面の平面と、供給された材料層の平面との間に形成される鋭角と解釈されるべきである。材料の安息角との語は、山盛りに積み上げられた材料(pile of material)の側面と、材料を山盛りに積み上げて担持している基礎面との間に生じる角度を示すものとして用いられている。材料の安息角が小さければ小さいほど、材料が供給される表面における材料の滑動性(slidability)が大きくなり、かつ材料自体の滑動性が大きくなる。すなわち、例えば粉体材料の個々の粉体粒子(grains)の相互の滑動性が大きくなる。本発明に係る方法において、連続的な材料層が、その材料の安息角より小さい角度又は該安息角に対応する角度で供給された場合、材料層の断片(pieces)又は材料の個々の粒子等が滑り落ちることを防止することができ、供給された材料層がその幾何学的形状を喪失することを防止することができる。また、このように材料供給の角度を選択することにより、材料層は、自由な状態で傾斜している堤防(embankment)として安定した状態で確実に留まることができる。その結果、材料層を単純でかつ幾何学的に正確な態様で選択的に硬化させることができる。
【0020】
安息角に積極的に好ましい影響を及ぼすために、すなわちできる限り大きい安息角を実現し、これにより可能な限り大きい角度で材料層を供給することを可能にするために、例えば研磨(polishing)、研削(grinding)、擦り合わせ(lapping)、ホーニング(horning)、エッチング(etching)、回転仕上げ(rotofinishing)、砂吹き付け(sandblasting)、フライス削り(milling)、回転加工(turning)及びその他の機械加工により、基板プレートの表面を特別の形態に処理することができる。この場合、製造プロセスは、安息角を大きくするのに有利なように、基板プレートの粗度(roughness)の特性(nature)を適切に設定するのが好ましい。この粗度は、典型的には0.5μm〜50μmRzの範囲であり(1998年におけるDIN EN ISO 4287による平均化された粗面深さ(averaged roughness depth))、又は典型的には0.1μm〜10μmRa(平均粗度値)、又は0.04mm〜1.3mmRSmの範囲である(例えばフライス削りにおいて見出されるような周期的な形状(periodic profiles)に関する、1998年におけるDIN EN ISO 4287による平均の溝幅(mean groove width))。ここで、基板プレートに対するこれらの好ましい粗度の範囲は、選択的レーザ焼結又は選択的レーザ溶融に用いられる典型的な粉体、とくに形状が正確でありかつ精密である歯科用インプラント又は歯科用補助部品などといった小さい部品を製造するための粉体について有利であるということが理解されるべきである。
【0021】
さらに、粉体の表面を、研磨、研削、エッチング、砂吹き付け、回転仕上げ又はコーティング(coating)により好ましく処理し、安息角に積極的に好ましい影響を及ぼすことができる。
【0022】
硬化可能な材料として液体材料を用いる場合は、化学薬品を用いることより、又は光学的もしくは機械的な表面処理、例えばレーザ光による粗面化を行うことにより、表面の湿潤性(wettability)に積極的に好ましい影響を及ぼすことができる。
【0023】
上記の意味(sense)において安息角に積極的に好ましい影響を及ぼすためのさらなる出発点(starting point)は、上記の材料を粒状化(granulation)することである。これは、例えば定常的な攪拌(steady agitation)を行いつつ、溶融金属を薄い噴流(thin jet)の形態で冷水中に注入し(pour)、これにより粒状化した(granulated)材料を得ることにより実現することができる。あるいは、容易に溶融しうる金属を、内壁を石灰(chalk)で厚く被覆した容器に注入し、金属が冷えるまで容器を閉止した後、この容器を振盪する(shake)ことにより、金属を粒状化してもよい。
【0024】
ここで、本発明に係る方法及び装置は、材料粒子について粒子相互の結合(connection)及びクランプ効果(clamping effect)等が良好となるとともに、これに相応して粒子相互の滑動性が低くなるように材料を処理する場合にとくに有利である。換言すれば、粒子は、とくに、球形とは異なる外部形状(external configuration)のものであるべきであり、同時に高い表面粗度(high surface roughness)をもつべきであり、とくに好ましく全体的に不規則な形状(overall irregular configuration)のものであるべきであるということである。同時に、材料の滑動性は、薄い材料層で供給されて材料層内の空隙率(proportion of cavity)が小さい稠密な充填(dense packing)を実現するための適合性(suitability)に影響を及ぼす。したがって、材料は、一方では最大の安息角を実現するように処理しなければならない。他方では、材料は、プロセスに適した層厚(layer thickness)で供給することが可能でなければならない。そして、製造される造形物に対して実現される密度に直接的に関連する材料の充填密度(packing density)を可能な限り高めることが必要である。典型的な層厚は、5μmから200μmまでの範囲である。
【0025】
さらにもう1つの好ましい実施態様においては、基板プレートは、2つの連続する材料層の供給操作の間に、材料層が供給される平面と垂直な方向成分(direction component)が生じるように移動させられる。ここで、「方向成分」との語は、他の方向に生じる他の移動成分と結合して全体的な移動を生成する移動成分をあらわすものとして用いられている。材料層が供給された平面と垂直な方向の移動成分により、この後に続く材料層の供給が可能となるようにプロセスを進行させることができる。これは、上記の目的を達するために、材料層が供給された平面と平行な方向ではない方向に材料層供給装置を移動させることなく行うことができる。とくに、この方向成分は、基板プレートの表面と平行な方向に移動させられている基板プレートによって生じさせることができる。基板プレートの表面と材料層が供給された平面との間の角度により、基板プレートの移動は、連続する材料層供給操作を行うために必要な進行移動に必要とされる上記の方向成分を生じさせる。
【0026】
さらに、材料層が供給される領域において、基板プレートの表面が重力の作用する方向に関して水平な方向に延びているのが、とくに好ましい。この場合、材料層は、水平方向に対して傾斜して延びる平面に供給され、材料層供給装置は、水平方向に対して傾斜して材料層を供給するような仕様に構成しなければならない。
【0027】
代替的な好ましい実施態様においては、基板プレートの表面は、材料層が供給された領域で、重力が作用する方向に関して水平な方向に対して傾斜して延びている。基板プレートの表面が、材料層が供給された領域で水平方向に対して傾斜して延びているので、材料層を水平な平面に付着させることが可能である。したがって、材料層供給装置は、水平な平面内で移動するような仕様に構成することができる。この場合、基板プレートが水平方向に対して傾斜して延びているときでも、水平方向に対して傾斜して延びている材料の供給を行うことが可能であり、材料供給装置をこのような仕様に構成することが可能であるということが理解されるべきである。
【0028】
前記の2つの実施態様においては、供給された材料層が、保持領域(holding region)の形態でその隣の製造部分(production portion)に移動するようになっているのがより好ましい。保持領域は、材料層が供給される製造部分の隣に配置されている。ここで、供給された材料層によって形成された供給材料の上面は、カバープレートの下面によって覆われかつ担持されている(covered and supported)。カバープレートの下面は、基板プレートの表面と平行に延びている。この形態において、基板プレートの上方における材料の高さが所定の高さに達している所定の製造部分では、材料の担持は、一方では担持プレートによって行われ、他方ではカバープレートによって行われる。この場合、基板プレートとカバープレートとの間の間隔は、材料層ないしは材料床の最大の高さ、すなわち積み重ねられた所定の厚さの材料層の層数に対応する。このようなカバープレートを設けることにより、基板プレート上で材料を適切に安定させることができる。その結果、傾斜した材料層の供給を、幾何学的に正確であり、かつ再生産が可能な仕様で(reproducible)実施することができる。この場合、カバープレートは、複数の材料層の各端部領域と当接し、基板プレート(support plate)とは背向して材料層を担持する。ここで、カバープレートは、無端輸送ベルト(endless conveyor belt)の形態であってもよく、またカバープレートに沿って移動し基板プレートの移動と同期して移動する1つのプレートであってもよい、ということが理解されるべきである。これにより、供給された材料とカバープレートとの間における相対的な移動が防止される。このような相対的な移動は、カバープレートに関して端部領域(edge region)における材料層の供給の規則性(regularity)を乱れさせる。
【0029】
さらにもう1つの好ましい実施態様においては、基板プレートの表面が、第1の基板プレートセグメントの第1の表面と、もう1つの基板プレートセグメントの少なくとも1つの表面とに分割される(subdivided)。この発展形態においては、基板プレートは、互いに隣り合う2つ又はこれより多い基板プレートセグメントに分割されている。ここで、「基板プレートセグメント」との語は、基板プレートの一部分を示すものであり、製造技術の観点からは別々のものとして用いられている。ここで、基板プレートセグメントは、材料層供給の制御データ及び硬化手順(hardening sequence)のみに基づいて規定する(define)ことができる。この場合、1つの基板プレートセグメントは、その上で1つ又は複数の造形物が製造される基板プレートの部分領域をあらわしている。ここで、造形物は、その製造が実質的には同時に開始されて終了するので、基板プレートから同時に除去することができる。
【0030】
しかしながら、「基板プレートセグメント」との語はまた、とくに物理的に分離された部品を意味するものであってもよい。この場合、基板プレートは、互いに連結された複数の基板プレートセグメントで構成される。この場合、基板プレートセグメントは、各基板プレートセグメント上で1つ又は複数の造形物を構築する(build up)のに用いることができる。これらの造形物の製造は、同時に開始して同時に終了することができ、この後基板プレートセグメントから取り外すことができる。
【0031】
ここで、複数の基板プレートセグメントは、互いに取り外し可能に接続し、又は取り外し可能に主担持体(main carrier)又は基本担持体(base carrier)に接続するのがとくに好ましい。そして、各基板プレートセグメントは、その表面上で1つ又は複数の造形物を製造した後、基板プレートセグメント上の1つ又は複数の造形物をさらなる処理ステップに供給するために、隣の基板プレートセグメント又は主担持体から取り外される。この発展形態は、各基板プレートを、製造装置から除去して、これにより基板プレートセグメント上に配置されている完成された造形物をさらなる処理ステップに供給することを可能にする。このようなさらなる処理ステップとしては、例えば、基板プレートセグメントからの造形物の入念な分離(careful separation)ステップ、この後の切削機械操作(cutting machine operation)ステップ、この後の硬化ステップなどが挙げられる。
【0032】
ここで、基板プレートセグメントを、材料層が供給される製造部分において互いに並置された位置関係(mutually juxtaposed relationship)で配置し、各基板プレートセグメント間を材料が通過することができないようにするのがとくに好ましい。このような仕様で基板プレートセグメントを配設することは、単一の材料層供給装置でもって1つの加工操作(working operation)で複数の基板プレートセグメントにわたって材料層を供給する場合にはとくに有利である。材料層に供給された材料が、基板プレートセグメント間を通過することが防止される。なお、このような材料の通過は、一方では材料の望ましくない損失を生じさせる結果となり、他方では材料層の厚さ及びその形状に幾何学的に影響を及ぼす結果となる。これは、例えば、複数の基板プレートセグメントが互いに合同な形状の端部(congruent edge portions)でもって直接互いに担持し合っている場合、又は2つの基板プレートセグメント間に、適切な分離シール(separate seal)が配置されている場合に実現することができる。
【0033】
基板プレートセグメントは、無端輸送装置のセグメントの形態であるのが一層好ましい。この場合、複数の基板プレートセグメントは、例えば、無端輸送ベルトに固定してもよく、また連結タイプのチェーン(link-type chain)の形態で無端輸送ベルトを形成するといった態様で互いに接続してもよい。この場合、基板プレートセグメントは、上側の走行経路(upper run)及び下側の走行経路(lower run)に沿って、連続する位置関係でもって移動させることができる。ここで、材料層の供給及び選択的硬化は、上側の走行経路に沿って移動するときに実施される。製造された造形物間の中間空間部からの非硬化供給材料の除去、及び、造形物の除去はまた、例えば、適切な吸引除去装置又は機械的分離装置により、上側の走行経路の領域で実施することができる。しかしながら、非硬化材料の除去を、下側の走行経路の領域で前記の手法と同様に行ってもよく、また例えば重力の作用のもとで上側の走行経路から下側の走行経路への遷移領域で行ってもよい。この後、完成した造形物を、基板プレートセグメントとともに除去してもよく、あるいは下側の走行経路の領域において基板プレートセグメントから直接除去してもよい。
【0034】
さらにもう1つの好ましい実施態様においては、複数の基板プレートセグメントは、第1の造形物又は第1の造形物群が単一の基板プレートセグメント上で構築され、さらなる造形物又はさらなる造形物群が、1つのさらなる基板プレートセグメント上又は複数のさらなる基板プレートセグメント上で構築されるといった形態及び配置のものである。この形態でもって、一方では1つ又は複数の造形物を単一の基板プレートセグメント上で製造することができ、この場合高レベルの生産性でもって非常に短い製造時間で迅速に、小さい造形物を製造することができる。他方、単一の造形物を複数の基板プレートセグメント上で製造することも可能である。これは、本発明に係る方法でもって、大きい造形物、すなわちその長手方向の寸法(longitudinal extent)又は当接表面が基板プレートセグメントの表面よりも大きい造形物を製造するときにはとくに有利である。さらに、2つ又はこれより多い基板プレートセグメント上で複数の造形物からなる群(group)を製造してもよい。これは、とくに、所定の1つの方向のみに非常に長く(very far)延びる造形物を製造する場合に必要とされる。かくして、本発明に係る方法は、その長さが複数の基板床セグメント(substrate bed segments)にわたって延びる造形物を製造することを可能にする。このような複数の造形物を製造することを予定している場合は、この発展形態に従って、このような造形物の群を形成することができ、この後この造形物群を複数の基板プレートセグメントにわたって延びるように製造することができる。
【0035】
本発明に係る方法は、とくに、材料が密着層(coherent layer)として第1の基板プレートセグメント及び少なくとも1つのさらなる基板プレートセグメントに供給され、選択的に硬化させられるといった点で従来技術と相違する。ここで、第1の基板プレートセグメントと、(該製造方法における少なくとも1つの段階、好ましくは複数の段階、とくに全段階で)第1の造形物を製造するために材料層に供給される材料層部分(layer portion)との間の最大の間隔は、さらなる基板プレートセグメントと、さらなる造形物を製造するために材料層に供給される材料層部分(layer portion)との間の最大の間隔とは異なる。それゆえ、本発明に係る方法によれば、材料は、製造プロセスの少なくとも1つの段階で、第1の基板プレート領域とこの基板プレート領域の上に供給される材料層との間の間隔が、もう1つの基板プレート領域とこの基板プレート領域の上に供給され以前と同一の材料層である材料層との間の間隔より大きい形態(fashion)で存在する。本発明に係る方法は、下記のステップを有することによりさらに発展させる(develop)ことができる。
・ 第1の基板プレートセグメント上に配置された非硬化材料を除去するステップ(この場合、もう1つの基板プレートセグメントの材料は除去しない)。
・ 続いて、もう1つの基板プレートセグメント上に配置された非硬化材料を除去するステップ。
本発明に係る擬似連続の(quasi-continuous)造形製造においては、非硬化材料の除去を、その除去位置で、この除去により隣の領域に影響を及ぼさず非硬化材料が隣の領域にそのまま残留するといった態様で実施することができるようにするのがとくに有利である。造形製造を行っているときには、非硬化材料は担持機能(support function)を有し、その上に配置された複数の材料層を受け取って担持する。それゆえ、一般的には、造形物が完全に構築されず硬化されていないときには非硬化材料は除去されない。このような前提条件のもとで、完成した造形物が、非硬化材料が除去される除去位置に到達するまで、プロセスの確実性(process assurance)を高める長い距離を最初に覆うことの必要性を回避するために、材料除去装置が、すぐ隣の領域に影響を及ぼすことなく、材料の除去操作を実施することができるようにするのが有利である。これにより、迅速な擬似連続製造が可能となり、材料層供給装置と材料除去装置との間に安全マージン間隔(safety margin spacing)を設けることが不要となる。
【0036】
製造操作の第1の段階(phase)では、最初の造形物を製造するのに寄与する材料層の領域のみを選択的に硬化させ、製造操作の最終の段階では、さらなる造形物の製造に寄与する材料層の領域のみを選択的に硬化させ、好ましくは製造操作の中間段階、すなわち最初の段階と最後の段階の間の段階では、最初の造形物及びさらなる造形物の製造に寄与する材料層の領域を硬化させるのが一層好ましい。異なる製造段階で前記のように実現される造形物の擬似連続かつ同時の製造は、造形製造プロセスにより、複数の小さい造形物の個々の製造のための生産性が高く迅速な製造プロセスを実現する。
【0037】
基板プレートセグメント間に、各基板プレートセグメントの上方の構築空間部(building space)を、隣の基板プレートセグメントの上方の構築空間部から仕切る仕切り壁(separating wall)を設けるのがさらに好ましい。このような仕切り壁は、基板プレートセグメントの上方の非硬化材料の除去を可能にし、または単純化する。この場合、その隣の基板プレートセグメントの非硬化材料に影響を及ぼすことはない。ここで、このような仕切り壁は、製造装置の部品(component part)として設けることができるということが理解されるべきである。この場合、仕切り壁は、例えば、各場合において、2つの基板プレートセグメント間の領域の供給材料の正確な高さと同一の正確な高さ、又はこれより若干低い高さをもつために、材料層供給操作と同時に追跡的に(trackingly)案内するといった仕様ないしは形態のものであってもよい。
【0038】
この点に関して好ましい実施態様によれば、仕切り壁は、1つ又は複数の造形物の製造操作を行っているときに、供給される材料を硬化させることにより生成される。この発展形態においては、このような仕切り壁は、それぞれ、製造操作を行っているときに、基板プレートセグメントの端部(edge)で、供給された材料から生成される。この手順は、案内システム(guidance system)を追跡する構造的に複雑でありかつ高価な仕切り壁を省くことを可能にするといった利点を有している。これに代えて、基板プレートセグメントの端部領域に沿って、適切な仕切り壁を構築してもよい。この仕切り壁は、基板プレートセグメントから複数の造形物を除去する際に除去することができ、又は隣の基板プレートセグメントから非硬化材料を除去する過程(course)で除去することができる。
【0039】
ここで、2つの基板プレートセグメント間の仕切り壁は、2つの基板プレートセグメントのうちの少なくとも一方と結合させるのがとくに好ましい。両基板プレートセグメントに、これらを互いに仕切る仕切り壁を結合させることにより、同時に、材料が基板プレートセグメント間を通過するのを防止する確実で完全なシール(secure sealing integrity)を行うことができる。この場合、仕切り壁の接続(connection)は、一方又は両方の基板プレートセグメント上の仕切り壁の造形構成(generative construction)により、又は装置に付属する仕切り壁部品(separating wall component)の適切な構造的接続(constructive connection)により実現することができる。
【0040】
さらに好ましい実施態様によれば、第1の製造部分において、材料は擬似連続プロセスで基板プレートに供給され、それぞれ供給された材料層の予め決定された領域は、選択的に硬化させられる。そして、第2の製造部分においては、硬化させられて完成した造形物が擬似連続で除去される。この実施態様は、生産性が高い点で従来技術と相違するとともに、非常に小さい造形物を非常に短時間で造形製造することができる、擬似連続の造形製造プロセスを実現することができる。この操作モード(mode of operation)は、第1の製造部分において高品質で造形製造を行うことを可能にし、これと同時に、第1の製造部分から離間した第2の製造部分において、このような造形製造に悪影響を及ぼすことなく、完成した造形物を除去することを可能にする。これは、とくに、複数の基板プレートセグメントによって形成されその上に基板プレートセグメントが配置されている無端輸送ベルトにより実現することができる。とくに、この実施態様によれば、所望のプロセスに従って造形製造を行うのに必要な境界条件(boundary condition)を設定することを可能にするために、第1の製造部分を、閉鎖された(closed-off)不活性雰囲気に保持することができる。他方、第2の製造部分は、造形物の排出を可能にし、又は、第1の製造部分から第2の製造部分への遷移領域で、造形物を不活性雰囲気から排出することを可能にする。
【0041】
以前に供給された材料層の硬化された領域には、各材料の供給操作に先立って表面研削(surface grinding)を施すのがなお一層好ましい。このような表面処理は、とくに研削操作(grinding operation)の形態で実施することができるが、幾何学的に規定され(geometrically defined)又は幾何学的に規定されていない(geometrically undefined)切削刃(cutting edge)を用いるその他の切削製造プロセス(cutting production process)により実施してもよい。これにより、造形製造プロセスの幾何学的な正確さをさらに高めることができる。とくに、このような切削処理(cutting treatment)により、所定の当接面(defined contact surface)が実現され、その上に配置された材料層のための接続位置(connecting location)及び硬化させられる領域が実現される。さらに、切削処理は、所定の層厚さを実現し、これは再製造可能な幾何学的な製造結果(reproducible geometrical production result)を得る上で有利である。
【0042】
基板プレート上、とくにすべての基板プレートセグメント上で1つ又は複数の造形物を硬化させるために、単一の放射線源、とくに単一の放射線源の単一のビーム経路(beam path)を用いるのがさらに好ましい。基本的には、製造操作を迅速化するために、複数のビーム源(beam source)又は単一のビーム源の複数のビーム経路に対して補償手段(recourse)を設けることも可能であるということが理解されるべきである。しかしながら、本発明に係る製造方法は、同時に複数の造形物を確実に製造することができ、かつこれらの造形物が異なる製造段階にある、すなわちとくに異なる数の材料層で構築されるという点において、従来技術と相違する。しかしながら、これに関する特長は、材料層の供給は、すべての基板プレートセグメントとその上に構築されて完成させられるべき造形物とに対して、単一の材料層供給装置により行うことができ、さらに材料層の所定の領域の硬化を、単一の放射線源により、完成させられるべきすべての造形物に対して行うことができることである。
【0043】
最後に、本発明に係る方法のさらなる発展形態によれば、該方法は次のステップを有している。
・ 基板担持プレート(substrate carrier plate)にn番目の材料層を供給する(apply)ステップ。
・ 高エネルギの放射線、とくにレーザ放射線(laser radiation)を材料層の所定の部分に作用させることにより、材料層の該部分を選択的に硬化させるステップ。
・ 第1の造形物のx番目の断面(cross-sectional area)の幾何学的データから得られた(ascertained)案内データ(guidance data)に従って、n番目の材料層の上に高エネルギの放射線を案内するステップ。
・ n番目の材料層に、(n+1)番目の材料層を付着させるステップ。
・ 第1の造形物の(x+1)番目の断面の幾何学的データから得られた案内データに従って(n+1)番目の材料層の上に高エネルギの放射線を導く案内するステップ。
・ 第2の造形物のy番目の断面(cross-sectional area)の幾何学的データから得られた案内データに従ってn番目の材料層の上に高エネルギの放射線を案内するステップ。
・ 第2の造形物の(y+1)番目の断面の幾何学的データから得られた案内データに従って(n+1)番目の材料層の上に高エネルギの放射線を案内するステップ。
なお、xはyと同一ではない。
【0044】
この発展形態においては、2つの異なる材料層領域に供給された共通の材料層に選択的硬化が施される同一の1つの材料層によって、少なくとも2つの造形物が製造される。この場合、これらの造形物自体の材料層についての基板プレートに対する高さは互いに異なる。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、個別的な幾何学的形状をもつ造形物を製造する製造装置が提供される。この製造装置は、基板プレートと、基板プレートに及び基板プレートの上方に材料層を供給する材料供給装置(material application apparatus)と、高エネルギビームを生成する放射線源と、基板プレートに供給された材料層の予め設定された領域にビームを案内するビーム案内手段とを備えている。本発明に係るこの製造装置においては、材料供給装置は、材料が供給される基板プレート表面に対して傾斜した平面、とくに材料の安息角と同一の角度又はこれより小さい角度で傾斜した平面に材料を供給するように構成されている。
【0046】
本発明に係る製造装置は、高レベルの生産性でもって、小さい造形物を迅速に製造することができる造形製造装置である。本発明に係る製造装置は、基板プレートに材料層を供給する材料供給装置が基板プレート表面に対して傾斜して材料層を供給することができる仕様に形成されている点において、従来技術と相違する。
【0047】
本発明に係る製造装置の発展形態においては、基板プレートは複数の基板プレートセグメントに分割され、材料供給装置は、複数ないしは多数の基板プレートセグメントに対して同時に材料層を供給するように構成されている。
【0048】
本発明に係る製造装置は、さらに、基板プレートセグメントが互いに取り外し可能に接続され、又は主担持体に取り外し可能に接続されるように発展させることができる。
【0049】
さらなる好ましい実施態様によれば、複数の基板プレートセグメント及び材料供給装置は、第1の基板プレートセグメントと、第1の造形物を製造するための基板プレートセグメントの上方に供給された材料層との間の最大の間隔が、もう1つの基板プレートセグメントと、もう1つの造形物を製造するためのもう1つの基板プレートセグメントの上方に供給された材料層との間の最大の間隔とは相違する態様で、互いに相対的に移動することができるようになっている。
【0050】
本発明のさらに好ましい形態に係る製造装置は、材料除去装置、とくに材料吸引除去装置(material suction removal device)を備えている点において、従来技術と相違する。この製造装置においては、材料除去装置は、完成した造形物を取り囲んでいる領域から非硬化材料を除去するように構成されている。また、材料除去装置は、第1の基板プレートセグメント上の完成した造形物の周囲の材料を除去し、これによりその隣のもう1つの基板プレートセグメント上の造形物の周囲の材料がそのまま残留するように配設されている。
【0051】
本発明に係る製造装置は、高エネルギビームの案内装置の動作(actuation)のための制御器(control)を備えているのが一層好ましい。この場合、製造装置は、次のような手法で案内装置を動作させるように構成される。すなわち、製造操作の最初の段階では、第1の基板プレートセグメント上の第1の造形物を製造するように機能する(serve)材料層の領域のみが選択的に硬化させられ、製造操作の最後の段階では、もう1つの基板プレートセグメント上のもう1つの造形物を製造するように機能する材料層の領域のみが選択的に硬化させられ、製造操作の中間段階、すなわち最初の段階と最後の段階の間の段階では、第1の造形物及びもう1つの造形物を製造するように機能する材料層の領域が選択的に硬化させられる。
【0052】
本発明に係る製造装置においては、複数の基板プレートセグメントが、処理室内においてその全部にわたって延び又は部分的に延びる無端輸送ベルトの上に配置されているのがさらに好ましい。この場合、処理室は、周囲環境に対して、制御された雰囲気とくに不活性ガス雰囲気を内部に生成することができるような程度に閉止される(sealed off)。そして、材料供給装置は、材料が第1の方向に供給されるような仕様に構成される。好ましくは、材料の流れ方向が供給方向とは逆の位置関係(opposite relationship)となるように、各基板プレートセグメントの表面に対する角度が設定される。
【0053】
さらに好ましい実施態様においては、本発明に係る製造装置は、基板プレートセグメント間に配置され、各基板プレートセグメントの上方の構築空間部(building space)を、隣の基板プレートセグメントの上方の構築空間部から仕切る仕切り壁を有している。
【0054】
これに関して、2つの基板プレートセグメント間の仕切り壁は、2つの基板プレートセグメントのうちの少なくとも一方に接続されているのが好ましい。また、この仕切り壁は、材料が仕切り壁と基板プレートセグメントとの間を通過することができないように、上記基プレートセグメント片に対してシールされる(seal off)ように構成されているのがとくに好ましい。
【0055】
本発明に係る製造装置は、高エネルギのビームの案内装置を動作させる(actuate)制御器を備えているのが一層好ましい。この場合、制御器は、供給された材料を硬化させることにより造形物を製造する操作を実施するときに仕切り壁が生成されるような態様で案内装置を動作させるように構成されている。
【0056】
本発明に係る製造装置は、すべての造形物、とくにすべての基板プレートセグメント上で製造された造形物のための、単一のビーム経路(beam path)によりとくに用いられる単一の放射線源を有しているのがとくに好ましい。
【0057】
本発明に係る製造装置は、下記の動作を行うように構成されている、高エネルギのビームの案内装置を動作させる制御器を備えているのがより一層好ましい。
・ 第1の造形物のx番目の断面の幾何学的データから得られた案内データに従って、n番目の材料層の上に高エネルギの放射線を案内する動作。
・ 高エネルギの放射線を作用させることにより、n番目の材料層の一部分を硬化させる動作。
・ 第1の造形物の(x+1)番目の断面の幾何学的データから得られた案内データに従って、(n+1)番目の材料層の上に高エネルギの放射線を案内し、高エネルギの放射線を作用させることにより、(n+1)番目の材料層の一部分を硬化させる動作。
・ 第2の造形物のy番目の断面の幾何学的データから得られた案内データに従って、n番目の材料層の上に高エネルギの放射線を案内し、高エネルギの放射線を作用させることにより、n番目の材料層の一部分を硬化させる動作。
・ 第2の造形物の(y+1)番目の断面の幾何学的データから得られた案内データに従って、(n+1)番目の材料層の上に高エネルギの放射線を案内し、高エネルギの放射線を作用させることにより、(n+1)番目の材料層の一部分を硬化させる動作。
なお、xはyと同一ではない。
【0058】
最後に、本発明に係る装置の発展形態(development)においては、材料供給装置に、硬化した材料領域の一部を除去するための、好ましくはそれ以前に供給された材料層の硬化した材料領域の表面研削(surface grinning)を行うための処理装置を配置することができる。
【0059】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る造形製造装置の製造部分の縦断面を示す概略側面図である。
【図2】本発明に係る造形製造装置の原理を示す概略図である。
【図3】無端輸送ベルトを備えた製造部分の縦断面を示す概略側面図である。
【図4】本発明のさらなる実施形態に係る製造部分の縦断面を示す概略側面図である。
【図5】本発明に係る造形製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、複数の基板プレートセグメント10a〜10c(substrate plate segments)を備えた基板プレート10(substrate plate)を示している。基板プレートセグメント10a〜10cは、これらの下側に配置された基板プレート担持体20(substrate plate carrier)に取り外し可能に連結されている。基板プレート担持体20及び基板プレートセグメント10a〜10cは、造形製造装置が運転状態にあるときには、基板プレートセグメント10a〜10cの表面が水平方向、すなわち重力の作用する方向と垂直な方向を向くように配置される。
【0062】
重力の作用する方向に関して、基板プレートセグメント10a〜10cの上側当接面(upper contact surface)の上方に、コーティング装置30(coating apparatus)が配置されている。コーティング装置30は、移動方向31に移動ないしは変位することができる。移動方向31は直線的であり、基板プレートセグメント10a〜10cの上側当接面によって定まる平面に対して角度α1をなす。水平方向に対して角度α1で傾斜する粉体層51(powder layer)は、基板プレートセグメント10a〜10cの上方において、移動方向31に沿った、コーティング装置30の周期的な往復移動(cyclic reciprocating movement)によって供給する(apply)ことができる。
【0063】
各基板プレートセグメント10a〜10cには加熱手段を組み込むことができる。この加熱手段は、基板プレートセグメント10a〜10cとその上に配置された粉体床50(powder bed)とを所望の温度に保持することができる。この加熱手段により、そしてコーティング装置30の領域において必要に応じて任意的に設けられ付着した粉体層51を加熱し又は粉体層51の温度を維持する1つ又は複数の放射加熱装置配列(radiating device arrays)及び/又は加熱ベルト(heating belts)により、選択的な硬化操作に先立って粉体が所望の予熱状態となるように、造形製造装置を最適な状態にすることができる。
【0064】
基板プレートセグメント10a〜10cは、水平方向と平行な移動方向11に、連続動作又は周期的に制御された擬似連続動作(quasi-continuous fashion)で進行させることができる。基板プレートセグメント10a〜10cの移動方向11の移動により、コーティング装置30により材料層を供給した後に、コーティング装置30が移動する平面と付着した層との間に、次に供給すべき材料層の高さないしは厚さに対応する間隔(spacing)が形成される。
【0065】
高出力レーザ装置である放射線源40が設けられている。この放射線源40は、そのビーム41が、供給された材料層の表面にほぼ垂直に、好ましくは正確に垂直に入射するように配置されている。放射線源40のビーム41は、ビーム偏向手段(beam deflection means)により、供給された材料層の予め設定された領域に入射してこの材料層を選択的に硬化させるように偏向させることができる。
【0066】
ビーム偏向手段は信号技術(signal technology)により制御器に結合されている。制御器には、少なくとも、それぞれ同時に製造すべき造形物のための製造データ(production data)が格納されている。製造データは、とくに、基板プレート上の各造形物の位置を特徴づける位置データ(positional data)と、各造形物の幾何学的形状を特徴づける形状データ(geometry data)とを含んでいる。形状データは、造形物の個々の断面の形状データがその中に含まれるように処理される。このような断面及びこの断面のために格納された形状データの各位置は、それぞれ、供給される材料層の位置と、この材料層における造形物の形状とに対応する。ここで、造形物の断面はこの材料層から生成される。図1に示す実施形態では、造形物は基板プレート上で直立し、それゆえ形状データは、この造形物を通って傾斜して延びる断面平面に対応する。
【0067】
図1から明らかなとおり、基板プレートセグメント10cの上側に粉体床50が供給されている(applied)。この粉体床50は、複数の粉体層からなり、基板プレートセグメントの上側における最大の高さないしは厚さはhである。この最大の高さhは、図1中の左側の領域において基板プレートセグメント10bの上側で実現されているが、移動方向11(conveyer direction)を示す矢印に対して反対側に位置する右側の領域では、まだ完全には実現されていない。むしろ、基板プレートセグメント10bの右側の領域では、基板プレートセグメント10aの左側の領域と同様に、粉体床の表面は角度α1でもって傾斜して延びている。
【0068】
造形製造された造形物60bは、基板プレートセグメント10bの上方において、粉体床内に硬化された形態で配置されている。同様に、造形物60aは、基板プレートセグメント10aの上方で造形製造される。この製造操作は、各粉体層51を供給した後、粉体層内の予め設定された領域を、放射線源40により選択的に硬化させるといった手順で実施される。その結果、基板プレートセグメントを移動方向11に進行させることにより、コーティング装置30の平面と以前に供給された材料層との間に、材料層の高さに対応する間隔が形成される。この後、コーティング装置30を移動方向31に沿って移動させることにより、更新されたコーティング操作(renewed coating operation)を実施する。このコーティング装置30には、研削装置(grinding device)を設けるのが好ましい。この場合、研削装置は、粉体が付着している位置の上流における粉体付着操作の移動方向もいずれかの位置に配置することができる。そして、研削装置は、以前に硬化させられた領域の最初の表面研削を実施する機能を有するように構成されている。かくして、造形製造された造形物の幾何学的な正確さ(geometrical truth)を向上させることができ、硬化させるべき次の領域との結合(binding)を強化することができる。これに代えて、コーティング装置の戻り行程移動(return stroke movement)の際に、すなわち選択的硬化を行う製造工程と更新された粉体を供給する製造工程との間で研削操作を実施することも可能である。この場合、粉体が供給される位置に対する、コーティング装置における研削装置の配置構成は自由に選択することができる。なぜなら、研削操作と粉体供給操作は、コーティング装置の同一の移動の際に同時に実施されることはないからである。
【0069】
この手順は、造形物60a全体が完成するまで繰り返し実施される。移動方向11の移動により、造形製造され前記のように完成された造形物60a、60bは左側に向かってさらに輸送される。そして、基板プレートから硬化されなかった粉体を適切に除去した後、造形物を除去することができる。
【0070】
図2は、製造装置(production arrangement)の実施可能な構成と、対応する操作手順とを示している。図2から明らかなとおり、基板プレートセグメント10a、10b、10c・・・は、水平な移動方向11において、右側から入口側供給閉室1000(intake charging lock)に供給され、入口側供給閉室1000内を同一の移動方向11に移動して通り抜け、処理室1010(process chamber)に入る。図1に示す製造部分(production portion)は処理室1010内に配置され、処理室1010内で図1に関して説明した製造操作が実施される。処理室1010内において、造形物の造形製造を適切に行った後、造形物は移動方向11のさらなる移動により、出口側排出閉室1020(outlet discharging lock)に送られ、これにより処理室1010から排出される。
【0071】
入口側供給閉室1000を介して、コーティングが施されていない基板プレートセグメントを入口側から供給し、出口側排出閉室1020を介して、造形製造された造形物を担持しているコーティングが施された基板プレートセグメントを排出することにより、処理室1010内を、造形製造に好ましい雰囲気、とくに不活性ガス雰囲気又は活性ガス雰囲気に維持することが可能となる。これにより、造形物の品質を確実に維持することが可能となる。
【0072】
図3は、第2の実施形態に係る造形製造のための製造部分(production portion)並びに造形製造された造形物の分離及び除去のための製造部分(production portion)を示している。この実施形態では、複数の基板プレートセグメント110a、110b、110cが、密接した1つの基板プレートを形成するような相互の並置関係(mutual juxtaposed relationship)でもって配置されている。基板プレートセグメント110a、110b、110cによって形成された基板プレートの上面は、水平方向に対して角度α2をなすように傾斜している。すなわち、この基板プレートの上面は、重力の作用する方向に対して(90°−α2)の角度をなしている。
【0073】
基板プレートセグメント110a、110b、110cの上に、水平な移動方向131に沿って周期的に(cyclically)往復移動することができるコーティング装置130が配置されている。ここで、コーティング装置130は、粉体容器から供給される粉体により粉体層を供給するのに用いることができる。粉体容器は、コーティング装置130に配置することができ、又はコーティング装置130の移動経路131(path of movement)に沿って配置することができる。
【0074】
粉体層は、基板プレートセグメント110a、110b、110cの上方において、コーティング装置130を用いてコーティング方向131に沿って移動させることにより付着させることができる。ここで、粉体層は、基板プレートセグメントの上面に対して角度α2をなすように配置される。
【0075】
各粉体層の予め設定された領域は、高出力レーザ装置の形態である2つの放射線源140a、140bを用いて各付着層を選択的に硬化させることにより、基板プレートセグメント110a、110b、110cの上で選択的に硬化させられる。これにより、基板プレートセグメント上において積層方式で(layer-wise)、造形物60a、60bが造形的に構築される。さらに、各造形物間又は一群の造形物間の材料層を適切かつ選択的に硬化させることにより、基板プレートセグメントの上方に、それぞれ分離壁61a〜61d(separating walls)が構築される。これらの分離壁は、基板プレートセグメントの上方の粉体床を、複数の粉体床領域に分割する(subdivide)。1つ又は複数の造形物は、各粉体床領域内に配置される。これらの造形物は同時に除去することができる。
【0076】
基板プレートセグメント110a、110b、110cは、無端輸送ベルト120(endless conveyor belt)に固定され、この無端輸送ベルト120によって、連続的又は非連続的ないしは間欠的に輸送方向11に進行させられる。製造領域Aにおいては、造形物の造形製造は、輸送方向111の移動によって実施され、かつコーティング装置130により粉体層の供給が繰り返される。この後、各付着層の選択的な硬化が実施される。この場合、粉体を供給するコーティング装置130は、基板プレートセグメントの移動方向111に対して角度α2をなす移動方向131に移動する。
【0077】
製造領域Bにおいては、吸引除去装置(suction removal apparatus)を用いて、硬化していない粉体材料が、造形製造された2つの分離壁61a〜61d間の領域から除去される。ここで、両分離壁と、造形製造され両分離壁間の領域で終端する(finished)造形物とが除去される。輸送方向111において、製造領域Bの下流で、基板プレートセグメントは方向変更ローラ(direction changing roller)に沿って案内され、輸送ベルト120の下側の走行経路(run)に入り、この下側の走行経路に沿って移動し、第2の方向変更ローラに至る。この第2の方向変更ローラで、基板プレートセグメントは再び上側の走行経路に案内される。これは、基板プレートセグメントに対して、粉体層を用いる更新されたコーティング操作と造形物の造形製造とを行うために実施される。
【0078】
過剰の粉体を捕集するために、捕集容器170(catch trough)が設けられている。過剰の粉体は、基板プレートセグメントの方向が変化する際に落下する。
【0079】
図3から明らかなとおり、個々の複数の造形物を、単一の基板プレートセグメント上で造形的に構築することができ、また単一の造形物を、複数の基板プレートセグメント上で造形的に構築することもできる。ここで、複数の造形物を1つの基板プレートセグメント上で製造するか、1つの造形物を複数の基板プレートセグメント上で製造するか、それとも各造形物を各基板プレートセグメント上で製造するかは、もっぱら、基板プレートセグメントの寸法と、該基板プレートセグメントの上で造形製造される造形物の寸法に依存する。とくに、担持体(supports)を用いることにより、1つの造形物を単一の基板プレートセグメント上で製造することも可能である。この場合、担持体の寸法は、基板プレートセグメント自体の寸法よりも大きい。
【0080】
図1中に示す実施形態及び図3中に示す実施形態のいずれにおいても、材料層供給方向と基板プレートセグメントの表面との間の角度α1、α2は、それぞれ、供給された粉体の安息角(angle of repose)よりも小さい。これは、このようにすることにより、重力の作用に対して、供給された粉体床の安定性を確保することができるからである。理論的には、図3に示す実施形態では、角度α2は、粉体の安息角より大きくてもよい。これは、分離壁61a〜61dにより粉体床が安定化させられ、かつ粉体層自体が水平に付着させられて水平に配置されるからである。
【0081】
図4は、代替的な実施形態を示す概略図である。この実施形態では、粉体層の供給が実施される平面と基板プレートセグメントの表面との間の角度α3は、粉体の安息角より大きくてもよい。この実施形態では、造形物260a〜260cはまた、基板プレートセグメント210a〜210c上で造形的に構築される。この場合、粉体床250は、これらの基板プレートセグメントの上方で製造される。粉体床250は、製造部分(production portion)内の基板プレートセグメントと平行に延びるカバープレート280により安定させられる。この場合、カバープレート280は、とくに基板プレートセグメントとともに連続的に進行させて、粉体床とカバープレート280との間の相対的な移動を防止することができる。
【0082】
図5は、造形製造される造形物を連続的に製造するための製造装置の概略図を示している。図5に示す実施形態は、図2に示す実施形態の代替物を示している。図2に示す実施形態とは対照的に、図5に示す実施形態では、造形製造及び造形製造プロセス(generative production process)からの造形物の除去に必要とされる全ての製造部分(production portion)が処理室1030内に配置されている。ここで、処理室は、制御された雰囲気、とくに不活性ガス雰囲気又は活性ガス雰囲気に保持される。
【0083】
図5から明らかなとおり、処理室1030内に、製造プロセスシステム(production process)が配置されている。このシステムは、理論的には、図1に示す製造プロセスシステムに対応する。しかしながら、図5に示す製造装置は、処理室内に図3又は図4に示す製造プロセスシステムを同様に配置した形態としてもよい。処理室1030は入口側供給閉室1040を有している。この入口側供給閉室1040を介して、造形物を担持していない、コーティングが施されていない新規の(fresh)基板プレートを導入することができ、かつこの基板プレートを無端輸送ベルトに固定することができる。この操作を手動で(manually)実施することを可能にするために、作業手袋1050(working grove)が、気密性を保つように(gas-tightly)配設されている。作業手袋1050は、基板プレートが入口側供給閉室1040から受け取って無端輸送ベルトに固定することが可能な領域に配置されている。
【0084】
さらに、処理室1030には、第2の閉室1060(lock)すなわち排出閉室が配設されている。この排出閉室1060(discharge lock)を介して処理室1030から、その上に完成された造形物が配置された基板プレートを排出することができる。この場合もまた、この操作を手動で実施することを可能にするために、排出閉室1060の領域内に作業手袋1070が配設されている。この作業手袋1070により、処理室1030内に手を入れる(engage into)ことが可能となる。かくして、その上に造形物が配置された基板プレートセグメントを無端輸送ベルトから除去することができ、かつ排出閉室1060を介して処理室1030からこの基板プレートセグメントを排出することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 基板プレート、10a〜10c 基板プレートセグメント、11 移動方向、20 基板プレート担持体、30 コーティング装置、31 移動方向、40 放射線源、50 粉体床、51 粉体層、60a 造形物、60b 造形物、60c 造形物、110 処理室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別的な形状をもつ造形物、とくに歯科用補綴物又は歯科用補助部品を製造するための方法であって、
選択的硬化、とくに選択的焼結又は選択的溶融により、基板プレートの表面上で複数の造形物を製造するステップと、
連続する複数の材料層の形態で硬化可能な材料を供給するステップと、
各材料層を供給した後、高エネルギの放射線により、1つ又は複数の予め設定した領域を選択的に硬化させ、これにより上記領域を、該材料層の下側の材料層の1つ又は複数の領域に接続するステップとを有していて、
上記1つ又は複数の予め設定した領域を、上記各材料層における上記造形物の断面形状に基づいて予め決定し、
上記連続する材料層を、上記基板プレートの表面に対して傾斜する材料層平面に供給することを特徴とする方法。
【請求項2】
上記連続する材料層の各々を、上記材料の安息角と同一の角度又は該安息角より小さい角度で供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記基板プレートを、2つの連続する材料層供給操作の間において、上記材料層が供給される平面と垂直な方向成分をもつよう移動させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記材料層が供給される領域における上記基板プレートの表面が、重力の方向に関する水平方向に対して傾斜して延びていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
上記の供給された複数の材料層を、該複数の材料層が供給された製造部分に隣り合って配置され、保持領域の形態となっている隣の製造部分に移動させるようにし、
上記の供給された複数の材料層によって形成された上記材料の上表面を、上記基板プレートの上記表面と平行に延びているカバープレートの下表面によって被覆及び担持させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
上記基板プレートの上記表面を、第1の基板プレートセグメントの第1の表面と、その他の1つの基板プレートセグメントの少なくとも1つの表面とに分割することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
上記複数の基板プレートセグメントを、互いに取り外し可能に接続し、又は主担持体に取り外し可能に接続し、
各基板プレートセグメントを、その表面に1つ又は複数の造形物を製造した後に、隣り合う基板プレートセグメント又は上記主担持体から取り外し、上記1つ又は複数の造形物をその他の処理ステップに供給することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記複数の材料層が供給される上記製造部分において、上記複数の基板プレートセグメントを、該複数の基板プレートセグメント間を材料が通過することができない互いに並列な関係で配設することを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
上記複数の基板プレートセグメントが、無端輸送装置の複数のセグメントの形態であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
上記複数の基板プレートセグメント間に、各基板プレートセグメントの上方の構築空間を、その隣の基板プレートセグメントの上方の構築空間から仕切る仕切り壁を設けることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
上記仕切り壁を、上記1つ又は複数の造形物の製造操作時に、上記の供給された材料を硬化させることにより作成することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各材料を供給する前に、その前に供給した材料層の硬化させられた領域に表面研削を施すことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
個別的な形状をもつ造形物を製造するための装置であって、
基板プレートと、
上記基板プレートに及び該基板プレートの上に材料層を供給する材料供給装置と、
高エネルギのビームを生成する放射線源と、
上記基板プレートに供給された材料層の予め設定された領域に上記ビームを案内するビーム案内手段とを備えていて、
上記材料供給装置が、上記材料が供給される上記基板プレートの表面に対して、とくに上記材料の安息角と同一の角度又は該安息角より小さい角度で傾斜する平面に、上記材料を供給するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
該装置が、上記基板プレートを複数の基板プレートセグメントに分割するように構成されていて、
上記材料供給装置が、上記複数の基板プレートセグメントに対して、同時に材料層を供給するように構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
上記基板プレートセグメントを、互いに取り外し可能に接続し、又は主担持体に取り外し可能に接続するように構成されていること特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
該装置が、上記高エネルギのビームを案内する上記ビーム案内手段を駆動する制御器を備えていて、
上記制御器は、供給された材料を硬化させることにより、上記造形物の製造操作時に仕切り壁を作成するよう、上記ビーム案内手段を駆動するように構成されていることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−45717(P2011−45717A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−187920(P2010−187920)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(503164959)ベゴ・メディカル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】BEGO Medical GmbH
【Fターム(参考)】