説明

連続鋳造圧延材の表面洗浄方法および表面洗浄装置

【課題】連続鋳造圧延材の表面の黒ずみを効率良く除去できる表面洗浄方法を提供し、さらに表面洗浄装置、洗浄した連続鋳造圧延材、二次加工を施した金属加工材を提供する。
【解決手段】鋳造に続いて圧延された連続鋳造圧延材S2に対し、酸洗浄21、23または苛性洗浄22を含む多段階洗浄を行う。また、好ましくは、前記多段階洗浄は、連続鋳造圧延に続いて連続鋳造圧延材を移動させながら行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、連続鋳造圧延材の表面品質を改善するための表面洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の連続鋳造方法として、外周部に凹溝が設けられた鋳造輪と、この凹溝を閉じる無端ベルトとを組み合わせて鋳造空間を形成し、この鋳造空間に溶湯を供給するとともにこれらの鋳造輪と無端ベルトを回転駆動させることにより鋳造材を連続的に製造する方法がある。一般的にこの鋳造の後には圧延機が設置され、連続的に鋳造材を圧延し、所望の形状を得ることができる。
【0003】
しかしながら、この連続鋳造圧延材は表面が黒ずむことがあり、押出加工材と比較すると表面品質が劣る場合がある。黒ずみと視認されるものには炭化物や酸化物が挙げられる。炭化物は、主に鋳造時に金型との凝着を防止するために使用される潤滑油が高温にさらされて炭化したものである。また、酸化物は、金属が鋳造され、その後高温に保持されるために、表層の添加元素、主にMgが酸化してMgOとなるために生じるものである。
【0004】
このため、連続鋳造圧延材の表面を切削除去したり、圧延に続いて加圧された水を噴射して表面を浄化する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭50−159423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の表面切削除去は材料歩留まりが悪く、しかも別工程で行うために、材料コストも工程コストも高くなるという問題点があった。また後者の水噴射による表面浄化では十分な洗浄効果が得られないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、連続鋳造圧延材の表面の黒ずみを効率良く除去できる表面洗浄方法を提供し、さらに前記洗浄方法を実施する表面洗浄装置、洗浄した連続鋳造圧延材、二次加工を施した金属加工材の提供を目的とする。
【0007】
本発明の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法は、下記〔1〕〜〔15〕に記載の構成を有する。
【0008】
〔1〕 鋳造に続いて圧延された連続鋳造圧延材に対し、酸洗浄または苛性洗浄を含む多段階洗浄を行うことを特徴とする連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0009】
〔2〕 前記多段階洗浄を連続鋳造圧延材を移動させながら行う前項1に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0010】
〔3〕 前記多段階洗浄を連続鋳造圧延に続いて行う前項2に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0011】
〔4〕 前記多段階洗浄を連続鋳造圧延後に別工程で行う前項2に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0012】
〔5〕 前記多段階洗浄を連続鋳造圧延材を切断した後に行う前項1に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0013】
〔6〕 前記多段階洗浄は、少なくとも1回の苛性洗浄および少なくとも1回の酸洗浄を含む前項1〜のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0014】
〔7〕 前記多段階洗浄は、苛性洗浄、酸洗浄の順に行う前項6に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0015】
〔8〕 前記多段階洗浄は、酸洗浄、苛性洗浄、酸洗浄の順に行う前項6に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0016】
〔9〕 前記酸洗浄における洗浄液は、硝酸、硫酸、塩酸のうちのいずれかである前項1〜8のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0017】
〔10〕 前記苛性洗浄における洗浄液は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液である前項1〜9のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0018】
〔11〕 前記酸洗浄または苛性洗浄における洗浄時間は、連続鋳造圧延材が各洗浄槽を通過するのに要する時間によって制御される前項1〜4、6〜10のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0019】
〔12〕 前記洗浄槽通過時間は、連続鋳造圧延材の移動方向における洗浄槽の長さによって設定される前項11に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0020】
〔13〕 前記洗浄槽通過時間は、洗浄槽内で連続鋳造圧延材を蛇行させ、その蛇行距離によって設定される前項11または12に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0021】
〔14〕 前記酸洗浄後または苛性洗浄後に水洗浄を行う前項1〜13のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0022】
〔15〕 連続鋳造は、複数の回転モールド部材を鋳造空間を囲んで対向配置し、これらの回転モールド部材を鋳出し方向に駆動することによって行われる前項1〜14のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【0023】
本発明の連続鋳造圧延材の表面洗浄装置は、下記〔16〕〔17〕に記載の構成を有する。
【0024】
〔16〕 鋳造に続いて圧延する連続鋳造圧延装置の後段に配置され、連続鋳造圧延材を酸洗浄液に接触させる酸洗浄槽または苛性洗浄液に接触させる苛性洗浄槽を含む複数の洗浄槽を備え、これらの洗浄槽が直列に配置されてなることを特徴とする連続鋳造圧延材の表面洗浄装置。
【0025】
〔17〕 連続鋳造圧延材を酸洗浄液に接触させる少なくとも1つの酸洗浄槽と、苛性洗浄液に接触させる少なくとも1つの苛性洗浄槽とを備える前項16に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄装置。
【0026】
本発明の連続鋳造圧延材は、下記〔18〕に記載の構成を有する。
【0027】
〔18〕 前項1〜15のいずれか1項に記載された連続鋳造圧延材の表面洗浄方法により洗浄されたことを特徴とする連続鋳造圧延材。
【0028】
本発明の金属加工材、下記〔19〕〔20〕に記載の構成を有する。
【0029】
〔19〕 前項18に記載された連続鋳造圧延材に二次加工してなることを特徴とする金属加工材。
【0030】
〔20〕 二次加工として、塑性加工、切削加工のうちの1種以上の加工を施された前項19に記載の金属加工材。
【発明の効果】
【0031】
〔1〕の発明にかかる連続鋳造圧延材の表面洗浄方法によれば、酸洗浄または苛性洗浄を含む多段階洗浄を行うことにより、鋳造圧延材表面の黒ずみを除去して表面品質の良い鋳造圧延材を製造することができる。
【0032】
〔2〕〜〔4〕の各発明によれば、連続鋳造圧延材が連続的に洗浄されるため、生産性が高くひいては低コスト化が可能となる。特に〔3〕の発明によれば連続鋳造圧延のライン上で洗浄されるために生産性が高い。
【0033】
〔5〕の発明によれば、多数の連続鋳造圧延材に対して同時に同一条件で洗浄できるから、洗浄液のpHや液温等の変動による影響を受けにくく、工程管理も容易である。また、洗浄条件の設定や変更が容易である。
【0034】
〔6〕〜〔10〕の各発明によれば、優れた洗浄効果を得ることができる。
【0035】
〔11〕〜〔13〕の各発明によれば、洗浄時間を調節できる。
【0036】
〔14〕の発明によれば、洗浄液を次段階に持ち越すことを防ぐことができる。
【0037】
〔15〕の発明によれば、表面洗浄を施す連続鋳造圧延材を製造できる。
【0038】
〔16〕の発明にかかる連続鋳造圧延材の表面洗浄装置によれば、連続鋳造圧延材を連続洗浄して黒ずみがなく表面品質の良い連続鋳造圧延材を効率良く製造することができる。
【0039】
〔17〕の発明によれば、優れた洗浄効果により、特に表面品質の良い連続鋳造圧延材を効率良く得ることができる。
【0040】
〔18〕の発明にかかる連続鋳造圧延材は、多段階で洗浄されたことにより、黒ずみがなく表面品質が優れている。
【0041】
〔19〕または〔20〕の発明にかかる金属加工材は、連続鋳造圧延材表面の金属酸化物や潤滑剤に由来する炭化物等の異物が除去されているため、健全な金属表面を有し、かつ任意形状の金属加工材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法において、多段階洗浄は連続鋳造圧延材を移動させながら行う(以下、「連続洗浄」と称する)ことができ、また連続鋳造圧延材を切断した後に行う(以下、「バッチ洗浄」と称する)こともできる。さらに、連続洗浄は連続鋳造圧延に続いて行うこともでき、連続鋳造圧延後に別工程で行うこともできる。
【0043】
連続鋳造圧延とは、連続ベルト、ホイール、ロール等の回転モールド部材を組み合わせた連続鋳造機の後段に圧延機を設置し、連続鋳造に続いて圧延するものであり、いわゆるプロペルチ法、SCR法、ハンター法、3C法、ロールキャスト法等が挙げられる。
〔連続洗浄〕
図1に、連続鋳造部(1)と圧延部(10)とからなる鋳造圧延装置の一例を示すとともに、この鋳造圧延装置の後段に配置され、連続鋳造圧延材の連続洗浄を実施する表面洗浄装置(20)の構成を示す。
【0044】
連続鋳造部(1)は、鋳造空間を形成する鋳造ホイール(2)と連続ベルト(3)とを備える。前記鋳造ホイール(2)は外周面に凹溝(4)を有し、ホイール(2)内部およびホイール(2)の外側に配置されたノズル(図示省略)から冷却水を供給することによって冷却可能となされている。一方、連続ベルト(3)は、前記鋳造ホイール(2)と張力調整用ホイール(5)とに掛けられた環状の無端ベルトであり、鋳造ホイール(2)の凹溝(4)を閉じて断面角形の鋳造空間を形成している。また、図1において、(6)は連続ベルト(3)を鋳造ホイール(2)に密着させるためのピンチロールであり、(7)は鋳造空間に溶湯(M)を供給するためのタンディッシュである。
【0045】
圧延部(10)は、複数組の3方向の圧延ロール(11)を有する。なお、図1においては2方向のロールのみを図示している。
【0046】
表面洗浄装置(20)において、第1酸洗浄槽(21)、苛性洗浄槽(22)、最終酸洗浄槽(23)が順次配置され、かつ各洗浄槽(21)(22)(23)の直後に水洗浄槽(24)(25)(26)が配置され、さらにその後段に乾燥槽(27)が配置されている。
【0047】
前記連続鋳造装置(1)において、タンディッシュ(7)から鋳造空間に供給された溶湯(M)は鋳造ホイール(2)および連続ベルト(3)からの冷却を受けて凝固し、鋳造ホイール(2)および連続ベルト(3)の回転駆動に伴って連続的に所定断面の鋳造材(S1)に成形される。そして、図2に示すように、前記鋳造材(S1)は圧延部(10)において断面円形の小径の圧延材(S2)に圧延される。
【0048】
前記圧延材(S2)は、表面洗浄装置(20)において、各槽(21)(24)(22)(25)(23)(26)を順次通過する間に、酸洗浄−水洗浄−苛性洗浄−水洗浄−酸洗浄−水洗浄がなされ、さらに乾燥槽(27)において表面に付着した水が除去されて乾燥される。この間に、圧延材(S2)表面に形成されて黒ずみと視認されていた酸化物や炭化物が除去され、表面品質の良好な線材が連続的に製造される。
【0049】
本発明では、酸洗浄または苛性洗浄を含む多段階洗浄を行うことによって、圧延材表面に形成された金属酸化物や炭化物が良好に除去され、表面品質の優れた圧延材が得られる。
【0050】
前記効果は酸洗浄または苛性洗浄のいずれか一方を含む多段階洗浄を行うことによって得られるが、苛性洗浄と酸洗浄の2種類の異なる洗浄を組み合わせることによって高い洗浄効果を奏することができ、特に最終洗浄を酸洗浄とすることが好ましく、苛性洗浄−酸洗浄の2段階洗浄を推奨できる。さらに、上記実施形態のように苛性洗浄の前に酸洗浄を加えた3段階洗浄を行うことによって、なお一層優れた洗浄効果を奏することができる。また、酸洗浄を加えることによってその後の苛性洗浄時間を短縮することができる。
【0051】
なお、本発明は上述した2段階または3段階の洗浄に限定されず、任意に組み合わせることができる。例えば、酸洗浄−苛性洗浄、苛性洗浄−酸洗浄−苛性洗浄、酸洗浄のみによる多段階洗浄、苛性洗浄のみによる多段階洗浄、4段階以上の多段階洗浄も本発明に含まれる。また、酸洗浄および苛性洗浄以外に界面活性剤による洗浄を追加しても良い。
【0052】
洗浄は洗浄液中に浸漬しても良いし、洗浄液を噴霧しても良い。浸漬洗浄の場合は、槽内に洗浄液を満たしておくだけでも良いが、圧延材表面に接する洗浄液の滞留を防ぐことにより、洗浄を促進させることができる。滞留防止手段としては、槽内の洗浄液の循環、槽外に溢れた洗浄液の回収・再供給を例示できる。また、超音波振動を加えることによっても洗浄効果を向上させることができる。
【0053】
また、酸洗浄および苛性洗浄後は、次の洗浄槽に洗浄液を持ち越さないように水洗浄することが好ましい。
【0054】
酸洗浄に用いる洗浄液としては、優れた洗浄効果を有する点で硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、塩酸、フッ酸またはこれらを混合したものを例示できる。特に硝酸、硫酸、塩酸が好ましく、さらに硝酸または硫酸が好ましい。洗浄液のpHは5以下が好ましく、特にpH1〜3が好ましい。また、液温は20〜80℃が好ましい。
【0055】
苛性洗浄に用いる洗浄液は、優れた洗浄効果を有する点で水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液、またはこれらを混合したものを例示でき、特に水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。洗浄液のpHは9以上が好ましく、特に12〜14が好ましい。また、液温は20〜80℃が好ましい。
【0056】
上記酸洗浄および苛性洗浄における洗浄時間は限定されず、連続鋳造圧延材表面の黒ずみの程度、洗浄液のpH、液温等に応じて適宜設定すれば良い。また、酸洗浄液および苛性洗浄液には、洗浄効果を向上させるために添加剤を加えることも好ましい。例えば、苛性洗浄液においては、溶存する金属が過飽和になった際に固いスケールとなるのを防止するために、微量のグルコン酸ナトリウムを添加する場合がある。また、酸洗浄および苛性洗浄後は、次の洗浄槽に洗浄液を持ち越さないように水洗浄することが好ましい。
【0057】
連続洗浄では、連続鋳造圧延材の移動速度が鋳造圧延速度に律速され、その速度で移動させながら洗浄を行う必要がある。このため、各洗浄段階における洗浄時間は、連続鋳造圧延材が洗浄液に接触する時間、即ち連続鋳造圧延材が洗浄槽を通過するのに要する時間によって設定されることになる。具体的には、連続鋳造圧延材の移動方向における洗浄槽の長さによって設定する方法、洗浄槽内で連続鋳造圧延材を蛇行させるとともに蛇行距離によって設定する方法を例示できる。
【0058】
また、連続鋳造圧延材の洗浄は、連続鋳造圧延材を常温まで冷却させた後に行っても良いが、高温(例えば400℃)のままで行うこともできる。
【0059】
高温のままで洗浄する場合は、洗浄液が常温のままであっても高温の圧延材との接触により洗浄液が加熱されるために、洗浄槽に加熱装置を取り付けた場合と同様の効果が得られる。この場合、各洗浄槽で水分が気化して洗浄液のpH変化が大きなものになることがある。その際は、随時水分を補給し、攪拌または循環させることにより最適pH(最適濃度)を保つことができる。また、最初の洗浄槽の前段に水冷槽を設ければ、後段の酸洗浄槽または苛性洗浄槽における水分気化による洗浄液のpH変化を抑えることができる。さらに、各洗浄槽に冷却装置を取り付けることにより、連続鋳造圧延材の持つ熱や反応熱による温度上昇を防ぐことができる。また、所期する洗浄液温度が室温より低い場合には、ヒーター等の加熱装置を取り付けることも任意である。
【0060】
以上の連続洗浄では、連続鋳造圧延のライン上で連続的に表面洗浄されるため、生産性が高くひいては低コスト化が可能となる。
【0061】
また、多段階洗浄を連続鋳造圧延とは別の工程で行う場合は、コイルに巻き取った連続鋳造圧延材を巻き戻しながら上述した多段階の洗浄槽を通過させる。各洗浄時間の調整は、同様に、洗浄槽の長さや蛇行距離によって適宜設定する。このように多段階洗浄を別工程で行った場合においても、従来の表面切削による黒ずみ除去方法と比較して十分に生産性の高いものとなる。
〔バッチ洗浄〕
連続鋳造圧延材をバッチ洗浄する場合は、連続鋳造圧延材を所要長さに切断後に多段階洗浄を行う。
【0062】
連続鋳造圧延材の製作は、上述した連続洗浄における連続鋳造圧延材の製作に準じ、例えば連続鋳造部(1)と圧延部(10)とからなる鋳造圧延装置によって行う。切断は、連続鋳造圧延に続いて行っても良いし、コイルに巻き取った後に巻戻しながら行っても良い。
【0063】
多段階洗浄は、洗浄槽ごとにバッチ式で行い、洗浄液の種類、pH、液温の設定、洗浄液の組合せおよび洗浄順序も上述した連続洗浄に準じる。
【0064】
バッチ洗浄では、多数の連続鋳造圧延材に対して同時に同一条件で洗浄できるから、洗浄液のpHや液温等の変動による影響を受けにくく、工程管理も容易である。また、連続鋳造圧延とは別工程で行うから、洗浄条件の設定や変更が容易である。
【0065】
本発明の洗浄方法を適用する連続鋳造圧延材の製造方法は何ら限定されないが、回転モールド部材の回転によって連続鋳造され、さらに圧延されたものを推奨できる。また、回転モールド部材としては、図示例の鋳造ホイールと連続ベルトの組合せや、回転軸線と平行に所定距離を隔てて対向配置された一対のロールを例示できる。また、圧延方法も何ら限定されない。
【0066】
本発明は、銅、鉄、アルミニウム等のあらゆる金属の連続鋳造圧延材の表面洗浄に適用でき、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面洗浄方法として推奨できる。また、連続鋳造圧延材は断面円形材や板材が一般的であるが、断面形状、断面直径、板厚等の寸法を限定するものではない。また、断面円形材や板材に限らず異形断面材にも適用できる。
【0067】
本発明の金属鋳造圧延材は、上述した多段階洗浄によって表面洗浄されたものであり、表面の黒ずみが除去されて表面品質に優れたものである。
【0068】
さらに、前記金属鋳造圧延材に対し、二次加工を施すことによって任意形状の金属加工材を得ることができる。二次加工として塑性加工、切削加工のうちの1種以上の加工方法を例示できる。前記塑性加工としては、圧延、押出、引き抜き、鍛造、曲げ、プレス等を例示できる。また圧延後に引き抜く等2種類以上の塑性加工を順次施することも任意である。また、塑性加工後に切削加工することも任意である。製品形状も限定されない。これらの金属加工材は、金属鋳造圧延材表面の金属酸化物や潤滑剤に由来する炭化物等の異物が除去されているためにこれらの持ち越しがなく、健全な金属表面となる。
【実施例】
【0069】
図1に示す連続鋳造部(1)と圧延部(10)とからなる鋳造圧延装置、および表面洗浄装置(20)を用い、鋳造圧延材の製作に続いて表面洗浄試験を行った。表面洗浄装置(20)の洗浄槽(21)〜(27)は、洗浄工程に応じて適宜増減または配置変更するものとし、いずれの洗浄槽においても洗浄液中に所定時間浸漬するものとした。
【0070】
以下の洗浄試験A〜Eおよび比較洗浄試験において、鋳造材料としてJIS A6061を用い、図2に参照されるように、連続鋳造部(1)において断面多角形の鋳造材(S1)を製作し、圧延部(10)において直径30mmの丸棒状の圧延材(S2)に圧延した。
〔洗浄試験A〕
前記表面洗浄装置(20)に示す洗浄槽のうち、苛性洗浄槽(22)、水洗浄槽(25)、最終酸洗浄槽(23)、水洗浄槽(26)を用い、圧延材(S2)に対して表1に示す条件で苛性洗浄および酸洗浄を行い、さらに乾燥させた。また、洗浄時間の調節は鋳造圧延の速度調整により行った。
【0071】
【表1】

【0072】
〔洗浄試験B〕
洗浄試験Aとは、洗浄液および洗浄時間を表2に示す条件に変えて苛性洗浄および酸性洗浄を行った。また、洗浄時間の調節は鋳造圧延の速度調整および洗浄槽の長さの変更により行った。
【0073】
上記洗浄において、苛性洗浄槽(22)は事前に50℃までヒーターにて加熱し、その後ヒーターにて50℃に保持していたが、圧延材(S2)を200℃の高温のままで洗浄槽(22)を通過させたところ、通過中のヒーターの消費電力は事前の50℃保持時に比べて半減した。
【0074】
【表2】

【0075】
〔洗浄試験C〕
前記表面洗浄装置(20)の全ての洗浄槽、即ち、第1酸洗浄槽(21)、水洗浄槽(24)、苛性洗浄槽(22)、水洗浄槽(25)、最終酸洗浄槽(23)、水洗浄槽(26)を用い、圧延材(S2)に対して、表3に示す洗浄液により第1酸洗浄、苛性洗浄および酸洗浄を行い、さらに乾燥させた。また、洗浄時間の調節は鋳造圧延の速度調整および洗浄槽の長さの変更により行った。
【0076】
【表3】

【0077】
〔洗浄試験D〕
洗浄試験Cとは、洗浄液および洗浄時間を表4に示す条件に変えて第1酸洗浄、苛性洗浄および酸洗浄を行った。また、洗浄時間の調節は鋳造圧延の速度調整および洗浄槽の長さの変更により行った。
【0078】
【表4】

【0079】
〔洗浄試験E〕
前記表面洗浄装置(20)に示す洗浄槽のうち、酸洗浄槽(21)、水洗浄槽(24)、苛性洗浄槽(22)、水洗浄槽(25)を用い、圧延材(S2)に対して表5に示す条件で酸洗浄および苛性洗浄を行い、さらに乾燥させた。また、洗浄時間の調節は鋳造圧延の速度調整および洗浄槽の長さの変更ににより行った。
【0080】
【表5】

【0081】
〔比較洗浄試験〕
圧延材(S2)に対し、表6に示す条件で1段階の酸洗浄(酸洗浄後の水洗浄を含む)、苛性洗浄(苛性洗浄後の水洗浄を含む)を行った。洗浄は洗浄液中に浸漬することにより行い、洗浄時間の調節は鋳造圧延の速度調整および洗浄槽の長さの変更により行った。
【0082】
【表6】

【0083】
表面洗浄した各圧延材について、肉眼観察により表面の黒ずみを観察し、その除去率を求めた。黒ずみ除去率を各表に示す。
【0084】
表1〜6の結果から、酸洗浄または苛性洗浄を含む多段階洗浄を行うことにより鋳造圧延材表面の黒ずみを除去できることを確認した。
【0085】
また、製作した圧延材(S2)をコイルに巻き取り、その後巻き戻しながら洗浄試験A〜Eおよび比較洗浄試験と同じ工程で連続的な多段階洗浄をしたところ、同等の洗浄効果を得て黒ずみを除去することができた。
【0086】
さらに、製作した圧延材(S2)を短尺に切断し、洗浄試験A〜Eおよび比較洗浄試験と同じ洗浄液を用いてバッチ方式で浸漬洗浄したところ、上記連続洗浄と同等の洗浄効果を得て黒ずみを除去することができた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の表面洗浄方法は各種金属の鋳造圧延材に適用し、表面に黒ずみがなく表面品質の良い圧延材の製造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法を実施する表面洗浄装置の模式的構成図である。
【図2】連続鋳造材を圧延する過程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1…連続鋳造部
10…圧延部
20…表面洗浄部
21…第1酸洗浄槽
22…苛性洗浄槽
23…最終酸洗浄槽
24,25,26…水洗浄槽
27…乾燥槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造に続いて圧延された連続鋳造圧延材に対し、酸洗浄または苛性洗浄を含む多段階洗浄を行うことを特徴とする連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項2】
前記多段階洗浄を連続鋳造圧延材を移動させながら行う請求項1に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項3】
前記多段階洗浄を連続鋳造圧延に続いて行う請求項2に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項4】
前記多段階洗浄を連続鋳造圧延後に別工程で行う請求項2に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項5】
前記多段階洗浄を連続鋳造圧延材を切断した後に行う請求項1に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項6】
前記多段階洗浄は、少なくとも1回の苛性洗浄および少なくとも1回の酸洗浄を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項7】
前記多段階洗浄は、苛性洗浄、酸洗浄の順に行う請求項6に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項8】
前記多段階洗浄は、酸洗浄、苛性洗浄、酸洗浄の順に行う請求項6に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項9】
前記酸洗浄における洗浄液は、硝酸、硫酸、塩酸のうちのいずれかである請求項1〜8のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項10】
前記苛性洗浄における洗浄液は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液である請求項1〜9のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項11】
前記酸洗浄または苛性洗浄における洗浄時間は、連続鋳造圧延材が各洗浄槽を通過するのに要する時間によって制御される請求項1〜4、6〜10のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄槽通過時間は、連続鋳造圧延材の移動方向における洗浄槽の長さによって設定される請求項11に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項13】
前記洗浄槽通過時間は、洗浄槽内で連続鋳造圧延材を蛇行させ、その蛇行距離によって設定される請求項11または12に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項14】
前記酸洗浄後または苛性洗浄後に水洗浄を行う請求項1〜13のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項15】
連続鋳造は、複数の回転モールド部材を鋳造空間を囲んで対向配置し、これらの回転モールド部材を鋳出し方向に駆動することによって行われる請求項1〜14のいずれか1項に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄方法。
【請求項16】
鋳造に続いて圧延する連続鋳造圧延装置の後段に配置され、連続鋳造圧延材を酸洗浄液に接触させる酸洗浄槽または苛性洗浄液に接触させる苛性洗浄槽を含む複数の洗浄槽を備え、これらの洗浄槽が直列に配置されてなることを特徴とする連続鋳造圧延材の表面洗浄装置。
【請求項17】
連続鋳造圧延材を酸洗浄液に接触させる少なくとも1つの酸洗浄槽と、苛性洗浄液に接触させる少なくとも1つの苛性洗浄槽とを備える請求項16に記載の連続鋳造圧延材の表面洗浄装置。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載された連続鋳造圧延材の表面洗浄方法により洗浄されたことを特徴とする連続鋳造圧延材。
【請求項19】
請求項18に記載された連続鋳造圧延材に二次加工してなることを特徴とする金属加工材。
【請求項20】
二次加工として、塑性加工、切削加工のうちの1種以上の加工を施された請求項19に記載の金属加工材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−118037(P2006−118037A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233664(P2005−233664)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】