説明

連続鋳造用浸漬ノズルおよび連続鋳造方法

【課題】 断面が長方形のモールドを用いて電磁撹拌しながら連続鋳造するとき、鋳片に非金属介在物による欠陥が少なく、清浄度の高い鋼を鋳造することができる浸漬ノズルを提供する。
【解決手段】 ノズル先端側面に周方向の90度毎に吐出口3を配して計4つの吐出口3を均等間隔に配した浸漬ノズル1において、隣り合う90度毎の吐出口3の口径を相違する大きさとし、かつ、一つ置きの180度毎の吐出口3の口径を同一の大きさとし、これらの4つの吐出口3のうち小径である2つの吐出口3bの開口面積を大径である2つの吐出口3aの各開口面積の50%〜95%とした連続鋳造用の浸漬ノズル1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き抜き方向に直角な断面形状が長方形である鋼ブルームの連続鋳造において、電磁攪拌によりモールド内の溶鋼に旋回流を印可しながら連続鋳造する際に非金属介在物の巻き込みを防止しながら連続鋳造する方法およびその方法に使用する連続鋳造用浸漬ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の連続鋳造、特に溶鋼の連続鋳造においては、モールド内における凝固過程の安定性と、製品の欠陥の原因となる鋳片内の非金属介在物の低減が求められている。このような溶鋼の連続鋳造においては、モールド内に溶鋼を注入する手段として、耐火物製の浸漬ノズルが使用される。この耐火物製の浸漬ノズルには種々の形状のものがあるが、ブルームなどを鋳造する際には、4孔の吐出口を有する浸漬ノズルを用いることが多い。また、連続鋳造時は、偏析防止や介在物の浮上促進などの観点から、図5に示すように、モールド4の外周の電磁撹拌装置5からモールド電磁撹拌(以下、「M−EMS」という。)を印可し、モールド4内の溶鋼6に図6に示す旋回流10を与えることが必須となっている。しかし、図5に示すように、浸漬ノズル1からの吐出流8はモールド側壁4aに当たって、図6に示すように反転流9を生成し、その流れがM−EMSによる旋回流10とメニスカスにおいて衝突して渦11を発生する。このため、メニスカス上に溶融しているモールドパウダー7が溶鋼6内に巻き込まれて鋳片内にトラップされ、これが非金属介在物の元となることが考えられている。なお、図5において、モールド4内の溶鋼6は引き抜きにつれて周囲に凝固殻6aが形成される。
【0003】
したがって、M−EMSを印加する連続鋳造方法では、メニスカスの流れを安定化させることが重要であり、このために浸漬ノズルの形状を規定することでメニスカスの流れを安定させる方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この提案のものは、モールド内に挿入される管状の浸漬ノズルからなり、この浸漬ノズルの先端よりの側面に溶鋼を噴出する吐出口を開口すると共に、浸漬ノズルの軸方向の先端面に浸漬ノズルの内径よりも小さな径の補助吐出口を開設している連続鋳造用の浸漬ノズルである。しかし、このものはモールド内メニスカスでの溶鋼置換を想定しておらず、浸漬ノズルの先端面に孔を開けるだけでは、連続鋳片の引き抜き時にプレークアウトを起こす危険性があり、安定した連続鋳造を実現しにくい問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平06−328210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、引き抜き方向に直角な断面が長方形であるモールドを使用してM−EMSを印可した状態でブルームを連続鋳造するときに、鋳片内に非金属介在物の巻き込みによる欠陥が少なく、かつ、清浄度の高い鋼を安定して連続鋳造することを可能とする形状の浸漬ノズルを提供し、さらに、その浸漬ノズルを用いた清浄度の高い鋼の連続鋳造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、ノズル先端側の側面に周方向の90度毎に各1つの吐出口3を配して計4つの吐出口3を均等間隔に配する浸漬ノズル1において、隣り合う90度毎の吐出口3の口径を相違する大きさとし、かつ、一つ置きの180度毎の吐出口3の口径を同一の大きさとし、これらの4つの吐出口3のうち小径である2つの吐出口3bの各開口面積を大径である2つの吐出口3aの各開口面積の50%〜95%としたことを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル1である。
【0007】
請求項2の発明では、断面長方形のモールド4内の溶鋼6に電磁攪拌によって旋回流10を発生させながら鋳片20を連続鋳造する方法において、請求項1に記載の浸漬ノズル1を用いてその小径である2つの吐出口3bの向きを電磁撹拌による溶鋼6の旋回流10を加速する方向15に配置し、その大径である2つの吐出口3aの向きを電磁撹拌による溶鋼6の旋回流10を減速する方向14に配置してモールド4内に注湯することを特徴とする連続鋳造方法である。
【0008】
上記の手段の作用について説明すると、請求項1の手段では、吐出口3の口径の開口面積の範囲として、小径である吐出口3bの開口面積が大径である吐出口3aの95%を超える場合は、吐出口からの流れに差が生じず、M−EMSによる溶鋼6の流れに与える影響が、4口が全て同じ大きさの浸漬ノズルを用いた時と変わらないため、メニスカスでの渦11の発生を緩和する明確な効果が得られず、さらに小径である吐出口3bの開口面積が大径である吐出口3aの50%未満の場合は、M−EMSによる溶鋼6の流れの流速の差が大きすぎ、かえって吐出流8の流速のバランスが悪くなることに加えて、大径である吐出口3aが閉塞する可能性が高くなることによる。
【0009】
請求項2の手段では、連続鋳造設備におけるモールド4の長辺4bと短辺4cの比を1.1〜1.5、望ましくは1.2〜1.3とする長方形のモールド4とするとき、この長方形のモールド4内で溶鋼6をM−EMSすると、M−EMSによる溶鋼6の主流は、図2に示すように、ほぼ楕円形の旋回流10となる。ところで、このM−EMSによる溶鋼6の旋回流10を生じている状態のモールド4内では、図3に示すように、旋回流10がモールド4の短辺4cから長辺4bに替わる部分では吐出流8を減速する旋回流10となる。この替わる部分を図3で流れの減速箇所12として示している。一方、モールド4の長辺4bから短辺4cに替わる部分では吐出流8を加速する旋回流10となり、この替わる部分を図3で流れの加速箇所13で示している。
【0010】
そこで、M−EMSによるこの旋回流10を生じている状態で、浸漬ノズル1の周囲に4つの同じ大きさの口径の吐出口3を均等間隔に配した浸漬ノズル1を使用し、吐出口3をモールド4の隅部に向けて溶鋼6をモールド4内に吐出するとき、これらの4つの吐出口3のうち、対向する2つ吐出口3は吐出流8を旋回流10の減速する方向14に、残りの他の対向する2つの吐出口3は吐出流8を旋回流10の加速する方向15にそれぞれ向くこととなり、吐出流8に結果的に強弱が生じる。このうちの強い吐出流8はモールド側壁4aに当たった後に溶鋼6のメニスカスの部分で反転流9となり、それらの流れが表面でのM−EMSによる旋回流10と衝突して渦11を発生する。この発生した渦11は溶鋼6の表面上のモールドパウダー7を溶鋼6内に巻き込み、得られた鋳片20に非金属介在物を含有する原因になると考えられている。
【0011】
そこで、図3に示すように、請求項2の手段では、浸漬ノズル1の吐出口3が小径の2つと大径の2つからなる計4つの吐出口3のうち、吐出流8が加速される方向を吐出口3の小径からの流れの向き17とし、これに小径の吐出口の向き18を合わせ、吐出流8が減速される方向を吐出口3の大径からの流れの向き16とし、これに大径の吐出口の向き19とすることで、モールド4内での4つの吐出口3から出る流れの強さを均一になるようにし、メニスカスでの渦11の発生を緩和し、モールドパウダー7の鋳片20中への巻き込みによる非金属介在物を減少するものである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明における大径の吐出口と小径の吐出口を交互に計4つを均等にノズル周辺に配した浸漬ノズルとし、この浸漬ノズルを使用して長方形のモールドに連続鋳造することにより、モールドパウダーに起因する鋳片内の欠陥の低減を図ることができ、清浄度の高い鋼を連続鋳造することができるなど、本発明は優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態について、以下の実施の形態を通じて詳細に説明する。浸漬ノズル1から溶鋼6を断面が490mmX380mmの内径の長方形のモールド4に注湯し、モールド4内の溶鋼6をモールド4の周囲の電磁撹拌装置5により電磁撹拌しながら、鋳造速度0.5m/minで鋳片20に連続鋳造する。この場合に使用した浸漬ノズル1の先端部の形状を図1に示す。さらに、この浸漬ノズル1のノズル仕様とこの浸漬ノズル1を用いて連続鋳造した鋳片20に巻き込まれた非金属介在物の個数をパウダー介在物指数として表1に示す。
【0014】
使用した浸漬ノズル1の大径の吐出口3aの口径は、表1の大径吐出口径(mm)で示す。この見方を、例として比較例1で説明すると、比較例1の50×30,r=15は、図4に示す縦長の長孔3cからなる大径の吐出口3aを示し、この場合、長孔3cの縦径3dが50mm、横径3eが30mmからなる縦長の長孔3cを示している。さらにこの長孔3cの4隅のアールが15mmであること示している。この表1では、使用した浸漬ノズル1のノズル内径2は全てφ60mmである。なお、表1の大径吐出口径の欄において、例えば比較例4で、φ40とのみ記載されているものは、大径の吐出口3aの形状が円孔でその直径が40mmであることを示している。
【0015】
【表1】

【0016】
なお、表1のパウダー介在物指数は、上記の浸漬ノズル1を使用して具体的にはφ167mmの鋳片20を連続鋳造し、この鋳片20の中心から40mmの位置を中心とした40mmX40mmで長さ70mmのテストピースを切り出し、それらをスライム溶解したのち、スライム溶解で抽出された37μm以上の非金属介在物のうち、EPMAを用いて、モールドパウダー成分である、Na2O、SiO2、Al23、CaOの各酸化物を含んでいる非金属介在物の個数を数え、比較例1のその個数を100とする指数で表し、これと対比してそれぞれの比較例及び本発明例の非金属介在物の個数の割合を表したものである。
【0017】
本発明では、パウダー介在物指数は80以下となることが望ましい。比較例1、2、4、6、8のように浸漬ノズル1の吐出口3の口径が小径の吐出口3bと大径の吐出口3aの面積比が95%を超える場合や、比較例3、5、7、9の様に吐出口3の口径が小径の吐出口3bと大径の吐出口3aの面積比が50%未満の場合は、メニスカスでの渦11の発生の抑制ができず、モールドパウダー系の非金属介在物が鋳片20中に高いことを示している。
【0018】
また、本発明例1〜5のように、吐出口3の口径が小径の吐出口3bと大径の吐出口3aの面積比を50〜95%とすることで、吐出流8の均一化が図れる結果、メニスカスでの渦11の発生が抑制され、モールドパウダー系の非金属介在物の個数が鋳片20中で低減されていることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の浸漬ノズルの先端部を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明における長方形のモールド内の電磁撹拌による旋回流と浸漬ノズルの吐出口の向きを示す模式的平面図である。
【図3】本発明における長方形のモールド内の電磁撹拌による旋回流と浸漬ノズルからの吐出流の向きを示す模式的平面図である。
【図4】本発明の浸漬ノズルの大径の吐出口の形状を模式的に説明する図である。
【図5】従来の浸漬ノズルを備えたモールド内を模式的に示す断面図である。
【図6】従来の長方形のモールド内の溶鋼の流れを模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 浸漬ノズル
2 ノズル内径
3 吐出口
3a 大径の吐出口
3b 小径の吐出口
3c 長孔
3d 縦径
3e 横径
4 モールド
4a モールド側壁
4b 長辺
4c 短辺
5 電磁撹拌装置
6 溶鋼
6a 凝固殻
7 7モールドパウダー
8 吐出流
9 反転流
10 旋回流
11 渦
12 流れの減速箇所
13 流れの加速箇所
14 減速する方向
15 加速する方向
16 大径からの流れの向き
17 小径からの流れの向き
18 小径の吐出口の向き
19 大径の吐出口の向き
20 鋳片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル先端側の側面に周方向の90度毎に各1つの吐出口を配して計4つの吐出口を均等間隔に配する浸漬ノズルにおいて、隣り合う90度毎の吐出口の口径を相違する大きさとし、かつ、一つ置きの180度毎の吐出口の口径を同一の大きさとし、これらの4つの吐出口のうち小径である2つの吐出口の各開口面積を大径である2つの吐出口の各開口面積の50%〜95%としたことを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項2】
断面長方形のモールド内の溶鋼に電磁攪拌によって旋回流を発生させながら鋳片を連続鋳造する方法において、請求項1に記載の浸漬ノズルを用いてその小径である2つの吐出口の向きを電磁撹拌による溶鋼の旋回流を加速する方向に配置し、その大径である2つの吐出口の向きを電磁撹拌による溶鋼の旋回流を減速する方向に配置してモールド内に注湯することを特徴とする連続鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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