説明

遅延時間検出装置、遅延時間検出方法、遅延時間検出機および遅延時間検出プログラム

【課題】送信機100と受信機200の同期が不要で、かつ、直接波と反射波の到来方位を推定する必要がなく、直接波と反射波が混成した受信信号から直接波と反射波を識別でき、かつ、直接波と反射波との遅延時間差を検出できるようにすることを目的とする。
【解決手段】送信機100において変調器130が振幅変調と周波数変調と位相変調とのいずれかの変調を行い、送信器120が振幅と周波数と位相とのいずれかに特定の変化を有する送信波を送信アンテナ110を介して送信する。受信機200において受信器220が受信アンテナ210を介して送信機100からの直接波と目標物300で反射した反射波とそれ他の不要波とを混成波として受信し、復調器230が混成波を復調し、遅延時間検出器240が特定の変化を有する直接波と反射波とを混成波から識別し、直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を送信波と反射波との遅延時間差として算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、送信機からの直接波の遅延時間と目標からの反射波の遅延時間との遅延時間差を用いて目標の位置を探知する目標探知装置において、送信機と受信機を同期させることなく、送信機からの直接波と目標からの反射波とが混成した受信信号から直接波と反射波との遅延時間差を検出する遅延時間検出装置、遅延時間検出方法、遅延時間検出機および遅延時間検出プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信機からの直接波と目標からの反射波とを受信するバイスタティックレーダ装置は、送信機と受信機が異なるプラットフォームに搭載され、送信機と受信機を同期させ、微弱な目標からの反射波を受信するために直接波と反射波とをそれぞれ別々のアンテナで受信する必要があった。
その点を解決した特許文献1に開示されたパッシブレーダ装置は、MUSIC等の超分解能アルゴリズムを用いることによって同一の受信アンテナで直接波と反射波を分離抽出することを可能にした。しかし、特許文献1に開示されたパッシブレーダ装置は、直接波と反射波とを分離抽出するために、複数の素子アンテナからなるアンテナ装置と複雑な処理を実行して直接波と反射波の到来方向を推定する方位推定装置とを必要とした。
【0003】
図12は特許文献1に開示されたパッシブレーダ装置を示す図である。
図において、813は送信源、814は目標、815はアンテナ装置、816は受信装置、817は方位推定装置、818は信号分離装置、819は相関処理装置、820は積分処理装置、821は目標検出装置、822は表示装置である。
図12に示すパッシブレーダ装置は、送信源813からの直接波及び目標814からの反射波をアンテナ装置815で受信し、受信装置816で受信信号に変換して、方位推定装置817へ入力する。そして、方位推定装置817は、信号分離装置818が送信源813からの送信波と目標814からの反射波とを分離抽出できるようにするために、複雑な処理を実行して直接波と反射波の到来方向を推定する必要があった。また、パッシブレーダ装置は、方位推定装置817が直接波と反射波の到来方位を推定できるようにするために、複数の素子アンテナからなるアンテナ装置815を有する必要があった。
【特許文献1】特開2002−181925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来のバイスタティックレーダ装置は、送信機と受信機を同期させ、直接波と反射波をそれぞれ別々のアンテナで受信する必要があり、小型化できないという課題があった。
また、直接波と反射波を同一の受信アンテナで受信するパッシブレーダ装置は、直接波と反射波とを識別するために、複数の素子アンテナからなる受信アンテナと複雑な処理を実行する方位推定装置とを用いて直接波と反射波の到来方位を推定する必要があった。
【0005】
本発明は、例えば、送信機からの直接波の遅延時間と目標からの反射波の遅延時間との遅延時間差を用いて目標の位置を探知するシステム(目標探知装置)において、送信機と受信機の同期が不要で、かつ、直接波と反射波の到来方位を推定する必要がなく、直接波と反射波が混成した受信信号から直接波と反射波を識別でき、かつ、送信機からの直接波の遅延時間と目標からの反射波の遅延時間との遅延時間差を検出できる遅延時間検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遅延時間検出装置は、変調して特定の変化を与えた電磁波を送信波として発信する送信機と、前記送信機の発信した送信波が目標物で反射した反射波と前記送信機の発信した送信波が目標物で反射せずに直接到達した直接波と前記送信機の発信した送信波に基づく反射波および直接波以外の不要波とが含まれる混成波を受信し、前記送信機が変調により送信波に与えた特定の変化を有する直接波と反射波とを混成波から識別し、直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を目標物との距離を特定する情報として算出する受信機とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、送信機が特定の変化を与えた送信波を発信することにより、受信機は、送信機との同期が不要で、かつ、直接波と反射波の到来方位を推定する必要がなく、特定の変化を有するか否かに基づいて直接波と反射波とを識別することができる。そして、本発明の受信機(遅延時間検出機)は送信機からの直接波の遅延時間と目標からの反射波の遅延時間との遅延時間差を検出することができる。
これにより、上記送信機と上記受信機とを有する本発明の遅延時間検出装置、また、受信機(遅延時間検出機)は、例えば、直接波と反射波との遅延時間差を用いて目標の位置を探知するシステム(目標探知装置)において、複数の素子アンテナからなる受信アンテナと複雑な処理を実行する方位推定装置とを不要にすることができる。つまり、本発明によれば、目標探知システム(目標探知装置)の小型化、軽量化を実現し、目標探知システムの製造、設置、メンテナンスなどの費用を削減し、目標探知処理に掛かる時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
実施の形態1では、送信機が振幅変調と周波数変調と位相変調との少なくともいずれかの変調により送信波に特定の変化を与え、受信機が特定の変化を有するか否かにより送信機からの直接波と目標物からの反射波とを不要波が含まれる混成波から識別し、直接波と反射波との遅延時間差を検出する形態について説明する。
【0009】
図1は、実施の形態1における遅延時間検出装置199の構成を示すブロック図である。
図1において、遅延時間検出装置199(目標探知装置)は送信機100と受信機200(遅延時間検出機、目標探知機)とを有し、送信機100は送信アンテナ110と送信器120と変調器130とを有し、受信機200は受信アンテナ210と受信器220と復調器230と遅延時間検出器240(識別器の一例)と目標探知器250とを有する。
また、目標物300は位置や送信機100および受信機200からの距離を検出する対象の目標物である。
【0010】
送信機100において、変調器130は電気信号に特定の変化(特定のパターン)を与える変調を行い、送信器120は変調器130が変調した電気信号を電磁波(電波または光波)に変換し、送信アンテナ110は送信器120が変換した電磁波を送信波として発信する。
【0011】
実施の形態1における送信機100は、変調器130が変調により電気信号に特定の変化を与え、送信器120が特定の変化を有する電気信号を電磁波に変換して電磁波の振幅と電磁波の周波数と電磁波の位相との少なくともいずれかに特定の変化を与え、送信アンテナ110が特定の変化を有する電磁波を送信波として発信することを特徴とする。
【0012】
以下、変調器130(および送信器120)により送信波の振幅に特定の変化を与える処理を振幅変調とし、変調器130(および送信器120)により送信波の周波数に特定の変化を与える処理を周波数変調とし、変調器130(および送信器120)により送信波の位相に特定の変化を与える処理を位相変調とする。
【0013】
受信機200において、受信アンテナ210は送信機100の発信した送信波が目標物で反射した反射波や送信機100の発信した送信波が目標物で反射せずに直接到達した直接波や送信機100の発信した送信波に基づく反射波および直接波以外の不要波といった電磁波を受信する。
受信機200において、受信器220は特定の時間帯に受信アンテナ210が受信した電磁波を電気信号に変換する。
受信器220が電磁波の電気信号への変換を行う対象とする特定の時間帯において直接波、反射波および不要波が受信アンテナ210に到来し受信される。以下、受信アンテナ210が受信した特定の時間帯に到来した電磁波であり直接波と反射波と不要波とが含まれる電磁波を混成波とし、混成波を変換した電気信号を混成信号とする。
受信機200において、復調器230は受信器220が変換した電気信号(混成信号)を復調する。
また、受信機200において、遅延時間検出器240は復調器230が復調した電気信号(混成信号)から直接波に相当する信号部分と反射波に相当する信号部分とを識別して直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を算出する。
また、受信機200において、目標探知器250は遅延時間検出器240の算出した直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間に基づいて送信機100および受信機200から目標物300までの距離や目標物300の位置を特定する。
【0014】
実施の形態1における受信機200は、遅延時間検出器240が特定パターンの変化を有する直接波に相当する信号部分と特定パターンの変化を有する反射波に相当する信号部分とを混成信号から識別し、識別した直接波に相当する信号部分と反射波に相当する信号部分との信号間隔に基づいて直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を目標物との距離を特定する情報として算出することを特徴とする。
【0015】
以下、送信機100により発信された電磁波が受信機200に到達するまでに要する時間を遅延時間とし、直接波の遅延時間と反射波の遅延時間との差であり直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を遅延時間差とする。
【0016】
実施の形態1における受信機200は、遅延時間差を算出することにより送信機100および受信機200から目標物300までの距離や目標物300の位置を検出することができる。実施の形態1の遅延時間検出装置199では、受信機200が遅延時間差を算出するに際して、送信機100と受信機200との内部時計を同期させて電磁波の送受信を行うことを要せず、また、直接波と反射波の到来方位を推定することを要しない。
【0017】
図2は、送信機100と受信機200と目標物300との位置関係を示す図である。
目標探知装置は、例えば、送信機100と受信機200と目標物300とが、図2に示すように、送信機100による送信波の発信位置Aと受信機200による反射波の受信位置Bとを定点とし、送信機100による送信波の発信位置Aと目標物300の位置Qとの間の距離aqと受信機200による反射波の受信位置Bと目標物300の位置Qとの間の距離bqとの和が反射波の遅延時間に相当する距離(反射波の遅延時間に電磁波の進行速度に相当する光波を乗じて算出される距離)に等しい楕円面Pを形成するという関係に基づいて、送信機100および受信機200から目標物300までの距離(aq+bq)や目標物300の位置Qを検出することができる。
【0018】
つまり、送信機100の位置Aと受信機200の位置Bと反射波の遅延時間に相当する距離とが分かれば送信機100および受信機200から目標物300までの距離(aq+bq)や目標物300の位置Qを検出できる。
しかし、反射波の遅延時間を知るためには送信機100による送信波の発信時刻と受信機200による反射波の受信時刻とを正確に知る必要があるため、送信機100と受信機200との内部時計を同期させて電磁波の送受信を行う必要がある。
そこで、各実施の形態における遅延時間検出装置199では、例えば、送信機100と受信機200との同期を不要にして反射波の遅延時間に相当する距離を算出できるように、直接波と反射波との遅延時間差を検出する。
反射波は直接波と反射波との遅延時間差に相当する距離だけ直接波より長い距離を伝搬するため、反射波の遅延時間に相当する距離は、直接波の伝搬距離(ab)に直接波と反射波との遅延時間差に相当する距離を加算することで算出できる。直接波の伝搬距離(ab)は直接波の遅延時間に相当する距離であり、送信機100の位置Aと受信機200の位置Bとの距離である。直接波と反射波との遅延時間差に相当する距離は直接波と反射波との遅延時間差に光波を乗じて算出される距離である。
【0019】
また、以下に説明するように、実施の形態1における遅延時間検出装置199の遅延時間検出処理(目標探知処理)では、直接波と反射波の到来方位を推定していない。つまり、実施の形態1における遅延時間検出装置199には、直接波と反射波の到来方位を推定するための複数の素子アンテナからなるアンテナ装置や複雑な処理を実行する方位推定装置は不要である。
【0020】
図3は、実施の形態における送信機100および受信機200のハードウェア資源の一例を示す図である。
図3において、送信機100および受信機200は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。通信ボード915は送信アンテナ110や受信アンテナ210を用いて電磁波の受発信を行う。磁気ディスク装置920の代わりにその他の記憶装置(例えば、RAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ)を用いてもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶機器、記憶装置あるいは記憶部の一例である。
通信ボード915は、入出力機器、入出力装置あるいは入出力部の一例である。また、入出力データが記憶されている記憶装置は入出力機器、入出力装置あるいは入出力部の一例である。
【0021】
磁気ディスク装置920には、OS921(オペレーティングシステム)、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、OS921により実行される。
【0022】
上記プログラム群923には、各実施の形態における「〜器」を動作させるプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0023】
ファイル群924には、各実施の形態において、変調器130および送信器120が使用する変調方式、復調器230および受信器220が使用する復調方式、変調により送信波に与える特定パターン、送信機100の位置、受信機200の位置、送信機100による送信波の発信方向、送信機100による送信波の発信時間帯、検出した送信機100および受信機200から目標物300までの距離、検出した目標物300の位置などの情報が記憶される。
また、各実施の形態において説明するフローチャートの矢印の部分は主として(デジタル・アナログ)データや(電気)信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他の記録媒体に記録される。また、データや信号値は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0024】
また、各実施の形態において「〜器」として説明するものは、「〜部」、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜器」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスクやその他の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、遅延時間検出プログラム(目標探知プログラム)は、コンピュータにより「〜器」を機能させるものである。あるいは、「〜器」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0025】
図4は、実施の形態における遅延時間検出装置199の遅延時間検出方法を示す遅延時間検出処理のフローチャートである。
送信機100および受信機200は、以下に説明する遅延時間検出処理(目標探知処理)を実行するために、遅延時間検出プログラム(目標探知プログラム)に従い、CPUを用いて、各「〜器」を制御する。
【0026】
<S101〜S102:変調処理>
<S101:信号変化処理>
まず、送信機100の変調器130は電気信号に対する変調を行って電気信号に特定の変化を与える。このとき、変調器130は送信機100から発信する送信波に振幅と周波数と位相との少なくともいずれかに特定パターンの変化を与えるために電気信号に対する変調を行う。
<S102:電気信号−電磁波変換処理>
次に、送信機100の送信器120は変調器130の変調した電気信号であり特定の変化を有する電気信号を電磁波に変換する。送信器120は特定の変化を有する電気信号を電磁波に変換する際、電気信号が有する特定の変化に相当する変化を電磁波の振幅と電磁波の周波数と電磁波の位相との少なくともいずれかに与える。
【0027】
<S103:発信処理>
次に、送信機100の送信アンテナ110は送信器120の変換した電磁波を送信波として発信する。
【0028】
(混成波が受信機200に到来)
そして、送信機100が発信した送信波は、目標物300に向かって伝搬し目標物300で反射した反射波および目標物300には向かわず受信機200に向かって伝搬する直接波として受信機200に到来する。
また、受信機200には送信機100が発信した送信波に基づく直接波および反射波以外の不要波が到来する。
【0029】
<S104:受信処理>
次に、受信機200の受信アンテナ210は到来した直接波、反射波および不要波を受信する。直接波と反射波とは送信機100が与えた特定の変化(振幅の変化、周波数の変化、位相の変化)を有する。
【0030】
<S105〜S106:復調処理>
<S105:電磁波−電気信号変換処理>
次に、受信機200の受信器220は特定の時間帯に受信アンテナ210に到来し受信された直接波と反射波と不要波とを含んだ混成波を混成信号に変換する。受信器220は混成波を混成信号に変換する際、混成波の振幅の変化と周波数の変化と位相の変化との少なくともいずれかの変化を混成信号が表すように変換する。受信器220の変換により、混成信号において直接波が受信アンテナ210に到来した時間帯に相当する信号部分と反射波が受信アンテナ210に到来した時間帯に相当する信号部分とには送信機100が与えた特定の変化が現れる。
<S106:抽出処理>
次に、受信機200の復調器230は受信器220の変換した混成信号を復調して混成信号が有する変化パターンを抽出する。例えば、復調器230は混成信号を復調して混成信号が有する変化パターンをデジタルデータに変換して表す。
【0031】
<S107〜S108:遅延時間検出処理>
<S107:識別処理>
次に、受信機200の遅延時間検出器240は復調器230の抽出した混成信号の変化パターンに基づいて送信機100が与えた特定の変化を有する直接波に相当する信号部分と送信機100が与えた特定の変化を有する反射波に相当する信号部分とを混成信号から識別する。遅延時間検出器240は、直接波に相当する信号部分と反射波に相当する信号部分とを識別する際、まず、送信機100が与えた特定の変化を有する信号部分を混成信号から抽出する。この抽出により、直接波に相当する信号部分と反射波に相当する信号部分との2つの信号部分が抽出される。そして、遅延時間検出器240は、検出した2つの信号部分のうち時間帯が早い方の信号部分または信号強度が強い方の信号部分を直接波に相当する信号部分と識別し、検出した2つの信号部分のうち直接波に相当する信号部分と識別しなかった方の信号部分であり、時間帯が遅い方の信号部分または信号強度が弱い方の信号部分を反射波に相当する信号部分と識別する。直接波は目標物300を経由せずに送信機100から直接到来するため、伝搬距離が短い分、反射波より到達時刻が早く、反射波より信号強度が強い。
<S108:検出処理>
そして、受信機200の遅延時間検出器240が識別した直接波に相当する信号部分と反射波に相当する信号部分との信号間隔に相当する時間を直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間として算出する。遅延時間検出器240が算出する直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間は直接波と反射波との遅延時間差を示し、送信機100および受信機200から目標物300までの距離や目標物300の位置を特定する情報である。
【0032】
<S109:特定処理>
また、受信機200の目標探知器250は遅延時間検出器240の算出した遅延時間差に基づいて送信機100および受信機200から目標物300までの距離や目標物300の位置を特定する。例えば、目標探知器250は遅延時間差に光波を乗じた距離(直接波と反射波との伝搬距離差、直接波と反射波との遅延時間差に相当する距離)を送信機100の位置と受信機200の位置との距離(直接波の伝搬距離、直接波の遅延時間に相当する距離)に加算して反射波の伝搬距離(反射波の遅延時間に相当する距離)を送信機100および受信機200から目標物300までの距離として算出する。また例えば、目標探知器250は、前述した図2に示すように、送信機100の位置Aと受信機200の位置Bとを定点とし、送信機100から目標物300までの距離aqと受信機200から目標物300までの距離bqとの和が反射波の伝搬距離に等しい楕円面Pを示す式を目標物300の位置Qとして算出する。
【0033】
以下、実施の形態1における遅延時間検出処理(S107〜S108)の具体例について図を用いて説明する。
【0034】
図5は、実施の形態1における振幅変調時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示す図である。
例えば、送信機100は図5(A)のパルス波(矩形波)に示すように振幅に特定の変化を与えた送信波を発信する。このとき、送信機100は、例えば、α部分の振幅とβ部分の振幅との比が2:1という特定の変化を有するように変調器130および送信器120が振幅変調して生成した送信波を発信する。
そして、図5(B)のパルス波に示すように直接波と反射波と共に不要波aと不要波bとが受信機200に到達した場合、遅延時間検出器240は2:1の振幅比を有するもの(直接波と反射波)を混成波から抽出し、抽出したもののうち時刻(直接波:t2、反射波:t3)が早い方であり、振幅(電磁波の強度・電力)が大きい方を直接波、もう一方を反射波と識別し、直接波の時刻(t2)から反射波の時刻(t3)までの時間(t3−t2)を直接波と反射波との遅延時間差として算出する。
図5において、直接波、反射波および送信波について振幅の変化点の時刻を当該波の時刻としているが、各波について開始点の時刻や終了点の時刻などを当該波の時刻としてもよい。
図5において、送信波の時刻(t1)から直接波の時刻(t2)までの時間(t2−t1)は直接波の遅延時間を示し、送信波の時刻(t1)から反射波の時刻(t3)までの時間(t3−t1)は反射波の遅延時間を示す。
【0035】
図6は、実施の形態1における周波数変調時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示した図である。
例えば、送信機100は図6(A)のパルス波(正弦波)に示すように周波数・波長に特定の変化を与えた送信波を発信する。
そして、図6(B)のパルス波に示すように直接波と反射波と共に不要波aと不要波bとが受信機200に到達した場合、遅延時間検出器240は特定の周波数・波長を有するもの(直接波と反射波)を混成波から抽出し、抽出したもののうち時刻(直接波:t2、反射波:t3)が早い方であり、振幅(電磁波の強度・電力)が大きい方を直接波、もう一方を反射波と識別し、直接波の時刻(t2)から反射波の時刻(t3)までの時間(t3−t2)を直接波と反射波との遅延時間差として算出する。
図6において、直接波、反射波および送信波について開始点の時刻を当該波の時刻としているが、各波について、例えば、終了点の時刻を当該波の時刻としてもよい。
図6において、送信波の時刻(t1)から直接波の時刻(t2)までの時間(t2−t1)は直接波の遅延時間を示し、送信波の時刻(t1)から反射波の時刻(t3)までの時間(t3−t1)は反射波の遅延時間を示す。
【0036】
図7は、実施の形態1における位相変調時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示した図である。
例えば、送信機100は図7(A)のパルス波(正弦波)に示すように位相に特定の変化を与えた送信波を発信する。
そして、図7(B)のパルス波に示すように直接波と反射波と共に不要波aと不要波bとが受信機200に到達した場合、遅延時間検出器240は特定の位相を有するもの(直接波と反射波)を混成波から抽出し、抽出したもののうち時刻(直接波:t2、反射波:t3)が早い方であり、振幅(電磁波の強度・電力)が大きい方を直接波、もう一方を反射波と識別し、直接波の時刻(t2)から反射波の時刻(t3)までの時間(t3−t2)を直接波と反射波との遅延時間差として算出する。
図7において、直接波、反射波および送信波について開始点の時刻を当該波の時刻としているが、各波について、例えば、終了点の時刻を当該波の時刻としてもよい。
図7において、送信波の時刻(t1)から直接波の時刻(t2)までの時間(t2−t1)は直接波の遅延時間を示し、送信波の時刻(t1)から反射波の時刻(t3)までの時間(t3−t1)は反射波の遅延時間を示す。
【0037】
実施の形態1における遅延時間検出装置199は、送信機100が変調して特定の変化を与えた電磁波を送信波として発信し、受信機200が反射波と直接波と不要波とが含まれる混成波を受信し、送信機100が変調により送信波に与えた特定の変化を有する直接波と反射波とを混成波から識別し、直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を目標物との距離を特定する情報として算出することを特徴とする。
【0038】
特に、送信機100が電磁波の振幅に特定の変化を与える特定の振幅変調と電磁波の周波数に特定の変化を与える特定の周波数変調と電磁波の位相に特定の変化を与える特定の位相変調との少なくともいずれかの変調を行って電磁波を送信波として発信し、受信機200が送信機100が変調により送信波に与えた振幅の特定の変化と周波数の特定の変化と位相の特定の変化との少なくともいずれかの特定の変化を有する直接波と反射波とを混成波から識別することを特徴とする。
【0039】
以上のように、実施の形態1における遅延時間検出装置199は、予め規定した方式で変調された送信電波を用いることによって、送信機100と受信機200との同期を不要とし、また、直接波と反射波の到来方位を推定するための高価な受信アンテナ及び方位推定装置を不要とし、直接波と反射波の遅延時間差を検出することを可能とする。
【0040】
なお、実施の形態1では変調方式として振幅変調、周波数変調および位相変調を例に説明したが、その他の変調方式を用いても構わない。例えば、実施の形態における遅延時間検出装置199は、パルス変調(パルス幅変調、パルス振幅変調、パルス密度変調、パルス位相変調、パルス符号変調)やデジタル変調(振幅偏移変調、位相偏移変調、周波数偏移変調、直交振幅変調)を用いて送信波に特定の変化を与えることにより、振幅変調や周波数変調や位相変調を用いた場合と同様にして、直接波と反射波との遅延時間差、送信機100および受信機200から目標物300までの距離、目標物300の位置を検出してもよい。
【0041】
実施の形態2.
実施の形態2では、送信機がパルス圧縮とチャープ圧縮との少なくともいずれかの圧縮を利用する変調により送信波に特定の変化を与え、受信機が受信した混成波を送信機の利用した圧縮により復調して送信機からの直接波と目標物からの反射波とを不要波が含まれる混成波から識別し、直接波と反射波との遅延時間差を検出する形態について説明する。
ここで、「パルス圧縮」とは符号変調を用いるパルス圧縮方式を示し、「チャープ圧縮」とは(直線・線形)周波数変調を用いるパルス圧縮方式を示すものとする。
以下、実施の形態1と異なる事項を中心に説明し、説明しない事項は実施の形態1と同様であるものとする。
【0042】
図8は、実施の形態2における遅延時間検出装置199の構成を示すブロック図である。
図8において、実施の形態2における遅延時間検出装置199は送信機100がS/N改善機能付き変調器140を有する点を特徴とする。S/N改善機能付き変調器140は実施の形態1における構成(図1参照)の変調器130に代わるものである。
S/N改善機能付き変調器140はパルス圧縮とチャープ圧縮との少なくともいずれかの圧縮を利用する変調を行って送信器120が送信アンテナ110を介して発信する送信波に特定の変化を与える。
実施の形態2における遅延時間検出装置199では、パルス圧縮とチャープ圧縮との少なくともいずれかの圧縮を利用することにより、実施の形態1における遅延時間検出装置199に対してS/N比(SNR:Signal to Noise ratio)を改善することを特徴とする。
【0043】
次に、実施の形態2における遅延時間検出装置199の遅延時間検出方法について図4に基づいて説明する。
S101において、実施の形態2では、送信機100の変調器130は送信機100から発信する送信波にパルス圧縮とチャープ圧縮との少なくともいずれかを利用した特定の変化を与えるために電気信号に対する変調を行う。変調器130は、例えばパルス圧縮用の符号を電気信号に付加し、また例えばチャープ圧縮用の周波数変化帯域やパルス幅を電気信号に付加する。パルス圧縮用の符号にはバーカー符号、擬似バーカー符号、相補系列符号などが存在する。
S102において、実施の形態2では、送信機100の送信器120は特定の変化を有する電気信号を電磁波に変換する際、電磁波にパルス圧縮とチャープ圧縮との少なくともいずれかを利用した特定の変化を与える。
S103において、実施の形態1と同様に、送信機100の送信アンテナ110は送信器120の変換した電磁波を送信波として発信する。
【0044】
S104において、実施の形態1と同様に、受信機200の受信アンテナ210は到来した直接波、反射波および不要波を含んだ混成波を受信する。実施の形態2では、直接波と反射波とは送信機100が利用した圧縮に基づく特定の変化を有する。
S105において、実施の形態2では、受信機200の受信器220は混成波を混成信号に変換する際、送信機100が利用した圧縮に基づく特定の変化を混成信号が表すように変換する。
S106において、実施の形態2では、受信機200の復調器230は送信機100が利用した圧縮により混成信号を復調する。受信機200の復調器230は送信機100のS/N改善機能付き変調器140により変調された送信波の電気信号との相互相関を取ることで混成信号を復調して特定パターンの変化を有する直接波に相当する信号部分と反射波に相当する信号部分とを圧縮する。
S107において、実施の形態2では、受信機200の遅延時間検出器240は圧縮された直接波の信号部分と反射波の信号部分とを混成信号から識別する。
S108において、実施の形態1と同様に、受信機200の遅延時間検出器240は直接波に相当する信号部分と反射波に相当する信号部分との信号間隔に相当する時間を直接波と反射波との遅延時間差として算出する。
S109において、実施の形態1と同様に、受信機200の受信アンテナ制御装置260は直接波と反射波との遅延時間差に基づいて送信機100および受信機200から目標物300までの距離や目標物300の位置を特定する。
【0045】
以下、実施の形態2における遅延時間検出処理(S107〜S108)の具体例について図を用いて説明する。
【0046】
図9は、実施の形態2におけるパルス圧縮時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示す図である。
例えば、送信機100は図9(A)のパルス波(矩形波)に示すように特定の符号パターンを与えた送信波を発信する。
図9(B)のパルス波に示すように直接波と反射波と共に不要波aと不要波bとが受信機200に到達した場合、復調器230および受信器220は各波に対して送信波が有する符号パターンとの相互相関を取ってパルス圧縮を行う。パルス圧縮により、図9(C)のパルス波(三角波)に示すように送信波と符号パターンが相関する直接波および反射波の信号部分のみが大きな振幅として現れる。
遅延時間検出器240は大きな振幅を有する信号部分(例えば、所定の閾値より振幅が大きい信号部分)を混成波から抽出し、抽出したもののうち時刻(直接波:t2、反射波:t3)が早い方であり、振幅(電磁波の強度・電力)が大きい方を直接波、もう一方を反射波と識別し、直接波の時刻(t2)から反射波の時刻(t3)までの時間(t3−t2)を直接波と反射波との遅延時間差として算出する。
【0047】
図10は、実施の形態2におけるチャープ圧縮時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示す図である。
例えば、送信機100は図10(A)のパルス波(正弦波)に示すように特定の周波数パターンを与えた送信波を発信する。
図10(B)のパルス波に示すように直接波と反射波と共に不要波aと不要波bとが受信機200に到達した場合、復調器230および受信器220は各波に対して送信波が有する周波数パターンとの相互相関を取ってチャープ圧縮を行う。チャープ圧縮により、図10(C)のパルス波(正弦波)に示すように送信波と周波数パターンが相関する直接波および反射波の信号部分のみが大きな振幅として現れる。
遅延時間検出器240は大きな振幅を有する信号部分(例えば、所定の閾値より振幅が大きい信号部分)を混成波から抽出し、抽出したもののうち時刻(直接波:t2、反射波:t3)が早い方であり、振幅(電磁波の強度・電力)が大きい方を直接波、もう一方を反射波と識別し、直接波の時刻(t2)から反射波の時刻(t3)までの時間(t3−t2)を直接波と反射波との遅延時間差として算出する。
【0048】
実施の形態2における遅延時間検出装置199は、送信機100が電磁波に特定のパルス圧縮と特定のチャープ圧縮との少なくともいずれかの圧縮を利用する変調を行って電磁波を送信波として発信し、受信機200が送信機100が変調に利用した圧縮を利用して混成波を復調して直接波と反射波とを混成波から識別することを特徴とする。
【0049】
以上のように、実施の形態2における遅延時間検出装置199は、送信機100が送信波にパルス圧縮用の符号を付加し、受信機200が受信波を復調する際にパルス圧縮を行うことによって、送信側での送信電力を低下させつつ、受信側でのS/Nを稼ぐことができる。つまり、送信機100の送信波の電力が小さくても受信機200が直接波と反射波とを識別することができるため、実施の形態2における遅延時間検出装置199は、実施の形態1における遅延時間検出装置199の効果に加え、秘匿性を向上することができる。また、実施の形態2における遅延時間検出装置199はチャープ圧縮を用いてもパルス圧縮を用いた場合と同様に秘匿性を向上することができる。
【0050】
実施の形態3.
実施の形態3では、受信機が送信機との位置関係と送信機による送信波の発信方向とに基づいて直接波の到来方向と反射波の到来方向とを推定し、推定した方向から到来する電磁波を受信する受信制御を行う形態について説明する。
実施の形態3における送信波に特定の変化を与える方法や直接波と反射波とを識別する方法や直接波と反射波との遅延時間差を算出する方法や目標物との距離・目標物の位置を特定する方法などは実施の形態1や実施の形態2と同様である。
以下、実施の形態1や実施の形態2と異なる事項を中心に説明し、説明しない事項は実施の形態1や実施の形態2と同様であるものとする。
【0051】
図11は、実施の形態3における遅延時間検出装置199の構成を示すブロック図である。
図11において、実施の形態3における遅延時間検出装置199は送信機100が送信アンテナ制御装置160、GPS受信器170(Global Positioning System)、情報伝達装置180を有し、受信機200が受信アンテナ制御装置260、GPS受信器270、情報伝達装置280を有する点を特徴とする。変調器130は実施の形態2と同様にS/N改善機能付き変調器140であってもよい。
送信アンテナ制御装置160は所定の時刻(時間帯)において所定の方向に送信波を発信する送信ビーム制御を行い、受信アンテナ制御装置260は特定の時刻(時間帯)に特定の方向から到来する電磁波を受信する受信ビーム制御を行う。例えば、送信アンテナ制御装置160は送信アンテナ110のアンテナ方向や送信アンテナ110における各アンテナ部分の送信特性などを制御することにより、送信ビーム制御を行い、受信アンテナ制御装置260は受信アンテナ210のアンテナ方向や受信アンテナ210における各アンテナ部分の受信特性などを制御することにより、受信ビーム制御を行う。
GPS受信器170およびGPS受信器270はGPSを利用して自機の位置を測位する。但し、送信機100および受信機200はその他の測位装置(例えば、ジャイロを用いた測位装置)を用いて自機の位置を測位してもよい。
情報伝達装置180(通信器)および情報伝達装置280(通信器)は有線または無線によりデータ通信を行う通信装置である。
【0052】
送信機100において、情報伝達装置180は、送信アンテナ110が送信波を発信する前に、GPS受信器170が測位した送信機100の存在する位置(送信機100が送信波を送信する位置)と送信アンテナ制御装置160が送信ビーム制御により送信アンテナ110に送信波を発信させる方向・時刻を受信機200の情報伝達装置280に送信する。そして、送信アンテナ制御装置160が送信ビーム制御により所定の時刻において送信アンテナ110に所定の方向に送信波を発信させる。
受信機200において、情報伝達装置280は送信機100の情報伝達装置180から送信機100の存在する位置と送信機100が送信波を発信する方向および時刻とを受信する。次に、受信アンテナ制御装置260はGPS受信器270が測位した受信機200の存在する位置(受信機200が直接波および反射波を受信する位置)と情報伝達装置280が受信した送信機100の存在する位置および送信機100が送信波を発信する方向・時刻に基づいて直接波および反射波が到来する方向・時刻を算出する。そして、受信アンテナ制御装置260は算出した時刻に算出した方向から到来する電磁波(混成波)を受信するように受信アンテナ210に対して受信ビーム制御を行う。
例えば、送信機100が北、受信機200が南に位置し、送信機100が南西の方向に送信波を発信する場合、受信アンテナ制御装置260は北および北西から到来する電磁波を受信するように受信アンテナ210に対して受信ビーム制御を行う。
以下、受信機200は受信ビーム制御により受信した混成波に対して、実施の形態1や実施の形態2と同様にして、直接波と反射波とを識別し、直接波と反射波との遅延時間差を算出し、目標物300との距離・目標物300の位置を特定する。
【0053】
実施の形態3において、受信機200は情報伝達装置280が情報伝達装置180と通信することにより送信機100の存在する位置と送信機100が送信波を発信する方向および時刻とを取得するように説明したが、送信機100が送信波を発信する位置、方向・時刻を予め定めておき、受信機200は定められた情報を予め記憶機器に記憶しておき、予め記憶されている情報に基づいて受信ビーム制御を行ってもよい。
【0054】
実施の形態3における遅延時間検出装置199は、送信機100が所定の位置において所定の方向に送信波を発信し、受信機200が自受信機の位置と送信機100の所定の位置と送信機100が送信波を発信する所定の方向とに基づく特定の方向から電磁波を受信するように受信制御を行って混成波を受信することを特徴とする。
【0055】
以上のように、実施の形態3における遅延時間検出装置199は、受信機200が、送信機100が送信波を送信する前に送信機100の位置、送信波の送信時間及び送信ビーム方位を入手して受信ビームを所望の方位に制御することにより、効率良く電波を受信できる。
【0056】
前記実施の形態1では以下のような遅延時間検出装置199について説明した。
遅延時間検出装置199は独立したプラットフォームに搭載された以下のような送信機100と受信機200とを有する。送信機100は送信アンテナ110、送信器120、送信波を振幅変調または周波数変調または位相変調するための変調器130を備える。受信機200は送信機100からの直接波及び目標からの反射波を受信する受信アンテナ210、受信アンテナで受信した直接波と反射波とが含まれる混成波を混成信号に変換する受信器220、混成信号を復調する復調器230、復調された直接波と反射波とが含まれる混成信号から直接波と反射波を識別して直接波と反射波との遅延時間差を検出する遅延時間検出器240を備える。
【0057】
前記実施の形態2では以下のような遅延時間検出装置199について説明した。
遅延時間検出装置199は独立したプラットフォームに搭載された以下のような送信機100と受信機200とを有する。送信機100は送信アンテナ110、送信器120、送信波をパルス圧縮あるいは直線周波数変調によるチャープ圧縮するために送信波を変調するための変調器S/N改善機能付き変調器140を備える。受信機200は送信機100からの直接波及び目標からの反射波を受信する受信アンテナ210、受信アンテナ210で受信した直接波と反射波とが含まれる混成波を混成信号に変換する受信器220、混成信号をパルス圧縮あるいはチャープ圧縮で復調する復調器230、復調された直接波と反射波とが含まれる混成信号から直接波と反射波を識別して直接波と反射波との遅延時間差を検出する遅延時間検出器240を備える。
【0058】
前記実施の形態3では以下のような遅延時間検出装置199について説明した。
遅延時間検出装置199は独立したプラットフォームに搭載された以下のような送信機100と受信機200とを有する。送信機100は送信アンテナ110、送信ビーム制御を行う送信アンテナ制御装置160、送信器120、実施の形態1における変調器130または実施の形態2におけるS/N改善機能付き変調器140、位置情報を入手するためのGPS受信器170、受信機200との間で情報を伝達する情報伝達装置180を備える。受信機200は直接波及び目標からの反射波を受信する受信アンテナ210、受信ビーム制御を行う受信アンテナ制御装置260、受信アンテナ210で受信した直接波と反射波が含まれる混成波を混成信号に変換する受信器220、実施の形態1または実施の形態2における復調器230、復調された直接波と反射波とが含まれる混成信号から直接波と反射波を識別して直接波と反射波との遅延時間差を検出する遅延時間検出器240、位置情報を入手するためのGPS受信器270、送信機100との間で情報を伝達する情報伝達装置280を備える。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態1における遅延時間検出装置199の構成を示すブロック図。
【図2】送信機100と受信機200と目標物300との位置関係を示す図。
【図3】実施の形態1における送信機100および受信機200のハードウェア資源の一例を示す図。
【図4】実施の形態における遅延時間検出装置199の遅延時間検出方法を示す遅延時間検出処理のフローチャート。
【図5】実施の形態1における振幅変調時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示す図。
【図6】実施の形態1における周波数変調時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示した図。
【図7】実施の形態1における位相変調時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示した図。
【図8】実施の形態2における遅延時間検出装置199の構成を示すブロック図。
【図9】実施の形態2におけるパルス圧縮時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示す図。
【図10】実施の形態2におけるチャープ圧縮時の送信波と混成波と遅延時間差との関係を示す図。
【図11】実施の形態3における遅延時間検出装置199の構成を示すブロック図。
【図12】特許文献1に開示されたパッシブレーダ装置。
【符号の説明】
【0060】
100 送信機、110 送信アンテナ、120 送信器、130 変調器、140 S/N改善機能付き変調器、160 送信アンテナ制御装置、170 GPS受信器、180 情報伝達装置、199 遅延時間検出装置、200 受信機、210 受信アンテナ、220 受信器、230 復調器、240 遅延時間検出器、250 目標探知器、260 受信アンテナ制御装置、270 GPS受信器、280 情報伝達装置、300 目標物、813 送信源、814 目標、815 アンテナ装置、816 受信装置、817 方位推定装置、818 信号分離装置、819 相関処理装置、820 積分処理装置、821 目標検出装置、822 表示装置、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調して特定の変化を与えた電磁波を送信波として発信する送信機と、
前記送信機の発信した送信波が目標物で反射した反射波と前記送信機の発信した送信波が目標物で反射せずに直接到達した直接波と前記送信機の発信した送信波に基づく反射波および直接波以外の不要波とが含まれる混成波を受信し、前記送信機が変調により送信波に与えた特定の変化を有する直接波と反射波とを混成波から識別し、直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を目標物との距離を特定する情報として算出する受信機と
を有することを特徴とする遅延時間検出装置。
【請求項2】
前記送信機は電磁波の振幅に特定の変化を与える特定の振幅変調と電磁波の周波数に特定の変化を与える特定の周波数変調と電磁波の位相に特定の変化を与える特定の位相変調との少なくともいずれかの変調を行って電磁波を送信波として発信し、
前記受信機は前記送信機が変調により送信波に与えた振幅の特定の変化と周波数の特定の変化と位相の特定の変化との少なくともいずれかの特定の変化を有する直接波と反射波とを混成波から識別する
ことを特徴とする請求項1記載の遅延時間検出装置。
【請求項3】
前記送信機は変調して信号に特定の変化を与え、特定の変化を与えた信号を電磁波に変換して電磁波の振幅と電磁波の周波数と電磁波の位相との少なくともいずれかに前記特定の変化に相当する変化を与え、前記特定の変化に相当する変化を与えた電磁波を送信波として発信し、
前記受信機は受信した混成波を信号に変換し、混成波の信号を復調して特定の変化を有する直接波の信号と反射波の信号とを混成波の信号から識別する
ことを特徴とする請求項2記載の遅延時間検出装置。
【請求項4】
前記送信機は電磁波に特定のパルス圧縮と特定のチャープ圧縮との少なくともいずれかの圧縮を利用する変調を行って電磁波を送信波として発信し、
前記受信機は前記送信機が変調に利用した圧縮を利用して混成波を復調して直接波と反射波とを混成波から識別する
ことを特徴とする請求項1記載の遅延時間検出装置。
【請求項5】
前記送信機は所定の位置において所定の方向に送信波を発信し、
前記受信機は自受信機の位置と前記送信機の所定の位置と前記送信機が送信波を発信する所定の方向とに基づく特定の方向から電磁波を受信するように受信制御を行って混成波を受信する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかに記載の遅延時間検出装置。
【請求項6】
前記送信機は送信波の発信前に自送信機が存在する位置と送信波を発信する方向とを前記受信機に通信し、
前記受信機は自受信機が存在する位置と前記送信機から通信された前記送信機が存在する位置と前記送信機から通信された前記送信波が送信波を発信する方向とに基づいて混成波が到来する方向を算出し、算出した方向から電磁波を受信するように受信制御を行って混成波を受信する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかに記載の遅延時間検出装置。
【請求項7】
送信機が変調して特定の変化を与えた電磁波を送信波として発信し、
受信機が前記送信機の発信した送信波が目標物で反射した反射波と前記送信機の発信した送信波が目標物で反射せずに直接到達した直接波と前記送信機の発信した送信波に基づく反射波および直接波以外の不要波とが含まれる混成波を受信し、前記送信機が変調により送信波に与えた特定の変化を有する直接波と反射波とを混成波から識別し、直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を目標物との距離を特定する情報として算出する
ことを特徴とする遅延時間検出方法。
【請求項8】
変調して特定の変化を与えた電磁波を送信波として発信する送信機からの送信波に対して、前記送信機の発信した送信波が目標物で反射した反射波と前記送信機の発信した送信波が目標物で反射せずに直接到達した直接波と前記送信機の発信した送信波に基づく反射波および直接波以外の不要波とが含まれる混成波を受信する受信器と、
前記送信機が変調により送信波に与えた特定の変化を有する直接波と反射波とを前記受信器が受信した混成波から識別する識別器と、
前記識別器の識別結果に基づいて直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を目標物との距離を特定する情報として算出する遅延時間検出器と
を備えることを特徴とする遅延時間検出機。
【請求項9】
前記受信器は電磁波の振幅に特定の変化を与える特定の振幅変調と電磁波の周波数に特定の変化を与える特定の周波数変調と電磁波の位相に特定の変化を与える特定の位相変調との少なくともいずれかの変調を行って電磁波を送信波として発信する送信機からの送信波に対して、反射波と直接波と不要波とが含まれる混成波を受信し、
前記識別器は前記送信機が変調により送信波に与えた振幅の特定の変化と周波数の特定の変化と位相の特定の変化との少なくともいずれかの特定の変化を有する直接波と反射波とを前記受信器が受信した混成波から識別する
ことを特徴とする請求項8記載の遅延時間検出機。
【請求項10】
前記遅延時間検出機は、さらに、変調された信号を復調する復調器を備え、
前記受信器は変調して信号に特定の変化を与え、特定の変化を与えた信号を電磁波に変換して電磁波の振幅と電磁波の周波数と電磁波の位相との少なくともいずれかに前記特定の変化に相当する変化を与え、前記特定の変化に相当する変化を与えた電磁波を送信波として発信する送信機からの送信波に対して、反射波と直接波と不要波とが含まれる混成波を受信し、受信した混成波を信号に変換し、
前記復調器は前記受信器の変換した混成波の信号を復調し、
前記識別器は特定の変化を有する直接波の信号と反射波の信号とを前記復調器が復調した混成波の信号から識別する
ことを特徴とする請求項9記載の遅延時間検出機。
【請求項11】
前記遅延時間検出機は、さらに、変調された信号を復調する復調器を備え、
前記受信器は電磁波に特定のパルス圧縮と特定のチャープ圧縮との少なくともいずれかの圧縮を利用する変調を行って電磁波を送信波として発信する送信機からの送信波に対して、反射波と直接波と不要波とが含まれる混成波を受信し、
前記復調器は前記送信機が変調に利用した圧縮を利用して前記受信器が受信した混成波を復調し、
前記識別器は直接波と反射波とを前記復調器が復調した混成波から識別する
ことを特徴とする請求項8記載の遅延時間検出機。
【請求項12】
前記受信器は自受信機の位置と前記送信機の所定の位置と前記送信機が送信波を発信する所定の方向とに基づく特定の方向から電磁波を受信するように受信制御を行って混成波を受信する
ことを特徴とする請求項8〜請求項11いずれかに記載の遅延時間検出機。
【請求項13】
前記遅延時間検出機は、さらに、前記送信機が送信波の発信前に通信する前記送信機の存在する位置と送信波を発信する方向とを受信する通信器を備え、
前記受信器は自受信機が存在する位置と前記通信器が受信した前記送信機の存在する位置と前記通信器が受信した前記送信波の送信波を発信する方向とに基づいて混成波が到来する方向を算出し、算出した方向から電磁波を受信するように受信制御を行って混成波を受信する
ことを特徴とする請求項8〜請求項11いずれかに記載の遅延時間検出機。
【請求項14】
変調して特定の変化を与えた電磁波を送信波として発信する送信機からの送信波に対して、前記送信機の発信した送信波が目標物で反射した反射波と前記送信機の発信した送信波が目標物で反射せずに直接到達した直接波と前記送信機の発信した送信波に基づく反射波および直接波以外の不要波とが含まれる混成波を受信器に受信させる受信処理と、
前記送信機が変調により送信波に与えた特定の変化を有する直接波と反射波とを前記受信器が受信した混成波から識別器に識別させる識別処理と、
前記識別器の識別結果に基づいて直接波の受信時刻から反射波の受信時刻までの時間を目標物との距離を特定する情報として遅延時間検出器に算出させる遅延時間検出処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする遅延時間検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−151660(P2008−151660A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340320(P2006−340320)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】