遅延線
【課題】簡単な構成で、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させる。
【解決手段】遅延線10Aは、第1の遅延回路12と第2の遅延回路14とを有する。第1の遅延回路12は、入力端子16と出力端子18とを有する帯域通過遅延線やその他の遅延線で構成される。第2の遅延回路14は、入力端子20、第1の出力端子22a、第2の出力端子22b及びアイソレーション端子24を備えたハイブリッドカプラ26と、第1の出力端子22aに接続された第1のリアクタンス部28Aと、第2の出力端子22bに接続された第2のリアクタンス部28Bとを有する。さらに、第1の遅延回路12の出力端子18と第2の遅延回路14におけるハイブリッドカプラ26の入力端子20とが電気的に接続されている。
【解決手段】遅延線10Aは、第1の遅延回路12と第2の遅延回路14とを有する。第1の遅延回路12は、入力端子16と出力端子18とを有する帯域通過遅延線やその他の遅延線で構成される。第2の遅延回路14は、入力端子20、第1の出力端子22a、第2の出力端子22b及びアイソレーション端子24を備えたハイブリッドカプラ26と、第1の出力端子22aに接続された第1のリアクタンス部28Aと、第2の出力端子22bに接続された第2のリアクタンス部28Bとを有する。さらに、第1の遅延回路12の出力端子18と第2の遅延回路14におけるハイブリッドカプラ26の入力端子20とが電気的に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる遅延線に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、例えば移動体通信システム等の基地局無線装置に使用される基地局の低歪化のための歪補償型増幅器においては、歪検出や歪抑圧を目的として例えば可変遅延線が用いられている。
【0003】
可変遅延線300は、例えば図20に示すように、入力端子302と出力端子304との間に、コンデンサ306及び308と可変容量コンデンサ310とが直列に接続され、さらに、可変容量コンデンサ310の一端及び他端とアースとの間に、第1及び第2の共振器312及び314がそれぞれ接続されることによって構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
この可変遅延線300によれば、可変容量コンデンサ310の容量Caを可変させるだけで、容易に絶対遅延時間を微調整することができ、例えば歪み補償型増幅器のフィードフォワード回路等の生産性の向上を図ることができる。
【0005】
また、他の従来例に係る可変遅延線400は、図21に示すように、ハイブリッドカプラ402と、ハイブリッドカプラ402の第1及び第2の出力端子404a及び404bに接続された第1及び第2のリアクタンス部406a及び406bとを有する(例えば特許文献2参照)。
【0006】
ハイブリッドカプラ402は、第1及び第2の出力端子404a及び404bのほかに、入力信号が供給される入力端子406と、第1及び第2の出力端子404a及び404bから出力された第1及び第2の出力信号に基づく反射信号が、可変遅延線400の出力信号(第3の出力信号)として出力されるアイソレーション端子408とを備えている。
【0007】
第1及び第2のリアクタンス部406a及び406bは、第1及び第2のコンデンサ408a及び408bと、第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bと、第1及び第2の誘電体共振器412a及び412bとを有する直列回路である。この場合、第1及び第2のコンデンサ408a及び408bの一端は第1及び第2の出力端子404a及び404bに接続され、その他端は第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bのカソード端子に接続されている。また、第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bのアノード端子は第1及び第2の誘電体共振器412a及び412bに接続されている。さらに、前記カソード端子には、制御電圧が供給可能となるように、第1及び第2の電圧制御端子414a及び414bが接続されている。
【0008】
そして、第1及び第2の電圧制御端子414a及び414bから第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bに、それぞれ制御電圧を印加したとき、制御電圧の値に対応して該第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bの結合容量Cbが変化する。具体的には、制御電圧の値が増加すると第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bの結合容量Cbが減少する。
【0009】
結合容量Cbが変化すると、第1及び第2のリアクタンス部406a及び406bにおけるアドミタンスが変化して、可変遅延線400の絶対遅延時間が増加する。この場合、第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bとして結合容量Cbを広い範囲で可変できるものにすれば、より広い可変遅延時間を有する可変遅延線400を得ることができる。
【0010】
例えば、アイソレーション端子408に出力される第3の出力信号について、その絶対遅延時間の最小値が1ns程度となるように、第1及び第2のリアクタンス部406a及び406bを構成する回路素子の値を適宜調整すれば、100MHz以上の周波数帯域に対する絶対遅延時間の偏差を0.1ns以下に抑制することができると共に、可変遅延時間を1nsにまで増加することができる。
【0011】
また、可変遅延線400において、絶対遅延時間が2ns程度まで変化しても、伝送特性や不整合減衰量はほとんど変化しない。そのため、可変遅延線400の通過帯域を60MHz以上の広い帯域幅とすることが可能となる。
【0012】
【特許文献1】特開2001−119206号公報
【特許文献2】特開2004−153815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載された可変遅延線300は、結合容量Caが変化すると、入力端子302側のコンデンサ306及び第1の共振器312と、出力端子304側のコンデンサ308及び第2の共振器314とのバランスが崩れ、可変遅延線300における入力インピーダンスの値と出力インピーダンスの値とが変動する。これによって、可変遅延線300において、インピーダンスマッチングを取ることが困難となる。また、絶対遅延時間が大きくなると、その偏差(絶対遅延時間の偏差)も大きくなるという問題がある。
【0014】
一方、特許文献2に記載された可変遅延線400は、入出力インピーダンスの変動を抑制することができ、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間の偏差の低減を実現することができる。しかし、絶対遅延時間が1ns程度であり、可変遅延線400としての応用範囲が狭いという問題がある。
【0015】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、簡単な構成で、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる遅延線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る遅延線は、入力端子と出力端子とを有する第1の遅延回路と、入力端子、第1の出力端子、第2の出力端子及びアイソレーション端子を備えたハイブリッドカプラと、前記第1の出力端子に接続された第1のリアクタンス部と、第2の出力端子に接続された第2のリアクタンス部とを有する第2の遅延回路とを具備し、前記第1の遅延回路の前記出力端子と前記第2の遅延回路における前記ハイブリッドカプラの前記入力端子とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
これにより、まず、第2の遅延回路にて、入出力インピーダンスの変動を抑制することができ、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間の偏差の低減を実現することができる。さらに、第1の遅延回路にて、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる。
【0018】
そして、前記構成において、前記第1の遅延回路と前記第2の遅延回路が一体化されていてもよい。この場合、遅延線の小型化に有利となる。
【0019】
また、前記構成において、前記第2の遅延回路の前記第1のリアクタンス部及び第2のリアクタンス部は、それぞれリアクタンスが一定とされたリアクタンス素子を有するようにしてもよいし、あるいは、制御電圧が印加される制御端子をそれぞれ有し、且つ、前記制御端子に印加された前記制御電圧に応じてリアクタンスが変化する可変のリアクタンス素子を有するようにしてもよい。
【0020】
一方、前記第1の遅延回路は、前記第1の遅延回路がバンドパスフィルタにて構成されていてもよい。この場合、前記入力端子と前記出力端子との間に複数の共振器を有するバンドパスフィルタや、前記入力端子と前記出力端子との間に複数のLC共振回路を有するバンドパスフィルタ等がある。
【0021】
また、前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器との間、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器との間、並びに各共振器間とがそれぞれ容量結合あるいはそれぞれ誘導結合されていてもよい。
【0022】
あるいは、前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器とが容量結合もしくは誘導結合され、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器とが容量結合もしくは誘導結合され、並びに各共振器間とが容量結合もしくは誘導結合され、且つ、前記容量結合と前記誘導結合の組み合わせが対称的であってもよい。この場合、簡単な構成で、通過帯域内における絶対遅延時間の平坦性を確保でき、小型化を促進させることができる。ここで、「通過帯域における絶対遅延時間の平坦性」とは、通過帯域の中心周波数における絶対遅延時間を基準に、その偏差が0.5ns以内である領域(平坦性の領域)が、前記中心周波数から低域側及び高域側にどれだけ占めているかを示す。この発明では、前記平坦性の領域が通過帯域に対して広い範囲(通過帯域のほぼ50%〜80%)にわたって存在する。
【0023】
また、前記第1の遅延回路は、ローパスフィルタ、あるいはストリップライン線路長による遅延量をもった回路、あるいはSAWディレイラインを含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る遅延線によれば、簡単な構成で、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る遅延線の実施の形態例を図1〜図19を参照しながら説明する。
【0026】
本実施の形態に係る遅延線10は、図1に示すように、第1の遅延回路12と第2の遅延回路14とを有する。第1の遅延回路12は、入力端子16と出力端子18とを有する帯域通過遅延線(バンドパスフィルタ:BPF)やその他の遅延線で構成することができる。
【0027】
第2の遅延回路14は、入力端子20、第1の出力端子22a、第2の出力端子22b及びアイソレーション端子24を備えたハイブリッドカプラ26と、第1の出力端子22aに接続された第1のリアクタンス部28Aと、第2の出力端子22bに接続された第2のリアクタンス部28Bとを有する。さらに、第1の遅延回路12の出力端子18と第2の遅延回路14におけるハイブリッドカプラ26の入力端子20とが電気的に接続されている。
【0028】
ハイブリッドカプラ26のアイソレーション端子24からは、第1の出力端子22aから出力された第1の出力信号と、第2の出力端子22bから出力された第2の出力信号とに基づく反射信号が、本実施の形態に係る遅延線10の出力信号(第3の出力信号)として出力端子30を通じて出力される。この場合、第1の出力端子22aは、入力端子20に供給される入力信号に対して同相の第1の出力信号が出力される0°の出力端子であり、第2の出力端子22bは、前記入力信号に対して90°の位相差を有する第2の出力信号が出力される90°の出力端子である。
【0029】
第1のリアクタンス部28A及び第2のリアクタンス部28Bは、それぞれ略同一で、且つ、一定とされたリアクタンスXを有する。第1のリアクタンス部28A及び第2のリアクタンス部28Bの各一端は対応する第1の出力端子22a及び第2の出力端子22bに接続され、各他端はGND(グランド)に接地されている。
【0030】
次に、本実施の形態に係る遅延線10について、2つの実施の形態を図2及び図3を参照しながら説明する。
【0031】
まず、第1の実施の形態に係る遅延線10Aについて図2を参照しながら説明する。
【0032】
この第1の実施の形態に係る遅延線10Aにおいて、第1のリアクタンス部28Aは、リアクタンス素子としての第1の容量素子32aと第1の共振器34aとの直列回路から構成され、第2のリアクタンス部28Bは、リアクタンス素子としての第2の容量素子32bと第2の共振器34bとの直列回路から構成されている。第1及び第2の共振器34a及び34bは、LC共振器、分布定数回路からなる共振器又は誘電体共振器(λ/4共振器又はλ/2共振器)が望ましい。
【0033】
ここで、第2の遅延回路14の動作について説明する。先ず、ハイブリッドカプラ26の入力端子20を通じて入力信号が該ハイブリッドカプラ28に供給されると、第1の出力端子22a及び第2の出力端子22bには、第1の出力信号及び第2の出力信号が出力される。この場合、前記第1及び第2の出力信号の位相差は90°である。
【0034】
第1の出力端子22aが第1のリアクタンス部28Aを介して接地され、第2の出力端子22bが第2のリアクタンス部28Bを介して接地されているため、第1及び第2の出力端子22a及び22bには、第1及び第2の反射信号が発生する。そして、前記第1及び第2の反射信号の合成信号である反射信号がアイソレーション端子24に出力され、該反射信号が遅延線10Aの出力信号、すなわち第3の出力信号として出力端子30を通じて出力される。この反射信号は、前記入力信号に対し180°の位相差を持つ。
【0035】
アイソレーション端子24と入力端子20との間は、アイソレータとして機能するので、前記反射信号の反射波は、アイソレーション端子24から入力端子20に伝搬するが途中で減衰するので、入力端子20に出力されることはない。つまり、前記反射波は、遅延線10Aの入力インピーダンス及び出力インピーダンスに影響を及ぼさない。従って、ハイブリッドカプラ26と第1及び第2のリアクタンス部28A及び28Bとによって、遅延線10Aにおける入力インピーダンス及び出力インピーダンスの変動を抑制することができる。これによって、遅延線10Aにおけるインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0036】
また、第1の共振器34a及び第2の共振器34bは、それぞれ共振周波数を有している。この共振周波数によって遅延線10Aの通過帯域における中心周波数が決定される。つまり、前記共振周波数を所望の値に設定することで、所望の通過帯域を有する遅延線10Aを得ることが可能となる。
【0037】
特に、この第1の実施の形態では、第2の遅延回路14の前段に、BPFやその他の遅延線で構成された第1の遅延回路12が接続されていることから、該第1の遅延回路12にて、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる。
【0038】
つまり、この第1の実施の形態に係る遅延線10Aにおいては、簡単な構成で、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる。
【0039】
次に、第2の実施の形態に係る遅延線10Bについて図3を参照しながら説明する。図2と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
【0040】
この第2の実施の形態に係る遅延線10Bは、図3に示すように、上述した第1の実施の形態に係る遅延線10Aとほぼ同様の構成を有するが、第2の遅延回路14における第1のリアクタンス部28Aが、リアクタンス素子としての第1の可変容量素子40aと第1の共振器34aとの直列回路から構成され、第2のリアクタンス部28Bが、リアクタンス素子としての第2の可変容量素子40bと第2の共振器34bとの直列回路から構成されている点で異なる。
【0041】
第1及び第2の可変容量素子40a及び40bは、その結合容量Cを変化させることによって、リアクタンスXを変化できるものであればよく、このような回路素子としては、バラクタダイオード、トリマコンデンサ等がある。
【0042】
この第2の実施の形態に係る遅延線10Bにおいては、上述した第1の実施の形態に係る遅延線10Bの効果のほか、第1及び第2のリアクタンス部28A及び28Bにおける第1及び第2の可変容量素子40a及び40bの結合容量Cをそれぞれ同一量だけ変化させることによって、第1及び第2のリアクタンス部28A及び28BのリアクタンスXを同一量だけ変化させることができ、これにより、第3の出力信号が有する絶対遅延時間を変化させることができる。
【0043】
上述した第1及び第2の実施の形態に係る遅延線10A及び10Bにおいては、第1の遅延回路12と第2の遅延回路14を一体化してもよい。一体化としては、第1及び第2の遅延回路12及び14を同一の配線基板に実装する場合や、第1及び第2の遅延回路12及び14を同一の基体(誘電体基板等)に形成する場合等がある。一体化することで、遅延線10A及び10Bの小型化をより一層促進させることができる。
【実施例1】
【0044】
次に、第1の実施の形態に係る遅延線10Aの実施例(第1の実施例に係る遅延線100A)について図4〜図7を参照しながら説明する。
【0045】
この第1の実施例に係る遅延線100Aは、第2の遅延回路14の構成が、図2と同様に、ハイブリッドカプラ26と、第1のリアクタンス部28Aと、第2のリアクタンス部28Bとを有する。また、第1のリアクタンス部28Aは、第1の容量素子32aと第1の共振器34aとの直列回路から構成され、第2のリアクタンス部28Bは、第2の容量素子32bと第2の共振器34bとの直列回路から構成されている。
【0046】
第1の遅延回路12は、入力端子16と出力端子18との間に複数のλ/4共振器(第1〜第4の共振器42a〜42d)を有するバンドパスフィルタ44にて構成されている。このバンドパスフィルタ44は、入力端子16と第1の共振器42a間、第4の共振器42dと出力端子18間、各共振器42a〜42d間とがそれぞれ容量C11、C12、C13、C14、C15で結合されて構成されている。
【0047】
この第1の実施例に係る遅延線100Aの遅延特性を図5に示し、減衰特性を図6に示し、周波数に対する不整合減衰量の変化を図7に示す。これら図5〜図7においては、周波数f1〜f2の範囲における特性を図示している。
【0048】
ここで、この第1の実施例に係る遅延線100Aの作用・効果を、比較例に係る遅延線200(図8参照)と比較しながら説明する。
【0049】
まず、比較例に係る遅延線200は、図8に示すように、第1の実施例に係る遅延線の第1の遅延回路とほぼ同様の構成を有し、入力端子202と第1の共振器204a間、第4の共振器204dと出力端子206間、各共振器204a〜204d間とがそれぞれ容量C21、C22、C23、C24、C25で結合されて構成されている。
【0050】
この比較例に係る遅延線200の遅延特性、減衰特性及び周波数に対する不整合減衰量の変化を図9に示す。この図9において、曲線Aは遅延特性を示し、曲線Bは減衰特性を示し、曲線Cは不整合減衰量の変化を示す。なお、図9においては周波数f1〜f2の範囲における特性を図示している。
【0051】
比較例の中心周波数はf0、通過帯域はf3〜f4であり、f1<f3<f0、f0<f4<f2の関係となっている。
【0052】
そして、比較例における絶対遅延時間の平坦性を曲線Aから読み取ると、通過帯域の中心周波数f0における絶対遅延時間を基準に、その偏差が0.5ns以内である領域(平坦性の領域)は、通過帯域のほぼ30%であることがわかる。
【0053】
一方、第1の実施例に係る遅延線100Aは、図6から、周波数f1〜f2の範囲内では、中心周波数f0の値に対して3dB落ちしていないことから、通過帯域が周波数f1〜f2の範囲よりも広い範囲にわたっていることがわかる。つまり、第1の実施例に係る遅延線100Aの通過帯域は周波数f5〜f6(図示せず)の範囲であって、f5<f1<f0、f0<f2<f6の関係にある。
【0054】
また、この第1の実施例に係る遅延線100Aは、図7から、周波数f1〜f2の範囲では、不整合減衰量が20dB以上となっており、反射エネルギが比較例よりも低減していることがわかる。
【0055】
さらに、第1の実施例に係る遅延線100Aにおける絶対遅延時間の平坦性を図5から読み取ると、通過帯域の中心周波数f0における絶対遅延時間を基準に、その偏差が0.5ns以内である領域(平坦性の領域)は、通過帯域のほぼ65%であり、比較例の30%と比して大幅に向上していることがわかる。
【実施例2】
【0056】
次に、第2の実施の形態に係る遅延線10Bの実施例(第2の実施例に係る遅延線100B)について図10〜図13を参照しながら説明する。
【0057】
この第2の実施例に係る遅延線100Bは、上述した第1の実施例に係る遅延線100Aとほぼ同様の構成を有するが、図10に示すように、第2の遅延回路14における第1のリアクタンス部28A及び第2のリアクタンス部28Bの構成が以下のように異なる。
【0058】
すなわち、第1のリアクタンス部28Aは、第1のコンデンサ50aと、第1のバラクタダイオード52aと、第1の共振器34aとを有する直列回路にて構成され、第2のリアクタンス部28Bは、第2のコンデンサ50bと、第2のバラクタダイオード52bと、第2の共振器34bとを有する直列回路にて構成されている。
【0059】
この場合、第1のリアクタンス部28Aにおいては、第1のコンデンサ50aの一端は第1の出力端子22aに接続され、その他端は第1のバラクタダイオード52aのカソード端子に接続されている。また、第1のバラクタダイオード52aのアノード端子は第1の共振器34aに接続されている。さらに、第1のバラクタダイオード52aのカソード端子には、直流の制御電圧が印加可能となるように、第1の電圧制御端子54aが接続されている。
【0060】
第2のリアクタンス部28Bにおいても同様に、第2のコンデンサ50bの一端が第2の出力端子22bに接続され、その他端が第2のバラクタダイオード52bのカソード端子に接続されている。また、第2のバラクタダイオード52bのアノード端子は第2の共振器34bに接続されている。さらに、第2のバラクタダイオード52bのカソード端子には、直流の制御電圧が印加可能となるように、第2の電圧制御端子54bが接続されている。
【0061】
この第2の実施例に係る遅延線100Bの遅延特性を図11に示し、減衰特性を図12に示し、周波数に対する不整合減衰量の変化を図13に示す。これら図11〜図13においては、周波数f1〜f2の範囲における特性を図示している。また、図11〜図13において、曲線D1は、第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bの各結合容量CをC1としたときの特性を示し、曲線D2は、前記結合容量CをC2としたときの特性を示し、曲線D3は、前記結合容量CをC3としたときの特性を示す。なお、C1>C2>C3の関係を有する。
【0062】
ここで、この第2の実施例に係る遅延線100Bの作用・効果を、比較例に係る遅延線200と比較しながら説明する。
【0063】
この第2の実施例に係る遅延線100Bでは、第1及び第2の電圧制御端子54a及び54bから第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bに、図示しない抵抗又はコイルを介して、それぞれ略同一値の直流の制御電圧を印加したとき、制御電圧の値に対応して該第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bの各結合容量Cがそれぞれ同一量だけ変化する。具体的には、制御電圧の電圧値が増加すると第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bの各結合容量Cが減少する。
【0064】
結合容量CがC=C1からC=C2又はC=C3まで変化すると(C1>C2>C3)、第1及び第2のリアクタンス部28A及び28Bにおけるアドミタンスが変化して、図11に示すように、遅延線100Bの絶対遅延時間が増加する。この場合、第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bとして結合容量Cを広い範囲で可変できるものにすれば、より広い可変遅延時間を有する遅延線100Bを得ることができる。
【0065】
そして、この第2の実施例に係る遅延線100Bにおいては、図12から、周波数f1〜f2の範囲内では、中心周波数f0の値に対して3dB落ちしていないことから、通過帯域が周波数f1〜f2の範囲よりも広い範囲にわたっていることがわかる。つまり、この第2の実施例に係る遅延線100Bの通過帯域は周波数f7〜f8(図示せず)の範囲であって、f7<f1<f0、f0<f2<f8の関係にある。
【0066】
また、この第2の実施例に係る遅延線100Bは、図13から、周波数f1〜f2の範囲では、不整合減衰量が20dB以上となっており、第1の実施例と同様に、反射エネルギが比較例よりも低減していることがわかる。
【0067】
さらに、第2の実施例に係る遅延線100Bにおける絶対遅延時間の平坦性を図11から読み取ると、通過帯域の中心周波数f0における絶対遅延時間を基準に、その偏差が0.5ns以内である領域(平坦性の領域)は、曲線D1〜D3共に、通過帯域のほぼ65%であり、比較例の30%と比して大幅に向上していることがわかる。
【実施例3】
【0068】
次に、第2の実施の形態に係る遅延線10Bの他の実施例(以下、第3の実施例に係る遅延線100Cと記す)について図14〜図17を参照しながら説明する。
【0069】
この第3の実施例に係る遅延線100Cは、上述した第2の実施例に係る遅延線100Bとほぼ同様の構成を有するが、図14に示すように、第1の遅延回路12の構成が以下のように異なる。
【0070】
すなわち、第1の遅延回路12は、入力端子16と該入力端子16に隣接する第1の共振器42aとが容量C11で結合され、第1の共振器42aと該第1の共振器42aに隣接する第2の共振器42bとが容量C12で結合され、第2の共振器42bと該第2の共振器42bに隣接する第3の共振器42cとがインダクタンスL1にて誘導結合され、第3の共振器42cと該第3の共振器42cに隣接する第4の共振器42dとが容量C13で結合され、第4の共振器42dと出力端子18とが容量C14で結合されて構成されている。つまり、4つの容量結合と1つの誘導結合の組み合わせが対称的に配列されている。
【0071】
この第3の実施例に係る遅延線100Cの遅延特性を図15に示し、減衰特性を図16に示し、周波数に対する不整合減衰量の変化を図17に示す。これら図15〜図17においては、周波数f1〜f2の範囲における特性を図示している。また、図15〜図17において、曲線E1は、第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bの結合容量CをC1としたときの特性を示し、曲線E2は、前記結合容量CをC2としたときの特性を示し、曲線E3は、前記結合容量CをC3としたときの特性を示す。なお、C1>C2>C3の関係を有する。
【0072】
そして、この第3の実施例に係る遅延線100Cにおいても、図16から、周波数f1〜f2の範囲内では、中心周波数f0の値に対して3dB落ちしていないことから、通過帯域が周波数f1〜f2の範囲よりも広い範囲にわたっていることがわかる。つまり、第3の実施例に係る遅延線100Cの通過帯域は周波数f9〜f10(図示せず)の範囲であって、f9<f1<f0、f0<f2<f10の関係にある。
【0073】
また、この第3の実施例に係る遅延線100Cは、図17から、周波数f1〜f2の範囲では、不整合減衰量が20dB以上となっており、特に、第2の実施例と比較したとき、通過帯域の高域側の不整合減衰量が増加していることから、反射エネルギが第2の実施例よりも低減していることがわかる。
【0074】
さらに、第3の実施例に係る遅延線100Cにおける絶対遅延時間の平坦性は、図15に示すように、第2の実施例と比較したとき、通過帯域の高域側の偏差が小さくなっている。従って、第3の実施例における平坦性の領域は、曲線E1〜E3共に、通過帯域のほぼ70%であり、第2の実施例と比して向上していることがわかる。
【0075】
なお、上述した実施例1及び2では、第1の遅延回路12を構成するバンドパスフィルタ44として、入力端子16と第1の共振器42a間、第4の共振器42dと出力端子18間、各共振器42a〜42d間とをそれぞれ容量C11、C12、C13、C14、C15で結合して構成した例を示したが、その他、図18に示すように、入力端子16と第1の共振器42a間、第4の共振器42dと出力端子18間、各共振器42a〜42d間とをそれぞれインダクタンスL11、L12、L13、L14、L15で誘導結合して構成してもよい。
【0076】
また、上述した実施例1〜3では、第1の遅延回路12をバンドパスフィルタ44にて構成した例を示したが、その他、第1の遅延回路12をローパスフィルタ、あるいはストリップライン線路長による遅延量をもった回路、あるいはSAWディレイラインにて構成してもよい。その一例を図19に示す。
【0077】
図19に示す第1の遅延回路12の例は、入力端子16と出力端子18との間に例えば第1及び第2のコンデンサ60a及び60b(共に一端がグランドに接続されている)を有し、入力端子16と第1のコンデンサ60a間、第2のコンデンサ60bと出力端子18間、各コンデンサ60a及び60b間とがそれぞれインダクタンスL11、L12、L13で誘導結合されて構成されている。
【0078】
本発明に係る遅延線は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施の形態に係る遅延線を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態に係る遅延線を示す回路図である。
【図3】第2の実施の形態に係る遅延線を示す回路図である。
【図4】第1の実施例に係る遅延線を示す回路図である。
【図5】第1の実施例に係る遅延線の遅延特性を示す図である。
【図6】第1の実施例に係る遅延線の減衰特性を示す図である。
【図7】第1の実施例に係る遅延線の周波数に対する不整合減衰量の変化を示す特性図である。
【図8】比較例に係る遅延線を示す回路図である。
【図9】比較例に係る遅延線の遅延特性、減衰特性及び周波数に対する不整合減衰量の変化を示す特性図である。
【図10】第2の実施例に係る遅延線を示す回路図である。
【図11】第2の実施例に係る遅延線の遅延特性を示す図である。
【図12】第2の実施例に係る遅延線の減衰特性を示す図である。
【図13】第2の実施例に係る遅延線の周波数に対する不整合減衰量の変化を示す特性図である。
【図14】第3の実施例に係る遅延線を示す回路図である。
【図15】第3の実施例に係る遅延線の遅延特性を示す図である。
【図16】第3の実施例に係る遅延線の減衰特性を示す図である。
【図17】第3の実施例に係る遅延線の周波数に対する不整合減衰量の変化を示す特性図である。
【図18】第1の遅延回路の他の例を示す回路図である。
【図19】第1の遅延回路のさらに他の例を示す回路図である。
【図20】従来例に係る遅延線を示す回路図である。
【図21】他の従来例に係る遅延線を示す回路図である。
【符号の説明】
【0080】
10、10A、10B、100A〜100C…遅延線
12…第1の遅延回路 14…第2の遅延回路
16、20…入力端子 18、30…出力端子
26…ハイブリッドカプラ 22a…第1の出力端子
22b…第2の出力端子 28A…第1のリアクタンス部
28B…第2のリアクタンス部 32a…第1の容量素子
32b…第2の容量素子 34a…第1の共振器
34b…第2の共振器 40a…第1の可変容量素子
40b…第2の可変容量素子 44…バンドパスフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる遅延線に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、例えば移動体通信システム等の基地局無線装置に使用される基地局の低歪化のための歪補償型増幅器においては、歪検出や歪抑圧を目的として例えば可変遅延線が用いられている。
【0003】
可変遅延線300は、例えば図20に示すように、入力端子302と出力端子304との間に、コンデンサ306及び308と可変容量コンデンサ310とが直列に接続され、さらに、可変容量コンデンサ310の一端及び他端とアースとの間に、第1及び第2の共振器312及び314がそれぞれ接続されることによって構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
この可変遅延線300によれば、可変容量コンデンサ310の容量Caを可変させるだけで、容易に絶対遅延時間を微調整することができ、例えば歪み補償型増幅器のフィードフォワード回路等の生産性の向上を図ることができる。
【0005】
また、他の従来例に係る可変遅延線400は、図21に示すように、ハイブリッドカプラ402と、ハイブリッドカプラ402の第1及び第2の出力端子404a及び404bに接続された第1及び第2のリアクタンス部406a及び406bとを有する(例えば特許文献2参照)。
【0006】
ハイブリッドカプラ402は、第1及び第2の出力端子404a及び404bのほかに、入力信号が供給される入力端子406と、第1及び第2の出力端子404a及び404bから出力された第1及び第2の出力信号に基づく反射信号が、可変遅延線400の出力信号(第3の出力信号)として出力されるアイソレーション端子408とを備えている。
【0007】
第1及び第2のリアクタンス部406a及び406bは、第1及び第2のコンデンサ408a及び408bと、第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bと、第1及び第2の誘電体共振器412a及び412bとを有する直列回路である。この場合、第1及び第2のコンデンサ408a及び408bの一端は第1及び第2の出力端子404a及び404bに接続され、その他端は第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bのカソード端子に接続されている。また、第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bのアノード端子は第1及び第2の誘電体共振器412a及び412bに接続されている。さらに、前記カソード端子には、制御電圧が供給可能となるように、第1及び第2の電圧制御端子414a及び414bが接続されている。
【0008】
そして、第1及び第2の電圧制御端子414a及び414bから第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bに、それぞれ制御電圧を印加したとき、制御電圧の値に対応して該第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bの結合容量Cbが変化する。具体的には、制御電圧の値が増加すると第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bの結合容量Cbが減少する。
【0009】
結合容量Cbが変化すると、第1及び第2のリアクタンス部406a及び406bにおけるアドミタンスが変化して、可変遅延線400の絶対遅延時間が増加する。この場合、第1及び第2のバラクタダイオード410a及び410bとして結合容量Cbを広い範囲で可変できるものにすれば、より広い可変遅延時間を有する可変遅延線400を得ることができる。
【0010】
例えば、アイソレーション端子408に出力される第3の出力信号について、その絶対遅延時間の最小値が1ns程度となるように、第1及び第2のリアクタンス部406a及び406bを構成する回路素子の値を適宜調整すれば、100MHz以上の周波数帯域に対する絶対遅延時間の偏差を0.1ns以下に抑制することができると共に、可変遅延時間を1nsにまで増加することができる。
【0011】
また、可変遅延線400において、絶対遅延時間が2ns程度まで変化しても、伝送特性や不整合減衰量はほとんど変化しない。そのため、可変遅延線400の通過帯域を60MHz以上の広い帯域幅とすることが可能となる。
【0012】
【特許文献1】特開2001−119206号公報
【特許文献2】特開2004−153815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載された可変遅延線300は、結合容量Caが変化すると、入力端子302側のコンデンサ306及び第1の共振器312と、出力端子304側のコンデンサ308及び第2の共振器314とのバランスが崩れ、可変遅延線300における入力インピーダンスの値と出力インピーダンスの値とが変動する。これによって、可変遅延線300において、インピーダンスマッチングを取ることが困難となる。また、絶対遅延時間が大きくなると、その偏差(絶対遅延時間の偏差)も大きくなるという問題がある。
【0014】
一方、特許文献2に記載された可変遅延線400は、入出力インピーダンスの変動を抑制することができ、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間の偏差の低減を実現することができる。しかし、絶対遅延時間が1ns程度であり、可変遅延線400としての応用範囲が狭いという問題がある。
【0015】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、簡単な構成で、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる遅延線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る遅延線は、入力端子と出力端子とを有する第1の遅延回路と、入力端子、第1の出力端子、第2の出力端子及びアイソレーション端子を備えたハイブリッドカプラと、前記第1の出力端子に接続された第1のリアクタンス部と、第2の出力端子に接続された第2のリアクタンス部とを有する第2の遅延回路とを具備し、前記第1の遅延回路の前記出力端子と前記第2の遅延回路における前記ハイブリッドカプラの前記入力端子とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
これにより、まず、第2の遅延回路にて、入出力インピーダンスの変動を抑制することができ、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間の偏差の低減を実現することができる。さらに、第1の遅延回路にて、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる。
【0018】
そして、前記構成において、前記第1の遅延回路と前記第2の遅延回路が一体化されていてもよい。この場合、遅延線の小型化に有利となる。
【0019】
また、前記構成において、前記第2の遅延回路の前記第1のリアクタンス部及び第2のリアクタンス部は、それぞれリアクタンスが一定とされたリアクタンス素子を有するようにしてもよいし、あるいは、制御電圧が印加される制御端子をそれぞれ有し、且つ、前記制御端子に印加された前記制御電圧に応じてリアクタンスが変化する可変のリアクタンス素子を有するようにしてもよい。
【0020】
一方、前記第1の遅延回路は、前記第1の遅延回路がバンドパスフィルタにて構成されていてもよい。この場合、前記入力端子と前記出力端子との間に複数の共振器を有するバンドパスフィルタや、前記入力端子と前記出力端子との間に複数のLC共振回路を有するバンドパスフィルタ等がある。
【0021】
また、前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器との間、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器との間、並びに各共振器間とがそれぞれ容量結合あるいはそれぞれ誘導結合されていてもよい。
【0022】
あるいは、前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器とが容量結合もしくは誘導結合され、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器とが容量結合もしくは誘導結合され、並びに各共振器間とが容量結合もしくは誘導結合され、且つ、前記容量結合と前記誘導結合の組み合わせが対称的であってもよい。この場合、簡単な構成で、通過帯域内における絶対遅延時間の平坦性を確保でき、小型化を促進させることができる。ここで、「通過帯域における絶対遅延時間の平坦性」とは、通過帯域の中心周波数における絶対遅延時間を基準に、その偏差が0.5ns以内である領域(平坦性の領域)が、前記中心周波数から低域側及び高域側にどれだけ占めているかを示す。この発明では、前記平坦性の領域が通過帯域に対して広い範囲(通過帯域のほぼ50%〜80%)にわたって存在する。
【0023】
また、前記第1の遅延回路は、ローパスフィルタ、あるいはストリップライン線路長による遅延量をもった回路、あるいはSAWディレイラインを含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る遅延線によれば、簡単な構成で、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る遅延線の実施の形態例を図1〜図19を参照しながら説明する。
【0026】
本実施の形態に係る遅延線10は、図1に示すように、第1の遅延回路12と第2の遅延回路14とを有する。第1の遅延回路12は、入力端子16と出力端子18とを有する帯域通過遅延線(バンドパスフィルタ:BPF)やその他の遅延線で構成することができる。
【0027】
第2の遅延回路14は、入力端子20、第1の出力端子22a、第2の出力端子22b及びアイソレーション端子24を備えたハイブリッドカプラ26と、第1の出力端子22aに接続された第1のリアクタンス部28Aと、第2の出力端子22bに接続された第2のリアクタンス部28Bとを有する。さらに、第1の遅延回路12の出力端子18と第2の遅延回路14におけるハイブリッドカプラ26の入力端子20とが電気的に接続されている。
【0028】
ハイブリッドカプラ26のアイソレーション端子24からは、第1の出力端子22aから出力された第1の出力信号と、第2の出力端子22bから出力された第2の出力信号とに基づく反射信号が、本実施の形態に係る遅延線10の出力信号(第3の出力信号)として出力端子30を通じて出力される。この場合、第1の出力端子22aは、入力端子20に供給される入力信号に対して同相の第1の出力信号が出力される0°の出力端子であり、第2の出力端子22bは、前記入力信号に対して90°の位相差を有する第2の出力信号が出力される90°の出力端子である。
【0029】
第1のリアクタンス部28A及び第2のリアクタンス部28Bは、それぞれ略同一で、且つ、一定とされたリアクタンスXを有する。第1のリアクタンス部28A及び第2のリアクタンス部28Bの各一端は対応する第1の出力端子22a及び第2の出力端子22bに接続され、各他端はGND(グランド)に接地されている。
【0030】
次に、本実施の形態に係る遅延線10について、2つの実施の形態を図2及び図3を参照しながら説明する。
【0031】
まず、第1の実施の形態に係る遅延線10Aについて図2を参照しながら説明する。
【0032】
この第1の実施の形態に係る遅延線10Aにおいて、第1のリアクタンス部28Aは、リアクタンス素子としての第1の容量素子32aと第1の共振器34aとの直列回路から構成され、第2のリアクタンス部28Bは、リアクタンス素子としての第2の容量素子32bと第2の共振器34bとの直列回路から構成されている。第1及び第2の共振器34a及び34bは、LC共振器、分布定数回路からなる共振器又は誘電体共振器(λ/4共振器又はλ/2共振器)が望ましい。
【0033】
ここで、第2の遅延回路14の動作について説明する。先ず、ハイブリッドカプラ26の入力端子20を通じて入力信号が該ハイブリッドカプラ28に供給されると、第1の出力端子22a及び第2の出力端子22bには、第1の出力信号及び第2の出力信号が出力される。この場合、前記第1及び第2の出力信号の位相差は90°である。
【0034】
第1の出力端子22aが第1のリアクタンス部28Aを介して接地され、第2の出力端子22bが第2のリアクタンス部28Bを介して接地されているため、第1及び第2の出力端子22a及び22bには、第1及び第2の反射信号が発生する。そして、前記第1及び第2の反射信号の合成信号である反射信号がアイソレーション端子24に出力され、該反射信号が遅延線10Aの出力信号、すなわち第3の出力信号として出力端子30を通じて出力される。この反射信号は、前記入力信号に対し180°の位相差を持つ。
【0035】
アイソレーション端子24と入力端子20との間は、アイソレータとして機能するので、前記反射信号の反射波は、アイソレーション端子24から入力端子20に伝搬するが途中で減衰するので、入力端子20に出力されることはない。つまり、前記反射波は、遅延線10Aの入力インピーダンス及び出力インピーダンスに影響を及ぼさない。従って、ハイブリッドカプラ26と第1及び第2のリアクタンス部28A及び28Bとによって、遅延線10Aにおける入力インピーダンス及び出力インピーダンスの変動を抑制することができる。これによって、遅延線10Aにおけるインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0036】
また、第1の共振器34a及び第2の共振器34bは、それぞれ共振周波数を有している。この共振周波数によって遅延線10Aの通過帯域における中心周波数が決定される。つまり、前記共振周波数を所望の値に設定することで、所望の通過帯域を有する遅延線10Aを得ることが可能となる。
【0037】
特に、この第1の実施の形態では、第2の遅延回路14の前段に、BPFやその他の遅延線で構成された第1の遅延回路12が接続されていることから、該第1の遅延回路12にて、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる。
【0038】
つまり、この第1の実施の形態に係る遅延線10Aにおいては、簡単な構成で、通過帯域の広帯域化、絶対遅延時間偏差の低減化、絶対遅延時間の増大化を実現させることができる。
【0039】
次に、第2の実施の形態に係る遅延線10Bについて図3を参照しながら説明する。図2と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
【0040】
この第2の実施の形態に係る遅延線10Bは、図3に示すように、上述した第1の実施の形態に係る遅延線10Aとほぼ同様の構成を有するが、第2の遅延回路14における第1のリアクタンス部28Aが、リアクタンス素子としての第1の可変容量素子40aと第1の共振器34aとの直列回路から構成され、第2のリアクタンス部28Bが、リアクタンス素子としての第2の可変容量素子40bと第2の共振器34bとの直列回路から構成されている点で異なる。
【0041】
第1及び第2の可変容量素子40a及び40bは、その結合容量Cを変化させることによって、リアクタンスXを変化できるものであればよく、このような回路素子としては、バラクタダイオード、トリマコンデンサ等がある。
【0042】
この第2の実施の形態に係る遅延線10Bにおいては、上述した第1の実施の形態に係る遅延線10Bの効果のほか、第1及び第2のリアクタンス部28A及び28Bにおける第1及び第2の可変容量素子40a及び40bの結合容量Cをそれぞれ同一量だけ変化させることによって、第1及び第2のリアクタンス部28A及び28BのリアクタンスXを同一量だけ変化させることができ、これにより、第3の出力信号が有する絶対遅延時間を変化させることができる。
【0043】
上述した第1及び第2の実施の形態に係る遅延線10A及び10Bにおいては、第1の遅延回路12と第2の遅延回路14を一体化してもよい。一体化としては、第1及び第2の遅延回路12及び14を同一の配線基板に実装する場合や、第1及び第2の遅延回路12及び14を同一の基体(誘電体基板等)に形成する場合等がある。一体化することで、遅延線10A及び10Bの小型化をより一層促進させることができる。
【実施例1】
【0044】
次に、第1の実施の形態に係る遅延線10Aの実施例(第1の実施例に係る遅延線100A)について図4〜図7を参照しながら説明する。
【0045】
この第1の実施例に係る遅延線100Aは、第2の遅延回路14の構成が、図2と同様に、ハイブリッドカプラ26と、第1のリアクタンス部28Aと、第2のリアクタンス部28Bとを有する。また、第1のリアクタンス部28Aは、第1の容量素子32aと第1の共振器34aとの直列回路から構成され、第2のリアクタンス部28Bは、第2の容量素子32bと第2の共振器34bとの直列回路から構成されている。
【0046】
第1の遅延回路12は、入力端子16と出力端子18との間に複数のλ/4共振器(第1〜第4の共振器42a〜42d)を有するバンドパスフィルタ44にて構成されている。このバンドパスフィルタ44は、入力端子16と第1の共振器42a間、第4の共振器42dと出力端子18間、各共振器42a〜42d間とがそれぞれ容量C11、C12、C13、C14、C15で結合されて構成されている。
【0047】
この第1の実施例に係る遅延線100Aの遅延特性を図5に示し、減衰特性を図6に示し、周波数に対する不整合減衰量の変化を図7に示す。これら図5〜図7においては、周波数f1〜f2の範囲における特性を図示している。
【0048】
ここで、この第1の実施例に係る遅延線100Aの作用・効果を、比較例に係る遅延線200(図8参照)と比較しながら説明する。
【0049】
まず、比較例に係る遅延線200は、図8に示すように、第1の実施例に係る遅延線の第1の遅延回路とほぼ同様の構成を有し、入力端子202と第1の共振器204a間、第4の共振器204dと出力端子206間、各共振器204a〜204d間とがそれぞれ容量C21、C22、C23、C24、C25で結合されて構成されている。
【0050】
この比較例に係る遅延線200の遅延特性、減衰特性及び周波数に対する不整合減衰量の変化を図9に示す。この図9において、曲線Aは遅延特性を示し、曲線Bは減衰特性を示し、曲線Cは不整合減衰量の変化を示す。なお、図9においては周波数f1〜f2の範囲における特性を図示している。
【0051】
比較例の中心周波数はf0、通過帯域はf3〜f4であり、f1<f3<f0、f0<f4<f2の関係となっている。
【0052】
そして、比較例における絶対遅延時間の平坦性を曲線Aから読み取ると、通過帯域の中心周波数f0における絶対遅延時間を基準に、その偏差が0.5ns以内である領域(平坦性の領域)は、通過帯域のほぼ30%であることがわかる。
【0053】
一方、第1の実施例に係る遅延線100Aは、図6から、周波数f1〜f2の範囲内では、中心周波数f0の値に対して3dB落ちしていないことから、通過帯域が周波数f1〜f2の範囲よりも広い範囲にわたっていることがわかる。つまり、第1の実施例に係る遅延線100Aの通過帯域は周波数f5〜f6(図示せず)の範囲であって、f5<f1<f0、f0<f2<f6の関係にある。
【0054】
また、この第1の実施例に係る遅延線100Aは、図7から、周波数f1〜f2の範囲では、不整合減衰量が20dB以上となっており、反射エネルギが比較例よりも低減していることがわかる。
【0055】
さらに、第1の実施例に係る遅延線100Aにおける絶対遅延時間の平坦性を図5から読み取ると、通過帯域の中心周波数f0における絶対遅延時間を基準に、その偏差が0.5ns以内である領域(平坦性の領域)は、通過帯域のほぼ65%であり、比較例の30%と比して大幅に向上していることがわかる。
【実施例2】
【0056】
次に、第2の実施の形態に係る遅延線10Bの実施例(第2の実施例に係る遅延線100B)について図10〜図13を参照しながら説明する。
【0057】
この第2の実施例に係る遅延線100Bは、上述した第1の実施例に係る遅延線100Aとほぼ同様の構成を有するが、図10に示すように、第2の遅延回路14における第1のリアクタンス部28A及び第2のリアクタンス部28Bの構成が以下のように異なる。
【0058】
すなわち、第1のリアクタンス部28Aは、第1のコンデンサ50aと、第1のバラクタダイオード52aと、第1の共振器34aとを有する直列回路にて構成され、第2のリアクタンス部28Bは、第2のコンデンサ50bと、第2のバラクタダイオード52bと、第2の共振器34bとを有する直列回路にて構成されている。
【0059】
この場合、第1のリアクタンス部28Aにおいては、第1のコンデンサ50aの一端は第1の出力端子22aに接続され、その他端は第1のバラクタダイオード52aのカソード端子に接続されている。また、第1のバラクタダイオード52aのアノード端子は第1の共振器34aに接続されている。さらに、第1のバラクタダイオード52aのカソード端子には、直流の制御電圧が印加可能となるように、第1の電圧制御端子54aが接続されている。
【0060】
第2のリアクタンス部28Bにおいても同様に、第2のコンデンサ50bの一端が第2の出力端子22bに接続され、その他端が第2のバラクタダイオード52bのカソード端子に接続されている。また、第2のバラクタダイオード52bのアノード端子は第2の共振器34bに接続されている。さらに、第2のバラクタダイオード52bのカソード端子には、直流の制御電圧が印加可能となるように、第2の電圧制御端子54bが接続されている。
【0061】
この第2の実施例に係る遅延線100Bの遅延特性を図11に示し、減衰特性を図12に示し、周波数に対する不整合減衰量の変化を図13に示す。これら図11〜図13においては、周波数f1〜f2の範囲における特性を図示している。また、図11〜図13において、曲線D1は、第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bの各結合容量CをC1としたときの特性を示し、曲線D2は、前記結合容量CをC2としたときの特性を示し、曲線D3は、前記結合容量CをC3としたときの特性を示す。なお、C1>C2>C3の関係を有する。
【0062】
ここで、この第2の実施例に係る遅延線100Bの作用・効果を、比較例に係る遅延線200と比較しながら説明する。
【0063】
この第2の実施例に係る遅延線100Bでは、第1及び第2の電圧制御端子54a及び54bから第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bに、図示しない抵抗又はコイルを介して、それぞれ略同一値の直流の制御電圧を印加したとき、制御電圧の値に対応して該第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bの各結合容量Cがそれぞれ同一量だけ変化する。具体的には、制御電圧の電圧値が増加すると第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bの各結合容量Cが減少する。
【0064】
結合容量CがC=C1からC=C2又はC=C3まで変化すると(C1>C2>C3)、第1及び第2のリアクタンス部28A及び28Bにおけるアドミタンスが変化して、図11に示すように、遅延線100Bの絶対遅延時間が増加する。この場合、第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bとして結合容量Cを広い範囲で可変できるものにすれば、より広い可変遅延時間を有する遅延線100Bを得ることができる。
【0065】
そして、この第2の実施例に係る遅延線100Bにおいては、図12から、周波数f1〜f2の範囲内では、中心周波数f0の値に対して3dB落ちしていないことから、通過帯域が周波数f1〜f2の範囲よりも広い範囲にわたっていることがわかる。つまり、この第2の実施例に係る遅延線100Bの通過帯域は周波数f7〜f8(図示せず)の範囲であって、f7<f1<f0、f0<f2<f8の関係にある。
【0066】
また、この第2の実施例に係る遅延線100Bは、図13から、周波数f1〜f2の範囲では、不整合減衰量が20dB以上となっており、第1の実施例と同様に、反射エネルギが比較例よりも低減していることがわかる。
【0067】
さらに、第2の実施例に係る遅延線100Bにおける絶対遅延時間の平坦性を図11から読み取ると、通過帯域の中心周波数f0における絶対遅延時間を基準に、その偏差が0.5ns以内である領域(平坦性の領域)は、曲線D1〜D3共に、通過帯域のほぼ65%であり、比較例の30%と比して大幅に向上していることがわかる。
【実施例3】
【0068】
次に、第2の実施の形態に係る遅延線10Bの他の実施例(以下、第3の実施例に係る遅延線100Cと記す)について図14〜図17を参照しながら説明する。
【0069】
この第3の実施例に係る遅延線100Cは、上述した第2の実施例に係る遅延線100Bとほぼ同様の構成を有するが、図14に示すように、第1の遅延回路12の構成が以下のように異なる。
【0070】
すなわち、第1の遅延回路12は、入力端子16と該入力端子16に隣接する第1の共振器42aとが容量C11で結合され、第1の共振器42aと該第1の共振器42aに隣接する第2の共振器42bとが容量C12で結合され、第2の共振器42bと該第2の共振器42bに隣接する第3の共振器42cとがインダクタンスL1にて誘導結合され、第3の共振器42cと該第3の共振器42cに隣接する第4の共振器42dとが容量C13で結合され、第4の共振器42dと出力端子18とが容量C14で結合されて構成されている。つまり、4つの容量結合と1つの誘導結合の組み合わせが対称的に配列されている。
【0071】
この第3の実施例に係る遅延線100Cの遅延特性を図15に示し、減衰特性を図16に示し、周波数に対する不整合減衰量の変化を図17に示す。これら図15〜図17においては、周波数f1〜f2の範囲における特性を図示している。また、図15〜図17において、曲線E1は、第1及び第2のバラクタダイオード52a及び52bの結合容量CをC1としたときの特性を示し、曲線E2は、前記結合容量CをC2としたときの特性を示し、曲線E3は、前記結合容量CをC3としたときの特性を示す。なお、C1>C2>C3の関係を有する。
【0072】
そして、この第3の実施例に係る遅延線100Cにおいても、図16から、周波数f1〜f2の範囲内では、中心周波数f0の値に対して3dB落ちしていないことから、通過帯域が周波数f1〜f2の範囲よりも広い範囲にわたっていることがわかる。つまり、第3の実施例に係る遅延線100Cの通過帯域は周波数f9〜f10(図示せず)の範囲であって、f9<f1<f0、f0<f2<f10の関係にある。
【0073】
また、この第3の実施例に係る遅延線100Cは、図17から、周波数f1〜f2の範囲では、不整合減衰量が20dB以上となっており、特に、第2の実施例と比較したとき、通過帯域の高域側の不整合減衰量が増加していることから、反射エネルギが第2の実施例よりも低減していることがわかる。
【0074】
さらに、第3の実施例に係る遅延線100Cにおける絶対遅延時間の平坦性は、図15に示すように、第2の実施例と比較したとき、通過帯域の高域側の偏差が小さくなっている。従って、第3の実施例における平坦性の領域は、曲線E1〜E3共に、通過帯域のほぼ70%であり、第2の実施例と比して向上していることがわかる。
【0075】
なお、上述した実施例1及び2では、第1の遅延回路12を構成するバンドパスフィルタ44として、入力端子16と第1の共振器42a間、第4の共振器42dと出力端子18間、各共振器42a〜42d間とをそれぞれ容量C11、C12、C13、C14、C15で結合して構成した例を示したが、その他、図18に示すように、入力端子16と第1の共振器42a間、第4の共振器42dと出力端子18間、各共振器42a〜42d間とをそれぞれインダクタンスL11、L12、L13、L14、L15で誘導結合して構成してもよい。
【0076】
また、上述した実施例1〜3では、第1の遅延回路12をバンドパスフィルタ44にて構成した例を示したが、その他、第1の遅延回路12をローパスフィルタ、あるいはストリップライン線路長による遅延量をもった回路、あるいはSAWディレイラインにて構成してもよい。その一例を図19に示す。
【0077】
図19に示す第1の遅延回路12の例は、入力端子16と出力端子18との間に例えば第1及び第2のコンデンサ60a及び60b(共に一端がグランドに接続されている)を有し、入力端子16と第1のコンデンサ60a間、第2のコンデンサ60bと出力端子18間、各コンデンサ60a及び60b間とがそれぞれインダクタンスL11、L12、L13で誘導結合されて構成されている。
【0078】
本発明に係る遅延線は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施の形態に係る遅延線を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態に係る遅延線を示す回路図である。
【図3】第2の実施の形態に係る遅延線を示す回路図である。
【図4】第1の実施例に係る遅延線を示す回路図である。
【図5】第1の実施例に係る遅延線の遅延特性を示す図である。
【図6】第1の実施例に係る遅延線の減衰特性を示す図である。
【図7】第1の実施例に係る遅延線の周波数に対する不整合減衰量の変化を示す特性図である。
【図8】比較例に係る遅延線を示す回路図である。
【図9】比較例に係る遅延線の遅延特性、減衰特性及び周波数に対する不整合減衰量の変化を示す特性図である。
【図10】第2の実施例に係る遅延線を示す回路図である。
【図11】第2の実施例に係る遅延線の遅延特性を示す図である。
【図12】第2の実施例に係る遅延線の減衰特性を示す図である。
【図13】第2の実施例に係る遅延線の周波数に対する不整合減衰量の変化を示す特性図である。
【図14】第3の実施例に係る遅延線を示す回路図である。
【図15】第3の実施例に係る遅延線の遅延特性を示す図である。
【図16】第3の実施例に係る遅延線の減衰特性を示す図である。
【図17】第3の実施例に係る遅延線の周波数に対する不整合減衰量の変化を示す特性図である。
【図18】第1の遅延回路の他の例を示す回路図である。
【図19】第1の遅延回路のさらに他の例を示す回路図である。
【図20】従来例に係る遅延線を示す回路図である。
【図21】他の従来例に係る遅延線を示す回路図である。
【符号の説明】
【0080】
10、10A、10B、100A〜100C…遅延線
12…第1の遅延回路 14…第2の遅延回路
16、20…入力端子 18、30…出力端子
26…ハイブリッドカプラ 22a…第1の出力端子
22b…第2の出力端子 28A…第1のリアクタンス部
28B…第2のリアクタンス部 32a…第1の容量素子
32b…第2の容量素子 34a…第1の共振器
34b…第2の共振器 40a…第1の可変容量素子
40b…第2の可変容量素子 44…バンドパスフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子とを有する第1の遅延回路と、
入力端子、第1の出力端子、第2の出力端子及びアイソレーション端子を備えたハイブリッドカプラと、前記第1の出力端子に接続された第1のリアクタンス部と、第2の出力端子に接続された第2のリアクタンス部とを有する第2の遅延回路とを具備し、
前記第1の遅延回路の前記出力端子と前記第2の遅延回路における前記ハイブリッドカプラの前記入力端子とが電気的に接続されていることを特徴とする遅延線。
【請求項2】
請求項1記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路と前記第2の遅延回路が一体化されていることを特徴とする遅延線。
【請求項3】
請求項1又は2記載の遅延線において、
前記第2の遅延回路の前記第1のリアクタンス部及び第2のリアクタンス部は、それぞれリアクタンスが一定とされたリアクタンス素子を有することを特徴とする遅延線。
【請求項4】
請求項1又は2記載の遅延線において、
前記第2の遅延回路の前記第1のリアクタンス部及び第2のリアクタンス部は、制御電圧が印加される制御端子をそれぞれ有し、且つ、前記制御端子に印加された前記制御電圧に応じてリアクタンスが変化する可変のリアクタンス素子を有することを特徴とする遅延線。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路がバンドパスフィルタにて構成されていることを特徴とする遅延線。
【請求項6】
請求項5記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路は、前記入力端子と前記出力端子との間に複数の共振器を有するバンドパスフィルタにて構成されていることを特徴とする遅延線。
【請求項7】
請求項6記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器との間、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器との間、並びに各共振器間とがそれぞれ容量結合されていることを特徴とする遅延線。
【請求項8】
請求項6記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器との間、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器との間、並びに各共振器間とがそれぞれ誘導結合されていることを特徴とする遅延線。
【請求項9】
請求項6記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器とが容量結合もしくは誘導結合され、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器とが容量結合もしくは誘導結合され、並びに各共振器間とが容量結合もしくは誘導結合され、且つ、前記容量結合と前記誘導結合の組み合わせが対称的に配列されていることを特徴とする遅延線。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路が、ローパスフィルタ、あるいはストリップライン線路長による遅延量をもった回路、あるいはSAWディレイラインを含むことを特徴とする遅延線。
【請求項1】
入力端子と出力端子とを有する第1の遅延回路と、
入力端子、第1の出力端子、第2の出力端子及びアイソレーション端子を備えたハイブリッドカプラと、前記第1の出力端子に接続された第1のリアクタンス部と、第2の出力端子に接続された第2のリアクタンス部とを有する第2の遅延回路とを具備し、
前記第1の遅延回路の前記出力端子と前記第2の遅延回路における前記ハイブリッドカプラの前記入力端子とが電気的に接続されていることを特徴とする遅延線。
【請求項2】
請求項1記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路と前記第2の遅延回路が一体化されていることを特徴とする遅延線。
【請求項3】
請求項1又は2記載の遅延線において、
前記第2の遅延回路の前記第1のリアクタンス部及び第2のリアクタンス部は、それぞれリアクタンスが一定とされたリアクタンス素子を有することを特徴とする遅延線。
【請求項4】
請求項1又は2記載の遅延線において、
前記第2の遅延回路の前記第1のリアクタンス部及び第2のリアクタンス部は、制御電圧が印加される制御端子をそれぞれ有し、且つ、前記制御端子に印加された前記制御電圧に応じてリアクタンスが変化する可変のリアクタンス素子を有することを特徴とする遅延線。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路がバンドパスフィルタにて構成されていることを特徴とする遅延線。
【請求項6】
請求項5記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路は、前記入力端子と前記出力端子との間に複数の共振器を有するバンドパスフィルタにて構成されていることを特徴とする遅延線。
【請求項7】
請求項6記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器との間、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器との間、並びに各共振器間とがそれぞれ容量結合されていることを特徴とする遅延線。
【請求項8】
請求項6記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器との間、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器との間、並びに各共振器間とがそれぞれ誘導結合されていることを特徴とする遅延線。
【請求項9】
請求項6記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路は、前記入力端子と該入力端子に隣接する1つの前記共振器とが容量結合もしくは誘導結合され、前記出力端子と該出力端子に隣接する1つの前記共振器とが容量結合もしくは誘導結合され、並びに各共振器間とが容量結合もしくは誘導結合され、且つ、前記容量結合と前記誘導結合の組み合わせが対称的に配列されていることを特徴とする遅延線。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の遅延線において、
前記第1の遅延回路が、ローパスフィルタ、あるいはストリップライン線路長による遅延量をもった回路、あるいはSAWディレイラインを含むことを特徴とする遅延線。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−254114(P2006−254114A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68149(P2005−68149)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000201777)双信電機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000201777)双信電機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
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