運動制御システム、運動制御方法および運動制御プログラム
【課題】人間(第1運動体)が接する環境およびこの環境に応じた運動態様と、ロボット(第2運動体)が実際に接する環境とに鑑みて、当該第2運動体の運動を従来技術よりも適切に制御することができるシステム等を提供する。
【解決手段】本発明によれば、人間1の運動態様のうち特徴的部分さえ学習されれば、他の部分が学習されなくても十分であるという思想のもとに人間1の運動態様が学習される。そして、人間1の運動態様のうち特徴的部分さえ再現されれば、他の部分は再現されなくても十分であるという思想のもと、当該学習結果としてのモデルが用いられてロボット2の運動態様が制御される。これにより、人間1の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、ロボット2の運動態様が制御される。
【解決手段】本発明によれば、人間1の運動態様のうち特徴的部分さえ学習されれば、他の部分が学習されなくても十分であるという思想のもとに人間1の運動態様が学習される。そして、人間1の運動態様のうち特徴的部分さえ再現されれば、他の部分は再現されなくても十分であるという思想のもと、当該学習結果としてのモデルが用いられてロボット2の運動態様が制御される。これにより、人間1の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、ロボット2の運動態様が制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間等の第1運動体の運動態様を規範としてロボット等の第2運動体の運動態様を制御するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな環境に応じて人間により選択されたロボットのさまざまな行動事例の集合に基づき、ロボットの行動ルールを生成する第1の技術手法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、人間の運動をロボットに再現させるため、人間の教示作業(モーション・キャプチャ)により与えられた特定点の空間軌跡または運動パターンを時系列的に分節し、その分節された空間軌跡を組み合わせてロボットの運動パターンを生成する第2の技術手法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−166803号公報 第0053段落〜第0069段落、図1〜図6
【特許文献2】特開2002−301674号公報 第0118段落〜第0131段落、図13〜図18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、第1の技術手法によれば、ロボットの運動パターンが学習結果としての複数の行動事例の範囲内に限定されてしまう。また、第2の技術手法によれば、ロボットの運動パターンが学習結果としての分節空間軌跡の組み合わせに束縛されてしまう。このため、これら第1および第2の技術手法によれば、ロボットが任意の環境に接したときに当該環境態様に鑑みて不適切なパターンで運動することを強制される可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、人間等の第1運動体が接する環境およびこの環境に応じた運動態様と、ロボット等の第2運動体が実際に接する環境とに鑑みて、当該第2運動体の運動を従来の技術手法よりも適切に制御することができるシステム等を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための第1発明の運動制御システムは、第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御するシステムであって、前記第1運動体を取り巻く環境を表す外的因子および前記第1運動体の運動態様を表す内的因子のそれぞれのうち一部を、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれとして、該第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに測定し、当該測定結果により表される該外的特徴因子および該内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、該外的特徴因子および該内的特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルを定義する第1処理部と、前記第2運動体が接する該外的特徴因子を測定し、当該測定結果と該第1処理部により定義された該モデルとに基づいて該内的特徴因子を算定し、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように該第2運動体の運動態様を制御する第2処理部とを備えていることを特徴とする。
【0006】
第1発明の運動制御システムによれば、第1運動体の運動態様のうち特徴的部分さえ学習されれば、他の部分が学習されなくても十分であるという思想のもとに第1運動体の運動態様が学習される。具体的には、第1運動体が接する環境を表す「外的因子」の一部または特徴的部分である「外的特徴因子」と、第1運動体の運動態様を表す「内的因子」の一部または特徴的部分である「内的特徴因子」とが測定される。また、当該測定結果により表される外的特徴因子および内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、両者の連続的な相関関係を表す「モデル」が定義または設定される。このため、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれが定義域において網羅的に測定されなくても、任意の外的特徴因子に基づいて内的特徴因子が一義的に特定されるモデルが定義されうる。当該モデルは、さまざまな環境下における第1運動体の振舞または運動態様の傾向を、外的因子および内的因子のそれぞれの全部によって厳密にではなく、外的因子および内的因子のそれぞれの特徴的な一部によっておおまかに表すモデルであるといえる。なお、外的因子および内的因子のそれぞれの測定結果の中から連続的な相関関係が定義されるという条件を満たす外的因子および内的因子が外的特徴因子および内的特徴因子として選定されてもよく、実験や研究に基づく経験則に基づき、測定対象となる外的特徴因子および内的特徴因子が予め設定されていてもよい。
【0007】
そして、第1運動体の運動態様のうち特徴的部分さえ再現されれば、他の部分は再現されなくても十分であるという思想のもと、当該学習結果としてのモデルが用いられて第2運動体の運動態様が制御される。具体的には、第2運動体が接する外的特徴因子が測定され、当該学習結果としてのモデルと当該測定結果とに基づいて内的特徴因子が算定される。当該モデルは外的特徴因子および内的特徴因子の連続的な相関関係を表しているので、任意の外的特徴因子に基づいて内的特徴因子が一義的に算出されうる。さらに、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように運動計画がたてられ、かつ、当該運動計画にしたがって第2運動体の運動態様が制御される。
【0008】
前述のような学習方法および当該学習結果の利用方法により、第1運動体の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、第2運動体の運動態様が制御されうる。したがって、第1運動体が接する環境およびこれに応じた運動態様と、第2運動体が実際に接する環境とに鑑みて、当該第2運動体の運動を従来技術よりも適切に制御することができる。
【0009】
また、第2発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記測定結果により表される前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の連続的な相関関係との乖離度を評価し、該乖離度が閾値以下であることを要件として、当該連続的な相関関係を表す前記モデルを定義することを特徴とする。
【0010】
第2発明の運動制御システムによれば、外的特徴因子および内的特徴因子の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される外的特徴因子および内的特徴因子の連続的な相関関係との乖離度が閾値以下であることを要件として当該連続的な相関関係を表すモデルが定義される。このため、さまざまな環境に応じた第1運動体の運動態様の傾向を表す観点から適当なモデルが定義される。また、当該要件が満たされるように外的特徴因子および内的特徴因子が再度測定され、当該再度の測定結果に基づいてモデルが再度定義されうる。そして、当該モデルに基づいて第2運動体の運動態様が第1運動体の運動態様の大まかな傾向にしたがうように制御されうる。言い換えると、第1運動体の運動態様のおおまかな傾向を表す観点から不適当なモデルが設定されることが防止され、かつ、当該不適当なモデルに基づいて第2運動体の運動態様が制御されることが防止されうる。
【0011】
さらに、第3発明の運動制御システムは、第2発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記要件が満たされるように前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果のうち一部または全部を除いて前記モデルを定義することを特徴とする
第3発明の運動制御システムによれば、外的特徴因子および内的特徴因子の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される連続的な相関関係との乖離度が閾値以下であるという要件を満たすように、当該離散的な相関関係を表す両特徴因子の測定結果が取捨選択される。そして、取捨選択された測定結果に基づいて両特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルが定義され、当該モデルに基づいて第2運動体の運動態様が制御される。このため、さまざまな環境に応じた第1運動体の運動態様の傾向を表す観点から適当なモデルが定義され、かつ、当該モデルに基づいて第2運動体の運動態様が第1運動体の運動態様の大まかな傾向にしたがうように制御されうる。
【0012】
また、第4発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境下で一定のスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の複数回にわたる測定結果に基づいて前記モデルを定義することを特徴とする。
【0013】
第4発明の制御システムによれば、複数の異なるスタイルのそれぞれについてモデルが定義されうる。これにより、一のモデルに基づいて運動計画がたてられることにより、第2運動体が当該一のモデルに応じたスタイルにしたがって運動するようにその運動態様が制御されうる。
【0014】
さらに、第5発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果の追加に伴って前記モデルを逐次定義し、前記第2処理部が該第1処理部により逐次定義される該モデルに基づいて前記第2運動体の前記運動態様を逐次制御することを特徴とする。
【0015】
第5発明の制御システムによれば、第1運動体の運動態様の最新の学習結果としてのモデルに基づき、第2運動体の運動態様を制御することができる。
【0016】
また、第6発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第2処理部が、前記第2運動体が接する前記外的特徴因子を逐次測定し、当該逐次測定される該外的特徴因子に基づいて前記第2運動体の運動態様を逐次制御することを特徴とする。
【0017】
第6発明の運動制御システムによれば、第2運動体が接する環境、ひいては当該環境を表す外的特徴因子が変動するような場合でも、当該外的特徴因子の最新の測定結果に鑑みて、第2運動体の運動態様が適当に制御されうる。
【0018】
さらに、第7発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記第1運動体の特定部位の一の動作によって力を受けるときの物体の位置を前記外的特徴因子として測定し、該一の動作が終了したときの該特定部位の位置を前記内的特徴因子として測定することを特徴とする。
【0019】
第7発明の運動制御システムによれば、第1運動体が特定部位の一の動作によって物体に力を作用させるという運動態様の学習結果として、物体の任意の位置に基づき、当該特定部位の動作の終了位置が決定されるようなモデルが定義される。したがって、第2運動体の特定部位の一の動作によって力を受けるときの物体の予測位置(外的特徴因子)と、当該モデルとに基づき、少なくとも第2運動体の当該特定部位の一の動作の終了位置(内的特徴因子)が実現されるように第2運動体の当該一の動作が制御されうる。
【0020】
また、第8発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果の中から規則性を有する集合を規則的集合として抽出し、当該規則的集合に基づいて前記モデルを定義することを特徴とする。
【0021】
第8発明の運動制御システムによれば、外的特徴因子および内的特徴因子の測定結果のうち、規則性に関する要件を満たさない測定結果が除去された上で、当該要件を満たす測定結果のみに基づいてモデルが定義される。これにより、第1運動体の運動態様のうち規則的部分を基礎として、第2運動体の運動態様を制御する観点から適当なモデルが定義されうる。
【0022】
さらに、第9発明の運動制御システムは、第8発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記内的因子である内的付加因子を前記第1運動体の1回の運動ごとに前記外的特徴因子および前記内的特徴因子に対応付けて測定し、前記外的特徴因子および前記内的特徴因子のそれぞれの測定結果が、該内的付加因子により定義される空間において高密度で集まっている該内的付加因子の測定点に対応付けられていることを前記規則性として、前記規則的集合を抽出することを特徴とする。
【0023】
第9発明の運動制御システムによれば、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれの測定結果に対応付けられて一または複数の「内的付加因子」が測定される。さらに、当該内的付加因子により定義される空間において、高密度で集まっている測定点に対応する外的特徴因子および内的特徴因子の測定結果の集合が規則的集合として抽出される。これにより、内的付加因子の測定結果のまとまりの程度に鑑みて、第1運動体が一定のスタイルにしたがって運動したときの測定結果とはいえない、外的特徴因子および内的特徴因子の不規則的な測定結果が除去されうる。そして、当該規則的集合が用いられることにより、当該一定のスタイルにしたがった第1運動体の運動態様の学習結果として適当なモデルが定義されうる。なお、内的負荷因子の測定点の密度が高いとは、当該密度が閾値以上であることや、当該密度が複数の区域の中で所定純以内であること等を意味する。
【0024】
また、第10発明の運動制御システムは、第8発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境下で一定のスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを定義し、競合する複数の前記規則的集合が抽出された場合、当該複数の規則的集合のそれぞれに対応する新たなスタイルを定義した上で、該第1運動体が当該新たなスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを再び定義することを特徴とする。
【0025】
第10発明の運動制御システムによれば、一のスタイルにしたがった第1運動体の運動態様の学習結果として複数のモデルが定義されうるような場合、複数の新たなスタイルが定義される。さらに、当該複数の新たなスタイルのそれぞれにしたがった第1運動体の運動態様があらためて学習される。そして、第1運動体の運動態様の学習結果として一のスタイルに応じて定義された一のモデルに基づいて第2運動体の運動態様が制御されうる。これにより、第2運動体の運動態様が一のモデルに基づいて制御されているにもかかわらず、似たような環境に応じて第2運動体が異なるスタイルで運動するような事態が回避される。
【0026】
さらに、第11発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づき、定義域が異なる、共通の性質を有する複数の局所的モデルを定義し、隣接する該定義域における該局所的モデルを接続することによって前記モデルを定義することを特徴とする。
【0027】
第11発明の制御システムによれば、異なる定義域において複数の局所的モデルが定義され、当該複数の局所的モデルが統合されることで採集的なモデルが定義される。各局所的モデルは共通の性質を有しているため、当該性質を表現するための共通の規則にしたがって異なる局所的モデルが定義されうる。これにより、局所的モデルの定義を簡易化し、ひいてはモデルの定義を簡易化することができる。
【0028】
また、第12発明の運動制御システムは、第11発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記共通の性質を有する前記局所的モデルとして線形モデルを定義することを特徴とする。
【0029】
第12発明の運動制御システムによれば、線形モデルを表現するための共通の規則にしたがって異なる局所的モデルが定義されうる。ここで「線形モデル」とは、定義域における任意の外的特徴因子x(ベクトルまたはスカラー)について値域における内的特徴因子yがcx(cは係数または係数対角行列)と表現される線形写像を意味する。これにより、局所的モデルの定義を簡易化し、ひいてはモデルの定義を簡易化することができる。
【0030】
さらに、第13発明の運動制御システムは、第11発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づき、前記モデルの局所的な性質を抽出するための統計的手法を用いて前記局所的モデルを定義することを特徴とする。
【0031】
第13発明の運動制御システムによれば、モデルの局所的な性質を抽出するための統計的手法が用いられることにより、異なる定義域のそれぞれにおいて固有の性質を有する局所的モデルが定義されうる。
【0032】
また、第14発明の運動制御システムは、第13発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記統計的手法としてLWPR(Locally Weighted Projection Regression)アルゴリズムを用いて前記局所的モデルを定義することを特徴とする。
【0033】
第14発明の運動制御システムによれば、LWPRアルゴリズムにしたがって異なる定義域のそれぞれにおいて固有の性質を有する局所的モデルが定義されうる。
【0034】
さらに、第15発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記第1運動体としての人間の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを定義し、前記第2処理部が該第1処理部により定義された外車増に基づき、前記第2運動体としてのヒューマノイドロボットの前記運動態様を制御することを特徴とする。
【0035】
第15発明の運動制御システムによれば、人間の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、ヒューマノイドロボットの運動態様が制御されうる。これにより、たとえばさまざまな環境に応じた人間の一方または両方の腕の動作がおおまかに再現されるようにロボットの一方または両方の腕部の動作が制御されうる。また、さまざまな環境に応じた人間の一方または両方の脚の動作がおおまかに再現されるようにロボットの一方または両方の脚部の動作が制御されうる。
【0036】
前記課題を解決するための第16発明の運動制御方法は、第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御する方法であって、第1発明の運動制御システムにおいて前記第1および第2処理部のそれぞれが実行する処理を実行することを特徴とする。
【0037】
第16発明の運動制御方法によれば、第1運動体の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、第2運動体の運動態様が制御されうる。
【0038】
前記課題を解決するための第17発明の運動制御プログラムは、第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御するシステムとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、第1発明の運動制御システムとして前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【0039】
第17発明の運動制御プログラムによれば、第1運動体の運動態様を規範としながらも当該運動態様に過剰に拘束されることなく、第2運動体の運動態様を制御しうるシステムとしてコンピュータを機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の運動制御システムの実施形態について図面を用いて説明する。
【0041】
まず、本発明の一実施形態としての運動制御システムおよびその制御対象であるロボットの構成について説明する。
【0042】
図1に示されているロボット(第2運動体)2は、人間(第1運動体)1の運動を再現する機能を有するヒューマノイドロボットである。ロボット2は基体(または上体)20と、基体20の上方に配置された頭部21と、基体20の上部に上部両側から延設された左右の腕部22と、左右の腕部22のそれぞれの先端に設けられている手部23と、基体20の下部から下方に延設された左右の脚部24と、左右の脚部24のそれぞれの先端に設けられている足部25とを備えている。また、ロボット2は腕部22や脚部24等の各関節角度に応じた信号を出力するロータリーエンコーダ、手部23や足部25等に作用する力に応じた信号を出力する6軸力センサ等、ロボット2の運動態様を表す種々の内的因子を測定するための種々のセンサ204(図2参照)を備えている。さらに、ロボット2は腕部22、手部23および脚部24等の駆動源として各関節部分等に設けられたアクチュエータ206(図2参照)を備えている。
【0043】
基体20はヨー軸回りに相対的に回動しうるように上下に連結された上部および下部により構成されている。頭部21は基体20に対してヨー軸回りに回動する等、動くことができる。
【0044】
腕部22は第1腕リンク222と、第2腕リンク224とを備えている。基体20と第1腕リンク222とは肩関節221を介して連結され、第1腕リンク222と第2腕リンク224とは肘関節223を介して連結され、第2腕リンク224と手部23とは手根関節225を介して連結されている。肩関節221はロール、ピッチおよびヨー軸回りの回動自由度を有し、肘関節223はピッチ軸回りの回動自由度を有し、手根関節225はロール、ピッチ、ヨー軸回りの回動自由度を有している。手部23は、手掌部から延設され、人間の手の親指、人差指、中指、薬指および小指のそれぞれに相当する5つの指機構を備えている。
【0045】
脚部24は第1脚リンク242と、第2脚リンク244とを備えている。基体20と第1脚リンク242とは股関節241を介して連結され、第1脚リンク242と第2脚リンク244とは膝関節243を介して連結され、第2脚リンク244と足部25とは足関節245を介して連結されている。股関節241はロール、ピッチおよびロール軸回りの回動自由度を有し、膝関節243はピッチ軸回りの回動自由度を有し、足関節245はロールおよびピッチ軸回りの回動自由度を有している。
【0046】
ロボット(第2運動体)2は図2に示されているような運動制御システム200を備えている。運動制御システム200はCPU、ROM、RAM、I/O等によって構成され、人間(第1運動体)1の運動態様の学習結果としてモデルを定義し、ロボット2の運動態様を当該モデルにしたがって制御する。なお、制御システムはロボット2の内部ネットワークを通じて接続された主制御ユニットおよび一または複数の副制御ユニットより構成される分散制御システムであってもよい。
【0047】
ロボット2に搭載されているコンピュータを運動制御システム200として機能させるための「運動制御プログラム」はROM等の記憶装置に予め格納されていてもよいが、ロボット2から要求があった等の任意のタイミングで当該プログラムがサーバからネットワークや人工衛星を介して当該コンピュータに配信(ダウンロード)または放送され、当該プログラム用のメモリに格納されてもよい。
【0048】
運動制御システム200は第1処理部210と、第2処理部220とを備えている。第1処理部210と第2処理部220とは同じCPUまたはプロセッサにより構成されていてもよく、異なるCPUまたはプロセッサにより構成されていてもよい。
【0049】
第1処理部210は人間1の周囲に配置されたカメラ(トラッカー)202を通じて得られる当該人間の画像に基づき、当該人間が運動するときの環境を表す「外的因子」および運動態様を表す「内的因子」のそれぞれの特徴的部分を「外的特徴因子」および「内的特徴因子」として測定する。また、第1処理部210は当該測定結果により表される外的特徴因子および内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、外的特徴因子および内的特徴因子の連続的な相関関係を表す「モデル」を定義する。
【0050】
第2処理部220はロボット2が接する環境を表す外的因子のうち「外的特徴因子」を測定する。また、第2処理部220は外的特徴因子の測定結果と第1処理部210により定義されたモデルとに基づいて「内的特徴因子」を算定する。さらに、第2処理部220は少なくとも算定された内的特徴因子が実現されるように、センサ204の出力に基づいてアクチュエータ206の動作をフィードバック制御することによりロボット2の運動態様を制御する。
【0051】
続いて、前記構成の運動制御システムの機能について説明する。
【0052】
まず、第1処理部210が「第1処理」を実行する(図3/S010)。
【0053】
これにより、たとえば図4(a)〜(c)に示されているように、人間1が右手に持ったラケットRを用いて前方から飛んでくる玉Qをフォアハンドで打ち返すという一定のスタイルの運動態様の学習結果としてモデルが定義される。詳細には、人間1がラケットRを右手で持ち、右肘を曲げてラケットRを肩と同じくらいの高さでその前面を前方に向けて構えた待機状態から、ラケットRを動かすことにより、その前面を前方から飛んできた玉Qに当てる動作の学習結果としてモデルが定義される。
【0054】
具体的には、外的因子および内的因子のそれぞれの特徴的部分が「外的特徴因子」および「内的特徴因子」として人間1が前記スタイルにしたがって運動を繰り返すたびに測定される(図3/S012)。
【0055】
「外的因子」は人間1が接する環境を表す因子であり、前記例では任意時刻における玉Qの位置およびその時間微分(速度、加速度など)が外的因子(空間的かつ時間的に区分される環境の構成要素)に該当する。「内的因子」は人間1の運動態様を表す因子であり、前記例では任意時刻における特定部位(手首、肘、肩など)の位置および各関節角度ならびにこれらの時間微分(特定部位の速度および加速度、ならびに関節角速度および関節角加速度など)、特定部位の異なる時刻における相対ベクトルの長さや方位、異なる複数の特定部位の相対位置、相対速度等が内的因子(空間的かつ時間的に区分される運動態様の構成要素)に該当する。
【0056】
たとえば光学式モーションキャプチャー(モーキャプ)システムにより任意時刻における特定部位の位置が測定される。光学式モーションキャプチャーシステムによれば、人間1の周囲に配置された一または複数のカメラ(トラッカー)202による、この人間1の身体に付されたマーカーの検出結果に基づいて人間1の特定部位の位置が測定される。任意時刻における玉位置は、たとえばカメラ202を通じて得られる、玉Qまたはこれに付されたマーカーの検出結果に基づいて測定される。なお、特定部位および玉Qのそれぞれの位置を測定するカメラ(トラッカー)202は、同一種類のカメラであってもよく、異なる種類のカメラ(可視光カメラ、赤外光カメラ等)であってもよい。
【0057】
その他、機械式、磁気式または慣性式モーションキャプチャーシステムにより任意時刻における手首位置が測定されてもよい。機械式モーションキャプチャーシステムによれば、人間1に装着されたサポータまたはスーツに取り付けられた複数のポテンショメータからの当該人間1の各関節角度を表す出力信号に基づいて手首位置が測定される。磁気式モーションキャプチャーシステムによれば、人間1に装着されたサポータまたはスーツに取り付けられた複数の磁気センサからの出力信号に基づいて手首位置が測定される。慣性式モーションキャプチャーシステムによれば、人間1に装着されたサポータまたはスーツに取り付けられた複数の慣性モーメントセンサからの当該人間1の腕等の慣性モーメントを表す出力信号に基づいて手首位置が測定される。
【0058】
図5には人間1によって前記動作が繰り返されたときにx−y平面において特定部位としての手首の位置および玉位置が変化する様子が示されている。手首位置はラケットRが待機位置にあるときの初期手首位置p0(i)(iは動作回数を示す指数)から(図4(a)参照)、動いているラケットRに玉Qが当たったときの1次手首位置p1(i)を経て(図4(b)参照)、ラケットRの前方への動きが停止したときの2次手首位置p2(i)に変化している(図4(c)参照)。また、玉位置は初期玉位置q0(i)から(図4(a)参照)、動いているラケットRに玉Qが当たったときの1次玉位置q1(i)を経て(図4(b)参照)、ラケットRの前方への動きが止まったときの2次玉位置q2(i)に変化する様子が示されている(図4(c)参照)。なお、手首位置および玉位置はz方向についても変化している。
【0059】
本実施形態では、1次玉位置(=動いているラケットRに玉Qが当たったときの玉位置)q1(i)が「外的特徴因子」として測定される。ラケットRに玉Qが当たったことは、たとえばカメラ202を通じて得られる画像解析によって測定される玉Qの速度変化(特にy方向の速度変化(図5参照))が閾値を超えたことによって把握される。なお、マイク(図示略)を通じて得られる、ラケットRに玉Qが当たった音に基づいて、ラケットRに玉Qが当たったことが把握されてもよい。
【0060】
さらに、2次手首位置(=ラケットRの前方への動きが停止したときの手首位置)p2(i)が「内的特徴因子」として特定される(図4(c)参照)。ラケットRの前方への動きが停止したことは、たとえばモーキャプシステムにより測定される手首の速度変化(特にy方向の速度変化(図5参照))が閾値を超えたことによって把握される。
【0061】
任意の外的因子のうちどれが外的特徴因子に該当し、任意の内的因子のうちどれが内的特徴因子に該当するかは実験や研究等によって予め設定されていてもよい。そのほか、複数の外的因子および複数の内的因子が測定され、当該測定結果との乖離度が閾値以下であるという要件を満たす連続的な相関関係が定義されうる外的因子および内的因子のそれぞれが外的特徴因子および内的特徴因子として特定されてもよい。複数時点における玉Pの位置、速度、加速度等が複数の外的因子に該当する。複数時点における手首、肘、肩等の位置、速度および加速度、ならびに各関節角度、角速度および角加速度等が複数の内的因子に該当する。
【0062】
また、外的特徴因子および内的特徴因子の測定結果のうち、規則性に関する要件を満たさない測定結果が除去されることにより規則的集合が抽出される(図3/S014)。具体的には、初期手首位置p0(i)が「内的付加因子」として測定される。また、「内的付加因子により定義される空間(3次元空間)における複数の単位立方体のうち、当該測定点が高密度で集まっている単位立方体に対応している」という規則性に関する要件を満たさない、回数jにおける外的特徴因子q1(j)および内的特徴因子p2(j)の測定結果が除去される。ここで、単位立方体における測定点が高密度であるとは、当該密度が最高であることや、閾値以上であることを意味している。そして、当該測定結果が除去された残りの測定結果の集合が「規則的集合」として抽出される。
【0063】
なお、初期手首位置p0(i)に代えてまたは加えて、1次手首位置p1(i)もしくは2次手首位置p2(i)等、種々のタイミングにおける手首位置、または、手首速度および加速度等の手首位置の時間微分を内的付加因子として当該要件が定義されてもよい。たとえば、図9に示されているように人間1が、その手首を初期手首位置p0(時刻t=t0)からテイクバック位置p0+(時刻t=t0+(>t0))に動かし、その上で1次手首位置p1(時刻t=t1)および2次手首位置p2(時刻t=t2)を経て、戻り位置p2+(時刻t=t2+(>t2))に動かした場合について考える。時刻t0+から時刻t2までの間の手首位置の3次元空間における軌跡(p0+〜p1〜p2)が、図10(a)(b)に示されているようなテイクバック位置p0+を一方の端面上に包含する略円柱状の領域に含まれていることが規則性に関する要件として定義されていてもよい。図10(a)に示されているように当該軌跡が当該領域に全て含まれているときに測定された外的特徴因子(1次玉位置q1)および内的特徴因子(2次手首位置p2)は、当該要件を満たしていると判定され、規則的集合に包含される。一方、図10(b)に示されているように当該軌跡の一部が当該領域から外れているときに測定された外的特徴因子(1次玉位置q1)および内的特徴因子(2次手首位置p2)は、当該要件を満たしていないと判定され、規則的集合から除外される。
【0064】
また、人間1の手首に代えてまたは加えて、肘、肩等、手首とは異なる位置を内的因子として当該要件が定義されてもよい。
【0065】
さらに、人間1の身体部分の位置に代えてまたは加えて、当該身体部分の速度および加速度等の時間微分を内的付加因子として当該要件が設定されてもよい。たとえば、図9に示されているように人間1がその手首を動かした場合、図11に示されているように時刻t0+および時刻t2のそれぞれにおける手首の速さの大きさ|v|が閾値vs以下であること(手首が静止していること)が当該要件として定義されていてもよい。
【0066】
また、内的付加因子に代えてまたは加えて、初期玉位置q0(i)、1次玉位置q1(i)および2次玉位置q2(i)等、種々のタイミングにおける玉Pの位置、速度および加速度等の外的因子(外的付加因子)によって当該要件が定義されてもよい。
【0067】
また、内的付加因子および外的付加因子のうち一方または両方の測定点の空間密度ではなく、内的特徴因子および外的特徴因子のうち複数の因子の組み合わせの測定点間の距離等、空間における異なる因子の測定点間の配置関係によって規則性に関する要件が定義されてもよい。たとえば、初期玉位置p0(i)および1次手首位置q1(i)の相対ベクトルの長さまたは方位が所定範囲にあることが当該要件として設定されてもよい。
【0068】
さらに、外的特徴因子および内的特徴因子の測定結果を構成要素とする規則的集合に基づき、LWPR(Locally Weighted Projection Regression)アルゴリズム等の統計的手法にしたがって局所的モデルが定義され、かつ、その統合結果としてのモデルが定義される(図3/S016)。なお、LWPRアルゴリズムのほか、回帰モデル、ニューラルネットモデル等、他の統計的手法にしたがってモデルが定義されてもよい。当該モデルは外的特徴因子(スカラーまたはベクトル)qおよび内的特徴因子(スカラーまたはベクトル)pの連続的な相関関係を表す、次式(1)の写像fを表している。
【0069】
f(q)=p ‥(1)
具体的には、外的特徴因子q1(i)(x,yおよびz成分を有する3次元ベクトル(q1x,q1y,q1z)である。)および内的特徴因子p2(i)(x,yおよびz成分を有する3次元ベクトル(p2x,p2y,p2z)である。)の測定結果が当該因子により定義される6次元空間(6つの変数q1x,q1y,q1z,p2x,p2yおよびp2zにより定義される空間である。)においてプロットされる。各プロットは外的特徴因子q1(i)および内的特徴因子p2(i)の離散的な相関関係を表している。簡単のため各特徴因子のx成分の測定結果についてのみ考察すると、図5に示されているように人間1が打ち返し運動を繰り返した場合、図6(a)に示されているように各特徴因子のx成分(q1x,p2x)の測定結果がプロットされる。人間1がさらに同じスタイルにしたがって運動を繰り返すたびに特徴因子空間におけるプロット数が徐々に増えていく。そして、図6(b)に示されているように当該プロットにより表される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2のそれぞれのx成分の局所的な相関関係を近似的に表す曲線LM1〜LM3のそれぞれが「局所的モデル」として定義される。局所的モデルLM1〜LM3のそれぞれは線形モデルであってもよく、非線形モデルであってもよい。なお、各局所的モデルが共通の性質(たとえば線形性)を有していれば、当該性質を表現するための共通の規則にしたがって異なる局所的モデルが定義されうる。これにより、局所的モデルひいてはモデルの定義が簡易化される。
【0070】
さらに、複数の局所的モデルが重ね合わせられることによって外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係を表す「モデル」が定義される。たとえば、図6(b)に示されている局所的モデルLM1、LM2およびLM3は、任意の外的特徴因子q1のx成分と各局所的モデルの中心のx成分との距離に応じて重み付けられて重ね合わせられる。重み付けに際して、各局所的モデルの局所性を表すパラメータによって正規化された距離に応じた重みが各局所的モデルに付されてもよい。これにより、図6(c)に示されているような、任意の外的特徴因子q1のx成分に応じて内的特徴因子p2のx成分が一義的に決定されうるモデルMが定義される。前記のように簡単のために各特徴因子のx成分のみが考察された場合のモデルの定義方法について説明したが、実際には各特徴因子のx成分、y成分およびz成分のすべてが考察された上でモデルが定義される。すなわち、次式(2)で表されるように、任意の外的特徴因子q1=(q1x,q1y,q1z)に基づいて一義的に内的特徴因子p2=(p2x,p2y,p2z)が決定される、3×3の行列Aで表される局所的モデルが定義され、それらを重ね合わせることでモデルが定義される。
【0071】
p2=A・q1 ‥(2)
続いて、第2処理部220により「第2処理」が実行される(図2/S020)。
【0072】
これにより、第1処理部210によって定義されたモデルにしたがって、たとえば図7(a)〜(c)に示されているように、ロボット(第2運動体)2が右の手部23に持ったラケットRを用いて前方から飛んでくる玉Qをフォアハンドで打ち返すという一定のスタイルの運動態様が再現される。
【0073】
具体的には、ロボット2が接する「外的特徴因子」が測定される(図3/S022)。前記例ではロボット2が前方から飛んでくる玉QにラケットRを当てる位置が外的特徴因子として予測される。ロボット2が玉QにラケットRを当てる位置は、カメラ202の画像解析によって測定される玉Qの現在位置および速度に基づき、この玉Qが設定平面または曲面を通過する位置として予測される。たとえば図8(a)に示されているように玉Qの現在位置q0(k)(k=1,2)および速度v0(k)に基づき、この玉Qが一点鎖線で示されている面を通過する位置q1(k)が外的特徴因子として予測または測定される。なお、第2処理部220による測定対象となる外的特徴因子は予め定められていてもよく、第1処理部210によって複数の外的因子の中から選定されてもよい。また、この面はロボット2が右の手部23で把持しているラケットRを玉Qに当てることを考慮に入れて、ロボットの左右において非対称的に設定されていてもよい。
【0074】
また、測定された外的特徴因子q1(k)と、第1処理部210によって定義されたモデルとに基づき、内的特徴因子が算定される(図3/S024)。たとえば図6(c)に示されているようなモデルにしたがって、図8(a)に破線で示されている、ラケットRの前方への動きが停止したときのロボット2の手首位置p2(k)が内的特徴因子として算定される。なお、人間1およびロボット2のそれぞれのサイズまたは運動スケール(いわゆるリーチなど)の相違に鑑みて、両者の運動スケールを整合させるためのスケーリング因子が乗じられた内的特徴因子が算定されてもよい。
【0075】
そして、内的特徴因子p2(k)が再現されるようにロボットの運動態様が制御される(図3/S026)。たとえば、図8(b)に示されているように、ロボット2の手首位置が、少なくともラケットRの前方への動きが停止したときに算定された内的特徴因子p2(k)に合致するように制御される。これにより、ロボット2が図7(a)〜(c)に示されているように、右手部23に持ったラケットRを用いて前方から飛んでくる玉Qをフォアハンドで打ち返すという一定のスタイルの運動態様が再現される。
【0076】
前記機能を発揮する運動制御システム200によれば、人間(第1運動体)1の運動態様のうち特徴的部分さえ学習されれば、他の部分は学習されなくても十分であるという思想のもとにその運動態様が学習される(図3/S010、図4(a)〜(c)参照)。具体的には、人間1が接する環境を表す多数の外的因子のうち特徴的部分としての外的特徴因子(1次玉位置)q1と、人間1の運動態様を表す多数の内的因子のうち特徴的部分としての内的特徴因子(2次手首位置)p2とが測定される。また、当該測定結果により表される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の離散的な相関関係に基づき、外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係を表すモデルが定義される(図3/S012,S016、図6(a)〜(c)参照)。このため、外的特徴因子q1および内的特徴因子p2のそれぞれが定義域において網羅的に測定されなくても、任意の外的特徴因子q1に基づいて内的特徴因子p2が一義的に特定されるモデルが定義されうる。当該モデルは、さまざまな環境下における人間1の振舞または運動態様の傾向を、外的因子および内的因子のそれぞれの全部によって厳密にではなく、外的因子および内的因子のそれぞれの特徴的な一部によっておおまかに表すモデルであるといえる。
【0077】
そして、人間1の運動態様のうち特徴的部分さえ再現されれば、他の部分は再現されなくても十分であるという思想のもと、当該学習結果としてのモデルが用いられてロボット2の運動態様が制御される(図3/S020、図7(a)〜(c)参照)。具体的には、ロボット2が接する外的特徴因子q1が測定され、当該学習結果としてのモデルと当該測定結果とに基づいて内的特徴因子p2が算定される(図3/S022,S024参照)。当該モデルは外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係を表しているので、任意の外的特徴因子q1に基づいて内的特徴因子p2が一義的に算出されうる。さらに、少なくとも当該内的特徴因子p2が実現されるように運動計画がたてられ、かつ、当該運動計画にしたがってロボット2の運動態様が制御される(図3/S026、図8(a)(b)参照)。
【0078】
前述のような学習方法および当該学習結果の利用方法により、人間1の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、ロボット2の運動態様が制御されうる。したがって、人間1が接する環境およびこれに応じた運動態様と、ロボット2が実際に接する環境とに鑑みて、当該ロボット2の運動を適切に制御することができる。
【0079】
さらに、内的付加因子p0の測定結果のまとまりの程度に鑑みて、人間1が一定のスタイルにしたがって運動したときの測定結果とはいえない(規則性に関する要件を満たさない)測定結果が除去されて規則的集合が抽出される(図3/S014参照)。これにより、たとえば人間1がラケットRを構えている位置または初期手首位置(内的付加因子)p0が他の場合よりも著しく異なるような状態における測定結果は、モデル定義の基礎から除外される。そして、当該規則的集合が用いられることにより、当該一定のスタイルにしたがった人間1の運動態様の学習結果として適当なモデルが定義されうる。
【0080】
なお、前記実施形態では「第1運動体」としての人間1の運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいて「第2運動体」としてのロボット2の運動態様が制御された。そのほか「第1運動体」としての馬、犬等、人間とは異なる動物の運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいて「第2運動体」としての当該動物を模した動物型ロボットの運動態様が制御されてもよい。また「第1運動体」としてのロボットの運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいて「第2運動体」としての他の同型ロボットの運動態様が制御されてもよい。
【0081】
さらに、前記実施形態では人間1がその片手(特定部位)で持ったラケットRで前方から飛んでくる玉(物体)Qを(フォアハンドで)打ち返すという運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づき、ロボット2が同様にその片方の手部23で把持したラケットRで前方から飛んでくる玉Qを打ち返すという運動態様が制御された(図4(a)〜(c)、図7(a)〜(c)参照)。そのほか、人間がその片脚でボールを蹴る、両手で持ったゴルフクラブでボールを打つ、片手で持ったはさみで紙を切る、ものに塗料や接着剤を塗布する、物を組み立てる等、さまざまな運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が制御されてもよい。
【0082】
また、第1処理部210が人間1の外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の測定結果の追加に伴ってモデルを逐次定義し、第2処理部220が当該逐次定義されるモデルに基づいてロボット2の運動態様を制御してもよい。これにより、人間1の運動態様の最新の学習結果としてのモデルに基づき、ロボット2の運動態様を制御することができる。
【0083】
さらに、第2処理部220が、ロボット2が接する外的特徴因子q1を逐次測定し、当該逐次測定される外的特徴因子q1に基づいてロボット2の運動態様を制御してもよい。これにより、ロボット2が接する環境、ひいては当該環境を表す外的特徴因子q1が変動するような場合でも、外的特徴因子q1の最新の測定結果(時々刻々変化する玉Qの予測位置)に鑑みて、ロボット2の運動態様が適当に制御されうる。
【0084】
また、第1処理部210が、測定結果により表される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係との乖離度を評価し、該乖離度が閾値以下であることを要件として、当該連続的な相関関係を表すモデルを定義してもよい。さらに、モデルの再定義に際して規則的集合が再定義されてもよい。
【0085】
当該構成の運動制御システム200によれば、外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係との乖離度が閾値以下であることを要件として当該連続的な相関関係を表すモデルが定義される。このため、さまざまな環境に応じた人間(第1運動体)1の運動態様の傾向を表す観点から適当なモデルが定義される。また、当該要件が満たされるように外的特徴因子q1および内的特徴因子p2が再度測定され、当該再度の測定結果に基づいてモデルが再度定義されうる。そして、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が人間1の運動態様の大まかな傾向にしたがうように制御されうる。言い換えると、人間1の運動態様のおおまかな傾向を表す観点から不適当なモデルが設定されることが防止され、かつ、当該不適当なモデルに基づいてロボット2の運動態様が制御されることが防止されうる。
【0086】
さらに、第1処理部210が、前記要件が満たされるように外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の測定結果のうち一部または全部を除いてモデルを定義してもよい。
【0087】
当該構成の運動制御システム200によれば、外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係との乖離度が閾値以下であるという要件を満たすように、当該離散的な相関関係を表す両特徴因子q1およびp2の測定結果が取捨選択される。そして、取捨選択された測定結果に基づいて両特徴因子q1およびp2の連続的な相関関係を表すモデルが定義され、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が制御される。このため、さまざまな環境に応じた人間1の運動態様の傾向を表す観点から適当なモデルが定義され、かつ、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が人間1の運動態様の大まかな傾向にしたがうように制御されうる。
【0088】
また、第1処理部210が、人間1が異なる環境下で一定のスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の測定結果に基づいてモデルを定義し、競合する複数の規則的集合が抽出された場合、当該複数の規則的集合のそれぞれに対応する新たなスタイルを定義してもよい。そして、第1処理部210が新たなスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の測定結果に基づいてモデルを再び定義してもよい。これにより、一のスタイルにしたがった人間1の運動態様の学習結果として複数のモデルが定義されうるような場合、複数の新たなスタイルが定義される。たとえば「ラケットRを玉Qにフォアハンドで当てる」というスタイルが「ラケットRで玉Qにトップスピンをかける」「ラケットRで玉Qにバックスピンをかける」という新たな2つのスタイルに定義される。さらに、新たなスタイルのそれぞれにしたがった人間1の運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が制御される。たとえばロボット2が右手部23で把持したラケットRで前方から飛んできた玉を、特定方向のスピンをかけながら打ち返すようにその動作が制御される。そして、ロボット2の運動態様が一のモデルに基づいて制御されているにもかかわらず、似たような環境に応じてロボット2が異なるスタイルで運動するような事態が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態としての運動制御システムの制御対象であるロボットの構成説明図
【図2】本発明の一実施形態としての運動制御システムの構成説明図
【図3】本発明の一実施形態としての運動制御方法の説明図
【図4】人間の運動態様の例示図
【図5】外的因子および内的因子の例示図
【図6】モデルの定義方法の説明図
【図7】ロボットの運動態様の例示図
【図8】ロボットの運動態様の制御方法の説明図
【図9】規則的集合の定義に関する説明図
【図10】規則的集合の定義に関する説明図
【図11】規則的集合の定義に関する説明図
【符号の説明】
【0090】
1‥人間(第1運動体)、2‥ロボット(第2運動体)、200‥運動制御システム、202‥カメラ(撮像装置)、210‥第1処理部、220‥第2処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間等の第1運動体の運動態様を規範としてロボット等の第2運動体の運動態様を制御するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな環境に応じて人間により選択されたロボットのさまざまな行動事例の集合に基づき、ロボットの行動ルールを生成する第1の技術手法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、人間の運動をロボットに再現させるため、人間の教示作業(モーション・キャプチャ)により与えられた特定点の空間軌跡または運動パターンを時系列的に分節し、その分節された空間軌跡を組み合わせてロボットの運動パターンを生成する第2の技術手法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−166803号公報 第0053段落〜第0069段落、図1〜図6
【特許文献2】特開2002−301674号公報 第0118段落〜第0131段落、図13〜図18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、第1の技術手法によれば、ロボットの運動パターンが学習結果としての複数の行動事例の範囲内に限定されてしまう。また、第2の技術手法によれば、ロボットの運動パターンが学習結果としての分節空間軌跡の組み合わせに束縛されてしまう。このため、これら第1および第2の技術手法によれば、ロボットが任意の環境に接したときに当該環境態様に鑑みて不適切なパターンで運動することを強制される可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、人間等の第1運動体が接する環境およびこの環境に応じた運動態様と、ロボット等の第2運動体が実際に接する環境とに鑑みて、当該第2運動体の運動を従来の技術手法よりも適切に制御することができるシステム等を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための第1発明の運動制御システムは、第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御するシステムであって、前記第1運動体を取り巻く環境を表す外的因子および前記第1運動体の運動態様を表す内的因子のそれぞれのうち一部を、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれとして、該第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに測定し、当該測定結果により表される該外的特徴因子および該内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、該外的特徴因子および該内的特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルを定義する第1処理部と、前記第2運動体が接する該外的特徴因子を測定し、当該測定結果と該第1処理部により定義された該モデルとに基づいて該内的特徴因子を算定し、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように該第2運動体の運動態様を制御する第2処理部とを備えていることを特徴とする。
【0006】
第1発明の運動制御システムによれば、第1運動体の運動態様のうち特徴的部分さえ学習されれば、他の部分が学習されなくても十分であるという思想のもとに第1運動体の運動態様が学習される。具体的には、第1運動体が接する環境を表す「外的因子」の一部または特徴的部分である「外的特徴因子」と、第1運動体の運動態様を表す「内的因子」の一部または特徴的部分である「内的特徴因子」とが測定される。また、当該測定結果により表される外的特徴因子および内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、両者の連続的な相関関係を表す「モデル」が定義または設定される。このため、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれが定義域において網羅的に測定されなくても、任意の外的特徴因子に基づいて内的特徴因子が一義的に特定されるモデルが定義されうる。当該モデルは、さまざまな環境下における第1運動体の振舞または運動態様の傾向を、外的因子および内的因子のそれぞれの全部によって厳密にではなく、外的因子および内的因子のそれぞれの特徴的な一部によっておおまかに表すモデルであるといえる。なお、外的因子および内的因子のそれぞれの測定結果の中から連続的な相関関係が定義されるという条件を満たす外的因子および内的因子が外的特徴因子および内的特徴因子として選定されてもよく、実験や研究に基づく経験則に基づき、測定対象となる外的特徴因子および内的特徴因子が予め設定されていてもよい。
【0007】
そして、第1運動体の運動態様のうち特徴的部分さえ再現されれば、他の部分は再現されなくても十分であるという思想のもと、当該学習結果としてのモデルが用いられて第2運動体の運動態様が制御される。具体的には、第2運動体が接する外的特徴因子が測定され、当該学習結果としてのモデルと当該測定結果とに基づいて内的特徴因子が算定される。当該モデルは外的特徴因子および内的特徴因子の連続的な相関関係を表しているので、任意の外的特徴因子に基づいて内的特徴因子が一義的に算出されうる。さらに、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように運動計画がたてられ、かつ、当該運動計画にしたがって第2運動体の運動態様が制御される。
【0008】
前述のような学習方法および当該学習結果の利用方法により、第1運動体の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、第2運動体の運動態様が制御されうる。したがって、第1運動体が接する環境およびこれに応じた運動態様と、第2運動体が実際に接する環境とに鑑みて、当該第2運動体の運動を従来技術よりも適切に制御することができる。
【0009】
また、第2発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記測定結果により表される前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の連続的な相関関係との乖離度を評価し、該乖離度が閾値以下であることを要件として、当該連続的な相関関係を表す前記モデルを定義することを特徴とする。
【0010】
第2発明の運動制御システムによれば、外的特徴因子および内的特徴因子の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される外的特徴因子および内的特徴因子の連続的な相関関係との乖離度が閾値以下であることを要件として当該連続的な相関関係を表すモデルが定義される。このため、さまざまな環境に応じた第1運動体の運動態様の傾向を表す観点から適当なモデルが定義される。また、当該要件が満たされるように外的特徴因子および内的特徴因子が再度測定され、当該再度の測定結果に基づいてモデルが再度定義されうる。そして、当該モデルに基づいて第2運動体の運動態様が第1運動体の運動態様の大まかな傾向にしたがうように制御されうる。言い換えると、第1運動体の運動態様のおおまかな傾向を表す観点から不適当なモデルが設定されることが防止され、かつ、当該不適当なモデルに基づいて第2運動体の運動態様が制御されることが防止されうる。
【0011】
さらに、第3発明の運動制御システムは、第2発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記要件が満たされるように前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果のうち一部または全部を除いて前記モデルを定義することを特徴とする
第3発明の運動制御システムによれば、外的特徴因子および内的特徴因子の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される連続的な相関関係との乖離度が閾値以下であるという要件を満たすように、当該離散的な相関関係を表す両特徴因子の測定結果が取捨選択される。そして、取捨選択された測定結果に基づいて両特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルが定義され、当該モデルに基づいて第2運動体の運動態様が制御される。このため、さまざまな環境に応じた第1運動体の運動態様の傾向を表す観点から適当なモデルが定義され、かつ、当該モデルに基づいて第2運動体の運動態様が第1運動体の運動態様の大まかな傾向にしたがうように制御されうる。
【0012】
また、第4発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境下で一定のスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の複数回にわたる測定結果に基づいて前記モデルを定義することを特徴とする。
【0013】
第4発明の制御システムによれば、複数の異なるスタイルのそれぞれについてモデルが定義されうる。これにより、一のモデルに基づいて運動計画がたてられることにより、第2運動体が当該一のモデルに応じたスタイルにしたがって運動するようにその運動態様が制御されうる。
【0014】
さらに、第5発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果の追加に伴って前記モデルを逐次定義し、前記第2処理部が該第1処理部により逐次定義される該モデルに基づいて前記第2運動体の前記運動態様を逐次制御することを特徴とする。
【0015】
第5発明の制御システムによれば、第1運動体の運動態様の最新の学習結果としてのモデルに基づき、第2運動体の運動態様を制御することができる。
【0016】
また、第6発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第2処理部が、前記第2運動体が接する前記外的特徴因子を逐次測定し、当該逐次測定される該外的特徴因子に基づいて前記第2運動体の運動態様を逐次制御することを特徴とする。
【0017】
第6発明の運動制御システムによれば、第2運動体が接する環境、ひいては当該環境を表す外的特徴因子が変動するような場合でも、当該外的特徴因子の最新の測定結果に鑑みて、第2運動体の運動態様が適当に制御されうる。
【0018】
さらに、第7発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記第1運動体の特定部位の一の動作によって力を受けるときの物体の位置を前記外的特徴因子として測定し、該一の動作が終了したときの該特定部位の位置を前記内的特徴因子として測定することを特徴とする。
【0019】
第7発明の運動制御システムによれば、第1運動体が特定部位の一の動作によって物体に力を作用させるという運動態様の学習結果として、物体の任意の位置に基づき、当該特定部位の動作の終了位置が決定されるようなモデルが定義される。したがって、第2運動体の特定部位の一の動作によって力を受けるときの物体の予測位置(外的特徴因子)と、当該モデルとに基づき、少なくとも第2運動体の当該特定部位の一の動作の終了位置(内的特徴因子)が実現されるように第2運動体の当該一の動作が制御されうる。
【0020】
また、第8発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果の中から規則性を有する集合を規則的集合として抽出し、当該規則的集合に基づいて前記モデルを定義することを特徴とする。
【0021】
第8発明の運動制御システムによれば、外的特徴因子および内的特徴因子の測定結果のうち、規則性に関する要件を満たさない測定結果が除去された上で、当該要件を満たす測定結果のみに基づいてモデルが定義される。これにより、第1運動体の運動態様のうち規則的部分を基礎として、第2運動体の運動態様を制御する観点から適当なモデルが定義されうる。
【0022】
さらに、第9発明の運動制御システムは、第8発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記内的因子である内的付加因子を前記第1運動体の1回の運動ごとに前記外的特徴因子および前記内的特徴因子に対応付けて測定し、前記外的特徴因子および前記内的特徴因子のそれぞれの測定結果が、該内的付加因子により定義される空間において高密度で集まっている該内的付加因子の測定点に対応付けられていることを前記規則性として、前記規則的集合を抽出することを特徴とする。
【0023】
第9発明の運動制御システムによれば、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれの測定結果に対応付けられて一または複数の「内的付加因子」が測定される。さらに、当該内的付加因子により定義される空間において、高密度で集まっている測定点に対応する外的特徴因子および内的特徴因子の測定結果の集合が規則的集合として抽出される。これにより、内的付加因子の測定結果のまとまりの程度に鑑みて、第1運動体が一定のスタイルにしたがって運動したときの測定結果とはいえない、外的特徴因子および内的特徴因子の不規則的な測定結果が除去されうる。そして、当該規則的集合が用いられることにより、当該一定のスタイルにしたがった第1運動体の運動態様の学習結果として適当なモデルが定義されうる。なお、内的負荷因子の測定点の密度が高いとは、当該密度が閾値以上であることや、当該密度が複数の区域の中で所定純以内であること等を意味する。
【0024】
また、第10発明の運動制御システムは、第8発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境下で一定のスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを定義し、競合する複数の前記規則的集合が抽出された場合、当該複数の規則的集合のそれぞれに対応する新たなスタイルを定義した上で、該第1運動体が当該新たなスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを再び定義することを特徴とする。
【0025】
第10発明の運動制御システムによれば、一のスタイルにしたがった第1運動体の運動態様の学習結果として複数のモデルが定義されうるような場合、複数の新たなスタイルが定義される。さらに、当該複数の新たなスタイルのそれぞれにしたがった第1運動体の運動態様があらためて学習される。そして、第1運動体の運動態様の学習結果として一のスタイルに応じて定義された一のモデルに基づいて第2運動体の運動態様が制御されうる。これにより、第2運動体の運動態様が一のモデルに基づいて制御されているにもかかわらず、似たような環境に応じて第2運動体が異なるスタイルで運動するような事態が回避される。
【0026】
さらに、第11発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づき、定義域が異なる、共通の性質を有する複数の局所的モデルを定義し、隣接する該定義域における該局所的モデルを接続することによって前記モデルを定義することを特徴とする。
【0027】
第11発明の制御システムによれば、異なる定義域において複数の局所的モデルが定義され、当該複数の局所的モデルが統合されることで採集的なモデルが定義される。各局所的モデルは共通の性質を有しているため、当該性質を表現するための共通の規則にしたがって異なる局所的モデルが定義されうる。これにより、局所的モデルの定義を簡易化し、ひいてはモデルの定義を簡易化することができる。
【0028】
また、第12発明の運動制御システムは、第11発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が、前記共通の性質を有する前記局所的モデルとして線形モデルを定義することを特徴とする。
【0029】
第12発明の運動制御システムによれば、線形モデルを表現するための共通の規則にしたがって異なる局所的モデルが定義されうる。ここで「線形モデル」とは、定義域における任意の外的特徴因子x(ベクトルまたはスカラー)について値域における内的特徴因子yがcx(cは係数または係数対角行列)と表現される線形写像を意味する。これにより、局所的モデルの定義を簡易化し、ひいてはモデルの定義を簡易化することができる。
【0030】
さらに、第13発明の運動制御システムは、第11発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づき、前記モデルの局所的な性質を抽出するための統計的手法を用いて前記局所的モデルを定義することを特徴とする。
【0031】
第13発明の運動制御システムによれば、モデルの局所的な性質を抽出するための統計的手法が用いられることにより、異なる定義域のそれぞれにおいて固有の性質を有する局所的モデルが定義されうる。
【0032】
また、第14発明の運動制御システムは、第13発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記統計的手法としてLWPR(Locally Weighted Projection Regression)アルゴリズムを用いて前記局所的モデルを定義することを特徴とする。
【0033】
第14発明の運動制御システムによれば、LWPRアルゴリズムにしたがって異なる定義域のそれぞれにおいて固有の性質を有する局所的モデルが定義されうる。
【0034】
さらに、第15発明の運動制御システムは、第1発明の運動制御システムにおいて、前記第1処理部が前記第1運動体としての人間の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを定義し、前記第2処理部が該第1処理部により定義された外車増に基づき、前記第2運動体としてのヒューマノイドロボットの前記運動態様を制御することを特徴とする。
【0035】
第15発明の運動制御システムによれば、人間の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、ヒューマノイドロボットの運動態様が制御されうる。これにより、たとえばさまざまな環境に応じた人間の一方または両方の腕の動作がおおまかに再現されるようにロボットの一方または両方の腕部の動作が制御されうる。また、さまざまな環境に応じた人間の一方または両方の脚の動作がおおまかに再現されるようにロボットの一方または両方の脚部の動作が制御されうる。
【0036】
前記課題を解決するための第16発明の運動制御方法は、第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御する方法であって、第1発明の運動制御システムにおいて前記第1および第2処理部のそれぞれが実行する処理を実行することを特徴とする。
【0037】
第16発明の運動制御方法によれば、第1運動体の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、第2運動体の運動態様が制御されうる。
【0038】
前記課題を解決するための第17発明の運動制御プログラムは、第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御するシステムとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、第1発明の運動制御システムとして前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【0039】
第17発明の運動制御プログラムによれば、第1運動体の運動態様を規範としながらも当該運動態様に過剰に拘束されることなく、第2運動体の運動態様を制御しうるシステムとしてコンピュータを機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の運動制御システムの実施形態について図面を用いて説明する。
【0041】
まず、本発明の一実施形態としての運動制御システムおよびその制御対象であるロボットの構成について説明する。
【0042】
図1に示されているロボット(第2運動体)2は、人間(第1運動体)1の運動を再現する機能を有するヒューマノイドロボットである。ロボット2は基体(または上体)20と、基体20の上方に配置された頭部21と、基体20の上部に上部両側から延設された左右の腕部22と、左右の腕部22のそれぞれの先端に設けられている手部23と、基体20の下部から下方に延設された左右の脚部24と、左右の脚部24のそれぞれの先端に設けられている足部25とを備えている。また、ロボット2は腕部22や脚部24等の各関節角度に応じた信号を出力するロータリーエンコーダ、手部23や足部25等に作用する力に応じた信号を出力する6軸力センサ等、ロボット2の運動態様を表す種々の内的因子を測定するための種々のセンサ204(図2参照)を備えている。さらに、ロボット2は腕部22、手部23および脚部24等の駆動源として各関節部分等に設けられたアクチュエータ206(図2参照)を備えている。
【0043】
基体20はヨー軸回りに相対的に回動しうるように上下に連結された上部および下部により構成されている。頭部21は基体20に対してヨー軸回りに回動する等、動くことができる。
【0044】
腕部22は第1腕リンク222と、第2腕リンク224とを備えている。基体20と第1腕リンク222とは肩関節221を介して連結され、第1腕リンク222と第2腕リンク224とは肘関節223を介して連結され、第2腕リンク224と手部23とは手根関節225を介して連結されている。肩関節221はロール、ピッチおよびヨー軸回りの回動自由度を有し、肘関節223はピッチ軸回りの回動自由度を有し、手根関節225はロール、ピッチ、ヨー軸回りの回動自由度を有している。手部23は、手掌部から延設され、人間の手の親指、人差指、中指、薬指および小指のそれぞれに相当する5つの指機構を備えている。
【0045】
脚部24は第1脚リンク242と、第2脚リンク244とを備えている。基体20と第1脚リンク242とは股関節241を介して連結され、第1脚リンク242と第2脚リンク244とは膝関節243を介して連結され、第2脚リンク244と足部25とは足関節245を介して連結されている。股関節241はロール、ピッチおよびロール軸回りの回動自由度を有し、膝関節243はピッチ軸回りの回動自由度を有し、足関節245はロールおよびピッチ軸回りの回動自由度を有している。
【0046】
ロボット(第2運動体)2は図2に示されているような運動制御システム200を備えている。運動制御システム200はCPU、ROM、RAM、I/O等によって構成され、人間(第1運動体)1の運動態様の学習結果としてモデルを定義し、ロボット2の運動態様を当該モデルにしたがって制御する。なお、制御システムはロボット2の内部ネットワークを通じて接続された主制御ユニットおよび一または複数の副制御ユニットより構成される分散制御システムであってもよい。
【0047】
ロボット2に搭載されているコンピュータを運動制御システム200として機能させるための「運動制御プログラム」はROM等の記憶装置に予め格納されていてもよいが、ロボット2から要求があった等の任意のタイミングで当該プログラムがサーバからネットワークや人工衛星を介して当該コンピュータに配信(ダウンロード)または放送され、当該プログラム用のメモリに格納されてもよい。
【0048】
運動制御システム200は第1処理部210と、第2処理部220とを備えている。第1処理部210と第2処理部220とは同じCPUまたはプロセッサにより構成されていてもよく、異なるCPUまたはプロセッサにより構成されていてもよい。
【0049】
第1処理部210は人間1の周囲に配置されたカメラ(トラッカー)202を通じて得られる当該人間の画像に基づき、当該人間が運動するときの環境を表す「外的因子」および運動態様を表す「内的因子」のそれぞれの特徴的部分を「外的特徴因子」および「内的特徴因子」として測定する。また、第1処理部210は当該測定結果により表される外的特徴因子および内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、外的特徴因子および内的特徴因子の連続的な相関関係を表す「モデル」を定義する。
【0050】
第2処理部220はロボット2が接する環境を表す外的因子のうち「外的特徴因子」を測定する。また、第2処理部220は外的特徴因子の測定結果と第1処理部210により定義されたモデルとに基づいて「内的特徴因子」を算定する。さらに、第2処理部220は少なくとも算定された内的特徴因子が実現されるように、センサ204の出力に基づいてアクチュエータ206の動作をフィードバック制御することによりロボット2の運動態様を制御する。
【0051】
続いて、前記構成の運動制御システムの機能について説明する。
【0052】
まず、第1処理部210が「第1処理」を実行する(図3/S010)。
【0053】
これにより、たとえば図4(a)〜(c)に示されているように、人間1が右手に持ったラケットRを用いて前方から飛んでくる玉Qをフォアハンドで打ち返すという一定のスタイルの運動態様の学習結果としてモデルが定義される。詳細には、人間1がラケットRを右手で持ち、右肘を曲げてラケットRを肩と同じくらいの高さでその前面を前方に向けて構えた待機状態から、ラケットRを動かすことにより、その前面を前方から飛んできた玉Qに当てる動作の学習結果としてモデルが定義される。
【0054】
具体的には、外的因子および内的因子のそれぞれの特徴的部分が「外的特徴因子」および「内的特徴因子」として人間1が前記スタイルにしたがって運動を繰り返すたびに測定される(図3/S012)。
【0055】
「外的因子」は人間1が接する環境を表す因子であり、前記例では任意時刻における玉Qの位置およびその時間微分(速度、加速度など)が外的因子(空間的かつ時間的に区分される環境の構成要素)に該当する。「内的因子」は人間1の運動態様を表す因子であり、前記例では任意時刻における特定部位(手首、肘、肩など)の位置および各関節角度ならびにこれらの時間微分(特定部位の速度および加速度、ならびに関節角速度および関節角加速度など)、特定部位の異なる時刻における相対ベクトルの長さや方位、異なる複数の特定部位の相対位置、相対速度等が内的因子(空間的かつ時間的に区分される運動態様の構成要素)に該当する。
【0056】
たとえば光学式モーションキャプチャー(モーキャプ)システムにより任意時刻における特定部位の位置が測定される。光学式モーションキャプチャーシステムによれば、人間1の周囲に配置された一または複数のカメラ(トラッカー)202による、この人間1の身体に付されたマーカーの検出結果に基づいて人間1の特定部位の位置が測定される。任意時刻における玉位置は、たとえばカメラ202を通じて得られる、玉Qまたはこれに付されたマーカーの検出結果に基づいて測定される。なお、特定部位および玉Qのそれぞれの位置を測定するカメラ(トラッカー)202は、同一種類のカメラであってもよく、異なる種類のカメラ(可視光カメラ、赤外光カメラ等)であってもよい。
【0057】
その他、機械式、磁気式または慣性式モーションキャプチャーシステムにより任意時刻における手首位置が測定されてもよい。機械式モーションキャプチャーシステムによれば、人間1に装着されたサポータまたはスーツに取り付けられた複数のポテンショメータからの当該人間1の各関節角度を表す出力信号に基づいて手首位置が測定される。磁気式モーションキャプチャーシステムによれば、人間1に装着されたサポータまたはスーツに取り付けられた複数の磁気センサからの出力信号に基づいて手首位置が測定される。慣性式モーションキャプチャーシステムによれば、人間1に装着されたサポータまたはスーツに取り付けられた複数の慣性モーメントセンサからの当該人間1の腕等の慣性モーメントを表す出力信号に基づいて手首位置が測定される。
【0058】
図5には人間1によって前記動作が繰り返されたときにx−y平面において特定部位としての手首の位置および玉位置が変化する様子が示されている。手首位置はラケットRが待機位置にあるときの初期手首位置p0(i)(iは動作回数を示す指数)から(図4(a)参照)、動いているラケットRに玉Qが当たったときの1次手首位置p1(i)を経て(図4(b)参照)、ラケットRの前方への動きが停止したときの2次手首位置p2(i)に変化している(図4(c)参照)。また、玉位置は初期玉位置q0(i)から(図4(a)参照)、動いているラケットRに玉Qが当たったときの1次玉位置q1(i)を経て(図4(b)参照)、ラケットRの前方への動きが止まったときの2次玉位置q2(i)に変化する様子が示されている(図4(c)参照)。なお、手首位置および玉位置はz方向についても変化している。
【0059】
本実施形態では、1次玉位置(=動いているラケットRに玉Qが当たったときの玉位置)q1(i)が「外的特徴因子」として測定される。ラケットRに玉Qが当たったことは、たとえばカメラ202を通じて得られる画像解析によって測定される玉Qの速度変化(特にy方向の速度変化(図5参照))が閾値を超えたことによって把握される。なお、マイク(図示略)を通じて得られる、ラケットRに玉Qが当たった音に基づいて、ラケットRに玉Qが当たったことが把握されてもよい。
【0060】
さらに、2次手首位置(=ラケットRの前方への動きが停止したときの手首位置)p2(i)が「内的特徴因子」として特定される(図4(c)参照)。ラケットRの前方への動きが停止したことは、たとえばモーキャプシステムにより測定される手首の速度変化(特にy方向の速度変化(図5参照))が閾値を超えたことによって把握される。
【0061】
任意の外的因子のうちどれが外的特徴因子に該当し、任意の内的因子のうちどれが内的特徴因子に該当するかは実験や研究等によって予め設定されていてもよい。そのほか、複数の外的因子および複数の内的因子が測定され、当該測定結果との乖離度が閾値以下であるという要件を満たす連続的な相関関係が定義されうる外的因子および内的因子のそれぞれが外的特徴因子および内的特徴因子として特定されてもよい。複数時点における玉Pの位置、速度、加速度等が複数の外的因子に該当する。複数時点における手首、肘、肩等の位置、速度および加速度、ならびに各関節角度、角速度および角加速度等が複数の内的因子に該当する。
【0062】
また、外的特徴因子および内的特徴因子の測定結果のうち、規則性に関する要件を満たさない測定結果が除去されることにより規則的集合が抽出される(図3/S014)。具体的には、初期手首位置p0(i)が「内的付加因子」として測定される。また、「内的付加因子により定義される空間(3次元空間)における複数の単位立方体のうち、当該測定点が高密度で集まっている単位立方体に対応している」という規則性に関する要件を満たさない、回数jにおける外的特徴因子q1(j)および内的特徴因子p2(j)の測定結果が除去される。ここで、単位立方体における測定点が高密度であるとは、当該密度が最高であることや、閾値以上であることを意味している。そして、当該測定結果が除去された残りの測定結果の集合が「規則的集合」として抽出される。
【0063】
なお、初期手首位置p0(i)に代えてまたは加えて、1次手首位置p1(i)もしくは2次手首位置p2(i)等、種々のタイミングにおける手首位置、または、手首速度および加速度等の手首位置の時間微分を内的付加因子として当該要件が定義されてもよい。たとえば、図9に示されているように人間1が、その手首を初期手首位置p0(時刻t=t0)からテイクバック位置p0+(時刻t=t0+(>t0))に動かし、その上で1次手首位置p1(時刻t=t1)および2次手首位置p2(時刻t=t2)を経て、戻り位置p2+(時刻t=t2+(>t2))に動かした場合について考える。時刻t0+から時刻t2までの間の手首位置の3次元空間における軌跡(p0+〜p1〜p2)が、図10(a)(b)に示されているようなテイクバック位置p0+を一方の端面上に包含する略円柱状の領域に含まれていることが規則性に関する要件として定義されていてもよい。図10(a)に示されているように当該軌跡が当該領域に全て含まれているときに測定された外的特徴因子(1次玉位置q1)および内的特徴因子(2次手首位置p2)は、当該要件を満たしていると判定され、規則的集合に包含される。一方、図10(b)に示されているように当該軌跡の一部が当該領域から外れているときに測定された外的特徴因子(1次玉位置q1)および内的特徴因子(2次手首位置p2)は、当該要件を満たしていないと判定され、規則的集合から除外される。
【0064】
また、人間1の手首に代えてまたは加えて、肘、肩等、手首とは異なる位置を内的因子として当該要件が定義されてもよい。
【0065】
さらに、人間1の身体部分の位置に代えてまたは加えて、当該身体部分の速度および加速度等の時間微分を内的付加因子として当該要件が設定されてもよい。たとえば、図9に示されているように人間1がその手首を動かした場合、図11に示されているように時刻t0+および時刻t2のそれぞれにおける手首の速さの大きさ|v|が閾値vs以下であること(手首が静止していること)が当該要件として定義されていてもよい。
【0066】
また、内的付加因子に代えてまたは加えて、初期玉位置q0(i)、1次玉位置q1(i)および2次玉位置q2(i)等、種々のタイミングにおける玉Pの位置、速度および加速度等の外的因子(外的付加因子)によって当該要件が定義されてもよい。
【0067】
また、内的付加因子および外的付加因子のうち一方または両方の測定点の空間密度ではなく、内的特徴因子および外的特徴因子のうち複数の因子の組み合わせの測定点間の距離等、空間における異なる因子の測定点間の配置関係によって規則性に関する要件が定義されてもよい。たとえば、初期玉位置p0(i)および1次手首位置q1(i)の相対ベクトルの長さまたは方位が所定範囲にあることが当該要件として設定されてもよい。
【0068】
さらに、外的特徴因子および内的特徴因子の測定結果を構成要素とする規則的集合に基づき、LWPR(Locally Weighted Projection Regression)アルゴリズム等の統計的手法にしたがって局所的モデルが定義され、かつ、その統合結果としてのモデルが定義される(図3/S016)。なお、LWPRアルゴリズムのほか、回帰モデル、ニューラルネットモデル等、他の統計的手法にしたがってモデルが定義されてもよい。当該モデルは外的特徴因子(スカラーまたはベクトル)qおよび内的特徴因子(スカラーまたはベクトル)pの連続的な相関関係を表す、次式(1)の写像fを表している。
【0069】
f(q)=p ‥(1)
具体的には、外的特徴因子q1(i)(x,yおよびz成分を有する3次元ベクトル(q1x,q1y,q1z)である。)および内的特徴因子p2(i)(x,yおよびz成分を有する3次元ベクトル(p2x,p2y,p2z)である。)の測定結果が当該因子により定義される6次元空間(6つの変数q1x,q1y,q1z,p2x,p2yおよびp2zにより定義される空間である。)においてプロットされる。各プロットは外的特徴因子q1(i)および内的特徴因子p2(i)の離散的な相関関係を表している。簡単のため各特徴因子のx成分の測定結果についてのみ考察すると、図5に示されているように人間1が打ち返し運動を繰り返した場合、図6(a)に示されているように各特徴因子のx成分(q1x,p2x)の測定結果がプロットされる。人間1がさらに同じスタイルにしたがって運動を繰り返すたびに特徴因子空間におけるプロット数が徐々に増えていく。そして、図6(b)に示されているように当該プロットにより表される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2のそれぞれのx成分の局所的な相関関係を近似的に表す曲線LM1〜LM3のそれぞれが「局所的モデル」として定義される。局所的モデルLM1〜LM3のそれぞれは線形モデルであってもよく、非線形モデルであってもよい。なお、各局所的モデルが共通の性質(たとえば線形性)を有していれば、当該性質を表現するための共通の規則にしたがって異なる局所的モデルが定義されうる。これにより、局所的モデルひいてはモデルの定義が簡易化される。
【0070】
さらに、複数の局所的モデルが重ね合わせられることによって外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係を表す「モデル」が定義される。たとえば、図6(b)に示されている局所的モデルLM1、LM2およびLM3は、任意の外的特徴因子q1のx成分と各局所的モデルの中心のx成分との距離に応じて重み付けられて重ね合わせられる。重み付けに際して、各局所的モデルの局所性を表すパラメータによって正規化された距離に応じた重みが各局所的モデルに付されてもよい。これにより、図6(c)に示されているような、任意の外的特徴因子q1のx成分に応じて内的特徴因子p2のx成分が一義的に決定されうるモデルMが定義される。前記のように簡単のために各特徴因子のx成分のみが考察された場合のモデルの定義方法について説明したが、実際には各特徴因子のx成分、y成分およびz成分のすべてが考察された上でモデルが定義される。すなわち、次式(2)で表されるように、任意の外的特徴因子q1=(q1x,q1y,q1z)に基づいて一義的に内的特徴因子p2=(p2x,p2y,p2z)が決定される、3×3の行列Aで表される局所的モデルが定義され、それらを重ね合わせることでモデルが定義される。
【0071】
p2=A・q1 ‥(2)
続いて、第2処理部220により「第2処理」が実行される(図2/S020)。
【0072】
これにより、第1処理部210によって定義されたモデルにしたがって、たとえば図7(a)〜(c)に示されているように、ロボット(第2運動体)2が右の手部23に持ったラケットRを用いて前方から飛んでくる玉Qをフォアハンドで打ち返すという一定のスタイルの運動態様が再現される。
【0073】
具体的には、ロボット2が接する「外的特徴因子」が測定される(図3/S022)。前記例ではロボット2が前方から飛んでくる玉QにラケットRを当てる位置が外的特徴因子として予測される。ロボット2が玉QにラケットRを当てる位置は、カメラ202の画像解析によって測定される玉Qの現在位置および速度に基づき、この玉Qが設定平面または曲面を通過する位置として予測される。たとえば図8(a)に示されているように玉Qの現在位置q0(k)(k=1,2)および速度v0(k)に基づき、この玉Qが一点鎖線で示されている面を通過する位置q1(k)が外的特徴因子として予測または測定される。なお、第2処理部220による測定対象となる外的特徴因子は予め定められていてもよく、第1処理部210によって複数の外的因子の中から選定されてもよい。また、この面はロボット2が右の手部23で把持しているラケットRを玉Qに当てることを考慮に入れて、ロボットの左右において非対称的に設定されていてもよい。
【0074】
また、測定された外的特徴因子q1(k)と、第1処理部210によって定義されたモデルとに基づき、内的特徴因子が算定される(図3/S024)。たとえば図6(c)に示されているようなモデルにしたがって、図8(a)に破線で示されている、ラケットRの前方への動きが停止したときのロボット2の手首位置p2(k)が内的特徴因子として算定される。なお、人間1およびロボット2のそれぞれのサイズまたは運動スケール(いわゆるリーチなど)の相違に鑑みて、両者の運動スケールを整合させるためのスケーリング因子が乗じられた内的特徴因子が算定されてもよい。
【0075】
そして、内的特徴因子p2(k)が再現されるようにロボットの運動態様が制御される(図3/S026)。たとえば、図8(b)に示されているように、ロボット2の手首位置が、少なくともラケットRの前方への動きが停止したときに算定された内的特徴因子p2(k)に合致するように制御される。これにより、ロボット2が図7(a)〜(c)に示されているように、右手部23に持ったラケットRを用いて前方から飛んでくる玉Qをフォアハンドで打ち返すという一定のスタイルの運動態様が再現される。
【0076】
前記機能を発揮する運動制御システム200によれば、人間(第1運動体)1の運動態様のうち特徴的部分さえ学習されれば、他の部分は学習されなくても十分であるという思想のもとにその運動態様が学習される(図3/S010、図4(a)〜(c)参照)。具体的には、人間1が接する環境を表す多数の外的因子のうち特徴的部分としての外的特徴因子(1次玉位置)q1と、人間1の運動態様を表す多数の内的因子のうち特徴的部分としての内的特徴因子(2次手首位置)p2とが測定される。また、当該測定結果により表される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の離散的な相関関係に基づき、外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係を表すモデルが定義される(図3/S012,S016、図6(a)〜(c)参照)。このため、外的特徴因子q1および内的特徴因子p2のそれぞれが定義域において網羅的に測定されなくても、任意の外的特徴因子q1に基づいて内的特徴因子p2が一義的に特定されるモデルが定義されうる。当該モデルは、さまざまな環境下における人間1の振舞または運動態様の傾向を、外的因子および内的因子のそれぞれの全部によって厳密にではなく、外的因子および内的因子のそれぞれの特徴的な一部によっておおまかに表すモデルであるといえる。
【0077】
そして、人間1の運動態様のうち特徴的部分さえ再現されれば、他の部分は再現されなくても十分であるという思想のもと、当該学習結果としてのモデルが用いられてロボット2の運動態様が制御される(図3/S020、図7(a)〜(c)参照)。具体的には、ロボット2が接する外的特徴因子q1が測定され、当該学習結果としてのモデルと当該測定結果とに基づいて内的特徴因子p2が算定される(図3/S022,S024参照)。当該モデルは外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係を表しているので、任意の外的特徴因子q1に基づいて内的特徴因子p2が一義的に算出されうる。さらに、少なくとも当該内的特徴因子p2が実現されるように運動計画がたてられ、かつ、当該運動計画にしたがってロボット2の運動態様が制御される(図3/S026、図8(a)(b)参照)。
【0078】
前述のような学習方法および当該学習結果の利用方法により、人間1の運動態様を規範としながらも当該運動態様に必要以上に拘束されることなく、ロボット2の運動態様が制御されうる。したがって、人間1が接する環境およびこれに応じた運動態様と、ロボット2が実際に接する環境とに鑑みて、当該ロボット2の運動を適切に制御することができる。
【0079】
さらに、内的付加因子p0の測定結果のまとまりの程度に鑑みて、人間1が一定のスタイルにしたがって運動したときの測定結果とはいえない(規則性に関する要件を満たさない)測定結果が除去されて規則的集合が抽出される(図3/S014参照)。これにより、たとえば人間1がラケットRを構えている位置または初期手首位置(内的付加因子)p0が他の場合よりも著しく異なるような状態における測定結果は、モデル定義の基礎から除外される。そして、当該規則的集合が用いられることにより、当該一定のスタイルにしたがった人間1の運動態様の学習結果として適当なモデルが定義されうる。
【0080】
なお、前記実施形態では「第1運動体」としての人間1の運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいて「第2運動体」としてのロボット2の運動態様が制御された。そのほか「第1運動体」としての馬、犬等、人間とは異なる動物の運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいて「第2運動体」としての当該動物を模した動物型ロボットの運動態様が制御されてもよい。また「第1運動体」としてのロボットの運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいて「第2運動体」としての他の同型ロボットの運動態様が制御されてもよい。
【0081】
さらに、前記実施形態では人間1がその片手(特定部位)で持ったラケットRで前方から飛んでくる玉(物体)Qを(フォアハンドで)打ち返すという運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づき、ロボット2が同様にその片方の手部23で把持したラケットRで前方から飛んでくる玉Qを打ち返すという運動態様が制御された(図4(a)〜(c)、図7(a)〜(c)参照)。そのほか、人間がその片脚でボールを蹴る、両手で持ったゴルフクラブでボールを打つ、片手で持ったはさみで紙を切る、ものに塗料や接着剤を塗布する、物を組み立てる等、さまざまな運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が制御されてもよい。
【0082】
また、第1処理部210が人間1の外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の測定結果の追加に伴ってモデルを逐次定義し、第2処理部220が当該逐次定義されるモデルに基づいてロボット2の運動態様を制御してもよい。これにより、人間1の運動態様の最新の学習結果としてのモデルに基づき、ロボット2の運動態様を制御することができる。
【0083】
さらに、第2処理部220が、ロボット2が接する外的特徴因子q1を逐次測定し、当該逐次測定される外的特徴因子q1に基づいてロボット2の運動態様を制御してもよい。これにより、ロボット2が接する環境、ひいては当該環境を表す外的特徴因子q1が変動するような場合でも、外的特徴因子q1の最新の測定結果(時々刻々変化する玉Qの予測位置)に鑑みて、ロボット2の運動態様が適当に制御されうる。
【0084】
また、第1処理部210が、測定結果により表される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係との乖離度を評価し、該乖離度が閾値以下であることを要件として、当該連続的な相関関係を表すモデルを定義してもよい。さらに、モデルの再定義に際して規則的集合が再定義されてもよい。
【0085】
当該構成の運動制御システム200によれば、外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係との乖離度が閾値以下であることを要件として当該連続的な相関関係を表すモデルが定義される。このため、さまざまな環境に応じた人間(第1運動体)1の運動態様の傾向を表す観点から適当なモデルが定義される。また、当該要件が満たされるように外的特徴因子q1および内的特徴因子p2が再度測定され、当該再度の測定結果に基づいてモデルが再度定義されうる。そして、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が人間1の運動態様の大まかな傾向にしたがうように制御されうる。言い換えると、人間1の運動態様のおおまかな傾向を表す観点から不適当なモデルが設定されることが防止され、かつ、当該不適当なモデルに基づいてロボット2の運動態様が制御されることが防止されうる。
【0086】
さらに、第1処理部210が、前記要件が満たされるように外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の測定結果のうち一部または全部を除いてモデルを定義してもよい。
【0087】
当該構成の運動制御システム200によれば、外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の連続的な相関関係との乖離度が閾値以下であるという要件を満たすように、当該離散的な相関関係を表す両特徴因子q1およびp2の測定結果が取捨選択される。そして、取捨選択された測定結果に基づいて両特徴因子q1およびp2の連続的な相関関係を表すモデルが定義され、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が制御される。このため、さまざまな環境に応じた人間1の運動態様の傾向を表す観点から適当なモデルが定義され、かつ、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が人間1の運動態様の大まかな傾向にしたがうように制御されうる。
【0088】
また、第1処理部210が、人間1が異なる環境下で一定のスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の測定結果に基づいてモデルを定義し、競合する複数の規則的集合が抽出された場合、当該複数の規則的集合のそれぞれに対応する新たなスタイルを定義してもよい。そして、第1処理部210が新たなスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの外的特徴因子q1および内的特徴因子p2の測定結果に基づいてモデルを再び定義してもよい。これにより、一のスタイルにしたがった人間1の運動態様の学習結果として複数のモデルが定義されうるような場合、複数の新たなスタイルが定義される。たとえば「ラケットRを玉Qにフォアハンドで当てる」というスタイルが「ラケットRで玉Qにトップスピンをかける」「ラケットRで玉Qにバックスピンをかける」という新たな2つのスタイルに定義される。さらに、新たなスタイルのそれぞれにしたがった人間1の運動態様の学習結果としてモデルが定義され、当該モデルに基づいてロボット2の運動態様が制御される。たとえばロボット2が右手部23で把持したラケットRで前方から飛んできた玉を、特定方向のスピンをかけながら打ち返すようにその動作が制御される。そして、ロボット2の運動態様が一のモデルに基づいて制御されているにもかかわらず、似たような環境に応じてロボット2が異なるスタイルで運動するような事態が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態としての運動制御システムの制御対象であるロボットの構成説明図
【図2】本発明の一実施形態としての運動制御システムの構成説明図
【図3】本発明の一実施形態としての運動制御方法の説明図
【図4】人間の運動態様の例示図
【図5】外的因子および内的因子の例示図
【図6】モデルの定義方法の説明図
【図7】ロボットの運動態様の例示図
【図8】ロボットの運動態様の制御方法の説明図
【図9】規則的集合の定義に関する説明図
【図10】規則的集合の定義に関する説明図
【図11】規則的集合の定義に関する説明図
【符号の説明】
【0090】
1‥人間(第1運動体)、2‥ロボット(第2運動体)、200‥運動制御システム、202‥カメラ(撮像装置)、210‥第1処理部、220‥第2処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御するシステムであって、
前記第1運動体を取り巻く環境を表す外的因子および前記第1運動体の運動態様を表す内的因子のそれぞれのうち一部を、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれとして、該第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに測定し、当該測定結果により表される該外的特徴因子および該内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、該外的特徴因子および該内的特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルを定義する第1処理部と、
前記第2運動体が接する該外的特徴因子を測定し、当該測定結果と該第1処理部により定義された該モデルとに基づいて該内的特徴因子を算定し、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように該第2運動体の運動態様を制御する第2処理部とを備えていることを特徴とする運動制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記測定結果により表される前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の連続的な相関関係との乖離度を評価し、該乖離度が閾値以下であることを要件として、当該連続的な相関関係を表す前記モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記要件が満たされるように前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果のうち一部または全部を除いて前記モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項4】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境に応じて一定のスタイルにしたがって運動を繰り返すたびに前記外的特徴因子および前記内的特徴因子を測定することを特徴とする制御システム。
【請求項5】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果の追加に伴って前記モデルを逐次定義し、
前記第2処理部が該第1処理部により逐次定義される該モデルに基づいて前記第2運動体の前記運動態様を逐次制御することを特徴とする制御システム。
【請求項6】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第2処理部が、前記第2運動体が接する前記外的特徴因子を逐次測定し、当該逐次測定される該外的特徴因子に基づいて前記第2運動体の運動態様を逐次制御することを特徴とする制御システム。
【請求項7】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体の特定部位の一の動作によって力を受けるときの物体の位置を前記外的特徴因子として測定し、該一の動作が終了したときの該特定部位の位置を前記内的特徴因子として測定することを特徴とする制御システム。
【請求項8】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果の中から規則性を有する集合を規則的集合として抽出し、当該規則的集合に基づいて前記モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項9】
請求項8記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに前記内的因子のうち一部である内的付加因子を測定し、前記外的特徴因子および前記内的特徴因子のそれぞれの測定結果が、該内的付加因子により定義される空間において高密度で集まっている該内的付加因子の測定点に対応付けられていることを前記規則性として、前記規則的集合を抽出することを特徴とする運動制御システム。
【請求項10】
請求項8記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境下で一定のスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを定義し、競合する複数の前記規則的集合が抽出された場合、当該複数の規則的集合のそれぞれに対応する新たなスタイルを定義した上で、該第1運動体が当該新たなスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを再び定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項11】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づき、定義域が異なる、共通の性質を有する複数の局所的モデルを定義し、隣接する該定義域における該局所的モデルを接続することによって前記モデルを定義することを特徴とする制御システム。
【請求項12】
請求項11記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記共通の性質を有する前記局所的モデルとして線形モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項13】
請求項11記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づき、前記モデルの局所的な性質を抽出するための統計的手法を用いて前記局所的モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項14】
請求項13記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記統計的手法としてLWPR(Locally Weighted Projection Regression)アルゴリズムを用いて前記局所的モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項15】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記第1運動体としての人間の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを定義し、
前記第2処理部が該第1処理部により定義された外車増に基づき、前記第2運動体としてのヒューマノイドロボットの前記運動態様を制御することを特徴とする運動制御システム。
【請求項16】
第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御する方法であって、
前記第1運動体を取り巻く環境を表す外的因子および前記第1運動体の運動態様を表す内的因子のそれぞれのうち一部を、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれとして、該第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに測定し、当該測定結果により表される該外的特徴因子および該内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、該外的特徴因子および該内的特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルを定義する第1処理と、
前記第2運動体が接する該外的特徴因子を測定し、当該測定結果と該第1処理において定義された該モデルとに基づいて該内的特徴因子を算定し、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように該第2運動体の運動態様を制御する第2処理とを実行することを特徴とする運動制御方法。
【請求項17】
第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御するシステムとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記第1運動体を取り巻く環境を表す外的因子および前記第1運動体の運動態様を表す内的因子のそれぞれのうち一部を、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれとして、該第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに測定し、当該測定結果により表される該外的特徴因子および該内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、該外的特徴因子および該内的特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルを定義する第1処理部と、
前記第2運動体が接する該外的特徴因子を測定し、当該測定結果と該第1処理部により定義された該モデルとに基づいて該内的特徴因子を算定し、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように該第2運動体の運動態様を制御する第2処理部とを備えている運動制御システムとして前記コンピュータを機能させることを特徴とする運動制御プログラム。
【請求項1】
第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御するシステムであって、
前記第1運動体を取り巻く環境を表す外的因子および前記第1運動体の運動態様を表す内的因子のそれぞれのうち一部を、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれとして、該第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに測定し、当該測定結果により表される該外的特徴因子および該内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、該外的特徴因子および該内的特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルを定義する第1処理部と、
前記第2運動体が接する該外的特徴因子を測定し、当該測定結果と該第1処理部により定義された該モデルとに基づいて該内的特徴因子を算定し、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように該第2運動体の運動態様を制御する第2処理部とを備えていることを特徴とする運動制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記測定結果により表される前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の離散的な相関関係と、当該離散的な相関関係に基づいて定義される前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の連続的な相関関係との乖離度を評価し、該乖離度が閾値以下であることを要件として、当該連続的な相関関係を表す前記モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記要件が満たされるように前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果のうち一部または全部を除いて前記モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項4】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境に応じて一定のスタイルにしたがって運動を繰り返すたびに前記外的特徴因子および前記内的特徴因子を測定することを特徴とする制御システム。
【請求項5】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果の追加に伴って前記モデルを逐次定義し、
前記第2処理部が該第1処理部により逐次定義される該モデルに基づいて前記第2運動体の前記運動態様を逐次制御することを特徴とする制御システム。
【請求項6】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第2処理部が、前記第2運動体が接する前記外的特徴因子を逐次測定し、当該逐次測定される該外的特徴因子に基づいて前記第2運動体の運動態様を逐次制御することを特徴とする制御システム。
【請求項7】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体の特定部位の一の動作によって力を受けるときの物体の位置を前記外的特徴因子として測定し、該一の動作が終了したときの該特定部位の位置を前記内的特徴因子として測定することを特徴とする制御システム。
【請求項8】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果の中から規則性を有する集合を規則的集合として抽出し、当該規則的集合に基づいて前記モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項9】
請求項8記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに前記内的因子のうち一部である内的付加因子を測定し、前記外的特徴因子および前記内的特徴因子のそれぞれの測定結果が、該内的付加因子により定義される空間において高密度で集まっている該内的付加因子の測定点に対応付けられていることを前記規則性として、前記規則的集合を抽出することを特徴とする運動制御システム。
【請求項10】
請求項8記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体が異なる環境下で一定のスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを定義し、競合する複数の前記規則的集合が抽出された場合、当該複数の規則的集合のそれぞれに対応する新たなスタイルを定義した上で、該第1運動体が当該新たなスタイルにしたがって複数回にわたり運動するときの前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを再び定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項11】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記第1運動体の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づき、定義域が異なる、共通の性質を有する複数の局所的モデルを定義し、隣接する該定義域における該局所的モデルを接続することによって前記モデルを定義することを特徴とする制御システム。
【請求項12】
請求項11記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が、前記共通の性質を有する前記局所的モデルとして線形モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項13】
請求項11記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づき、前記モデルの局所的な性質を抽出するための統計的手法を用いて前記局所的モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項14】
請求項13記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記統計的手法としてLWPR(Locally Weighted Projection Regression)アルゴリズムを用いて前記局所的モデルを定義することを特徴とする運動制御システム。
【請求項15】
請求項1記載の運動制御システムにおいて、
前記第1処理部が前記第1運動体としての人間の前記外的特徴因子および前記内的特徴因子の測定結果に基づいて前記モデルを定義し、
前記第2処理部が該第1処理部により定義された外車増に基づき、前記第2運動体としてのヒューマノイドロボットの前記運動態様を制御することを特徴とする運動制御システム。
【請求項16】
第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御する方法であって、
前記第1運動体を取り巻く環境を表す外的因子および前記第1運動体の運動態様を表す内的因子のそれぞれのうち一部を、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれとして、該第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに測定し、当該測定結果により表される該外的特徴因子および該内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、該外的特徴因子および該内的特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルを定義する第1処理と、
前記第2運動体が接する該外的特徴因子を測定し、当該測定結果と該第1処理において定義された該モデルとに基づいて該内的特徴因子を算定し、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように該第2運動体の運動態様を制御する第2処理とを実行することを特徴とする運動制御方法。
【請求項17】
第1運動体の運動態様を規範として第2運動体の運動態様を制御するシステムとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記第1運動体を取り巻く環境を表す外的因子および前記第1運動体の運動態様を表す内的因子のそれぞれのうち一部を、外的特徴因子および内的特徴因子のそれぞれとして、該第1運動体が異なる環境に応じて運動を繰り返すたびに測定し、当該測定結果により表される該外的特徴因子および該内的特徴因子の離散的な相関関係に基づき、該外的特徴因子および該内的特徴因子の連続的な相関関係を表すモデルを定義する第1処理部と、
前記第2運動体が接する該外的特徴因子を測定し、当該測定結果と該第1処理部により定義された該モデルとに基づいて該内的特徴因子を算定し、少なくとも当該算定内的特徴因子が実現されるように該第2運動体の運動態様を制御する第2処理部とを備えている運動制御システムとして前記コンピュータを機能させることを特徴とする運動制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−307640(P2008−307640A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157470(P2007−157470)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
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