説明

運搬用かご台車

【課題】単純な構成で収納時の折畳みまたは使用時の組立が容易であり、スプリングの劣化によるトラブルの恐れの無いかご台車を開発すること。
【解決手段】底板16の両側面の後方に支持ピン21と後部ガイドピン22を突出させ、前方角部に前部ガイドピン23を設けて、支持ピン21は支持ブラケット26のL字状長孔27に嵌合し、底板16が垂直時には後部ガイドピン22が円周の上部から下方に案内される支持ブラケット垂直溝28に入り垂直状態を保持し、使用時には底板16を持ち上げて後部ガイドピン22を支持ブラケット垂直溝28から外して底板16を水平に回動し、前部ガイドピン23がガイドブラケット水平溝32に案内されて、底板16を後方に押すことにより前部ガイドピン23と後部ガイドピン22が水平溝の後方に移動し底板16の上方への回動を防止する単純な構成で、作業性を向上し、トラブルの原因を減少させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管時に折り畳むことの出来る運搬用かご台車の底板の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4隅下面にキャスターを有し、後部枠と固定側枠、可動側枠および底板とを備え、折り畳みに際しては、底板を後部枠下端に支軸をおき後部枠に重なるように回動起立させ、ついで可動側枠を後部枠内側に回動して重なるように折り畳んで、全体を平面形状L字状にしてネスティング可能な状態に構成されており、また組立てられた状態においては床部が動かないように床部を側枠下部横桟にロックするように構成されている。
【0003】
この従来の運搬用かご台車では、使用時に底板を側枠にロックする構造が複雑であったり、ロック作業或いはロックを解除する作業に複数の作業が必要であるために、かご台車の組立て或いは折畳み作業に時間がかかるとともに、その作業性が悪いという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために特開平11−222135に記載されたかご台車が提案されている。図7のように、底板107を、垂直位置から、側枠下部横材101に載置されるように回動した際には、コイルスプリングc2により、底板107の枢支軸方向に付勢されているロック杆c1が、ロック杆受け部材c4の上部に形成された傾斜案内部c4”に当接し、傾斜案内部c4”に沿って、且つ、コイルスプリングc2の付勢力に抗して、ロック杆受け部材c4の溝c4’の開口側に移動し、溝c4’の開口に入った時点で、コイルスプリングc2の付勢力により、溝c4’に挿入されることになる。このようにして、側枠下部横材101に載置された底板107が、側枠下部横材101に対してロックされるように構成されている。
【0005】
また、開口部107dに手を入れて、底板107に形成されている開口部107dを横切るロック杆c1を、コイルスプリングc2の付勢力に抗して、底板107の前方に引いて、ロック杆受け部材c4の溝c4’に挿入されているロック杆c1を溝c4’から出すとともに、底板107を、枢支軸を中心に、上方に回転させることにより、側枠下部横材101にロックされた底板107のロックを解除することができる。
【0006】
底板107を、後部枠102に重なるように略垂直状態に回動させる際には、底板107の枢支軸方向に付勢されているロック杆c1が、後部枠102に取着されたロック杆受け部材c5に形成された傾斜案内部c5”に当接し、傾斜案内部c5”に沿って、且つ、コイルスプリングc2の付勢力に抗して、溝c5’の開口に向かい、溝c5’の開口に入った時点で、コイルスプリングc2の付勢力により、下方に移動し横溝c5’に挿入されることになる。このようにして、底板107が、後部枠102に重なるように、後部枠102に対してロックされるように構成されている。
【0007】
なお、後部枠102にロックされた底板107のロックを解除する作業は、上述した側枠下部横材101にロックされた底板107のロック解除と同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−222135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特開平11−222135の装置にあっては、底板にロック杆を配設しロック杆の横方向の規制をして、ロック杆をコイルスプリングにて一方向に引っ張る必要があった。スプリングの機能劣化という問題もあり、より単純な構成が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、後部枠と固定側枠、可動側枠及び底板を備え、後部枠の左右両端下部にキャスターを取り付け、固定側枠と可動側枠の前端部下部にキャスターを取り付けるとともに可動側枠が後部枠の内側に折畳み可能に軸支され、底板は水平状態から後部枠内側に垂直状態に回動が可能に構成されている運搬用かご台車において、底板の後端両側面に支持ピンを突出させて支持ピンのやや前方に後部ガイドピンを突出させ、底板の前方両サイド角部内側には前部ガイドピンを後部ガイドピンに平行に内在させて、後部枠下部横材の両端部近く底板側面の外側に後部枠に垂直に4半円形状の支持ブラケットを設け、支持ブラケットは底板支持ピンと嵌合する下方垂直に折れ曲がるL字状の長孔を有し、支持ブラケットの外周には後部ガイドピンが円周の上部から下方に案内される垂直溝と円周の前方から後方に案内される水平溝を有し、底板を回動して水平にしたときに前部ガイドピンが位置する両側枠下部横材の前方には前部ガイドピンが前方より後方に案内される前方開口の水平溝を有するガイドブラケットを備えて、底板を後部枠側に垂直状態に回動する際には後部ガイドピンが支持ブラケットの外周に沿って移動し垂直溝の入り口から下方に案内されると同時に、支持ピンがL字状長孔の垂直部分を下方に移動して底板を垂直状態に固定させ、底板を水平に回動するときには後部ガイドピンは垂直溝上方から支持ブラケットの外周に沿って水平溝の入口に案内され、支持ピンはL字状長孔の垂直部から水平部に案内されるとともに、前部ガイドピンが両側枠下部横材前方のガイドブラケットの水平溝の入り口に当たり、底板を後方に押すことにより前部ガイドピンと後部ガイドピンが水平溝の後方に移動して、支持ピンはそれにつれてL字状長孔の水平部後方に移動するように構成して底板の上方への回動を防止したことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、ガイドブラケットは水平溝開口部下部を入り口から後方に向けて下方に傾斜させて、底板を水平に倒した時または底板の上部に荷を乗せたときに荷の重量により前部ガイドピンが後方に動き底板が後方に移動するように構成したことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、底板前方両サイドの前部ガイドピンの上部に開口部を設け、ガイドブラケットとの嵌合状況を目視で確認できるよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、底板を垂直にした時には底板に付属の後部ガイドピンが支持ブラケットの垂直溝に入り込むと同時に支持ピンが支持ブラケットのL字状の長孔の垂直部を下降することにより、他の部品構成無しに垂直状態を維持できる。また、底板を水平にした時には底板に付属の前部ガイドピンがガイドブラケットの水平溝に入り込むと同時に後部ガイドピンも支持ブラケットの水平溝に入り込み、支持ピンは支持ブラケットのL字状の長孔の水平部を後進することにより水平状態を維持できる。このように、底板に付属した支持ピンと後部ガイドピンが支持ブラケットのL字状の長孔と溝に嵌合し前部ガイドピンがガイドブラケットの溝に嵌合するという単純な構成で底板の固定構造を成している。
【0014】
底板を水平状態から後部枠側に回動する際には水平状態の底板を手前に引き前部ガイドピンをガイドブラケットの水平溝から外し、底板を回動して後部ガイドピンを支持ブラケットの垂直溝に案内して差し込むだけで垂直状態を保持できる。
【0015】
またかご台車使用時には垂直状態の底板を持ち上げて後部ガイドピンを垂直溝から外し回動して水平にするだけで底板の前部ガイドピンがガイドブラケットの水平溝に案内され、底板を後方に押すことにより底板と両側枠がロックされる。スプリングも不要であり、ロック杆もなく単純な構成であるため収納時の折畳みまたは使用時の組立が容易であり、スプリングの劣化によるトラブルの恐れも無い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】使用時の底板位置の図(可動側枠を省略)
【図2】運搬用かご台車の外観図
【図3】底板の図
【図4】底板が垂直状態の図(可動側枠を省略)
【図5】底板を垂直状態で持ち上げた図(可動側枠を省略)
【図6】底板を水平に回動した図(可動側枠を省略)
【図7】特開平11−222135の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本考案の実施例として図を参照して説明する。図1、図2に示したように、運搬用かご台車1は後部枠11と固定側枠12および可動側枠13と、荷を受ける底板16と4隅のキャスター18を有しており、前面と上面が解放された四角形状に形成されて後部枠11及び両側枠12、13の内側の底板16上に荷が収納される。
【0018】
後部枠11は図1に示すように、断面L字状の後部枠下部横材14の上に丸パイプを逆U字状に屈曲形成した四角形状の外枠フレームと内部に交差した複数の縦部材および横部材とで構成されている。後部枠下部横材14の両端部には底板幅の距離をあけて垂直前方に向けて底板保持用の四半円形状で板状の支持ブラケット26が溶接固定されている。
【0019】
この支持ブラケット26は図1B部詳細に示すように中央に下方垂直に折れ曲るL字状長孔27を有し、四半円形状外周には上部に支持ブラケット垂直溝28と前部に支持ブラケット水平溝29を加工している。また、後部枠下部横材14の両端下部にキャスター取付板17が溶接組付けされて下側にそれぞれキャスター18が付けられている。
【0020】
固定側枠12は図1に示すように、断面L字状の側枠下部横材15の上に丸パイプを逆U字状に屈曲形成した四角形状の外枠フレームと内部に交差した複数の縦部材および横部材とで構成されている。図1C部詳細に示すように側枠下部横材15の前方に前部ガイドピン23が嵌め合う板状のガイドブラケット31を取付けており、ガイドブラケット31には前部ガイドピン23が開口前方から後方にスライドする前方開口のガイドブラケット水平溝32が加工されている。またガイドブラケット水平溝32の開口部下面は前方より後方に向かって下方に傾斜部33を設けている。
【0021】
固定側枠12は後部枠11の左側下部のキャスター取付板17に溶接接合して後部枠11と連結し、さらに固定側枠12の外枠フレームと後部枠11の外枠フレームとを複数の連結金具19で溶接固定している。側枠下部横材15の前方下部にキャスター取付け板17を組み付け下側にキャスター18を有している。
【0022】
可動側枠13も図2に示すように、断面L字状の側枠下部横材15の上に丸パイプを逆U字状に屈曲形成した四角形状の外枠フレームと内部に交差した複数の縦部材および横部材とで構成されている。図1C部詳細に示すように側枠下部横材15の前方には、前部ガイドピン23が嵌合し開口前方から後方にスライドする前方開口のガイドブラケット水平溝32を備えた板状のガイドブラケット31を取付けている。また前方下部にはキャスター取付板17とキャスター18を有している。可動側枠13後方の外枠フレーム下端が後部枠11の右側のキャスター取付板17に立てられた支持ピンに差込まれ、さらに可動側枠13の外枠フレームと後部枠11の外枠フレームとを回動可能な複数の連結金具19で繋いでいる。
【0023】
図3に示すような樹脂製または板金製の底板16は、後面両端に支持ピン21を取付けて支持ピン21は底板16両側面から突出させ、支持ピン21の前方には後部ガイドピン22を同一高さで突出させていて支持ピン21と後部ガイドピン22は後部枠下部横材14両サイドに取り付けられた支持ブラケット26に嵌合させている(図1)。図3に示すように底板16前方両サイド角部内側には前部ガイドピン23を設けており、前方ガイドピン23は両側枠下部横材前方のガイドブラケット31に嵌め合う。前部ガイドピン23上方には嵌合状況の目視確認用に底板16に開口部16aが設けてある。
【0024】
以下、上記の構成における作用を説明する。
底板16を起立垂直位置(図4)から水平位置に回動するときは、底板16を上部に引き上げると後部ガイドピン22が支持ブラケット垂直溝28から外れ、支持ピン21はL字状長孔27の垂直溝の上部に上がる(図5)。
【0025】
そのまま底板16を水平に回動すると後部ガイドピン22は支持ブラケット26の四半円外周に沿って支持ブラケット水平溝29に案内され、前部ガイドピン23が両側枠下部横材15に取付けられたガイドブラケット31のガイドブラケット水平溝32の開口部入り口に当たり(図6)、底板16を後方に押すことにより前部後部両ガイドピンが容易に水平溝後方にスライドして、支持ピン21は支持ブラケット26のL字状長孔27の水平部後方に案内され底板16が上部に持ち上がらないよう規制される(図1)。
【0026】
またガイドブラケット水平溝32の開口部下面は図1C部詳細のように前方より後方に向かって下方に傾斜部33を設けており、底板16を水平に倒したときまたは底板16を後方方向に押さずに荷積をしたときに、前部ガイドピン23が傾斜部33に当り底板16が後方に押しやられる。底板16の前部ガイドピン23上方には開口部16aがあり、前部ガイドピン23とガイドブラケット31の嵌合状況が目視で確認可能となっている。
【0027】
底板16を水平に倒した時には底板16の両サイド下面は側枠下部横材15に当っており、底板16の後部下面は後部枠下部横材14に当っていて底板16にかかる荷重は側枠下部横材15と後部枠下部横材14にかかるように前部後部両ガイドピン22,23,支持ピン21とガイドブラケット31、支持ブラケット26とは遊びが設けられている。
【0028】
底板16を水平状態から起立垂直状態に回動する際には、まず底板16を手前に引出して前部ガイドピン23をガイドブラケット水平溝32から外し同時に後部ガイドピン22が支持ブラケット水平溝29から外れ支持ピン21がL字状長孔27の垂直部まで案内され、次に底板16を回動起立させて垂直状態にすると後部ガイドピン22が支持ブラケット垂直溝28入り口から下方にスライドし、同時に支持ピン21が支持ブラケット26のL字状長孔27の垂直部下方に案内される。これにより底板16は垂直状態を保持される。
【0029】
底板16を垂直位置に起立させた状態で可動側枠13を内側に回動させて折畳むことで、かご台車全体が平面L型になりネスティングが可能な状態となる。
【符号の説明】
【0030】
1 かご台車
11 後部枠
12 固定側枠
13 可動側枠
14 後部枠下部横材
15 側枠下部横材
16 底板
16a 開口部
17 キャスター取付板
18 キャスター
19 連結金具
21 支持ピン
22 後部ガイドピン
23 前部ガイドピン
26 支持ブラケット
27 L字状長孔
28 支持ブラケット垂直溝
29 支持ブラケット水平溝
31 ガイドブラケット
32 ガイドブラケット水平溝
33 傾斜部
101 側枠下部横材
102 後部枠
107 底板
107d 開口部
c1 ロック杆
c2 コイルスプリング
c4 ロック杆受け部材
c4’ 溝
c4” 傾斜案内部
c5 ロック杆受け部材
c5’ 溝
c5” 傾斜案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部枠と固定側枠、可動側枠及び底板を備え、後部枠の左右両端下部にキャスターを取り付け、固定側枠と可動側枠の前端部下部にキャスターを取り付けるとともに可動側枠が後部枠の内側に折畳み可能に軸支され、底板は水平状態から後部枠内側に垂直状態に回動が可能に構成されている運搬用かご台車において、底板の後端両側面に支持ピンを突出させて支持ピンのやや前方に後部ガイドピンを突出させ、底板の前方両サイド角部内側には前部ガイドピンを後部ガイドピンに平行に内在させて、後部枠下部横材の両端部近く底板側面の外側に後部枠に垂直に4半円形状の支持ブラケットを設け、支持ブラケットは底板支持ピンと嵌合する下方垂直に折れ曲がるL字状の長孔を有し、支持ブラケットの外周には後部ガイドピンが円周の上部から下方に案内される垂直溝と円周の前方から後方に案内される水平溝を有し、底板を回動して水平にしたときに前部ガイドピンが位置する両側枠下部横材の前方には前部ガイドピンが前方より後方に案内される前方開口の水平溝を有するガイドブラケットを備えて、底板を後部枠側に垂直状態に回動する際には後部ガイドピンが支持ブラケットの外周に沿って移動し垂直溝の入り口から下方に案内されると同時に、支持ピンがL字状長孔の垂直部分を下方に移動して底板を垂直状態に固定させ、底板を水平に回動するときには後部ガイドピンは垂直溝上方から支持ブラケットの外周に沿って水平溝の入口に案内され、支持ピンはL字状長孔の垂直部から水平部に案内されるとともに、前部ガイドピンが両側枠下部横材前方のガイドブラケットの水平溝の入り口に当たり、底板を後方に押すことにより前部ガイドピンと後部ガイドピンが水平溝の後方に移動して、支持ピンはそれにつれてL字状長孔の水平部後方に移動するように構成して底板の上方への回動を防止した運搬用かご台車。
【請求項2】
ガイドブラケットは水平溝開口端下部を入り口から後方に向けて下方に傾斜させて、底板を水平に倒した時または底板の上部に荷を乗せたときに荷の重量により前部ガイドピンが後方に動き底板が後方に移動するように構成した請求項1に記載の運搬用かご台車。
【請求項3】
底板前方両サイドの前部ガイドピンの上部に開口部を設け、ガイドブラケットとの嵌合状況を目視で確認できるよう構成した請求項1〜2に記載の運搬用かご台車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−183932(P2011−183932A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51252(P2010−51252)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(308042159)東志産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】