説明

運転支援システム、ナビゲーション装置および車載オーディオ装置

【課題】オーディオ出力を確保しつつ案内音声の聞き取り易さを向上すること。
【解決手段】ナビゲーションユニット10は、GPS通信部11、経路設定部12、地図データ13および案内処理部14によって車両の予定経路の設定と、誘導のための案内音声の出力を実行する。音楽データ調整部30は、ナビゲーションユニット10が案内音声を出力する場合に、オーディオユニット20から出力される音情報を調整し、音声部分の抑制、特殊効果の抑制、座席間のバランスの補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両走行にかかる情報を音声によって出力する情報提供機能と、音情報を含むコンテンツの出力を行うオーディオ機能とを備えた運転支援システム、もしくはかかる運転支援システムを構成するナビゲーション装置や車載オーディオ装置に関し、特に音楽再生中における案内音声の聞き取り易さを向上した運転支援システム、ナビゲーション装置および車載オーディオ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の予定経路を登録し、音声によって経路誘導を行うナビゲーション装置が実現されている。このナビゲーション装置では、自車両が右左折する交差点を予定経路と地図情報、現在位置をもとに特定し、事前に運転者に通知することで設定した経路通りに走行させるものである。
【0003】
この時、運転者の通知には画面表示と音声出力とが併用されるが、車両の運転時にディスプレイを注視させることは好ましくないので、音声による通知が非常に重要である。
【0004】
一方、オーディオ装置、例えはラジオ放送やテレビ放送、ストリームコンテンツを受信したり、CD,DVD,HDなどの記録媒体に記録した音楽や映像などの情報を読み出して出力する装置を車両に搭載することも従来から行われている。
【0005】
したがって、車両においてはオーディオ装置からの音の出力と、ナビゲーション装置からの音(案内音声)の出力とがなされることになる。ここで、オーディオ装置からの出力音量が大きいと、乗員(特に運転者)が車両走行にとってより重要な案内音声を聞き逃す可能性があった。
【0006】
そこで従来では、例えば特許文献1に示されるように、オーディオからの音楽等を聴いている際に、ナビの音声出力を行なう場合には音楽の音量を小さくする、などの処理によって案内音声の聞き取り易さの向上を試みてきた。
【0007】
【特許文献1】特開平7−320195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、案内音声の聞き取り易さは、オーディオ装置からの出力音量に単純に依存するものではない。具体的には、オーディオ装置が音声(ボーカルなど)を含む音情報を出力している状態で案内音声を出力すると、乗員にはオーディオ装置からの音声と案内音声とが混ざって聞こえることとなり、オーディオ装置の出力音量が小さくとも案内音声の聞き取り易さが著しく低下する。
【0009】
すなわち、オーディオ装置からの出力(オーディオ出力)による案内音声の聞き取り易さの低下は、オーディオ出力に含まれる音声部分に拠るところが大きい。ところが、従来の技術においては、オーディオ出力の音量を小さくすることによって案内音声の聞き取り易さの向上を試みていた。
【0010】
そのため、案内音声の聞き取り易さを充分に確保するためにはその音量を非常に小さくする必要があり、オーディオ出力を楽しむことができなくなるという問題点があった。特に、案内音声は運転者にとって必要なものであるので、他の乗員にとってはオーディオ出力の低下が大きな違和感となって感じられていた。
【0011】
一方、オーディオ出力を確保しつつ案内音声を出力すると、案内音声の聞き取り易さの低下が免れないという問題点があった。
【0012】
そこで、案内音声の聞き取り易さを向上し、かつオーディオ出力を同時に確保可能なナビゲーションシステムの実現が、従来から非常に大きな課題であった。
【0013】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、案内音声の聞き取り易さを向上し、かつオーディオ出力を同時に確保可能な運転支援システム、ナビゲーション装置、およびオーディオ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明に係る運転支援システムは、車両走行にかかる情報を音声によって出力する情報提供機能と、音情報を含むコンテンツの出力を行うオーディオ機能とを備えた運転支援システムであって、前記情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、前記オーディオ機能が出力する音情報の内容を調整する音情報調整手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
この請求項1の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報の内容を調整する。
【0016】
また、請求項2の発明に係る運転支援システムは、請求項1の発明において、前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能が出力する音情報のうち、音声部分の音量を低減、もしくは消去することを特徴とする。
【0017】
この請求項2の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報のうち、音声部分の音量を低減、もしくは消去する。
【0018】
また、請求項3の発明に係る運転支援システムは、請求項2の発明において、前記音情報調整手段は、前記音情報のセンター出力を前記音声部分とみなすことを特徴とする。
【0019】
この請求項3の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報のうちセンター出力を音声部分とみなしてその音量を低減もしくは消去する。
【0020】
また、請求項4の発明に係る運転支援システムは、請求項3の発明において、前記音情報調整手段は、ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分を前記センター出力とみなすことを特徴とする。
【0021】
この請求項4の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分をセンター出力とみなしてその音量を低減もしくは消去する。
【0022】
また、請求項5の発明に係る運転支援システムは、請求項3または4の発明において、前記オーディオ機能は、ステレオ音源データに対してサラウンド処理を行って前記センター出力分を算出することを特徴とする。
【0023】
この請求項5の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、ステレオ音源データに対してサラウンド処理を行って前記センター出力分を算出し、センター出力を低減もしくは消去する。
【0024】
また、請求項6の発明に係る運転支援システムは、請求項5の発明において、前記音情報調整手段は、前記情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合であって、前記オーディオ機能が前記サラウンド処理を実行していない場合に、前記オーディオ機能にサラウンド処理を実行させ、該サラウンド処理によって得られたセンター出力を低減もしくは消去することを特徴とする。
【0025】
この請求項6の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合であって、オーディオ機能がサラウンド処理を実行していない場合に、自動的にサラウンド処理を実行させて得られたセンター出力を低減もしくは消去する。
【0026】
また、請求項7の発明に係る運転支援システムは、請求項4〜6のいずれか一つの発明において、前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能にサラウンド処理能力があるか否かを判定し、前記サラウンド処理能力がない場合に前記ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分を前記センター出力とみなして当該センター出力の低減もしくは消去を行うことを特徴とする。
【0027】
この請求項7の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能にサラウンド処理能力があるか否かを判定し、サラウンド処理能力がない場合にステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分をセンター出力とみなして当該センター出力の低減もしくは消去を行う。
【0028】
また、請求項8の発明に係る運転支援システムは、請求項4〜7のいずれか一つの発明において、前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能が前記サラウンド処理を実行中であるか否かを判定し、前記サラウンド処理を実行中である場合には当該サラウンド処理によって算出されたセンター出力分を低減もしくは消去し、前記サラウンド処理を実行中でない場合には、前記ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分を前記センター出力とみなして当該センター出力の低減もしくは消去を行うことを特徴とする。
【0029】
この請求項8の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能がサラウンド処理を実行中であるか否かを判定し、サラウンド処理を実行中である場合には当該サラウンド処理によって算出されたセンター出力分を低減もしくは消去し、サラウンド処理を実行中でない場合には、ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分をセンター出力とみなして当該センター出力の低減もしくは消去を行う。
【0030】
また、請求項9の発明に係る運転支援システムは、請求項3〜8のいずれか一つの発明において、前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能が前記センター出力に対応するセンター出力データを含む多チャンネル音源データを読み出した場合に、当該多チャンネル音源データに示された前記センター出力を低減もしくは消去することを特徴とする。
【0031】
この請求項9の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が読み出した多チャンネル音源データに示されたセンター出力を低減もしくは消去する。
【0032】
また、請求項10の発明に係る運転支援システムは、請求項3〜9のいずれか一つの発明において、前記オーディオ機能は、複数のスピーカへの足し込みによって前記センター出力を仮想的に実現し、前記音情報調整手段から前記センター出力の低減もしくは消去を指示された場合に、前記複数のスピーカへの足し込み量を低減もしくは消去することを特徴とする。
【0033】
この請求項10の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、複数のスピーカに対するセンター出力分の足し込み量を低減もしくは消去することで、仮想的なセンター出力を低減・消去する。
【0034】
また、請求項11の発明に係る運転支援システムは、請求項3〜9のいずれか一つの発明において、前記オーディオ機能は、前記センター出力をセンタースピーカから出力し、前記音情報調整手段から前記センター出力の低減もしくは消去を指示された場合に、前記センタースピーカからの出力音量を低減もしくは消去することを特徴とする。
【0035】
この請求項11の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、センタースピーカからの出力音量を低減もしくは消去する。
【0036】
また、請求項12の発明に係る運転支援システムは、請求項3〜11のいずれか一つの発明において、前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能が読み出した音源の種別に基づいて、前記センター出力の低減もしくは消去に用いる処理を自動選択することを特徴とする。
【0037】
この請求項12の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が読み出した音源データの種別を識別し、センター出力の低減もしくは消去に用いる処理を自動選択する。
【0038】
また、請求項13の発明に係る運転支援システムは、請求項1〜12のいずれか一つの発明において、前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能による特殊効果の付加を停止することを特徴とする。
【0039】
この請求項13の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能による特殊効果の付加を停止する。
【0040】
また、請求項14の発明に係る運転支援システムは、請求項13の発明において、前記音情報調整手段は、前記音情報に対する上方定位処理を停止することを特徴とする。
【0041】
この請求項14の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報に対する上方定位処理を停止する。
【0042】
また、請求項15の発明に係る運転支援システムは、請求項13または14の発明において、前記音情報調整手段は、前記音情報に対する低音調節処理を停止することを特徴とする。
【0043】
この請求項15の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報に対する低音調節処理を停止する。
【0044】
また、請求項16の発明に係る運転支援システムは、請求項13,14または15の発明において、前記音情報調整手段は、前記音情報に対する所定帯域の強調処理を停止することを特徴とする。
【0045】
この請求項16の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報に対する所定帯域の強調処理を停止する。
【0046】
また、請求項17の発明に係る運転支援システムは、請求項13〜15のいずれか一つの発明において、前記音情報調整手段は、前記音情報に対する残響付加処理を停止することを特徴とする。
【0047】
この請求項17の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ装置が出力する音情報に対する残響付加処理を停止する。
【0048】
また、請求項18の発明に係る運転支援システムは、請求項13〜17のいずれか一つの発明において、前記音情報調整手段は、前記特殊効果の付加の停止を、運転席および助手席の少なくとも一つの席に対する出力について実行することを特徴とする。
【0049】
この請求項18の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、運転席や助手席へのオーディオ出力に対する特殊効果の付加を停止する。
【0050】
また、請求項19の発明に係る運転支援システムは、請求項1〜18のいずれか一つの発明において、前記音情報調整手段は、少なくとも運転席に対して出力する音情報の内容を調整する場合に、他の座席に対して出力する音情報を補正することを特徴とする。
【0051】
この請求項19の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、少なくとも運転席に対して出力する音情報の内容を調整し、他の座席に対して出力する音情報を補正する。
【0052】
また、請求項20の発明に係るナビゲーション装置は、自車両の経路誘導を行うナビゲーション装置であって、音声による経路誘導を実行する案内音声出力手段と、前記案内音声出力手段が案内音声の出力を行なう場合に、オーディオ装置が出力する音情報に対する調整内容を決定し、当該調整内容を前記オーディオ装置に出力する音情報調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0053】
この請求項20の発明によればナビゲーション装置は、音声による経路案内を実行する場合に、オーディオ装置が出力する音情報に対する調整内容を決定し、オーディオ装置に対して出力する。
【0054】
また、請求項21の発明に係る車載オーディオ装置は、少なくとも音情報を含むコンテンツを出力する車載オーディオ装置であって、自車両の経路誘導を行うナビゲーション装置による案内音声の出力を検出する案内音声検出手段と、前記案内音声検出手段が案内音声の出力を検出した場合に、前記音情報の内容を調整する音情報調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0055】
この請求項21の発明によれば車載オーディオ装置は、ナビゲーション装置が案内音声を出力する場合に、オーディオ装置から出力する音情報の内容を調整する。
【発明の効果】
【0056】
請求項1の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報の内容を調整するので、案内音声の聞き取り易さを向上し、かつオーディオ出力を同時に確保可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0057】
また、請求項2の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報のうち、音声部分の音量を低減、もしくは消去するので、オーディオ出力から音声部分を選択的に低減・消去してオーディオ出力を確保しつつ案内音声の聞き取り易さを向上した運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0058】
また、請求項3の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報のうちセンター出力を音声部分とみなしてその音量を低減もしくは消去するので、音声部分を適切に消去・低減して案内音声の聞き取り易さを向上した運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0059】
また、請求項4の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分をセンター出力とみなしてその音量を低減もしくは消去するので、音声部分を適切に消去・低減して案内音声の聞き取り易さを向上した簡易な構成の運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0060】
また、請求項5の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、ステレオ音源データに対してサラウンド処理を行って前記センター出力分を算出し、センター出力を低減もしくは消去するので、音声部分を確実に消去・低減して案内音声の聞き取り易さを向上した運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0061】
また、請求項6の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合であって、オーディオ機能がサラウンド処理を実行していない場合に、自動的にサラウンド処理を実行させて得られたセンター出力を低減もしくは消去するので、サラウンド処理を効果的に利用して案内音声の聞き取り易さを向上した運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0062】
また、請求項7の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能にサラウンド処理能力があるか否かを判定し、サラウンド処理能力がない場合にステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分をセンター出力とみなして当該センター出力の低減もしくは消去を行うので、オーディオ機能に適合した処理によって案内音声の聞き取り易さを向上する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0063】
また、請求項8の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能がサラウンド処理を実行中であるか否かを判定し、サラウンド処理を実行中である場合には当該サラウンド処理によって算出されたセンター出力分を低減もしくは消去し、サラウンド処理を実行中でない場合には、ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分をセンター出力とみなして当該センター出力の低減もしくは消去を行うので、オーディオの動作状態に適合した処理によって案内音声の聞き取り易さを向上した運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0064】
また、請求項9の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が読み出した多チャンネル音源データに示されたセンター出力を低減もしくは消去するので、多チャンネル音源データの音声部分を適切に消去・低減して案内音声の聞き取り易さを向上した運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0065】
また、請求項10の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、複数のスピーカに対するセンター出力分の足し込み量を低減もしくは消去することで、仮想的なセンター出力を低減・消去するので、センタースピーカを配置しない場合であっても案内音声の聞き取り易さを向上する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0066】
また、請求項11の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、センタースピーカからの出力音量を低減もしくは消去するので、センタースピーカを配置した構成で確実に案内音声の聞き取り易さを向上可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0067】
また、請求項12の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が読み出した音源データの種別を識別し、センター出力の低減もしくは消去に用いる処理を自動選択するので、音源の種別に関わらず音声部分を適切に消去・低減して案内音声の聞き取り易さを向上する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0068】
また、請求項13の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能による特殊効果の付加を停止するので、特殊効果による案内音声の聞き取り易さの低下を防止可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0069】
また、請求項14の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報に対する上方定位処理を停止するので、上方定位処理による案内音声の聞き取り易さの低下を防止可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0070】
また、請求項15の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報に対する低音調節処理を停止するので、低音調節処理による案内音声の聞き取り易さの低下を防止可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0071】
また、請求項16の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ機能が出力する音情報に対する所定帯域の強調処理を停止するので、所定帯域の強調処理による案内音声の聞き取り易さの低下を防止可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0072】
また、請求項17の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、オーディオ装置が出力する音情報に対する残響付加処理を停止するので、残響効果による案内音声の聞き取り易さの低下を防止可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0073】
また、請求項18の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、運転席や助手席へのオーディオ出力に対する特殊効果の付加を停止するので、運転席での案内音声の聞き取り易さを向上しつつ、他の座席でのオーディオ出力品質の低下を防止可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0074】
また、請求項19の発明によれば運転支援システムは、情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、少なくとも運転席に対して出力する音情報の内容を調整し、他の座席に対して出力する音情報を補正するので、運転席での案内音声の聞き取り易さを向上し、かつ他の座席でのオーディオ出力品質を確保可能な運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0075】
また、請求項20の発明によればナビゲーション装置は、音声による経路案内を実行する場合に、オーディオ装置が出力する音情報に対する調整内容を決定し、オーディオ装置に対して出力するので、案内音声の聞き取り易さを向上し、かつオーディオ装置の出力品質を確保可能なナビゲーション装置を得ることができるという効果を奏する。
【0076】
また、請求項21の発明によれば車載オーディオ装置は、ナビゲーション装置が案内音声を出力する場合に、オーディオ装置から出力する音情報の内容を調整するので、ナビゲーション装置が出力する案内音声の聞き取り易さを向上し、かつオーディオ出力の品質を確保可能なナビゲーションシステムを得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る運転支援システム、ナビゲーション装置、およびオーディオ装置の好適な実施例である、ナビゲーションシステムについて詳細に説明する。
【実施例】
【0078】
図1は、本発明の実施例であるナビゲーションシステム1の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように、ナビゲーションシステム1は、ナビゲーションユニット10、オーディオユニット20、音楽データ調整部30、出力制御部40、ディスプレイD1、およびスピーカSP1〜SP4を有する。
【0079】
ナビゲーションユニット2は、自車両の予定経路の設定と、経路誘導を実行するユニットであり、その内部にGPS(Global Positioning System)通信部11、経路設定部12、地図データ13、および案内処理部14を有する。ここで、GPS通信部11、経路設定部12、および案内処理部14は、マイコンなどによって構成しても良いし、電子回路によって構成しても良い。また、本構成は各機能によって区分したものであり、物理的な構成については全体もしくは一部を統合したものとしてもよい。
【0080】
GPS通信部11は、GPS人工衛星からの情報を受信して時刻情報の取得、自車両の位置情報の特定を行う。また、GPS通信部11は、特定した自車両の位置を経路設定部12および案内処理部14に出力する。
【0081】
経路設定部12は、運転者などからのユーザ入力や、GPS通信部11から取得した現在位置などに基づいて、自車両の予定経路を設定・記憶する処理部である。また、経路設定部12は、設定した経路を案内処理部14に出力する。
【0082】
地図データ13は、ハードディスクドライブや、CD、DVDなど、任意の記録媒体に格納された地図情報のデータであり、経路設定部12および案内処理部14に使用される。なお、この地図データ13を記録する記録媒体は、オーディオユニット20や他の車載機器と共用してもよい。
【0083】
案内処理部14は、GPS通信部11、経路設定部12、地図データ13の出力をもとに、経路誘導を実行する処理部であり、その内部に案内表示作成部14aおよび案内音声作成部14bを備えている。
【0084】
具体的には、案内処理部14は、予定経路と自車両の位置とをもとに、乗員(特に運転者)に対して案内を行うべき場所(例えば右左折する交差点など)を検出し、案内を行うべき場所が近づいた場合に、案内表示作成部14aおよび案内音声作成部14bを用いて案内処理を実行する。
【0085】
案内表示作成部14aは、表示によって運転者に通知する内容、例えば右左折する交差点近傍の地図や右左折の方向などを示す表示データを作成して出力制御部40に出力する。また、案内音声作成部14bは、音声によって運転者に通知する内容、例えば右左折する交差点までの距離や右左折の方向などを示す音声データを作成し、出力制御部40および音楽データ調整部30に出力する。
【0086】
オーディオユニット20は、音楽や映像などの各種コンテンツを乗員に提供するユニットであり、その内部にCDドライブ21、DVDドライブ22、ラジオチューナ23、テレビチューナ24、主制御部25を有する。
【0087】
CDドライブ21およびDVDドライブ22は、それぞれCDメディアやDVDメディアから音楽情報や映像情報を読み出して主制御部25に出力する。また、ラジオチューナ23およびテレビチューナ24は、それぞれラジオ放送やテレビ放送を受信して主制御部25に出力する。
【0088】
また、この他、ハードディスクからコンテンツを読み出したり、インターネットなどのネットワークを介してストリームコンテンツ等のコンテンツを受信する構成を持たせてもよい。
【0089】
主制御部25は、CDドライブ21、DVDドライブ22、ラジオチューナ23、テレビチューナ24などが読み出した、もしくは受信したコンテンツに対して各種処理を施して、出力制御部40に供給する処理を行う。具体的には主制御部25は、その内部にステレオ音源処理部25a、5.1ch音源処理部25b、特殊効果付加部25c、表示制御部25dを有する。
【0090】
ステレオ音源処理部25aは、コンテンツの音情報がステレオ音源である場合に、その音情報に対してボーカルオフ処理やサラウンド処理を施す処理部である。このボーカルオフ処理は、音楽データから音声部分(ボーカルなど)を消去する、もしくは音声部分の音量を小さくする処理である。
【0091】
ステレオ音源データは、左右二つのスピーカから出力することを前提として作成されており、右スピーカから出力することを想定した右出力音のデータと、左スピーカから出力することを想定した左出力音のデータとを有する。そして、左右の出力音に差を持たせることで、聴取者に方向感や距離感を感じさせることができる。
【0092】
ここで、歌詞などを含む音声部分と演奏部分とを有する音楽データでは、音声部分を右出力音と左出力音とに均等に配分することで、音声部分が中央から聞こえるようにしている。
【0093】
そこで、ボーカルオフ処理では、左右の出力音のデータを比較し、共通して含まれる部分を音声部分であるとみなして抑制、もしくは消去する処理を実行する。このようなボーカルオフ処理は、従来、ユーザに演奏部分のみを聞かせ、ユーザ自身の歌唱に供するカラオケ機能として利用されていたものである。
【0094】
サラウンド処理は、ステレオ音源データから仮想的なセンター出力など、所望の方向の仮想的な出力を算出し、その方向から音が聞こえるように各スピーカの出力音を調節する処理である。
【0095】
5.1ch音源処理部25bは、コンテンツの音情報が5.1ch音源である場合に、その音情報を再生する処理を行う処理部である。5.1ch音源データは、聴取者の正面、右前方、左前方、右後方、左後方、低音出力用の6つのスピーカから出力することを前提として作成されており、各方向に対する6つのデータをそれぞれ有する。
【0096】
ここで、各方向に専用のスピーカを設けることができない場合、例えば正面に設けるセンタースピーカがない場合には、センタースピーカから出力するべきセンター出力を他のスピーカ、右前方の右フロントスピーカや左前方の左フロントスピーカに割り当て、センター成分として足し込むことによって仮想的なセンター出力を実現する。
【0097】
なお、読み出した音情報がステレオ音源データであるか5.1ch音源データであるかは、主制御部20が自動識別し、ステレオ音源処理部25aと5.1ch音源処理部25bのいずれを使用するかを決定すればよい。
【0098】
特殊効果付加部25cは、出力音に各種特殊効果を付加し、音質の向上(臨場感の向上)を実現する処理部である。具体的には、特殊効果付加部25cは、上方定位処理、低音調節処理、所定帯域の強調処理、残響付加処理などを実行する。
【0099】
ここで、上方定位処理は、出力音がスピーカ位置に比して上方から聞こえる効果を付加する処理であり、低音調節処理は、出力音の低音域に対して補正や合成を行って強調する処理である。また、所定帯域の強調処理は、低音/高音を増強する、いわゆるラウドネス処理である。さらに、残響付加処理は、音響的な処理によって残響音を演出する処理である。
【0100】
表示制御部25dは、コンテンツが映像を含む場合にはその映像を、コンテンツが映像を含まない音楽情報である場合には曲に関する情報などを表示データとして作成し、出力制御部40に出力する。
【0101】
出力制御部40は、ナビゲーションユニット10およびオーディオユニット20の出力を必要に応じて合成してディスプレイD1、スピーカSP1〜SP4からの出力内容を決定し、出力処理を実行する制御を行う。
【0102】
音楽データ調整部30は、ナビゲーションユニット10が案内音声を出力する場合に、オーディオユニット20が出力する音情報の内容を調整する処理を実行することで、案内音声の聞き取り易さを向上する。
【0103】
具体的には、音楽データ調整部30は、その内部に音声抑制処理部31、特殊効果抑制部32およびバランス調整部33を有する。
【0104】
音声抑制処理部31は、オーディオユニット20が出力する音情報のうち、音声部分を消去、もしくは抑制する処理を実行する。すなわち、オーディオユニット20が音楽情報を出力している状態で案内音声を出力すると、乗員にはオーディオ装置からの音声部分(ボーカル部分)と案内音声とが混ざって聞こえるため、案内音声を正確に聞き取ることが困難になる。そこで、オーディオユニット20の出力から音声部分のみを消去・抑制することで、音楽情報を提供しつつ案内音声の聞き取り易さを向上することができる。
【0105】
具体的には、音声抑制処理部31は、オーディオユニット20がステレオ音源データを読み出している場合、ステレオ音源処理部25aによるボーカルオフ処理や、ステレオ処理によって音声部分の消去・抑制を実行する。
【0106】
一般に、音声部分を含む音情報をステレオ処理する場合、音声部分はセンター出力に割り当てられる。そこで、ステレオ処理によって音声部分の消去・抑制を実行するには、算出したセンター出力を音声部分であるとみなし、このセンター出力の音量を低下させればよい。
【0107】
同様に、5.1ch音源データであっても、一般に音声部分はセンター出力に割り当てられる。そこで、音声抑制処理部31は、オーディオユニット20が5.1ch音源データを読み出している場合、センター出力の音量を低下させることで、案内音声の聴き取り易さを向上する。
【0108】
ここで、センター出力用のスピーカ(センタースピーカ)がある場合には、このセンタースピーカの音量を下げることで、センター出力、すなわち音声部分を消去・抑制することができる。一方、センタースピーカがない場合には、仮想的なセンター出力を実現する為、他のスピーカ(右前方の右フロントスピーカや左前方の左フロントスピーカ)に足し込むセンター成分を減ずる、もしくは足し込みをなくすことによって音声部分を消去・抑制する。
【0109】
この音声抑制処理部31の処理を図2に示す。同図に示すように、案内音声G1がオンとなる時刻t11において、オーディオ出力のセンター成分MC1を低下させ、案内音声G1の出力終了時点(時刻t12)にセンター成分MC1を回復させる。また、横方向から聞こえるサイド成分MS1については、案内音声G1のオンオフに関わらず、一定の出力を確保している。
【0110】
ここで、センター成分MC1の低下時に、センター成分をゼロにする(音声部分を消去する)ことで、案内音声の聞き取り易さを最も向上することができる。一方、センター成分を残す(音声部分を抑制する)ことで、案内音声の聞き取りやすさを向上しつつ、オーディオ出力の音声部分を乗員に聞かせることができる。この音声部分の消去と抑制とのいずれを用いるかは、予め定めておいてもよいし、ユーザが選択可能としてもよい。また、オーディオ出力の内容によって自動選択するようにしてもよい。
【0111】
また、音声抑制処理をボーカルオフ処理とサラウンド処理のいずれによって実現するかは、任意に選択可能である。たとえば、オーディオユニット20にサラウンド処理を実行する機能(サラウンド機能)がある場合には、サラウンド処理によって音声抑制処理を実現し、サラウンド機能がない場合にはボーカルオフ処理によって音声抑制処理を実現してもよい。
【0112】
さらに、サラウンド機能は、ユーザの指定によってオンオフ可能であることが一般的である。そこで、案内音声出力時にサラウンド機能がオフになっているならば、強制的にオンしてサラウンド処理を実行し、センター出力の消去・抑制を行えばよい。
【0113】
オーディオユニット20にサラウンド機能があるか否かに基づいて音声抑制に用いる処理を選択する場合の処理動作を図3のフローチャートに示す。この図3に示した処理フローは、ナビゲーションシステム1の電源投入時に繰り返し実行される。
【0114】
まず、音声抑制処理部31は、ナビゲーションユニット10から案内音声の出力要求があったか否かを確認し(ステップS101)、案内音声の出力要求がない場合(ステップS101,No)には処理を終了する。
【0115】
一方、案内音声の出力要求がある場合(ステップS101,Yes)、音声抑制処理部31は、オーディオユニット20にサラウンド機能があるか否かを判定する(ステップS102)。
【0116】
その結果、サラウンド機能がある場合(ステップS102,Yes)、オーディオユニット20のサラウンド機能をオンし(ステップS103)、センター出力のフロントスピーカへの足し込みを低減する(ステップS104)。その後、案内音声の出力を開始し(ステップS105)、案内音声の出力が終了した時点で(ステップS106,Yes)サラウンド機能をオフして(ステップS107)、処理を終了する。
【0117】
一方、サラウンド機能がない場合(ステップS102,No)、オーディオユニット20がボーカルオフ処理を開始(ステップS111)した後に案内音声の出力を開始し(ステップS112)、案内音声の出力が終了した時点(ステップS113,Yes)でボーカルオフ処理を終了して(ステップS114)、処理フローを終了する。
【0118】
また、オーディオユニット20がサラウンド処理とボーカルオフ処理とを共に実行可能であるならば、案内音声出力時にサラウンド機能がオンである場合にサラウンド処理によって音声抑制を実現し、サラウンド機能がオフになっている場合に、ボーカルオフ処理によって音声抑制を実現してもよい。
【0119】
サラウンド機能のオンオフに基づいて音声抑制に用いる処理を選択する場合の処理動作を図4のフローチャートに示す。この図4に示した処理フローは、ナビゲーションシステム1の電源投入時に繰り返し実行される。
【0120】
まず、音声抑制処理部31は、ナビゲーションユニット10から案内音声の出力要求があったか否かを確認し(ステップS201)、案内音声の出力要求がない場合(ステップS201,No)には処理を終了する。
【0121】
一方、案内音声の出力要求がある場合(ステップS201,Yes)、音声抑制処理部31は、オーディオユニット20のサラウンド機能がオンであるか否かを判定する(ステップS202)。
【0122】
その結果、サラウンド機能がオンである場合(ステップS202,Yes)、センター出力のフロントスピーカへの足し込みを低減(ステップS203)して案内音声の出力を開始し(ステップS204)、案内音声の出力が終了した時点(ステップS205,Yes)でセンター出力のフロントへの足し込みを回復(ステップS206)して、処理を終了する。
【0123】
一方、サラウンド機能がオフである場合(ステップS202,No)、オーディオユニット20がボーカルオフ処理を開始(ステップS211)した後に案内音声の出力を開始し(ステップS212)、案内音声の出力が終了した時点(ステップS213,Yes)でボーカルオフ処理を終了して(ステップS214)、処理フローを終了する。
【0124】
つぎに、特殊効果抑制部32は、ナビゲーションユニット10が案内音声を出力する場合に、特殊効果付加部25cによる特殊効果の付加を停止する処理を実行することで、案内音声の聞き取り易さを向上する。
【0125】
この特殊効果抑制部32の処理を図5に示す。同図に示すように、案内音声G2がオンとなる時刻t21において、オーディオ出力の特殊効果をオフし、案内音声G2の出力終了時点(時刻t22)に特殊効果を回復させる。
【0126】
具体的には、特殊効果付加部25cが上方定位処理を行っていると、オーディオユニット20が出力する音楽情報の音声部分が乗員の目の前にあるように聞こえるため、案内音声に意識が行きにくく、乗員が案内音声を聞き逃す可能性がある。そこで、案内音声の出力中は上方定位処理を停止することで、案内音声の聞き取り易さが向上する。
【0127】
また、特殊効果付加部25cが低音調節処理を行っていると、強調した帯域に比して高い周波数帯域音のマスキングが発生する。このマスキングが発生する帯域で案内音声を出力すると、その聞き取り易さが低下するので、案内音声の出力中に低音調節処理を停止することで聞き取り易さを向上することができる。
【0128】
さらに、特殊効果付加部25cが所定帯域の強調処理を行っている場合にも、低音調節処理の場合と同様にマスキングが発生するので、案内音声の出力中は所定帯域の強調処理を停止することで聞き取り易さを向上することができる。
【0129】
また、特殊効果付加部25cが残響付加処理を行っている場合にも、残響音によって案内音声に意識が行きにくく、乗員が案内音声を聞き逃す可能性がある。そこで、案内音声の出力中は残響付加処理を停止することで、案内音声の聞き取り易さが向上する。
【0130】
ところで、案内音声は運転者にとって最も重要であり、他の乗員からは案内音声の聞き取り易さよりもオーディオユニット20の出力、たとえば音楽の品質の維持が求められる場合がある。
【0131】
そこで、特殊効果抑制部32による特殊効果の抑制は、運転席に対する出力について実行し、他の座席に対する出力については特殊効果の付加を継続することで、他の座席の乗員に対するオーディオユニット20からの出力品質を維持することができる。
【0132】
また、車室におけるスピーカの配置によって、運転席に対する出力に用いるスピーカと、助手席に対する出力に用いるスピーカとを共用する場合(例えば運転席側のドアに右スピーカを、助手席側のドアに左スピーカを設置してステレオ出力を行なう場合)には、運転席への出力について特殊効果を抑制し、助手席への出力に対して特殊効果を付加すると、左右の音のバランスが崩れる。
【0133】
したがって、かかる状況では、運転席と助手席に対する出力について特殊効果の付加を抑制することが望ましい。
【0134】
つぎに、バランス調整部33の処理について説明する。これまで説明してきたように、運転席において案内音声の聞き取り易さを向上するためには、運転席に対するオーディオ出力を調整することが有用である。また、運転席に対するオーディオ出力全体の音量を下げつつ上述の処理を実行することで、案内音声の聞き取り易さをさらに向上することができる。
【0135】
しかしながら、運転席や助手席に対するオーディオ出力の調整や低下を行うと、後部座席に座った乗員にとってもオーディオ出力の聞こえ方が変化することとなる。特に、サラウンド処理を利用した出力を行っている場合、運転席や助手席に対するオーディオ出力の加工によって後部座席でのオーディオ出力の品質(音量感や音声部分の音量)が低下することとなる。
【0136】
そこで、バランス調整部33は、運転席や助手席へのオーディオ出力を加工する場合に、後部座席に対する出力に補正を行うことで、後部座席の乗員にとっての違和感を減ずることとしている。
【0137】
具体的には、図6に示すように、案内音声G3がオンとなる時刻t31において、フロントスピーカからのオーディオ出力F1を減少させたならば、リアスピーカからのオーディオ出力R1を増大させる。そして、案内音声G3の出力終了時点(時刻t32)に、フロントスピーカからのオーディオ出力F1とリアスピーカからのオーディオ出力R1とをそれぞれ回復させる。
【0138】
なお、ここではフロントスピーカからの出力音量を全体的に低下させる場合について説明したが、フロントスピーカからの出力のうち、特定の部分、たとえはセンター成分を低下させる場合には、リアスピーカの出力に対してセンター成分の足し込みをおこうことで補正する。
【0139】
上述してきたように、本実施例にかかるナビゲーションシステム1では、ナビゲーションユニット10が案内音声を出力する場合に、音楽データ調整部30によってオーディオユニット20から出力される音情報を調整し、音声部分の抑制、特殊効果の抑制、座席間のバランスの補正を行うことで、オーディオ出力を確保しつつ案内音声の聞き取り易さを向上している。
【0140】
なお、本実施例では、ナビゲーションユニットとオーディオユニットとを一体に形成したナビゲーションシステムを例に説明を行ったが、本発明の利用はこれに限定されるものではない。
【0141】
例えば、ナビゲーション装置に音楽データ調整部30と同等の機能を持たせれば、オーディオ装置に対して独立したナビゲーション装置として本発明を実施することができる。この場合、ナビゲーション装置は、オーディオ装置に対して出力音に対する調整内容を具体的に指示する信号を送出することとなる。
【0142】
また、オーディオ装置に音楽データ調整部30と同様の機能を持たせれば、ナビゲーション装置に対して独立したオーディオ装置として本発明を実施することができる。この場合、オーディオ装置はナビゲーション装置から音声案内の実行通知を受け、オーディオ装置内で出力音に対する具体的な調整内容を決定することとなる。
【0143】
さらに、本実施例においては、複数チャンネルを有する音源データとして現在広く用いられている5.1ch音源データを例に説明したが、たとえば7.1ch音源データなど、任意のチャンネル数の音源データについても同様に本発明を適用可能であることは言うまでも無い。
【0144】
なお、本実施例では、音声によって情報提供し、運転を支援する場合の具体例として、ナビゲーションシステムを挙げたが、本発明の利用はこれに限定されるものではなく、路車間通信によって得た情報を通知する場合など、音によるユーザへの情報提供に広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
以上のように、本発明にかかる運転支援システム、ナビゲーション装置および車載オーディオ装置は、音声による経路誘導に有用であり、特に、オーディオ出力と並行した音声案内に適している。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの概要構成を示す概要構成図である。
【図2】図1に示した音声抑制処理部の処理を説明する説明図である。
【図3】サラウンド機能の有無に基づいて音声抑制に用いる処理を選択する処理動作を説明する説明図である。
【図4】サラウンド機能のオンオフに基づいて音声抑制に用いる処理を選択する場合の処理動作を説明する説明図である。
【図5】図1に示した特殊効果抑制部の処理を説明する説明図である。
【図6】図1に示したバランス調整部の処理を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0147】
1 ナビゲーションシステム
10 ナビゲーションユニット
11 GPS通信部
12 経路設定部
13 地図データ
14 案内処理部
14a 案内表示作成部
14b 案内音声作成部
20 オーディオユニット
21 CDドライブ
22 DVDドライブ
23 ラジオチューナ
24 テレビチューナ
25 主制御部
25a ステレオ音源処理部
25b 5.1ch音源処理部
25c 特殊効果付加部
25d 表示制御部
30 音楽データ調整部
31 音声抑制処理部
32 特殊効果抑制部
33 バランス調整部
40 出力制御部
D1 ディスプレイ
SP1〜SP4 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行にかかる情報を音声によって出力する情報提供機能と、音情報を含むコンテンツの出力を行うオーディオ機能とを備えた運転支援システムであって、
前記情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合に、前記オーディオ機能が出力する音情報の内容を調整する音情報調整手段を備えたことを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能が出力する音情報のうち、音声部分の音量を低減、もしくは消去することを特徴とする請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記音情報調整手段は、前記音情報のセンター出力を前記音声部分とみなすことを特徴とする請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記音情報調整手段は、ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分を前記センター出力とみなすことを特徴とする請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記オーディオ機能は、ステレオ音源データに対してサラウンド処理を行って前記センター出力分を算出することを特徴とする請求項3または4に記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記音情報調整手段は、前記情報提供機能が音声を用いた情報提供を行う場合であって、前記オーディオ機能が前記サラウンド処理を実行していない場合に、前記オーディオ機能にサラウンド処理を実行させ、該サラウンド処理によって得られたセンター出力を低減もしくは消去することを特徴とする請求項5に記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能にサラウンド処理能力があるか否かを判定し、前記サラウンド処理能力がない場合に前記ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分を前記センター出力とみなして当該センター出力の低減もしくは消去を行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能が前記サラウンド処理を実行中であるか否かを判定し、前記サラウンド処理を実行中である場合には当該サラウンド処理によって算出されたセンター出力分を低減もしくは消去し、前記サラウンド処理を実行中でない場合には、前記ステレオ音源データの右出力音と左出力音との共通部分を前記センター出力とみなして当該センター出力の低減もしくは消去を行うことを特徴とする請求項4〜7のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項9】
前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能が前記センター出力に対応するセンター出力データを含む多チャンネル音源データを読み出した場合に、当該多チャンネル音源データに示された前記センター出力を低減もしくは消去することを特徴とする請求項3〜8のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項10】
前記オーディオ機能は、複数のスピーカへの足し込みによって前記センター出力を仮想的に実現し、前記音情報調整手段から前記センター出力の低減もしくは消去を指示された場合に、前記複数のスピーカへの足し込み量を低減もしくは消去することを特徴とする請求項3〜9のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項11】
前記オーディオ機能は、前記センター出力をセンタースピーカから出力し、前記音情報調整手段から前記センター出力の低減もしくは消去を指示された場合に、前記センタースピーカからの出力音量を低減もしくは消去することを特徴とする請求項3〜9のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項12】
前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能が読み出した音源の種別に基づいて、前記センター出力の低減もしくは消去に用いる処理を自動選択することを特徴とする請求項3〜11のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項13】
前記音情報調整手段は、前記オーディオ機能による特殊効果の付加を停止することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項14】
前記音情報調整手段は、前記音情報に対する上方定位処理を停止することを特徴とする請求項13に記載の運転支援システム。
【請求項15】
前記音情報調整手段は、前記音情報に対する低音調節処理を停止することを特徴とする請求項13または14に記載の運転支援システム。
【請求項16】
前記音情報調整手段は、前記音情報に対する所定帯域の強調処理を停止することを特徴とする請求項13,14または15に記載の運転支援システム。
【請求項17】
前記音情報調整手段は、前記音情報に対する残響付加処理を停止することを特徴とする請求項13〜15のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項18】
前記音情報調整手段は、前記特殊効果の付加の停止を、運転席および助手席の少なくとも一つの席に対する出力について実行することを特徴とする請求項13〜17のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項19】
前記音情報調整手段は、少なくとも運転席に対して出力する音情報の内容を調整する場合に、他の座席に対して出力する音情報を補正することを特徴とする請求項1〜18のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項20】
自車両の経路誘導を行うナビゲーション装置であって、
音声による経路誘導を実行する案内音声出力手段と、
前記案内音声出力手段が案内音声の出力を行なう場合に、オーディオ装置が出力する音情報に対する調整内容を決定し、当該調整内容を前記オーディオ装置に出力する音情報調整手段と、
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項21】
少なくとも音情報を含むコンテンツを出力する車載オーディオ装置であって、
自車両の経路誘導を行うナビゲーション装置による案内音声の出力を検出する案内音声検出手段と、
前記案内音声検出手段が案内音声の出力を検出した場合に、前記音情報の内容を調整する音情報調整手段と、
を備えたことを特徴とする車載オーディオ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−50083(P2006−50083A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225670(P2004−225670)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】