説明

運転支援装置及び運転支援システム

【解決課題】他車との衝突の危険を高精度に判定することができるようにする。
【解決手段】交差点における自車側車両と他車側車両との位置予測を行い(160)、交差点において自車側車両と他車側車両とが最も接近したときの最小距離を算出し(162)、算出された最小距離に基づいて、交差点における他車側車両との衝突の危険度を算出する(164)。そして、他車側車両のドライバが自車を認知しているか否かを判定し(170)、視線の方向に自車がなく、自車を認知していないと推定される場合には、予め定められた交差車衝突危険度しきい値を所定値だけ下げるように変更し(172)、予め定められた交差車衝突危険度しきい値又は変更された交差車衝突危険度しきい値を衝突の危険を判定する際のしきい値として設定して、交差車との衝突の危険があるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転支援装置及び運転支援システムに係り、特に、他車に関する情報に基づいて、他車との衝突の危険を回避するように自車の運転支援を行う運転支援装置及び運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、他車に関する情報を、自車の運転支援に利用することが行われている。
【0003】
例えば、他車の位置、車速、及び推定進行方向を示す情報を通信で獲得し、獲得した情報に基づいて自車で警報する通信装置が知られている(特許文献1)。また、他車の位置や、速度、加速度などの情報を通信で獲得し、これらの情報を用いて自車にとって危険な物体の存在とその方向等を示す危険情報を抽出して、危険情報を運転車に表示する車両用危険情報提示システムが知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−202913
【特許文献2】特開2005−242526
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、通信で得られる他車の位置情報や速度などの動作情報、自車から観察される他車の位置や動きの情報を利用しても、他車のドライバの状態を推定することは困難であったため、他車との衝突の危険を高精度に判定することができない、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、他車との衝突の危険を高精度に判定することができる運転支援装置及び運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る運転支援装置は、自車の位置を検出して自車位置情報を出力する位置検出手段と、前記自車の動作状態を検出して自車動作状態情報を出力する動作状態検出手段と、他車の位置を示す他車位置情報、前記他車の動作状態を示す他車動作状態情報、及び前記他車のドライバの動作状態を示すドライバ動作状態情報を受信する受信手段と、前記自車位置情報、前記自車動作状態情報、前記受信手段によって受信された前記他車位置情報、及び前記他車動作状態情報に基づいて、前記自車の走行方向に存在する交差点を該走行方向と交差する方向に走行しようとする他車との前記交差点における衝突の危険度を算出する算出手段と、前記受信手段によって受信された該他車のドライバ動作状態情報に基づいて、該他車のドライバが前記自車を認知しているか否かを推定する推定手段と、前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していると推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値に基づいて、該他車との衝突の危険があるか否かを判定し、前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していないと推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値の少なくとも一方を変更して、該他車との衝突の危険があるか否かを判定する判定手段とを含んで構成されている。
【0007】
第1の発明に係る運転支援装置によれば、位置検出手段によって、自車の位置を検出して自車位置情報を出力し、動作状態検出手段によって、自車の動作状態を検出して自車動作状態情報を出力する。また、受信手段によって、他車の位置を示す他車位置情報、他車の動作状態を示す他車動作状態情報、及び他車のドライバの動作状態を示すドライバ動作状態情報を受信する。
【0008】
そして、算出手段によって、自車位置情報、自車動作状態情報、他車位置情報、及び他車動作状態情報に基づいて、自車の走行方向に存在する交差点をこの走行方向と交差する方向に走行しようとする他車との交差点における衝突の危険度を算出し、また、受信手段によって受信された他車のドライバ動作状態情報に基づいて、推定手段によって、他車のドライバが自車を認知しているか否かを推定する。
【0009】
そして、推定手段によって他車のドライバが自車を認知していると推定されたとき、判定手段によって、算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値に基づいて、他車との衝突の危険があるか否かを判定し、また、推定手段によって他車のドライバが自車を認知していないと推定されたとき、判定手段によって、算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値の少なくとも一方を変更して、他車との衝突の危険があるか否かを判定する。
【0010】
従って、他車のドライバ動作状態情報を受信して、他車のドライバが自車を認知しているか否かを推定し、推定結果を考慮して、交差点における他車との衝突の危険があるか否かを判定することにより、他車との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0011】
また、第2の発明に係る運転支援装置は、自車の位置を検出して自車位置情報を出力する位置検出手段と、前記自車の動作状態を検出して自車動作状態情報を出力する動作状態検出手段と、他車の位置を示す他車位置情報、前記他車の動作状態を示す他車動作状態情報、及び前記他車のドライバの動作状態を示すドライバ動作状態情報を受信する受信手段と、前記自車位置情報、前記自車動作状態情報、前記受信手段によって受信された前記他車位置情報、及び前記他車動作状態情報に基づいて、前記自車の走行方向に存在する交差点における対向右折車である他車との前記交差点における衝突の危険度を算出する算出手段と、前記受信手段によって受信された該他車のドライバ動作状態情報に基づいて、該他車のドライバが前記自車を認知しているか否かを推定する推定手段と、前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していると推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値に基づいて、該他車との衝突の危険があるか否かを判定し、前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していないと推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値の少なくとも一方を変更して、該他車との衝突の危険があるか否かを判定する判定手段とを含んで構成されている。
【0012】
第2の発明に係る運転支援装置によれば、位置検出手段によって自車の位置を検出して自車位置情報を出力し、動作状態検出手段によって、自車の動作状態を検出して自車動作状態情報を出力する。また、受信手段によって、他車の位置を示す他車位置情報、他車の動作状態を示す他車動作状態情報、及び他車のドライバの動作状態を示すドライバ動作状態情報を受信する。
【0013】
そして、算出手段によって、自車位置情報、自車動作状態情報、他車位置情報、及び他車動作状態情報に基づいて、自車の走行方向に存在する交差点における対向右折車である他車との交差点における衝突の危険度を算出し、受信手段によって受信された他車のドライバ動作状態情報に基づいて、推定手段によって、他車のドライバが自車を認知しているか否かを推定する。
【0014】
そして、推定手段によって他車のドライバが自車を認知していると推定されたとき、判定手段によって、算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値に基づいて、他車との衝突の危険があるか否かを判定し、推定手段によって他車のドライバが自車を認知していないと推定されたとき、判定手段によって、算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値の少なくとも一方を変更して、他車との衝突の危険があるか否かを判定する。
【0015】
従って、他車のドライバ動作状態情報を受信して、他車のドライバが自車を認知しているか否かを推定し、推定結果を考慮して、交差点における他車との衝突の危険があるか否かを判定することにより、他車との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0016】
上記の算出手段は、自車位置情報、自車動作状態情報、受信手段によって受信された他車位置情報、及び他車動作状態情報に基づいて、自車が走行する直線路において対向車である他車との直線路における衝突の直線路衝突危険度を算出し、推定手段は、受信手段によって受信された他車のドライバ動作状態情報に基づいて、他車が直線路の対向車線をはみ出す危険があるか否かを推定し、判定手段は、推定手段によって他車が対向車線をはみ出す危険がないと推定されたとき、算出手段によって算出された直線路衝突危険度及び予め定められた直線路衝突しきい値に基づいて、他車との衝突の危険があるか否かを判定し、推定手段によって他車が対向車線をはみ出す危険があると推定されたとき、算出手段によって算出された直線路衝突危険度及び予め定められた直線路衝突しきい値の少なくとも一方を変更して、他車との衝突の危険があるか否かを判定することができる。
【0017】
これにより、受信した他車のドライバ動作状態情報に基づいて、他車が直線路の対向車線をはみ出す危険があるか否かを推定し、推定結果を考慮して、直線路のおける対向車との衝突の危険があるか否かを判定し、対向車との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0018】
また、上記の算出手段は、自車が進路変更するとき、自車位置情報、自車動作状態情報、受信手段によって受信された他車位置情報、及び他車動作状態情報に基づいて、自車の後側方車であって、進路変更先の車線を走行する他車との進路変更先の車線における衝突の進路変更時衝突危険度を算出し、推定手段は、受信手段によって受信された他車のドライバ動作状態情報に基づいて、他車のドライバが自車を認知しているか否かを推定すると共に、他車のドライバが合流を許可しているか否かを推定し、判定手段は、推定手段によって他車のドライバが自車を認知していると推定されたとき、算出手段によって算出された進路変更時衝突危険度及び予め定められた進路変更時衝突しきい値に基づいて、他車との衝突の危険があるか否かを判定し、推定手段によって他車のドライバが自車を認知していないと推定されたとき、又は、他車のドライバが合流を許可していると推定されたとき、算出手段によって算出された進路変更時衝突危険度及び予め定められた進路変更時衝突しきい値の少なくとも一方を変更して、他車との衝突の危険があるか否かを判定することができる。
【0019】
これにより、受信した他車のドライバ動作状態情報に基づいて、他車のドライバが自車を認知しているか否かを推定すると共に、合流を許可しているか否かを推定し、推定結果を考慮して、進路変更時の後側方車との衝突の危険があるか否かを判定し、後側方車との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0020】
また、上記の受信手段は、他車のドライバ運転危険度情報を更に受信し、運転支援装置は、受信手段によって受信されたドライバ運転危険度情報に基づいて、ドライバに危険運転の傾向があるか否かを推定する運転傾向推定手段を更に含み、判定手段は、運転傾向推定手段によって他車のドライバに危険運転の傾向があると推定されたとき、算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値の少なくとも一方を変更して、他車との衝突の危険があるか否かを判定することができる。
【0021】
なお、上記の運転傾向推定手段は、自車と他車との何れにあってもよい。例えば、ドライ街運転危険度情報を送信する他車側において、他車側のドライバに危険運転の傾向があるか否かを推定し、推定結果をドライバ運転危険度情報として送信するようになっていてもよい。
【0022】
これにより、ドライバの属性や運転傾向などドライバ運転危険度情報を受信して、他車のドライバに危険運転の傾向があるか否かを推定して、他車との衝突の危険を更に高精度に判定することができる。
【0023】
また、上記の運転支援装置は、判定手段によって、他車との衝突の危険があると判定されたとき、警告情報を提示するか、又は他車から回避するように自車を制御する制御手段を更に含むことができる。これにより、自車を危険から回避させて、安全に運転するように支援することができる。
【0024】
また、上記の運転支援装置は、判定手段によって、他車との衝突の危険があると判定されたとき、警告信号を他車へ送信する警告送信手段を更に含むことができる。これにより、他車を警告することができる。
【0025】
上記のドライバ動作情報は、ドライバの顔の向きを示す顔向き情報、ドライバの視線の方向を示す視線情報、アクセル又はブレーキを操作するためのドライバの動作状態を示す操作状態情報の少なくとも一つを含むことができる。
【0026】
また、第3の発明に係る運転支援システムは、上記の運転支援装置と、前記他車の位置を検出して前記他車位置情報を出力する他車側位置検出手段、前記他車の動作状態を検出して前記他車動作状態情報を出力する他車側動作状態検出手段、前記他車のドライバの動作状態を検出して前記ドライバ動作状態情報を出力するドライバ動作状態検出手段、及び前記他車位置情報、前記他車動作状態情報、及び前記ドライバ動作状態情報を送信する送信手段を含む他車側運転支援装置とを含んで構成されている。
【0027】
第3の発明に係る運転支援システムによれば、他車側運転支援装置において、他車側位置検出手段によって、他車の位置を検出して他車位置情報を出力し、他車側動作状態検出手段によって、他車の動作状態を検出して他車動作状態情報を出力する。また、ドライバ動作状態検出手段によって、他車のドライバの動作状態を検出してドライバ動作状態情報を出力する。そして、送信手段によって、他車位置情報、他車動作状態情報、及びドライバ動作状態情報を送信する。
【0028】
また、自車側である運転支援装置では、受信手段によって、他車位置情報、他車動作状態情報、及びドライバ動作状態情報を他車側運転支援装置が受信し、上記のように、運転支援を行う。
【0029】
従って、他車側で、ドライバの動作状態を検出して、ドライバ動作状態情報を送信し、自車側で、他車のドライバ動作状態情報を受信して、他車のドライバが自車を認知しているか否かを推定し、推定結果を考慮して、交差点における他車との衝突の危険があるか否かを判定することにより、他車との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明の運転支援装置及び運転支援システムによれば、他車のドライバ動作状態情報を受信して、他車のドライバが自車を認知しているか否かを推定し、推定結果を考慮して、交差点における他車との衝突の危険があるか否かを判定することにより、他車との衝突の危険を高精度に判定することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0032】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る運転支援システム10は、自車側車両12Aと、他車側車両12B(どちらの車両かを特定せずに示す場合には車両12と称す)と、自車側車両12Aと他車側車両12Bとの間の無線通信を仲介するサーバ16とから構成されている。
【0033】
また、自車側車両12Aは、ドライバ状態センサ20、車両センサ22、自車側車両12Aの位置を測位するためのGPS装置24、認識装置26、通信装置28、情報提示装置30、車両制御装置32、自車側車両12A又は他車側車両に関する情報を蓄積するための情報蓄積装置34とから構成される。
【0034】
ドライバ状態センサ20は、ドライバ36のハンドル操作やペダル操作を行うためのドライバの動作、顔の向き、視線の方向などを検出する測定器(画像、超音波、レーザ)や音センサ、ビデオカメラなどから構成され、検出した内容を示すドライバ動作状態情報を出力するようになっており、例えば、ドライバ状態センサ20からドライバ動作状態情報として視線情報が出力されるようになっており、視線情報は、視線の方向を示す情報となっている。また、ドライバ36の状態は、例えば、ビデオカメラに写された映像から物体を抽出・分類して(この処理は、周知の画像処理の技術を利用することができる)、映像上の各物体の面積と上記位置関係とからドライバ36の動作、顔の向き、視線の方向を推定して求めることができる。
【0035】
また、検出されたドライバ36の動作状態から、わき見運転や居眠り運転を行っているか否かを推定して、わき見運転や居眠り運転を行っていると推定される場合には、ドライバ状態センサ20から不注意状態情報がドライバ動作状態情報として出力され、また、検出されたドライバ36の動作状態から、対向車線にはみ出す危険があると推定される場合には、ドライバ状態センサ20から車線逸脱警報情報がドライバ動作状態情報として出力される。また、検出されたドライバ36の動作状態から、交差点での左右確認や、一時停止前の減速(準備)、右折時の対向直進車の確認など動作が推定される場合には、ドライバ状態センサ20からこれらの動作を示すドライバ動作状態情報が出力される。
【0036】
また、ドライバ36の動作状態から、合流することを許可する意図が推定される場合には、ドライバ状態センサ20から合流許可情報がドライバ動作状態情報として出力される。
【0037】
また、車両センサ22は、自車側車両12Aの速度、加速度などの車両の動作状態や、ハンドル操作量及びペダル操作量の操作状態を検出する各種センサから構成され、検出した車両動作状態情報を出力するようになっている。なお、自車側車両12Aの速度は、自車側車両12Aに備わる車輪の回転計等から算出でき、また、加速度は速度の変化率として求めることができる。
【0038】
GPS装置24は、GPSによって取得される情報と地図情報とに基づいて、自車側車両12Aの位置を測位するようになっている。
【0039】
また、通信装置28は、サーバ16からデータを無線により送受信するようになっており、また、他車側車両12Bとも無線通信できるようになっている。なお、送信するデータは、自車の位置を示す位置情報、ドライバ状態センサ20によって出力されたドライバ動作状態情報、及び車両センサ22によって出力された車両動作状態情報となっており、受信するデータは、他車側車両12Bに関する位置情報、ドライバ動作状態情報、及び車両動作状態情報となっている。
【0040】
なお、送信データには、自車側車両12Aを特定するための車両IDを付して送信するようになっている。
【0041】
また、認識装置26は、他車との衝突の危険を認識する装置であり、メモリおよびCPU(中央処理装置)等により構成され、後述する自車情報送信処理ルーチン、危険度判定処理ルーチンなどのプログラムをメモリにロードして実行し、GPS装置24から得られる自車側車両12Aの位置を測位するための情報と、ドライバ状態センサ20から出力されるドライバ動作状態情報と、車両センサ22から出力される車両動作状態情報とに基づいて、所定の処理及び計算を行い、自車側車両12Aの周囲に存在する他車側車両12Bとの衝突の危険を認識するようになっている。
【0042】
情報提示装置30は、認識装置26の指示に基づいて、所定の情報をドライバ36に提示するようになっており、例えば、ディスプレイに情報を表示するようになっている。なお、情報の提示方法として、音声などの他の情報提示方法を用いてもよい。
【0043】
情報蓄積装置34は、GPS装置24から得られた情報や、ドライバ状態センサ20及び車両センサ22から出力された情報を一時記憶するようになっている。
【0044】
また、車両制御装置32は、認識装置26の指示に基づいて、自車側車両12Aのアクセルペダル操作量、ブレーキペダル操作量、ハンドル操作量などを制御するようになっている。
【0045】
なお、自車側車両12Aは、従来既知の一般的な車両の構成を備えており、一般的な車両の構成についての説明は省略する。
【0046】
また、他車側車両12Bは、自車側車両12Aと同様の構成となっているため、説明を省略する。
【0047】
サーバ16は、CPU、ROM、RAM、HDD、無線アンテナなどから構成され、無線通信を行えるようになっており、自車側車両12Aと他車側車両12Bとの間の無線通信を中継するようになっている。また、サーバ16は交差点付近に設置され、交差点周辺を走行する車両12に対して、位置情報、車両動作状態情報、及びドライバ動作状態情報の送信要求を行い、送信されてきた車両ID、位置情報、車両動作状態情報、及びドライバ動作状態情報を他の車両12に対して無線により送信する。
【0048】
なお、サーバ16は、従来既知の一般的な無線通信サーバの構成を備えていればよく、一般的な構成や機能に関する説明を省略する。
【0049】
次に、第1の実施の形態の作用について説明する。本実施の形態では、図2に示すように、自車側車両12Aと他車側車両12Bとが交差点を走行する場合を例に説明する。
【0050】
まず、サーバ16が、交差点周辺を走行する車両12に対して、位置情報、車両動作状態情報、及びドライバ動作状態情報の送信要求を送信する。なお、自車側車両12Aが、他車側車両12Bに対して、送信要求を送信してもよい。
【0051】
そして、例えば、他車側車両12Bの認識装置26において、図3に示す自車情報送信処理ルーチンが実行される。
【0052】
まず、ステップ100において、サーバ16又は他の車両12から送信要求があったか否かを判定し、位置情報、車両動作状態情報、及びドライバ動作状態情報の送信要求が受信されると、ステップ100からステップ102へ進み、GPS装置24から自車位置を取得し、ステップ104において、自車が交差点付近であるか否かを判定し、自車位置及び地図情報に基づいて、自車の走行方向に存在する交差点から所定距離の範囲に位置する場合には、ステップ106において、GPS装置24から取得された自車位置及び地図情報により、走行方向に存在する交差点に対する自車の相対的な位置を算出する。
【0053】
一方、ステップ104で自車位置が交差点から所定距離の範囲外に位置する場合には、ステップ108へ移行し、車両センサ22から速度、加速度、走行方向などを示す車両動作情報を取得する。次のステップ110では、ドライバ状態センサ20からドライバ動作状態情報を取得し、ステップ112で、ステップ102、106で取得された自車位置又は算出された相対的な位置を示す位置情報と、ステップ108、110で取得された車両動作状態情報及びドライバ動作状態情報とを車両IDと共に、送信要求を送信したサーバ16又は他の車両に対して送信して自車情報送信処理ルーチンを終了する。
【0054】
そして、サーバ16は、車両ID、位置情報、車両動作状態情報、及びドライバ動作状態情報を受信すると、サーバ16が設置されている交差点付近を走行している他の車両12に対して、受信した車両ID、位置情報、車両動作状態情報、及びドライバ動作状態情報を無線により送信する。
【0055】
次に、自車側車両12Aの認識装置26において、図4に示す危険度判定処理ルーチンが実行される。
【0056】
まず、ステップ120において、他車側車両12Bの情報を受信したか否かを判定し、他車側車両12Bの車両ID、位置情報、車両動作状態情報、及びドライバ動作状態情報を受信すると、ステップ120からステップ122へ進み、受信した車両ID、位置情報、車両動作状態情報、及びドライバ動作状態情報を情報蓄積装置34に記憶し、ステップ124において、GPS装置24から自車位置を取得し、ステップ126で、自車が交差点付近であるか否かを判定し、自車位置及び地図情報に基づいて、自車の走行方向に存在する交差点から所定距離の範囲に位置する場合には、ステップ128において、受信した車両IDの他車側車両12Bが、交差点において自車と交差する車両であるか否かを判定し、受信した車両動作状態情報が示す走行方向が、車両センサ22から取得される自車の走行方向と交差している場合には、ステップ130において、GPS装置24から取得された自車位置及び地図情報により交差点に対する自車の相対的な位置を算出する。
【0057】
そして、ステップ132において、交差点において交差する他車側車両12Bとの衝突の危険度を計算すると共に、交差点において交差する他車側車両12Bと衝突する危険があるか否かを判定するためのしきい値を設定し、ステップ148へ移行する。
【0058】
一方、ステップ128で、受信した車両IDの他車側車両12Bが、交差点において自車と交差しない場合には、ステップ134において、車両IDの他車側車両12Bが、交差点における対向右折車であるか否かを判定し、受信した車両動作状態情報が示す走行方向が、車両センサ22から取得される自車の走行方向と対向しており、かつ、受信した車両動作状態情報が右折することを示している場合には、ステップ136において、GPS装置24から取得された自車位置及び地図情報により交差点に対する自車の相対的な位置を算出する。
【0059】
そして、ステップ138において、交差点における対向右折車である他車側車両12Bとの衝突の危険度を計算すると共に、交差点における対向右折車と衝突する危険があるか否かを判定するためのしきい値を設定し、ステップ148へ移行する。
【0060】
また、ステップ126において、自車が交差点付近でないと判定された場合や、ステップ134において、交差点における対向右折車でないと判定された場合には、ステップ140において、受信した車両IDが示す他車側車両12Bが、自車が走行している直線路における対向車であるか否かを判定し、受信した位置情報及び車両動作状態情報に基づいて、走行方向が自車と対向する方向であって、自車が走行している直線路を他車側車両12Bが走行している場合には、ステップ142において、直線路における対向車である他車側車両12Bとの衝突の危険度を計算すると共に、直線路における対向車と衝突する危険があるか否かを判定するためのしきい値を設定し、ステップ148へ移行する。
【0061】
一方、ステップ140で、他車側車両12Bが、自車が走行している直線路における対向車でないと判定された場合には、ステップ144で、車両センサ22によって取得される車両動作状態情報に基づいて、自車が進路変更をしようとしており、かつ、受信した車両IDの他車側車両12Bについて、位置情報及び車両動作状態情報に基づいて、進路変更先の車線を走行している後側方車であるか否かを判定し、進路変更しようとしていない場合や、他車側車両12Bが後側方車でない場合には、ステップ120へ戻るが、自車が進路変更しようとしており、かつ、後側方車である場合には、ステップ146において、直線路における後側方車である他車側車両12Bとの衝突の危険度を計算すると共に、直線路における後側方車と衝突する危険があるか否かを判定するためのしきい値を設定し、ステップ148へ移行する。
【0062】
そして、ステップ148において、ステップ132、138、142、146で計算された危険度と設定されたしきい値とに基づいて、受信した車両IDが示す他車側車両12Bとの衝突の危険度がしきい値以上であるか否かを判定し、危険度がしきい値未満であって、他車側車両12Bとの衝突の危険がないと判定される場合には、ステップ120へ戻るが、一方、危険度がしきい値以上であって、他車側車両12Bとの衝突の危険があると判定される場合には、ステップ150へ移行し、衝突の危険の緊急度が大きいか否かを判定する。
【0063】
ステップ150で、衝突の危険の緊急度が大きくない場合には、ステップ152において、情報提示装置30によって、他車側車両12Bとの衝突の危険があることを警告する情報をドライバ36に提示してステップ120へ戻る。一方、衝突の危険の緊急度が大きい場合には、ステップ154において、車両制御装置32によって、他車側車両12Bとの衝突を回避するように減速や進路変更を行うように自車側車両12Aを制御して、ステップ120へ戻る。なお、自車側車両12Bにおいて、車両制御や警告情報の提示を行うだけでなく、他車側車両12Bに警告信号を送信して、他車側車両12Bのドライバに警告情報を提示させるようにしてもよい。
【0064】
次に、上記のステップ132の処理を実現するための交差点における交差車危険度計算処理ルーチンについて、図5を用いて説明する。
【0065】
ステップ160において、自車側車両12Aと他車側車両12Bとの交差点における相対的な位置と、車両動作状態情報の速度及び加速度とに基づいて、交差点における自車側車両12Aと他車側車両12Bとの位置予測を行い、ステップ162で、ステップ160の位置予測の結果に基づいて、交差点において自車側車両12Aと他車側車両12Bとが最も接近したときの最小距離を算出し、ステップ164で、算出された最小距離に基づいて、交差点における他車側車両12Bとの衝突の危険度を算出する。
【0066】
そして、ステップ166において、ステップ162で算出された最小距離が、予め定められた安全距離を示すしきい値以下であるか否かを判定し、最小距離が安全距離を示すしきい値より大きい場合には、ステップ174へ移行するが、最小距離がしきい値以下である場合には、ステップ168へ移行する。なお、予め定められた安全距離を示すしきい値には、交差点における交差する二つの車両が衝突する危険が低いと判断される場合の最小距離を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0067】
ステップ168では、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報の視線情報に基づいて、自車に対してどの方向に他車側車両12Bのドライバの視線があるかを計算する。ここで、視線情報は、視線方向と視線方向の継続時間とから構成され、所定の継続時間以上となっている視線方向を視線方向として採用するようにしてもよい。
【0068】
そして、ステップ170において、他車側車両12Bのドライバ36が自車を認知しているか否かを判定し、他車側車両12Bのドライバ36の視線の方向に自車があり、自車を認知していると推定される場合には、ステップ174へ移行するが、視線の方向に自車がなく、自車を認知していないと推定される場合には、ステップ172において、予め定められた交差車衝突危険度しきい値を所定値だけ下げるように変更し、ステップ174へ移行する。なお、交差車衝突危険度しきい値には、交差点における交差する二つの車両が衝突する危険が高いと判断される場合の危険度を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0069】
そして、ステップ174において、予め定められた交差車衝突危険度しきい値又はステップ172で変更された交差車衝突危険度しきい値を上記のステップ148のしきい値として設定して、交差点における交差車危険度計算処理ルーチンを終了する。
【0070】
上記のように処理を行うことにより、他車側車両12Bが一旦停止している場合であっても、他車側車両12Bのドライバ36が自車を認知していない場合には、交差車衝突危険度しきい値が下げられるように変更され、上記の危険度判定処理ルーチンにおいて、衝突の危険があると判定されるようになる。
【0071】
また、上記のステップ138を実現するための交差点における対向右折車危険度計算処理ルーチンについて図6を用いて説明する。なお、上述した交差点における交差車危険度計算処理ルーチンと同様の処理について、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
まず、ステップ160において、交差点における自車側車両12Aと他車側車両12Bとの位置予測を行い、ステップ162で、ステップ160の位置予測の結果に基づいて、交差点において自車側車両12Aと他車側車両12Bとが最も接近したときの最小距離を算出し、ステップ180で、算出された最小距離に基づいて、交差点における対向右折車である他車側車両12Bとの衝突の危険度を算出する。
【0073】
そして、ステップ182において、ステップ162で算出された最小距離が、予め定められた安全距離を示すしきい値以下であるか否かを判定し、最小距離が安全距離を示すしきい値より大きい場合には、ステップ188へ移行するが、最小距離がしきい値以下である場合には、ステップ168へ移行する。なお、予め定められた安全距離を示すしきい値には、交差点において直進する車両と対向右折車とが衝突する危険が低いと判断される場合の最小距離を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0074】
ステップ168では、自車に対してどの方向に他車側車両12Bのドライバ36の視線の方向があるかを計算し、ステップ170において、他車側車両12Bのドライバ36が自車を認知しているか否かを判定し、他車側車両12Bのドライバ36の視線の方向に自車があり、自車を認知していると推定される場合には、ステップ188へ移行するが、視線の方向に自車がなく、自車を認知していないと推定される場合には、ステップ186において、予め定められた対向右折車衝突危険度しきい値を所定値だけ下げるように変更し、ステップ188へ移行する。なお、対向右折車衝突危険度しきい値には、交差点において直進する車両と対向右折車とが衝突する危険が高いと判断される場合の危険度を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0075】
そして、ステップ188において、予め定められた対向右折車衝突危険度しきい値又はステップ186で変更された対向右折車衝突危険度しきい値を上記のステップ148のしきい値として設定して、交差点における対向右折車危険度計算処理ルーチンを終了する。
【0076】
次に、上記のステップ142の処理を実現するための直線路対向車危険度計算処理ルーチンについて図7を用いて説明する。
【0077】
ステップ190において、自車側車両12A及び他車側車両12Bの位置情報、車両動作状態情報の速度、及び加速度に基づいて、直線路における自車側車両12Aと他車側車両12Bとの位置予測を行い、ステップ192で、ステップ190の位置予測の結果に基づいて、直線路において自車側車両12Aと他車側車両12Bとが最も接近したときの最小距離を算出し、ステップ194で、算出された最小距離に基づいて、直線路における他車側車両12Bとの衝突の危険度を算出する。
【0078】
そして、ステップ196において、ステップ192で算出された最小距離が、予め定められた安全距離を示すしきい値以下であるか否かを判定し、最小距離が安全距離を示すしきい値より大きい場合には、ステップ206へ移行するが、最小距離がしきい値以下である場合には、ステップ198へ移行する。なお、予め定められた安全距離を示すしきい値には、直線路において対向して走行する二つの車両が衝突する危険が低いと判断される場合の最小距離を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0079】
ステップ198では、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報に不注意状態情報が含まれているか否かを判定し、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報として不注意状態情報が受信されていない場合には、ステップ202へ移行するが、一方、他車側車両12Bのドライバ36がわき見運転や居眠り運転を行っていると推定され、ドライバ動作状態情報に不注意状態情報が含まれている場合には、ステップ200へ移行し、予め定められた対向車衝突危険度しきい値を所定値だけ下げるように変更し、ステップ202へ移行する。なお、対向車衝突危険度しきい値には、直線路において対向して走行する二つの車両が衝突する危険が高いと判断される場合の危険度を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0080】
そして、ステップ202では、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報に車線逸脱警報情報が含まれているか否かを判定し、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報として車線逸脱警報情報が受信されていない場合には、ステップ206へ移行するが、一方、他車側車両12Bのドライバ36の動作状態から、対向車線にはみ出す危険があると推定され、ドライバ動作状態情報に車線逸脱警報情報が含まれている場合には、ステップ204へ移行し、予め定められた対向車衝突危険度しきい値又はステップ200で変更された対向車衝突危険度しきい値を所定値だけ下げるように変更し、ステップ206へ移行する。
【0081】
そして、ステップ206において、予め定められた対向車衝突危険度しきい値又はステップ200、204で変更された対向車衝突危険度しきい値を上記のステップ148のしきい値として設定して、直線路対向車危険度計算処理ルーチンを終了する。
【0082】
次に、上記のステップ146の処理を実現するための後側方車危険度計算処理ルーチンについて図8を用いて説明する。
【0083】
ステップ210において、自車側車両12A及び他車側車両12Bの位置情報、車両動作状態情報の速度、及び加速度に基づいて、自車側車両12Aが進路変更した場合における自車側車両12Aと他車側車両12Bとの位置予測を行い、ステップ212で、ステップ210の位置予測の結果に基づいて、進路変更時において自車側車両12Aと他車側車両12Bとが最も接近したときの最小距離を算出し、ステップ214で、算出された最小距離に基づいて、進路変更時における他車側車両12Bとの衝突の危険度を算出する。
【0084】
そして、ステップ216において、ステップ212で算出された最小距離が、予め定められた安全距離を示すしきい値以下であるか否かを判定し、最小距離が安全距離を示すしきい値より大きい場合には、ステップ228へ移行するが、最小距離がしきい値以下である場合には、ステップ218へ移行する。なお、予め定められた安全距離を示すしきい値には、直線路において進路変更時に二つの車両が衝突する危険が低いと判断される場合の最小距離を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0085】
ステップ218では、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報の視線情報に基づいて、自車に対してどの方向に他車側車両12Bのドライバ36の視線の方向があるかを計算し、ステップ220において、他車側車両12Bのドライバ36が自車を認知しているか否かを判定し、他車側車両12Bのドライバ36の視線の方向に自車があり、自車を認知していると推定される場合には、ステップ224へ移行するが、視線の方向に自車がなく、自車を認知していないと推定される場合には、ステップ222において、予め定められた後側方車衝突危険度しきい値を所定値だけ下げるように変更して、ステップ224へ移行する。なお、後側方車衝突危険度しきい値には、直線路において進路変更時に二つの車両が衝突する危険が高いと判断される場合の危険度を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0086】
ステップ224では、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報に合流許可情報が含まれているか否かを判定し、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報として合流許可情報が受信されていない場合には、ステップ228へ移行するが、一方、他車側車両12Bのドライバ36が自車側車両12Aの合流を許可していると推定され、ドライバ動作状態情報に合流許可情報が含まれている場合には、ステップ226へ移行し、予め定められた後側方車衝突危険度しきい値又はステップ222で変更された後側方車衝突危険度しきい値を所定値だけ上げるように変更して、ステップ228へ移行する。
【0087】
そして、ステップ228において、予め定められた後側方車衝突危険度しきい値又はステップ222、226で変更された後側方車衝突危険度しきい値を上記のステップ148のしきい値として設定して、後側方車危険度計算処理ルーチンを終了する。
【0088】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る運転支援システムによれば、他車側車両のドライバ動作状態情報を受信して、交差点において交差する他車側車両のドライバ36が自車を認知しているか否かを推定し、自車を認知していないと推定される場合に、しきい値を変更して、交差点において交差する他車側車両との衝突の危険があるか否かを判定することにより、交差点における他車側車両との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0089】
また、同様に、交差点における対向右折車である他車側車両のドライバ36が自車を認知しているか否かを推定し、自車を認知していないと推定される場合に、しきい値を変更して、交差点において対向右折車である他車側車両との衝突の危険があるか否かを判定することにより、対向右折車である他車側車両との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0090】
また、受信した他車側車両のドライバ動作状態情報の不注意状態情報や車線逸脱警報情報により、対向車である他車側車両が直線路の対向車線をはみ出す危険があるか否かを推定し、推定結果を考慮して、直線路のおける対向車との衝突の危険があるか否かを判定することにより、対向車との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0091】
また、他車側車両のドライバ動作状態情報を受信して、進路変更時の後側方車のドライバ36が自車を認知しているか否かを推定すると共に、受信した他車側車両のドライバ動作状態情報の合流許可信号に基づいて、合流を許可しているか否かを推定し、しきい値を変更して、進路変更時の後側方車との衝突の危険があるか否かを判定することにより、他車側車両のドライバ36の運転意図を推定して、後側方車との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0092】
また、他車側車両との衝突の危険があると判定された場合に、警報を提示したり、自車を他車側車両との衝突の危険から回避するように運転制御を行うことにより、安全に運転するように支援することができる。
【0093】
なお、上記の実施の形態では、視線の方向を示す視線情報をドライバ動作状態情報として送信する場合を例に説明したが、ドライバが視認している車両を示す車両IDを送信するようにしてもよい。この場合には、ドライバの視線が所定の連続時間以上が固定された場合に、このときの視線方向にある車両を特定して、その車両を示す車両IDを送信すればよい。
【0094】
また、送信要求があった場合に、位置情報、ドライバ動作状態情報、及び車両動作状態情報を送信する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、定期的に、これらの情報を送信するようにしてもよい。
【0095】
また、他車側車両のドライバが自車を認知していない場合などに、危険度を判定するためのしきい値を変更する場合を例に説明したが、自車を認知していない場合や、不注意状態情報又は車線逸脱警報情報があった場合に、危険度を上げるように変更してもよい。
【0096】
また、自車側車両の認知装置で、受信した位置情報、ドライバ動作状態情報、及び車両動作状態情報と自車の位置情報、車両動作状態情報に基づいて、他車側車両との衝突の危険があるか否かを判定する場合を例に説明したが、サーバにおいて、サーバ周辺を走行している複数の車両から位置情報、ドライバ動作状態情報、及び車両動作状態情報を受信し、これらの情報に基づいて、衝突の危険があるか否かを判定し、判定結果をサーバ周辺の車両に送信するようにしてもよい。
【0097】
また、視線情報の視線の方向に基づいて、自車を認知しているか否かを推定する場合を例に説明したが、ドライバの顔の向きを示す顔向き情報やドライバのアクセルやブレーキを操作するための動作状態を示す操作状態情報に基づいて、自車を認知しているか否かを推定するようにしてもよい。
【0098】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び同様の処理については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0099】
第2の実施の形態では、ドライバ動作状態情報として、ドライバの属性や運転傾向を示す情報が送信され、この情報を考慮して、衝突の危険があるか否かを判定する点が第1の実施の形態と異なっている。
【0100】
ドライバ36の属性については、初心者や高齢者であることがドライバ36によって入力された情報や、車載処理装置(例えば、画像処理装置)やキー等に埋め込まれた個人識別情報が、ドライバ運転危険度情報として情報蓄積装置34に記憶されるようになっている。また、ドライバ36の運転傾向については、わき見運転や居眠り運転を行う傾向があると運転履歴に基づいて推定される場合には、ドライバ運転危険度情報として情報蓄積装置34に記憶されるようになっている。
【0101】
なお、運転支援システムの構成については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
次に、第2の実施の形態の作用について説明する。
【0103】
まず、他車側車両12Bの車両ID、位置情報、ドライバ動作状態情報、及び車両動作状態情報が受信されると、自車側車両12Aの認識装置26において、図9に示す他車傾向危険度計算処理ルーチンが実行される。
【0104】
まず、ステップ300において、自車側車両12A及び他車側車両12Bの位置情報、車両動作状態情報の速度、及び加速度に基づいて、自車側車両12Aと他車側車両12Bとの位置予測を行い、ステップ302で、ステップ300の位置予測の結果に基づいて、自車側車両12Aと他車側車両12Bとが最も接近したときの最小距離を算出し、ステップ304で、算出された最小距離に基づいて、他車側車両12Bとの衝突の危険度を算出する。
【0105】
そして、ステップ306において、ステップ304で算出された最小距離が、予め定められた安全距離を示すしきい値以下であるか否かを判定し、最小距離が安全距離を示すしきい値より大きい場合には、ステップ312へ移行するが、最小距離がしきい値以下である場合には、ステップ308へ移行する。なお、予め定められた安全距離を示すしきい値には、走行する二つの車両が衝突する危険が低いと判断される場合の最小距離を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0106】
ステップ308では、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報にドライバ運転危険度情報が含まれているか否かを判定し、他車側車両12Bのドライバ動作状態情報としてドライバ運転危険度情報が受信されていない場合には、ステップ312へ移行するが、一方、他車側車両12Bのドライバ36がわき見運転や居眠り運転を行う傾向があると推定されたり、ドライバ36が初心者や高齢者であり、ドライバ動作状態情報にドライバ運転危険度情報が含まれている場合には、ステップ310へ移行し、予め定められた衝突危険度しきい値を所定値だけ下げるように変更し、ステップ312へ移行する。なお、衝突危険度しきい値には、走行する二つの車両が衝突する危険が高いと判断される場合の危険度を実験的又は統計的に求めた値を設定しておく。
【0107】
そして、ステップ312において、予め定められた衝突危険度しきい値又はステップ310で変更された衝突危険度しきい値を上述した危険度判定処理ルーチンのステップ148のしきい値として設定して、他車傾向危険度計算処理ルーチンを終了する。
【0108】
そして、危険度判定処理ルーチンにおいて、計算された危険度が、設定された衝突危険度しきい値以上である場合には、情報提示装置30によって警告を提示したり、車両制御装置32によって危険を回避するように車両を制御する。なお、ドライバ運転危険度情報が含まれているような場合には、危険の緊急度が低いため、警告提示だけを行うようにしてもよい。
【0109】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る運転支援システムによれば、ドライバの属性や運転傾向などドライバ運転危険度情報を受信して、他車側車両のドライバに危険運転の傾向があるか否かを推定して、危険運転の傾向があると推定される場合に、しきい値を変更して、他車側車両との衝突の危険があるか否かを判定することにより、他車側車両との衝突の危険を高精度に判定することができる。
【0110】
なお、自車側車両において、ドライバ状態センサによって、視線情報を取得するときに、ドライバ運転危険度情報が高齢者であることを示している場合には、視線の方向が通常より長い時間固定された場合に、視線の方向に存在する物体をはじめて視認できたとして、視線情報を取得し、送信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る運転支援システムの構成を示す概略図である。
【図2】交差点における自車側車両と交差する他車側車両とを説明するためのイメージ図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る車両の認識装置で実行される自車情報送信処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る車両の認識装置で実行される危険度判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る車両の認識装置で実行される交差点における交差車危険度計算処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る車両の認識装置で実行される交差点における対向右折車危険度計算処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る車両の認識装置で実行される直線路対向車危険度計算処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る車両の認識装置で実行される後側方車危険度計算処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る車両の認識装置で実行される他車傾向危険度計算処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0112】
10 運転支援システム
12 車両
12A 自車側車両
12B 他車側車両
16 サーバ
20 ドライバ状態センサ
22 車両センサ
24 GPS装置
26 認識装置
28 通信装置
30 情報提示装置
32 車両制御装置
34 情報蓄積装置
36 ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の位置を検出して自車位置情報を出力する位置検出手段と、
前記自車の動作状態を検出して自車動作状態情報を出力する動作状態検出手段と、
他車の位置を示す他車位置情報、前記他車の動作状態を示す他車動作状態情報、及び前記他車のドライバの動作状態を示すドライバ動作状態情報を受信する受信手段と、
前記自車位置情報、前記自車動作状態情報、前記受信手段によって受信された前記他車位置情報、及び前記他車動作状態情報に基づいて、前記自車の走行方向に存在する交差点を該走行方向と交差する方向に走行しようとする他車との前記交差点における衝突の危険度を算出する算出手段と、
前記受信手段によって受信された該他車のドライバ動作状態情報に基づいて、該他車のドライバが前記自車を認知しているか否かを推定する推定手段と、
前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していると推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値に基づいて、該他車との衝突の危険があるか否かを判定し、
前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していないと推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値の少なくとも一方を変更して、該他車との衝突の危険があるか否かを判定する判定手段と、
を含む運転支援装置。
【請求項2】
自車の位置を検出して自車位置情報を出力する位置検出手段と、
前記自車の動作状態を検出して自車動作状態情報を出力する動作状態検出手段と、
他車の位置を示す他車位置情報、前記他車の動作状態を示す他車動作状態情報、及び前記他車のドライバの動作状態を示すドライバ動作状態情報を受信する受信手段と、
前記自車位置情報、前記自車動作状態情報、前記受信手段によって受信された前記他車位置情報、及び前記他車動作状態情報に基づいて、前記自車の走行方向に存在する交差点における対向右折車である他車との前記交差点における衝突の危険度を算出する算出手段と、
前記受信手段によって受信された該他車のドライバ動作状態情報に基づいて、該他車のドライバが前記自車を認知しているか否かを推定する推定手段と、
前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していると推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値に基づいて、該他車との衝突の危険があるか否かを判定し、
前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していないと推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び予め定められたしきい値の少なくとも一方を変更して、該他車との衝突の危険があるか否かを判定する判定手段と、
を含む運転支援装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記自車位置情報、前記自車動作状態情報、前記受信手段によって受信された前記他車位置情報、及び前記他車動作状態情報に基づいて、前記自車が走行する直線路において対向車である他車との前記直線路における衝突の直線路衝突危険度を算出し、
前記推定手段は、前記受信手段によって受信された該他車のドライバ動作状態情報に基づいて、該他車が前記直線路の対向車線をはみ出す危険があるか否かを推定し、
前記判定手段は、前記推定手段によって該他車が対向車線をはみ出す危険がないと推定されたとき、前記算出手段によって算出された直線路衝突危険度及び予め定められた直線路衝突しきい値に基づいて、該他車との衝突の危険があるか否かを判定し、
前記推定手段によって該他車が対向車線をはみ出す危険があると推定されたとき、前記算出手段によって算出された直線路衝突危険度及び予め定められた直線路衝突しきい値の少なくとも一方を変更して、該他車との衝突の危険があるか否かを判定する請求項1又は2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記自車が進路変更するとき、前記自車位置情報、前記自車動作状態情報、前記受信手段によって受信された前記他車位置情報、及び前記他車動作状態情報に基づいて、前記自車の後側方車であって、進路変更先の車線を走行する他車との前記進路変更先の車線における衝突の進路変更時衝突危険度を算出し、
前記推定手段は、前記受信手段によって受信された該他車のドライバ動作状態情報に基づいて、該他車のドライバが前記自車を認知しているか否かを推定すると共に、該他車のドライバが合流を許可しているか否かを推定し、
前記判定手段は、前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していると推定されたとき、前記算出手段によって算出された進路変更時衝突危険度及び予め定められた進路変更時衝突しきい値に基づいて、該他車との衝突の危険があるか否かを判定し、
前記推定手段によって該他車のドライバが前記自車を認知していないと推定されたとき、又は、該他車のドライバが合流を許可していると推定されたとき、前記算出手段によって算出された進路変更時衝突危険度及び予め定められた進路変更時衝突しきい値の少なくとも一方を変更して、該他車との衝突の危険があるか否かを判定する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記受信手段は、前記他車のドライバ運転危険度情報を更に受信し、
受信手段によって受信された前記ドライバ運転危険度情報に基づいて、ドライバに危険運転の傾向があるか否かを推定する運転傾向推定手段を更に含み、
前記判定手段は、前記運転傾向推定手段によって該他車のドライバに危険運転の傾向があると推定されたとき、前記算出手段によって算出された危険度及び前記予め定められたしきい値の少なくとも一方を変更して、該他車との衝突の危険があるか否かを判定する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記判定手段によって、該他車との衝突の危険があると判定されたとき、警告情報を提示するか、又は該他車から回避するように前記自車を制御する制御手段を更に含む請求項1〜請求項5の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記判定手段によって、該他車との衝突の危険があると判定されたとき、警告信号を他車へ送信する警告送信手段を更に含む請求項1〜請求項6の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記ドライバ動作情報は、前記ドライバの顔の向きを示す顔向き情報、前記ドライバの視線の方向を示す視線情報、アクセル又はブレーキを操作するための前記ドライバの動作状態を示す操作状態情報の少なくとも一つを含む請求項1〜請求項7の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項記載の運転支援装置と、
前記他車の位置を検出して前記他車位置情報を出力する他車側位置検出手段、
前記他車の動作状態を検出して前記他車動作状態情報を出力する他車側動作状態検出手段、
前記他車のドライバの動作状態を検出して前記ドライバ動作状態情報を出力するドライバ動作状態検出手段、及び
前記他車位置情報、前記他車動作状態情報、及び前記ドライバ動作状態情報を送信する送信手段
を含む他車側運転支援装置と、
を含む運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−241729(P2007−241729A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64387(P2006−64387)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】