説明

運転支援装置

【課題】本発明は、運転支援に必要な車両のみを検出する運転支援装置を提供することを課題とする。
【解決手段】車両が横断又は合流する際に横断する位置又は合流する位置における運転支援を行う運転支援装置であって、一方の車両が横断又は合流する際に横断又は合流される車線を走行する他方の車両を検出する検出手段と、横断又は合流される車線において一方の車両が横断又は合流する位置から離れた位置で他方の車両が直進できない状態であるか否かを検知する検知手段と、検知手段で他方の車両が直進できない状態であることを検知した場合、他方の車両を検出する検出範囲を縮小する検出範囲縮小手段とを備えることを特徴とし、検出範囲縮小手段は、検出範囲を一方の車両が横断又は合流する位置から直進できない位置までに縮小すると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の運転負荷を軽減するために、出会い頭衝突防止支援、右直衝突防止支援などの様々な運転支援装置が開発されている。例えば、特許文献1に記載の右直衝突防止支援では、路側に設置された車両検知センサによって対向直進車を検知し、路側アンテナによってその対向直進車の位置情報や車速情報をシステム搭載車に送信し、システム搭載車ではこの受信した情報に基づいて対向直進車の支援対象交差点への到達予測時間を算出し、運転者に対してその到達予測時間を報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−171152号公報
【特許文献2】特開2004−171459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
右直衝突防止支援における車両検知センサによる対向直進車の検知エリアは、対向直進車が減速せずに支援対象交差点まで走行するものとして、一定のエリア(例えば、システム搭載車側での情報提供に対する反応に要する時間に応じた空走距離と路側からのデータ送信に要する時間に応じた空走距離)が設定されている。そのため、図4に示すように、支援対象交差点C1とその1つ先の交差点C2との間の距離が短い場合、検知エリアDA内にその1つ先の交差点C2が含まれる。その1つ先の交差点C2から先にも対向直進車OV2が存在する場合、その対向直進車OV2も検知され、その対向直進車OV2の情報もシステム搭載車MVに送信される。
【0005】
しかし、1つ先の交差点C2の信号機S2が赤信号や黄信号の場合、対向直進車OV2は減速していたりあるいは停止しているので、支援対象交差点C1における右直衝突防止支援ではその対向直進車OV2の情報は必要ない。この場合、路側では不要な対向直進車OV2を検知するとともにシステム搭載車に不要な情報を送信し、システム搭載車側ではその対向直進車OV2についての不要な処理を行うとともに不要な情報を運転者に提供する。
【0006】
そこで、本発明は、運転支援に必要な車両のみを検出する運転支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る運転支援装置は、車両が横断又は合流する際に横断する位置又は合流する位置における運転支援を行う運転支援装置であって、一方の車両が横断又は合流する際に横断又は合流される車線を走行する他方の車両を検出する検出手段と、横断又は合流される車線において一方の車両が横断又は合流する位置から離れた位置で他方の車両が直進できない状態であるか否かを検知する検知手段と、検知手段で他方の車両が直進できない状態であることを検知した場合、他方の車両を検出する検出範囲を縮小する検出範囲縮小手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この運転支援装置では、一方の車両が任意の車線を横断する場合又は任意の車線に合流する場合に、横断する位置又は合流する位置において横断される車線又は合流される車線を走行してきた他方の車両との関係で運転支援を行うために、その車線を走行してきた他方の車両を検出する。そのために、運転支援装置では、検出手段により、一方の車両が横断又は合流する車線を走行している他方の車両を検出する。特に、運転支援装置では、検知手段により、その車線において一方の車両が横断又は合流する位置から離れた位置で他方の車両が直進できない状態であるか否かを検知する。他方の車両が直進できないような状態の場合、その他方の車両は一方の車両が横断又は合流する位置まで到達することができないので、その他方の車両は横断する位置又は合流する位置での運転支援に関係のない車両となる。そこで、運転支援装置では、他方の車両が直進できない状態であることを検知した場合には、検出範囲縮小手段によって他方の車両の検出範囲を縮小し、その他方の車両を検出対象外する。このように、運転支援装置では、他方の車両が直進できないような状態のときには検出範囲を縮小することにより、運転支援に必要な車両のみを検出することができる。なお、「他方の車両が直進」における「直進」とは、他方の車両が走行中の道路(車線)を道なりに進むことであり、道路が道なりにカーブしているカーブ路などを道なりに進むことも含む。
【0009】
本発明の上記運転支援装置では、検出範囲縮小手段は、検出範囲を一方の車両が横断又は合流する位置から直進できない位置までに縮小すると好適である。
【0010】
この運転支援装置では、検出範囲縮小手段により検出範囲を一方の車両が横断又は合流する位置から他方の車両が直進できない位置までに縮小することにより、直進できない位置より向こう側に存在する運転支援に不要な他方の車両を検出対象外とするとともに運転支援に必要な車両を検出対象とすることができ、最適な検出範囲を設定できる。
【0011】
本発明の上記運転支援装置では、検知手段は、車線の信号機が直進禁止表示(例えば、赤信号点灯、直進の矢印信号が非点灯)又は踏切が閉状態(例えば、遮断機が下りている状態)であることを検知する構成とする。
【0012】
本発明の上記運転支援装置では、一方の車両が右折するか否かを判定する判定手段を備え、判定手段で一方の車両が右折すると判定した場合に運転支援を行う構成としてもよい。
【0013】
この運転支援装置では、判定手段により一方の車両が右折すると判定すると、一方の車両が右折して任意の車線を横断するときの運転支援を行う。この際、運転支援装置では、一方の車両に横断される車線における検出範囲内に存在する車両を検出し、その検出した車両の情報を利用して運転支援を行う。
【0014】
本発明の上記運転支援装置では、一方の車両が左折するか否かを判定する判定手段を備え、判定手段で一方の車両が左折すると判定した場合に運転支援を行う構成としてもよい。
【0015】
この運転支援装置では、判定手段により一方の車両が左折すると判定すると、一方の車両が左折して任意の車線に合流するときの運転支援を行う。この際、運転支援装置では、一方の車両に合流される車線における検出範囲内に存在する車両を検出し、その検出した車両の情報を利用して運転支援を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両が直進できないような状態のときには検出範囲を縮小することにより、運転支援に必要な車両のみを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係るインフラシステムと右直衝突防止システムからなる運転支援システムの構成図である。
【図2】対向直進車の検知エリアを示す支援対象交差点と1つ先の交差点を含む道路状況の一例である。
【図3】図1のインフラシステムの路側情報処理部での処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】従来の対向直進車の検知エリアを示す支援対象交差点と1つ先の交差点を含む道路状況の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、路側に設置されるインフラシステムと車両に搭載される右直衝突防止システムからなる運転支援システムに適用する。本実施の形態に係る運転支援システムは、路車間通信を利用したインフラ協調システムであり、インフラシステムから右直衝突防止システムに対向直進車の情報を提供し、右直衝突防止システムでその対向直進車の情報を利用して右直衝突防止支援を行う。
【0020】
図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る運転支援装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係るインフラシステムと右直衝突防止システムからなる運転支援システムの構成図である。図2は、対向直進車の検知エリアを示す支援対象交差点と1つ先の交差点を含む道路状況の一例である。
【0021】
運転支援システム1は、各交差点に設けられるインフラシステム2と各車両に搭載される右直衝突防止システム3から構成される。インフラシステム2は、交差点の方向に向かって走行する車両を検知する機能を有するとともに、システム搭載車と路車間通信する機能を有している。右直衝突防止システム3は、インフラシステム2と路車間通信する機能を有するとともに、右直衝突防止支援機能を有している。図2には、インフラシステム2が設けられている支援対象交差点C1周辺の道路状況の一例を示しており、支援対象交差点C1には右直衝突防止システム3を搭載したシステム搭載車MVが存在するとともに、システム搭載車MVが横断する対向車線OL,OL上には車両OV1,OV2が存在する。
【0022】
インフラシステム2について説明する。インフラシステム2は、車両検知センサ20、信号機21、路車間通信装置22、制御装置23を備えており、制御装置23には路側情報処理部23aが構成される。本実施の形態では、車両検知センサ20が特許請求の範囲に記載する検出手段に相当し、信号機21及び路側情報処理部23aが特許請求の範囲に記載する検知手段に相当し、路側情報処理部23aが特許請求の範囲に記載する検出範囲縮小手段に相当する。
【0023】
車両検知センサ20は、インフラシステム2が設置される支援対象交差点に繋がる道路上を支援対象交差点に向かって走行する車両を検知するセンサである。例えば、4本の道路が繋がる支援対象交差点(すなわち、2本の道路が交差する支援対象交差点)の場合、4方向から支援対象交差点に向かって車両が走行するので、各方向からの車両を検知するための車両検知センサ20がそれぞれ設けられている。車両検知センサ20の検知方法としては、例えば、カメラで支援対象交差点から所定範囲内の道路上を撮像し、その撮像画像からパターンマッチングなどによって車両を抽出し、その抽出した車両の情報(位置、車速など)を算出する。車両検知センサ20では、一定時間毎に、支援対象交差点に繋がる道路上の車両を検出し、車両を検出できた場合にはその車両の情報を算出し、その車両の情報を制御装置23に送信する。なお、車両検知センサ20としてのセンシング可能なエリアはカメラの性能などによって決まるが、車両検知センサ20の車両検知では、インフラシステム2の制御装置23で設定されている通常の検知エリア内に存在する車両を検知する。図2に示す例の場合、システム搭載車MVが走行してきた道路に対向する道路上の車両を検知する車両検知センサ20では、通常の検知エリアDA1内に存在する車両OV1,OV2を検知する。
【0024】
信号機21は、インフラシステム2が設置される支援対象交差点に繋がる道路(特に、システム搭載車が走行している道路に対向する道路)に存在する1つ先の信号機である。制御装置23と信号機21とは有線又は無線で通信可能であり、信号機21から制御装置23に信号機21の信号サイクル情報が情報更新毎に送信される。例えば、4本の道路が繋がる支援対象交差点の場合、支援対象交差点を中心として4箇所に信号機21が存在するので、各箇所の信号機21から信号サイクル情報が送信される。図2に示す例の場合、支援対象交差点が交差点C1であるので、その1つの先の交差点C2の信号機S2が信号機21に相当し、信号機S2から信号サイクル情報が送信される。
【0025】
なお、インフラシステム2が設置される支援対象交差点の信号機の信号サイクル情報については、情報更新毎に、制御装置23において信号サイクル情報が自動的に更新される。
【0026】
信号サイクル情報は、青信号、黄信号、赤信号の点灯サイクル(矢印信号を備える信号機の場合には矢印信号も含めた点灯サイクル)、各信号の点灯時間(秒数)、現在点灯している信号とその信号が点灯してからの経過時間などである。信号サイクル情報は、信号サイクルの2サイクル目までの情報を含む。ただし、感応式信号の場合には1サイクル目までが確定している情報であり、2サイクル目が未確定な情報であり、通常の信号の場合には2サイクル目までが確定している情報である。
【0027】
路車間通信装置22は、インフラシステム2が設置される支援対象交差点に繋がる道路上を支援対象交差点に向かって走行するシステム搭載車と路車間通信するための装置であり、例えば、光ビーコンである。路車間通信装置22は、支援対象交差点の所定距離手前の位置に設置される。例えば、4本の道路が繋がる支援対象交差点の場合、4方向から支援対象交差点に向かって車両が進入するので、各方向からのシステム搭載車と路車間通信するための路車間通信装置22がそれぞれ設けられている。路車間通信装置22は、アンテナや処理装置などを備えており、システム搭載車の路車間通信装置30と信号を送受信(少なくとも送信)する。信号を送信する場合、路車間通信装置22は、制御装置23からダウンリンク情報を受信すると、処理装置でそのダウンリンク情報を路車間通信用の信号に変調し、アンテナでその変調信号を各車線上のダウンリンクエリアに送信する。図2に示す例の場合、システム搭載車MVに対してダウンリンク情報の信号を送信する場合、路車間通信装置22ではシステム搭載車MVが走行してきた道路(車線ML,ML)において支援対象交差点C1の所定距離に手前で設置されており、システム搭載車MVでは各車線MLのダウンリンクエリアを通過しているときに信号を受信できる。
【0028】
ダウンリンク情報としては、VICS情報やインフラ情報がある。VICS情報は、全車線で共通の道路交通情報である。道路交通情報は、渋滞情報、交通規制情報、駐車場情報などがある。インフラ情報は、支援対象交差点までの道路線形情報、支援対象交差点の情報(位置情報、形状情報)、車線毎の信号サイクル情報、対向直進車の車両情報などがある。
【0029】
対向直進車は、システム搭載車が走行してきた車線に対向する車線を走行している車両であり、かつ、支援対象交差点を直進する車両である。したがって、システム搭載車が支援対象交差点を右折する際に、対向直進車の進路は支援対象交差点内でシステム搭載車の進路と交差するので、この対向直進車の情報(位置、車速など)を用いて衝突判定を行う。図2に示す例の場合、システム搭載車MVは、支援対象交差点C1において、車線ML,MLに対向する車線OL,OLを横断して右折する。その際、対向直進車は対向車線OL,OLを走行中の車両OV1,OV2となるので、右直の衝突判定には対向直進車OV1,OV2の情報が必要となる。但し、1つ先の交差点C2の信号機S2,S2が赤信号あるいは黄信号の場合、1つ先の交差点C2よりも向こう側に存在する対向直進車OV2は減速したりあるいは停止しているので、右直での衝突判定に対向直進車OV2の情報が必要なくなる。
【0030】
制御装置23は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[RandomAccess Memory]などからなる電子制御装置であり、インフラシステム2を統括制御する。制御装置23では、ROMに記憶されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって路側情報処理部23aが構成される。制御装置23では、一定時間毎に、VICSセンターからVICS情報を受信するとともに、車両検知センサ20や信号機21から各情報を受信する。そして、ECU23では、一定時間毎に、その各情報に基づいて路側情報処理部23aでの処理を行い、ダウンリンク情報を路車間通信装置22に送信する。この際、制御装置23では、交差点に繋がる各道路についてそれぞれ処理を行っている。
【0031】
路側情報処理部23aでは、一定時間毎に、受信したVICS情報と、予め保持している支援対象交差点までの道路線形情報や支援対象交差点情報と、支援対象交差点の車線毎の信号サイクル情報と、対向直進車の車両情報などからなるダウンリンク情報を生成する。この際、対向直進車の車両情報については路側情報処理部23aで設定しており、この設定処理について以下で説明する。
【0032】
路側情報処理部23aでは、車両検知センサ20で車両を検知する通常の検知エリアを予め設定しており、例えば、システム搭載車側での路車間通信による情報提供に対する反応に要する時間に応じた車両の空走距離と路車間通信装置22からの送信に要する時間に応じた車両の空走距離とを加算した距離で検知エリアが設定される。図2に示す例の場合、対向車線OL,OLにおいて、符号DA1で示す区間が通常の検知エリアであり、符号SS1で示す検知開始地点から符号SEで示す検知終了地点(支援対象交差点C1の中心地点)までの間で車線OL,OLを走行している車両が検知対象の車両となる。
【0033】
路側情報処理部23aでは、車両検知センサ20から検知した車両の情報を受信すると、検知された車両の位置情報に基づいて通常の検知エリア内のどの位置に存在しているか(例えば、支援対象交差点までの距離)を算出する。
【0034】
路側情報処理部23aでは、一定時間毎に、信号機21から受信した信号サイクル情報に基づいて、支援対象交差点の1つ先の交差点で現在点灯している信号色(信号現示)を認識する。そして、路側情報処理部23aでは、1つ先の交差点での信号現示が青信号か否かを判定する。信号現示が青信号の場合(すなわち、対向直進車が1つ先の交差点を直進できる状態の場合)、路側情報処理部23aでは、車両検知センサ20で検知した全ての車両(すなわち、通常の検知エリア内に存在する車両)の情報を対向直進車の車両情報とする。一方、信号現示が青信号でない場合(すなわち、対向直進車が1つ先の交差点を直進できない状態の場合)、路側情報処理部23aでは、検知エリアを支援対象交差点の中心地点から1つ先の交差点における支援対象交差点側の端部地点までに縮小する。但し、通常の検知エリア内に1つ先の交差点が存在しない場合、検知エリアは通常の検知エリアのままとなる。そして、路側情報処理部23aでは、車両検知センサ20で検知した車両のうち縮小した検知エリア内に存在する車両の情報を対向直進車の車両情報とする。
【0035】
図2に示す例の場合、上記したように、対向車線OL,OLには通常の検知エリアDA1が設定されている。支援対象交差点C1の1つ先の交差点C2の信号機S2,S2の信号現示が青信号の場合、検知エリアとして通常の検知エリアDA1がそのまま使用されるので、通常の検知エリアDA1内に存在する車両OV1,OV2の情報が対向直進車の車両情報となる。信号機S2,S2の信号現示が赤信号又は黄信号の場合、交差点C2の支援対象交差点C1側の端部地点SS2を検知開始地点とする検知エリアDA2に縮小されるので、縮小した検知エリアDA2内に存在する車両OV1の情報だけが対向直進車の車両情報となり、排除エリアEA内に存在する車両OV2の情報は破棄される。
【0036】
なお、通常の検知エリア内に対向交差点の1つ先の交差点が含まれていない場合、路側情報処理部23aでは、1つ先の交差点の信号現示が青信号か否かの判定やその信号現示に応じた検知エリアの変更及び検知エリアに基づく対向直進車の車両情報の設定の処理を行わないようにしてもよい。また、この場合、1つ先の信号機から信号サイクル情報を受信しないようにしてもよい。
【0037】
右直衝突防止システム3について説明する。右直衝突防止システム3は、路車間通信装置30、GPS[Global PositioningSystem]受信装置31、報知装置32、ECU[Electronic Control Unit]33を備えており、ECU33に路車間通信情報処理部33a、自車情報処理部33b、右直衝突防止支援処理部33cが構成される。本実施の形態では、右直衝突防止支援処理部33cが特許請求の範囲に記載する判定手段に相当する。
【0038】
路車間通信装置30は、自車が走行する道路に設置されるインフラシステム2と路車間通信を行うための装置であり、例えば、光ビーコン用の通信装置である。路車間通信装置30は、アンテナや処理装置などを備えており、インフラシステム2の路車間通信装置22と信号を送受信(少なくとも、受信)する。信号を受信する場合、路車間通信装置30では、自車が各車線上のダウンリンクエリア内に進入すると、アンテナで路車間通信装置22からの信号を受信する。そして、路車間通信装置30では、処理装置でその受信した信号を復調してダウンリンク情報を取り出し、そのダウンリンク情報をECU33に送信する。
【0039】
GPS受信装置31は、GPS衛星からの信号を受信し、その信号に基づいて自車の情報を検出する装置である。GPS受信装置31は、GPSアンテナや処理装置などを備えている。GPS受信装置31では、GPSアンテナで各GPS衛星からのGPS信号を受信する。そして、GPS受信装置31では、処理装置でその各GPS信号を復調し、その復調した情報に基づいて自車の現在位置(緯度、経度)などを算出する。また、GPS受信装置31では、処理装置で現在位置の時間変化から自車の車速や進行方向を算出する。そして、GPS受信装置31では、自車の現在位置や車速などの自車の車両情報をECU33に送信する。なお、車両にナビゲーションシステムが搭載される場合、ナビゲーションシステムのGPS受信装置を共有するか、あるいは、ナビゲーションシステムから現在位置や車速などを取得する。
【0040】
報知装置32は、自車の運転者へ情報提供や注意喚起を行うための報知装置であり、例えば、スピーカ、ディスプレイである。報知装置32では、ECU33からの音声出力指令を受信すると、その音声出力指令に応じて音声を出力する。また、報知装置32では、ECU33からの画像表示指令を受信すると、その画像表示指令に示される画像を表示する。
【0041】
ECU33は、CPU、ROM、RAMなどからなる電子制御ユニットであり、右直衝突防止システム3を統括制御する。ECU33では、ROMに記憶されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって路車間通信情報処理部33a、自車情報処理部33b、右直衝突防止支援処理部33cが構成される。ECU33では、インフラシステム2の路車間通信装置22からの信号を受信する毎に路車間通信装置30からダウンリンク情報を受信するとともに、一定時間毎にGPS受信装置31から自車の車両情報を受信する。そして、ECU33では、その各情報に基づいて各部33a,33b,33cでの処理を行い、必要に応じて報知装置32に指令する。
【0042】
路車間通信情報処理部33aでは、路車間通信装置30からのダウンリンク情報から対向直進車の車両情報を取り出し、その車両情報に基づいて対向直進車が存在するか否かや対向直進車が存在する場合には各対向直進車についての支援対象交差点までの距離などを算出する。また、路車間通信情報処理部33aでは、ダウンリンク情報から支援対象交差点までの道路線形情報や支援対象交差点の情報を取り出す。また、路車間通信情報処理部33aでは、ダウンリンク情報から支援対象交差点の信号サイクル情報を取り出し、その信号サイクル情報に基づいて支援対象交差点の信号機が後何秒で赤信号になるのかなどを算出する。
【0043】
自車情報処理部33bでは、GPS受信装置31からの自車の車両情報から自車の現在位置や車速を取り出す。そして、自車情報処理部33bでは、自車の現在位置と車速及び支援対象交差点までの道路線形情報や支援対象交差点の情報に基づいて、自車が後何秒で支援対象交差点に到達するかなどを算出する。
【0044】
右直衝突防止支援処理部33cでは、支援対象交差点で自車が右折するか否かを判定する。自車が右折すると判定した場合、右直衝突防止支援処理部33cでは、路車間通信情報処理部33aで得られた対向直進車に関する情報と自車情報処理部33bで得られた自車に関する情報に基づいて、支援対象交差点において自車が右折するときに対向直進車と衝突する可能性があるか否かを判定する。対向直進車と衝突する可能性があると判定した場合、右直衝突防止支援処理部33cでは、運転者に対して対向直進車と衝突する可能性があることを注意喚起するための音声や画像を生成し、その音声出力指令及び画像表示指令を報知装置32に送信する。あるいは、自車が右折すると判定した場合、右直の衝突判定を行わずに、右直衝突防止支援処理部33cでは、対向直進車が存在する場合、運転者に対して対向直進車についての情報を提供するための音声や画像を生成し、その音声出力指令及び画像表示指令を報知装置32に送信する。
【0045】
図2に示す例の場合、システム搭載車MVは、支援対象交差点C1で右折する。支援対象交差点C1の1つ先の交差点C2が青信号の場合、通常の検知エリアDA1内の2台の車両OV1,OV2について衝突判定がそれぞれ行われ、少なくとも一方の車両と衝突する可能性がある場合には注意喚起が行われ、あるいは、通常の検知エリアDA1内の2台の車両OV1,OV2について情報が提供される。一方、支援対象交差点C1の1つ先の交差点C2が赤信号又は黄信号の場合、縮小した検知エリアDA2内の1台の車両OV1についてのみ衝突判定が行われ、車両OV1と衝突する可能性がある場合には注意喚起が行われ、あるいは、縮小した検知エリアDA2内の1台の車両OV1についてのみ情報が提供される。
【0046】
図1を参照して、運転支援システム1における動作について説明する。特に、インフラシステム2の制御装置23の路側情報処理部23aでの対向直進車の車両情報についての処理については図3のフローチャートに沿って説明する。
【0047】
インフラシステム2側について説明する。車両検知センサ20では、一定時間毎に、支援対象交差点に繋がる道路(対向車線)上の車両を検出し、検出できた車両の情報を制御装置23に送信している。その車両の情報を受信すると、制御装置23では、対向車線を走行している車両の情報(位置、車速など)を取得する(S1)。そして、制御装置23では、その車両が通常の検知エリア内のどの位置に存在しているか(支援対象交差点までの距離など)を認識する(S2)。
【0048】
また、制御装置23では、一定時間毎に、支援対象交差点から1つ先の交差点の信号機21から信号サイクル情報を受信する(S3)。そして、制御装置23では、その信号サイクル情報に基づいて1つ先の交差点の信号現示を認識し、1つ先の交差点の信号現示が青信号か否かを判定する(S4)。
【0049】
S4にて青信号と判定した場合、制御装置23では、車両検知センサ20で検知された全ての車両(すなわち、通常の検知エリア内に存在する車両)の情報を対向直進車の車両情報とし、その対向直進車の車両情報などを含むダウンリンク情報を生成し、そのダウンリンク情報を路車間通信装置22に送信する(S5)。そのダウンリンク情報を受信すると、路車間通信装置22では、そのダウンリンク情報を変調し、その変調した信号をダウンリンクエリアに送信する。
【0050】
S4にて青信号でないと判定した場合、制御装置23では、1つ先の交差点までに検知エリアを縮小する(S6)。そして、制御装置23では、車両検知センサ20で検知された車両のうち縮小した検知エリア内に存在する車両を選別する(S7)。さらに、制御装置23では、その選別した車両の情報を対向直進車の車両情報とし、その対向直進車の車両情報などを含むダウンリンク情報を路車間通信装置22に送信する(S8)。このダウンリンク情報を受信すると、路車間通信装置22では、そのダウンリンク情報を変調し、その変調した信号をダウンリンクエリアに送信する。
【0051】
右直衝突防止システム3側について説明する。右直衝突防止システム3を搭載した車両が支援対象交差点の手前に設定されているダウンリンクエリアを通過しているときに、路車間通信装置30では、ダウンリンクされている信号を受信し、その受信した信号を復調してダウンリンク情報を取り出し、そのダウンリンク情報をECU33に送信する。そのダウンリンク情報を受信すると、ECU33では、ダウンリンク情報から対向直進車の車両情報を取り出し、その車両情報に基づいて対向直進車が存在するか否かを判定し、対向直進車が存在する場合には各対向直進車についての支援対象交差点までの距離などを算出する。また、ECU33では、ダウンリンク情報から支援対象交差点までの道路線形情報や支援対象交差点の情報を取り出すとともに、ダウンリンク情報から支援対象交差点の信号サイクル情報を取り出し、その信号サイクル情報に基づいて支援対象交差点の信号機が後何秒で赤信号になるのかなどを算出する。
【0052】
GPS受信装置31では、一定時間毎に、各GPS衛星からのGPS信号をそれぞれ受信し、受信できているGPS信号に基づいて自車の現在位置、車速などを算出し、自車の車両情報をECU33に送信している。その自車の車両情報を受信すると、ECU33では、自車の車両情報から自車の現在位置や車速を取り出し、自車の現在位置と車速などに基づいて自車が後何秒で支援対象交差点に到達するかを算出する。
【0053】
ECU33では、一定時間毎に、自車が右折するか否かを判定する。自車が右折すると判定した場合、ECU33では、自車の情報、対向直進車の情報、支援対象交差点の情報に基づいて自車が右折するときに対向直進車と衝突する可能性があるか否かを判定し、衝突する可能性があると判定した場合には運転者に対して対向直進車と衝突する可能性があることを注意喚起するための音声や画像を生成し、その音声出力指令や画像表示指令を報知装置32に送信する。あるいは、自車が右折すると判定した場合、ECU33では、対向直進車が存在する場合には運転者に対して対向直進車についての情報を提供するための音声や画像を生成し、その音声出力指令や画像表示指令を報知装置32に送信する。この各指令を受信すると、報知装置32では、その音声出力指令に応じて音声を出力するとともに、その画像表示指令に示される画像を表示する。
【0054】
この運転支援システム1によれば、対向車線を走行している車両が支援対象交差点の1つ先の交差点で直進できないような状態のときには検知エリアを縮小することにより、右直衝突防止支援に必要な車両のみを検出することができる。その結果、支援に必要な対向直進車に対する情報の送受信や各種処理だけを行うことができ、通信負荷や処理負荷を軽減できるとともに、運転者に対しても必要な情報だけを提供することができる。
【0055】
さらに、運転支援システム1では、検知エリアを縮小する場合に支援対象交差点からその1つ先の交差点までに縮小することにより、支援に不要な1つ先の交差点から向こう側に存在する車両を検知対象外とするとともに支援に必要な車両を検知対象とすることができ、最適な検知エリアを設定できる。また、運転支援装置1では、支援対象交差点の1つ先の交差点の信号現示が青信号か否かを判定することにより、対向車線を走行している車両が直進できない状態か否かを高精度に判定することができる。
【0056】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0057】
例えば、本実施の形態では右直衝突防止支援に適用したが、システム搭載車が横断又は合流する際に横断又は合流される車線を走行する車両を検出し、その検出した車両の情報に基づいてシステム搭載車側の運転支援を行うものであれば、どのような運転支援にも適用可能であり、例えば、交差点を直進する際や合流点で合流する際の出会い頭衝突防止支援、検出した車両の情報の提供のみを行う運転支援などがある。ちなみに、交差点を直進する際の衝突防止支援の場合、システム搭載車は走行している道路に交差点で交差する道路(車線)を横断するので、検知エリアはその交差する道路の左右両側にそれぞれ設定される。この場合、判定手段によりシステム搭載車が車線を横断して直進すると判定すると、システム搭載車に横断される車線における左右両側の検出エリア内に存在する車両を検出し、その検出された車両の情報を利用して、システム搭載車が直進して車線を横断するときの運転支援を行う。また、合流点で合流する際の衝突防止支援の場合、システム搭載車は合流点で左折するので、検知エリアはその合流する道路の手前側に設定される。この場合、判定手段によりシステム搭載車が左折すると判定すると、システム搭載車に合流される車線における検出エリア内に存在する車両を検出し、その検出された車両の情報を利用して、システム搭載車が左折して車線に合流するときの運転支援を行う。
【0058】
また、本実施の形態では路側に設置されるインフラシステムに検出手段、検知手段、検出範囲縮小手段を備え、右直衝突防止システムに判定手段を備える構成としたが、インフラシステムに全ての手段を備える構成としてもよいし、車両側のシステムに全ての手段を備える構成としてもよいし、あるいは、インフラシステムに検出手段と検知手段を備え、車両側のシステムに検出範囲縮小手段と判定手段を備える構成としてもよいし、その他の構成でもよい。
【0059】
また、本実施の形態では衝突判定を行い、必要に応じて情報提供や注意喚起を行う運転支援としたが、必要に応じて車両制御まで行う運転支援など、様々な運転支援に適用可能である。
【0060】
また、本実施の形態ではインフラシステムでは車両検知を常時行っているが、右直衝突防止支援の場合にはシステム搭載車が交差点で右折すると判定したときのみに車両検知を行う構成としてもよいし、直進時の衝突防止支援の場合にはシステム搭載車が交差点を直進して横断すると判定したときのみに車両検知を行う構成としてもよいし、合流時の衝突防止支援の場合にはシステム搭載車が合流点を左折して合流すると判定したときのみに車両検知を行う構成としてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では支援対象交差点から1つ先の交差点の信号現示に応じて検知エリアを変更する構成としたが、支援対象交差点から1つ先の踏切での遮断機や警報機の状態に応じて検知エリアを変更してもよい。例えば、遮断機が下りている場合や警報機が鳴っている場合に支援対象交差点から踏切の手前までに検知エリアを縮小する。また、検知手段による他方の車両が直進できない状態か否かの検知対象としては信号機や踏切以外にも車両の通行が規制されるものであればよく、例えば、道路工事による通行止め、片側通行規制のための一時的な停止がある。
【0062】
また、本実施の形態ではインフラシステムが設置される支援対象交差点から1つ先の交差点の信号機の信号サイクル情報が制御装置に送信され、1つ先の交差点の信号現示に基づいて検知エリアを変更する構成としたが、その先の交差点も支援対象交差点に近い場合(つまり、通常の検知エリア内に2つ先の交差点、3つ先の交差点も存在する場合)、その各交差点からも信号サイクル情報が制御装置に送信され、それらの交差点の信号現示も加味して検知エリアを変更する。
【0063】
また、本実施の形態では検知エリアを縮小した場合でも車両検知センサのセンシング可能なエリア自体は変わらないが、検知エリアを縮小した場合には車両検知センサのセンシング可能なエリア自体を変えてもよい(カメラの光軸調整などして)。
【符号の説明】
【0064】
1…運転支援システム、2…インフラシステム、3…右直衝突防止システム、20…車両検知センサ、21…信号機、22…路車間通信装置、23…制御装置、23a…路側情報処理部、30…路車間通信装置、31…GPS受信装置、32…報知装置、33…ECU、33a…路車間通信情報処理部、33b…自車情報処理部、33c…右直衝突防止支援処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が横断又は合流する際に横断する位置又は合流する位置における運転支援を行う運転支援装置であって、
一方の車両が横断又は合流する際に横断又は合流される車線を走行する他方の車両を検出する検出手段と、
前記横断又は合流される車線において前記一方の車両が横断又は合流する位置から離れた位置で前記他方の車両が直進できない状態であるか否かを検知する検知手段と、
前記検知手段で他方の車両が直進できない状態であることを検知した場合、前記他方の車両を検出する検出範囲を縮小する検出範囲縮小手段と
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記検出範囲縮小手段は、前記検出範囲を前記一方の車両が横断又は合流する位置から前記直進できない位置までに縮小することを特徴とする請求項1に記載する運転支援装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記車線の信号機が直進禁止表示又は踏切が閉状態であることを検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する運転支援装置。
【請求項4】
前記一方の車両が右折するか否かを判定する判定手段を備え、
前記判定手段で前記一方の車両が右折すると判定した場合に運転支援を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載する運転支援装置。
【請求項5】
前記一方の車両が左折するか否かを判定する判定手段を備え、
前記判定手段で前記一方の車両が左折すると判定した場合に運転支援を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載する運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−267212(P2010−267212A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120017(P2009−120017)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】