説明

過酸化水素入り液体洗剤調合物

安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物が開示される。本組成物は、過酸化水素、過酸化水素安定剤または過酸化水素安定剤の混合物、陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、およびビルダーまたはビルダーの混合物を含む。本組成物は、均一な単相を維持し、活性酸素レベルを維持し、かつ、高レベルの洗浄性能を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤に関する。具体的には、本発明は、過酸化水素を含有する安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用洗濯漂白剤、消毒剤、硬表面クリーナー、および他の洗浄剤での次亜塩素酸塩溶液の使用に固有の欠点を避けるために、これらの製品の製造業者は、酸性の水性過酸化水素をベースとする代替品を開発してきた。過酸化水素は、その分解生成物が酸素および水であるので、毒物学的および環境上観点から一般に受け入れることができる。加えて、これらの洗浄剤はまた、繊維に安全で、色あせ防止でもある。
【0003】
金属イオンなどの、触媒活性物質によって引き起こされる過酸化水素の分解は、防止するのが極めて困難である。過酸化水素を含有する製品が有効であるためには、過酸化水素のかなりの割合が製造と使用との間に残存しなければならない。加えて、分解は酸素ガスを生成し、容器に過度の圧力をかけ、そして容器を貯蔵または配送中に破裂させる原因になり得る。かかる組成物の例は、例えば、コット(Kott)の米国特許第5,641,739号明細書、サイアラ(Scialla)の米国特許第5,559,090号明細書、モンチセロ(Monticello)の米国特許第6,106,774号明細書、およびカンダチル(Kandathil)の米国特許第4,238,192号明細書に与えられている。
【0004】
通常アルカリ性の環境が洗浄効率のために必要とされるので、過酸化水素含有洗浄剤の性能は、アルカリ性の製品を調合することによって改善することができる。しかしながら、アルカリ性の調合物の商業的使用は、貯蔵中に分解するアルカリ性過酸化水素の強い傾向によって妨げられてきた。加えて、典型的な貯蔵条件下で、分解は水酸化物イオンを生成する可能性もあり、それはpHを増加させ、こうして、分解速度をさらに増加させる。過酸化水素の過度の分解により、組成物の洗浄能力が失われる。
【0005】
液体洗剤組成物は、固体組成物よりも優れた幾つかの利点を提供する。例えば、液体組成物は、計量や分配するのがより容易である。さらに、液体組成物は、布上の非常に汚れた部分へ直接塗布するのに特に有用であり、その後に前処理された布は、通常の方法で洗濯するための水性浴に入れることができる。
【0006】
従って、均一な単相を維持し、活性酸素レベルを維持し、そして高レベルの洗浄性能を与える、過酸化水素を含有する水性の塩基性液体洗剤組成物に対する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、過酸化水素を含む安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物である。本液体洗剤組成物は均一な単相を維持し、活性酸素レベルを維持し、そして高レベルの洗浄性能を与える。本組成物は、
a)0.1重量%〜15重量%の過酸化水素、
b)約10重量ppm〜約1重量%のスズ酸塩安定剤、
c)少なくとも約10重量ppmのホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、
d)少なくとも約10重量ppmの芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物、
e)場合により、金属イオン封鎖剤または金属イオン封鎖剤の混合物、
f)0.1重量%〜60重量%の陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、
g)0.1重量%〜60重量%の非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、
e)0.1重量%〜60重量%のビルダーまたはビルダーの混合物、および
f)水
を含み、そしてここで、
ホスホン酸キレート剤、芳香族キレート剤、および金属イオン封鎖剤は合わせて、組成物の約20重量ppm〜10重量%を占め、
本組成物は約10ppm未満のピロリン酸塩を含み、
本組成物は7.0より大きいpHを有し、かつ、
本組成物が85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量は20%以下である。
【0008】
本液体洗剤組成物はまた、液体洗剤組成物の通常の成分である他の原料を含んでもよい。
【0009】
別の態様では発明は、本液体洗剤組成物を基材に塗布することによる洗浄方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】木綿布でのおよび木綿/ポリエステル布での実施例1の組成物の洗浄性能を示す。
【図2】実施例1の組成物と実施例3の組成物との洗浄性能の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
文脈が特に示唆しない限り、本明細書および特許請求の範囲では、用語、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ホスホン酸キレート剤、芳香族キレート剤、金属イオン封鎖剤、ビルダー、着色剤、蛍光増白剤、香料、および類似の用語はまた、かかる物質の混合物も含む。特に明記しない限り、全ての百分率は重量百分率であり、全ての温度は度摂氏(度セルシウス(Celsius))単位である。
【0012】
一態様では、本発明は、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物である。本組成物は、過酸化水素、スズ酸塩安定剤、ホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物、場合により、金属イオン封鎖剤または金属イオン封鎖剤の混合物、陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、およびビルダーまたはビルダーの混合物を含む。本明細書で用いるところでは、用語「金属イオン封鎖剤」は、本明細書に記載される芳香族キレート剤およびホスホン酸キレート剤を含まない。本組成物がアンモニア・ベースの組成物と相性が良くないことを除いて、キレート剤の通常の原料である他の物質もまた存在してもよい。水が組成物の残りを占める。典型的には、有機溶媒も水以外の無機溶媒も、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物に全く必要ではないかまたは存在しない。
【0013】
原料は全て、第一鉄イオン、第二鉄イオン、第二銅イオン、第一銅イオン、マンガンイオン、および類似の遷移金属イオンなどの、過酸化水素の分解を触媒するであろう金属イオンを含んではならない。原料はまた、過酸化水素と反応するであろう有機物質および無機物質の両方を含んではならない。洗浄剤に有用な原料は、例えば、それらの開示が全て参照により本明細書に援用される、ロゼル(Roselle)の米国特許第5,244,593号明細書、ゴーゼリンク(Gosselink)の米国特許第4,702,857号明細書、ワイズ(Wise)の米国特許第4,166,039号明細書、ラフリン(Laughlin)の米国特許第3,929,678号明細書、ヘルトビックス(Heltovics)の米国特許第6,472,364号明細書、およびカセル(Casell)の米国特許第7,091,171号明細書に開示されている。
【0014】
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、約10ppm未満のピロリン酸塩、典型的には1ppm未満のピロリン酸塩を含む。それは、少なくとも7.0、典型的には7.0より大きい、好ましくは約8.0〜約10.5のpHを有する。
【0015】
過酸化水素
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、約0.1重量%〜約15重量%、典型的には約1重量%〜約10重量%、より典型的には約2重量%〜約8重量%、さらにより典型的には約3重量%〜約5重量%の過酸化水素を典型的に含む。過酸化水素(H22)は商業的に入手可能であり、その製造は多くの特許および刊行物に記載されてきた。アントラキノン法(自動酸化法またはリードル−プフライデラー(Riedl−Pfleiderer)法とも呼ばれる)は、例えば、リードルの米国特許第2,158,525号明細書に、そしてカーク−オスマー化学技術事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第3版、第13巻、New York、Wiley社、1981年、15−22ページに記載されている。
【0016】
過酸化水素は、3成分:スズ酸塩安定剤、ホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、および芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物で構成された安定剤システムによって安定化される。安定化された塩基性の水性過酸化水素は、その開示が参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2005/0226800 A1号明細書に記載されており、安定化された濃厚過酸化水素含有システムは、その開示が参照により本明細書に援用される、ワン(Wang)の米国特許第7,045,493号明細書に記載されている。
【0017】
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物はスズ酸塩安定剤を含む。このスズ酸塩安定剤は、硫酸スズ、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3・3(H2O))、二塩化スズ、または四塩化スズなどの、スズ化合物の加水分解からその場形成されてもよい。スズ酸塩安定剤はコロイド状の酸化第二スズであると考えられるが、それは典型的にはコロイド状スズ酸ナトリウムと言われる。
【0018】
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、少なくとも1つのホスホン酸キレート剤を含む。ホスホン酸キレート剤には、例えば、式中、R1およびR2がそれぞれ水素である、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(ATMP)(デクエスト(DEQUEST)(登録商標)2000、ソルーシア、セントルイス、ミズーリ州、米国(Solutia,St.Louis,MO,USA));ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPA)(デクエスト(登録商標)2066);ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(デクエスト(登録商標)2054);ビスヘキサメチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(デクエスト(登録商標)2090)などの、一般構造N(CR12PO323(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して水素または1〜4個の炭素原子のアルキル基である)の化合物;ならびに1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)(デクエスト(登録商標)2010)(C(CH3)(PO322OH)などの、一般構造C(R3)(PO322OH(式中、R3は水素か1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)の化合物が含まれる。好ましいリンベースのキレート剤には、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が含まれる。
【0019】
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、少なくとも1つの芳香族キレート剤を含む。この芳香族構造物は、ピリジンおよびキノリンなどの複素芳香環だけでなく、ベンゼンまたはナフタレン環などの、炭素環芳香環を含む。この安定剤はまた、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスホネート、またはスルホネートなどの、キレート基を含有するべきである。芳香族キレート剤は、例えば、サリチル酸;3−メチルサリチル酸,4−メチルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、6−メチルサリチル酸、3,5−ジメチルサリチル酸、3−エチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−メトキシサリチル酸、4−メトキシサリチル酸、5−メトキシサリチル酸、6−メトキシサリチル酸、4−エトキシサリチル酸、5−エトキシサリチル酸、2−クロロサリチル酸、3−クロロサリチル酸、4−クロロサリチル酸、5−クロロサリチル酸、3,5−ジクロロサリチル酸、4−フルオロサリチル酸、5−フルオロサリチル酸、6−フルオロサリチル酸などの、置換サリチル酸;またはそれらの混合物であってもよい。芳香族キレート剤は、例えば、8−ヒドロキシ−キノリン;5−メチル−8−ヒドロキシ−キノリン、5−メトキシ−8−ヒドロキシ−キノリン、5−クロロ−8−ヒドロキシ−キノリン、5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシ−キノリン、8−ヒドロキシ−キノリン−5−スルホン酸などの、置換8−ヒドロキシ−キノリン、またはそれらの混合物であってもよい。芳香族キレート剤は、例えば、ピコリン酸(2−ピリジンカルボン酸);ジピコリン酸(2,6−ピリジンジカルボン酸);6−ヒドロキシ−ピコリン酸などの、ピリジン−2−カルボン酸;3−メチル−6−ヒドロキシ−ピコリン酸、3−メトキシ−6−ヒドロキシ−ピコリン酸、3−クロロ−6−ヒドロキシ−ピコリン酸、3,5−ジクロロ−6−ヒドロキシ−ピコリン酸などの、置換6−ヒドロキシ−ピコリン酸;またはそれらの混合物であってもよい。好ましい芳香族キレート剤には、サリチル酸、6−ヒドロキシ−ピコリン酸、および8−ヒドロキシ−キノリンが含まれる。
【化1】

【0020】
当業者に明らかであろうように、塩基性溶液中でこれらの成分の1つ以上は、その相当する陰イオンとしてか、またはこの成分とその相当する陰イオンとの平衡混合物として存在してもよい。これらの成分の陰イオンおよびこれらの成分とそれらの相当する陰イオンとの混合物は、これらの成分のそれぞれの定義の中に含められ、本特許請求の範囲内にある。
【0021】
過酸化水素安定化に普通に使用される、ピロリン酸塩は実際にはアルカリ性条件下で過酸化物を不安定化させることが分かった。それ故、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は好ましくはピロリン酸塩を含まない。しかしながら、当業者に明らかであろうように、低レベルのピロリン酸塩は、製造業者によって濃過酸化水素に添加されたかもしれない。この低レベルのピロリン酸塩は、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物が調製されるときに濃過酸化水素中に存在するであろう。しかしながら、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物が調製されるときに、追加のピロリン酸塩は全く加えられない。安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は好ましくはいかなるピロリン酸塩も含有しないが、10ppm未満、好ましくは1ppm未満のピロリン酸塩は存在してもよい。
【0022】
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物で過酸化水素を安定化させるために、本組成物は、約10ppm〜約1%、好ましくは約15ppm〜約2500ppm(0.25%)、より好ましくは約20ppm〜約1000ppm(0.1%)、さらにより好ましくは約50ppm〜約500ppmのスズ酸塩安定剤を含む。本組成物は、約10ppm〜約1%、好ましくは約15ppm〜約2500ppm(0.25%)、より好ましくは約20ppm〜約1000ppm(0.1%)、さらにより好ましくは約30ppm〜約500ppmのホスホン酸キレート剤または、2つ以上のホスホン酸キレート剤が使用される場合には、ホスホン酸キレート剤の混合物を含む。本組成物は、約10ppm〜約1%、好ましくは約15ppm〜約2500ppm(0.25%)、より好ましくは約20ppm〜約1000ppm(0.1%)の芳香族キレート剤または、2つ以上のキレート剤が使用される場合には、キレート剤の混合物を含む。一実施態様では、本組成物は約30ppm〜約300ppm、典型的には40ppm〜200ppmの3成分のそれぞれを含む。
【0023】
典型的には、これらの3成分のそれぞれについての上限は、経済性によっておよび必要とされる安定化の程度によって決定されるであろう。しかしながら、下に記載されるように、これらの物質は金属イオン封鎖剤として働くことができるので、過酸化水素の安定化のために必要とされるものより高い濃度のキレート剤が安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物中に存在してもよい。しかしながら、本明細書で用いるところでは、用語「金属イオン封鎖剤」は、芳香族キレート剤およびホスホン酸キレート剤を含まない。
【0024】
金属イオン封鎖剤
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、鉄、マンガン、および銅陽イオンなどのイオンだけでなく、カルシウム陽イオンおよびマグネシウム陽イオンなどのイオンを封鎖するために金属イオン封鎖剤または金属イオン封鎖剤の混合物を含んでもよい。典型的な金属イオン封鎖剤には、例えば、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、エチレンジアミン−N,N’−ジグルタミン酸、2−ヒドロキシプロピレンジアミン−N,N’−ジコハク酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DETPA)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、エタノールジグリシンなどのポリアミノカルボン酸、および2−ヒドロキシエチル二酢酸またはグリセリルイミノ二酢酸などのイミノ二酢酸誘導体が含まれる。
【0025】
上記の芳香族キレート剤およびホスホン酸キレート剤はまた、金属イオン封鎖剤として使用することができるので、組成物中に存在するこれらの化合物の量は、過酸化水素の安定化のために必要とされる量より多くてもよい。しかしながら、本明細書で用いるところでは、用語「金属イオン封鎖剤」は、上記の芳香族キレート剤およびホスホン酸キレート剤を含まない。安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物中に存在する1)ホスホン酸キレート剤、2)芳香族キレート剤、および3)金属イオン封鎖剤の全量は、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物の重量を基準として、約20ppm〜約10.0重量%、好ましくは30ppm〜7.5重量%、より好ましくは40ppm〜5.0重量%、最も好ましくは80ppm〜2.5重量%である。
【0026】
陰イオン性界面活性剤
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、約0.1重量%〜約60重量%、好ましくは約1重量%〜約30重量%、より好ましくは約1重量%〜約20重量%の陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物を含む。陰イオン性界面活性剤は当業者に周知である。典型的な陰イオン性界面活性剤には、C8〜C12アルキルベンゼンスルホネート、C12〜C16アルカンスルホネート、C12〜C16アルキルサルフェート、C12〜C16アルキルスルホスクシネート、および上記のものなどの、エトキシル化およびプロキシル化アルコールのサルフェートなどの、サルフェートおよびスルホネート塩が含まれる。典型的な陰イオン性界面活性剤には、例えば、セチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが含まれる。ラウリル(ドデシル)硫酸ナトリウム(SLS)が洗浄剤に普通に使用される。
【0027】
非イオン性界面活性剤
安定化された塩基性の水性過酸化水素は、約0.1重量%〜60重量%、好ましくは約1重量%〜約30重量%、より好ましくは約1重量%〜約20重量%の非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤の混合物を含む。非イオン性界面活性剤は当業者に周知である。
【0028】
非イオン性界面活性剤は典型的には、長鎖脂肪族アルコールなどの、疎水性の有機脂肪族化合物と、親水性エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの縮合生成物である。生じるポリエーテル鎖の長さは、疎水性と親水性との所望のバランスを達成するために調節することができる。
【0029】
非イオン性界面活性剤は、例えば、参照により本明細書に援用される、ワイズの米国特許第4,166,039号明細書、12列、47行〜15列、23行に開示されている。非イオン性界面活性剤には、例えば、アルコールのモル当たり2〜100モルのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドでエトキシル化された、プロポキシル化された、およびエトキシル化/プロポキシル化されたアルコール、特にC10~20アルコール、特に直鎖または分岐鎖立体配置で約8〜18個の炭素原子を含有する第一級アルコールの約5〜30モルのエチレンオキシドでのエトキシレート、例えば、ドデシルアルコール、ウンデシルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、またはミリスチルアルコールのエトキシレート;直鎖または分岐鎖立体配置で8〜18個の炭素原子を含有する第二級脂肪族アルコールの5〜30モルのエチレンオキシドでのエトキシレート;約8〜20個の炭素原子を含有する脂肪族アルコールとエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドとの縮合物;ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキシド;エトキシル化ヒマシ油;エトキシル化水素化ヒマシ油;エトキシル化ココナツ油;エトキシル化ラノリン;エトキシル化トールオイル;エトキシル化獣脂アルコール;ならびにソルビタンエステルのエトキシレートが含まれる。
【0030】
ビルダー
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、約0.1重量%〜約60重量%、好ましくは約1重量%〜約30重量%、より好ましくは約1重量%〜約20重量%のビルダーまたはビルダーの混合物を含む。ビルダーは典型的には、界面活性剤の洗浄作用を増大させるために加えられる。本組成物に使用されてもよいビルダーには、例えば、ゼオライト;シリケート;炭酸ナトリウム;グリコール酸;クエン酸、酒石酸、乳酸、およびそれらの水溶性塩などの、ポリ(カルボン酸)が含まれる。ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、およびトリポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩は、環境上の理由から好ましくない。さらに、ピロリン酸塩は塩基性過酸化水素を不安定化させることが分かり、本組成物に使用されるべきではない。安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物で使用するための典型的なビルダーはクエン酸である。
【0031】
他の原料
水性過酸化水素溶液は典型的には酸性であるので、所望のpHが達成されるまで水性水酸化ナトリウムまたは水性水酸化カリウムなどの、塩基を組成物に加えることが必要である。水性水酸化ナトリウムが好ましい。安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、7.0に等しいかまたはそれより大きい、好適には7.0より大きい、典型的には約8.0〜約10.5、より典型的には約8.0〜約10.0、好ましくは約8.0〜約9.5のpHの単相液体である。ホウ酸塩バッファーなどの、バッファーがpHを所望の値に維持するために含められてよいが、これは典型的には必要ではない。カルボン酸、特にクエン酸などのポリカルボン酸がビルダーとして使用されるとき、それはまたバッファーとしても機能するであろう。
【0032】
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物はまた、各原料が安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物の他の原料と相性が良く、かつ、この原料の存在が安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物の特性、特に過酸化水素の安定性に悪影響を及ぼさないという条件で、洗剤組成物の通常の原料である他の物質を含んでもよい。例えば、アンモニウム塩は過酸化水素の安定性に悪影響を及ぼすことが分かった。
【0033】
各追加原料は、通常の形態の安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物を変性するために使用され、有効量で、すなわち、組成物の特性に悪影響を及ぼすことなく所望の効果を達成するために必要とされる量で存在する。当業者に周知である、他の通常の原料には、例えば、陽イオン性界面活性剤、双性イオン性(両性)界面活性剤;芳香物および香料;蛍光増白剤(光学増白剤または光沢剤);汚れ除去剤;抗再汚染剤;染料および他の着色剤;布軟化組成物;静電気制御剤;ジメチルポリシロキサンなどの、石鹸泡抑制剤;ならびに殺菌剤が含まれる。安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、蛍光増白剤または蛍光増白剤の混合物を、典型的には、存在するときに、約0.1重量%〜1.0重量%で含んでもよい。安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、芳香物および/または香料を、典型的には、存在するときに、組成物の約0.03重量%〜約0.5重量%で含んでもよい。安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルエチルセルロースなどの、抗再汚染剤を、典型的には、存在するときに、組成物の約0.5重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.75重量%〜約8重量%、最も好ましくは約1重量%〜約6重量%で含んでもよい。
【0034】
他の原料が全て計上された後、水は、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物の残りを占める。水混和性有機溶媒などの、他の溶媒は必要ではない。他の原料全てのように、水は、第一鉄イオン、第二鉄イオン、第二銅イオン、第一銅イオン、マンガンイオン、および類似の遷移金属イオンなどの、過酸化水素の分解を触媒するであろう金属イオンを含んではならない。水はまた、過酸化水素によって酸化されるであろう有機物質を含んではならない。水、および他の原料はまた、塩素(Cl2)、次亜塩素酸(HOCl)および次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)などの、過酸化水素と反応するであろう無機物質を含んではならない。蒸留水または脱イオン水が好ましい。
【0035】
活性酸素損失
活性酸素損失は、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物を85±1℃オーブン中で24時間加熱することによって測定される。サンプル中の過酸化物濃度は、例えば、過マンガン酸塩滴定法によって加熱前後に測定される。活性酸素損失(A.O.損失)は、
【数1】

によって計算される。
式中、[H22開始時は加熱前の過酸化水素濃度であり、[H22終了時は加熱後の過酸化水素濃度である。
【0036】
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、85±1℃オーブン中で24時間加熱した後に20%未満、典型的には15%未満、より典型的には12%未満のA.O.損失を有する。好ましくは、A.O.損失は10%未満、より好ましくは8%未満、さらにより好ましくは5%未満である。
【0037】
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物の調製
安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、原料を一緒に加え、そして典型的にはいかなる外部加熱もなしに、混合することによって調製することができる。混合する上で特定の順番は不要だが、過酸化水素は一般的に最後に加えられる。
【0038】
あるいはまた、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、3つの安定剤のそれぞれを水性過酸化水素溶液に、それが組成物に加えられる前に加えることによって調製されてもよい。当業者に明らかであろうように、組成物へ加える前の過酸化水素のおよび安定剤のそれぞれの濃度は、安定化過酸化水素溶液が他の原料によって希釈されるので、最終の安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物で望まれるものより高くなければならない。過酸化水素および適切な量の3つの安定剤を含む商業的に入手可能な安定化過酸化水素組成物もまた使用されてもよい。
【0039】
工業用途
本発明の過酸化水素を含有する安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物は、基材用の、特に布用の洗浄剤として使用されてもよい。それらは、洗濯の最初から最後までの洗浄剤および前処理洗浄剤の両方として使用される。前処理洗浄剤として使用されるとき、有効量の本組成物が多くの方法のいずれかによって布に塗布される。本組成物は、ポンプをはじめとする機械吹き付け装置かエアゾルスプレーかのどちらかを用いて布上へ吹き付けられてもよいし、または布上へまき散らされても注がれてもよい。激しく汚れている場合には布全体布に、または特別の前処理を必要とするそれらの部分にだけに前処理を行うことができる。その後、布は、安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物または任意の通常の洗剤もしくは石鹸を使用する任意の通常の方法で洗浄されてもよい。
【実施例】
【0040】
本発明の有利な特性は、本発明を例示するが限定しない、以下の実施例を参照することにより観察することができる。

【0041】
実施例1
本実施例は、本発明の安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物の調製および評価を例示する。次の組成物を調製した:カルソフト(登録商標)LAS99、3重量%;カルソフト(登録商標)SLS30、2重量%;カルソフト(登録商標)AOS40、3重量%;トマドール(登録商標)1−9、6重量%;DTPA、0.5重量%;50%過酸化水素、8重量%(洗剤中での過酸化水素濃度−4重量%);クエン酸、4重量%;スズ酸塩、約90ppm;デクエスト(登録商標)2010、約45ppm;サリチル酸、約50ppm;組成物のpHをpH8に調整するための水酸化ナトリウム、;および100%への水。
【0042】
本組成物の洗浄性能を、ASTM D−4265に従ってフル−スケール洗濯機およびフレッシュ染み布を用いて評価した。布材料としての木綿および木綿/ポリエステルからの12の普通の染みの除去を評価した。結果を図1に示す。
【0043】
実施例2
本実施例は、本発明の安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物の調製および評価を例示する。組成物は、蛍光増白剤をまた含むことを除いて、実施例1のものと同様であった。
【0044】
次の組成物を調製した:カルソフト(登録商標)LAS99、3重量%;カルソフト(登録商標)SLS30、2重量%;カルソフト(登録商標)AOS40、3重量%;トマドール(登録商標)1−9、6重量%;DTPA、0.5重量%;50%過酸化水素、8重量%(洗剤中での過酸化水素濃度、4重量%);クエン酸、4重量%;チノパルCBS−X、0.075重量%;スズ酸塩、約90ppm;デクエスト(登録商標)2010、約45ppm;サリチル酸、約50ppm;組成物のpHをpH8に調整するための水酸化ナトリウム、;および100%への水。
【0045】
実施例1および実施例2の組成物を85±1℃オーブン中で24時間加熱した。過酸化物濃度を加熱前後に過マンガン酸塩滴定法で試験した。活性酸素損失(A.O.損失)を次式のように計算する:
【数2】

【0046】
5%未満の活性酸素損失のいかなるサンプルも安定であると見なされる。
【0047】
結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
試験中に活性酸素の4%だけが失われた。組成物は、試験の全体にわたって単一の均一相のままであった。5%未満の活性酸素損失のいかなる組成物も安定であると見なされる。
【0050】
実施例3
本実施例は、本発明の安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物と過酸化水素を含有しない類似の組成物との間の洗浄性能の比較を例示する。
【0051】
過酸化水素を全く含有しないことを除いて、実施例1の組成物に類似の組成物を調製した。この組成物は、カルソフト(登録商標)LAS99、3重量%;カルソフト(登録商標)SLS30、2重量%;カルソフト(登録商標)AOS40、3重量%;トマドール(登録商標)1−9、6重量%;DTPA、0.5重量%;クエン酸、4重量%;組成物のpHをpH8に調整するための水酸化ナトリウム;および100%への水を含有した。
【0052】
過酸化水素および安定剤を含有する、実施例1の安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物と、過酸化水素を含有しない、実施例3との間の洗浄性能の比較を図2に示す。2つの組成物は、草染みおよびチョコレートの除去の点では匹敵する。しかしながら、実施例1の組成物は、トマト、ワイン、茶、皮脂、およびモーターオイルの除去において実施例3の組成物よりも優れていた。実施例1の組成物はまた、ブランク布(blank fabric)の変色をあまり引き起こさなかった。
【0053】
実施例4〜7
これらの実施例は、本発明の安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物の調製および評価を例示する。
【0054】
実施例4−次の組成物を調製した:ミリスタミンオキシド、0.50%;ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(3モルのエチレンオキシド)、1.00%;線状アルキルベンゼンスルホネート、4.00%;C12/C16脂肪アルコールポリグリコールエーテル(3モルのエチレンオキシド)、3.00%;ラウリル硫酸ナトリウム、3.00%;クエン酸、2.00%;表2に示されるような過酸化水素;スズ酸塩、約90ppm;デクエスト(登録商標)2010、約45ppm;サリチル酸、約50ppm;pHを調整するための水酸化ナトリウム;および100%への水。
【0055】
実施例5−次の組成物を調製した:石油スルホン酸ナトリウム、2.00%;線状アルキルベンゼンスルホネート、3.00%;C12/C16脂肪アルコールポリグリコールエーテル(7モルのエチレンオキシド)、3.00%;ラウリル硫酸ナトリウム、1.00%;クエン酸、2.00%;表2に示されるような過酸化水素;スズ酸塩、約90ppm;デクエスト(登録商標)2010、約45ppm;サリチル酸、約50ppm;pHを調整するための水酸化ナトリウム;および100%への水。
【0056】
実施例6−次の組成物を調製した:大豆油のメチルエステル、1.20%;アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、4.00%;C11脂肪アルコールポリグリコールエーテル(9エチレンオキシド)、5.00%;クエン酸、3.00%;DTPA、0.20%;表2に示されるような過酸化水素;スズ酸塩、約90ppm;デクエスト(登録商標)2010、約45ppm;サリチル酸、約50ppm;pHを調整するための水酸化ナトリウム;および100%への水。
【0057】
実施例7−次の組成物を調製した:線状アルキルベンゼンスルホネート、3.00%;アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、6.00%;C12/C13脂肪アルコールポリグリコールエーテル(6.5モルのエチレンオキシド)、3.00%;キシレンスルホン酸ナトリウム、6.00%;クエン酸、15.00%;表2に示されるような過酸化水素;スズ酸塩、約90ppm;デクエスト(登録商標)2010、約45ppm;サリチル酸、約50ppm;pHを調整するための水酸化ナトリウム;および100%への水。
【0058】
サンプルを、表2に示される時間および温度で加熱した。過酸化物濃度を、加熱前後に過マンガン酸塩滴定によって測定した。過酸化物損失を、実施例2に記載されるように計算した。5%未満の活性酸素損失のいかなるサンプルも安定であると見なされる。
【0059】
【表2】

【0060】
これらの実施例は、ある範囲の界面活性剤、ヒドロトロープ、ビルダー、およびキレート剤を使用してpH7以上で過酸化水素入りの安定な濃洗剤組成物を調合できることを示す。
【0061】
実施例8
本実施例は、過酸化水素がアンモニウムベースの組成物と相性が良くないことを示す。
【0062】
これらの3つの異なるアンモニウム化合物の存在下での過酸化水素の安定性を研究した。表3にリストされるサンプルを、85±1℃オーブン中で24時間加熱した。加えて、これらの組成物は、スズ酸塩、約90ppm;デクエスト(登録商標)2010、約45ppm;およびサリチル酸、約50ppmを含んだ。過酸化物濃度を、実施例2に記載されるように加熱前後に測定した。
【0063】
【表3】

【0064】
表3に示されるように、活性酸素の40%超が、選択された陰イオンにかかわらす試験中に失われた。これは、過酸化水素がアンモニウムベースの組成物と相性が良くないことを実証する。
【0065】
実施例9
本実施例は、過酸化水素が安定である組成物を製造するために、標準的な市販の過酸化水素が商業的に入手可能な洗剤組成物と単純に混合できないことを示す。
【0066】
過酸化水素を、表4にリストされる商業的に入手可能な洗剤組成物に加え、生じたサンプルを表に示されるように加熱した。過酸化物濃度を、実施例2に記載されるように加熱前後に測定した。約30ppmの亜硝酸ナトリウム、約10ppmのスズ酸塩安定剤、および約10ppmのデクエスト(登録商標)2010を含有する標準的な市販の過酸化水素を、液体タイド(TIDE)(登録商標)洗剤および液体プレックス(PUREX)(登録商標)洗剤に加えた。これらの安定剤を含有しない過酸化水素を、液体サン(SUN)(登録商標)洗剤および液体カークランド(KIRKLAND)(登録商標)洗剤に加えた。スズ酸塩(約90ppm)、デクエスト(登録商標)2010(約45ppm)、およびサリチル酸(約50ppm)を液体サン(登録商標)洗剤および液体カークランド(登録商標)洗剤に加えた。
【0067】
【表4】

【0068】
上に示されるように、商業的に入手可能な洗剤のどれも過酸化水素と相性が良くなかった。
【0069】
実施例10
本実施例は、ピロリン酸二ナトリウム(Na2227)の存在下での過酸化水素の安定性を例示する。約5重量%過酸化水素ならびに異なるレベルのスズ酸塩および/またはピロリン酸二ナトリウムを含有する水性の塩基性(9.5のpH)過酸化水素組成物を96℃で16時間貯蔵し、残存する過酸化物の量を実施例2の通り分析した。結果を表5に示す。
【0070】
【表5】

【0071】
これらの実施例は、ピロリン酸塩が存在するときに過酸化水素の安定性が低下することを示す。
【0072】
実施例11
本実施例は、金属不純物の存在下での水性過酸化水素組成物の安定性を例示する。過酸化水素は金属イオンの存在下で不安定である。金属イオンの存在下での、特にFe(II)の存在下での過酸化水素の安定性の測定は、どの組成物が化粧品および洗浄用途で機能するかを示す。
【0073】
それぞれ3重量%水性過酸化水素を含有する、実施例11−A〜11−Fを調製した。各サンプルに加えた原料を表6にリストする。スズ酸塩を含有する各サンプルで、スズ酸塩濃度は90ppmであった。ホスホン酸キレート剤を含有する各サンプルで、ホスホン酸キレート剤濃度は45ppmであった。サリチル酸を含有する各サンプルで、サリチル酸濃度は50ppmである。pHを水性水酸化ナトリウムでpH9に調整した。各サンプルを1ppmのFe(II)でスパイクし、85℃で24時間貯蔵した。各サンプル中の過酸化水素の量を、実施例2の通り過マンガン酸カリウムでの滴定によって測定した。
【0074】
失われる過酸化水素の量は、過酸化水素の最初の濃度で割られた、過酸化水素の最初の濃度と24時間後の過酸化水素の濃度との差である。
【0075】
【表6】

【0076】
サンプル11−A、11−B、および11−Cはそれぞれ、安定剤の3成分のうちの1つのみを含有する。実施例11−Dおよび11−Eはそれぞれ、3成分のうちの2つを含有する。サンプル11−Fは全3成分を含有する。全3成分の組み合わせは、どの個々の原料よりも良好に、かつ、試験された2原料の組み合わせのどれよりも良好に機能する。過酸化水素の90%超が評価の条件下で保持された。
【0077】
実施例12
本実施例は、異なる濃度のSn安定剤の存在下での水性過酸化水素組成物の安定性を例示する。実施例11の手順を、1ppmのFe(II)を添加して繰り返した。加えた原料および結果を表7に示す。
【0078】
【表7】

【0079】
本実施例は、300ppmスズ酸塩安定剤(Sn)は単独では、アリカリ性条件下で過酸化水素を安定化させるのに90ppmスズ酸塩安定剤(Sn)と、45ppmジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(P1)と、50ppmのサリチル酸(Sal)との組み合わせほど有効ではないことを示す。
【0080】
実施例13
本実施例は、異なるレベルの金属不純物の存在下での過酸化水素の安定性を例示する。異なる濃度のFe(II)を添加することを除いて、実施例11の手順を繰り返した。加えた原料および結果を表8に示す。安定剤濃度は実施例11の通りであった。
【0081】
【表8】

【0082】
Fe(II)の存在下で、全3成分は、スズ酸ナトリウム(Sn)またはスズ酸ナトリウムとサリチル酸(Sal)との組み合わせよりも有効である。
【0083】
実施例14
本実施例は、界面活性剤の存在下での過酸化水素の安定性を例示する。3重量%過酸化水素と、1重量%アミンオキシド界面活性剤と、90ppmスズ酸塩、45ppmのHEDP、および50ppmサリチル酸を含有する安定性システムとを含有する組成物を9のpHに調整し、85℃で貯蔵した。24時間後に、組成物を実施例1の通り過酸化水素について分析した。過酸化水素の86.8%が保持された。
【0084】
本発明を説明してきたが、本発明者らは、これから下記およびそれらの同等物を特許請求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)0.1重量%〜15重量%の過酸化水素、
b)10重量ppm〜1重量%のスズ酸塩安定剤、
c)少なくとも10重量ppmのホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、
d)少なくとも10重量ppmの芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物、
e)場合により、金属イオン封鎖剤または金属イオン封鎖剤の混合物、
f)0.1重量%〜60重量%の陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、
g)0.1重量%〜60重量%の非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、
e)0.1重量%〜60重量%のビルダーまたはビルダーの混合物、および
f)水
を含む安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物であって、
前記ホスホン酸キレート剤、前記芳香族キレート剤、および前記金属イオン封鎖剤が合わせて、前記組成物の20重量ppm〜10重量%を占め、
10ppm未満のピロリン酸塩を含み、
7.0より大きいpHを有し、かつ、
85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量が20%以下である組成物。
【請求項2】
2重量%〜8重量%の過酸化水素、
15ppm〜2500ppmのスズ酸塩安定剤、
少なくとも15ppmのホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、および
少なくとも15重量ppmの芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物
を含み、そして
前記ホスホン酸キレート剤、前記芳香族キレート剤、および前記金属イオン封鎖剤が合わせて、前記組成物の30重量ppm〜7.5重量%を占める請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項3】
1重量%〜30重量%の陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、
1重量%〜30重量%の非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、および
1重量%〜30重量%のビルダーまたはビルダーの混合物
を含む請求項2に記載の液体洗剤組成物。
【請求項4】
8.0〜10.5のpHを有する請求項3に記載の液体洗剤組成物。
【請求項5】
1ppm未満のピロリン酸塩を含む請求項4に記載の液体洗剤組成物。
【請求項6】
前記ホスホン酸キレート剤がアミノトリ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビスヘキサメチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され、そして、
前記芳香族キレート剤がサリチル酸、6−ヒドロキシ−ピコリン酸、8−ヒドロキシ−キノリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される
請求項5に記載の液体洗剤組成物。
【請求項7】
8.0〜9.5のpHを有する請求項6に記載の液体洗剤組成物。
【請求項8】
20ppm〜1000ppmのスズ酸塩安定剤、
少なくとも20ppmのホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、
少なくとも20重量ppmの芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物
を含み、そして
前記ホスホン酸キレート剤、前記芳香族キレート剤、および前記金属イオン封鎖剤が合わせて、前記組成物の40重量ppm〜5.0重量%を占める請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項9】
8.0〜9.5のpHを有する請求項8に記載の液体洗剤組成物。
【請求項10】
85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量が10%以下である請求項9に記載の液体洗剤組成物。
【請求項11】
前記ホスホン酸キレート剤がアミノトリ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビスヘキサメチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され、そして
前記芳香族キレート剤がサリチル酸、6−ヒドロキシ−ピコリン酸、8−ヒドロキシ−キノリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される
請求項10に記載の液体洗剤組成物。
【請求項12】
50ppm〜500ppmのスズ酸塩安定剤、
少なくとも40ppmのホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、
少なくとも40重量ppmの芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物
を含み、そして
前記ホスホン酸キレート剤、前記芳香族キレート剤、および前記金属イオン封鎖剤が合わせて、前記組成物の80重量ppm〜2.5重量%を占める請求項11に記載の液体洗剤組成物。
【請求項13】
1重量%〜30重量%の陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、1重量%〜30重量%の非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、および1重量%〜30重量%のビルダーまたはビルダーの混合物とを含む請求項12に記載の液体洗剤組成物。
【請求項14】
60ppm〜200ppmのスズ酸塩安定剤を含み、そして
85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量が8%以下である請求項13に記載の液体洗剤組成物。
【請求項15】
85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量が5%以下である請求項14に記載の液体洗剤組成物。
【請求項16】
85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量が5%以下である請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項17】
(1)a)0.1重量%〜15重量%の過酸化水素、
b)10重量ppm〜1重量%のスズ酸塩安定剤、
c)少なくとも10重量ppmのホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、
d)少なくとも10重量ppmの芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物、
e)場合により、金属イオン封鎖剤または金属イオン封鎖剤の混合物、
f)0.1重量%〜60重量%の陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、
g)0.1重量%〜60重量%の非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、
e)0.1重量%〜60重量%のビルダーまたはビルダーの混合物、および
f)水
を含む安定化された塩基性の水性液体洗剤組成物であって、
前記ホスホン酸キレート剤、前記芳香族キレート剤、および前記金属イオン封鎖剤が合わせて、前記組成物の20重量ppm〜10重量%を占め、
10ppm未満のピロリン酸塩を含み、
7.0より大きいpHを有し、かつ、
85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量が20%以下である組成物を基材に塗布する工程と、
(2)前記組成物を前記基材から除去する工程と
を含む、基材の洗浄方法。
【請求項18】
前記基材が布である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が8.0〜9.5のpHを有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が1重量%〜30重量%の陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、1重量%〜30重量%の非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤の混合物、1重量%〜30重量%のビルダーまたはビルダーの混合物、50ppm〜500ppmのスズ酸塩安定剤、少なくとも40ppmのホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、および少なくとも40重量ppmの芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物を含み、そして
前記ホスホン酸キレート剤、前記芳香族キレート剤、および前記金属イオン封鎖剤が合わせて、前記組成物の80重量ppm〜2.5重量%を占める
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ホスホン酸キレート剤がアミノトリ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビスヘキサメチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され、そして前記芳香族キレート剤がサリチル酸、6−ヒドロキシ−ピコリン酸、8−ヒドロキシ−キノリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が1ppm未満のピロリン酸塩を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が60ppm〜200ppmのスズ酸塩安定剤、少なくとも40ppmのホスホン酸キレート剤またはホスホン酸キレート剤の混合物、少なくとも40重量ppmの芳香族キレート剤または芳香族キレート剤の混合物を含み、そして前記ホスホン酸キレート剤、前記芳香族キレート剤、および前記金属イオン封鎖剤が合わせて、前記組成物の80重量ppm〜2.5重量%を占める請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量が5%以下である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が85±1℃で24時間加熱されるときに失われる活性酸素の量が5%以下である請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−508400(P2010−508400A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534836(P2009−534836)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/082333
【国際公開番号】WO2008/057764
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】