説明

道路灯モニターシステム及び道路灯

【課題】各道路灯から保守情報を取得するに際し、新たなインフラ設置を不要にし、簡素な構成で保守情報を取得可能な道路灯モニターシステム及び道路灯を提供する。
【解決手段】多数の道路灯から保守情報を取得するための道路灯モニターシステムであって、各道路灯1に調光制御信号を送出するための共通の調光制御線3に所定電圧を印加する電圧制御部を有する制御/モニタ装置2と、各道路灯1に設けられたスイッチング部14と、各道路灯1に設けられ保守情報を符号化する符号化部16と、各道路灯1に設けられ、道路灯1ごとに異なる遅延時間が設定された遅延時間設定部18と、を備え、符号化部16は、所定電圧の印加に応答して、設定された遅延時間後に保守情報を符号化し、スイッチング部14を介して符号化された保守情報を所定電圧に重畳することで、制御/モニタ装置2に伝送させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の道路灯から保守情報を取得するための道路灯モニターシステム及び道路灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路灯は定期的に保守点検する必要があり、そのために保守情報を取得する必要がある。例えば、照明が正常に点灯しているか否か、照明の照度はどのていど低下したか、電源部に異常は発生しているか否か、という情報を適宜モニターする必要がある。ここで、モニターすべき道路灯は多数あり、効率よく保守情報を取得する必要がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、複数の道路灯(街路灯)をモニターするシステムを開示している。各道路灯には、それぞれモニタ装置10が組み込まれており、道路灯の動作(ランプ5が正しく働いているか否か)をモニターしている。動作を表すデータは、モニタステーション11の制御下に、道路灯に接続された電源ケーブル13を介して各モニタ装置10からモニタステーション11へ転送される。
【0004】
各道路灯のモニタ装置10は、固有のアドレスを有しており、モニタステーション11がアドレスを指定して応答を促すように構成される。モニタステーション11は、周期的に各モニタ装置10をアドレス指定したり、アドレス指定したモニタ装置10からデータを受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平6−508234号公報(要約、特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の場合、各道路灯のアドレスを指定したうえで保守情報を取得する構成であり、モニタステーション11の側でアドレスを指定しなければならない。また、モニタ装置10とモニタステーション11の間で通信を行うために専用の通信回線も必要であり、コストアップの要因になる。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、各道路灯から保守情報を取得するに際し、新たなインフラ設置を不要にし、簡素な構成で保守情報を取得可能な道路灯モニターシステム及び道路灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る道路灯モニターシステムは、
多数の道路灯から保守情報を取得するための道路灯モニターシステムであって、
各道路灯に調光制御信号を送出するための共通の調光制御線に所定電圧を印加する電圧制御部を有するモニター装置と、各道路灯に設けられたスイッチング部と、各道路灯に設けられ保守情報を符号化する情報処理部と、各道路灯に設けられ、道路灯ごとに異なる遅延時間が設定された遅延時間設定部と、を備え、
前記情報処理部は、前記所定電圧の印加に応答して、設定された前記遅延時間後に、前記スイッチング部を介して、符号化された保守情報を前記所定電圧に重畳することで、前記制御/モニタ装置に伝送させることを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成による道路灯モニターシステムの作用・効果を説明する。各道路灯には調光制御線が接続されており、この調光制御線に電圧を印加することで道路灯の照度を制御することができる。すなわち、発光部の照度は夜間であっても車の通行量が少ない夜中は照度を落としており(例えば、半分)、照度を落とす制御を行う場合、調光制御線に所定電圧を印加するようにしている。各道路灯から保守情報を取得するときは、この調光制御線に所定電圧を印加する。印加するタイミングは、上記の照度を落とすときや、道路灯を点灯しない時間帯である。各道路灯には保守情報を符号化する情報処理部が設けられており、符号化された信号に基づきスイッチング部を動作させてオン/オフ信号を生成する。これが符号化された保守情報である。この保守情報は、調光制御線に重畳されて制御/モニタ装置に伝送される。調光制御線を用いて通信を行うので、新たなインフラ設備を創設する必要はなく、構成を簡素化することができる。
【0010】
さらに、遅延時間が設定されており、この遅延時間は道路灯ごとに異なった時間が設定される。各道路灯が保守情報を伝送するタイミングは、遅延時間に基づいて行われる。従って、制御/モニタ装置には、各道路灯からの保守情報がタイミングがずれた状態で伝送されてくるので、どの道路灯からの保守情報かを識別することができる。従って、道路灯に対して固有のアドレスを割り当てる必要はない。その結果、各道路灯から保守情報を取得するに際し、新たなインフラ設置を不要にし、簡素な構成で保守情報を取得可能な道路灯モニターシステムを提供することができる。
【0011】
本発明において、前記保守情報は、前記所定電圧の大きさよりも小さな振幅のオン/オフ信号を前記所定電圧に重畳させて伝送させることが好ましい。
【0012】
道路灯1を点灯させているときは、調光制御線に所定電圧が印加されると、発光部の照度を落とすように制御し、所定電圧が印加されないと、通常の照度になるように制御する。従って、オン/オフ信号の重畳をさせる態様によっては、保守情報を伝送するときに発光部が点滅することになり、違和感のある照明になる。そこで、保守情報を符号化して所定電圧に重畳する場合、小さな振幅のオン/オフ信号とすることで、発光部を点滅させる動作を防止することができる。
【0013】
さらに、リレースイッチを介して発光部を点灯させる場合、リレースイッチに相当の容量を持たせて遅延させることで、オン/オフ信号に反応しないように構成してもよい。
【0014】
上記課題を解決するため本発明に係る道路灯は、
スイッチング部と、保守情報を符号化する情報処理部と、遅延時間が設定された遅延時間設定部と、を備え、
前記情報処理部は、前記所定電圧の印加に応答して、設定された前記遅延時間後に、前記スイッチング部を介して、符号化された保守情報を前記所定電圧に重畳することで、前記制御/モニタ装置に伝送させることを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成の作用・効果は前述の通りであり、新たなインフラ設置を不要にし、簡素な構成で保守情報を取得可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】道路灯の動作をモニターするための制御/モニタ装置の構成を示す概念図
【図2】道路灯モニターシステムの主要な機能を示すブロック図
【図3】保守情報を取得するときの動作を説明するフローチャート
【図4】保守情報を符号化して送出する時の概念図
【図5】制御/モニタ装置で保守情報を受信する時の調光制御線の電圧変化を示す図
【図6】図5の別実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る道路灯モニターシステムの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、道路灯1と、道路灯1の動作をモニターするための制御/モニタ装置2の構成を示す概念図である。
【0018】
<道路灯モニターシステムの構成>
道路灯1は、発光部10と、発光部10を支持する柱状の本体部11を備えている。発光部10は、蛍光灯やLEDにより構成され、夜間になると照明光を照射する。発光部10の調光制御を行うための調光制御線3が設けられており、制御/モニタ装置2側において、調光制御線3に所定電圧を印加すると、発光部1が点灯する。調光制御線3は、多数の道路灯1に対して共通に接続されており、同時に多数の道路灯1に対して調光制御が行われる。
【0019】
<道路灯モニターシステムの主要な機能>
図2は、道路灯モニターシステムの主要な機能を示すブロック図である。交流電源4は、各道路灯1に共通に給電を行う。交流電源4により道路灯1に給電されるのは、照明が必要な時間帯のみであり、不要な時間帯には電源は供給されない。電源部12は、交流を直流に変換し一定電流になるように平滑化するための電源回路である。平滑化された定電流が発光部10に供給される。リレースイッチ13は、スイッチONで調光を行う。調光を行う時は、発光部10に供給される電流値が少なくなるように(例えば、半分)電源部12を制御する。電源部12を制御する信号を調光制御信号という。リレースイッチ13がOFFのときは、調光はしないので、通常の大きさの定電流が発光部10に供給される。調光を行うのは、車の通行量が少ない夜中である。時間帯は適宜設定できる。通行量が少ないときは、エネルギー消費量を抑制するために、通常の照度の半分の照度で道路を照明するようにしている。
【0020】
スイッチング部14は、調光制御線3に保守情報を符号化したオン/オフ信号を送出する機能を有する。スイッチング部14は、好ましくは、MOS−FETやバイポーラトランジスタ等の半導体スイッチング素子により構成される。調光制御線3に所定電圧が印加されると、リレースイッチ13をONにする。これにより、調光制御信号が電源部12に送られ、発光部10に供給される電流が半分になり、照明光の照度も半分になる(道路灯1が点灯している場合)。
【0021】
保守情報取得部15は、道路灯1内の各部の動作をモニターしており、定期的にあるいは適宜のタイミングで保守情報を取得する。例えば、発光部10からの照度は適切であるか否か、発光部10を交換すべきか否かを発光部10の近傍に設けた光センサーからの信号に基づいて取得する。あるいは、電源部12やリレースイッチ13が正常に動作しているか否かを電流検出センサー等で検出する。メモリ15aが設けられており、必要に応じて保守情報が記憶され、適宜、最新の保守情報に更新される。
【0022】
符号化部16(情報処理部に相当)は、保守情報取得部15が取得した保守情報を符号化する。符号化された保守情報はスイッチング部14に送出され、スイッチング部14においてオン/オフ信号に変換される。これにより、調光制御線3に保守情報がオン/オフ信号の形で重畳され制御/モニタ装置2に伝送される。
【0023】
符号化部16により保守情報が伝送されるタイミングは、調光制御線3に所定電圧が印加されたときである。印加されるタイミングは、夜中に照度を落とすときであるが、保守情報を取得する目的のみのために、昼間に所定電圧を印加してもよい。
【0024】
検出部17は、所定電圧が印加されたことを検出する。符号化部16は、検出部17で所定電圧を検出すると、保守情報を符号化して送出するが、ただちに送出を行うのではなく、遅延時間設定部18で設定されている遅延時間後に送出を行うように制御される。
【0025】
この遅延時間設定部18で設定される遅延時間は、道路灯1ごとに異なる時間が設定されている。従って、制御/モニタ装置2へは、各道路灯1からの保守情報が重なることなく時系列に送信される。制御/モニタ装置2の側では、保守情報を受信したタイミングに基づいて、どの道路灯1からの保守情報かを識別することができる。従って、各道路灯1は識別用のアドレスを有する必要はない。
【0026】
また、調光制御線3を利用して保守情報を伝送させるので、新たなインフラを創設する必要はなく、コスト的にもメリットがある。また、道路灯1を点灯しない時間帯に保守情報の取得をするので、道路灯1の運営に問題が生じることはない。さらに、調光制御線を用いることで、無線の場合と比べて通信速度を遅くすることができ、ノイズに対しても強くすることができる。
【0027】
制御/モニタ装置2は電圧制御部2aを備えており、調光制御線3に所定電圧を印加させる機能を有する。
【0028】
<保守情報取得時の動作>
図3により、保守情報を取得するときの動作を説明する。まず、制御/モニタ装置2により所定電圧を調光制御線3に印加させる(S1)。印加するタイミングは、予めきめられた時刻に自動的に印加されるようにしてもよいし、制御/モニタ装置2を操作する作業者が手動で適宜操作するようにしてもよい。
【0029】
道路灯1の検出部17により所定電圧を検出する(S2)。各道路灯1は設定されている遅延時間を経過したか否かを判断する(S3)。遅延時間を経過すると、保守情報取得部15は保守情報を取得する(S4)。夜中に調光するタイミングで取得する場合は、その時点における保守情報を各センサーから取得する。昼間に行う場合は、発光部10は点灯していないので、保守情報を取得することができない。その場合は、メモリ15aに記憶しておいた直近の保守情報を読み出すことで保守情報を取得する。
【0030】
符号化部16は保守情報を符号化する(S5)。符号化された保守情報は調光制御線3に送出され(S6)、制御/モニタ装置2により受信される(S7)。保守情報を符号化して送出する時の概念図を図4に示す。
【0031】
図5及び図6は、制御/モニタ装置2で保守情報を受信する時の調光制御線3の電圧変化を示す。各道路灯1からの保守情報が所定の時間差を持って受信される。従って、この時間差に基づいて、どの道路灯1からの保守情報であるかを認識することができる。
【0032】
なお、図5に示す電圧変化は、0Vと所定電圧の間で変化しているが、これを図6に示すように所定電圧に小さな振幅の信号を重畳してもよい。図5の場合は、リレースイッチ13がオン/オフするので、夜間照明しているときに発光部10が点滅するため、違和感を感じる可能性がある。ただし、昼間に保守情報を取得する場合は、図5の形態でも問題ない。
【0033】
さらに、リレースイッチ13に相当の容量を持たせて遅延させることで、オン/オフ信号に反応しないように構成してもよい。かかる構成によっても、発光部10の点滅を防止することができる。
【0034】
図6の実施形態の場合は、スイッチング部14がオン/オフ動作している間に、発光部10が点滅することがなく、違和感のある動作をさせなくても済む。
【0035】
なお、1台の道路灯1から保守情報を取得するのに要する時間は約5秒程度であり、遅延時間も5秒間隔で異なるように設定することができる。もちろん、遅延時間をどのように設定するかは、適宜決めることができる。配電設備から1km程度の送電が可能であるので、通常30m〜40mの間隔で道路灯1を設置することから、1台の制御/モニタ装置2でモニターする道路灯1の台数は、20台〜30台程度が好ましい。ただし、この台数も適宜設定することができる。
【0036】
<別実施形態>
道路灯1の発光部10についてはLED、蛍光灯等の種々の変形例が考えられる。図2に示す機能は、本体部11の内部に収納してもよいし、本体部11の外部に外付けで取り付けてもよい。
【0037】
符号化部16が保守情報を符号化するタイミングは適宜決めることができる。例えば、調光制御線3に所定電圧が印加されたとき、設定された遅延時間の後に符号化することができる。また、予め符号化した保守情報をメモリ15aに記憶させておいてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 道路灯
2 制御/モニタ装置
2a 電圧制御部
3 調光制御線
4 交流電源
10 発光部
11 本体部
12 電源部
13 リレースイッチ
14 スイッチング部
15 保守情報取得部
15a メモリ
16 符号化部
17 検出部
18 遅延時間設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の道路灯から保守情報を取得するための道路灯モニターシステムであって、
各道路灯に調光制御信号を送出するための共通の調光制御線に所定電圧を印加する電圧制御部を有する制御/モニタ装置と、
各道路灯に設けられたスイッチング部と、
各道路灯に設けられ保守情報を符号化する情報処理部と、
各道路灯に設けられ、道路灯ごとに異なる遅延時間が設定された遅延時間設定部と、を備え、
前記情報処理部は、前記所定電圧の印加に応答して、設定された前記遅延時間後に、前記スイッチング部を介して、符号化された保守情報を前記所定電圧に重畳することで、前記制御/モニタ装置に伝送させることを特徴とする道路灯モニターシステム。
【請求項2】
前記保守情報は、前記所定電圧の大きさよりも小さな振幅のオン/オフ信号を記所定電圧に重畳させて伝送させることを特徴とする請求項1に記載の道路灯モニターシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の道路灯モニターシステムに使用される道路灯であって、
スイッチング部と、保守情報を符号化する情報処理部と、遅延時間が設定された遅延時間設定部と、を備え、
前記情報処理部は、前記所定電圧の印加に応答して、設定された前記遅延時間後に、前記スイッチング部を介して、符号化された保守情報を前記所定電圧に重畳することで、前記制御/モニタ装置に伝送させることを特徴とする道路灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−228908(P2011−228908A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96280(P2010−96280)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(593042007)株式会社因幡電機製作所 (25)
【出願人】(505413255)阪神高速道路株式会社 (46)
【Fターム(参考)】