説明

遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置

【課題】遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに動作することができる、遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置を提供すること。
【解決手段】遠心圧縮機13が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機13のメカニカルドライシール11の密封ガスを循環させる装置10が提供される。前記装置は密封往復圧縮機12を具備し、前記往復圧縮機12は、シリンダ内を摺動自在であるピストンを含み、前記ピストンは、前記シリンダに沿って移動する外部磁性要素への磁気結合により移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、遠心圧縮機は、圧縮自在の流体に取入れ圧力より大きい圧力を加え、この圧力増加のために必要とされるエネルギーを流体へ伝達する機械である。遠心圧縮機は、半径方向ブレードを有する1つ以上のインペラ又はロータから構成されており、それらのインペラ又はロータは、一般に圧縮機の軸自体に直接結合されているモータにより高速で駆動される。
【0003】
通常、遠心圧縮機は、例えば、冷凍システム、エチレン及び接触分解プラント、尿素処理プラントのCO2圧縮装置などの石油化学工業、発電装置、液体プロパンガスプラント及び酸素プラント、並びにガスパイプラインを加圧し、それらを稼動状態に戻すための装置などの、中程度の圧力から低圧力で高い流量が要求される多種多様な用途に合わせて設計されている。設備パワーは一般に高い。
【0004】
処理済流体が大気中に流出するのを防止するために、遠心圧縮機は一般にロータ軸に配置されるメカニカルドライシールを装備している。一般に圧縮機自体の吐出し端部から取り出される、適切に処理されたガスはそれらのメカニカルドライシールの中を循環される。圧縮機が正規の設計条件で動作しているとき、循環は取入れ端部と吐出し端部との間の圧力差により確保される。
【0005】
圧縮機が静止し、加圧されているときには、各々のメカニカルドライシールの密封リングとディスクとの間の固体粒子による汚染を防止する清浄な密封ガスを循環させることができない。更に、ガスの温度は密封リングとディスクとの間の凝縮物及び/又は氷の形成を防止するほど十分に高くなければならない。
【0006】
現在市場に出ているガス循環装置にもメカニカルシールは装備されているが、それらのシールは先に述べたのと同様の、それ独自の汚染及び凝縮という問題を有する。
【0007】
現時点で、汚染の問題に関する限り、設計者は、固体粒子の一部がメカニカルシールに到達する危険を一般に認めており、従って、予防保守作業が行われる。
【0008】
メカニカルシールの密封リングとディスクとの間の凝縮物及び/又は氷の形成の問題に関しては、保証条項の一部を形成する、適正な使用のための勧告として、圧縮機を停止させたときに圧縮機及び関連回路の加圧を解除することを顧客に指示すべきであると提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5765998号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
状況によるが、加圧解除は設置管理者には重大な問題になりうる経済的な損失及び/又はある程度の汚染をもたらす可能性がある。
【0011】
この問題は遠心圧縮機のメーカー及び顧客により何度となく論じられてきたが、信頼に足る解決手段を購入できる状態にはないため、顧客は先に説明した動作の条件を容認することを余儀なくされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の目的は上述の問題、特に、遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに動作することができる、遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置を提供するという問題を克服することである。
【0013】
本発明の別の問題は、ガス漏れの可能性が全くなく、特に信頼性が高く、単純で、機能的であり、且つ相対的に安価である、遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置を提供することである。
【0014】
本発明の上記の目的及びその他の目的は、遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置を提供することにより達成される。
【0015】
遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させるための本発明による装置の特徴及び利点は、添付の概略的図面に関連して、限定的な意味を持たない一例として提供される以下の実施例の説明により更に明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による密封ガス循環装置により密封ガスを供給されるメカニカルドライシールを装備された遠心圧縮機を示す図。
【図2】遠心圧縮機が静止され、加圧されているときに動作する遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照すると、図1及び図2は、遠心圧縮機13が静止し、加圧されているときにも動作する遠心圧縮機13のメカニカルドライシール11の密封ガスを循環させるための、全体を図中符号10で指示される装置を示す。
【0018】
図示されている実施例では、本発明に従って、密封ガス循環装置10は小型で且つ完全に密封された複動往復圧縮機12を具備する。
【0019】
往復圧縮機12は、金属材料から製造され、非磁性材料から成るシリンダ16内を摺動自在であるピストン14を含む。
【0020】
空気圧式の往復モータ18も設けられている。モータ18は、リングなどの外部磁性要素20をシリンダ16に沿って移動させる。
【0021】
本発明による遠心圧縮機13のメカニカルドライシール11の密封ガス循環装置10の動作は図面を参照して以上説明したことから明白であるが、次のように要約することができる。
【0022】
ピストン14に対する運動は、磁性要素20による非磁性材料から成るシリンダ16の外側からの磁気結合により伝達される。
【0023】
磁性要素20は、シリンダ16に沿って磁性要素20を移動させる往復モータ18により変位される。
【0024】
そこで、磁性要素20の磁界は、一般に金属材料又は磁界を感知する他の材料から製造されているピストン14の運動を発生させる。
【0025】
外部と接触するシールが存在していないため、本発明によるガス循環装置10は、危険なガス及び450バールまでの高い圧力を使用する用途に特に適している。
【0026】
尚、本発明によるガス循環装置10は、図1に示すように、往復圧縮機12により移動されるガスが通過するヒータ22を更に具備できることに注意すべきである。
【0027】
これにより、ガスは、メカニカルドライシール11の密封リングとディスクとの間の凝縮物及び/又は氷の形成を防止するのに十分な温度まで加熱される。
【0028】
装置の信頼性が非常に高いため、どのような種類のガスを使用する用途にも適している。
【0029】
以上の説明は、本発明による、遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置の特徴をその利点と共に明確に実証している。
【0030】
上述の利点を更に厳密且つ明確に定義するために、いくつかの締めくくりの所見を述べる。
【0031】
第1に、本発明による密封ガス循環装置は、遠心圧縮機が静止し、加圧されているときにも、凝縮物の形成及び汚染に関する問題なく動作することに注意すべきである。
【0032】
すなわち、顧客は圧縮機が静止しているときに圧縮機の加圧を解除する必要がなくなり、従って、設置管理者はその結果として起こる経済的な損失並びに望ましくない汚染影響を回避することができる。本発明の密封ガス循環装置により提供される解決策は、競合する製品とは明確に一線を画する装置であるため、顧客にとって興味あるものであると共に、商談において決定的な要因となりうるであろう。
【0033】
次に、本発明によるメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置は使用するのが簡単であり、信頼性が高く、且つ周知の技術による装置と比較して安価であるという点を指摘しておくべきである。
【0034】
最後に、このように設計された、遠心圧縮機が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機のメカニカルドライシールの密封ガスを循環させる装置を本発明の範囲内で数多くの方法により変形及び変更できることは明白である。更に、全ての構成要素を技術的に等価の要素と置き換えることが可能である。実際、使用される材料、並びにその形状及び寸法は技術的必要条件に応じて自由に選択することができる。
【0035】
なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【0036】
本願発明のひとつは、遠心圧縮機(13)が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機(13)のメカニカルドライシール(11)の密封ガスを循環させる装置(10)において、前記装置は密封往復圧縮機(12)を具備し、前記往復圧縮機(12)は、シリンダ(16)内を摺動自在であるピストン(14)を含み、前記ピストン(14)は、前記シリンダ(16)に沿って移動する外部磁性要素(20)への磁気結合により移動されることを特徴とするガス循環装置(10)である。前記外部磁性要素(20)は、往復モータ(18)により移動されることができる。前記往復モータ(18)は、空気圧式とすることができる。前記外部磁性要素(20)を、前記シリンダ(16)の外側で移動されるリングとすることができる。前記シリンダ(16)は、非磁性材料から製造されていることができる。前記ピストン(14)は、磁界を感知する材料から製造されることができる。前記ピストン(14)は、金属材料から製造されることができる。前記ガス循環装置(10)は、外部と接触するシールを持たないことができる。ガス循環装置(10)は、前記往復圧縮機(12)により移動されるガスが通過するヒータ(22)をさらに具備し、前記ガスは前記メカニカルドライシールの密封リングとディスクとの間に凝縮物及び/又は氷の形成を防止するのに十分な温度まで加熱されることができる。前記往復圧縮機(12)は複動圧縮機であることができる。前記往復圧縮機(12)の寸法は小さいことを特徴とすることができる。
【符号の説明】
【0037】
10…密封ガス循環装置、11…メカニカルドライシール、12…往復圧縮機、13…遠心圧縮機、14…ピストン、16…シリンダ、18…往復モータ、20…外部磁性要素、22…ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心圧縮機(13)が静止し、加圧されているときに遠心圧縮機(13)の複数のメカニカルドライシール(11)の密封ガスを循環させる装置(10)において、
前記装置は密封往復圧縮機(12)を具備し、
前記往復圧縮機(12)は、シリンダ(16)内を摺動自在であるピストン(14)を含み、前記ピストン(14)は、前記シリンダ(16)に沿って移動する外部磁性要素(20)への磁気結合により移動され、
前記ガス循環装置(10)は、前記往復圧縮機(12)により移動されるガスが通過するヒータ(22)をさらに具備し、
前記ヒータ(22)は、前記複数のメカニカルドライシール(11)の遠心圧縮機(12)側のメカニカルドライシール(11)と前記往復圧縮機(12)とを結ぶラインに設けられ、
前記ガスは、前記メカニカルドライシールの密封リングとディスクとの間に凝縮物及び/又は氷の形成を防止するのに十分な温度まで加熱される
ことを特徴とするガス循環装置(10)。
【請求項2】
前記外部磁性要素(20)は往復モータ(18)により移動されることを特徴とする請求項1記載のガス循環装置(10)。
【請求項3】
前記往復モータ(18)は空気圧式であることを特徴とする請求項2記載のガス循環装置(10)。
【請求項4】
前記外部磁性要素(20)は、前記シリンダ(16)の外側で移動されるリングであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のガス循環装置(10)。
【請求項5】
前記シリンダ(16)は非磁性材料から製造されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のガス循環装置(10)。
【請求項6】
前記ピストン(14)は磁界を感知する材料から製造されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のガス循環装置(10)。
【請求項7】
前記ピストン(14)は金属材料から製造されていることを特徴とする請求項6記載のガス循環装置(10)。
【請求項8】
外部と接触するシールを持たないことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のガス循環装置(10)。
【請求項9】
前記往復圧縮機(12)は複動圧縮機であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のガス循環装置(10)。
【請求項10】
前記往復圧縮機(12)の寸法は小さいことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のガス循環装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−38528(P2011−38528A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203024(P2010−203024)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2003−381983(P2003−381983)の分割
【原出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【出願人】(500445479)ヌオーヴォ ピニォーネ ホールディング ソシエタ ペル アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Holding S.p.A.
【Fターム(参考)】