説明

遠心式ファン

【課題】空気の流れをより好適にすることができる遠心式ファンを提供する。
【解決手段】遠心式ファンは、空気の吸込み口8が形成された上ケーシング5Aと、下ケーシング6と、上ケーシング5Aと下ケーシング6との間に位置する羽根車3とを備える。羽根車3は、上ケーシング5A側に位置する上シュラウド23と、上シュラウド23の下に設けられる、円周上に配列される複数の羽根2を備え、回転軸11を中心に回転することが可能である。上ケーシング5Aおよび下ケーシング6は、開放型のケーシングを構成する。上シュラウド23の上ケーシング5Aと向き合う面は、回転軸11から離れるにつれて下ケーシング6に近付く第1の部分を有している。上ケーシング5Aの上シュラウド23と向き合う面は、上シュラウド23の第1の部分と向き合う第2の部分において、回転軸11から離れるにつれて下ケーシング6に近付く形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心式ファンに関し、より特定的には、ケースと羽根車とを有する遠心式ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心式ファン(遠心送風機)は、複数の羽根(翼、インペラともいう。)を有する羽根車を回転させることで、遠心方向に送風を行うファンである。この種のファンである遠心式多翼ファンは、モータの回転軸周りに多数の羽根を配置した羽根車を、吸込み口と吐出し口とを有するケーシング内に格納した構成からなる。遠心式多翼ファンは、吸込み口から吸入された空気を羽根車の中心から羽根の間に流入させ、羽根車の回転に伴う遠心作用によって羽根車の径外方に向けて噴出させる。羽根車の外周外側から噴出された空気は、ケーシング内部を通過し、高圧の空気となって吐出し口から吹き出される。
【0003】
遠心式多翼ファンは、家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の送風機などに広く用いられている。遠心式多翼ファンの送風性能と騒音は、羽根車の羽根形状とケーシング形状に大きく影響される。
【0004】
従来技術のファンにおけるケーシングの形状の工夫として、以下のような先行技術が存在する。
【0005】
下記特許文献1には、遠心式送風機において、ベルマウスが形成される上ケースとシュラウドとにより形成される隙間から空気が逆流することを抑制する技術が開示されている。すなわち遠心式送風機は、ファンを収納する上ケースの空気取入口の近傍に、シュラウドの上端部との隙間が狭くなるように形成された断面略半円弧状のベルマウスを有している。
【0006】
下記特許文献2には、翼と翼間を流れる空気との剥離現象を抑制しつつ、送風機全体としての騒音低減を図る遠心送風機が開示されている。すなわちシュラウドの径外方側近傍に、遠心式多翼ファンから径外方に向けて吹き出した空気のうち、吸入口側のケーシングの内壁に沿うように径外方から回転軸に向けて流れる空気を、モータ側に向けて偏向させる偏向壁面を有するベルマウスリングを形成するものである。これにより、シュラウドとケーシングとの隙間から吸入口へ空気が逆流することが抑制される。したがって、吸入口から吸入された空気と逆流する空気との干渉、および隙間を逆流する際に発生する流れの乱れにより発生する騒音の低減を図ることができる。
【0007】
下記特許文献3には、吸入口近傍における流れの乱れを防ぐことが可能な遠心送風機が開示されている。すなわち多翼送風機は、回転軸線方向から気体を吸入して回転軸線に交差する方向に流体を吹き出す送風機であって、羽根車とベルマウスとを備えている。羽根車は、回転軸線を中心として回転する。ベルマウスは、羽根車に対向するように配置された吸入口と、吸入口の周囲に羽根車側に向かって凹み負圧空間を形成する凹部とを有し、吸入される気体を羽根車に案内する。
【0008】
下記特許文献4には、ベルマウス部にて空気流れが乱れることを抑制する遠心式送風機が開示されている。すなわち、スクロールケーシングの外壁面のうち、ベルマウス部に連なる吸入側外壁面を段差の無い平坦な形状とするものである。これにより、吸入口に向けて流れる吸入空気に渦等乱れが発生することを抑制できるので、ベルマウス部にて空気流れが乱れることを抑制でき、新たな渦損失や騒音等が誘発されてしまうことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−207595号公報
【特許文献2】特開平9−242696号公報
【特許文献3】特開2004−360670号公報
【特許文献4】特開2004−190535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
機器の小型化、薄型化、高密度実装化、そして省エネ化が進む中、市場からはそれに搭載されるファンモータに対しての高静圧化、高効率化が強く要望されている。またファンにおいて、低騒音化を図ることも重要である。特に従来の遠心式ファンでは、離散周波数騒音(狭帯域騒音)および広帯域騒音のレベルが共に高く、機器に搭載した時の騒音レベルが高いという問題がある。
【0011】
ここで「離散周波数騒音」とは、羽根通過周波数に依拠する騒音であり、NZ騒音とも呼ばれる。離散周波数騒音は、狭い周波数帯域の特定周波数に特徴的なピークを有する騒音である。その周波数は、fnz=〔回転周波数:n〕×〔羽根の枚数:z〕の式で表わされる。離散周波数騒音は、1次成分以外に、2次、3次・・が発生するため、実聴においても大きな問題となる。すなわち、遠心式ファンを機器に搭載した時に、雑音が明瞭な音として発生するリスクがある。広帯域騒音の要因は乱流が支配的であり、トータル騒音レベルを決めるため、広帯域騒音を低減することも求められる。
【0012】
さらに、上記要望を実現させながらも、ファンの生産性を高める必要もある。
【0013】
また、上記特許文献1〜4に記載された技術は、スクロールケーシング型のファンに向けられたものであり、開放型のケーシングを有するファンについても改良が望まれている。
【0014】
本発明の目的は、空気の流れをより好適にすることができる遠心式ファンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一の局面に従うと、遠心式ファンは、空気の吸込み口が形成された上ケーシングと、下ケーシングと、上ケーシングおよび下ケーシングの間に位置する羽根車とを備えた遠心式ファンであって、羽根車は、上ケーシング側に位置する上シュラウドと、上シュラウドの下に設けられる、円周上に配列される複数の羽根とを備え、回転軸を中心に回転することが可能であり、上ケーシングおよび下ケーシングは、開放型のケーシングを構成し、上シュラウドの上ケーシングと向き合う面は、回転軸から離れるにつれて下ケーシングに近付く第1の部分を有し、上ケーシングの上シュラウドと向き合う面は、上シュラウドの第1の部分と向き合う第2の部分において、回転軸から離れるにつれて下ケーシングに近付く形状を有する。
【0016】
好ましくは羽根車は、複数の羽根の下に設けられる下シュラウドを有し、下シュラウドの外径は、上シュラウドの内径以下であり、羽根の内径部分は、上シュラウドの内径部分と、下シュラウドの内径部分とを結ぶ傾斜部を有する。
【0017】
好ましくは上シュラウドの上ケーシングと向き合う面の第1の部分の形状と、上ケーシングの上シュラウドと向き合う面の第2の部分の形状とは略等しい。
【0018】
好ましくは上ケーシングは、上シュラウドの第1の部分と向き合う第2の部分を形成するためのリブを有する。
【0019】
好ましくは上ケーシングは、遠心式ファンを取り付けるためのフランジ部を有する。
【0020】
好ましくは平面視で上シュラウドと羽根とが存在する場所において、上シュラウドと羽根とは接している。
【0021】
好ましくは複数の羽根の各々は、回転軸から遠ざかるにつれ、その厚さが薄くなる形状を有する。
【0022】
好ましくは下ケーシングは、平面視で上シュラウドが存在する部分において、羽根車の方向に突出する部分を有し、吸入み口から吸入した空気を、羽根車の回転に伴う遠心力によって羽根車の径の外方に向けて吹き出す。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、空気の流れをより好適にすることができる遠心式ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおける遠心式ファンの斜視図である。
【図2】図1の遠心式ファンの中央縦断面図である。
【図3】羽根車3を上シュラウド23側から見た斜視図である。
【図4】図1の遠心式ファンの羽根形状を、上シュラウド23側から透過させて見た状態で示す図である。
【図5】図4におけるA−A断面図である。
【図6】図4におけるB−B断面図である。
【図7】図4におけるC−C断面図である。
【図8】従来の羽根車の断面形状と騒音特性とを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における羽根車の断面形状と騒音特性とを示す図である。
【図10】変形例における遠心式ファンの羽根車の断面図である。
【図11】他の実施の形態における遠心式ファンの斜視図である。
【図12】図11の遠心式ファンの中央縦断面図である。
【図13】図2の断面で示される遠心式ファンの上シュラウドと上ケーシングとの間の風の流れを示す図である。
【図14】図12の断面で示される遠心式ファンの上シュラウドと上ケーシングとの間の風の流れを示す図である。
【図15】図2の断面で示される遠心式ファンと、図12の断面で示される遠心式ファンとの風量と圧力の特性を示す図である。
【図16】変形例における遠心式ファンの断面構造を示す図である。
【図17】変形例における遠心式ファンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける遠心式ファンの斜視図であり、図2は、図1の遠心式ファンの中央縦断面図である。また図3は、羽根車3を上シュラウド23側から見た斜視図であり、図4は、図1の遠心式ファンの羽根形状を、上シュラウド23側から透過させて見た状態で示す図である。図5〜図7は、それぞれ図4におけるA−A断面図、B−B断面図、およびC−C断面図である。
【0027】
図1〜4を参照して、遠心式ファン1では、中央の羽根車3が回転することにより送風が行われる。羽根車3は、それぞれが配置される7枚の羽根2を有し、遠心式ファン1に内蔵されるファンモータ13により回転軸11を中心として回転する。その回転方向は、図4における時計回りである。
【0028】
羽根車3は、ケーシング4に収納される。ケーシング4は、板状の上ケーシング5と下ケーシング6とからなっており、両者を等間隔に保持するために支柱7がケーシング4の四つの角部分に設けられている。遠心式ファン1の上部に空気の吸込み口8が設けられる。空気の吹出し口9は、ケーシング4の支柱7と支柱7との間に設けられることになる。すなわち、ケーシング4の4辺4方向がそれぞれ空気の吹出し口9となる(開放ケーシング型)。なおケーシング4は、羽根車3から吹出された空気を1方向に集約する吹出し口を設けることとしてもよい(スクロールケーシング型)。
【0029】
図2〜7に示されるように羽根車3は、環状の下シュラウド21と、環状の上シュラウド23と、下シュラウド21と上シュラウド23との間に設けられる、円周上に配列される複数の羽根2とを備えた構造を有し、回転軸11を中心に回転することが可能である。
【0030】
図4に示されるように、環状の下シュラウド21は、平面から見たときの内径21Aと外径21Bとを有している。内径21Aと外径21Bは、平面視で円である。環状の上シュラウド23は、平面から見たときの内径23Aと外径23Bとを有している。内径23Aと外径23Bは、平面視で円である。下シュラウド21の外径21Bは、上シュラウド23の内径23Aと重なる。すなわち下シュラウド21の外径21Bと、上シュラウド23の内径23Aとは等しい。なお、下シュラウド21の外径21Bは、上シュラウド23の内径23Aよりも若干小さくても良い。
【0031】
図4においては、上シュラウド23の内径23Aの内側の空間から見えている各羽根2の形状を、実線で示している。上シュラウド23の内径23Aと外径23Bとの間において、上シュラウド23により隠されている各羽根2の形状を、点線で示している。
【0032】
各羽根は図4に示されるように、平面視で内側(回転軸)から外側に向かうにつれて細くなってゆく(厚さが薄くなる)形状を有している。その入口角は45°であり、出口角は22°である。外径23Bの直径は120mmであり、内径21Aの直径は70mmである。羽根2は、後退翼である。
【0033】
図3〜7に示されるように、各羽根2は、その上部が上シュラウド23の下面に、その下部が下シュラウド21の上面に固定されている。ここで、下シュラウド21の外径21Bと、上シュラウド23の内径23Aとが等しく(または下シュラウド21の外径21Bが、上シュラウド23の内径23Aよりも小さく)設計されているため、上下の金型を用いるだけで羽根車3を一体形成することができる。
【0034】
図4〜7に示されるように、各羽根2の上部は、内径側(回転軸に近い側)で上シュラウド23の内径側の端部に接続されている。その位置から各羽根2の上部は、外径側端部まで、上シュラウド23の下面に接続されている。すなわち、図4のように平面視で上シュラウド23と羽根2とが存在する場所(点線で囲まれる場所)において、上シュラウド23と羽根2とは接している。
【0035】
また、各羽根2の下部は、下シュラウド21に接続される。
【0036】
図5に示されているように、各羽根2の上部は、内径側で上シュラウド23の内径側の端部に接続されている。各羽根2の上部は、そこからさらに内径側に向かう部分がテーパ部分(傾斜部)とされている。すなわち、羽根2の内径部分は、上シュラウド23の内径部分(内径端部)と、下シュラウド21の内径部分とを結ぶ傾斜部を有する。
【0037】
各羽根2のテーパ部分は、垂直方向からγ=42°の角度をなす斜面を形成している。図4においては、各羽根2の実線で示される部分がテーパ部分であり、点線で示される部分は、各羽根2の上部が上シュラウド23に接続される部分を示している。また、各羽根2の実線で示される部分は、その下部が下シュラウド21に接続される部分を示している。各羽根2の点線で示される部分は、その下部が下シュラウド21に接続されていない部分(その下に下シュラウド21が無い部分)を示している。
【0038】
図5の角度γ=42°はテーパ角と呼ぶが、その数値は42°に限定されるものではない。
【0039】
なお羽根車3において、平面視で上シュラウド23が存在する部分には、下シュラウド21が存在しない。このため、存在しない下シュラウド21の代わりの働きをする部材として、図2に示すように下ケーシング6に上部に突出する部分6aを設けることが望ましい。突出する部分6aは、平面視で上シュラウド23が存在する部分(下シュラウド21が存在しない部分)に形成されており、羽根2の下部分と下ケーシング6との距離が短くなるようにするものである。突出する部分6aは、下シュラウド21が存在する高さまで突出している。これにより、下ケーシング6に、下シュラウドとして機能させるための構造を持たせることが可能である。
【0040】
上述の羽根車3は、羽根2の内径部分をテーパ状にしている。テーパの底辺部分を下シュラウド21と一体化させている。テーパ部分以外の羽根2の上部は、全て上シュラウド23と一体化している。また図5に示されるように、上シュラウド23の内径D1と下シュラウド21の外径D2とが略等しくされている(D1≒D2、またはD1≧D2である)。このような形状により、羽根車3を上下金型のみで一体成形することが可能となり、量産性の高い羽根車3および遠心式ファン1を提供することが可能となる。
【0041】
さらに、空気流入口の径を広げたり、狭めたりする必要が無いため、静圧・風量の低下を抑制することができる。
【0042】
さらに本実施の形態における遠心式ファン1では、羽根2のテーパ形状により風の流れを改善することができる。また、流入口部をシュラウドで覆うことができる。このため、低騒音化を実現することができる。この点について以下に説明する。
【0043】
図8は、従来の羽根車の断面形状と騒音特性とを示す図である。
【0044】
図8(A)の断面図に示されるように、従来の羽根車3’は、下シュラウド21’と、上シュラウド23’と、下シュラウド21’および上シュラウド23’の間に設けられる複数の羽根2’とを備えている。下シュラウド21’の外径は、上シュラウド23’の外径と等しい。このため、羽根車3’を上下金型のみで一体成形することができない。
【0045】
図8(B)においては、図8(A)の羽根車3’を駆動したときの騒音特性を、その横軸に周波数を、縦軸に騒音値(dB(A))をとって示している。
【0046】
騒音は全体で、58.0dB(A)であり、また、図8(B)に示されるように、離散周波数騒音、広帯域騒音(乱流騒音)のいずれにおいても高めの数値を示している。
【0047】
図9は、本発明の実施の形態における羽根車の断面形状と騒音特性とを示す図である。
【0048】
図9(A)の断面図に示されるように、本実施の形態における羽根車3は、下シュラウド21と、上シュラウド23と、下シュラウド21および上シュラウド23の間に設けられる複数の羽根2とを備えている。下シュラウド21の外径は、上シュラウド23の内径と略等しい。このため、羽根車を上下金型のみで一体成形することが可能である。
【0049】
図9(B)においては、図9(A)の羽根車を駆動したときの騒音特性を、その横軸に周波数を、縦軸に騒音値(dB(A))をとって示している。
【0050】
騒音は全体で、57.3dB(A)であり、また、図9(B)の実線の円内に示されるように、離散周波数騒音(羽根ブレードの1次、2次騒音)が図8(B)と比べて低下している。また、図9(B)の一点鎖線の円内に示されるように、広帯域騒音(乱流騒音)も、図8(B)と比べて低下している。
【0051】
図10は、変形例における遠心式ファンの羽根車の断面図である。
【0052】
この羽根車が図1〜7で示した羽根車と異なる点は、下シュラウド21の外径を外方向に延在させるための底板(プレート)21aが、羽根車3の下に取り付けられている点である。底板21aの中空部分の直径(内径)は、下シュラウド21の外径に等しい。底板21aの外径は、上シュラウド23の外径に等しい。これにより、上シュラウド23の外径と底板21aの外径とを一致させることができ、図8のような羽根車の構成と同様のP−Q特性を確保することができる。すなわち底板21aは、いわば後付の下シュラウドとして機能する。底板21aを取り付けることにより、P−Q特性は維持しつつ騒音を低減することも可能となる。
【0053】
本実施の形態においても、底板21aを除いた羽根車3の部分は、上下金型のみで一体成形することが可能であり、羽根車の生産性を高めることができる。
【0054】
[その他]
【0055】
本実施の形態におけるファンは、ターボ型、多翼型、ラジアル型等のあらゆる遠心式ファンに適応することができる。ファンを搭載する装置としては、主に吸込み冷却を要する製品(家電、PC、OA機器、車載機器等)などに適用が可能である。
【0056】
[実施の形態における効果]
【0057】
以上のように本実施の形態における羽根車は、平面視で上シュラウドと下シュラウドとの重なり部分がない。このため、上下金型による一体成形で羽根車を製造することが出来、羽根車の生産性が高いという効果がある。
【0058】
各羽根の内径部分の上部は、上シュラウドの頂点に接する。各羽根の内径部分は、その位置からある傾き(テーパ角度(γ))を持って下部へ下っており、各羽根の内径部分の下部は下シュラウドと接している。これにより、流入口径が広がることがないため、最大静圧が低下することもない。
【0059】
また本実施の形態によると、空気の流れに沿った効率の良い羽根形状の作成が可能となり、高流量・高静圧化・低騒音化につながるという効果がある。
【0060】
[他の実施の形態]
【0061】
図11は、他の実施の形態における遠心式ファンの斜視図であり、図12は、図11の遠心式ファンの中央縦断面図である。
【0062】
図11の遠心式ファンが図1の遠心式ファンと異なる点は、上ケーシング5Aの構造が異なる点である。すなわち上ケーシング5Aの上面には、複数の凹部54が形成されており、凹部と凹部との間(凹部54が形成されていない部分)がリブ52となっている。
【0063】
凹部54は、回転軸11の周りを取り囲むように複数形成されている。リブ52は、回転軸11を中心として放射状に形成されている。凹部54の数は、図11に示されるように16個である。リブ52の数も16個である。凹部54やリブ52の個数は、これに限定されるものではない。
【0064】
図12に示されるように、上シュラウド23の上面(上ケーシング5Aと向き合う面)は、回転軸11から離れるにつれて下ケーシング6に近付く部分(第1の部分)を有している。この部分において、上シュラウド23の上面は曲面である。
【0065】
凹部54は、回転軸11に近い部分で浅く、回転軸11から遠い部分で深くなっており、両部分を結ぶ凹部54の底面は曲面となっている。凹部54の底面と、その裏側にある上ケーシング5Aの下面(上シュラウド23と対向する面)とで挟まれる部分の厚さは、一定に保たれている。この厚さが一定に保たれる部分における、上ケーシング5Aの下面部分(第2の部分)は、凹部54の底面形状と略等しい(または等しい)曲面となっている。第1の部分における面と、第2の部分における面とは、略等しい(または等しい)曲面である。
【0066】
このような構成により、本実施の形態における遠心式ファンは、以下のような特徴を有する。
【0067】
(1)吸込み口(吸入口)8が存在する側のケース(上ケーシング5A)の下面を、上シュラウド23の上面と近似させた(または等しい)曲率を持たせた形状としている。これにより、羽根車3の吐き出し側から出てきた空気が、上ケーシング5Aと上シュラウド23との間の空間を、吸込み口8方向に逆流することが抑制される。これにより、ファン特性の悪化が防止される。
【0068】
(2)上ケーシング5Aの下面を、単純に上記(1)で述べた形状とすると、上ケーシング5Aが肉厚となる。凹部54を設けることで、上ケーシング5Aが肉厚となることを防ぐことができる(材料の使用量を少なくすることができる)。凹部54は回転軸11を中心としたドーナツ形状の1つの凹部としてもよいが、所定の角度毎にリブ52を設けることで、上ケーシング5Aに一定の剛性を持たせることができる。
【0069】
(3)羽根車3としては、図1〜10のいずれのものを用いてもよい(従来のものを用いてもよい)。また、羽根2の形状も任意である。
【0070】
図13は、図2の断面で示される遠心式ファンの上シュラウドと上ケーシングとの間の風の流れを示す図であり、図14は、図12の断面で示される遠心式ファンの上シュラウドと上ケーシングとの間の風の流れを示す図である。
【0071】
図13に示されるように、上ケーシング5の羽根車3に向かう側の面が平らである場合、羽根車3と上ケーシング5との間に小室が形成され、羽根車3から吹き出した空気の一部がこの小室内を吸込み口8方向に逆流する。また、逆流した空気の一部は小室内で渦を巻く。
【0072】
これに対して図14に示されるように、上ケーシング5Aに凹部54を設け、上ケーシング5Aの羽根車3に向かう側の面に、羽根車3の上シュラウドと同じ曲率の形状を付与することで、空気の逆流が抑制(改善)される。
【0073】
図15は、図2の断面で示される遠心式ファンと、図12の断面で示される遠心式ファンとの風量と圧力の特性を示す図である。
【0074】
図においては、図12の断面で示される遠心式ファンの特性を「本発明(逆流防止ケース)」のマークで示しており、図2の断面で示される遠心式ファンの特性を「従来例(フラットケース)」のマークで示している。すなわち、図2に示される上ケーシング5の下部がフラットな構造をフラットケースと呼んでおり、図12に示される上ケーシング5Aの構造を逆流防止ケースと呼んでいる。
【0075】
図15に示されるように、空気の逆流を防止する構造を採用することにより、ファンの特性を改善することができる。
【0076】
図16は、変形例における遠心式ファンの断面構造を示す図であり、図17は、変形例における遠心式ファンの断面図である。
【0077】
本変形例における遠心式ファンは、図11および12で示したファンの上ケーシング5Aに遠心式ファンの取り付け用のフランジ56A,56Bを一体構造として形成したものである。フランジ56A,56Bにはねじ穴が開けられており、ねじ穴にねじを通すことで、ファンを他の部品に取り付けることが容易となる。フランジは、1個以上または複数個あればよく、ファンの取付を容易にすることができる。
【0078】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 遠心式ファン
2 羽根
3 羽根車
4 ケーシング
5 上ケーシング
5A 上ケーシング
6 下ケーシング
6a 下ケーシングの突出部
7 支柱
8 吸込み口
9 吹出し口
11 回転軸
13 ファンモータ
21 下シュラウド
21A 下シュラウド内径
21B 下シュラウド外径
23 上シュラウド
23A 上シュラウド内径
23B 上シュラウド外径
52 リブ
54 凹部
56A,56B フランジ
D1 上シュラウド内径
D2 下シュラウド外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吸込み口が形成された上ケーシングと、
下ケーシングと、
前記上ケーシングおよび前記下ケーシングの間に位置する羽根車とを備えた遠心式ファンであって、
前記羽根車は、前記上ケーシング側に位置する上シュラウドと、前記上シュラウドの下に設けられる、円周上に配列される複数の羽根とを備え、回転軸を中心に回転することが可能であり、
前記上ケーシングおよび前記下ケーシングは、開放型のケーシングを構成し、
前記上シュラウドの前記上ケーシングと向き合う面は、前記回転軸から離れるにつれて前記下ケーシングに近付く第1の部分を有し、
前記上ケーシングの前記上シュラウドと向き合う面は、前記上シュラウドの前記第1の部分と向き合う第2の部分において、前記回転軸から離れるにつれて前記下ケーシングに近付く形状を有する、遠心式ファン。
【請求項2】
前記羽根車は、前記複数の羽根の下に設けられる下シュラウドを有し、
前記下シュラウドの外径は、前記上シュラウドの内径以下であり、
前記羽根の内径部分は、前記上シュラウドの内径部分と、前記下シュラウドの内径部分とを結ぶ傾斜部を有する、請求項1に記載の遠心式ファン。
【請求項3】
前記上シュラウドの前記上ケーシングと向き合う面の前記第1の部分の形状と、前記上ケーシングの前記上シュラウドと向き合う面の前記第2の部分の形状とは略等しい、請求項1または2に記載の遠心式ファン。
【請求項4】
前記上ケーシングは、前記上シュラウドの前記第1の部分と向き合う前記第2の部分を形成するためのリブを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の遠心式ファン。
【請求項5】
前記上ケーシングは、遠心式ファンを取り付けるためのフランジ部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の遠心式ファン。
【請求項6】
平面視で前記上シュラウドと前記羽根とが存在する場所において、前記上シュラウドと前記羽根とは接している、請求項1から5のいずれか1項に記載の遠心式ファン。
【請求項7】
前記複数の羽根の各々は、前記回転軸から遠ざかるにつれ、その厚さが薄くなる形状を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の遠心式ファン。
【請求項8】
前記下ケーシングは、平面視で前記上シュラウドが存在する部分において、前記羽根車の方向に突出する部分を有し、
吸入み口から吸入した空気を、前記羽根車の回転に伴う遠心力によって羽根車の径の外方に向けて吹き出す、請求項1から7のいずれか1項に記載の遠心式ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−24208(P2013−24208A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162326(P2011−162326)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】