説明

遠隔作業支援システム、及びその表示方法

【課題】指示者や作業者に作業の指示の提示及びその受取りに対する負担を課することなく、容易に且つ正確に指示を伝達することが可能な遠隔作業支援システム、及びその表示方法を提供する。
【解決手段】作業対象物を撮影する電子カメラと、外界をシースルー可能な表示ユニットと、を備えた頭部装着式映像表示装置と、電子カメラで撮影された作業対象物の映像を表示するモニタを備えて、頭部装着式映像表示装置に、作業者による作業の部位を指示するための情報を提供する遠隔指示装置と、を有し、頭部装着式映像表示装置は、遠隔指示装置から提供された情報に基づいて表示ユニットに、作業者による作業の部位を指示する指標を表示する指標表示処理部を有し、指標表示処理部は、指標を、作業者が表示ユニットの画面を通して観察できる作業対象物の光学像における対象部位に重ねて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔作業支援システム、及びその表示方法に関し、特に頭部装着式映像表示装置を備えた遠隔作業支援システム、及びその表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観察者の頭部や顔面に着脱自在に装着され、小型のCRTや液晶表示素子等の映像表示素子から得られる映像(以下、画像とも称す。)を、接眼光学系によって観察者の眼球に直接投影させることで、恰も該映像が空中に拡大投影されているかの様な虚像の観察を可能にした頭部装着式映像表示装置、すなわちHMD(Head Mount Display)が知られている。
【0003】
HMDは、DVD、ビデオ等のコンテンツ映像の観賞用や、産業機器若しくは医療機器等の遠隔操作用としての表示装置として利用され、その用途は多岐に渡っている。
【0004】
遠隔操作用としては、作業者が電子カメラを備えたHMDを装着し、指示者が電子カメラで撮影された作業対象物の映像を、遠隔地に設けられた例えばホストコンピュータ等のモニタで観察しながら、作業者に音声や映像による適切な情報を提供し作業指示を行う、といった遠隔作業支援システムが知られている。
【0005】
ここで、この様な遠隔作業支援システムを用いて、指示者が作業者に対して、多数の同じ形のスイッチが並んだパネル(作業対象物)の操作方法を指示する場合を考えると、あるスイッチを押す作業を伝える場合、従来は、指示者が電子カメラで撮影された映像をモニタで観察しながら、例えば「上から4つ目で、左から3つ目のスイッチを・・・」と言う様に、操作すべきスイッチの場所、そのスイッチをどの様にするか等を、作業者に口頭で説明する。作業者は指示者からの指示を音声で受取り、その作業を実行する。
【0006】
しかしながら、この様な従来の遠隔作業支援システムでは、指示者は作業の指示内容を「上から4つ目で、左から3つ目のスイッチを・・・」という様に具体的かつ詳細に言葉を用いて説明しなければならず、非常に負担がかかるという問題があった。また、作業者も指示者からの指示内容を注意深く聞く必要があり、指示者同様、非常に負担がかかるという問題があった。
【0007】
そこで、この様な問題に対応する為に、種々の遠隔作業支援システムが検討されている。例えば、作業者がHMDに設けられた電子カメラで撮影されてHMDの映像表示部に表示される作業対象物の映像を観察しながら作業を行い、指示者が同じ映像を遠隔地に設けられたホストコンピュータのモニタで観察しながら、ホストコンピュータを操作して作業者に映像による作業指示を行う遠隔作業支援システムが知られている。
【0008】
具体的には、モニタに表示されている作業対象物の映像において、指示者が作業者に操作して欲しい例えばスイッチをマウスアイコンで示すと、作業者が装着しているHMDの映像表示部に表示されている作業対象物の映像におけるスイッチの場所に、マウスアイコンを表示させるものである(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−132487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この様に、特許文献1に開示されている遠隔作業支援システムは、作業者が装着しているHMDの映像表示部に表示されている作業対象物の映像に、作業者が操作すべきスイッチの場所を示すマウスアイコンを重ねて表示させることにより、作業者が操作すべきスイッチを容易に視認できる様にするものである。
【0010】
しかしながら、映像としての作業対象物は、その大きさや位置が現実の作業対象物の光学像と異なることから、マウスアイコンにより操作すべきスイッチを映像上で確認できたとしても、現実の作業対象物におけるスイッチの場所に容易に手差し伸べることは困難なものであると考えられる。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、指示者や作業者に作業の指示の提示及びその受取りに対する負担を課することなく、容易に且つ正確に指示を伝達することが可能な遠隔作業支援システム、及びその表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、下記の1乃至5のいずれか1項に記載の発明によって達成される。
【0013】
1.作業者による作業の対象となる作業対象物を撮影する電子カメラと、
映像を表示し、作業者が外界をシースルー可能な表示ユニットと、を備えた頭部装着式映像表示装置と、
前記電子カメラで撮影された前記作業対象物の映像を表示するモニタを備えて、前記頭部装着式映像表示装置に、作業者による作業の部位を指示するための情報を提供する遠隔指示装置と、を有し、
前記頭部装着式映像表示装置を装着した作業者に、指示者が前記モニタに表示される前記電子カメラによって撮影された前記作業対象物の映像に基づいて、前記遠隔指示装置により前記頭部装着式映像表示装置を介して作業指示を与える遠隔作業支援システムであって、
前記頭部装着式映像表示装置は、前記遠隔指示装置から提供された前記情報に基づいて前記表示ユニットに、作業者による作業の部位を指示する指標を表示する指標表示処理部を有し、
前記指標表示処理部は、前記指標を、作業者が前記表示ユニットの画面を通して観察できる前記作業対象物の光学像における対象部位に重ねて表示することを特徴とする遠隔作業支援システム。
【0014】
2.前記遠隔指示装置は、前記電子カメラによって撮影され前記モニタに表示される前記作業対象物の映像に、前記表示ユニットのシースルー領域を表す視野枠を、重ねて表示する視野枠表示処理部と、
前記視野枠表示処理部によって前記モニタに表示される前記視野枠が表された前記作業対象物の映像において、前記視野枠の位置を基準とした、作業者が作業すべき部位の位置の座標を検出する座標検出部と、を有し、
前記遠隔指示装置は、前記座標検出部で検出された作業者が作業すべき部位の位置の座標を前記情報として前記頭部装着式映像表示装置に提供することを特徴とする前記1に記載の遠隔作業支援システム。
【0015】
3.前記遠隔指示装置は、前記モニタに表示された前記作業対象物の映像上で、指示者の操作により、作業者が作業すべき部位を指定する操作部を有し、
前記座標検出部は、前記操作部によって指定された作業者が作業すべき部位の位置の座標を検出することを特徴とする前記2に記載の遠隔作業支援システム。
【0016】
4.前記操作部は、ライトペンまたはマウスであることを特徴とする前記3に記載の遠隔作業支援システム。
【0017】
5.使用者が外界をシースルー可能な表示ユニットを備えた頭部装着式映像表示装置に設けられた電子カメラによって撮影された映像に、前記表示ユニットのシースルー領域を表す視野枠を重ねて外部に設けられたモニタに表示する表示方法であって、
前記表示ユニットの画面の一隅に表示された第1の指標を、使用者が前記表示ユニットの画面を通して観察できる調整用の第2の指標の光学像に、一致させる第1の工程と、
前記第1の工程により、前記第1の指標と前記第2の指標が一致した時に、前記電子カメラで撮影され前記モニタに表示される前記第2の指標の位置を、前記表示ユニットの画面の前記一隅に対応する前記視野枠の一隅と決定する第2の工程と、
前記第2の工程を繰返し、前記視野枠の他の一隅の位置を決定する第3の工程と、
前記第2の工程および前記第3の工程で決定された前記視野枠の複数の隅の位置に基づいて視野枠生成し、前記電子カメラによって撮影された映像に重ねて表示する第4の工程と、を有することを特徴とする表示方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作業者が作業すべき部位を指示する指標を、作業者が表示ユニットの画面を通して観察できる作業対象物の現実の光学像における対象部位に重ねて表示する様にした。すなわち、従来の様に、指標を作業対象物の映像における対象部位に重ねて表示するのではなく、現実の光学像における対象部位に重ねて表示する様にした。これにより、指示者や作業者に作業の指示の提示及びその受取りに対する負担を課することなく、容易に且つ正確に指示を伝達することができる。また、作業者は、指示された部位に容易に手差し伸べることができ、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面に基づいて、本発明に係る遠隔作業支援システムの実施の形態を説明する。尚、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0020】
最初に、遠隔作業支援システム1の構成を図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る遠隔作業支援システム1の全体構成の概要を示す模式図である。
【0021】
遠隔作業支援システム1は、図1に示す様に、HMD2、遠隔指示装置4等から構成される。遠隔指示装置4は、ホストコンピュータ5、映像・音声記録サーバ6、及びコンテンツサーバ7等から構成される。
【0022】
ホストコンピュータ5と映像・音声記録サーバ6、コンテンツサーバ7は、イーサーネットENを介して結ばれ、ホストコンピュータ5とHMD2は、インターネットINや携帯、PHS、無線LAN等の公衆回線網PN等を介して結ばれている。
【0023】
この様な構成の遠隔作業支援システム1は、作業者Bが後述のカメラユニット28を備えたHMD2を装着し、カメラユニット28が捕えた作業対象物の映像を、指示者Aが遠隔地に設けられた遠隔指示装置4の後述のモニタ53で観察しながら、遠隔指示装置4によりHMD2を介して作業者Bに映像や音声による適切な情報を提供し、作業指示を行うものである。
【0024】
次に、本発明における頭部装着式映像表示装置に該当するHMD2の構成を図2を用いて説明する。図2は、本発明に係るHMD2の全体構成図である。
【0025】
HMD2は、図2に示す様に、テンプル21R,21L、ブリッジ22、鼻当て23R,23L、透明基板24R,24L、表示ユニット25(LCD表示部26、接眼光学系27)、カメラユニット28、イヤホン29R,29L、マイク30、及び制御ユニット31等を有している。
【0026】
HMD2は、カメラユニット28で撮影された映像や、遠隔指示装置4から伝送された映像、及び遠隔指示装置4から提供された作業者Bによる作業の部位を指示するための情報に基づいた指標等を表示ユニット25に設けられたLCD表示部26に表示させ、該LCD表示部26から得らた映像を、接眼光学系27によって装着者(以下、作業者Bとも称する。)の眼球に直接投影させることで、恰も該映像が空中に拡大投影されているかの様な虚像の観察を可能にしている。
【0027】
テンプル21R,21Lは、可撓性を有する弾性材等により構成された長尺状の部材であり、装着者の耳や側頭部に掛止され、HMD2の装着者に対する頭部への保持及び装着位置の調整を行う為のものである。尚、テンプル21R,21Lは、回動部21Ra,21Laにおいて矢印P,Q方向に回動可能に構成されており、HMD2を使用しない場合には、テンプル21R,21Lを矢印P,Q方向に回動させて透明基板24R,24Lに沿わせることにより、コンパクト化することができる。
【0028】
ブリッジ22は、HMD2の装着者に対する顔面への保持を行う鼻当て23R,23Lを備え、透明基板24R,24Lの互いに対向する所定位置に架け渡された短尺の棒状部材であり、透明基板24Rと透明基板24Lとを一定の間隙を介した相対位置関係に保持するものである。
【0029】
透明基板24R,24Lは、一方の眼球に対応した位置にU字型のスペース24Rsを形成する略平板状の透明体である。また、透明基板24Rに囲まれて形成されるU字型のスペース24Rsには、接眼光学系27が嵌め込まれている。
【0030】
表示ユニット25は、LCD表示部26、及び接眼光学系27等を有し、カメラユニット28で撮影された映像や、制御ユニット31に設けられた後述のネットワークI/F36を介して遠隔指示装置4から伝送された映像、及び遠隔指示装置4から提供された作業者Bによる作業の部位を指示するための情報に基づいた指標等を表示する。
【0031】
カメラユニット28は、本発明における電子カメラに該当し、図示しない後述のズームレンズ281、CCD(Charge Coupled Device)282、及び画像処理部284等を有し、装着者の周囲の外界情景を撮影するものであり、ズームレンズ281によって結像された被写体光学像を、CCD282によって光電変換して画像信号(映像信号)を生成し、画像処理部284等により画像信号に所定の画像処理を施し画像(映像)を生成する。
【0032】
イヤホン29R,29Lは、装着者の耳に挿入され、装着者に音声を提供する。
【0033】
マイク30は、装着者の音声を音声信号に変換する。
【0034】
制御ユニット31は、マイクロコンピュータからなり、電源スイッチ351、操作スイッチ352等を有し、これら各種操作スイッチからの信号、及び遠隔指示装置4からの制御信号等を受けて、HMD2で行われる表示動作や画像信号処理動作を統括的に制御するものである。
【0035】
ここで、表示ユニット25の構成を、図3を用いて説明する。図3は、本発明に係るHMD2における表示ユニット25の左側面からの側断面図であり、主に表示ユニット25の内部構成を示している。
【0036】
図3に示す様に、表示ユニット25は、筐体261、LED(Light Emitting Diode)262、コリメータレンズ263、LCD(Liquid Crystal Display)264からなるLCD表示部26、及びプリズム271、HOE(Holographic Optical Element)272からなる接眼光学系27等から構成される。
【0037】
LCD表示部26の筐体261の内部には、LED262、コリメータレンズ263、及びLCD264が内蔵された状態で、該筐体261が接眼光学系27のプリズム271の上端部において上斜め前方(図3では右斜め上方向)に突出する態様で取り付けられている。
【0038】
LED262は、所定波長色を含む白色発光ダイオード(LED)からなる点光源である。
【0039】
コリメータレンズ263は、LED262の光をほぼ平行光にしてLCD264に投光するものである。
【0040】
LCD264は、カメラユニット28で撮影され生成された映像信号や、制御ユニット31に設けられた後述のネットワークI/F36を介して遠隔指示装置4から伝送された映像信号、及び遠隔指示装置4から提供された作業者Bによる作業の部位を指示するための情報等に基づき映像(画像)を生成するものであり、例えば透過型の液晶表示パネルである。
【0041】
プリズム271は、ガラスや透明樹脂等からなる略板状の透明部材であり、LCD264からの光を内部で複数回の反射を行わせるものである。プリズム271の上端部は、LCD264からの光の大部分を内部に採光できるように、上方に向かってより肉厚となるように前面側(接眼面と反対側)が突き出るように楔形状に形成された肉厚部271bが形成されている。
【0042】
また、プリズム271の下端部には、傾斜面271aが形成されており、プリズム271は、透明基板24Rに形成された傾斜面24Raに対しHOE272を介して接合(例えば接着)されている。また、プリズム271の表裏面は、透明基板24Rの表裏面に対して面一とされている。これにより、プリズム271は、透明基板24Rと一枚の板状に一体化されている。
【0043】
HOE272は、光学的に軸非対称な所謂自由曲面で構成されて正のパワーを有する体積位相型のホログラム光学素子であり、プリズム271の下端部において所定の傾斜角を有して支持されている。HOE272は、プリズム271により導光された光が照射されることにより、光の干渉現象を用いてホログラム映像を眼球Eに提供する。
【0044】
以上のような構成を有する表示ユニット25においては、LED262から射出された光は、コリメータレンズ263を通してLCD264を照明し、この照明によりLCD264で生成された像光は、プリズム271内で複数回の全反射を行った後、HOE272により回折し虚像として装着者の眼球Eに導かれる。
【0045】
さらに、プリズム271は、前方から入射する光を装着者の眼球Eに導くようになっている。これにより、装着者は、外界(前方の被写体)をシースルー可能となり、カメラユニット28で撮影され生成された映像や、制御ユニット31に設けられた後述のネットワークI/F36を介して遠隔指示装置4から伝送された映像、及び遠隔指示装置4から提供された作業者Bによる作業の部位を指示するための情報に基づいた指標等を外界(前方の被写体)と重畳して視認することとなる。
【0046】
次に、図1に戻って、遠隔指示装置4の構成を説明する。遠隔指示装置4はホストコンピュータ5(以下、ホストPC5と称する。)、音声・映像記録サーバ6、及びコンテンツサーバ7等から構成される。
【0047】
ホストPC5は、図1に示す様に、コンピュータ本体51、モニタ53、マウス55、及びキーボード57等を備えた、例えば、パーソナルコンピュータである。
【0048】
ホストPC5は、そのモニタ53に、作業者Bに装着されたHMD2のカメラユニット28が撮影した作業対象物の映像を表示する。指示者Aは、モニタ53に表示された作業対象物の映像を観察しながら、本発明における操作部に該当するマウス55やキーボード57、また図示しないライトペン等によりホストPC5を操作し、HMD2にコンテンツサーバ7に記録されている作業に必要な情報や、作業者Bによる作業の部位を指示するための情報等を提供し、作業者Bに作業指示を行うものである。
【0049】
音声・映像記録サーバ6は、HMD2のカメラユニット28で撮影された映像や作業者Bと指示者Aとの間で交信された音声等の作業記録を記憶する。
【0050】
コンテンツサーバ7には、作業者Bが作業を行う際に必要な映像や音声等の作業支援情報が記録されている。
【0051】
次に、遠隔支援システム1の電気回路構成について図4を用いて説明する。図4は、本発明に係わる遠隔支援システム1の電気回路のブロック構成図である。尚、図4では、図1乃至図3に示した部材と同じ部材には同一の番号を付与した。
【0052】
HMD2の要部電気回路ブロックは、表示ユニット25、カメラユニット28、及び制御ユニット31等から構成される。
【0053】
表示ユニット25は、LCD表示部26、接眼光学系27から構成され、各部位で行われる動作については前述したので説明は省略する。
【0054】
カメラユニット28は、ズームレンズ281、CCD(Charge Coupled Device)282、AFE(Analog Front End)283、及び画像処理部284等を有する。
【0055】
CCD282は、R(赤)光、G(緑)光、B(青)光の各色透過フィルタをピクセル単位(画素単位)で市松模様状に配置させたカラーエリア撮像センサで、ズームレンズ281により結像された被写体光像を、R(赤)光、G(緑)光、B(青)光の各色成分の画像信号(各画素単位で受光された画素信号の信号列からなる信号)に光電変換するものである。
【0056】
AFE283は、制御ユニット31から送信される基準クロックに基づいて、CCD282の駆動を制御し、CCD282から読み出された映像信号(画像信号)に周知のアナログ信号処理を施した後にデジタル映像信号に変換する。
【0057】
この様に、CCD282で読み出された映像信号は、AFE283で所定の処理が施されて、デジタル映像信号に変換される。デジタル化された映像信号は、画像処理部284に取り込まれて所定の処理が行われる。以下、画像処理部284で行われるデジタル映像信号への処理について説明する。
【0058】
最初に、画像処理部284に取り込まれたデジタル映像信号は、CCD282から出力される映像信号の読出しに同期して後述の制御ユニット31中の画像メモリ33に書き込まれる。すなわち、画像処理部284で行われる処理に使用されるデジタル映像信号は、画像メモリ33にいったん記録したものを画像メモリ33から取り出し、画像処理部284中の各部位における処理に使用される。
【0059】
画像処理部284は、図示しない例えば、黒レベル補正部、画素補間部、ホワイトバランス制御部、ガンマ補正部、マトリックス演算部、シェーディング補正部、及び画像圧縮部等を有し、画像メモリ33より取り出したデジタル映像信号に周知の画像信号処理を施すものである。そして、これらの部位で所定の処理を施されたデジタル映像信号は、再度、画像メモリ33に格納される。
【0060】
制御ユニット31は、制御部32、画像メモリ33、VRAM(Video Random Access Memory)34、スイッチ群35、及びネットワークI/F36等から構成される。
【0061】
制御部32は、図示しない各制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算処理や制御処理等のデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)、及び制御プログラム等をROMから読み出して実行するCPU(中央演算処理装置)等からなり、電源スイッチ351及び各種操作スイッチ352等からの信号、及び遠隔指示装置4からの制御信号等を受けて、HMD2で行われる表示動作や画像信号処理動作を統括的に制御するものである。
【0062】
指標表示処理部321は、ホストPC5中の後述の座標検出部512で検出された作業者Bが作業すべき部位の位置の座標に基づいて、表示ユニット25に、作業者Bによる作業の部位を指示する指標を、作業者Bが表示ユニット25の画面を通して観察できる作業対象物の光学像における対象部位に重ねて表示する。
【0063】
画像メモリ33は、制御ユニット31中の制御部32によりデジタル映像信号に対する各種処理を行う為の作業領域として用いられる一時メモリである。
【0064】
VRAM34は、LCD表示部26中のLCD264の画素数に対応した映像信号の記録容量を有し、LCD264に再生表示される映像を構成する映像信号のバッファメモリである。
【0065】
ネットワークI/F36は、HMD2を公衆回線網PNに接続し、サーバ装置4との間で交信を行い、映像、音声、及び各種制御信号等の入出力を行う。
【0066】
次に、ホストPC5の要部電気回路ブロックは、コンピュータ本体51、モニタ53、及びマウス55、キーボード57等から構成される。
【0067】
コンピュータ本体51は、視野枠表示処理部511、及び座標検出部512等を有する。
【0068】
視野枠表示処理部511は、HMD2中の電子カメラ28によって撮影されモニタ53に表示される作業対象物の映像に、HMD2中の表示ユニット25のシースルー領域を表す視野枠を、重ねて表示する。尚、モニタ53に表示される作業対象物の映像に重ねて表示する視野枠の表示方法については後述する。
【0069】
座標検出部512は、視野枠表示処理部511によってモニタ53に表示される視野枠が表された作業対象物の映像において、視野枠の位置を基準とした、作業者が作業すべき部位の位置の座標を検出する。具体的には、指示者Aが、マウス55やキーボード57を操作して、モニタ53上で作業者が作業すべき部位の位置を、アイコンで選択することにより、選択された位置の視野枠の位置を基準とした座標を算出する。
【0070】
この様な構成の作業支援システム1において、本発明は、遠隔地にいる指示者Aが作業者Bに作業して欲しい部位を指示する際に、作業者Bが指示者Aの指示を容易に確認できる様に、作業者Bが作業すべき部位を指示する指標を、作業者Bが表示ユニット25の画面を通して観察できる作業対象物の現実の光学像における対象部位に重ねて表示する様に制御するものである。
【0071】
ここで、作業支援システム1で行われる指標表示動作の流れを図5、及び図6を用いて説明する。図5は、本発明に係る遠隔作業支援システム1で行われる指標表示動作の流れを示すフローチャートである。図6は、本発明に係る遠隔作業支援システムにおける指標表示動作の流れを示す模式図である。
【0072】
最初に、作業者Bが装着したHMD2の表示ユニット25の画面には、図6(a)に示す様に、作業対象物Xのシースルー像S(光学像)がLCD表示領域(シースルー視野)Dを通して観察されている(ステップS1)。
【0073】
一方、遠隔地に設けられた遠隔指示装置4のモニタ53には、図6(b)に示す様に、HMD2のカメラユニット28で撮影された作業対象物Xの映像KIが表示されている。また、映像KIには、HMD2の表示ユニット25のLCD表示領域(シースルー視野)Dを表す視野枠Fが視野枠表示処理部511によって重ねて表示されている(ステップS2)。尚、モニタ53に表示される作業対象物Xの映像KIに重ねて表示される視野枠Fの表示方法については後述する。
【0074】
次に、指示者Aは、視野枠Fと作業対象物Xの映像KIが表示されたモニタ53上で、例えばマウス55を操作して作業者Bが作業すべき部位、例えばスイッチSWの位置を、マウスアイコンで選択する(ステップS3)。スイッチSWが選択されると、座標検出部512は、視野枠Fの4隅P,Q,R,Sの位置の座標を基準としたスイッチSWの位置の座標T0(T0x,T0y)を算出し(ステップS4)、算出した座標T0(T0x,T0y)をHMD2に送出する。
【0075】
ここで、座標T0(T0x,T0y)の算出方法について説明する。モニタ53の原点O(0,0)を基準とした、視野枠Fの4隅P,Q,R,S、及びスイッチSWの位置の座標を、それぞれP(Px,Py),Q(Qx,Qy),R(Rx,Ry),S(Sx,Sy)、及びT(Tx,Ty)とすると、視野枠Fの4隅P,Q,R,Sの位置の座標を基準としたスイッチSWの位置の座標T0(T0x,T0y)は、下記(式1)、(式2)で求められる。
T0x=(Tx−Px)/(Qx−Px) (式1)
T0y=(Ty−Py)/(Sy−Py) (式2)
次に、HMD2の指標表示処理部321は、座標検出部512から取得したスイッチSWの位置の座標T0(T0x,T0y)を、HMD2の表示ユニット25のLCD表示領域(シースルー視野)Dの4隅p,q,r,sの位置の座標を基準とした座標t(tx,ty)に変換する(ステップS5)。
【0076】
ここで、座標t(tx,ty)への変換方法について説明する。表示ユニット25のLCD表示領域(シースルー視野)Dの4隅の座標をp(0,0),q(qx,0),r(rx,ry),s(0,sy)とすると、座標t(tx,ty)は下記(式3)、(式4)で求められる。
tx=T0x・qx (式3)
ty=T0y・sy (式4)
次に、指標表示処理部321は、図6(c)に示す様に、表示ユニット25のLCD表示領域(シースルー視野)Dの座標t(tx,ty)の位置に作業者Bによる作業の部位を指示する指標、例えばポインターPIを、作業者Bが表示ユニット25の画面を通して観察している作業対象物Xのシースルー像S(光学像)に重ねて表示する(ステップS6)。
【0077】
この様にして、作業者Bが作業すべき部位を指示する指標(ポインターPI)を、作業者BがHMD2の表示ユニット25の画面を通して観察できる作業対象物Xのシースルー像S(光学像)における対象部位に重ねて表示することができる。
【0078】
ここで、モニタ53に表示される作業対象物Xの映像KIに重ねて表示される視野枠Fの表示方法について図7、図8を用いて説明する。図7は、本発明に係るモニタ53に表示される視野枠Fの表示方法の流れを示すフローチャートである。図8は、本発明に係るモニタ53に表示される視野枠Fの表示方法の流れを示す模式図である。
【0079】
最初に、図8(a1)に示す様に、HMD2の表示ユニット25のLCD表示領域(シースルー視野)Dの1隅sに、本発明における第1の指標に該当するマーカMを表示させる(ステップS1)。また、図8(b1)に示す様に、ホストPC5のモニタ53に暫定の視野枠Wを表示させる(ステップS2)。
【0080】
次に、図8(a2)に示す様に、外界の任意の位置(例えば作業対象物X上)に、本発明における第2の指標に該当する調整の為の調整チャートCを設置する(ステップS3)。そして、図8(b2)に示す様に、設置された調整チャートCをカメラユニット28で撮影した映像CIをモニタ53に表示する(ステップS4)。
【0081】
次に、HMD2を装着した作業者Bは、図8(a3)に示す様に、頭の向きを変化させて、表示ユニット25のLCD表示領域(シースルー視野)Dの1隅sに表示されているマーカMと、表示ユニット25の画面を通して観察できる調整チャートCの光学像が重なって視認できる様にする(ステップS5;第1の工程)。このとき、図8(b3)に示す様に、モニタ53に表示されている調整チャートCの映像CIと、LCD表示領域(シースルー視野)Dの1隅sに対応する暫定の視野枠Wの1隅Sの位置は、作業者毎の瞳の位置の違い等によりずれている場合がある。
【0082】
そこで、指示者Aは、図8(b4)に示す様に、モニタ53に表示されている暫定の視野枠Wの1隅Sの位置を、マウス55やキーボード57を操作して移動させ、調整チャートCの映像CIと一致させる(ステップS6)。そして、視野枠表示処理部511は、このときの暫定の視野枠Wの1隅Sの位置をLCD表示領域(シースルー視野)Dの1隅sに対応する位置として決定する(ステップS7:第2の工程)。同様にして、LCD表示領域(シースルー視野)Dの他の3隅p,q,rにそれぞれ対応する暫定の視野枠Wの他の3隅P,Q,Rの位置を決定する(ステップS8;第3の工程)。そして、視野枠表示処理部511は、決定した視野枠の座標P,Q,R,Sを4隅とする視野枠Wを表示する(ステップS9;第4の工程)。尚、視野枠Fの位置に厳しい精度が要求されない場合は、視野枠Fの1隅、または、対角線上の2隅の位置のみに基づいて視野枠Fを表示する様にしても良い。
【0083】
この様にして、モニタ53に表示される作業対象物Xの映像KIに、HMD2の表示ユニット25のLCD表示領域(シースルー視野)Dに対応する視野枠Fを重ねて表示することができる。
【0084】
この様に、本発明の実施形態に係る遠隔作業支援システム1においては、作業者Bが作業すべき部位を指示する指標(ポインターPI)を、作業者BがHMD2の表示ユニット25の画面を通して観察できる作業対象物Xのシースルー像S(光学像)における対象部位に重ねて表示する様にした。すなわち、従来の様に、指標を作業対象物の映像における対象部位に重ねて表示するのではなく、現実の光学像における対象部位に重ねて表示する様にした。これにより、指示者や作業者に作業の指示の提示及びその受取りに対する負担を課することなく、容易に且つ正確に指示を伝達することができる。また、作業者は、指示された部位に容易に手差し伸べることができ、作業性を向上させることができる。
【0085】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は前述の実施の形態に限定して解釈されるべきでなく、適宜変更、改良が可能であることは勿論である。例えば、前述の実施の形態においては、マウス55やキーボード57あるいはライトペン等を操作することにより、作業の部位を指示する指標を、表示ユニット25の画面を通して観察できる作業対象物の光学像における対象部位に重ねて表示する様にしたが、矢印や「ここを押す」等の記号や文字をタブレットPCに手書きで入力し、入力した記号や文字を作業対象物の光学像における対象部位に重ねて表示する様にしても良い。これにより、より正確に且つ具体的な指示を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る遠隔作業支援システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係るHMDの全体構成図である。
【図3】本発明に係るHMDにおける表示ユニットの側断面図である。
【図4】本発明に係る遠隔作業支援システムの電気回路ブロック構成図である。
【図5】本発明に係る遠隔作業支援システムにおける指標表示動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る遠隔作業支援システムにおける指標表示動作の流れを示す模式図である。
【図7】本発明に係るモニタに表示される視野枠の表示方法の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明に係るモニタに表示される視野枠の表示方法の流れを示す模式図である。
【符号の説明】
【0087】
1 遠隔作業支援システム
2 頭部装着式映像表示装置(HMD)
21R,21L テンプル
22 ブリッジ
23R,23L 鼻当て
24R,24L 透明基板
25 表示ユニット
26 LCD表示部
261 筐体
262 LED
263 コリメータレンズ
264 LCD
27 接眼光学系
271 プリズム
272 HOE
28 カメラユニット
281 ズームレンズ
282 CCD
283 AFE
284 画像処理部
29R,29L イヤホン
30 マイク
31 制御ユニット
32 制御部
321 指標表示処理部
33 画像メモリ
34 VRAM
35 スイッチ群
351 電源スイッチ
352 操作スイッチ
36 ネットワークI/F
4 遠隔指示装置
5 ホストコンピュータ(ホストPC)
51 コンピュータ本体
511 視野枠表示処理部
512 座標検出部
53 モニタ
55 マウス
57 キーボード
6 映像・音声記録サーバ
7 コンテンツサーバ
A 指示者
B 作業者
C 調整チャート
EN イーサーネット
E 目
IN インターネット
PN 公衆回線網
X 作業対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者による作業の対象となる作業対象物を撮影する電子カメラと、
映像を表示し、作業者が外界をシースルー可能な表示ユニットと、を備えた頭部装着式映像表示装置と、
前記電子カメラで撮影された前記作業対象物の映像を表示するモニタを備えて、前記頭部装着式映像表示装置に、作業者による作業の部位を指示するための情報を提供する遠隔指示装置と、を有し、
前記頭部装着式映像表示装置を装着した作業者に、指示者が前記モニタに表示される前記電子カメラによって撮影された前記作業対象物の映像に基づいて、前記遠隔指示装置により前記頭部装着式映像表示装置を介して作業指示を与える遠隔作業支援システムであって、
前記頭部装着式映像表示装置は、前記遠隔指示装置から提供された前記情報に基づいて前記表示ユニットに、作業者による作業の部位を指示する指標を表示する指標表示処理部を有し、
前記指標表示処理部は、前記指標を、作業者が前記表示ユニットの画面を通して観察できる前記作業対象物の光学像における対象部位に重ねて表示することを特徴とする遠隔作業支援システム。
【請求項2】
前記遠隔指示装置は、前記電子カメラによって撮影され前記モニタに表示される前記作業対象物の映像に、前記表示ユニットのシースルー領域を表す視野枠を、重ねて表示する視野枠表示処理部と、
前記視野枠表示処理部によって前記モニタに表示される前記視野枠が表された前記作業対象物の映像において、前記視野枠の位置を基準とした、作業者が作業すべき部位の位置の座標を検出する座標検出部と、を有し、
前記遠隔指示装置は、前記座標検出部で検出された作業者が作業すべき部位の位置の座標を前記情報として前記頭部装着式映像表示装置に提供することを特徴とする請求項1に記載の遠隔作業支援システム。
【請求項3】
前記遠隔指示装置は、前記モニタに表示された前記作業対象物の映像上で、指示者の操作により、作業者が作業すべき部位を指定する操作部を有し、
前記座標検出部は、前記操作部によって指定された作業者が作業すべき部位の位置の座標を検出することを特徴とする請求項2に記載の遠隔作業支援システム。
【請求項4】
前記操作部は、ライトペンまたはマウスであることを特徴とする請求項3に記載の遠隔作業支援システム。
【請求項5】
使用者が外界をシースルー可能な表示ユニットを備えた頭部装着式映像表示装置に設けられた電子カメラによって撮影された映像に、前記表示ユニットのシースルー領域を表す視野枠を重ねて外部に設けられたモニタに表示する表示方法であって、
前記表示ユニットの画面の一隅に表示された第1の指標を、使用者が前記表示ユニットの画面を通して観察できる調整用の第2の指標の光学像に、一致させる第1の工程と、
前記第1の工程により、前記第1の指標と前記第2の指標が一致した時に、前記電子カメラで撮影され前記モニタに表示される前記第2の指標の位置を、前記表示ユニットの画面の前記一隅に対応する前記視野枠の一隅と決定する第2の工程と、
前記第2の工程を繰返し、前記視野枠の他の一隅の位置を決定する第3の工程と、
前記第2の工程および前記第3の工程で決定された前記視野枠の複数の隅の位置に基づいて視野枠生成し、前記電子カメラによって撮影された映像に重ねて表示する第4の工程と、を有することを特徴とする表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−124795(P2008−124795A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306494(P2006−306494)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】