説明

遠隔検針システム

【課題】複数台の変圧器にそれぞれ接続された子局からの測定情報を1台の親局で取得可能にすることにより、導入コストの抑制およびトラフィックの低減を可能にする。
【解決手段】子局10は電気メータ11から需要家における使用電力量を取得する。親局20および中継親局30は、配電線50を通信路に用いた電力線搬送通信により子局10と通信可能であり、子局10が取得した検針データを収集する。中継親局30は、親局20との間で無線通信により通信を行い、子局10から取得した検針データを親局20に通知する。親局20は、配電線50を介して直接接続された子局10から取得した検針データと、中継親局30を経由して子局10から取得した検針データとを集約し、通信網51を通して上位集約サーバ40に検針情報を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家に設けた各子局からの検針データを、少なくとも一部に電力線搬送通信による通信路を通して親局に集め、さらに、親局が別の通信路を用いて検針情報を上位集約サーバに通知する遠隔検針システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気、ガス、水、熱のような供給媒体は、送電線、ガス導管、水道管、熱導管のような供給設備を通して供給事業者から需要家に供給されている。供給媒体の需要家では、供給媒体の使用量を計測器(メータ)により計測しており、供給事業者では、計測器による計測結果を検針員により確認し、需要家に供給媒体の使用量に対する対価を請求している。
【0003】
検針員による検針作業は、人件費が必要であるとともに、計測値の読み間違いが生じるなどの問題があるから、この種の問題を解決するために、検針員を通さずに計測値を管理する技術が種々提案されている。
【0004】
たとえば、集合住宅では、各住戸(需要家)に配置したメータ(電力メータなど)に通信装置としての子局を接続し、電気室や管理人室に配置した親局と子局との間で、電力線搬送通信により通信を行う技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。すなわち、集合住宅に敷設された配電線を親局と子局との間の通信路に用い、メータにより計測した検針データを子局から親局に配電線を通して伝送する技術が提案されている。また、親局はインターネットのような通信網を通して上位集約サーバと通信可能であって、子局から収集した検針データを、上位集約サーバに通知することが可能になっている。
【0005】
戸建て住宅では、柱上変圧器の二次側から電力が供給される需要家において、メータに子局を付設し、柱上変圧器の近傍に配置された親局と子局との間で、柱上変圧器の二次側の配電線を電力線搬送通信による通信路に兼用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−180021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、柱上変圧器の二次側の配電線からは、一般に20〜40件程度の需要家が受電している。また、集合住宅やテナントビルなどでは、柱上変圧器に代えて降圧変圧器を電気室に設ける場合があり、降圧変圧器の二次側の配電線から需要家が受電している。
【0008】
一方、親局と子局との間の通信路には柱上変圧器や降圧変圧器の二次側の配電線を兼用しているから、通常は、柱上変圧器ごとに親局が必要になる。
【0009】
特許文献1のように、集合住宅などの建物内に設けられた複数台の降圧変圧器では、二次側間に電力線搬送通信に用いる通信信号を通過させるカプラを設け、カプラを通して子局と親局との間で通信信号を授受する技術が提案されている。建物内に配置されている降圧変圧器は、二次側の配電線の物理的な距離が比較的小さいから、異なる降圧変圧器の二次側の配電線の間にカプラを設けることは比較的容易である。しかしながら、異なる柱上変圧器は、数十m以上離れて配置されていることが多いから、二次側の配電線間にカプラを設けることは実用的とは言えない。
【0010】
一方、各柱上変圧器の二次側から受電している需要家を単位として親局を設けることが考えられる。しかしながら、親局は、子局から取得した検針データ(計測情報)を集約して検針情報として上位集約サーバに伝送するために、多くの機能を備えており、このような親局を柱上変圧器と同数設けることは、コスト増につながる。さらに、上位集約サーバの通信相手である親局の台数が多いことは、上位集約サーバと親局との間の通信路におけるトラフィックが増加することになり、通信速度の低下につながる。
【0011】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、複数台の変圧器の二次側にそれぞれ接続された子局からの測定情報を1台の親局において取得可能にすることにより、親局の設置台数を低減させ、結果的にコスト増の抑制および上位集約サーバと親局との間の通信路におけるトラフィックを低減させることを可能にした遠隔検針システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、供給事業者から供給設備を通して購入した供給媒体の需要家における使用量を取得する複数台の子局と、子局のいずれかが接続される複数系統の配電線と、配電線のいずれか1系統に接続され当該配電線に接続された子局との間で当該配電線を通信路に用いた電力線搬送通信を行うことにより子局が取得した計測結果を収集し通信網を通して計測結果に基づく検針情報を上位集約サーバに通知する親局と、配電線の他の系統に接続され当該配電線に接続された子局との間で当該配電線を通信路に用いた電力線搬送通信を行うことにより子局が取得した計測結果を収集する中継親局とを有し、中継親局は、配電線を通信路に用いた電力線搬送通信とは異なる通信路を用いて親局と通信を行うことにより、子局が取得した計測結果を親局に通知する構成を採用している。
【0013】
中継親局は、配電線が共通である子局が取得した計測結果を定期的に収集し、収集した計測結果を親局に通知する機能を備えることが望ましい。
【0014】
また、親局は、中継親局から通知されることが予定されている子局の計測結果が通知されない場合に、当該中継親局を経由して当該子局に計測結果の送信を要求する機能を備えることが望ましい。
【0015】
親局と中継親局とは、配電線が共通ではない子局との間で電力線搬送通信が可能になるクロストークを生じていることが検知されると、配電線が共通である子局との間でのみ電力線搬送通信が可能になるように電力線搬送通信のタイミングを調節する機能を備えることが望ましい。
【0016】
さらに、親局と中継親局と子局とは、それぞれ需要家をグループ化する物件情報が設定可能であって、親局と中継親局とは、配電線を通信路に用いる電力線搬送通信を行った子局の物件情報が、設定されている物件情報と不一致であるときに、当該子局の物件情報に一致する物件情報が設定された親局または中継親局に、当該子局を対応付ける機能を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、複数台の変圧器の二次側の配電線に接続した子局からの測定情報を1台の親局において取得することが可能になり、親局の設置台数を低減させ、結果的にコスト増の抑制および上位集約サーバと親局との間の通信路におけるトラフィックを低減させることが可能になるという利点がある。また、中継親局は、親局よりも必要なハードウェア資源が少ないから、親局を中継親局と同数配置する場合に比較すると、導入コストを削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上に用いる子局を示すブロック図である。
【図3】同上に用いる親局を示すブロック図である。
【図4】同上に用いる中継親局を示すブロック図である。
【図5】同上の全体動作を示す動作説明図である。
【図6】同上の他の動作を示す動作説明図である。
【図7】同上のさらに他の動作を示す動作説明図である。
【図8】同上においてクロストークが生じた場合の動作説明図である。
【図9】同上において子局が誤認識された動作例を示すブロック図である。
【図10】図9の動作においてアドレスを修正する動作を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態では、戸建て住宅のように需要家が1つの建物を占有し、柱上変圧器の二次側から複数の需要家が受電する場合を想定して説明する。ただし、集合住宅のように1つの建物に複数の需要家が存在し、建物内に複数配置された降圧変圧器の二次側から需要家が受電する場合であっても同様の技術を採用することが可能である。1つの建物に複数の需要家が存在する場合としては、集合住宅だけではなく、事務所や店舗として使用されるテナントビルなど、複数の需要家がそれぞれ独立したスペース(事務所、店舗)を占有する場合もある。
【0020】
また、本実施形態では、供給事業者を電力会社とし、供給媒体を電気として説明する。したがって、各需要家では、それぞれ電力メータ(計測器)により使用電力量を計測する。また、各電力メータにはそれぞれ子局が付設されており、子局は電力メータから需要家による使用電力量を取得する。さらに、柱上変圧器を設けている電柱には、柱上変圧器の二次側の配電線から受電する需要家に設けられた子局から計測結果(以下、「検針データ」と呼ぶ)を取得するために親局と中継親局とのいずれか一方が設けられる。親局および中継親局の機能については後述する。
【0021】
なお、建物内に複数の降圧変圧器を備えている集合住宅では、各降圧変圧器の二次側において親局と中継親局とのいずれか一方を設けてもよい。親局と中継親局とは、建物内の電気室あるいは管理人室などに配置される。
【0022】
子局は、親局と中継親局とのいずれか一方とは、柱上変圧器あるいは降圧変圧器の二次側の配電線を通信路に用いて電力線搬送通信による通信を行う。この動作により、親局または中継親局は、子局から検針データを取得することが可能になる。さらに、中継親局は子局から取得した検針データを親局に転送する機能を有しており、親局は、一部の子局からの検針データについては、中継親局を介して取得することが可能になる。
【0023】
本実施形態では、供給媒体を電気としているが、ガス、水、熱などの供給媒体についてもメータ(計測器)による検針データを親局に送信することができる。
【0024】
図1に示すように、子局10は、需要家ごとの使用電力量を計測する電力メータ11に付設される。各子局10には、通信の際に識別する固有の識別情報として子局IDが設定されている。したがって、子局IDを各需要家ごとの電力メータ11の識別に用いることができる。なお、電力メータ11の識別のために、電力メータ11ごとに識別情報を設定してもよい。
【0025】
上述したように、柱上変圧器(図示せず)を設けた電柱(図示せず)には、それぞれ親局20と中継親局30との一方が配置される。ここに、親局20と中継親局30とを電柱に設置することは必須ではなく、親局20と中継親局30とは、柱上変圧器の二次側の配電線50に接続され、かつ後述するように親局20と中継親局30との間で互いに通信が可能であればよい。親局20と中継親局30との間の通信は、無線通信(電波あるいは光による)を例として説明するが、光ファイバを用いた光通信、あるいは別に設けた通信線による有線通信などを採用することも可能である。
【0026】
子局10は、柱上変圧器の二次側の配電線50を電力線搬送通信による通信路に兼用することにより、親局20または中継親局30に検針データを取得させる。親局20と中継親局30とは無線通信により通信が可能であり、親局20は、同じ配電線50に接続されている子局10から検針データを取得することができる。さらに、親局20は、中継親局30と同じ配電線50に接続された子局10からの検針データについては、中継親局30を介して取得することが可能になっている。そのため、親局20と中継親局30との間では上述のように無線通信により検針データを伝送する。
【0027】
親局20は、インターネットや遠隔検針専用の専用回線のような通信網51を通して、電力会社あるいは電力量の集計サービスを行うサービス事業者が運営する上位集約サーバ40と通信を行う。これにより、親局20は、子局10から取得した電力メータ11ごとの検針データ(計測結果)に基づく検針情報を上位集約サーバ40に送信する。すなわち、親局20は、子局10から取得した検針データを集約し検針情報として上位集約サーバ40に送信する。
【0028】
子局10は、図2に示すように、親局20または中継親局30との間の通信として配電線50を用いるための電力線通信インターフェース12を備える。さらに、通信用インターフェースとして、保守端末(図示せず)との通信を行う保守用通信インターフェース13と、電力メータ11との通信を行うメータ用インターフェース14とを、通信用インターフェイスとして備える。
【0029】
電力線通信インターフェース12は配電線50に接続される。また、保守用通信インターフェース13は、通常は子局10の保守に用いる保守端末との間で無線通信を行い、子局10の点検や設定変更などを行うために用いられる。ここに、親局20および中継親局30も保守端末との無線通信が可能であり、親局20および中継親局30についても子局10と同様に保守端末による保守点検が可能になっている。
【0030】
保守用通信インターフェース13で用いる無線通信は電波を伝送媒体とするのが望ましい。この種の無線通信の規格は種々知られており、WiFi(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの各種規格から選択することができる。伝送媒体は、電波ではなくIrDAのように赤外線を用いることも可能である。
【0031】
子局10には、電力メータ11から取得した検針データを記憶する電力メータ情報記憶部16も設けられる。電力メータ情報記憶部16は、一定時間毎(たとえば、1分毎、5分毎、10分毎など)の検針データを一定期間分(たとえば、1日分)記憶する。子局10は、マイコンからなる子局制御部15を有し、子局制御部15はプログラムの実行により子局10に各種の機能を付与する。
【0032】
一方、親局20は、複数台の子局10と通信可能であって、図3に示すように、インターネットのような通信網51(図1参照)に接続するための上位系通信インターフェース21を備える。上位系通信インターフェース21は、通信網51としてたとえば光回線を用いることにより、高速かつ大容量の通信が可能になっている。また、親局20は、配電線50を通信路に用いて子局10との通信を行うための電力線通信インターフェース22と、保守端末との通信を行う保守用通信インターフェース23とを備える。
【0033】
さらに、親局20は、子局10から取得した検針データを子局IDとともに記憶する管理情報記憶部24と、マイコンからなる親局制御部25とを備える。親局制御部25はプログラムの実行により親局20に各種の機能を付与する。
【0034】
中継親局30は、親局20と同様に複数台の子局10と通信可能であって、図4に示すように、配電線50を通信路に用いて子局10との通信を行うための電力線通信インターフェース32と、保守端末との通信を行う保守用通信インターフェース33とを備える。また、中継親局30は、子局10から取得した検針データを子局IDとともに記憶する管理情報記憶部34と、マイコンからなる中継親局制御部35とを備える。中継親局制御部35はプログラムの実行により中継親局30に各種の機能を付与する。
【0035】
親局20は、子局10から検針データを収集するとともに集約して検針情報を生成し、生成した検針情報を上位集約サーバ40に伝送する。また、上位集約サーバ40は、必要に応じて、親局20あるいは親局2および中継親局30を経由して子局10から検針データを取得する機能を有している。子局10には需要家への電力の供給と遮断とを可能にする開閉器(図示せず)が付設され、上位集約サーバ40では親局20を経由して開閉器の開閉を子局10に指示することも可能になっている。
【0036】
子局10が電力メータ11から収集し電力メータ情報記憶部16に記憶している検針データは、親局20および中継親局30が定期的に収集する。親局20および中継親局30は、たとえば、1日に1回ずつ規定の時刻(たとえば、0:00)において、配電線50を通信路として兼用する電力線搬送通信により子局10に対して検針データの送信を要求し、子局10から検針データを転送させる。このとき、前回の要求以降に電力メータ情報記憶部16に記憶されている検針データが親局20に転送される。このように定期的に行う検針を、以下「定期検針」と呼ぶ。
【0037】
すなわち、図5に示すように、親局20および中継親局30は、定期検針を実施する時刻になると、同じ配電線に接続されている子局10に対して検針テータの取得を要求して定期検針を行う。親局20と中継親局30とは、それぞれが独立して定期検針を行う。すなわち、中継親局30では、定期検針の開始を指示するトリガを他から受けなくても定期検針を行い、子局10から検針データを取得して管理情報記憶部34に格納する。
【0038】
中継親局30は、定期検針により同じ配電線に接続されているすべての子局10から検針データを取得し終わると、取得した検針データを親局20に送信する。この際、親局20と中継親局30との間の通信は、保守用通信インターフェース23,33を用いて無線通信により行われる。親局20と中継親局30との間の通信は、図5において、「収集データ通知」として示してある。
【0039】
このようにして、親局20は、同じ配電線50に接続されている子局10からの検針データだけではなく、中継親局30と同じ配電線50に接続されている子局10からの検針データも併せて取得することができる。親局20が子局10からの検針データを取得した後には、親局20において検針データを集約して検針情報を生成し、通信網51を通して検針情報を上位集約サーバ40に送信する。
【0040】
ここに、定期検針で親局20が子局10から取得した検針データを上位集約サーバ40に送信した場合に、通信状態などによっては、上位集約サーバ40が取得した検針データに脱漏が生じる場合がある。このような場合に備えて、上位集約サーバ40は、子局10を指定し、親局20あるいは親局20および中継親局30を経由して特定の子局10から検針データを個別に取得する機能も備えている。この機能を用いることにより、脱漏している検針データを補完することが可能になる。
【0041】
なお、上述の構成では、保守用通信インターフェース23,33を用いて親局20と中継親局30との間で通信を行っているが、親局20と中継親局30との通信には、保守用通信インターフェース23,23とは別に設けた通信インターフェースを用いてもよい。
【0042】
上述した動作により、中継親局30が管理する子局10の台数が少ない場合でも、中継親機30が収集した検針データを親局20がまとめて管理するから、親局20では比較的多くの台数の子局10を管理することになる。通信網51を通して上位集約サーバ40との通信を行うのは親局20のみであるから、各柱上変圧器の二次側の配電線にそれぞれ親局20を設ける場合と比較すると、上位集約サーバ40と通信する親局20の台数を低減することが可能になる。その結果、通信網51におけるトラフィックの増加を抑制することが可能になる。
【0043】
さらに、中継親局30は、同じ配電線50に接続される子局10についてのみ検針データを扱えばよいから、親局20に比べればハードウェア資源の少ない構成を採用することが可能である。したがって、すべての柱上変圧器の二次側に親局20を設ける構成に比較すると、遠隔検針システムの設備コストを低減することが可能になる。
【0044】
また、中継親局30は、定期検針において、親局20からの指示の有無にかかわらず、同じ配電線50に接続されている子局10から検針データを取得している。すなわち、親局20と中継親局30とは検針データの伝送に関して階層化されているが、子局10からの検針データの収集を独立して行うことができるから、親局10の管理下である子局10を複数系統に分けて検針データを収集していることになる。その結果、1台の親局20のみを用いて同じ台数の子局10からの検針データを取得する場合に比較すると、検針データの取得に要する時間を短縮することが可能になる。
【0045】
ところで、停電が生じるなどしていずれかの中継親局30の計時している時刻が消失した後、時刻が再設定されるまでに定期検針の時刻になった場合を想定する。ここで、計時している時刻の消失した中継親局30を、図6における「中継親局1」であるとする。「中継親局1」では時刻が再設定されていないから、定期検針が行われない可能性がある。一方、親局20は、他の中継親局30からは検針データを取得するが、「中継親局1」からは検針データを取得することができない。このような場合に備えて、親局20では、定期検針の時刻開始から一定時間(たとえば、30分)が経過しても検針データを受け取ることができない中継親機30(ここでは、「中継親局1」)については、次の処理により子局10の検針データを取得する。すなわち、親局20は、図6の下部に記載しているように、「中継親局1」と同じ配電線50に接続されている子局10からの検針データについては、当該「中継親局1」を経由して収集する。
【0046】
この処理によって、いずれかの中継親局30で子局10の検針データを取得していない場合でも、当該中継親局30が管理している子局10の検針データを親局20が個別に取得することにより、親局20では検針データを漏れなく取得することが可能になる。
【0047】
ところで、中継親局30に障害が発生して親局20が子局10から検針データを取得できないという事象だけではなく、親局20に障害が発生して上位集約サーバ40が親局20から検針情報を取得できないという事象も生じることがある。
【0048】
たとえば、親局20あるいは中継親局30の定期検針を行う際に、親局20または中継親局30と子局10との間で、ノイズの影響などにより電力線搬送通信が不通になる状況が発生した場合を想定する。この状況では、上位集約サーバ40が取得した検針情報において、一部の子局10からの検針データが欠落していることになる。このように、特定の子局10からの検針データが欠落している場合には、上述したように、上位集約サーバ40が親局20あるいは親局20と中継親局30とを介して、当該子局10と個別に通信することにより検針データを取得することが可能になっている。
【0049】
上位集約サーバ40が子局10と個別に通信する技術は、需要家に設けられている開閉器を操作して、転居した需要家や電気料金の滞納が生じている需要家への給電を停止する場合にも利用することができる。開閉器を操作して需要家への給電を開始する場合も同様である。
【0050】
このように、上位集約サーバ40が、個々の子局10から検針テータを取得したり、個々の子局10に対して開閉器の制御を指示したりする場合には、各子局10が設けられている場所を特定する必要がある。したがって、子局10の位置を示す位置情報を各子局10に設定しておき、親局20および中継親局30における管理情報として、子局10の位置情報を併せて管理するのが望ましい。位置情報は、需要家の建物を特定する物件情報、電力メータ11の位置情報、電力メータ11に付与した識別情報などから選択される。位置情報は、親局30が検針データを取得する場合と同様に階層化しておき、親局20は、各中継親局30が管理するすべての子局10について位置情報を管理する。
【0051】
上位集約サーバ40が、いずれかの子局10に対してデータの取得を個別に要求する場合や制御を指示する場合には、図7に示すように、親局20が管理している位置情報をインデックスとして親局20に送信する。親局20は、上位集約サーバ40から位置情報を含む要求を受信すると、位置情報に基づいて子局10の識別情報を特定し、目的の子局10が親局20の管理下に存在していれば親局20から子局10に要求を送信する。また、親局20は、目的の子局10が中継親局30の管理下に存在していれば当該中継親局30を介して子局10に要求を送信する。
【0052】
中継親局30が親局20から要求を受けた場合には、当該中継親局30の管理下に存在する子局10の識別情報を特定し、目的とする子局10からデータを取得したり、目的とする子局10に対する制御の指示を行う。中継親局30が子局10から取得したデータは親局20を介して上位集約サーバ40に通知される。
【0053】
この動作により、上位集約サーバ40では、親局20と中継親局30との間の通信に用いるアドレスや、中継親局30と子局10との間の通信に用いるアドレスを認識する必要がなく、需要家の位置情報に基づいて子局10に対する指示を与えることができる。つまり、子局10の位置情報は、親局20において中継親局30に変換され、親局20または中継親局30において子局10のアドレスに変換されるから、上位集約サーバ40で通信用のアドレスを管理する必要がないという利便性が得られる。
【0054】
ところで、親局20と中継親局30との距離によっては、親局20と中継親局30との間で無線通信を直接行うことができない可能性がある。そこで、親局20と中継親局30との間では、他の中継親局30を中継に用いるマルチホップ通信が可能になっており、親局20との間で通信を直接行うことができない中継親局30であっても他の中継親局30を介して親局20と通信が行えるようにしてある。
【0055】
上述の動作では、電力線搬送通信の通信信号は、各柱上変圧器の二次側の配電線50において独立して伝送されると仮定している。異なる柱上変圧器の二次側の配電線50の間では通信信号は減衰するから、通常はこの仮定が成立しているが、伝送環境によっては、電力線搬送通信の通信信号が、異なる柱上変圧器の二次側に接続された配電線50に混入して伝送される可能性もある。要するに、異なる配電線50の間で電力線搬送通信にクロストークが生じる可能性がある。
【0056】
一例を示すと、図8の上部に破線で示しているように、「中継親局1」の管理下にある「子局n」からの通信信号が「中継親局m」で受信される場合や、「中継親局m」の管理下にある「子局1」からの通信信号が「中継親局1」で受信される場合がある。
【0057】
このように、電力線搬送通信の通信信号が複数の配電線50を伝送されるような伝送環境では、異なる中継親局30が同時刻に電力線搬送通信を行うと、通信信号の衝突や輻輳が生じることになる。すなわち、クロストーク(通信信号の混入)により電力線搬送通信に障害が生じる可能性がある。
【0058】
そこで、親局20および中継親局30に、クロストークを検知するとともに、無線通信を利用してクロストークが生じたことを親局20または中継親局30に通知する機能を設けるのが望ましい。親局20および中継親局30は、クロストークの検知が通知されたときに、クロストークが生じる相手との間で、子局10との通信のタイミングを調節することにより、クロストークによる通信信号の衝突や輻輳を回避する。子局10との通信のタイミングは、親局20あるいは中継親局30が個々に行うことが可能であるが、図8に示す動作例では、親局20が各中継親局30の通信のタイミングを管理する動作を採用している。
【0059】
図8に示す動作では、「中継親局1」と「中継親局m」とが接続されている電力線50の間でクロストークが生じている場合を示している。ただし、親局20および他の中継親局30ではクロストークは生じていないものとする。この場合、「中継親局1」は「中継親局m」の通信信号が混入(クロストーク)していることを、無線通信によって親局20に通知し、「中継親局m」は「中継親局1」の通信信号が混入(クロストーク)していることを、無線通信によって親局20に通知する。
【0060】
一方、親局20では、「中継親局1」と「中継親局m」とからクロストークの通知を受け取ると、クロストークの生じている中継親局30(「中継親局1」「中継親局m」)が電力線搬送通信を行うタイミングを調節するように指示を与える。たとえば、定期検針を行う際には、クロストークの生じる「中継親局1」と「中継親局m」とのそれぞれに対して、親局20が電力線搬送通信の許可と停止とのタイミングを指示を与える。また、クロストークの検知を親局20に通知した中継親局30は、親局20から指示されるまで子局10との間で電力線搬送通信を行わないようにする。
【0061】
このように、電力線搬送通信にクロストークが生じる中継親局30では、親局20が電力線搬送通信のタイミングを指示することにより、通信信号の衝突や輻輳が生じるのを防止できる。図示例では、定期検針に際し、親局20は、「中継親局1」に電力線搬送通信の許可を指示するとともに「中継親局m」に停止を指示している。その後、親局20は、「中継親局m」での定期検針が終了するタイミング(許可から一定時間が経過した時点)において、「中継親局1」に電力線搬送通信の停止を指示するとともに「中継親局m」に許可を指示している。さらに、親局20は、「中継親局m」での定期検針が終了するタイミング(許可から一定時間が経過した時点)において、「中継親局m」に電力線搬送通信の停止を指示している。
【0062】
図8に示す例では、親局20が各中継親局30に対して電力線搬送通信の許可と停止とを指示しているが、クロストークを検知した中継親局30の間で、相互にタイミングを調節するようにしてもよい。この場合、一方の中継親局30が電力線搬送通信の開始と終了とを他方の中継親局30に通知することにより、電力線搬送通信を行うタイミングを調節すればよい。
【0063】
上述のように、クロストークが検知された場合に、電力線搬送通信を行うタイミングを調節することにより、クロストークによる通信信号の干渉を防止することができ、親局20あるいは中継親局30と子局10との間の通信成功率を高めることができる。また、電力線搬送通信を行うタイミングの調節には無線信号を用いているから、電力線搬送通信の通信帯域に影響を与えることなくタイミングを調節することができる。一般に、検針データの収集に用いる電力線搬送通信の通信帯域は狭いが、親局20と中継親局30との間では無線通信により広い通信帯域を用いることができるから、タイミングの調節のための通信が検針データの収集に影響を与えることはない。
【0064】
クロストークが検知された場合、上述の動作のほか、以下の動作を採用してもよい。
(1)親局20が各中継親局30に対して通信の許可のみを与えて一定時間(たとえば、5分間)の通信を行う動作。
(2)親局20からクロストークを生じた各中継親局30に対し、時間帯で示した通信許可情報を通知し、各中継親局30では通信許可情報として通知された時間帯に通信を行う動作。たとえば、毎時00分00秒から04分59秒までの時間帯を「中継親局1」に通信許可情報として通知し、毎時05分00秒から09分59秒までの時間帯を「中継親局m」に通信許可情報として通知する。
(3)親局20から、中継親局30に対して通信停止と停止解除を指示する動作。たとえば、親局10から「中継親局1」に通信停止を指示すると、この間に「中継親局m」が通信を行い、その後、停止解除を行うと「中継親局1」が通信を行う。通信の停止解除の指示は、通信停止の通知の際に一定時間後に解除するように指示する技術と、通信停止を指示するタイミングとは別のタイミングで停止解除の指示する技術との一方を採用する。
【0065】
ところで、電力線搬送通信における子局10のアドレスは、親局20や中継親局30が自動的に割り当てるようにすれば、子局10のアドレスを設定する手間を省くことができる。ここに、中継親局30が子局10のアドレスを割り当てる場合は、中継親局30と同じ配電線50に接続されている子局10のアドレスを自動的に割り当て、割り当てた子局10のアドレスを、中継親局30のアドレスとともに親局20に通知する。
【0066】
ただし、上述のように、異なる配電線50の間で電力線搬送通信の通信信号にクロストークが生じると、各配電線50ごとに分離されるべき系統が誤認識される可能性がある。つまり、親局20および各中継親局30は、同じ配電線50に接続されている子局10のみを管理しなければならないが、クロストークが生じると、異なる配電線50に接続されている子局10を管理下の子局10と誤認識する可能性がある。
【0067】
図9は親局20と中継親局30との間にクロストークが生じている場合を示している。図9に示す「子局0−2」は親局20と同じ配電線50に接続されているから、親局20の管理下の子局10として親局20に認識される必要があるが、中継親局30も管理下の子局10として認識してしまう可能性がある。図示例において、親局20が接続された配電線50と「子局0−2」との間を破線で示しているのは、「子局0−2」が親局20において管理下の子局10として認識されていない状態を示している。
【0068】
上述のように、親局20あるいは中継親局30が管理する子局10を誤認識すると、検針データを正しく収集することができないから、親局20あるいは中継親局30と子局10との管理関係を修正することが必要になる。
【0069】
そこで、上述のように、各子局10に設定する位置情報として需要家をグループ化する物件情報(たとえば、集合住宅の建物を単位とする情報)を用い、親局20および各中継親局30において物件情報を管理する機能を設けておく。このように物件情報を設定しておけば、親局20あるいは中継親局30において管理下の子局10を誤りなく対応付けることが可能になる。すなわち、親局20あるいは中継親局30では管理している物件情報が、管理下の子局10に設定された物件情報とは異なる場合には、通信を行って、当該子局10を親局20あるいは中継親局30に正しく対応付けるように修正するのである。
【0070】
図10を用いて動作例を説明する。親局20および中継親局30がそれぞれ子局10から定期検針により検針データを取得した後に、親局20は、中継親局30から検針データを取得し、親局20および中継親局30と子局10との管理関係を検出する。ここで、中継親局30が管理する物件情報とは異なる物件情報が設定された「子局x」を親局20が検出したとする。この場合、親局20は、中継親局30に対して「子局x」を管理対象から削除するように指示する。中継親局30は、この指示に応答して「子局x」のアドレスを削除する。さらに、親局20は、アドレスが削除された「子局x」に対して修正したアドレスの設定を行う。図10では、「子局x」に親局20が管理する物件情報が設定されている場合を例示しており、親局20では、「子局x」を親局20の管理下の子局10として登録している。
【0071】
なお、上述の動作では、親局20と中継親局30との間で管理下の子局10を誤認識した場合を例示しているが、中継親局30の間で管理下の子局10を誤認識した場合も同様の動作で修正することができる。また、子局10のアドレスを削除した後に、当該子局10(すなわち「子局x」)を管理すべき親局20ないし中継親局30から子局10に対してアドレスを設定する動作を例示したが、アドレスが削除された子局10に対するアドレスを再度自動的に割り当てるようにしてもよい。あるいはまた、アドレスを削除するように親局20あるいは中継親局30に要求すると同時に、子局10に割り当てる修正後のアドレスを引数として渡すことによりアドレスを設定してもよい。
【0072】
このようにして、物件情報に基づいてアドレスを修正する機能を設けておくことによって、クロストークなどにより親局20または中継親局30が管理下の子局10を誤認識した場合でも、正しい管理関係となるように子局10のアドレスが自動的に修正される。その結果、各子局10を親局20および中継親局30に正しく対応付けることができ、検針データの収集を正確に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
10 子局
20 親局
30 中継親局
40 上位集約サーバ
50 配電線
51 通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給事業者から供給設備を通して購入した供給媒体の需要家における使用量を取得する複数台の子局と、前記子局のいずれかが接続される複数系統の配電線と、前記配電線のいずれか1系統に接続され当該配電線に接続された前記子局との間で当該配電線を通信路に用いた電力線搬送通信を行うことにより前記子局が取得した計測結果を収集し通信網を通して計測結果に基づく検針情報を上位集約サーバに通知する親局と、前記配電線の他の系統に接続され当該配電線に接続された前記子局との間で当該配電線を通信路に用いた電力線搬送通信を行うことにより前記子局が取得した計測結果を収集する中継親局とを有し、前記中継親局は、前記配電線を通信路に用いた電力線搬送通信とは異なる通信路を用いて前記親局と通信を行うことにより、前記子局が取得した計測結果を前記親局に通知することを特徴とする遠隔検針システム。
【請求項2】
前記中継親局は、前記配電線が共通である前記子局が取得した計測結果を定期的に収集し、収集した計測結果を前記親局に通知する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の遠隔検針システム。
【請求項3】
前記親局は、前記中継親局から通知されることが予定されている前記子局の計測結果が通知されない場合に、当該中継親局を経由して当該子局に計測結果の送信を要求する機能を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の遠隔検針システム。
【請求項4】
前記親局と前記中継親局とは、前記配電線が共通ではない前記子局との間で電力線搬送通信が可能になるクロストークを生じていることが検知されると、前記配電線が共通である前記子局との間でのみ電力線搬送通信が可能になるように電力線搬送通信のタイミングを調節する機能を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の遠隔検針システム。
【請求項5】
前記親局と前記中継親局と前記子局とは、それぞれ需要家をグループ化する物件情報が設定可能であって、前記親局と前記中継親局とは、前記配電線を通信路に用いる電力線搬送通信を行った前記子局の物件情報が、設定されている物件情報と不一致であるときに、当該子局の物件情報に一致する物件情報が設定された前記親局または前記中継親局に、当該子局を対応付ける機能を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の遠隔検針システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−250300(P2011−250300A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123128(P2010−123128)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】