説明

遠隔的に取外し可能な被覆部および支持部

【課題】自己延伸膨張式装置を展開するための改良装置および方法を提供する。
【解決手段】本発明は、高い内圧を保持できる薄い管状のマルチフィラメント(フィルムまたはファイバー)構造を作る。希望するときに、フィラメントの延長部を任意の方向に引っ張って、構造をほぐすことができる。この装置は、自己延伸膨張ステントまたはステント・グラフト導入システム、バルーン拡張カテーテル、カテーテル用取り外し可能ガイドワイヤ・ルーメン、薬剤注入または吸引カテーテル、ガイドワイヤ・バンドリング・ケーシング、取り外し可能なフィルタ、取り外し可能な電線絶縁、取り外し可能な包装およびその他の用途に有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内ステントまたはグラフトなど延伸膨張可能装置を導入する際に必要とされる装置を被覆するための被覆装置および被覆方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステントおよびステント・グラフトの使用は、放射線専門医、心臓専門医および外科医によって広く受け入れられるようになっている。これらの装置は、動脈、静脈、気道、胃腸管および胆管を含めて体内の多様な管状経路を半径方向に支持するために使用されている。これらの装置を配置するための望ましい方法は、これまで、治療部位に正確に装置を配置して展開するために専門の導入装置を使用するものであった。この種の導入装置を用いて、開業医は装置の配置に伴う損傷および技術的困難を最小限に抑えることができる。導入システムの属性には次のもの、すなわち、扁平であること、誘導シースを通り抜けられること、曲がりくねった血管系を滑らかに傷をつけることなく通り抜けられること、拘束される装置を保護すること、および装置を正確に位置決めして展開できることが含まれる。
【0003】
従来、ステントまたはステント・グラフトは、塑性変形するように(例えば「バルーン型延伸膨張可能」ステント)または折りたたまれた導入時直径から延伸膨張した機能時における直径まで弾性的に回復するように(例えば「自己延伸膨張可能」ステント)設計されてきた。一般に弾性的に回復するよう設計されるステントは、その機能時における直径を有するよう製造された後、導入カテーテルに取り付けられるように半径方向に圧縮される。この種の装置を長時間にわたりこの圧縮状態で拘束する必要があることが多い。さらに、装置が適切に位置決めされたら、この抑止作用を遠隔的に解除して、装置がその機能時における直径まで弾性的に回復できるようにするためのメカニズムが必要である。
【0004】
弾性的に圧縮されたステントを拘束して、抑止作用を遠隔的に取外せるようにするための多数の技法が実施されている。一つの技法は、ステントを二つの同心カテーテル・チューブの間の環状スペースに配置するものである。内側のチューブは、内側チューブの内径部分においてをガイドワイヤが通りやすくし、ステントまたはステント・グラフトは内側チューブの外径に押し付けられる。外側のカテーテル・チューブすなわちシースは、圧縮された装置に被さるように配置され、圧縮された装置を効果的に捕捉する。ステントをその機能時における直径まで回復させたい場合には、外側のチューブが内側のチューブに対して相対的に引き戻されて、装置は弾性的に回復する。一方のチューブを他方のチューブに対して相対的に長手方向に移動させることにより、この展開作用を遠隔的に(例えばカテーテルのハブ端で)行うことができる。
【0005】
この形態の一つの変形例は、外側のチューブと内側のチューブの間にもう一つの同心チューブを同心に配置するものである。この第三のチューブを他のチューブに対して相対的に動かすことにより、弾性的に拘束される装置をカテーテルから押出して、この装置がその機能時における直径まで回復できるようにする。この形状をさらに変更する場合には、その内腔にガイドワイヤが通される内側のチューブを取外すことができる。修正された形状においては、ガイドワイヤは、押出し用チューブの内腔および折りたたまれたエンドプロテーゼの未保護内腔を通ることになる。
【0006】
採用可能な別の技法においては、折りたたまれ弾性的に拘束された直径のステントまたはステント・グラフトに縫い付けられる縫合糸を使用する。この技法の一つの実施形態においては、折りたたまれたステントの金属支柱によって取外し可能な縫合糸の「チェーン」ステッチを形成する。ステッチの一方の端を遠隔位置から引張って、ステントを解除して弾性的に直径を回復させることができる。
【0007】
別の技法は、長手方向の縫い目に取外し可能な糸(例えば縫合糸)のチェーン・ステッチを形成することより管状形態に保持される薄壁のケーシングに、折りたたんだエンドプロテーゼを収めるものである。ステッチが取外されると、縫い目が開いて、ステントはその機能時の直径まで弾性的に回復する。この解放メカニズムにおいては、薄壁ケーシングを、装置と装置が展開される管の間に残している。
【0008】
弾性的に変形されたステントまたはステント・グラフトを拘束して、これを遠隔的に展開するために使用される装置は、多数の問題点を有している。未展開のステントの望ましい特徴の一つは、このステントがカテーテル上において柔軟性を有することである。これにより、カテーテルが入口から装置が展開される部位まで到達する必要がある経路にカテーテルを容易に通すことが可能になる。同心カテーテル・チューブが採用される場合、この構成は、通常、断面積寸法が大きく、堅いので、曲がりくねった血管部分を通り抜けるのを困難にする。また、複数の管状コンポーネントを操作する必要があるので、ステントまたはステント・グラフトの正確な配置を困難にする可能性がある。もう一つの典型的な問題は、シースを引き抜くためまたはステントを押出すための大きな力を必要とする場合がしばしばあることである。
【0009】
ステントまたはステント・グラフト導入システムにはその他に多数の望ましい特徴がある。例えば、折りたたまれたエンドプロテーゼの外面が滑らかで血管系を傷つけないものであれば非常に有利である。さらに、このシステムが弾性的に回復可能なステントと協動することが望ましい。さらに、導入システムが通常の貯蔵寿命時に「クリープ」が拡張することなしに、半径方向に装置を拘束するのに充分な強さを有することが望ましい。
【0010】
ステントを通る取外し可能な縫合糸を含む導入システムの場合、装置を抑止するシステムの効力は、エンドプロテーゼの設計に大きく依存する。エンドプロテーゼの支柱は、その折りたたみ直径時に露出する可能性があり、これが、治療部位にたどり着くまでに損傷を与える可能性が潜在的にある。さらに、露出した支柱は、展開作用を困難にする可能性もある(例えば、展開用縫合糸または支柱のもつれ)。
【0011】
薄壁ケーシング装置の短所は、エンドプロテーゼが展開された後に生体内に収納スリーブが残るので、内腔表面の治癒または内皮形成を妨げ、体液の流れを妨害する場合があることである。また、この種の装置によってカテーテルの断面が大幅に増大するので、カテーテルの柔軟性が損なわれる。最後に、エンドプロテーゼの展開作用を容易にするために一つの取外し可能な糸を使用する現在の導入システムのもう一つの問題点は、取外しプロセスで切れないように糸を張力に強くするように設計する必要があることである。この要件のため、通常、展開時の引張り破損を防止するために、エンドプロテーゼを弾性的に折りたたまれた形態に保持するのに必要とされる直径より大きな直径の糸を使用する必要がある。
【0012】
これらの欠陥の一部については、リンダーマン(Lindemann)その他に対する米国特許第4878906号およびストレッカー(Strecker)に対する米国特許第5405378号が対処している。二つの特許は共に、カテーテル・チューブなどを通じて遠隔的に取外すことができる一つまたはそれ以上の隣接する取外し可能な糸を延伸膨張可能プロテーゼの周りに配置している。このプロテーゼ展開方法は、他の展開方法に比べると或る程度改良されているが、この拘束の開放的構造は自己延伸膨張プロテーゼによって与えられる力に対して限定的で局部的な抵抗力しか有していないと考えられる。その装置の他の考えられる問題点には、次のようなもの、すなわち半径方向およびプロテーゼ長さに沿った拘束力の分布が不均等であること、一つの展開用縫合糸に対するストレスが大きく、展開時に切れる危険があること、プロテーゼの外側の被覆が適切でないこと(ざらざらな露出面になる可能性ある)、展開時装置の外面で拘束用/展開用フィラメントが前後に望ましくない動きをして、潜在的なもつれまたは塞栓形成を引き起こす可能性があることがある。これは、しばしば「ワイパー」効果と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、内腔内ステントなどの自己延伸膨張式装置を展開するための改良装置および方法を提供することが本発明の第一の目的である。
【0014】
非展開状態で自己延伸膨張式装置を巧みに拘束して被覆し、適切に位置決めされた後に装置を容易に展開できるようにする、自己延伸膨張式装置を展開するための装置および方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0015】
本発明の以上の目的およびその他の目的は、以下の明細書を読むことにより明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、自己延伸膨張式装置を拘束された初期状態のまま維持するのに効果的で、かつ展開時の取外しが容易な自己延伸膨張式装置用の改良カバーに関するものである。その望ましい形態においては、本発明の装置は、自己延伸膨張式装置の周りに比較的密なカバー(または「ケーシング」)を形成する、二つまたはそれ以上のインターロックした糸のストランドを有する縦編み(「編み紐」としても知られる)を含む。各々の糸は半径方向に圧縮された装置の外周の一部のみを被覆する。カバーの一端で編み紐の一つのフィラメントを破断することにより、マルチフィラメント「曳索」に任意の方向に張力を与えるだけで、カバー全体を取外すことができる。「曳索」はカバーと連続しているので、自己延伸膨張式装置が所定の位置で延伸膨張するとき、張力を与えると、カバー全体を取外すことができる。この構造は、展開用曳索がワイパー効果を受けることなく単一方向に沿ってカバーを取外すことができるようにすることを含めて、従来の装置に比べて多数の利点を有する。
【0017】
本発明の装置は、カバーを取外すためにわずかの力しか必要としないが、高い内圧に耐えられると共に半径方向への増大を最小限に抑えることができる。カバーを取外すために、任意の方向から高強度マルチフィラメント・ニット曳索を引張ることができる。このニット曳索は、カバーと一体的であり、二つ以上のファイバによって構成される。従って、装置を拘束するために薄い壁のカバーのみ(従って小さい直径の曳索のみ)を必要とする。このカバーを、制御された方式で制御された速度で取外すことができる。さらに、編み紐構造のため、優れた柔軟性を維持しながら、半径方向の拘束力を自己延伸膨張式装置の表面に均等に分布することができる。
【0018】
本発明のカバーは、100%を超えるものから10%未満まで広範囲の被覆率を与えることができる。さらに、本発明のカバーは、比較的滑らかな表面組織を有し、完全に取外し可能である。このカバーを、薄いフィルムまたはファイバから形成することができ、望ましい材料は、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である。本発明のカバーは、装置がカテーテルに取り付けられる部分など、事前展開の装置および関連導入システムの先細部および遷移部の滑らかさを増すために使用することもできる。
【0019】
本発明のカバーは、また、カテーテルの様々な部分に連続的に形成することができる。例えば、ステントの両端をその中心の前に段階的に展開できるように縦編みを形成することができ、外側被覆を内側被覆の前に解除することができるなど。これらの性能特性は、一つの曳索または複数曳索を使用して得ることができる。編み紐の「密度」を変えて、様々な展開機能を与えることができる。この特徴により、付属物またはガイドワイヤを編み紐のサイドから出すことが可能である。
【0020】
本発明の付加的長所は、その製造が容易であり、容易に自動化でき、製造時ニッティング・プロセスが自己延伸膨張式装置に半径方向の圧縮力を与えて、さらにその断面を小さくする可能性を有することである。本発明のカバーは、また、導入システムの一部を非常に堅いものから非常に柔軟なものまで任意に修正するためにカバーの有無を利用することによってかつ(または)カバーの被覆度を変えることによって、導入システム全体の柔軟性を調整することも配慮している。導入システムの柔軟性を調整できることにより、事前展開された装置を押し引きできるように仕立てすることができる。
【0021】
この技術は、自己延伸膨張内腔内装置、例えばステント、グラフト、ステント・グラフト、および血管およびその他の体内通路に使用される同様のもの(以後これらをまとめて「ステントおよびグラフト」と呼ぶ)の周りのカバーとして特に有益であると思われる。さらに、この装置は、その他多くの潜在的な医学的用途を有している。例えば、本発明のカバーは、可変的な長さおよび(または)直径のバルーンを形成するために、バルーン拡張カテーテルおよび(または)バルーン延伸膨張可能ステントおよびグラフトに使用することができる。この技法は、また、バルーンまたは移植装置の展開方向を制御するためにも使用できる。塞栓コイルまたは大静脈フィルタなどその他の自己延伸膨張式装置または機械的延伸膨張式装置も、本発明に開示される導入システムを使用して導入することができる。本発明のシステムを、同様に、一つのカテーテルによって複数の装置を導入するために使用することもできる。さらに、本発明を採用して、カバーにガイド・ワイヤ内腔を形成させるかあるいはカバーに複数のカテーテル・チューブをまとめさせることにより、カテーテルに取外し可能なガイドワイヤ・内腔を形成できるようにすることができる。本発明のカバーを複数のガイドワイヤを束ねるために使用して、ガイドワイヤを導入する際にはこれを押し込みやすくし、患者体内においては適宜分離できるようにすることもできる。また、カテーテルへのまたはカテーテルからの流体抵抗を変化させるために、このカバーを注入カテーテルまたは吸引カテーテルに使用することもできる。
【0022】
この技術には、非医学的用途もある。本発明のカバーを、遠隔位置から取外し可能なフィルタとして使用することができる。これは、危険な環境の場合に有利である。このカバーを、また、ワイヤを絶縁するために使用でき、ワイヤから絶縁部を容易に剥ぎ取ることができるようにする。また、一つの曳索を引張ることにより圧縮したパッケージを解放できるようにするために使用することもでき、海上救命装置またはパラシュート式装置に使用することも可能である。本発明のカバーを、また、高圧状態にあるパッケージを収納するために使用することができ、パッケージを低圧の高体積状態に解除することができる。このカバーを、自転車のタイヤなどの装置を迅速に事前膨張するために使用することができるだろう。また、安全で迅速な使用および最小限の梱包廃棄物が要求される(例えば、救急、EMT、軍事または同様の用途)絶縁材またはスポンジまたはパッケージ供給品(例えば、キット)など非全密度アイテムの包装に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】装置の遠位端に本発明のカバーが取り付けられ、内腔の一つに本発明の曳索が通されている、二重内腔カテーテルの上面図である。
【図2】図1の線2−2に沿って見た横断面図である。
【図3】バルーン拡張カテーテルから部分的に取外されているところが示されている、本発明のカバーの側面図である。
【図4】各々が自己延伸膨張式装置の円周の一部だけを被覆する四つの異なるストランドを採用する、本発明のカバーを形成するために使用される縦編みパターンの拡大平面図である。
【図5A】管状基材から取外されている本発明のカバーの側面図であり、四つの図はカバーのインターロックするストランドの取外しプロセスを示している。
【図5B】管状基材から取外されている本発明のカバーの側面図であり、四つの図はカバーのインターロックするストランドの取外しプロセスを示している。
【図5C】管状基材から取外されている本発明のカバーの側面図であり、四つの図はカバーのインターロックするストランドの取外しプロセスを示している。
【図5D】管状基材から取外されている本発明のカバーの側面図であり、四つの図はカバーのインターロックするストランドの取外しプロセスを示している。
【図6】本発明のカバーの縦編みを形成するために使用される装置の一つの実施形態の側面図である。
【図7】各々別個の曳索により制御される複数のカバー・セグメントを含む、本発明のカバーの別の実施形態の側面図である。
【図8】カテーテルおよび取外し可能なガイドワイヤ・内腔を含む、本発明のカバーの別の実施形態の側面図である。
【図9A】複数ガイドワイヤ・ケーシングを構成する、本発明のカバーのさらに別の実施態様の側面図である。
【図9B】図9Aの線9B−9Bに沿って見た横断面図である。
【図10】各々一つの曳索により制御される複数のカバー・セグメントを含む、本発明のカバーのさらに別の実施態様の側面図である。
【図11】各々中央位置で被覆バルーン拡張カテーテルから分離される2つの別個のセグメントを含み、バルーン拡張装置がこの中心から軸方向に伸びられるようにする、本発明のカバーの別の実施態様の側面図である。
【図12】連続的に配備される複数の自己延伸膨張装置を取り囲む、本発明のカバーのさらに別の実施態様の側面図である。
【図13】薬剤注入カテーテルに可変的な流体抵抗を与えるための手段となる、本発明のカバーのさらに別の実施態様の側面図である(カバーは被覆対象の注入カテーテルの細部を示すために被覆密度を小さくして示されている)。
【図14】多管カテーテルの複数のチューブをまとめて結びつける、本発明のカバーのさらに別の実施態様の側面図である。
【図15A】直径調整可能バルーン用の取り外し可能カバーを構成する本発明のカバーの側面図であり、カバーの拘束内でのバルーンの膨張およびカバーの取り外しのプロセスを示している。
【図15B】直径調整可能バルーン用の取外し可能カバーを構成する本発明のカバーの側面図であり、カバーの拘束内でのバルーンの膨張およびカバーの取外しのプロセスを示している。
【図15C】直径調整可能バルーン用の取外し可能カバーを構成する本発明のカバーの側面図であり、カバーの拘束内でのバルーンの膨張およびカバーの取外しのプロセスを示している。
【図16A】線16A−16Aに沿って見た横断面図である。
【図16B】線16B−16Bに沿って見た横断面図である。
【図16C】線16C−16Cに沿って見た横断面図である。
【図17】二重内腔カテーテルの一方の内腔に通された曳索を含む、本発明のカバーの別の実施形態の側面図である。
【図18】カバーのうち一つが被覆対象の装置を位置決めする際に使用される取外し可能な放射線不透過性ニットを構成する、本発明のカバーの別の実施形態の側面図である。
【図19】動脈の閉塞を半径方向に圧縮するだけでなく血管壁をせん断することにより血管形成を行うためにバルーンに配置される、本発明のカバーの別の実施形態の側面図である。
【図20】被覆対象のカテーテルのサイドに孔を有する可変的密度のニットを構成する、本発明のカバーの別の実施形態の側面図である。
【図21】本発明のカバーの非医学的用途を示す本発明の実施形態の側面図であり、この実施例では、カバーは容易に剥ぎ取ることができる電線絶縁を構成する。
【図22】カバーが自己延伸膨張絶縁材を被覆するために使用され。絶縁材が囲まれた空間内に展開される、本発明の実施形態の4分の3等角図である。
【図23A】塑性変形装置用の取外し可能な導入シースを構成する、本発明のカバーの側面図であり、塑性変形装置の膨張プロセスを示している。
【図23B】塑性変形装置用の取外し可能な導入シースを構成する、本発明のカバーの側面図であり、塑性変形装置の膨張プロセスを示している。
【図23C】塑性変形装置用の取外し可能な導入シースを構成する、本発明のカバーの側面図であり、塑性変形装置の膨張プロセスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の動作は、以下の添付図面を参照して以下の説明より明らかになるであろう。
本発明は、拘束された装置特に自己延伸膨張式装置に使用するための改良カバーに関するものである。以下の説明より明らかになるように、本発明を、多様な医学的および非医学的用途に使用することができる。本発明は、ステントおよびグラフト、カテーテル、内腔内バルーンなど内腔内移植装置のカバーとして使用する(これらに限定されるわけではない)場合に、特に有益である。
【0025】
「カバー」、「エンケーシング」、「ケーシング」および「シース」という用語は、本明細書において使用される場合、移植可能プロテーゼ、ガイドワイヤ、ガイドワイヤ・内腔、バルーン・カテーテルなど別の装置(または複数の装置)もしくはその一部を収める構造を包括する。前記の用語は、外側シースをこのような装置に取り付ける構造、並びに他の材料層、他の装置および(または)本発明のカバーの複数の層にさらに収められうる他の構造を含むが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の一つの使用例が図1および図2に示されている。本発明は、弾性変形可能ステント12など別の装置を収めるために使用されるニット・カバー(knitted cover)10を含む。マルチフィラメント・曳索14はカバー10の一端に形成されていて、カバー10から一定の距離をおいた位置でこのカバーを展開させるのに十分な長さを有している。図から分かるとおり、曳索14は、実際にはニット・カバー自体のマルチストランド延長部である。図示される実施形態において、曳索は、二重内腔カテーテル18の第一の内腔16内に配置されていて、Y型コネクタ20を通過している。第二の内腔22は、カテーテル18およびステント12をガイドワイヤ(図には示されていない)に沿って所定の位置まで操作するために設けられている。
【0027】
本発明のカバーはその特定のニット構造に基づく独特の特性を有している。後述するように、「縦編み(warp knit)」または「編み紐(knit−braid)」として知られる特殊なニット・パターンによりニット・カバーを形成して、次いで取外しのためにカバーを特別に準備することにより、本発明のカバー全体を、単に曳索14を引張ることにより、取外すことができる。図3に示されるように、カバー10を、例えばバルーン拡張カテーテル24のバルーンまたは自己延伸膨張式管状装置を被覆するために使用して、次いで曳索14を引張ることにより取外すことができる。次いで、編み紐式カバー10がほぐれて、バルーン24または自己延伸膨張式装置をその長さ部分に沿って拡大させられると同時に、図示されるカバーを取外すことができる。
【0028】
図4は、本発明の縦編み式カバーの一つの望ましい実施形態を示している。図示されるカバー10は、相互にインターロックされるファイバ26、28、30および32からなる異なる四つのストランドを含む。最小で二つの個別のフィラメントから開始して、要求される適切な数のストランドをこのようにして組み合わせて、単に最後のストランドを最初のストランドにインターロックさせることにより、管状構造部を形成することができる。特に、この構造部は以下のように形成される。第一のストランド26は、第二のストランド28および第四のストランド32を巻いてループを形成する。一方、第二のストランド28は、第一のストランド26および第三のストランド30を巻いてループを形成する。同様に、第三のストランドは、第二のストランド28および第四のストランド32を巻いてループを形成する。最後に第四のストランド32は、第三のストランド30および第一のストランド26を巻いてループを作り、管状構造部を形成する。
【0029】
このインターロック構造は、ストランドの一つを一端において他のストランドから単に分離することにより、密着状態で編み合わされたマルチフィラメント・曳索によって完全にほぐれる。例えば、ニット(knit)の上辺に張力を加えつつ、第一のストランド26が接続点34において解放される場合には(この点においてストランドを切断するかまたは分離させることにより)、第二のストランド28は接続点36において第一のストランド26から解放される。その後、第一のストランド26は接続点38で第二のストランド28から解放され、第二のストランド28は、接続点40で第一のストランド26から解放される。このプロセスは、カバー全体が長くて連続的に編み合わされた一つの曳索として分離されるまで装置の全長さ部分に沿って続く。
【0030】
このプロセスは、図5Aから図5Dを見ることによってさらに理解できる。これらの図は、四つのファイバ42、44を用いた管状構造部をなしている、本発明のファイバのループの各々が分離するプロセスを示している。
【0031】
このようにカバーを形成することには多数の利点が存在している。まず、このカバーは半径方向の拡張力に対して極めて強力であることが分かっている。希望どおりの数のストランドを使用でき、ニット・パターンを希望どおりに緊密にできるので、カバーは、自己延伸膨張式装置を完璧に拘束すると共に、この自己延伸膨張式装置の表面に拘束力を均等に分布させることができる。「均等な分布」という用語は、拘束力を装置の外周の周りに(すなわち装置が一方の側で盛り上がらない)および(または)装置の長さ方向に沿って(すなわち、装置がその長さに沿って一貫した断面を有する)加えることと概ね同等である。拘束作用を確実に行っているにもかかわらず、曳索を単に引張ることにより、このカバーを自己延伸膨張式装置から極めて迅速に分離できる。実施例として、本発明のカバーは689.47Pa(100psi)を超える延伸膨張力を及ぼす装置を含みうることが分かっている。しかしながら、延伸膨張作用が適切であれば、わずか0.45kg(1ポンド)程度の張力を曳索に沿って単に加えることにより、カバーを装置から完全にかつ簡単に取外すことができる。
【0032】
本発明のカバーのもう一つの利点は、このカバーを自己延伸膨張式装置の周りの所定の位置に容易に形成できることである。例えば、図6は、縦編み機(または編み紐機)46、マサチューセッツ州チコピーのラムニッティングマシン株式会社(Lamb Knitting Machine Corporation)の2NBA/Z−TB型を示している。例示される編機は、糸挟み式引張装置47、糸位置決め用シャトル48、ニッティング・ヘッド49、テイクダウン・ユニット50、および錘52を含む。採用されているニッティング・ヘッド49は、一つおきに針が取り除かれた8針式ヘッド(合計4針)で、芯の直径は9.5mm(3/8インチ)である。使用時、フィラメント54a、54b、54c、54dは、引張りシステムおよびフィラメント・ガイド47を通ってシャトル48およびニッティング・ヘッド49に供給されて、錘に結び付けられる。編み紐機は、フィラメント54を縦編みチューブ55に自動的に編み合わせる。結糸56は、編み紐チューブ55を一緒に保持するのに役立つ。錘52は、フィラメント54に張力を加えて、フィラメントをシステムに供給するのを助ける。テイクダウン・ユニット50は、このプロセスでは必要ないので、使用できないようにする必要がある。
【0033】
この編機46を、本発明のカバーを形成するために容易に適応させることができる。この点に関し、カテーテル57の端部における内部血管プロテーゼ(図には示されていない)は、糸位置決め用シャトル48およびニッティング・ヘッド49を通って下向きに供給される。編み機は、縦編みチューブ55をプロテーゼの周りに取り付けて本発明のカバーを形成する。
【0034】
この編機46により形成される編み紐の性質によって、最終的なチューブの端部を長手方向に引張って、ラッピングされる装置に対してさらに大きな圧縮力を加える。
【0035】
ラッピング・プロセス後、カバーはラッピングされた装置上において以下の通り仕上げられる。ニットは、内蔵式人工臓器が圧縮されているカテーテル上の位置まで、カテーテルの長さ部分に沿ってほぐされる。ニットの閉鎖端においてファイバのうち一つを破断することによってこのほぐし作用を開始する。次いで編まれた糸がこのようにほぐされた長さ部分を、カテーテルのハブに通して、ステントを展開するために曳索として使用することができる。この曳索を、図17に示される通りカテーテルの一つの内腔に通して供給することが望ましい。
【0036】
この形式の編み紐装置を採用することにより、自己延伸膨張式製品の周りにラップを緊密に取り付けることができることが分かっている。実際に、単にカバーを形成することによって圧縮力が発生するので、自己延伸膨張式装置を拘束するのをさらに助けることが分かっている。
【0037】
本発明の特に重要な利点は、カバーを「単一方向」に沿ってほぐすことができることである。本発明の縦編みパターンは、略直線状ライン(これは、純粋な直線であってもよく、希望する場合にはらせん形に沿ってまたは装置に沿った他のパターンにすることもできる)に沿って分離する。同様に、曳索は、略直線状ラインに沿って拘束対象の装置から引き離れる。これに関して使用される「単一方向」という用語は、張力が曳索に与えられるとき、現在糸に包まれている装置に対して極端な「ワイパー(windshield wiper)」効果を生ずることなしに、カバーが略直線状ラインにおいて装置から分離するまたは外れる場合に用いられる。二つ糸が対称的に取り付けられるカバーの場合、このことは、糸を分離させることが被覆対象の装置の周囲の約180度よりも小さい範囲にわたって生じることを意味する。対称的な三つ糸式カバーの場合、分離作用は被覆対象の装置の周囲の約120度よりも小さい領域にわたって生じる。対称的な四つ糸式カバーの場合、分離作用は、被覆対象の装置の周囲の約90°よりも小さい範囲にわたって生じる。対称的な五つ糸式カバーの場合、分離作用は、被覆対象の装置の周囲の約75度よりも小さい範囲にわたって生じる。対称的な六つ糸式カバーの場合、分離作用は、被覆対象の装置の周囲の約60度よりも小さい範囲にわたって生じる等である。
【0038】
このようにしてカバーが分離するときに、曳索は略直線状ラインまたは「単一方向」において装置から全てのファイバを取外す。ワイパー効果を排除することにより、カバー取外し時における、もつれの危険性を大幅に減少させられる。さらに、単一方向の取外し作用は、取外し時、患者の脈管を損傷させることを大幅に少なくすると共に、塞栓形成およびその他の合併症の危険を減少させる。
【0039】
本発明の糸を、装置に対称的に取り付ける必要がないことが分かっている。例えば、異なる重量の糸を使用することができる。さらにまたはこれに代えて、装置の周囲の異なる部分を被覆するために一組の糸のそれぞれを取り付けることにより、装置の周囲のさらに大きい部分またはさらに小さい部分にわたって分離作用を生じさせることができる。
【0040】
本発明のもう一つの重要な側面は、カバーがマルチフィラメント・インターロック構造として分離することである。この分離メカニズムによって、取外し時における曳索の全体的強さを大幅に高めることができる。これにより、シースを形成するための設計上の選択肢が大幅に増す。例えば破損の危険性をほとんど伴うことなしに薄い材料を使用できる。さらに、インターロック構造は、取外しプロセス時に偶発的に分離する危険性をほとんど伴うことなしに取外しがより容易である。
【0041】
本発明のカバーを形成するためのもう一つの方法は、ステントを縦編み式内腔に引き入れる縦編みの外側構造部を使用するものである。例えば、縦編み(四つ糸、根元直径(root diameter)9.52mm(3/8インチ))を、圧縮された装置の直径よりもわずかに大きい外径を有する304ステンレス鋼0.30m(1フィート)のマンドレル上に編み上げることができる。次に、縦編み/マンドレルにパイプ・スレッド・テープ(例えば、イリノイ州フランクリンパークのアンチシーズテクノロジ株式会社(Anti−Seize Technology)のポリテンプテフロン(登録商標)(Poly−Temp
【0042】
Teflon(登録商標))製テープ)からなる約15の層を手で巻き付け、このアセンブリを370℃の空気対流オーブン内に5分間配置する。このアセンブリを冷却した後、マンドレルとぴったりと係合する同心チューブを使用してマンドレルから縦編み/テープ支持材を押出すことにより、縦編み/外部パイプ・スレッド・テープ支持材をマンドレルから剥ぎ取る。次いで、自己延伸膨張式ステントを漏斗に通して、この外部支持式縦編みに直接的に引き入れることができる。次いで、パイプ・スレッド・テープの各層を慎重に取外すことにより、このテープを取り除く。その結果得られる構造は、縦編み式カバー内において直径部分が折りたたまれたステントを含んでいる。最後に編まれたニットの端から四つの糸のうちの二つまたは三つを引張ることによって、このカバーを取外すことができる。
【0043】
本発明のカバーを、可能な限り多様な材料を用いて多様な構造をなすよう形成することができる。例えば、ニット構造は、二つから16までまたはそれ以上の糸を使用することができるが、このような糸は三つから八つまでが望ましく、四つから六つまでが最も望ましい。編み部密度は、センチメートルあたり2から80編み部の範囲でありうるが、10から50編み部までが望ましい。ニットは、被覆対象の装置を完全に被覆(すなわち、装置の表面を100%被覆するように)、またはそれ以上とするか(例えば糸を重ねて複数の層を形成する)、あるいは表面積の1%から5%程度を被覆するよう構成することができる。ほとんどの用途の場合、望ましい被覆率は、約10%から100%までである。
【0044】
本発明における被覆率は、露出する外表面積(すなわちカバーの糸が及ばずに残る面積)に対する本発明の縦編み式カバーにより被覆される装置の外表面積を概算することによって決定されうる。
【0045】
他の構造的変更態様も本発明のカバーに組み入れることができる。例えば、周囲において相互に隣接するよう間隔を空けて配置された少なくとも二つのステッチを形成することができ、ニッティング・プロセス時に使用される入力用ストランドの少なくとも一つに加えられるつまみ張力を他の入力用ストランドに比べて大きくすることにより、このことを達成できる。さらに別の構造的変更態様は、異なる特性を備えた入力用ストランドを使用すること、例えば特定の望ましい特性を有する一つまたはそれ以上のストランドを使用する(例えば、X線透視できるようにストランドを放射線不透過性にすること、あるいは、異なるデニール、織物またはその他の特性のストランドを使用する)ことである。本発明のさらに別の変更態様は、隣接する構造、例えばカテーテルを被覆するために被覆対象の装置の端部を越えて延びるカバーを採用するものである。カバーをこのように形成することにより、形状をカテーテルから被覆対象の装置まで徐々に移行させられる。この構造は、例えば、図12および図23Aに示されている。
【0046】
本発明のカバーを形成するために使用される材料は、同様に、用途に応じて変更および特別仕立てが可能である。本明細書において示されるほとんどの用途においては、カバーを形成するために糸またはその他のファイバが使用される。本発明のカバーに適する糸には次のもの、すなわちポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸膨張PTFE、シルク、ポリプロピレンなど熱可塑性糸、ポリアミド(ナイロン)、各種プラスティックまたは金属材料(例えば、ステンレス鋼またはニッケル・チタン(ニチノール)合金)およびPLAまたはPGAなど生物学的に吸収可能な材料が含まれる。糸は25グラム/9000メートル(25デニール)から2500グラム/9000メートル(2500デニール)まで広範な範囲で使用できる。移植用医療装置を被覆するための使用に特に望ましいのは、メリーランド州エルクトンのダブルエルゴア株式会社(W.L.Gore & Associates,Inc.)の商標ラステックス(RASTEX)の糸またはアリゾナ州フラグスタフのダブルエルゴア株式会社(W.L.Gore & Associates,Inc.)の商標ゴアテックス(GORE−TEX)(登録商標)縫合糸などポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、特に延伸膨張PTFE糸である。
【0047】
実施例として、直径10mmのウォールステント(WALLSTENT)(登録商標)製ステント(ミネソタ州ミネアポリスのシュナイダー社(Schneider,Inc.)の製品)を被覆するためには、約25%の被覆率で約150グラム/9000メートル(150デニール)のCV−8ゴルテックス(GORE−TEX)(登録商標)縫合糸の四つ糸カバーが望ましいと思われる。
【0048】
他の材料も本発明に適切に使用できることが分かっている。例えば、一つまたはそれ以上のファイバの代わりに、フィルムまたはその他の構造を使用して、特殊な性能特性を与えることができる。本発明のカバーの材料として適するその他の実施例としては、テープ、シングルフィラメント糸、マルチフィラメント糸、ビーディングなどがある。
【0049】
本発明の特殊な用途に関しては、図7から図23において本発明のカバーを使用することにより有益な装置の実施例が示されている。
【0050】
図7は、各々別個の曳索64a、64b、64cにより制御される複数のカバー・セグメント62a、62b、62cを含む、本発明のカバー60の別の実施形態である。この形態によって、各カバー・セグメントを被覆対象の装置60から別個に最も望ましい任意の順番で取外すことができる。自己延伸膨張式ステント装置をこのように被覆することにより、外科医は、所定の処置に最も適するように装置の遠位端、中位端または近位端を選択的に延伸膨張させることができる。
【0051】
図8は、本発明の他の実施形態のカバー68であり、このカバーは複数の装置を含むのに使用される。この実施例では、カバー68は、カテーテル70および取外し可能なガイドワイヤ・内腔72を含んでいる。この構造により、ガイドワイヤ・内腔を血管に通過させるのを容易にするためにカテーテルと共に一時的にまとめることができ、次いで、一旦これらを適切に位置決めさせるた後に、曳索76を使用してカバーを取外すことによりこれらを分離することができる。ガイドワイヤは所定の場所に残るので、追加のカテーテル装置を配置することができる。
【0052】
図9Aおよび図9Bは、本発明のカバーのさらに別の実施形態を示している。この実施例では、カバー78は、複数のガイドワイヤ82a、82b、82cを包んでいる。さらに、この構造は、複数の装置を体内に挿入するためにこれら装置を一緒に保持すると共に所定の位置に到着した後に相互に分離させるための分離手段を提供する。
【0053】
図10は、複数のカバー・セグメント86a、86bを含むカバー84を示している。主曳索88がセグメント86aに取り付けられ、第二の曳索90がセグメント86bをセグメント86aに取り付けている。このように構成されることにより、張力が主曳索88を通じてカバーの近位端92に加えられるとまずセグメント86aが解放される。セグメント86aが完全に解放されると、第二の曳索90はセグメント86bをカバーの遠位端94から解放し始める。このようにして、一つの曳索88に張力を加えることにより、端と端とをつないだのではない(non−end−to−end)(または非線形)カバー解放作用を行なうことができる。
【0054】
図11の実施形態においては、カバー96は、バルーン100を被覆する二つの別個のセグメント98a、98bを有する(図示される各セグメントは部分的に引き込められており、図示されるバルーンは部分的に延伸膨張されている)。各セグメント98a、98bはバルーン100を被覆し、曳索102a、102bはバルーンの中心からカバーを解放する。近位側セグメント98aからの曳索102aは、被覆対象の装置の外側に位置しており、遠位側のセグメント98bの曳索102bは、バルーンの中央内腔104に通されていて、曳索102bと延伸膨張するバルーン100との間で干渉することなしに遠位側セグメント98bを解放させるのを助ける。このようにして延伸膨張可能装置を被覆することにより、拘束されてない延伸膨張式装置をこの装置の中心から軸線方向に長くすると共に、装置の長さを調整することができる。
【0055】
図12に示される実施形態においては、カバー106は、連続的に展開される複数の延伸膨張式装置108a、108b、108c、108dを包んでいる。この構造により、カテーテル110を第一の位置まで移動させ、第一の装置108aを解放させるのに十分に曳索112を引張ることにより第一の装置108aを展開させることができる。次いで第二の装置108bを展開させるための位置にカテーテル110を再位置決めさせる。このプロセスを繰り返して、各装置108を展開させ終わるまで、各装置を連続的に展開させることができる。この同一の構造を用いて複数の装置108を一つの位置において展開させてもよい。
【0056】
図13には、本発明のさらに別の実施形態が示されている。この実施形態においては、カバー114は薬剤注入用カテーテル116上に配置されている。カバー114は、このカバー114が所定の位置にあるときに液体がカバーを通過する通過作用を少なくするかまたはこの通過作用を排除するのに充分な密度である必要がある(すなわち60%から100%またはそれ以上の被覆率)。薬剤注入用カテーテル116は治療薬が充填されるか供給されていて、複数の開口118a、118b、118c、118d、118e、118f、118g、118h、118j、118kを有しており、これら開口を通じて治療薬を患者の体内に浸透させることができる。このカテーテル116を本発明の高密度のカバー114で被覆することにより、医療スタッフは曳索120を使用して、所定の数の開口118を露出させるのに充分にカバー114の一部を取外すことができる。このようにして、放出される薬剤の位置および(または)量を正確に制御することができる。前述した図12の実施形態に関して述べたとおり、本発明のこの実施形態は、各場所で徐々にカバーを剥ぎ取ることにより、および(または)患者体内においてカテーテルを繰り返し位置替えすることにより、治療薬を様々な位置に供給することができる。
【0057】
図14は、複数内腔カテーテル126の複数のチューブ124a、124bを一緒に取り付ける本発明のカバー122を示している。これにより、最初に複数内腔カテーテル126を単一のユニットとして患者の体内に通すよう操作して、その後曳索128を使用して必要に応じて分離させることができる。一つのチューブはガイドワイヤ・内腔としての役目を果たし、所定の場所に残しつつ前記一つのチューブを取外すことができる。これにより、追加のカテーテルによってガイドワイヤを自由に使用できる。
【0058】
図15Aから図15C及び図16Aから図16Cは、本発明の取外し可能なカバー132の拘束作用を受けつつバルーン130を膨張させるプロセスを示している。この実施例では、カバーは、半径方向に緩くなっている状態でバルーン上に編まれている。図から分かるとおり、カバー132は平滑な外面を形成しており、この外面においてバルーン130は(直径Dまで)ほぼ完全に延伸膨張する。一旦、バルーン130を膨張させた後に、カバー132を取り除き、バルーン130を(直径D3まで、すなわちD>D)完全に延伸膨張させると共に、図15Cおよび図16Cに示される通り被覆されていないバルーンを形成することができる。このバルーン展開方法は、カバーを伴わないバルーン展開方法に比べて以下のような多数の利点を有している。これら利点は、一つのバルーンが高圧下で膨張されうる二つの別個の直径を有しうること、取り除き可能なシースにより被覆されつつ破裂に対するバルーンの抵抗性を高めること、およびバルーン材料だけでは耐えられない高圧下でバルーンを使用できるようになることである。
【0059】
あるいは、各々が少しづつ大きい直径を有する二つまたはそれ以上の同心シースを用いて同じ効果を得ることができる。さらに、要求される異なる結果を得るためにカバー層を異なる順序で取外すように適応させることができる。
【0060】
曳索を操作するのを容易にするための可能性のある一つの手段が、図17に示されている。この実施形態においては、複数内腔カテーテル134が採用されており、本発明のカバー138の曳索136はカテーテルの一つの内腔140に通されている。このようにして、血管壁を損傷させることなしに曳索136およびカバー138を、カテーテル・内腔140に通して簡単に取り除くことができる。この実施形態は、特に曲がりくねった脈管もしくは障害またはその他の制約がありうる他の問題エリアに通過させることにより装置を展開させる場合には特に有益である。
【0061】
図18の実施形態においては、カバー142は、被覆対象の装置146をX線透視検査のために位置決めするのに使用される放射線不透過性ニット144a、144bを採用している。この実施例では、放射線不透過性編み紐144は、この編み紐144自体の曳索148を有していて、カバー142からこの曳索を別個に取外すことができる。ニット144aおよび144bを、例えば、供給されるべき装置の各端をマーク付けするように配置することができる。
【0062】
図19に示される実施形態においては、カバー150は、バルーン152の上に配置され、血管154内において「押出し血管形成術」を行う。「押出し血管形成術」のプロセスは、狭窄病変部156またはその他の閉塞部の取り除きまたは改造に採用される従来の圧縮血管形成法を改良するよう考案される。バルーン式押出血管形成術は、半径方向の力を与えるだけでなく、血管壁に沿って閉塞部を押圧する複雑な応力を与えるせん断力(F)の波動も形成する。従って、閉塞部の寸法または狭窄効果を小さくし、および(または)閉塞部を血管の別の部分に移動させることができる。本発明のカバー150を使用して、図示される方法でバルーン152の長さ部分に沿ってカバーを解放させることにより、所望のせん断力(F)を発生させて、血管内の病変部分を改造することができる。この技術を、血栓摘出用バルーンにも使用できる。
【0063】
図20に示される本発明のカバー158は、被覆対象のカテーテル162の側面に開口160を備えた可変な密度のニットを具備している。密のセグメント164a、164bおよび疎のセグメント166を有するカバーを形成することにより、ガイドワイヤ168または他の付属物をカバーおよび開口160に通してカテーテル162に進入させると共にこのカテーテルから引き出すことができる。
【0064】
本発明を多数の非医学的用途に適用することもできる。例えば、電気導体174上の絶縁性ジャケット172の内方に取り付けまたはこれに埋め込まれるカバー170が図21に示されている。曳索176を引張ることにより、ジャケットおよび絶縁部を所望の程度まで容易に導体174から剥ぎ取ることができる。希望する場合には、ジャケット172を正確に位置決めした後、曳索176を切断すると共に封止して、絶縁部がさらに剥ぎ取られないようにすることができる。
【0065】
可能性のある別の非医学的な用途が図22に示されている。この実施例では、カバー178は、自己延伸膨張式断熱材180、例えば発泡材またはファイバグラス断熱材などを収めるために使用される。限られた空間182、例えば既存の壁186内におけるスタッド184a、184bの間に断熱材を配置するときには、曳索188を使用してカバー178を取外して、断熱材を所定の場所で延伸膨張させることができる。既存の断熱材配置方法に比べて、このプロセスは、既存の構造体を断熱するプロセスよりも、断熱材をさらに適切に配置することができ、乱雑な配置状態となることをさらに少なくすることができる。
【0066】
これら二つの実施例から、本発明を多数の非医学的用途に適用できることは明らかである。
【0067】
本発明の別の医学的用途が図23Aから図23Cに示されている。この実施例では、本発明のカバー190は、非自己延伸膨張(すなわち塑性変形可能)装置192、例えばジョンソン&ジョンソン株式会社(Johnson & Johnson)のパーマズシャフト(Palmaz−Schatz)(登録商標)製ステントのための導入シースとして使用されている。この塑性変形装置は、以下のステップにより展開される。1.治療装置192(例えば血管形成装置)がカテーテルから外れるのを妨げるカバーを付けた状態でカテーテルを所定の位置に送る。2.カバー190を取外す。3.治療装置192を導入する(例えば、血管形成用カテーテルを膨らませる)。
【0068】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく本発明の製造および使用法を例示する。
【0069】
一つのフィラメントをクックアセント(Cook Accent)(登録商標)(インディアナ州ブルーミントンのクック株式会社(Cook Incorporated))7mm×4cmのバルーン拡張式カテーテルに被せて編み紐状に巻きつける。四つ糸縦編みを形成するためにラムニッティングマシン株式会社の管状編み紐機(マサチューセッツ州チコピーのラムニッティングマシン株式会社、2NBA/Z−TB型編み紐機)を設定する。この編み紐機は、AC駆動モータを変速DCモータ(ラムニッティングマシン株式会社からも入手できる)に取り換えて修正される。8本針の小径ニッティング・ヘッドを取り付け、一つおきに針を外して四つの針を残す。薄い、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)フィルム(Goreに対する米国特許第3953566号に基づいて生産されたもの)を裂いて、0.64cm(0.25インチ)幅の四つのセクションをこのフィルムから形成する。フィルムの厚みは約0.02mmであり、密度は約0.2g/cm(0.2g/cc)、フィブリル長さは約70マイクロメートルである。挟みゲージ(ミツトヨ(Mitutoyo)製挟みゲージ2804−10型など)を使用して厚みを測定し、密度はサンプル寸法および質量に基づいて計算し、フィブリル長さは、材料の代表的走査型電子顕微鏡写真を撮ると共に、材料内の隣接する重合体ノード間の平均フィブリル長さを測定することによって決定することができる。
【0070】
これらファイバのそれぞれを、別個のバネ張力装置、シャトルガイド、針に通して、下部シリンダを介して引張る。四つのフィラメントをこのシリンダの下方において一緒に結び、約706mN(72グラム重)の錘を結び目から垂らす。この機械構造は、前に説明した通り図6に示されている。
【0071】
クランクを手で低速で回転させると、ファイバが編み紐へと編まれ始める。編機は、密織を形成できるよう調整される(すなわち、針の最低行程点を針保持用シリンダの下方約1mmに調整する)。次いでモータの電源を入れて、低速(約2目/秒)になるよう調整して、編機が編み紐を自動的に編むようにする。約5cmの長さのカバーを縦編みにした後、編機を円滑に動作させて、編機がカテーテルの遠位先端からハブに向かって編み紐を編み始めるように、バルーン・カテーテルの先端を編機の上部ボアに通すことができる。編機は、編み紐作業を中止する前にカテーテルのバルーンを約5cm通過させるまで自動的に編み紐を編む。
【0072】
次いで、カテーテルのバルーンを通過した5cmの長さの編み紐の四つのフィラメントのうち三つを、カテーテルの端から90度の角度をなしてに引張る。編み紐とカテーテルとをこの位置に維持しつつ、ニットの位置とは反対側において一つのフィラメントをカテーテル上で切断する。ニットに張力をさらに加えると、カテーテル上においてニットがほぐれる。
【0073】
バルーン上のこのカバーを測定することができる。カテーテルの直径は、カリパス(日本のミツトヨのCD−6”BS型)を用いて測定できる。この方法により形成されたカテーテルの直径は、2.5mm(0.098インチ)であり、被われる部分の直径は2.8mm(0.110インチ)である。ほぐれ始めたカバーの最大直径は0.6mm(0.024インチ)である。バルーンはメリットメディカル(Merit Medical)バルーン膨張装置(アトランタ州ソルトレイクシティのメリットメディカル株式会社(Merit Medecal)Basix25)に取り付けられ、7.03kg/cm(100psig)まで膨らまされる。カバーによって、バルーンが直径方向に大幅に拡大するのが妨げられる。次いで、バルーンに圧力を与えつつ、ほぐれたカバーをフォース・ゲージ(ハットフィールドのアメテック株式会社(Ametek Inc.)のアクフォース(AccuForce)III)に取り付ける。ゲージをカテーテルのハブの方向に引張る。バルーン上のカバーの一部がほぐれ、曳索に加えられる力は約5.29mN(0.54kg重(1.2ポンド重))の張力による最大圧力に達する。このことは、フィラメント・ケーシングが高い内圧に対してどの程度耐えられるかを示すと共に、ケーシングをほぐすために比較的小さい力のみを必要とすることを示している。
【0074】
この実施例は、自己延伸膨張式ステントをニット・カバーによってどのように抑制し、その後任意の方向にニット延長部を引張ることによってどのようにこれを展開できるかを示している。
【0075】
ラムニッティングマシン株式会社(マサチューセッツ州チコピー)2NBA/Z−TB型編み紐機を、8本針マシンで四つ送り/四つ針のチューブ製品を形成するために編機の指示書に指示されるとおりに設定する。編み紐のパターンは、隣接クロスオーバーを含む。ジョンソン&ジョンソン社のリーチイージースライド(REACH/EASY SLIDE)PTFEデンタル・フロス(ニュージャージー州スキルマン)を4巻入手する。この引き伸ばされたPTFEデンタル・フロス材料は約101.2g/km(920デニール)である。各フロス・ストランドを編機に通して、四つ送りにする。この四つのストランドをループ・サポート・スピンドルの下方で結んで、約706mN(72グラム重)の錘をこれらストランドから垂らす。
【0076】
シュナイダー株式会社(ミネソタ州ミネアポリス)の自己延伸膨張式ステント、ウォールステント10mm×40mmをインフィニティエクストルーションエンジニアリング社(Infinity Extrusion and Engineering)(カリフォルニア州サンタクララ)により押出成形された外径0.092の7233PEBAX(フランス、パリのエルフアトケム社(Elf Atochem))の外側に同心に配置する。次いでステントを指圧で半径方向に折りたたんで、ステント長さを増大させる。カテーテルのチューブの周りにステントを完全に折りたたむことにより、糸を用いてステントの両端および中間においてステントをカテーテルに結びつける。次いで指圧を解放する。ステントが半径方向に大幅に増大することは観察されない。
【0077】
次いで、ステント・アセンブリを上方から編み紐機に供給する。編み紐機の裏面におけるハンド・クランクを用いて、クランクを右回りに(編機の裏面を基準として)回すことにより針を低速で移動させて、縦編み動作を開始する。編み紐機により形成される最初のループをステントの下方端において結ばれた糸の内部に位置決めする。手でクランクを回しつつ、編み紐機がステントの長さ部分の編み紐を編む。真中に結ばれた糸を越えて編み紐を形成する直前に、この糸を切断して、第一のループと共に取り除く。ステントの他方の端および予め結ばれた最後のループが取外される直前に、編み紐動作を終了する。次いでクランクを左回りに一回転させて、四つの糸全てを針から外す。次いで、糸をシャトル延長部の真下で切って、ステント/カテーテル・チューブ/編み紐アセンブリを編機から切り離す。
【0078】
次いで、四つの糸のうち三つをカテーテルの軸から直交方向に引張る。ほぐれ作用が始まると、第四のストランドを他の三つと一緒に掴んで、第四のストランドのチューブの周りの経路がほぐれプロセスを妨害しないようにする。
【0079】
四つのストランドがチューブに対して直交方向またはチューブのどちらかの端に向かって引張られると、カバーがほぐれる。カバーがほぐれるにつれて、ステントはステントの直径方向に自己展開する。
【0080】
この実施例は、編み紐にワイヤを使用するものであり、このプロセスにより圧縮に強い放射線不透過性の構造が形成されることを示している。
【0081】
編み紐機を実施例2において指示されるとおりに設定するが、ストランドを直径0.2mm(0.006インチ)のニチノール超弾性ワイヤ(マサチューセッツ州ミルフォード、ニューイングランドプレシジョングラインディング&ワイヤ株式会社(New England Precision Grinding & Wire Company,Inc.))に取り替える。ワイヤを一緒に結ぶ代わりに、編み機に通した後、ワックス被覆糸を使用して四つのワイヤを接続する。
【0082】
直径5mmのステンレス鋼製中空マンドレルを上方から編機に挿入する。四つのワイヤおよびマンドレルをスピンドルに供給して、長さ約3.8cm(1.5インチ)×幅0.5インチ(1.3cm)の絶縁テープのストリップをマンドレルに取り付けて、四つのワイヤを相互に約90°になるよう固定する。クランクを右回りに回すことにより縦編み作業を開始する。クランクを手動で回転させて、メリヤス針が常に適切なワイヤを掴むようにする。ワイヤを掴み損ねた場合には、そのワイヤを適切な針に手動でかける必要がある。縦編み時、スピンドルの下方においてワイヤに張力を手動で加えて、メリヤス針が上方に移動するときに、完成したワイヤのループをメリヤス針の下方に通過させる。約5cm編むまで縦編み作業を続ける。クランク回転作用を停止した後、長さ約3.8cm(1.5インチ)×幅1.3cm(0.5インチ)の別の絶縁テープを用いて、ワイヤをマンドレルの上端に固定する。四つのワイヤをシャトルの出口で切断して、マンドレル−編み紐ワイヤを編機から外す。
【0083】
次いで、ステンレス軟鋼製ワイヤを絶縁テープのすぐ内側のワイヤの編み紐の両端に取り付けて、ニット構造をマンドレルに保持する。次いで絶縁テープを取り除き、両端の四つのワイヤをワイヤ・カッターを用いて刈り込む。次いで、このアセンブリを530℃に設定されたオーブン内に60分置く。その後、このアセンブリをヤットコを用いてオーブンから取り出し、直ちに室温の水槽で急冷する。次いで、両端を固定しているワイヤを切り、マンドレルの端から編み紐を移動させることによって、編み紐をマンドレルから外す。
【0084】
結果的に得られるワイヤの編み紐は、その編み紐形態をなして安定しており、指圧力に対して大きな半径方向の圧縮抵抗を示すことが分かっている。チューブに編み紐を取り付けるときに、前述した好ましい実施例のように、最初に四つのワイヤのうち三つを引張ることにより、ワイヤを外すことができる。
【0085】
この実施例は、本発明のカバーの血管形成カテーテルへの配置およびこのカバーの半径方向の拡張に対する抵抗力を実証している。
【0086】
編み紐機を、実施例に指示されるとおりに設定するが、ストランドをナイロン裁縫糸(サウスカロライナ州グリーンヴィルのコーツ&クランク株式会社(Coats & Clark,Inc.)室内装飾用超強度ミシンおよび手縫い用糸)に代える。四つの糸を編み紐機に通して、スピンドル本体の下方において一緒に結ぶ。約706mN(72グラム重)の錘をこの結び目から垂らす。
【0087】
クックアセント(Cook Accent)血管形成カテーテル(8mm×4cm、インディアナ州ブルーミントン)を入手して、バルーン内腔のルアロックに注射器を取り付けてプランジャを引いて、バルーンを真空にする。真空を維持しつつ、カテーテルを下方からスピンドルに供給し、針を通過してシャトル本体に挿入する。編み紐作業は、クランクを右回りに回すことによって開始されて、バルーンの8cm付近から始まる。編み紐がカテーテルの遠位先端を約10cm越えるまでクランクを回しつづける。クランクを止めた後、四つの糸をシャトル位置で切って、カテーテルを編機から外す。次いで、注射器をバルーンのルアロック・コネクタから取外す。
【0088】
四つの糸のうち一つをカテーテルの遠位端に合わせて切断する。次いで編み紐の10cmの延長部分に張力を加えると、編み紐はバルーンおよびカテーテルのハブに向かって近位端方向にほぐれ始める。注射器を再びバルーン内腔のルアロックに取り付ける。約0.505MPa(5atm)の圧力をバルーンに加える。バルーンはその折りたたみ状態からの大幅な拡張に抵抗し、編み紐はほぐれることはない。
【0089】
本発明のカバーの利点には次のものがある。それらは、編み紐は半径方向への拡張を最小限にしつつ高い内圧を保持すること、編み紐式カバーをほぐすために必要な力が非常に小さいこと、編み紐式カバーをほぐすために任意の方向から曳索を引張ることができること、曳索はマルチフィラメントであって編まれているので非常に強いこと、複数の強力なフィラメント使用するので、薄いケーシングしか必要とせず、典型的には導入カテーテルの断面方向に0.33mm(1French)よりも少なく増大すること、また強いフィラメントを使うので曳索の断面積が小さいこと、カバーを制御された方法で制御された速度でほぐすことができること、延伸膨張可能製品を完全に収めるためにニットを採用できること、ニットは単一方向に沿って100%取外し可能であり、所定の位置に延伸膨張可能装置しか残さず、塞栓形成および(または)血管損傷の可能性を最小限に抑えることである。さらに、カバー全体を単一の材料(または希望する場合には複数の材料)で構成することができ、例えば、カバー全体をPTFEで構成することができること、延伸膨張可能装置の構造に編みこむ必要がないこと、本発明のカバーを用いて折りたたんだ装置のほぼどのような形状でも収めることができ、外面を比較的滑らかにすることができること、カバーは非常に柔軟性があり、導入される装置の堅さをわずかしか増さないこと、ニットを異なるエリアに連続的に被せて、多段階展開を可能にし、ステントの両端を中心の前に展開し、外側被覆を内側被覆の前に解除するのを可能にすること、ニットの「密度」を変化させて、ニットの側方からブランチまたはガイドワイヤを出せること、本発明のカバーは製造が容易で、簡単に自動化できること、製造時、ニッティング・プロセスが延伸膨張可能装置にある程度の半径方向内向きの力を与えて、その断面形状をさらに小さくすることができること、ニットはフィルムあるいはファイバの使用を想定していること、曳索はほどかれるニットの長さより大幅に長く、延伸膨張可能装置を正確に展開させられること、および最も幅狭ニットの周方向長さを変えることによって展開長さに対する展開用ライン引張り長さの比を調整することができること、である。
【0090】
本発明のその他の利点には、次のようなもの、本発明のカバーは拘束される装置の外面を比較的均等に圧縮すること、被覆対象のプロテーゼなどの端を越えてカバーを延長することにより、カテーテル・シャフトと被覆対象の装置との間の形状が滑らかに移行すること、および被覆率または被覆のタイプを変えることにより導入システムの柔軟性を修正するためにカバーを使用できることがある。
【0091】
本明細書においては本発明の特定の実施形態について例示し説明しているが、本発明はこれらの例示および説明に限定されるべきではない。特許請求の範囲の範囲内で本発明の一部として変更および修正を組み込むことができることが明らかなはずである。
【符号の説明】
【0092】
10 編み紐式カバー
12 弾性変形可能ステント
14 曳索
16 内腔
18 二重内腔カテーテル
20 Y型コネクタ
22 内腔
24 バルーン
26、28、30、32 ストランド
34、36、38、40 接続点
42、44 ファイバ
46 編機
47 ガイド
48 糸位置決め用シャトル
49 ヘッド
50 ユニット
52 錘
54、54a、54b、54c、54d フィラメント
55 縦編みチューブ
56 結糸
57 カテーテル
60 装置
62a、62b、62c セグメント
64a、64b、64c 曳索
68 カバー
70 カテーテル
72 内腔
76 曳索
78 カバー
82a、82b、82c ガイドワイヤ
84 カバー
86a、86b セグメント
88、90 曳索
92 近位端
94 遠位端
96 カバー
98a、98b セグメント
100 バルーン
102a、102b 曳索
104 中央内腔
106 カバー
108、108a、108b、108c、108d 延伸膨張式装置
110 カテーテル
112 曳索
114 カバー
116 薬剤注入用カテーテル
118、118a、118b、118c、118d、118e、118f、118g、118h、118j、118k 開口
120 曳索
122 カバー
124a、124b チューブ
126 複数内腔カテーテル
128 後曳索
130 バルーン
132 カバー
134 複数内腔カテーテル
136 曳索
138 カバー
140 内腔
142 カバー
144 放射線不透過性編み紐
146 装置
148 曳索
150 カバー
152 バルーン
154 血管
156 狭窄病変部
158 カバー
160 開口
162 カテーテル
164a、164b セグメント
168 ガイドワイヤ
170 カバー
172 絶縁性ジャケット
174 電気導体
176 曳索
178 カバー
184a、184b スタッド
186 壁
188 曳索
190 カバー
192 治療装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状構造部と、
該管状構造部と接触する、縦編みの形状をなす複数のインターロック・ストランドを含む取外し可能な層と、を含み、
該取外し可能な層の一端に張力が加えられたときに、前記ストランドが分離して、前記取外し可能の層を前記管状構造部から分離させるように構成される、管状装置。
【請求項2】
前記縦編みの少なくとも一つのストランドが前記縦編みから分離して、張力を加えることにより前記層をほぐす、請求項1に記載の管状装置。
【請求項3】
前記取外し可能な層がほぐれて、単一のマルチフィラメント・コードを形成する、請求項1に記載の管状装置。
【請求項4】
前記ストランドが、張力により単一方向に沿って取外されるように配置される、請求項1に記載の管状装置。
【請求項5】
前記管状構造部が少なくとも一つの圧縮された自己延伸膨張式構造部を含み、
前記取外し可能な層が前記自己延伸膨張式構造部の周りに配置されていて、前記取外し可能な層が前記自己延伸膨張式構造部から分離されるまで前記構造部が延伸膨張するのを妨げる、請求項1に記載の管状装置。
【請求項6】
前記自己延伸膨張式構造部が内部血管プロテーゼを含む、請求項5に記載の管状装置。
【請求項7】
前記管状構造部がバルーンを含む、請求項1に記載の管状装置。
【請求項8】
前記管状構造部が塑性変形部材を含む、請求項1に記載の管状装置。
【請求項9】
前記塑性変形装置内に取り付けられたバルーンをさらに含む、請求項8に記載の管状装置。
【請求項10】
前記管状構造部がガイドワイヤを含む、請求項8に記載の管状装置。
【請求項11】
前記管状装置が長手方向長さ部分を有し、
前記ニットがほぐれて隣接する曳索となり、該曳索は前記管状装置の前記長手方向長さ部分に沿った略直線状ラインにおいて分離する、請求項1に記載の管状装置。
【請求項12】
前記複数のインターロック・ストランドのうち少なくとも一つがファイバである、請求項1に記載の管状装置。
【請求項13】
前記ファイバがポリテトラフルオロエチレン製である、請求項12に記載の管状装置。
【請求項14】
前記複数のインターロック・ストランドのうち少なくとも一つがフィルムである、請求項1に記載の管状装置。
【請求項15】
前記ストランドのうち少なくとも一つが放射線不透過性である、請求項1に記載の管状装置。
【請求項16】
前記管状装置が長さ部分を有し、
前記縦編みが前記管状装置の前記長さ部分に沿って可変な密度を有している、請求項1に記載の管状装置。
【請求項17】
前記管状装置が複数の取外し可能な層を含み、これら取外し可能な層のそれぞれを前記管状装置から別個に取外すことができる、請求項1に記載の管状装置。
【請求項18】
前記複数の層が相互に同心である、請求項17に記載の管状装置。
【請求項19】
前記複数の層が相互に軸線方向にずれて配置される、請求項17に記載の管状装置。
【請求項20】
前記取外し可能な層のそれぞれが別個のマルチフィラメント・曳索を有する、請求項17に記載の管状装置。
【請求項21】
マルチストランドの取外し可能層を具備するストランドが、前記管状構造部を完全には取り囲まないようにした、請求項1に記載の管状装置。
【請求項22】
前記取外し可能な層が、前記自己延伸膨張式構造部を半径方向に均等に拘束する、請求項5に記載の管状装置。
【請求項23】
前記管状構造部が、直径が固定されている一つまたはそれ以上の構造部を含む、請求項1に記載の管状装置。
【請求項24】
前記取外し可能な層が、前記管状構造部の長手方向の柔軟性を変化させるために前記管状構造部周りに配置される、請求項1に記載の管状装置。
【請求項25】
移植可能ステント・アセンブリにおいて、
延伸膨張可能ステント装置と、
前記ステント装置を取り囲んでいる取外し可能な層と、を含み、
前記取外し可能な層が縦編みの形状をなす複数のインターロック・ストランドを含み、
前記取外し可能な層の一端に張力が加えられるときに、前記ストランドがほぐれて、前記取外し可能な層が前記ステント装置から分離するように配置される、
移植可能ステント・アセンブリ。
【請求項26】
前記延伸膨張可能ステント装置が圧縮された自己延伸膨張式構造部を含み、
前記取外し可能な層が前記自己延伸膨張式構造部の周りに配置されて、前記取外し可能な層が前記自己延伸膨張式構造部から分離するまで前記構造部が延伸膨張するのを妨げる、請求項25に記載の移植可能ステント・アセンブリ。
【請求項27】
前記縦編みの少なくとも一つのストランドが前記縦編みから分離されて前記層をほぐす、請求項25に記載の移植可能ステント・アセンブリ。
【請求項28】
前記ステント・アセンブリが長手方向長さ部分を有し、
前記縦編みが、張力によって前記アセンブリの前記長手方向長さ部分に沿った略直線状ラインにおいてほぐれる、請求項25に記載の移植可能ステント・アセンブリ。
【請求項29】
前記アセンブリが複数の取外し可能な層を含み、これら取外し可能な層のそれぞれを前記アセンブリから別個に取外すことができる、請求項25に記載の移植可能ステント・アセンブリ。
【請求項30】
前記アセンブリが長さ部分を有し、
前記縦編みが前記アセンブリの前記長さ部分に沿って可変な密度を有する、請求項25に記載の移植可能ステント・アセンブリ。
【請求項31】
装置に取り付けられる取外し可能なカバーにおいて、
複数のフィラメントを含み、
前記フィラメントは一緒に取り付けられて、前記装置を被覆するマルチフィラメント・インターロック構造を形成し、
さらに、
前記フィラメントの各々の端を含む曳索を含み、
前記曳索に張力が加えられるときに、前記インターロック構造部が前記装置から分離し、前記複数のフィラメントのうりの二つが略直線状ラインにおいて互いに分離する、
取外し可能なカバー。
【請求項32】
前記曳索がマルチフィラメント編み合わせ式曳索を含む、請求項31に記載のカバー。
【請求項33】
前記フィラメントが縦編みとして編まれる、請求項31に記載のカバー。
【請求項34】
前記曳索が、略直線状ラインにおいて前記フィラメント全体を前記装置から取外す、請求項31に記載のカバー。
【請求項35】
装置に取り付けられる取外し可能なカバーにおいて、
複数のフィラメントを含み、
前記フィラメントは一緒に取り付けられて、前記装置を被覆するマルチフィラメント・インターロック構造を形成し、
さらに、
前記フィラメントの各々の端を含む曳索を含み、
前記曳索に張力が加えられるときに、前記インターロック構造部が前記装置から分離し、前記曳索が前記フィラメントの全てを略直線状ラインにおいて前記装置から分離する、 取外し可能カバー。
【請求項36】
前記曳索がマルチフィラメント編み合わせ曳索を含む、請求項35に記載のカバー。
【請求項37】
前記フィラメントが縦編みとして編まれる、請求項35に記載のカバー。
【請求項38】
前記曳索に張力が加えられるときに、前記複数のフィラメントのうち二つが略直線状ラインにおいて相互に離れる、請求項35に記載のカバー。
【請求項39】
装置に取り付けられた取外し可能なカバーにおいて、
複数のフィラメントを含み、
前記フィラメントは一緒に取り付けられて、前記装置を被覆するマルチフィラメント・インターロック構造部を形成し、
前記フィラメントの各々の端部を編み合わせてマルチフィラメント・曳索を形成し、
前記曳索に張力が加えられるときに、前記インターロック構造部が前記装置から分離する、
取外し可能カバー。
【請求項40】
前記曳索に張力が加えられるときに、前記インターロック構造部が前記装置から分離し、前記曳索が前記フィラメントの全てを略直線状ラインにおいて前記装置から分離する、請求項39に記載の取外し可能なカバー。
【請求項41】
前記フィラメントが縦編みとして編まれる、請求項39に記載のカバー。
【請求項42】
前記曳索に張力が加えられるときに、前記複数のフィラメントのうちの二つが略直線状ラインにおいて相互に離れる、請求項39に記載のカバー。
【請求項43】
前記カバーが可変な密度のニットを具備する、請求項39に記載のカバー。
【請求項44】
前記カバーが可変な密度のニットを具備する、請求項35に記載のカバー。
【請求項45】
前記カバーが可変な密度のニットを具備する、請求項31に記載のカバー。
【請求項46】
前記インターロックするストランドが可変な密度のニットを具備する、請求項1に記載のカバー。
【請求項47】
前記インターロックするストランドが可変な密度のニットを具備する、請求項25に記載のカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【公開番号】特開2009−165851(P2009−165851A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−97970(P2009−97970)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【分割の表示】特願2000−554302(P2000−554302)の分割
【原出願日】平成11年6月7日(1999.6.7)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】