説明

遠隔計測装置

【課題】通信コスト及び消費電力を削減し、監視対象の状態を計測した計測データを、無線により外部装置に送信する遠隔計測装置を得る。
【解決手段】遠隔計測装置2は、監視対象の状態を計測するセンサー1によって計測されたデータをデータ処理回路21により収集して蓄積し、回線交換網3を利用するデータ通信及びパケット通信網4を利用するパケット通信が可能な通信モジュール22を用いて、回線交換網3を利用するデータ通信によりデータ収集装置5から要求を受付けるとともに、パケット通信網4を利用するパケット通信により蓄積したデータをデータ収集装置5に送信するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、監視対象の状態を計測し、無線により外部装置に計測データを送信する遠隔計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線遠隔計測装置においては、計測対象の機器に設置された計測機器と、この計測機器に接続され、計測機器によって収集された情報を無線にて伝送する無線情報伝送端末と、この無線情報伝送端末から送信されたデータを受信し、受信した情報を公衆の無線通信網を介して送信する中継器と、無線情報伝送端末および中継器から送信された情報を有線通信網を介して監視センターに送信する基地局と、計測対象の状態を監視する監視センターにより構成されている。(例えば、特許文献1参照)
また、複数の通信方式に対応した移動端末として、通話として使用する回線交換網とデータ通信に使用するパケット転送網の間を自在に切り替えが可能な構成が開示されている。(例えば、特許文献2参照)
【0003】
【特許文献1】特開2001−292243号公報(第4〜5頁、図1)
【特許文献2】特開2003−143652号公報(第3〜7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の無線遠隔監視装置は、以上のように構成されているので、無線情報端末もしくは中継器と監視センターとの通信は、電話による回線接続方式で行わなければならない。そのため、通信データ量が多い場合(通信に時間がかかる場合)には、通信コストが非常に高くなるという問題点があった。
無線情報端末もしくは中継器と監視センターとの通信にパケット通信網を使用することも可能であるが、その場合は、無線情報端末もしくは中継器が、パケット通信網に常時接続する必要が出てくるため、消費電力が高くなり、このため、特許文献1のように、太陽電池など別途電源を供給する手段が必要となり、機器のコストが高くなるという問題点があった。
また、特許文献2では、回線交換方式とパケット通信方式の両方を自在に切り替えられる携帯端末について記載されているが、ユーザ操作により通信方式を切り替える必要があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、通信コスト及び消費電力を削減し、監視対象の状態を計測した計測データを、無線により外部装置に送信する遠隔計測装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる遠隔計測装置においては、監視対象の状態を計測するセンサーによって計測されたデータをセンサーから収集して蓄積するデータ処理回路、及び外部装置との間で回線交換網を利用するデータ通信及びパケット通信網を利用するパケット通信が可能な通信モジュールを備え、
通信モジュールは、常時は回線交換網を利用するデータ通信の受信待ち状態にあり、データ通信により外部装置からのデータ送信の要求を受けると、パケット通信網を利用するパケット通信により蓄積したデータを外部装置に送信するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、監視対象の状態を計測するセンサーによって計測されたデータをセンサーから収集して蓄積するデータ処理回路、及び外部装置との間で回線交換網を利用するデータ通信及びパケット通信網を利用するパケット通信が可能な通信モジュールを備え、
通信モジュールは、常時は回線交換網を利用するデータ通信の受信待ち状態にあり、データ通信により外部装置からのデータ送信の要求を受けると、パケット通信網を利用するパケット通信により蓄積したデータを外部装置に送信するので、通信コスト及び消費電力を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による遠隔計測装置を示すシステム構成図である。
図1において、監視対象の状態を計測するセンサー1に接続され、センサー1で計測したデータを収集し、蓄積する遠隔計測装置2は、接続時間に応じて課金される回線交換網3と、接続時間に依存せずデータ量に応じて課金されるパケット通信網4とを経由して、データ収集装置5と接続される。データ収集装置5は、遠隔計測装置2から定期的にデータを収集する。
遠隔計測装置2は、センサー1からデータを収集、蓄積するためのデータ処理回路21と、回線交換網3およびパケット通信網4に接続するための通信モジュール22と、これらデータ処理回路21と通信モジュール22を駆動するための電源を供給するバッテリ23(内蔵バッテリ)により構成されている。
【0009】
図2は、この発明の実施の形態1による遠隔計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
図2において、データ処理回路21は、センサー1からデータを収集するデータ収集機能211と、データや設定情報などを記録するためのメモリ214を有し、さらにデータ収集機能211によって収集されたデータをメモリ214に蓄積するデータ蓄積機能212と、通信モジュール22を制御する通信制御機能213を有している。
通信モジュール22は、回線交換網3に接続して通信を行うための回線交換通信機能221と、パケット通信網4に接続して通信を行うためのパケット通信機能222を有している。
データ収集装置5は、遠隔計測装置2からデータ収集とデータの管理を行うデータ収集機能51と、データ収集機能51の要求に応じて遠隔計測装置2との通信を行う通信機能52とから構成され、通信機能52は、回線交換網3で通信を行うための回線交換通信機能521と、パケット通信網4で通信を行うためのパケット通信機能522を有している。
【0010】
図3は、この発明の実施の形態1による遠隔計測装置の動作を示すフローシーケンスである。
【0011】
次に、動作について説明する。
遠隔計測装置2は、データ収集機能211が定期的に計測対象の状態を示す情報をセンサー1から収集し、データ蓄積機能212によって収集したデータをメモリ214に蓄積していく。データ収集装置5は、定期的に遠隔計測装置2からデータを収集する。
次に、データ収集装置5が、遠隔計測装置2からデータを収集する処理について、図3のフローを用いて説明する。
データ収集装置5は、データ収集機能51から回線交換通信機能521に接続要求を行い、回線交換網3経由で遠隔計測装置2に電話をかける(STEP1)。遠隔計測装置2は、受信待ち状態の回線交換通信機能221が電話の呼び出しを受けていることを検出し、通信制御機能213は、それを受けて回線接続を行う(STEP2)。回線確立後、データ収集装置5のデータ収集機能51から回線交換通信機能521経由で、遠隔計測装置2にデータ送信要求を送信する(STEP3)。
遠隔計測装置2では、回線交換通信機能221を経由して、通信制御機能213がデータ収集装置5からのデータ収集要求を受信する。データ収集要求を受信すると、通信制御機能213は、データ収集装置5に対してデータ要求受信応答を回線交換通信機能221経由で送信する(STEP4)。データ収集要求応答を送信が完了すると、回線切断要求を行い、回線交換通信機能221は、要求を受けると接続中の回線を切断する(STEP5)。
【0012】
回線切断後、遠隔計測装置2の通信制御機能213は、パケット通信機能222に対して、パケット通信網4を使って回線接続要求をデータ収集装置5に行う(STEP6)。データ収集装置5のパケット通信機能522は、回線接続要求を受けて接続を確立する(STEP7)。
接続確立後、遠隔計測装置2の通信制御機能213は、データ蓄積機能212から送信するデータを取得し、パケット通信機能222を使用して、データ収集装置5にデータを送信する(STEP8)。遠隔計測装置2の通信制御機能213は、データ送信が完了すると、パケット通信機能222に回線切断要求を行い、パケット通信機能222は、パケット通信網4との回線を切断する(STEP9)。
【0013】
実施の形態1によれば、以上のように、データ収集装置5からの要求は、回線交換網3を使用し、遠隔計測装置2からのデータ送信にパケット通信網4を使用することにより、接続時間に依存する回線交換網3を使用する時間を抑えることができる。
なお、パケット通信では、データ量に比例して料金がかかるが、データ通信においては回線交換を使用する場合に比べてコストは低く、また、データ量によらない定額料金のプランもあるため、通信コストを抑えることができる。
また、パケット交換網4のみで通信を行う場合には、データ収集装置5からの要求を受けるために、常に接続されている必要があり、その間、通信のために電力消費が増えてしまうが、本発明では通信状態に比べて消費電力が少ない回線交換網3からの待ち受け状態で要求を待つことができるため、バッテリの消費を抑えることができ、長期間駆動を実現することが可能となる。
【0014】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2による遠隔計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
図4において、1〜5、21〜23、211〜214、221、222、51、52、521、522は図2におけるものと同一のものである。図4では、データ処理回路21にメール送信機能215(通報手段)を設け、パケット通信網4を使用して監視員の携帯電話6にメールで異常を通報するように構成されている。
【0015】
実施の形態1では、回線交換網3で要求を受けて、パケット通信網4でデータを送信する場合について述べたが、実施の形態2は、図4で示すように、遠隔計測装置2のデータ処理回路21にメール送信機能215を設け、メモリ214上にメール送信のための情報(メールの送信条件やメールアドレスなど)を記録することにより、メールの送信条件(例えば、センサー1から収集した値が予め設定した閾値を超える)を満たした場合に、パケット通信網4を使用して監視員の携帯電話6にメールで異常を通報するようにした。
【0016】
実施の形態2によれば、携帯電話6にメールで異常を通報するようにしたので、迅速に異常を通知することができる。
【0017】
実施の形態3.
図5は、この発明の実施の形態3による遠隔計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
図5において、1〜5、21〜23、211〜214、221、222、51、52、521、522は図2におけるものと同一のものである。図5では、データ処理回路2に制御出力機能216(制御出力手段)を設け、遠隔計測装置2に接続された機器7に制御信号を出力するように構成されている。
【0018】
実施の形態2では、遠隔計測装置2のデータ処理回路21にメール送信機能215を設けて、異常をメールで通報する場合について述べたが、実施の形態3は、図5に示すように、遠隔計測装置2のデータ処理回路21に制御出力機能216を設け、データ収集装置5からの要求に応じて、機器7に対して制御信号の出力(例えばDO接点など)を行い、遠隔から機器7の操作ができるようにした。
【0019】
実施の形態3によれば、データ収集装置によって遠隔から機器の操作ができるようになる。
なお、この場合の通信に使用する回線を回線交換網3に限定することで、1対1の通信となるため、通信時のセキュリティの確保が容易となる。
【0020】
実施の形態4.
図6は、この発明の実施の形態4による遠隔計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
図6において、1〜5、7、21〜23、211〜214、216、221、222、51、52、521、522は図5におけるものと同一のものである。図6では、遠隔計測装置2のデータ処理回路21に、接続元の認証を行う認証機能217を設けている。
【0021】
実施の形態3では、遠隔計測装置2のデータ処理回路21に制御出力機能216を設け、データ収集装置5からの要求に応じて制御信号を出力する場合について述べたが、実施の形態4は、図6に示すように、遠隔計測装置2のデータ処理回路21に認証機能217(認証手段)を設け、回線接続時に接続元の認証を行うようにした。
【0022】
実施の形態4によれば、遠隔計測装置の認証機能により、不正なアクセスを防止することができ、データの流出や不正操作を防ぐことができる。
【0023】
実施の形態5.
図7は、この発明の実施の形態5による遠隔計測装置を示すシステム構成図である。
図7において、1〜5、21〜23は図1におけるものと同一のものである。図7では、遠隔計測装置2に、取替えが容易な外部バッテリ8が接続されている。
【0024】
実施の形態4では、遠隔計測装置2のデータ処理回路21に認証機能217を設け、回線接続時に接続元の認証を行うことで、不正アクセスを防止する場合について述べたが、実施の形態5は、図7に示すように、遠隔計測装置2に外部バッテリ8を接続して、外部バッテリ8で給電し、遠隔計測装置2のバッテリ23は、外部バッテリ8からの給電がなくなった場合の予備バッテリとして使用するようにした。
【0025】
実施の形態5によれば、これにより、バッテリ消耗時には外部バッテリのみを交換するだけでよく、バッテリの交換作業が容易になるだけでなく、外部バッテリの交換中も遠隔計測装置のバッテリが予備バッテリとして動作するため、遠隔計測装置の動作を止めることなく、バッテリ交換が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1による遠隔計測装置を示すシステム構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による遠隔計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1による遠隔計測装置の動作を示すフローシーケンスである。
【図4】この発明の実施の形態2による遠隔計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3による遠隔計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態4による遠隔計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態5による遠隔計測装置を示すシステム構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 センサー
2 遠隔計測装置
21 データ処理回路
211 データ収集機能
212 データ蓄積機能
213 通信制御機能
214 メモリ
215 メール送信機能
216 制御出力機能
217 認証機能
22 通信モジュール
221 回線交換通信機能
222 パケット通信機能
23 バッテリ
3 回線交換網
4 パケット通信網
5 データ収集装置
51 データ収集機能
52 通信機能
521 回線交換通信機能
522 パケット通信機能
6 携帯電話
7 機器
8 外部バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の状態を計測するセンサーによって計測されたデータを上記センサーから収集して蓄積するデータ処理回路、及び外部装置との間で回線交換網を利用するデータ通信及びパケット通信網を利用するパケット通信が可能な通信モジュールを備え、
上記通信モジュールは、常時は上記回線交換網を利用するデータ通信の受信待ち状態にあり、データ通信により上記外部装置からのデータ送信の要求を受けると、上記パケット通信網を利用するパケット通信により上記蓄積したデータを上記外部装置に送信することを特徴とする遠隔計測装置。
【請求項2】
上記データ処理回路は、上記収集したデータの異常を検出した時にメールにより通報する通報手段を有することを特徴とする請求項1記載の遠隔計測装置。
【請求項3】
上記データ処理回路は、上記外部装置からの指示に基づき、制御対象機器への制御信号を出力する制御出力手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の遠隔計測装置。
【請求項4】
上記データ処理回路は、上記外部装置を認証する認証手段を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の遠隔計測装置。
【請求項5】
上記データ処理回路及び上記通信モジュールを駆動する内蔵バッテリを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の遠隔計測装置。
【請求項6】
上記データ処理回路及び上記通信モジュールは、取替えが容易な外部バッテリからの給電により駆動されるとともに、上記外部バッテリの交換時に上記データ処理回路及び上記通信モジュールを駆動する内蔵バッテリを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の遠隔計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−171030(P2009−171030A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4493(P2008−4493)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】