適応アンテナアレー受信装置及びその方法
【課題】 本発明の課題は、パス受信タイミングおよび到来方向の検出精度が著しく劣化することを防ぐことができ、かつパケット伝送に適した適応アンテナアレー受信装置を提供することである。
【解決手段】 上記課題は、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを備え、該複数のアンテナ素子により送信信号を受信する適応アンテナアレー受信装置において、前記複数のアンテナ素子で受信される制御信号を用いて時間と到来パスの角度の次元を有する2次元電力プロファイルを生成する2次元電力プロファイル生成手段と、前記2次元電力プロファイルを用いて、パスの受信タイミング検出及びパスの到来方向を推定するパス検出・到来方向推定手段と、前記パスの到来方向推定結果に基づき前記複数のアンテナ素子からの受信信号に対するアンテナウェイトを生成するアンテナウェイト生成手段と、を備えたことを特徴とする適応アンテナアレー受信装置にて達成される。
【解決手段】 上記課題は、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを備え、該複数のアンテナ素子により送信信号を受信する適応アンテナアレー受信装置において、前記複数のアンテナ素子で受信される制御信号を用いて時間と到来パスの角度の次元を有する2次元電力プロファイルを生成する2次元電力プロファイル生成手段と、前記2次元電力プロファイルを用いて、パスの受信タイミング検出及びパスの到来方向を推定するパス検出・到来方向推定手段と、前記パスの到来方向推定結果に基づき前記複数のアンテナ素子からの受信信号に対するアンテナウェイトを生成するアンテナウェイト生成手段と、を備えたことを特徴とする適応アンテナアレー受信装置にて達成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適応アンテナアレー受信装置及びその方法に関し、特に到来方向推定結果に基づいてアンテナウェイトを生成する適応アンテナアレー受信装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所望信号の到来方向に主ビームを向けて干渉信号の到来方向に指向性の零点を形成するアンテナとしてアダプティブ(適応)アンテナアレーが知られている。 このような適応アンテナアレーを用いた受信装置の従来例を図21に示す。この従来の適応アンテナアレー受信装置は、図21に示されるように、N個のアンテナ素子101−1〜101−Nと、N個の相関検出部102−1〜102−Nと、N個の複素プロファイル生成部103−1〜103−Nと、加算器104と、合成遅延プロファイル生成部105と、パス検出部106と、DOA(Direction of arrival:到来方向)推定部107と、アンテナウェイト生成部108と、N個の乗算器109−1〜109−Nと、加算器110と、復調部111とから構成されている。
【0003】
アンテナ101−1〜101−Nで受信されるパイロット信号内のパイロットシンボルは、相関検出部102−1〜102−Nに入力され、各アンテナでパイロットシンボルを用いた複素相関が検出される。そして、その検出された複素相関値は複素プロファイル生成部103−1〜103−Nに取り込まれて、複素遅延プロファイルが生成される。複素プロファイル生成部103−1〜103−Nで生成される複素遅延プロファイルは、加算器104で加算された後、合成遅延プロファイル生成部105に入力され、同部105において電力合成された合成遅延プロファイルが生成される。パス検出部106は、上記合成遅延プロファイルを用いて、パス毎の受信タイミングを検出し、検出結果をDOA推定部107と、復調部111に出力する。
【0004】
DOA推定部107は、複素プロファイル生成部103−1〜103−Nで生成された複素遅延プロファイルと、上記検出された受信タイミングに基づき、各パスを通って到来する信号のDOAを推定する。アンテナウェイト生成部108は、DOA推定部107で推定されたDOAの推定結果を基にその推定した方向に指向性が形成されるようにアンテナウェイト(受信アンテナウェイト)を生成する。DOAの推定結果に基づいて生成されたアンテナウェイトは、各アンテナ101−1〜1−1−Nで受信されたパスの信号それぞれと乗算器109−1〜109−Nで乗算された後、加算器110で乗算後の信号が合成される。このようにして合成された信号は、復調部111で復調され、これにより復調データ、すなわち再生データ出力が得られるようになっている。
【0005】
また、適応アンテナアレーのウェイトを求める方法としては、遅延プロファイルに現れるピークの方向を検出し、その方向を考慮してウェイトを求める方法が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003 −110476
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の適応アンテナアレー受信装置では、各アンテナ101−1〜101−Nにセクター内を指向するセクターアンテナが用いられる。すなわち、従来法では、ビーム幅が広い各アンテナのセクタビームで受信した信号を合成することにより合成遅延プロファイルが生成されるため、パス受信タイミング及び到来方向の検出精度が著しく劣化してしまうという問題があった。
【0007】
一方で、現在実用化されている第3世代移動通信システム(IMT−2000)の次世代となる第4世代移動通信システムでは、音声通信中心の回線交換型からWWWブラウジングや大容量データのダウンロード等のパケット通信中心のパケット交換型にシフトしていくと考えられる。この場合、上下リンクの通信チャネルの伝送速度は、例えば、大容量データのダウンロードを行う場合であれば、下りリンクの通信チャネルのデータ伝送速度は、大容量データのダウンロードを高速に行うために、上りリンクに比べて非常に大きくなる。さらには、下りリンクのみ送信を行い、上りリンクの通信チャネルの送信は行わないような場合も想定される。このように第4世代移動通信システムにおけるパケット交換型のシステムでは、コアネットワークのIP化に伴い、無線区間においてもパケット信号フォーマットで伝送を行う方法が好ましい。しかしながら、この場合、基地局における移動局ユーザからの受信信号はバースト的になり、アダプティブアレーアンテナで一般的に適用されているMMSE(Minimum Mean Square Error)アルゴリズムを用いたアンテナウェイト生成は充分に収束せず、結果としてアンテナウェイトの生成誤差が増大するという問題があった。
【0008】
また、上記のアダプティブアレーアンテナは、受信したいユーザの信号の到来方向にメインビーム(アンテナ利得が最大となる点)を向け、他ユーザの信号の到来方向にビームヌルもしくは、低いアンテナ利得となるようなアンテナパターンで送受信することで伝送特性を改善する技術であるが、従来は、上りリンクでMMSE等の適応アルゴリズムを用いて生成した受信アンテナウェイトを使って上りリンクの受信を行い、この受信アンテナウェイトを基に下りリンクの送信における送信アンテナウェイトが生成されていた。この場合、上記した大容量データのダウンロードの例のように、下りリンクは送信しているが、上りリンクは同時には送信していないような場合には、受信アンテナウェイトが得られていないので、下りリンクの送信アンテナウェイトも生成することができない。
【0009】
また、上りリンクの受信アンテナウェイトは、上りリンクで干渉となっているユーザの通信チャネルの干渉抑圧を実現しているだけであり、仮に上下リンクの非対称性により、下りリンクにおいて、到来方向の異なる他のユーザに大電力で
送信を行っているようなときは、下りリンク送信における干渉抑圧は十分に行うことができない。
【0010】
さらに、第4世代移動通信システムにおけるブロードバンド無線アクセスの上りリンクにおいては、高速レートのトラヒックを伝送する大電力の共有チャネル、低速レートのトラヒックを伝送する個別・共有チャネル、予約パケットなどの制御チャネルが混在すると考えられる。例えば、図22に示すように、移動局600、移動局610が低速レートで基地局500と通信を行い、移動局620が高速レートで基地局と通信を行う場合がある。このような場合において、低速レートの個別・制御チャネルをアダプティブアレー受信すると、大電力の共有チャネルが干渉となり、低速レートの希望波の検出精度が劣化してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、パス受信タイミングおよび到来方向の検出精度が著しく劣化することを防ぐことができ、かつパケット伝送に適した適応アンテナアレー受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されるように、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを備え、該複数のアンテナ素子により送信信号を受信しているにおいて、前記複数のアンテナ素子で受信される制御信号を用いて時間と到来パスの角度の次元を有する2次元電力プロファイルを生成する2次元電力プロファイル生成手段と、前記2次元電力プロファイルを用いて、パスの受信タイミング検出及びパスの到来方向を推定するパス検出・到来方向推定手段と、前記パスの到来方向推定結果に基づき前記複数のアンテナ素子からの受信信号に対するアンテナウェイトを生成するアンテナウェイト生成手段と、を備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項2によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記アンテナウェイト生成手段は、前記アンテナウェイトを生成する際に、前記2次元電力プロファイルから得られる受信電力を考慮することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項3によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記2次元電力プロファイル生成手段は、上りリンクのパイロットチャネルを前記制御信号として入力し、前記パイロットチャネルに挿入されたパイロットシンボルを用いて各アンテナにおけるパイロットシンボルの複素相関値を出力する複素相関処理手段と、前記複素相関処理手段で得られた複素相関値を同相加算することにより、各アンテナにおける複素遅延プロファイルを生成する複素遅延プロファイル生成手段と、所定角度範囲内で指向性ビームを走査し、その指向性ビームを形成するアンテナウェイトを各タイミングにおいて前記複素遅延プロファイルに乗算後、合成する指向性ビーム受信合成手段と、前記合成された合成信号を用いてタイミング方向の受信電力を算出する受信電力算出手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項4によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記受信電力算出手段は、前記受信電力をビームフォーマー法又はCapon法を用いて算出することを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項5によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス検出・到来方向推定手段は、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成された2次元電力プロファイルを用いて、ピーク電力を有する所定数のパスを検出し、検出した各パスにおけるパスの受信タイミングを検出するパス独立受信タイミング検出手段と、前記検出されたパスにおける到来方向を推定するパス独立到来方向推定手段と、を備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項6によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス独立受信タイミング検出手段は、ピーク電力を有するパスのうち、電力の高い順に所定数のパスを検出することを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項7によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス検出・到来方向推定手段は、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成された2次元電力プロファイルを用いて、角度ごとにピーク電力を有する所定数のパスを検出し、検出した角度ごとのパスの電力和を合成電力として算出し、算出した合成電力が最大となる1つの角度をパス共通の到来方向として推定するパス共通到来方向推定手段と、前記推定したパス共通の到来方向における各パスの受信タイミングを検出するパス共通受信タイミング検出手段と、を備えることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の請求項8によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス共通到来方向推定手段は、ピーク電力を有するパスのうち、電力の高い順に所定数のパスを検出することを特徴としている。
【0020】
また、本発明の請求項9によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記アンテナウェイト生成手段は、前記パス独立到来方向推定手段により推定される各パスの到来方向にメインビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス独立アンテナウェイト生成手段と、前記パス共通到来方向推定手段により推定されるパス共通の到来方向にメインビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス共通アンテナウェイト生成手段と、を備えることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の請求項10によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス独立アンテナウェイト生成手段は、パス独立到来方向推定手段により推定される自ユーザ及び他ユーザの各パス独立の到来方向推定結果と、前記2次元電力プロファイル生成手段から得られる自ユーザ及び他ユーザの受信電力とに基づいて、自ユーザ方向にメインビームを形成し、他ユーザ方向にヌルビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス独立ヌル制御手段を備え、前記パス共通アンテナウェイト生成手段は、パス共通到来方向推定手段により推定される自ユーザ及び他ユーザの各パス共通の到来方向推定結果と、前記2次元電力プロファイル生成手段から得られる自ユーザ及び他ユーザの受信電力とに基づいて、自ユーザ方向にメインビームを形成し、他ユーザ方向にヌルビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス共通ヌル制御手段を備えることを特徴としている。
また、本発明の請求項11によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成される2次元電力プロファイルの全角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出のためのしきい値を設定する全角度共通パス検出しきい値設定手段をさらに備えることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の請求項12によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成される2次元電力プロファイルの各角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出のためのしきい値を設定する角度毎パス検出しきい値設定手段をさらに備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本願発明によれば、パイロットチャネルを用い、指向性ビームで受信した信号合成することにより2次元電力プロファイルを生成するようにしたので、パスの受信タイミングおよび到来波の到来方向の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の骨子は、上りリンクにおけるパケットフレーム内のパイロットチャネルを用いて2次元電力プロファイルを生成し、生成した2次元電力プロファイルに基づいて、パス受信タイミング及びDOA推定を行い、DOA推定結果に基づいて、アレーアンテナの受信ウェイトを生成することである。
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の一形態に係る適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。図1において、図21中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。本実施形態の適応アンテナアレー受信装置1は、図21に示した従来の適応アンテナアレー受信装置に対して、
ビームスイープ制御部201と、アンテナウェイト生成部202と、乗算器203−1〜203−Nと、加算器204と、2次元電力プロファイル生成部205と、メモリ206と、パス検出/DOA推定部207を新たに設けたものである。
【0027】
以下、本実施形態では、本発明に係る適応アンテナアレー受信装置1を移動通信システムの基地局(受信局)に適用した場合を例にとり説明する。
【0028】
同図において、相関検出部102−1〜102−Nでは、移動局(送信局)から送信される上りリンクのデータパケットチャネルにコード多重されているパイロットチャネル(制御信号)を用いて、遅延時間軸τ方向にずらして各アンテナ101−1〜101−Nにおける1パイロットシンボルによる複素相関が検出される。複素プロファイル生成部103−1〜103−Nは、上記のようにして検出された複素相関値を取り込み、1パケット内のパイロットチャネルの全パイロットシンボルの複素相関を同相加算することにより、各アンテナにおける複素遅延プロファイルを生成する。
【0029】
ビームスイープ制御部201は、アンテナのビームを全方向にわたって所定の間隔で挿引(スイープ)させるための制御機能を備えており、アンテナウェイト生成部202では、ビームスイープ制御部201からの角度指示にしたがってその角度方向に指向性を形成するためのアンテナウェイト(=受信アンテナウェイト)が生成される。
【0030】
ビームスイープ制御部201の挿引動作に伴い、ある角度方向に指向性を形成させるためのアンテナウェイトが生成されると、すべてのタイミングにおいて、各アンテナにおける複素遅延プロファイルと上記生成されたアンテナウェイトが乗算器203−1〜203−Nで乗算され、加算器204で合成されることで、タイミング方向の受信電力(電力プロファイル)が算出される。そして、この処理をすべての角度方向において行うことで、2次元電力プロファイル生成部205において、図2に示すようなタイミング(timing)と角度(angle)の2次元を有する電力プロファイル(2次元電力プロファイル)が生成される。
【0031】
なお、上記したタイミング方向の受信電力(電力プロファイル)の算出方法としては、ビームフォーマ法やCapon法を用いることができる。ビームフォーマ法は、アンテナのメインビームを全方向にわたってスイープし、アンテナの出力電力が大きくなる方向を探索する方法であり、ビームフォーマ法による受信電力P(τ,θ)は、下記式(1)にしたがって算出される。
【0032】
【数1】
また、Capon法は、ある方向にメインビームを向けると同時に、他の方向からの出力への寄与を最小化する方法であり、Capon法による受信電力P(τ,θ)は、下記式(2)にしたがって算出される。
【0033】
【数2】
上記式(1)、(2)において、
a(θ):ステアリングベクトル(アンテナ数N個の行成分を有する列ベクトル)
Rxx:アレーアンテナの受信信号の自己相関ベクトル(N×N行列)
Rxx(τ)m,n=hm,τhn,τ*
hn,τ:nアンテナのτタイミングにおけるパイロットの複素相関値
2次元電力プロファイル生成部205において生成される2次元電力プロファイルは、メモリ206に蓄えられた後、所定のタイミングでパス検出/DOA推定部207に出力される。パス検出/DOA推定部207は、得られた2次元電力プロファイルに基づいて、各パスの受信タイミングの検出とDOA推定を行う。パス検出/DOA推定部207で行われるパス受信タイミングの検出とDOA推定法については後述する。
【0034】
アンテナウェイト生成部108は、得られたDOA推定結果を用いて、各パスのアンテナウェイトを生成する。この生成されたアンテナウェイトは、乗算器109−1〜109−Nでアンテナ101−1〜101−Nからの受信信号と乗算され、乗算後の信号が加算器110で合成される。復調部111は、パス検出/DOA推定部207で検出されるRake合成用の受信パスタイミングと、加算器110で合成された信号を入力し、パス毎の受信タイミングでデータを復調して再生データを出力する。
【0035】
次に、パス検出/DOA推定部207で行われるパス受信タイミングの検出とDOA推定法について説明する。パス検出/DOA推定部207で行われるパス受信タイミングの検出とDOA推定法としては、(1)受信タイミング・パス独立DOA推定法と、(2)受信タイミング・パス共通DOA推定法の2つの方法がある。まず、(1)の受信タイミング・パス独立DOA推定法について説明する。
【0036】
図3は、受信タイミング・パス独立DOA推定法を適用した場合のパス検出/DOA推定部207での処理手順を示すフローチャートである。
【0037】
本方法では、まず、2次元電力プロファイルを用いて、電力の高い順に最大Lパスが検出(ステップS1)される。例えば、図4に示すように、電力の高い順にパス(b)、パス(a)、パス(c)が検出される。
【0038】
次に、このようにして検出された各パスにおけるタイミングτ及びDOA(θ)が同時に検出(ステップS2)される。例えば、図4の例の場合、パス(b)に対するタイミングτ2とDOA(θ2)、パス(a)に対するタイミングτ1とDOA(θ1)、パス(c)に対するタイミングτ3とDOA(θ3)が同時に検出される。
【0039】
すなわち、本実施形態による受信タイミング・パス独立DOA推定法によれば、各パスのDOAにメインビームを向けた指向性受信時の受信信号で各パスの受信タイミングを検出するので、オムニセクタ受信で各パスの受信タイミングを検出してからDOAを検出する従来法と比して、高精度な各パスの受信タイミング検出が可能となる。
【0040】
続いて、(2)の受信タイミング・パス共通DOA推定法について説明する。
【0041】
図5は、受信タイミング・パス共通DOA推定法を適用した場合のパス検出/DOA推定部207での処理手順を示すフローチャートである。
【0042】
本方法では、まず、2次元電力プロファイルを用いて、角度ごとに電力の高い順に最大Lパスが検出(ステップS11)される。そして、その検出された全パス合計の電力和が計算(ステップS12)され、その電力和が最大の角度θcommonにおける電力の高い順に最大Lパスのタイミングτ及びパス共通のDOAθcommonを検出(ステップS13)する。例えば、図6に示す例では、最大の角度θcommonにおけるピーク電力P1におけるタイミングτ1、P2におけるタイミングτ2、P3におけるタイミングτ3が検出される。
【0043】
アンテナウェイト生成部108は、図3に示したパス独立(上記(1)の方法)または図5に示したパス共通(上記(2)の方法)の方法により検出されたDOA推定結果を用いて自ユーザにメインビームを向けるようなアンテナウェイトを生成する。例えば、図7に示すように、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局500は、自ユーザ(移動局600)の各パス(パス共通)のDOAに対してメインビームを向けるようアンテナウェイトを生成する。
【0044】
図8は、DOA推定結果に基づいてメインビーム方向を制御する場合の適応アンテナアレー受信装置2の構成を示すブロック図である。本実施形態における適応アンテナアレー受信装置2は、図1に示す適応アンテナアレー受信装置1と基本的構成を同様にし、2次元電力プロファイル生成部211−1〜211−M、DOA推定部212−1〜212−M、アンテナウェイト生成部213−1〜213−M等がユーザM数分設けられたものである。
【0045】
本実施形態では、各ユーザ(ユーザ1〜ユーザM)用の2次元電力プロファイル生成部211−1〜211−M、DOA推定部212−1〜212−Mにより、パス独立あるいはパス共通法によりDOAが推定される。各アンテナウェイト生成部213−1〜213−Mは、上記推定されたDOAのみを用いて各ユーザにメインビームが向くようアンテナウェイトを生成する。
【0046】
上記実施形態では、各ユーザに対してメインビームを向ける制御のみを行う場合を例示したが、このような態様に限定されない。例えば、自ユーザの他に他ユーザが存在する場合には、図9に示すように、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局500は、パス独立あるいはパス共通法により推定される自ユーザ(移動局600)のDOAに対してはメインビームを向け、他ユーザ(移動局610)のDOAに対してはビームのヌルを向けるようアンテナウェイトを生成することもできる。
【0047】
図10は、DOA推定結果に基づいてメインビーム方向とヌル方向を制御する場合の適応アンテナアレー受信装置3の構成を示すブロック図である。本実施形態における適応アンテナアレー受信装置3は、図8に示す適応アンテナアレー受信装置2と基本的構成を同様にし、図8に示す実施形態の適応アンテナアレー受信装置2に対してアンテナウェイト生成の動作が異なる。よって、ここでは、図8に示す実施形態の適応アンテナアレー受信装置2との差異について説明する。
本実施形態におけるアンテナウェイト生成部223−1〜223−Mは、パス独立あるいはパス共通法により推定される自ユーザのDOA推定結果と、他ユーザのDOA推定結果を用いてアンテナウェイトを生成する。以下、具体例を説明する。
【0048】
同図において、本実施形態では、各ユーザ(ユーザ1〜ユーザM)毎のDOA推定部222−1〜222−Mは、それぞれパス独立あるいはパス共通法により
推定される自ユーザのDOAの推定結果を各アンテナウェイト生成部223−1〜223−Mに出力する。
【0049】
一方で、各ユーザ毎の2次元電力プロファイル生成部221−1〜221−Mで算出された受信電力が各ユーザ毎のアンテナウェイト生成部223−1〜223−Mに出力される。ここで、あるアンテナウェイト生成部223−1に着目すると、アンテナウェイト生成部223−1は、ユーザ1用のDOA推定部222−1から出力される自ユーザのDOA推定結果と、ユーザM用のDOA推定部222−Mから出力される他ユーザのDOA推定結果と、ユーザ1用の2次元電力プロファイル生成部221−1から出力される自ユーザの受信電力と、ユーザM用の2次元電力プロファイル生成部221−Mから出力される他ユーザの受信電力を用いて、自ユーザ方向にメインビームを他ユーザ方向にビームのヌルを向けるアンテナウェイトを生成する。これにより、他ユーザ干渉を効果的に抑圧することができる。
【0050】
本実施形態では、他ユーザ方向にビームのヌルの向ける制御を行う際に、好ましい一態様として、自ユーザのみならず他ユーザのDOA推定結果と他ユーザの受信電力を用いる場合を例示している。以下、その理由について説明する。
【0051】
適応アンテナアレーにおいて、干渉となる他ユーザの不要波が一方向から到来する理想的状況を考えると、他ユーザ方向のDOA推定結果が得られれば、不要波の到来方向にビームのヌルを向かせることができる。しかし、干渉となる他ユーザ、すなわち不要波の到来数は複数であり、それらを除去しなければ通信品質は向上しない。一般に、適応アンテナアレーが生成できる独立なヌルの数は、アンテナ素子数をNとすると(N−1)であり、結果、(N−1)数の不要波を除去することが可能であるが、アレーアンテナの自由度(N−1数)を上回ってのヌル制御はできない。
【0052】
そこで、本実施形態では、干渉となる他ユーザ数が多い場合を考慮し、他ユーザのDOAの他に他ユーザからの干渉電力、すなわち受信電力の情報に基づいて、干渉の強い他ユーザの方向に優先的にヌルを向ける制御を行う。これにより、アレーアンテナの自由度の限度内で干渉の強いユーザ方向に効果的にヌルを向けることができ、伝送容量を増大させることができる。なお、干渉となる他ユーザ数が少ない場合は、受信電力の情報を用いなくてもヌル制御を行うことができる。
【0053】
上述したように本実施形態では、パス独立にDOAを推定する方法(図3参照)およびパス共通にDOAを推定する方法(図5参照)について説明した。パス独立でDOAを推定し、この推定結果に基づいてアンテナウェイトを生成するパス独立ウェイト生成方法は、パス毎の小さな受信信号電力でアンテナウェイトを求めるため、パス数が多いときに、パス共通のDOA推定に基づきアンテナウェイトを生成するパス共通ウェイト生成方法と比較すると、若干アンテナウェイトの生成誤差が大きくなるものの、パス間の角度広がりが大きくなってもアンテナ利得は減少しないという効果が得られる。ここで、角度広がりとは、信号の到来角度の分布を正規分布と仮定したとき、到来角度の標準偏差をいい、一般的に、アレーアンテナの設置場所と周辺の建物高などに応じてその大きさが決まってくる。
【0054】
一方、パス共通ウェイト生成方法では、パス間の角度広がりが小さい場合は、全パスを合成した大きな受信電力を用いて、アンテナウェイトを生成するため、アンテナウェイトの生成誤差が小さくなる効果が得られる。しかしながら、パス間の角度広がりが大きくなると、全てのパスに対して大きなアンテナ利得を得ることができない。そこで、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置では、パス間の角度広がりに応じてパス独立ウェイト生成方法とパス共通ウェイト生成方法とを使い分ける制御を行う。以下、具体例について説明する。
【0055】
図11は、パス独立ウェイト生成方法とパス共通ウェイト生成方法の切替制御を行う適応アンテナアレー受信装置4の構成を示すブロック図である。同図において、この適応アンテナアレー受信装置4は、DOA推定部311、DOA推定結果メモリ312、パス間の角度広がり検出部313、角度広がりしきい値判定部314、パス毎ウェイト生成部315、パス共通ウェイト生成部316、アンテナウェイト生成切替制御部317、スイッチ318、パス毎の乗算器321−1〜321−N、パス毎の加算器322、復調部323から構成されている。
【0056】
上記のように構成された適応アンテナアレー受信装置4の動作を図12に示すフローチャートを用いて説明する。
【0057】
同図において、DOA推定部311は、2次元電力プロファイル生成部(ここでは、図示省略)から得られる2次元電力プロファイルに基づいて、各パスのDOA推定を行い(ステップS21)、結果をDOA推定結果メモリ312に蓄えるとともに、パス間の角度広がり検出部313に出力する。
【0058】
パス間の角度広がり検出部313は、DOA推定結果を基にパス間の角度広がりを以下に示す方法1、または方法2にしたがって検出(ステップS22)する。
【0059】
(角度広がり検出方法1)
各パスの到来方向推定値(DOA推定結果)、および受信電力を、
θ1,θ2,θ3,...,θL,
P1,P2,P3,...,PL,
としたときに、θl,Plを用いて角度広がりσを次式により計算する。
【0060】
【数3】
ここで、
【0061】
【数4】
(角度広がり検出方法2)
角度広がり〔degree〕=受信電力が最大のパスからXdB以内を満たす受信電力が大きい順に最大Kパス間の最大角度差
本方法2における角度広がり検出概念を図13に示す。本例は、XdB=5、K=3とした場合であって、受信電力が大きい順にパス1、パス2、パス3までが検出され、パス1〜パス3間の角度広がりが検出される(角度広がり検出値=θ2-θ1)。
【0062】
図12に戻り、角度広がりしきい値判定部314は、上記のようにして検出された角度広がりと閾値とを比較判定(ステップS23)し、判定結果をアンテナウェイト生成切替制御部317に出力する。アンテナウェイト生成切替制御部317は、上記判定(ステップS23)で、角度広がりが閾値より大きいとの結果を得た場合、スイッチ318を制御してパス毎ウェイト生成部315側の接点に接続する。その後、パス毎ウェイト生成部315で生成されたアンテナウェイトがアンテナウェイト生成切替制御部317を介して乗算部321−1〜321−Nに出力される。
【0063】
一方、上記判定(ステップS23)で、角度広がりが閾値より小さいとの結果が得られた場合、アンテナウェイト生成切替制御部317は、スイッチ318を制御してパス共通ウェイト生成部316側に接点を接続する。その後、パス共通ウェイト生成部316で生成されたアンテナウェイトがアンテナウェイト生成切替制御部317を介して乗算部321−1〜321−Nへと出力される。
【0064】
このように本実施形態では、角度広がりに応じてパス毎にウェイトを生成するか、パス共通にウェイトを生成するかを使い分ける。例えば、アンテナ高が低く(例:地下街等)、器物の反射など複雑な伝搬路環境の中では、到来波の角度広がりが大きく検出されるので、その場合、アンテナウェイト生成切替制御部317によりパス毎ウェイト生成部315でのウェイト生成方法が選択され、パス毎にアンテナウェイトが生成される。
【0065】
反対に、アンテナ高が高く(例:ビルの屋上等)、伝搬路の遮断等の影響が比較的小さい伝搬路環境の中では、到来波の角度広がりが小さく検出されるので、その場合、アンテナウェイト生成切替制御部317によりパス共通ウェイト生成部316でのウェイト生成方法が選択され、パス共通にアンテナウェイトが生成される。これにより、アンテナ高の設置状況等に応じてアンテナウェイト生成方法の使い分けが可能となり、より柔軟なシステムの構築が可能となる。
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、DOA推定結果に基づいて、パケット毎にアンテナウェイトを生成するようにしたので、パケット交換型のシステムにMMSEアルゴリズムを適用した場合と比してアンテナウェイトの生成誤差を改善することが可能となる。
【0067】
上記実施形態では、パイロットチャネル内のパイロットシンボルを用いて受信信号のDOAを推定し、その推定結果に基づいて、アンテナウェイトを生成する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、パケット交換型のシステムにおいて、送信端末(移動局)がパケットデータを送信する前に短い予約パケット(遅延やデータサイズなどユーザ毎に異なるサービス品質の要求条件を通知するパケット)をランダムアクセス方式により送信するような場合、上記予約パケットを用いて事前にDOA推定しておき、その推定結果を利用して後続のパケットデータチャネルにヌルを向ける制御を行う態様であってもよい。
【0068】
図14は、予約パケットでDOA推定して後続のパケットデータチャネル対してヌル制御を行う場合の動作概念を示す図である。
【0069】
同図(a)は、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局500と移動局600が通信中のときに、他ユーザである移動局610から予約パケットが送られてきた様子を示している。このような場合、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局500は、移動局610から送信される予約パケットに含まれる既知パターンを用いてDOA推定を行い、その推定結果を基に移動局610にヌルを向けるようなアンテナウェイトを予め生成する。その後、後続して送信される移動局610のパケットデータチャネルに多重されているパイロットチャネルを用いてDOA推定を行い、その推定結果を基に移動局610にヌルを向けるようなアンテナウェイトを生成する。
【0070】
このように本実施形態では、パケットデータが送信される前の予約パケットを用いて移動局610からの受信信号のDOA推定を行い、移動局610にヌルを向けるようなアンテナウェイトが予め生成されるので、後続するパケットデータチャネルに対してヌルを向けるようなアンテナウェイトを生成する際には、すべての角度方向にスイープして指向性受信を行わなくても事前に得られた到来方向の角度周辺の範囲をスイープして指向性受信すればパケットデータチャネルに対するDOAを検出できる。これにより、アンテナウェイト生成のための演算処理量を軽減させることが可能である。
【0071】
図15は、本発明における適応アンテナアレー受信装置を基地局に適用した場合の具体的な構成例を示すブロック図である。本構成は、受信に際して、マルチパス環境において、受信に際してマルチパス数分のアンテナ重み係数を用いて受信する構成となっている。
【0072】
本実施形態における基地局は、2次元電力プロファイル生成部405−1〜405−M、パス検出/DOA推定部406−1〜406−M、アンテナウェイト生成部407−1〜407−Mをユーザ数分(ユーザ1〜ユーザM)備える。また、これらは同様に動作するので、以下では、代表としてユーザ1における動作を説明する。
【0073】
同図において、各アンテナ401−1〜401−Nで受信された信号は、LNA402−1〜402−N、RF回路403−1〜403−Nを経てA/D変換器404−1〜404−Nによりデジタルベースバンド信号に変換される。この変換されたデジタルベースバンド信号は、2次元電力プロファイル生成部405−1に入力され、データチャネルに多重されているパイロットチャネルを用いて、2次元電力プロファイルが生成される。その後、受信タイミング/DOA推定部406−1で受信信号のDOAとパスの受信タイミングが推定される。アンテナウェイト生成部407−1は、上記DOAとパスの受信タイミングの推定結果に基づいて、パス毎にアンテナウェイトを生成する。
【0074】
各アンテナ素子401−1〜401−Nで受信された信号は、アンテナウェイト生成部407−1で生成されたアンテナウェイトと乗算器408−1〜408−Nにより乗算されて加算器409で加算された後、逆拡散器410−1においてパス毎の受信タイミングにおいて逆拡散される。このようにして逆拡散されたパス毎の信号は、チャネル推定部411でチャネル推定が行われた後、Rake合成部412でRake合成され復調部416で復調されることで送信データが再生される。
【0075】
次に、前述したような大電力の干渉波が存在する場合における2次元電力プロファイルによるパス検出について図16を用いて説明する。
【0076】
同図に示すように、高速レートのトラヒックを伝送する大電力の干渉波が存在する場合、パイロットシンボルによる相互相関の影響が残るために干渉波方向に電力が残留してしまう。このような場合において希望波のパス検出を行う場合には、大電力の干渉波を誤って検出する確率が増大する。そこで、本実施形態における受信タイミング/DOA推定部406では、2次元電力プロファイルを用いて、全角度共通に、ないしは、角度毎にパス検出しきい値を設定する。以下、具体例について図17、図18を用いて説明する。図17は、全角度共通にパス検出しきい値を設定する場合の受信タイミング/DOA推定部406での処理手順を示すフローチャートである。図18は、全角度共通にパス検出しきい値を設定する概念を説明するための2次元電力プロファイルである。
【0077】
図17において、全角度共通にパス検出しきい値を設定する方法では、受信タイミング/DOA推定部406は、2次元電力プロファイル生成部405から2次元電力プロファイルを取得(ステップS31)し、得られた2次元電力プロファイルの全角度、全タイミングの電力値から、大きい順にL×4タイミングを除いた電力値を平均することで全角度共通の雑音電力を計算(ステップS32)する。この全角度共通の雑音電力値に△だけオフセットした値を全角度共通のパス検出しきい値として計算(ステップS33)し、ステップS34において、この全角度共通のパス検出しきい値を越える電力値とパス検出しきい値との比が大きい順に最大Lパスを検出する。ステップS35では、この検出したLパスについて、受信タイミングとDOAを検出し、結果をアンテナウェイト生成部407に出力する。
【0078】
続いて、2次元電力プロファイルを用いて、角度毎にパス検出しきい値を設定する場合について説明する。図19は、角度毎にパス検出しきい値を設定する場合の受信タイミング/DOA推定部406での処理手順を示すフローチャートである。図20は、角度毎にパス検出しきい値を設定する概念を説明するための2次元電力プロファイルである。
【0079】
図19において、角度毎にパス検出しきい値を設定する方法では、受信タイミング/DOA推定部406は、2次元電力プロファイル生成部405から2次元電力プロファイルを取得(ステップS41)し、得られた2次元電力プロファイルの角度毎に全タイミングの電力値から、大きい順にL×4タイミングを除いた電力値平均することで、角度毎の雑音電力を計算(ステップS42)する。この角度毎の雑音電力値に△だけオフセットした値をパス毎のパス検出しきい値として計算(ステップS43)し、角度毎に、電力と角度毎のパス検出しきい値との比を求め、全角度で(パス検出しきい値を越えている)この比が大きい順に最大Lパスを検出(ステップS44)する。ステップS45では、この検出したLパスについて受信タイミングと到来方向を検出し、結果をアンテナウェイト生成部407に出力する。
【0080】
上述したように全角度共通にパス検出のためのしきい値を設定する方法では、2次元電力プロファイルの全角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出しきい値を設定するための雑音電力を全角度共通に計算するため、雑音電力の平均化効果が大きい。ただし、大電力の干渉波が存在する場合には、その干渉波を受信タイミングとして検出してしまう誤検出、および干渉波による全角度共通のパス検出しきい値が増大することによる希望波パスの検出見逃しが増大する。
【0081】
一方、角度毎にパス検出のためのしきい値を設定する方法では、2次元電力プロファイルの各角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出しきい値を設定するための雑音電力を角度毎に計算するため、雑音電力の平均化効果は小さくなるが、大電力の干渉波が存在する場合においても、角度毎にパス検出しきい値を設定するため、干渉波が存在する角度においては、大電力であるためにパス検出しきい値が高く、希望波方向のパス検出しきい値は小さく設定されるために、干渉波の影響を受けずに希望波バスを高精度に検出できる。
【0082】
すなわち、全角度共通にパスの検出ためのしきい値を設定する方法と、角度毎にパスのための検出しきい値を設定する方法には、トレードオフの関係がある。したがって、これらのいずれを採用するかは、両者のメリットのトレードオフとなるが、大電力の干渉波が存在しない場合には、雑音電力の平均化効果が大きく特性が改善される全角度共通にパスの検出ためのしきい値を設定する方法を選択し、大電力の干渉波が存在する場合には、大電力の干渉波の影響を受けずに、希望波パスを高精度に検出することができる角度毎にパスのための検出しきい値を設定する方法を選択するのが好ましい。これにより、大電力の共有チャネルが干渉となる場合においても、高精度にパス検出ができ、受信タイミングおよび到来方向を高精度に検出することができる。その結果、上りリンクのセルカバレッジの増大、並びにリンク容量の増大を実現することができる。
【0083】
結論として、本発明は、伝送レートの異なるトラヒックが混在するパケット交換型のシステムに適した適応アンテナアレー受信装置を提供することができる。
【0084】
なお、上記において既に説明した上りリンクのDOA推定結果を用いて送信側の送信アンテナウェイトを生成することもできる。例えば、各ユーザの上りリンクの送信がなされたときに、DOA推定を行ってその値を記憶しておき、あるユーザの下りリンク送信を行う際には、記憶していたそのユーザのDOA推定結果を基に送信アンテナウェイトを生成する。このとき、送信アンテナウェイト生成方法としては、例えば、以下のような方法が考えられる。
【0085】
(a)受信電力が最大のパスの到来方向にメインビームを向ける送信アンテナウェイトを生成する。
【0086】
(b)全パスの到来方向にメインビームを向ける送信アンテナウェイトを生成する。
(c)全パスの平均到来方向にメインビームを向ける送信アンテナウェイトを生成する。
【0087】
上記のようにして送信アンテナウェイトを生成することで、上下リンクが非対称になった場合でもアダプティブアレー送信を行うことができ、下りリンクのセルカバレッジの増大、並びにリンク容量の増大を実現することができる。
【0088】
また、上述の各実施の形態では、移動通信システムの基地局にこの発明の適応アンテナアレー受信装置を適用した場合について説明したが、この発明は、基地局に限らず、複数アンテナを用いてアダプティブアレー処理を行う移動局にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の一形態に係る適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】2次元電力プロファイルの生成例を示す図である。
【図3】パス受信タイミング検出・パス独立DOA推定手順を示すフローチャートである。
【図4】パス受信タイミング検出・パス独立DOA推定法によるパス検出とDOA推定を説明するための2次元電力プロファイルである。
【図5】パス受信タイミング検出・パス共通DOA推定手順を示すフローチャートである。
【図6】パス受信タイミング検出・パス共通DOA推定法によるパス検出とDOA推定を説明するための2次元電力プロファイルである。
【図7】本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局におけるビーム制御(その1)の一例を示す図である。
【図8】図7に示す適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局におけるビーム制御(その2)の一例を示す図である。
【図10】図9に示す適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図11】アンテナウェイトの生成法を切替える制御を行う適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図12】角度広がりに応じてアンテナウェイトの生成法を切替える制御手順を示すフローチャートである。
【図13】角度広がりの検出概念を示す図である。
【図14】予約パケットに基づいてヌル制御を行う場合の動作概念を示す図である。
【図15】本発明における適応アンテナアレー受信装置を基地局に適用した場合の具体的な構成例を示すブロック図である。
【図16】大電力の干渉波が存在する場合における2次元電力プロファイルによるパス検出方法を説明するための図である。
【図17】全角度共通にパス検出しきい値を設定する場合の受信タイミング/DOA推定部での処理手順を示すフローチャートである。
【図18】全角度共通にパス検出しきい値を設定する概念を説明するための2次元電力プロファイルである。
【図19】角度毎にパス検出しきい値を設定する場合の受信タイミング/DOA推定部での処理手順を示すフローチャートである。
【図20】角度毎にパス検出しきい値を設定する概念を説明するための2次元電力プロファイルである。
【図21】従来の適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図22】ブロードバンド無線アクセスにおける上りリンクのチャネル状態を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1〜4 適応アンテナアレー受信装置
101〜101−N、401−1〜401−N アンテナ素子
102−1〜102−N 相関検出部
103−1〜103−N 複素プロファイル生成部
104、110、204、322、409、415 加算器
105 合成遅延プロファイル生成部
106 パス検出部
107 DOA(Direction of arrival:到来方向)推定部
108、202、213−1〜213−M、223−1〜223−M、407−1〜407−Mアンテナウェイト生成部
109−1〜109−N、203−1〜203−N、321−1〜321−N、 408−1〜408−N、413、414 乗算器
111、111−1〜111−M、323、416 復調部
201 ビームスイープ制御部
205、211−1〜211−M、221−1〜221−M、405−1〜405−M 2次元電力プロファイル生成部
206 メモリ
207、212−1〜212−M、222−1〜222−M、406−1〜406−M パス検出/DOA推定部
311 DOA推定部
312 DOA推定結果メモリ
313 パス間の角度広がり検出部
314 角度広がりしきい値判定部
315 パス毎ウェイト生成部
316 パス共通ウェイト生成部
317 アンテナウェイト生成切替制御部
318 スイッチ
402−1〜402−N LNA
403−1〜403−N RF回路
404−1〜404−N A/D変換器
410−1〜410−M 逆拡散器
411 チャネル推定部
412 Rake合成部
500 基地局
600〜620 移動局
【技術分野】
【0001】
本発明は、適応アンテナアレー受信装置及びその方法に関し、特に到来方向推定結果に基づいてアンテナウェイトを生成する適応アンテナアレー受信装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所望信号の到来方向に主ビームを向けて干渉信号の到来方向に指向性の零点を形成するアンテナとしてアダプティブ(適応)アンテナアレーが知られている。 このような適応アンテナアレーを用いた受信装置の従来例を図21に示す。この従来の適応アンテナアレー受信装置は、図21に示されるように、N個のアンテナ素子101−1〜101−Nと、N個の相関検出部102−1〜102−Nと、N個の複素プロファイル生成部103−1〜103−Nと、加算器104と、合成遅延プロファイル生成部105と、パス検出部106と、DOA(Direction of arrival:到来方向)推定部107と、アンテナウェイト生成部108と、N個の乗算器109−1〜109−Nと、加算器110と、復調部111とから構成されている。
【0003】
アンテナ101−1〜101−Nで受信されるパイロット信号内のパイロットシンボルは、相関検出部102−1〜102−Nに入力され、各アンテナでパイロットシンボルを用いた複素相関が検出される。そして、その検出された複素相関値は複素プロファイル生成部103−1〜103−Nに取り込まれて、複素遅延プロファイルが生成される。複素プロファイル生成部103−1〜103−Nで生成される複素遅延プロファイルは、加算器104で加算された後、合成遅延プロファイル生成部105に入力され、同部105において電力合成された合成遅延プロファイルが生成される。パス検出部106は、上記合成遅延プロファイルを用いて、パス毎の受信タイミングを検出し、検出結果をDOA推定部107と、復調部111に出力する。
【0004】
DOA推定部107は、複素プロファイル生成部103−1〜103−Nで生成された複素遅延プロファイルと、上記検出された受信タイミングに基づき、各パスを通って到来する信号のDOAを推定する。アンテナウェイト生成部108は、DOA推定部107で推定されたDOAの推定結果を基にその推定した方向に指向性が形成されるようにアンテナウェイト(受信アンテナウェイト)を生成する。DOAの推定結果に基づいて生成されたアンテナウェイトは、各アンテナ101−1〜1−1−Nで受信されたパスの信号それぞれと乗算器109−1〜109−Nで乗算された後、加算器110で乗算後の信号が合成される。このようにして合成された信号は、復調部111で復調され、これにより復調データ、すなわち再生データ出力が得られるようになっている。
【0005】
また、適応アンテナアレーのウェイトを求める方法としては、遅延プロファイルに現れるピークの方向を検出し、その方向を考慮してウェイトを求める方法が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003 −110476
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の適応アンテナアレー受信装置では、各アンテナ101−1〜101−Nにセクター内を指向するセクターアンテナが用いられる。すなわち、従来法では、ビーム幅が広い各アンテナのセクタビームで受信した信号を合成することにより合成遅延プロファイルが生成されるため、パス受信タイミング及び到来方向の検出精度が著しく劣化してしまうという問題があった。
【0007】
一方で、現在実用化されている第3世代移動通信システム(IMT−2000)の次世代となる第4世代移動通信システムでは、音声通信中心の回線交換型からWWWブラウジングや大容量データのダウンロード等のパケット通信中心のパケット交換型にシフトしていくと考えられる。この場合、上下リンクの通信チャネルの伝送速度は、例えば、大容量データのダウンロードを行う場合であれば、下りリンクの通信チャネルのデータ伝送速度は、大容量データのダウンロードを高速に行うために、上りリンクに比べて非常に大きくなる。さらには、下りリンクのみ送信を行い、上りリンクの通信チャネルの送信は行わないような場合も想定される。このように第4世代移動通信システムにおけるパケット交換型のシステムでは、コアネットワークのIP化に伴い、無線区間においてもパケット信号フォーマットで伝送を行う方法が好ましい。しかしながら、この場合、基地局における移動局ユーザからの受信信号はバースト的になり、アダプティブアレーアンテナで一般的に適用されているMMSE(Minimum Mean Square Error)アルゴリズムを用いたアンテナウェイト生成は充分に収束せず、結果としてアンテナウェイトの生成誤差が増大するという問題があった。
【0008】
また、上記のアダプティブアレーアンテナは、受信したいユーザの信号の到来方向にメインビーム(アンテナ利得が最大となる点)を向け、他ユーザの信号の到来方向にビームヌルもしくは、低いアンテナ利得となるようなアンテナパターンで送受信することで伝送特性を改善する技術であるが、従来は、上りリンクでMMSE等の適応アルゴリズムを用いて生成した受信アンテナウェイトを使って上りリンクの受信を行い、この受信アンテナウェイトを基に下りリンクの送信における送信アンテナウェイトが生成されていた。この場合、上記した大容量データのダウンロードの例のように、下りリンクは送信しているが、上りリンクは同時には送信していないような場合には、受信アンテナウェイトが得られていないので、下りリンクの送信アンテナウェイトも生成することができない。
【0009】
また、上りリンクの受信アンテナウェイトは、上りリンクで干渉となっているユーザの通信チャネルの干渉抑圧を実現しているだけであり、仮に上下リンクの非対称性により、下りリンクにおいて、到来方向の異なる他のユーザに大電力で
送信を行っているようなときは、下りリンク送信における干渉抑圧は十分に行うことができない。
【0010】
さらに、第4世代移動通信システムにおけるブロードバンド無線アクセスの上りリンクにおいては、高速レートのトラヒックを伝送する大電力の共有チャネル、低速レートのトラヒックを伝送する個別・共有チャネル、予約パケットなどの制御チャネルが混在すると考えられる。例えば、図22に示すように、移動局600、移動局610が低速レートで基地局500と通信を行い、移動局620が高速レートで基地局と通信を行う場合がある。このような場合において、低速レートの個別・制御チャネルをアダプティブアレー受信すると、大電力の共有チャネルが干渉となり、低速レートの希望波の検出精度が劣化してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、パス受信タイミングおよび到来方向の検出精度が著しく劣化することを防ぐことができ、かつパケット伝送に適した適応アンテナアレー受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されるように、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを備え、該複数のアンテナ素子により送信信号を受信しているにおいて、前記複数のアンテナ素子で受信される制御信号を用いて時間と到来パスの角度の次元を有する2次元電力プロファイルを生成する2次元電力プロファイル生成手段と、前記2次元電力プロファイルを用いて、パスの受信タイミング検出及びパスの到来方向を推定するパス検出・到来方向推定手段と、前記パスの到来方向推定結果に基づき前記複数のアンテナ素子からの受信信号に対するアンテナウェイトを生成するアンテナウェイト生成手段と、を備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項2によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記アンテナウェイト生成手段は、前記アンテナウェイトを生成する際に、前記2次元電力プロファイルから得られる受信電力を考慮することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項3によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記2次元電力プロファイル生成手段は、上りリンクのパイロットチャネルを前記制御信号として入力し、前記パイロットチャネルに挿入されたパイロットシンボルを用いて各アンテナにおけるパイロットシンボルの複素相関値を出力する複素相関処理手段と、前記複素相関処理手段で得られた複素相関値を同相加算することにより、各アンテナにおける複素遅延プロファイルを生成する複素遅延プロファイル生成手段と、所定角度範囲内で指向性ビームを走査し、その指向性ビームを形成するアンテナウェイトを各タイミングにおいて前記複素遅延プロファイルに乗算後、合成する指向性ビーム受信合成手段と、前記合成された合成信号を用いてタイミング方向の受信電力を算出する受信電力算出手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項4によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記受信電力算出手段は、前記受信電力をビームフォーマー法又はCapon法を用いて算出することを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項5によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス検出・到来方向推定手段は、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成された2次元電力プロファイルを用いて、ピーク電力を有する所定数のパスを検出し、検出した各パスにおけるパスの受信タイミングを検出するパス独立受信タイミング検出手段と、前記検出されたパスにおける到来方向を推定するパス独立到来方向推定手段と、を備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項6によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス独立受信タイミング検出手段は、ピーク電力を有するパスのうち、電力の高い順に所定数のパスを検出することを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項7によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス検出・到来方向推定手段は、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成された2次元電力プロファイルを用いて、角度ごとにピーク電力を有する所定数のパスを検出し、検出した角度ごとのパスの電力和を合成電力として算出し、算出した合成電力が最大となる1つの角度をパス共通の到来方向として推定するパス共通到来方向推定手段と、前記推定したパス共通の到来方向における各パスの受信タイミングを検出するパス共通受信タイミング検出手段と、を備えることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の請求項8によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス共通到来方向推定手段は、ピーク電力を有するパスのうち、電力の高い順に所定数のパスを検出することを特徴としている。
【0020】
また、本発明の請求項9によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記アンテナウェイト生成手段は、前記パス独立到来方向推定手段により推定される各パスの到来方向にメインビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス独立アンテナウェイト生成手段と、前記パス共通到来方向推定手段により推定されるパス共通の到来方向にメインビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス共通アンテナウェイト生成手段と、を備えることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の請求項10によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記パス独立アンテナウェイト生成手段は、パス独立到来方向推定手段により推定される自ユーザ及び他ユーザの各パス独立の到来方向推定結果と、前記2次元電力プロファイル生成手段から得られる自ユーザ及び他ユーザの受信電力とに基づいて、自ユーザ方向にメインビームを形成し、他ユーザ方向にヌルビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス独立ヌル制御手段を備え、前記パス共通アンテナウェイト生成手段は、パス共通到来方向推定手段により推定される自ユーザ及び他ユーザの各パス共通の到来方向推定結果と、前記2次元電力プロファイル生成手段から得られる自ユーザ及び他ユーザの受信電力とに基づいて、自ユーザ方向にメインビームを形成し、他ユーザ方向にヌルビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス共通ヌル制御手段を備えることを特徴としている。
また、本発明の請求項11によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成される2次元電力プロファイルの全角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出のためのしきい値を設定する全角度共通パス検出しきい値設定手段をさらに備えることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の請求項12によれば、前記適応アンテナアレー受信装置において、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成される2次元電力プロファイルの各角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出のためのしきい値を設定する角度毎パス検出しきい値設定手段をさらに備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本願発明によれば、パイロットチャネルを用い、指向性ビームで受信した信号合成することにより2次元電力プロファイルを生成するようにしたので、パスの受信タイミングおよび到来波の到来方向の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の骨子は、上りリンクにおけるパケットフレーム内のパイロットチャネルを用いて2次元電力プロファイルを生成し、生成した2次元電力プロファイルに基づいて、パス受信タイミング及びDOA推定を行い、DOA推定結果に基づいて、アレーアンテナの受信ウェイトを生成することである。
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の一形態に係る適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。図1において、図21中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。本実施形態の適応アンテナアレー受信装置1は、図21に示した従来の適応アンテナアレー受信装置に対して、
ビームスイープ制御部201と、アンテナウェイト生成部202と、乗算器203−1〜203−Nと、加算器204と、2次元電力プロファイル生成部205と、メモリ206と、パス検出/DOA推定部207を新たに設けたものである。
【0027】
以下、本実施形態では、本発明に係る適応アンテナアレー受信装置1を移動通信システムの基地局(受信局)に適用した場合を例にとり説明する。
【0028】
同図において、相関検出部102−1〜102−Nでは、移動局(送信局)から送信される上りリンクのデータパケットチャネルにコード多重されているパイロットチャネル(制御信号)を用いて、遅延時間軸τ方向にずらして各アンテナ101−1〜101−Nにおける1パイロットシンボルによる複素相関が検出される。複素プロファイル生成部103−1〜103−Nは、上記のようにして検出された複素相関値を取り込み、1パケット内のパイロットチャネルの全パイロットシンボルの複素相関を同相加算することにより、各アンテナにおける複素遅延プロファイルを生成する。
【0029】
ビームスイープ制御部201は、アンテナのビームを全方向にわたって所定の間隔で挿引(スイープ)させるための制御機能を備えており、アンテナウェイト生成部202では、ビームスイープ制御部201からの角度指示にしたがってその角度方向に指向性を形成するためのアンテナウェイト(=受信アンテナウェイト)が生成される。
【0030】
ビームスイープ制御部201の挿引動作に伴い、ある角度方向に指向性を形成させるためのアンテナウェイトが生成されると、すべてのタイミングにおいて、各アンテナにおける複素遅延プロファイルと上記生成されたアンテナウェイトが乗算器203−1〜203−Nで乗算され、加算器204で合成されることで、タイミング方向の受信電力(電力プロファイル)が算出される。そして、この処理をすべての角度方向において行うことで、2次元電力プロファイル生成部205において、図2に示すようなタイミング(timing)と角度(angle)の2次元を有する電力プロファイル(2次元電力プロファイル)が生成される。
【0031】
なお、上記したタイミング方向の受信電力(電力プロファイル)の算出方法としては、ビームフォーマ法やCapon法を用いることができる。ビームフォーマ法は、アンテナのメインビームを全方向にわたってスイープし、アンテナの出力電力が大きくなる方向を探索する方法であり、ビームフォーマ法による受信電力P(τ,θ)は、下記式(1)にしたがって算出される。
【0032】
【数1】
また、Capon法は、ある方向にメインビームを向けると同時に、他の方向からの出力への寄与を最小化する方法であり、Capon法による受信電力P(τ,θ)は、下記式(2)にしたがって算出される。
【0033】
【数2】
上記式(1)、(2)において、
a(θ):ステアリングベクトル(アンテナ数N個の行成分を有する列ベクトル)
Rxx:アレーアンテナの受信信号の自己相関ベクトル(N×N行列)
Rxx(τ)m,n=hm,τhn,τ*
hn,τ:nアンテナのτタイミングにおけるパイロットの複素相関値
2次元電力プロファイル生成部205において生成される2次元電力プロファイルは、メモリ206に蓄えられた後、所定のタイミングでパス検出/DOA推定部207に出力される。パス検出/DOA推定部207は、得られた2次元電力プロファイルに基づいて、各パスの受信タイミングの検出とDOA推定を行う。パス検出/DOA推定部207で行われるパス受信タイミングの検出とDOA推定法については後述する。
【0034】
アンテナウェイト生成部108は、得られたDOA推定結果を用いて、各パスのアンテナウェイトを生成する。この生成されたアンテナウェイトは、乗算器109−1〜109−Nでアンテナ101−1〜101−Nからの受信信号と乗算され、乗算後の信号が加算器110で合成される。復調部111は、パス検出/DOA推定部207で検出されるRake合成用の受信パスタイミングと、加算器110で合成された信号を入力し、パス毎の受信タイミングでデータを復調して再生データを出力する。
【0035】
次に、パス検出/DOA推定部207で行われるパス受信タイミングの検出とDOA推定法について説明する。パス検出/DOA推定部207で行われるパス受信タイミングの検出とDOA推定法としては、(1)受信タイミング・パス独立DOA推定法と、(2)受信タイミング・パス共通DOA推定法の2つの方法がある。まず、(1)の受信タイミング・パス独立DOA推定法について説明する。
【0036】
図3は、受信タイミング・パス独立DOA推定法を適用した場合のパス検出/DOA推定部207での処理手順を示すフローチャートである。
【0037】
本方法では、まず、2次元電力プロファイルを用いて、電力の高い順に最大Lパスが検出(ステップS1)される。例えば、図4に示すように、電力の高い順にパス(b)、パス(a)、パス(c)が検出される。
【0038】
次に、このようにして検出された各パスにおけるタイミングτ及びDOA(θ)が同時に検出(ステップS2)される。例えば、図4の例の場合、パス(b)に対するタイミングτ2とDOA(θ2)、パス(a)に対するタイミングτ1とDOA(θ1)、パス(c)に対するタイミングτ3とDOA(θ3)が同時に検出される。
【0039】
すなわち、本実施形態による受信タイミング・パス独立DOA推定法によれば、各パスのDOAにメインビームを向けた指向性受信時の受信信号で各パスの受信タイミングを検出するので、オムニセクタ受信で各パスの受信タイミングを検出してからDOAを検出する従来法と比して、高精度な各パスの受信タイミング検出が可能となる。
【0040】
続いて、(2)の受信タイミング・パス共通DOA推定法について説明する。
【0041】
図5は、受信タイミング・パス共通DOA推定法を適用した場合のパス検出/DOA推定部207での処理手順を示すフローチャートである。
【0042】
本方法では、まず、2次元電力プロファイルを用いて、角度ごとに電力の高い順に最大Lパスが検出(ステップS11)される。そして、その検出された全パス合計の電力和が計算(ステップS12)され、その電力和が最大の角度θcommonにおける電力の高い順に最大Lパスのタイミングτ及びパス共通のDOAθcommonを検出(ステップS13)する。例えば、図6に示す例では、最大の角度θcommonにおけるピーク電力P1におけるタイミングτ1、P2におけるタイミングτ2、P3におけるタイミングτ3が検出される。
【0043】
アンテナウェイト生成部108は、図3に示したパス独立(上記(1)の方法)または図5に示したパス共通(上記(2)の方法)の方法により検出されたDOA推定結果を用いて自ユーザにメインビームを向けるようなアンテナウェイトを生成する。例えば、図7に示すように、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局500は、自ユーザ(移動局600)の各パス(パス共通)のDOAに対してメインビームを向けるようアンテナウェイトを生成する。
【0044】
図8は、DOA推定結果に基づいてメインビーム方向を制御する場合の適応アンテナアレー受信装置2の構成を示すブロック図である。本実施形態における適応アンテナアレー受信装置2は、図1に示す適応アンテナアレー受信装置1と基本的構成を同様にし、2次元電力プロファイル生成部211−1〜211−M、DOA推定部212−1〜212−M、アンテナウェイト生成部213−1〜213−M等がユーザM数分設けられたものである。
【0045】
本実施形態では、各ユーザ(ユーザ1〜ユーザM)用の2次元電力プロファイル生成部211−1〜211−M、DOA推定部212−1〜212−Mにより、パス独立あるいはパス共通法によりDOAが推定される。各アンテナウェイト生成部213−1〜213−Mは、上記推定されたDOAのみを用いて各ユーザにメインビームが向くようアンテナウェイトを生成する。
【0046】
上記実施形態では、各ユーザに対してメインビームを向ける制御のみを行う場合を例示したが、このような態様に限定されない。例えば、自ユーザの他に他ユーザが存在する場合には、図9に示すように、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局500は、パス独立あるいはパス共通法により推定される自ユーザ(移動局600)のDOAに対してはメインビームを向け、他ユーザ(移動局610)のDOAに対してはビームのヌルを向けるようアンテナウェイトを生成することもできる。
【0047】
図10は、DOA推定結果に基づいてメインビーム方向とヌル方向を制御する場合の適応アンテナアレー受信装置3の構成を示すブロック図である。本実施形態における適応アンテナアレー受信装置3は、図8に示す適応アンテナアレー受信装置2と基本的構成を同様にし、図8に示す実施形態の適応アンテナアレー受信装置2に対してアンテナウェイト生成の動作が異なる。よって、ここでは、図8に示す実施形態の適応アンテナアレー受信装置2との差異について説明する。
本実施形態におけるアンテナウェイト生成部223−1〜223−Mは、パス独立あるいはパス共通法により推定される自ユーザのDOA推定結果と、他ユーザのDOA推定結果を用いてアンテナウェイトを生成する。以下、具体例を説明する。
【0048】
同図において、本実施形態では、各ユーザ(ユーザ1〜ユーザM)毎のDOA推定部222−1〜222−Mは、それぞれパス独立あるいはパス共通法により
推定される自ユーザのDOAの推定結果を各アンテナウェイト生成部223−1〜223−Mに出力する。
【0049】
一方で、各ユーザ毎の2次元電力プロファイル生成部221−1〜221−Mで算出された受信電力が各ユーザ毎のアンテナウェイト生成部223−1〜223−Mに出力される。ここで、あるアンテナウェイト生成部223−1に着目すると、アンテナウェイト生成部223−1は、ユーザ1用のDOA推定部222−1から出力される自ユーザのDOA推定結果と、ユーザM用のDOA推定部222−Mから出力される他ユーザのDOA推定結果と、ユーザ1用の2次元電力プロファイル生成部221−1から出力される自ユーザの受信電力と、ユーザM用の2次元電力プロファイル生成部221−Mから出力される他ユーザの受信電力を用いて、自ユーザ方向にメインビームを他ユーザ方向にビームのヌルを向けるアンテナウェイトを生成する。これにより、他ユーザ干渉を効果的に抑圧することができる。
【0050】
本実施形態では、他ユーザ方向にビームのヌルの向ける制御を行う際に、好ましい一態様として、自ユーザのみならず他ユーザのDOA推定結果と他ユーザの受信電力を用いる場合を例示している。以下、その理由について説明する。
【0051】
適応アンテナアレーにおいて、干渉となる他ユーザの不要波が一方向から到来する理想的状況を考えると、他ユーザ方向のDOA推定結果が得られれば、不要波の到来方向にビームのヌルを向かせることができる。しかし、干渉となる他ユーザ、すなわち不要波の到来数は複数であり、それらを除去しなければ通信品質は向上しない。一般に、適応アンテナアレーが生成できる独立なヌルの数は、アンテナ素子数をNとすると(N−1)であり、結果、(N−1)数の不要波を除去することが可能であるが、アレーアンテナの自由度(N−1数)を上回ってのヌル制御はできない。
【0052】
そこで、本実施形態では、干渉となる他ユーザ数が多い場合を考慮し、他ユーザのDOAの他に他ユーザからの干渉電力、すなわち受信電力の情報に基づいて、干渉の強い他ユーザの方向に優先的にヌルを向ける制御を行う。これにより、アレーアンテナの自由度の限度内で干渉の強いユーザ方向に効果的にヌルを向けることができ、伝送容量を増大させることができる。なお、干渉となる他ユーザ数が少ない場合は、受信電力の情報を用いなくてもヌル制御を行うことができる。
【0053】
上述したように本実施形態では、パス独立にDOAを推定する方法(図3参照)およびパス共通にDOAを推定する方法(図5参照)について説明した。パス独立でDOAを推定し、この推定結果に基づいてアンテナウェイトを生成するパス独立ウェイト生成方法は、パス毎の小さな受信信号電力でアンテナウェイトを求めるため、パス数が多いときに、パス共通のDOA推定に基づきアンテナウェイトを生成するパス共通ウェイト生成方法と比較すると、若干アンテナウェイトの生成誤差が大きくなるものの、パス間の角度広がりが大きくなってもアンテナ利得は減少しないという効果が得られる。ここで、角度広がりとは、信号の到来角度の分布を正規分布と仮定したとき、到来角度の標準偏差をいい、一般的に、アレーアンテナの設置場所と周辺の建物高などに応じてその大きさが決まってくる。
【0054】
一方、パス共通ウェイト生成方法では、パス間の角度広がりが小さい場合は、全パスを合成した大きな受信電力を用いて、アンテナウェイトを生成するため、アンテナウェイトの生成誤差が小さくなる効果が得られる。しかしながら、パス間の角度広がりが大きくなると、全てのパスに対して大きなアンテナ利得を得ることができない。そこで、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置では、パス間の角度広がりに応じてパス独立ウェイト生成方法とパス共通ウェイト生成方法とを使い分ける制御を行う。以下、具体例について説明する。
【0055】
図11は、パス独立ウェイト生成方法とパス共通ウェイト生成方法の切替制御を行う適応アンテナアレー受信装置4の構成を示すブロック図である。同図において、この適応アンテナアレー受信装置4は、DOA推定部311、DOA推定結果メモリ312、パス間の角度広がり検出部313、角度広がりしきい値判定部314、パス毎ウェイト生成部315、パス共通ウェイト生成部316、アンテナウェイト生成切替制御部317、スイッチ318、パス毎の乗算器321−1〜321−N、パス毎の加算器322、復調部323から構成されている。
【0056】
上記のように構成された適応アンテナアレー受信装置4の動作を図12に示すフローチャートを用いて説明する。
【0057】
同図において、DOA推定部311は、2次元電力プロファイル生成部(ここでは、図示省略)から得られる2次元電力プロファイルに基づいて、各パスのDOA推定を行い(ステップS21)、結果をDOA推定結果メモリ312に蓄えるとともに、パス間の角度広がり検出部313に出力する。
【0058】
パス間の角度広がり検出部313は、DOA推定結果を基にパス間の角度広がりを以下に示す方法1、または方法2にしたがって検出(ステップS22)する。
【0059】
(角度広がり検出方法1)
各パスの到来方向推定値(DOA推定結果)、および受信電力を、
θ1,θ2,θ3,...,θL,
P1,P2,P3,...,PL,
としたときに、θl,Plを用いて角度広がりσを次式により計算する。
【0060】
【数3】
ここで、
【0061】
【数4】
(角度広がり検出方法2)
角度広がり〔degree〕=受信電力が最大のパスからXdB以内を満たす受信電力が大きい順に最大Kパス間の最大角度差
本方法2における角度広がり検出概念を図13に示す。本例は、XdB=5、K=3とした場合であって、受信電力が大きい順にパス1、パス2、パス3までが検出され、パス1〜パス3間の角度広がりが検出される(角度広がり検出値=θ2-θ1)。
【0062】
図12に戻り、角度広がりしきい値判定部314は、上記のようにして検出された角度広がりと閾値とを比較判定(ステップS23)し、判定結果をアンテナウェイト生成切替制御部317に出力する。アンテナウェイト生成切替制御部317は、上記判定(ステップS23)で、角度広がりが閾値より大きいとの結果を得た場合、スイッチ318を制御してパス毎ウェイト生成部315側の接点に接続する。その後、パス毎ウェイト生成部315で生成されたアンテナウェイトがアンテナウェイト生成切替制御部317を介して乗算部321−1〜321−Nに出力される。
【0063】
一方、上記判定(ステップS23)で、角度広がりが閾値より小さいとの結果が得られた場合、アンテナウェイト生成切替制御部317は、スイッチ318を制御してパス共通ウェイト生成部316側に接点を接続する。その後、パス共通ウェイト生成部316で生成されたアンテナウェイトがアンテナウェイト生成切替制御部317を介して乗算部321−1〜321−Nへと出力される。
【0064】
このように本実施形態では、角度広がりに応じてパス毎にウェイトを生成するか、パス共通にウェイトを生成するかを使い分ける。例えば、アンテナ高が低く(例:地下街等)、器物の反射など複雑な伝搬路環境の中では、到来波の角度広がりが大きく検出されるので、その場合、アンテナウェイト生成切替制御部317によりパス毎ウェイト生成部315でのウェイト生成方法が選択され、パス毎にアンテナウェイトが生成される。
【0065】
反対に、アンテナ高が高く(例:ビルの屋上等)、伝搬路の遮断等の影響が比較的小さい伝搬路環境の中では、到来波の角度広がりが小さく検出されるので、その場合、アンテナウェイト生成切替制御部317によりパス共通ウェイト生成部316でのウェイト生成方法が選択され、パス共通にアンテナウェイトが生成される。これにより、アンテナ高の設置状況等に応じてアンテナウェイト生成方法の使い分けが可能となり、より柔軟なシステムの構築が可能となる。
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、DOA推定結果に基づいて、パケット毎にアンテナウェイトを生成するようにしたので、パケット交換型のシステムにMMSEアルゴリズムを適用した場合と比してアンテナウェイトの生成誤差を改善することが可能となる。
【0067】
上記実施形態では、パイロットチャネル内のパイロットシンボルを用いて受信信号のDOAを推定し、その推定結果に基づいて、アンテナウェイトを生成する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、パケット交換型のシステムにおいて、送信端末(移動局)がパケットデータを送信する前に短い予約パケット(遅延やデータサイズなどユーザ毎に異なるサービス品質の要求条件を通知するパケット)をランダムアクセス方式により送信するような場合、上記予約パケットを用いて事前にDOA推定しておき、その推定結果を利用して後続のパケットデータチャネルにヌルを向ける制御を行う態様であってもよい。
【0068】
図14は、予約パケットでDOA推定して後続のパケットデータチャネル対してヌル制御を行う場合の動作概念を示す図である。
【0069】
同図(a)は、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局500と移動局600が通信中のときに、他ユーザである移動局610から予約パケットが送られてきた様子を示している。このような場合、本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局500は、移動局610から送信される予約パケットに含まれる既知パターンを用いてDOA推定を行い、その推定結果を基に移動局610にヌルを向けるようなアンテナウェイトを予め生成する。その後、後続して送信される移動局610のパケットデータチャネルに多重されているパイロットチャネルを用いてDOA推定を行い、その推定結果を基に移動局610にヌルを向けるようなアンテナウェイトを生成する。
【0070】
このように本実施形態では、パケットデータが送信される前の予約パケットを用いて移動局610からの受信信号のDOA推定を行い、移動局610にヌルを向けるようなアンテナウェイトが予め生成されるので、後続するパケットデータチャネルに対してヌルを向けるようなアンテナウェイトを生成する際には、すべての角度方向にスイープして指向性受信を行わなくても事前に得られた到来方向の角度周辺の範囲をスイープして指向性受信すればパケットデータチャネルに対するDOAを検出できる。これにより、アンテナウェイト生成のための演算処理量を軽減させることが可能である。
【0071】
図15は、本発明における適応アンテナアレー受信装置を基地局に適用した場合の具体的な構成例を示すブロック図である。本構成は、受信に際して、マルチパス環境において、受信に際してマルチパス数分のアンテナ重み係数を用いて受信する構成となっている。
【0072】
本実施形態における基地局は、2次元電力プロファイル生成部405−1〜405−M、パス検出/DOA推定部406−1〜406−M、アンテナウェイト生成部407−1〜407−Mをユーザ数分(ユーザ1〜ユーザM)備える。また、これらは同様に動作するので、以下では、代表としてユーザ1における動作を説明する。
【0073】
同図において、各アンテナ401−1〜401−Nで受信された信号は、LNA402−1〜402−N、RF回路403−1〜403−Nを経てA/D変換器404−1〜404−Nによりデジタルベースバンド信号に変換される。この変換されたデジタルベースバンド信号は、2次元電力プロファイル生成部405−1に入力され、データチャネルに多重されているパイロットチャネルを用いて、2次元電力プロファイルが生成される。その後、受信タイミング/DOA推定部406−1で受信信号のDOAとパスの受信タイミングが推定される。アンテナウェイト生成部407−1は、上記DOAとパスの受信タイミングの推定結果に基づいて、パス毎にアンテナウェイトを生成する。
【0074】
各アンテナ素子401−1〜401−Nで受信された信号は、アンテナウェイト生成部407−1で生成されたアンテナウェイトと乗算器408−1〜408−Nにより乗算されて加算器409で加算された後、逆拡散器410−1においてパス毎の受信タイミングにおいて逆拡散される。このようにして逆拡散されたパス毎の信号は、チャネル推定部411でチャネル推定が行われた後、Rake合成部412でRake合成され復調部416で復調されることで送信データが再生される。
【0075】
次に、前述したような大電力の干渉波が存在する場合における2次元電力プロファイルによるパス検出について図16を用いて説明する。
【0076】
同図に示すように、高速レートのトラヒックを伝送する大電力の干渉波が存在する場合、パイロットシンボルによる相互相関の影響が残るために干渉波方向に電力が残留してしまう。このような場合において希望波のパス検出を行う場合には、大電力の干渉波を誤って検出する確率が増大する。そこで、本実施形態における受信タイミング/DOA推定部406では、2次元電力プロファイルを用いて、全角度共通に、ないしは、角度毎にパス検出しきい値を設定する。以下、具体例について図17、図18を用いて説明する。図17は、全角度共通にパス検出しきい値を設定する場合の受信タイミング/DOA推定部406での処理手順を示すフローチャートである。図18は、全角度共通にパス検出しきい値を設定する概念を説明するための2次元電力プロファイルである。
【0077】
図17において、全角度共通にパス検出しきい値を設定する方法では、受信タイミング/DOA推定部406は、2次元電力プロファイル生成部405から2次元電力プロファイルを取得(ステップS31)し、得られた2次元電力プロファイルの全角度、全タイミングの電力値から、大きい順にL×4タイミングを除いた電力値を平均することで全角度共通の雑音電力を計算(ステップS32)する。この全角度共通の雑音電力値に△だけオフセットした値を全角度共通のパス検出しきい値として計算(ステップS33)し、ステップS34において、この全角度共通のパス検出しきい値を越える電力値とパス検出しきい値との比が大きい順に最大Lパスを検出する。ステップS35では、この検出したLパスについて、受信タイミングとDOAを検出し、結果をアンテナウェイト生成部407に出力する。
【0078】
続いて、2次元電力プロファイルを用いて、角度毎にパス検出しきい値を設定する場合について説明する。図19は、角度毎にパス検出しきい値を設定する場合の受信タイミング/DOA推定部406での処理手順を示すフローチャートである。図20は、角度毎にパス検出しきい値を設定する概念を説明するための2次元電力プロファイルである。
【0079】
図19において、角度毎にパス検出しきい値を設定する方法では、受信タイミング/DOA推定部406は、2次元電力プロファイル生成部405から2次元電力プロファイルを取得(ステップS41)し、得られた2次元電力プロファイルの角度毎に全タイミングの電力値から、大きい順にL×4タイミングを除いた電力値平均することで、角度毎の雑音電力を計算(ステップS42)する。この角度毎の雑音電力値に△だけオフセットした値をパス毎のパス検出しきい値として計算(ステップS43)し、角度毎に、電力と角度毎のパス検出しきい値との比を求め、全角度で(パス検出しきい値を越えている)この比が大きい順に最大Lパスを検出(ステップS44)する。ステップS45では、この検出したLパスについて受信タイミングと到来方向を検出し、結果をアンテナウェイト生成部407に出力する。
【0080】
上述したように全角度共通にパス検出のためのしきい値を設定する方法では、2次元電力プロファイルの全角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出しきい値を設定するための雑音電力を全角度共通に計算するため、雑音電力の平均化効果が大きい。ただし、大電力の干渉波が存在する場合には、その干渉波を受信タイミングとして検出してしまう誤検出、および干渉波による全角度共通のパス検出しきい値が増大することによる希望波パスの検出見逃しが増大する。
【0081】
一方、角度毎にパス検出のためのしきい値を設定する方法では、2次元電力プロファイルの各角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出しきい値を設定するための雑音電力を角度毎に計算するため、雑音電力の平均化効果は小さくなるが、大電力の干渉波が存在する場合においても、角度毎にパス検出しきい値を設定するため、干渉波が存在する角度においては、大電力であるためにパス検出しきい値が高く、希望波方向のパス検出しきい値は小さく設定されるために、干渉波の影響を受けずに希望波バスを高精度に検出できる。
【0082】
すなわち、全角度共通にパスの検出ためのしきい値を設定する方法と、角度毎にパスのための検出しきい値を設定する方法には、トレードオフの関係がある。したがって、これらのいずれを採用するかは、両者のメリットのトレードオフとなるが、大電力の干渉波が存在しない場合には、雑音電力の平均化効果が大きく特性が改善される全角度共通にパスの検出ためのしきい値を設定する方法を選択し、大電力の干渉波が存在する場合には、大電力の干渉波の影響を受けずに、希望波パスを高精度に検出することができる角度毎にパスのための検出しきい値を設定する方法を選択するのが好ましい。これにより、大電力の共有チャネルが干渉となる場合においても、高精度にパス検出ができ、受信タイミングおよび到来方向を高精度に検出することができる。その結果、上りリンクのセルカバレッジの増大、並びにリンク容量の増大を実現することができる。
【0083】
結論として、本発明は、伝送レートの異なるトラヒックが混在するパケット交換型のシステムに適した適応アンテナアレー受信装置を提供することができる。
【0084】
なお、上記において既に説明した上りリンクのDOA推定結果を用いて送信側の送信アンテナウェイトを生成することもできる。例えば、各ユーザの上りリンクの送信がなされたときに、DOA推定を行ってその値を記憶しておき、あるユーザの下りリンク送信を行う際には、記憶していたそのユーザのDOA推定結果を基に送信アンテナウェイトを生成する。このとき、送信アンテナウェイト生成方法としては、例えば、以下のような方法が考えられる。
【0085】
(a)受信電力が最大のパスの到来方向にメインビームを向ける送信アンテナウェイトを生成する。
【0086】
(b)全パスの到来方向にメインビームを向ける送信アンテナウェイトを生成する。
(c)全パスの平均到来方向にメインビームを向ける送信アンテナウェイトを生成する。
【0087】
上記のようにして送信アンテナウェイトを生成することで、上下リンクが非対称になった場合でもアダプティブアレー送信を行うことができ、下りリンクのセルカバレッジの増大、並びにリンク容量の増大を実現することができる。
【0088】
また、上述の各実施の形態では、移動通信システムの基地局にこの発明の適応アンテナアレー受信装置を適用した場合について説明したが、この発明は、基地局に限らず、複数アンテナを用いてアダプティブアレー処理を行う移動局にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の一形態に係る適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】2次元電力プロファイルの生成例を示す図である。
【図3】パス受信タイミング検出・パス独立DOA推定手順を示すフローチャートである。
【図4】パス受信タイミング検出・パス独立DOA推定法によるパス検出とDOA推定を説明するための2次元電力プロファイルである。
【図5】パス受信タイミング検出・パス共通DOA推定手順を示すフローチャートである。
【図6】パス受信タイミング検出・パス共通DOA推定法によるパス検出とDOA推定を説明するための2次元電力プロファイルである。
【図7】本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局におけるビーム制御(その1)の一例を示す図である。
【図8】図7に示す適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本実施形態における適応アンテナアレー受信装置を適用した基地局におけるビーム制御(その2)の一例を示す図である。
【図10】図9に示す適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図11】アンテナウェイトの生成法を切替える制御を行う適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図12】角度広がりに応じてアンテナウェイトの生成法を切替える制御手順を示すフローチャートである。
【図13】角度広がりの検出概念を示す図である。
【図14】予約パケットに基づいてヌル制御を行う場合の動作概念を示す図である。
【図15】本発明における適応アンテナアレー受信装置を基地局に適用した場合の具体的な構成例を示すブロック図である。
【図16】大電力の干渉波が存在する場合における2次元電力プロファイルによるパス検出方法を説明するための図である。
【図17】全角度共通にパス検出しきい値を設定する場合の受信タイミング/DOA推定部での処理手順を示すフローチャートである。
【図18】全角度共通にパス検出しきい値を設定する概念を説明するための2次元電力プロファイルである。
【図19】角度毎にパス検出しきい値を設定する場合の受信タイミング/DOA推定部での処理手順を示すフローチャートである。
【図20】角度毎にパス検出しきい値を設定する概念を説明するための2次元電力プロファイルである。
【図21】従来の適応アンテナアレー受信装置の構成を示すブロック図である。
【図22】ブロードバンド無線アクセスにおける上りリンクのチャネル状態を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1〜4 適応アンテナアレー受信装置
101〜101−N、401−1〜401−N アンテナ素子
102−1〜102−N 相関検出部
103−1〜103−N 複素プロファイル生成部
104、110、204、322、409、415 加算器
105 合成遅延プロファイル生成部
106 パス検出部
107 DOA(Direction of arrival:到来方向)推定部
108、202、213−1〜213−M、223−1〜223−M、407−1〜407−Mアンテナウェイト生成部
109−1〜109−N、203−1〜203−N、321−1〜321−N、 408−1〜408−N、413、414 乗算器
111、111−1〜111−M、323、416 復調部
201 ビームスイープ制御部
205、211−1〜211−M、221−1〜221−M、405−1〜405−M 2次元電力プロファイル生成部
206 メモリ
207、212−1〜212−M、222−1〜222−M、406−1〜406−M パス検出/DOA推定部
311 DOA推定部
312 DOA推定結果メモリ
313 パス間の角度広がり検出部
314 角度広がりしきい値判定部
315 パス毎ウェイト生成部
316 パス共通ウェイト生成部
317 アンテナウェイト生成切替制御部
318 スイッチ
402−1〜402−N LNA
403−1〜403−N RF回路
404−1〜404−N A/D変換器
410−1〜410−M 逆拡散器
411 チャネル推定部
412 Rake合成部
500 基地局
600〜620 移動局
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを備え、該複数のアンテナ素子により送信信号を受信する適応アンテナアレー受信装置において、
前記複数のアンテナ素子で受信される制御信号を用いて時間と到来パスの角度の次元を有する2次元電力プロファイルを生成する2次元電力プロファイル生成手段と、
前記2次元電力プロファイルを用いて、パスの受信タイミング検出及びパスの到来方向を推定するパス検出・到来方向推定手段と、
前記パスの到来方向推定結果に基づき前記複数のアンテナ素子からの受信信号に対するアンテナウェイトを生成するアンテナウェイト生成手段と、
を備えたことを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記アンテナウェイト生成手段は、前記アンテナウェイトを生成する際に、前記2次元電力プロファイルから得られる受信電力を考慮することを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記2次元電力プロファイル生成手段は、上りリンクのパイロットチャネルを前記制御信号として入力し、
前記パイロットチャネルに挿入されたパイロットシンボルを用いて各アンテナにおけるパイロットシンボルの複素相関値を出力する複素相関処理手段と、
前記複素相関処理手段で得られた複素相関値を同相加算することにより、各アンテナにおける複素遅延プロファイルを生成する複素遅延プロファイル生成手段と、
所定角度範囲内で指向性ビームを走査し、その指向性ビームを形成するアンテナウェイトを各タイミングにおいて前記複素遅延プロファイルに乗算後、合成する指向性ビーム受信合成手段と、
前記合成された合成信号を用いてタイミング方向の受信電力を算出する受信電力算出手段と、
を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記受信電力算出手段は、前記受信電力をビームフォーマー法又はCapon法を用いて算出することを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス検出・到来方向推定手段は、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成された2次元電力プロファイルを用いて、ピーク電力を有する所定数のパスを検出し、検出した各パスにおけるパスの受信タイミングを検出するパス独立受信タイミング検出手段と、
前記検出されたパスにおける到来方向を推定するパス独立到来方向推定手段と、
を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス独立受信タイミング検出手段は、ピーク電力を有するパスのうち、電力の高い順に所定数のパスを検出することを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス検出・到来方向推定手段は、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成された2次元電力プロファイルを用いて、角度ごとにピーク電力を有する所定数のパスを検出し、検出した角度ごとのパスの電力和を合成電力として算出し、算出した合成電力が最大となる1つの角度をパス共通の到来方向として推定するパス共通到来方向推定手段と、
前記推定したパス共通の到来方向における各パスの受信タイミングを検出するパス共通受信タイミング検出手段と、
を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス共通到来方向推定手段は、ピーク電力を有するパスのうち、電力の高い順に所定数のパスを検出することを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項9】
請求項5乃至8いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記アンテナウェイト生成手段は、前記パス独立到来方向推定手段により推定される各パスの到来方向にメインビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス独立アンテナウェイト生成手段と、
前記パス共通到来方向推定手段により推定されるパス共通の到来方向にメインビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス共通アンテナウェイト生成手段と、
を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項10】
請求項8に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス独立アンテナウェイト生成手段は、パス独立到来方向推定手段により推定される自ユーザ及び他ユーザの各パス独立の到来方向推定結果と、前記2次元電力プロファイル生成手段から得られる自ユーザ及び他ユーザの受信電力とに基づいて、自ユーザ方向にメインビームを形成し、他ユーザ方向にヌルビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス独立ヌル制御手段を備え、
前記パス共通アンテナウェイト生成手段は、パス共通到来方向推定手段により推定される自ユーザ及び他ユーザの各パス共通の到来方向推定結果と、前記2次元電力プロファイル生成手段から得られる自ユーザ及び他ユーザの受信電力とに基づいて、自ユーザ方向にメインビームを形成し、他ユーザ方向にヌルビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス共通ヌル制御手段を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項11】
請求項1又は10いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記2次元電力プロファイル生成手段により生成される2次元電力プロファイルの全角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出のためのしきい値を設定する全角度共通パス検出しきい値設定手段をさらに備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項12】
請求項1又は10いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記2次元電力プロファイル生成手段により生成される2次元電力プロファイルの各角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出のためのしきい値を設定する角度毎パス検出しきい値設定手段をさらに備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項13】
複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを備え、該複数のアンテナ素子により送信信号を受信する適応アンテナアレー受信装置における受信方法であって、
前記複数のアンテナ素子で受信される制御信号を用いて時間と到来パスの角度の次元を有する2次元電力プロファイルを生成するステップと、
前記生成した2次元電力プロファイルを用いて、パスの受信タイミング検出と、パスの到来方向を推定するステップと、
前記推定したパスの到来方向推定結果に基づいて、前記複数のアンテナ素子からの受信信号に対するアンテナウェイトを生成するステップと、
を備える適応アンテナアレー受信装置における受信方法。
【請求項1】
複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを備え、該複数のアンテナ素子により送信信号を受信する適応アンテナアレー受信装置において、
前記複数のアンテナ素子で受信される制御信号を用いて時間と到来パスの角度の次元を有する2次元電力プロファイルを生成する2次元電力プロファイル生成手段と、
前記2次元電力プロファイルを用いて、パスの受信タイミング検出及びパスの到来方向を推定するパス検出・到来方向推定手段と、
前記パスの到来方向推定結果に基づき前記複数のアンテナ素子からの受信信号に対するアンテナウェイトを生成するアンテナウェイト生成手段と、
を備えたことを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記アンテナウェイト生成手段は、前記アンテナウェイトを生成する際に、前記2次元電力プロファイルから得られる受信電力を考慮することを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記2次元電力プロファイル生成手段は、上りリンクのパイロットチャネルを前記制御信号として入力し、
前記パイロットチャネルに挿入されたパイロットシンボルを用いて各アンテナにおけるパイロットシンボルの複素相関値を出力する複素相関処理手段と、
前記複素相関処理手段で得られた複素相関値を同相加算することにより、各アンテナにおける複素遅延プロファイルを生成する複素遅延プロファイル生成手段と、
所定角度範囲内で指向性ビームを走査し、その指向性ビームを形成するアンテナウェイトを各タイミングにおいて前記複素遅延プロファイルに乗算後、合成する指向性ビーム受信合成手段と、
前記合成された合成信号を用いてタイミング方向の受信電力を算出する受信電力算出手段と、
を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記受信電力算出手段は、前記受信電力をビームフォーマー法又はCapon法を用いて算出することを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス検出・到来方向推定手段は、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成された2次元電力プロファイルを用いて、ピーク電力を有する所定数のパスを検出し、検出した各パスにおけるパスの受信タイミングを検出するパス独立受信タイミング検出手段と、
前記検出されたパスにおける到来方向を推定するパス独立到来方向推定手段と、
を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス独立受信タイミング検出手段は、ピーク電力を有するパスのうち、電力の高い順に所定数のパスを検出することを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス検出・到来方向推定手段は、前記2次元電力プロファイル生成手段により生成された2次元電力プロファイルを用いて、角度ごとにピーク電力を有する所定数のパスを検出し、検出した角度ごとのパスの電力和を合成電力として算出し、算出した合成電力が最大となる1つの角度をパス共通の到来方向として推定するパス共通到来方向推定手段と、
前記推定したパス共通の到来方向における各パスの受信タイミングを検出するパス共通受信タイミング検出手段と、
を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス共通到来方向推定手段は、ピーク電力を有するパスのうち、電力の高い順に所定数のパスを検出することを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項9】
請求項5乃至8いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記アンテナウェイト生成手段は、前記パス独立到来方向推定手段により推定される各パスの到来方向にメインビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス独立アンテナウェイト生成手段と、
前記パス共通到来方向推定手段により推定されるパス共通の到来方向にメインビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス共通アンテナウェイト生成手段と、
を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項10】
請求項8に記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記パス独立アンテナウェイト生成手段は、パス独立到来方向推定手段により推定される自ユーザ及び他ユーザの各パス独立の到来方向推定結果と、前記2次元電力プロファイル生成手段から得られる自ユーザ及び他ユーザの受信電力とに基づいて、自ユーザ方向にメインビームを形成し、他ユーザ方向にヌルビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス独立ヌル制御手段を備え、
前記パス共通アンテナウェイト生成手段は、パス共通到来方向推定手段により推定される自ユーザ及び他ユーザの各パス共通の到来方向推定結果と、前記2次元電力プロファイル生成手段から得られる自ユーザ及び他ユーザの受信電力とに基づいて、自ユーザ方向にメインビームを形成し、他ユーザ方向にヌルビームを形成するアンテナウェイトを生成するパス共通ヌル制御手段を備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項11】
請求項1又は10いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記2次元電力プロファイル生成手段により生成される2次元電力プロファイルの全角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出のためのしきい値を設定する全角度共通パス検出しきい値設定手段をさらに備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項12】
請求項1又は10いずれかに記載の適応アンテナアレー受信装置において、
前記2次元電力プロファイル生成手段により生成される2次元電力プロファイルの各角度の全タイミングの電力値を用いて、パス検出のためのしきい値を設定する角度毎パス検出しきい値設定手段をさらに備えることを特徴とする適応アンテナアレー受信装置。
【請求項13】
複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを備え、該複数のアンテナ素子により送信信号を受信する適応アンテナアレー受信装置における受信方法であって、
前記複数のアンテナ素子で受信される制御信号を用いて時間と到来パスの角度の次元を有する2次元電力プロファイルを生成するステップと、
前記生成した2次元電力プロファイルを用いて、パスの受信タイミング検出と、パスの到来方向を推定するステップと、
前記推定したパスの到来方向推定結果に基づいて、前記複数のアンテナ素子からの受信信号に対するアンテナウェイトを生成するステップと、
を備える適応アンテナアレー受信装置における受信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図21】
【図22】
【図16】
【図18】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図21】
【図22】
【図16】
【図18】
【図20】
【公開番号】特開2006−13786(P2006−13786A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186565(P2004−186565)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年5月14日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.104 No.63」に発表
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年5月14日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.104 No.63」に発表
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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