説明

遮断機序を有する電気セパレータ、該電気セパレータの製造法及びリチウム−バッテリー中での使用

本発明は、遮断機序を有するバッテリー、特にリチウムバッテリーのための電気セパレータ並びに該電気セパレータの製造法に関する。電気セパレータは、バッテリー、及び、電極が例えばイオン伝導性の保持下に互いに分離されねばならない他の装置において使用されるセパレータである。安全性はリチウム−バッテリーにおいて極めて重要な役割を果たしており、それというのも、別のバッテリータイプ(Pb、NiCd、NiMeH)とは異なり、電解質のための溶剤として水ではなく可燃性の溶剤、例えば有機カーボナートが使用されるためである。この理由から、リチウム電池のためのセパレータが適当な遮断機序(シャットダウン)を有し、かつ同時に焼き切れ(メルトダウン)不可能であることが絶対に必要である。この課題は、多孔質平面構造物から形成される遮断層を有する本発明による電気セパレータにより解決される。このセパレータは更に多孔質無機(セラミック)層及び支持体を有しているため、完全に溶融されたセパレータの結果としてのセルの焼き切れは生じ得ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断機序を有する電気セパレータ、該電気セパレータの製造法並びにバッテリー、特にリチウム−バッテリー中での該電気セパレータの使用に関する。
【0002】
電気セパレータは、バッテリー、及び、電極が例えばイオン伝導性の保持下に互いに分離されねばならない他の装置において使用されるセパレータである。
【0003】
セパレータは、通常、高いイオン透過性、良好な機械強度及び系中で、例えばバッテリーの電解質中で使用された化学薬品及び溶剤に対する長時間安定性を有する、薄く多孔質である絶縁性の材料である。セパレータは、バッテリー中でカソードとアノードとが電気的に完全に絶縁されているべきであるが、電解質に対しては透過性であるべきである。更に、セパレータは弾性を持続しなければならず、かつ系中で、例えば電極パッケージ中で、充電及び放電の際の動きに追従しなければならない。
【0004】
セパレータは、セパレータが使用される装置、例えばバッテリー−セルの寿命を特に決定する。従って、再充電可能なバッテリーの開発は、適当なセパレータ材料の開発によって影響を受ける。
【0005】
電気セパレータ及びバッテリーに関する一般的な情報は、例えばJ.O. Besenhard著 ”Handbook of Battery Materials” (VCH-Verlag, Weinheim 1999)に供覧されている。
【0006】
現在使用されているセパレータは、主に多孔質有機ポリマーフィルムもしくは無機不織布材料、例えばガラス材料又はセラミック材料からなる不織布又はセラミックペーパーからなる。これらは、様々な企業により製造されている。重要な製造元は、ここではCelgard、Tonen、Ube、Asahi、Binzer、Mitsubishi、Daramic等である。典型的な有機セパレータは、例えばポリプロピレンからなるか、又はポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン−複合体からなる。
【0007】
今日頻繁に使用されているリチウムバッテリーは、水性の電解質を有する系、例えばNiCdバッテリー又はニッケル−金属水素化物バッテリーと比較して、例えば比エネルギー密度が高く、自己放電がなくかつメモリー効果がないといった多くの利点を特徴とする。しかしながら、リチウムバッテリーは、可燃性の電解質を含有し、この電解質が更に極めて強力に水と反応できるという欠点を有する。高エネルギーバッテリー、つまり多くの活材料を含有するバッテリーは、従って、事故の場合に及びその事故に伴うセルの加熱の場合にバッテリー中の電気回路が遮断されることが極めて重要である。この遮断は、通常では、ポリプロピレン(PP)−ポリエチレン(PE)−PPから成る複合材料から成る特別なセパレータによって行われる。所定の温度、遮断温度(シャットダウン温度)から、PEは溶融し、セパレータの細孔は閉鎖され、電流回路は遮断される。
【0008】
このセパレータの欠点は、限定的な熱安定性であり、それというのもセルが更に加熱された場合にはポリプロピレンも溶融し、その結果、この焼き切れ温度(メルトダウン温度)でセパレータ全体が溶融し、それにより大面積の内部短絡が生じ、この大面積の内部短絡は、しばしば閃光を発しながら又はそれどころか爆発しながらバッテリーセルの破壊を招くためである。確かに、焼き切れ(メルトダウン)作用を示さないセラミックセパレータ、例えばセラミックペーパー又はセラミック不織布又はセラミック織物は公知であるが、これらのセパレータは、残念ながら、特に高エネルギーの適用のためには不可欠でありかつバッテリー生産元によって要求される遮断(シャットダウン)作用も示さない。
【0009】
遮断機序を有していないセパレータ又はセパレータとして使用可能な膜は、例えばWO99/15262から十分に公知である。前記文献から、セパレータ又はセパレータとして適している膜の製造を引用することもできる。有利に、本発明によるセパレータ用の多孔質支持体として、もちろん導電性の支持体、例えば金属織物は使用されず、それというのも、このような支持体を使用した場合には、支持体のセラミック被覆が不完全な場合に内部短絡が生じかねないためである。本発明によるセパレータは、従って有利に非導電性材料から成る支持体を有する。
【0010】
最近では、セラミックとポリマーとを有するハイブリッドのセパレータが開発されている。DE10208277では、多孔質の電気絶縁性のセラミック被覆を有するポリマー基材材料をベースとするセパレータが製造された。存在するポリマー成分にもかかわらず、所定の温度を上回った場合でもこのセパレータは遮断作用を示さず、それというのも恐らく全ての細孔が閉塞されるわけではないためである。
【0011】
より早期の出願であるDE10238945には、出願人によって初めて、セパレータの完全な崩壊(メルトダウン)を防止するセラミック層と、バッテリーの機能が欠如した際にセルの確実な遮断(シャットダウン)を担う、定義された融点を有する粒子から成る遮断層とを有するセパレータが記載された。該刊行物に記載された遮断層に関して問題となるのは、セパレータの加工の際に遮断層の損傷を招きかねない、該粒子のそれほど高くない耐摩耗性である。
【0012】
従って本発明の課題は、セパレータの加工の際に損傷されない遮断層を有するセパレータを提供することであった。
【0013】
意外にも、正常に機能する遮断層を多孔質平面構造物からも形成することができ、かつそのような遮断層は、耐摩耗性に関して問題がなく、ひいてはそのように仕上げられたセパレータを遮断層の損傷の危険性がより低い状態で加工することができることが見い出された。このことは、特に、多孔質平面構造物を用いても遮断層として十分に高いセパレータの全多孔率を達成することができるために意外である。
【0014】
従って本発明の対象は、多孔質支持体と、前記の支持体の上及び中に存在する多孔質の無機の非導電性被覆とを含む、リチウムバッテリーのための遮断機能を有するセパレータにおいて、平均粒径0.5〜10μmの元素Al、Si及び/又はZrの酸化物粒子を有する無機被覆上に、所定の温度で溶融しかつ無機層の細孔を閉塞する材料から成る多孔質遮断層が存在しており、その際、遮断層は多孔質の平面構造物により形成され、かつ支持体は製織されたか又は製織されていないポリマー繊維又はガラス繊維を有することを特徴とするセパレータである。
【0015】
同様に本発明の対象は、遮断機能を有するセパレータの製造法において、セパレータの多孔質無機層上に、支持体材料の溶融温度以下であり、かつ無機層の溶融温度よりも低い、定義された所望の溶融温度を有する材料から成る多孔質平面構造物を多孔質層(遮断層)として施与及び固定することを特徴とする、遮断機能を有するセパレータの製造法である。
【0016】
更に、本発明の対象は、バッテリー、特にリチウムバッテリー中での本発明によるセパレータの使用、並びに、そのような本発明によるセパレータを有するバッテリー自体である。
【0017】
多孔質支持体と、前記の支持体の上及び中に存在する多孔質の無機の非導電性被覆と、無機被覆上に、この層と結合した、所定の温度で溶融する材料から成る遮断層とを有する本発明によるセパレータは、卓越した安全特性を有するという利点を有する。本発明によるセパレータは、遮断層が所定の温度に達した際に溶融し、遮断層の材料が無機材料の細孔中に侵入し、この細孔を閉塞することによってセパレータを閉塞させることに基づく遮断機序(シャットダウン)機序を有している。それに対して、いわゆるメルトダウン(焼き切れ)は本発明によるセパレータの場合には生じることができず、それというのも、比較的高い温度であっても無機層はバッテリーの内部での大面積の短絡を防止するためである。つまり、本発明によるセパレータは、様々なバッテリー製造元により求められているバッテリーセル中のシャットダウンによる安全遮断に対する要求も満たしている。無機粒子によって、メルトダウンが決して生じ得ないように配慮される。従って、大面積の短絡を生じる得る運転状態が生じないことが保証される。
【0018】
柔軟な多孔質の平面構造物のみを支持体として有するセパレータと比較して、本発明によるセパレータは、支持体材料として、高い融点を有し、それによってセラミック被覆の製造が容易にうまくいくポリマーの材料を使用することができ、かつ、遮断材料として、より低い、厳密に確定された融点を有することができる材料を使用することができるという利点を有する。セパレータの強度は、セパレータの製造と全く同様に、本発明による方法の場合、所望の遮断材料にはもはや依存しない。
【0019】
遮断層として使用される多孔質平面構造物の適当な選択、特に細孔のサイズの適当な選択により、多孔率及びそれによりセパレータの性能は、全く減少しないか又はわずかな程度減少するだけである。
【0020】
例えば事故により引き起こされるであろう内部短絡の場合にも、本発明によるセパレータは極めて安全である。例えば釘がバッテリーに貫通した場合、セパレータに応じて次のことが生じる:ポリマーセパレータは、貫通箇所で(短絡流が釘の上を流れ、かつこれを加熱する)溶融し、収縮すると考えられる。これにより、短絡箇所は益々大きくなり、かつ反応は制御不能になる。本発明によるセパレータの場合には、ポリマーの遮断層は溶融するが、無機セパレータ材料は溶融しない。よって、このような事故の後に、バッテリーセルの内部の反応は、極めて緩やかに進行する。従って、このバッテリーは、ポリマーセパレータを有するものよりも明らかに安全である。これは、特に自動車の分野で用いられる。
【0021】
リチウムイオンバッテリー中で使用するための本発明によるセパレータの利点を、以下のようにまとめることができる:
・高い多孔率
・理想的な孔径
・薄い厚さ
・わずかな面積重量
・極めて良好な湿潤特性
・高い安全性、つまり、メルトダウン作用は有しないが、シャットダウン作用を有する。
・加工の際に遮断層の損傷の危険性が低い。
【0022】
本発明によるセパレータ及びその製造法を、本発明をこの実施態様に限定することなく以下に記載する。
【0023】
多孔質支持体と、前記の支持体の上及び中に存在する多孔質の無機の非導電性被覆とを含む、リチウムバッテリーのための遮断機能を有する本発明によるセパレータは、平均粒径0.5〜10μmの元素Al、Si及び/又はZrの酸化物粒子を有する無機被覆上に、所定の温度で溶融しかつ無機層の細孔を閉塞する材料から成る多孔質遮断層が存在しており、その際、遮断層は多孔質の平面構造物により形成され、かつ支持体は製織されたか又は製織されていないポリマー繊維又はガラス繊維、有利にポリマー繊維を有するか又はこれらから成ることを特徴とする。遮断層は、この場合有利に織物、不織物、フエルト、編物又は多孔質箔により形成される。
【0024】
原則的にこの遮断層はセパレータの両面に存在することができる。しかしながら、この遮断層が本発明によるセパレータの片面にだけ存在する場合も有利であることが判明した。必要な場合に確実な遮断を保証するためには、唯一の遮断層で十分である。
【0025】
有利に、本発明によるセパレータは、柔軟でありかつ有利に50μm未満の厚さを有する支持体を有する。支持体の柔軟性により、本発明によるセパレータも柔軟であり得ることが保証される。このような柔軟なセパレータは多方面に、例えばいわゆる巻回型のセル中で使用可能である。支持体の厚さはセパレータの特性に大きな影響を及ぼし、それというのも、一方では柔軟性が、他方では電解質で含浸されたセパレータの面積抵抗が、支持体の厚さに依存するためである
従って、有利に、本発明によるセパレータは30μm未満、特に有利に20μm未満の厚さを有する支持体を有する。特にリチウムイオンバッテリーの場合に、バッテリーの十分に高い性能を達成するために、本発明によるセパレータが、有利に50%より高い多孔率、有利に50〜97%の多孔率、特に有利に60〜90%の多孔率、極めて特に有利に70〜90%の多孔率を有する支持体を有する場合が有利であることが判明した。多孔率は、この場合に、不織布の体積(100%)−不織布の繊維の体積として定義され、つまり材料が充填されていない不織布の体積の割合として定義される。不織布の体積は、この場合に、不織布の寸法から計算することができる。繊維の体積は、観察された不織布の測定された重量と、繊維、特にポリマー繊維の密度とから得られる。同様に、支持体が、細孔の少なくとも50%が75〜150μmの細孔半径を有する細孔半径分布を有する場合が有利である。
【0026】
多孔質支持体は、有利に製織されたか又は製織されていないポリマー繊維又はガラス繊維を有する。特に有利に、支持体はガラス−又はポリマー織物又は−不織物を有するか、又はそのような織物又は不織物である。ポリマー繊維として、支持体は有利にポリマーの非導電性の繊維を有し、この繊維は、有利にポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)及び/又はポリオレフィン(PO)、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)又はこのようなポリオレフィンの混合物から選択される。この支持体のポリマー繊維は、有利に0.1〜10μm、特に有利に1〜5μmの直径を有する。特に有利な柔軟な不織布は、20g/m未満、有利に5〜10g/mの面積重量を有する。このようにして、支持体の特にわずかな厚さ及び高い柔軟性が保証される。
【0027】
特に有利に、本発明によるセパレータは、支持体として、30μm未満の厚さ、有利に10〜20μmの厚さを有するポリマー不織布を有する。本発明によるセパレータにおいて使用するために特に重要なのは、不織布中でのできる限り均一な細孔半径分布である。不織布中でのできる限り均一な細孔半径分布は、所定のサイズの最適に調整された酸化物粒子との関連で、本発明によるセパレータの最適化された多孔率をもたらす。
【0028】
本発明によるセパレータは支持体の上及び中に多孔質の電気絶縁性の無機被覆を有し、前記の無機被覆は0.1〜10μm、有利に0.5〜5μmの平均粒径を有する元素Al、Si及び/又はZrの酸化物粒子を有する。特に有利に、このセパレータは支持体の上及び中に存在する多孔質無機被覆を有し、前記の被覆は、0.1〜10μm、極めて特に有利に0.5〜5μmの平均粒径を有する酸化アルミニウム粒子を有し、前記の粒子は金属Zr又はSiの酸化物と接着されている。この無機被覆が多孔質支持体の上及び中に存在することによって、本発明によるセパレータの機械特性は明らかに改善される。このようにセパレータの致命的な機能停止を引き起こしかねない支持体からの無機被覆の剥離を回避することができる。
【0029】
本発明によるセパレータは、有利に100mまでの各半径まで、有利に100m〜50mmの半径まで、極めて特に有利に50mm〜0.5mmの半径まで損傷なしに曲げられる。本発明によるセパレータは、更に少なくとも1N/cm、有利に少なくとも3N/cm、極めて特に有利に6N/cmより大きい引裂強さを有することができることを特徴とする。本発明によるセパレータの高い引裂強さ及び良好な屈曲性は、バッテリーの充電及び放電の際に生じる電極の形状の変化が、セパレータを損傷することなしに、セパレータによって引き受けられるという利点を有する。この屈曲性は、更に、このセパレータを用いて市販の規格化された巻回型のセルを生産できるという利点を有する。このセルの場合に、電極/セパレータ−層は規格化されたサイズで、相互に渦巻状に巻き取られ、接続される。
【0030】
本発明による無機層上に存在する遮断層は、例えば天然又は人工のロウ、(低融点)ポリマー、例えば特別なポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレン又はポリマー混合物又は混合物から成っていてよく、その際、この遮断層の材料は、この遮断層が所望の遮断温度で溶融し、かつセパレータの細孔を閉塞することで、更なるイオン流の大部分が抑制されるように選択される。遮断層のための有利な材料は、180℃未満、有利に130℃未満の融点を有する材料である。特に有利に、本発明によるセパレータは遮断層のための材料として、支持体又はその部材の材料と同じ高さか又は低い、有利に低い溶融温度を有する材料を有する。有利に、支持体の材料と遮断層の材料との間の溶融温度差は少なくとも10Kである。シャットダウンが比較的低い温度で生じる材料を使用することにより、バッテリーを包囲する材料、例えばケーシング又はケーブルの溶融又は発火を十分に回避することができる。特に有利に、本発明によるセパレータはポリエチレン(−ロウ)からなる遮断層を有する。
【0031】
遮断層の厚さは、バッテリーの性能の低下を引き起こしかねないイオン流の減少、ひいてはセパレータの伝導性の低下が回避されることが保証されている限りは原則的に任意である。遮断層の厚さは、厚すぎる層がバッテリー系中の抵抗を不必要に高めない限り重要ではない。確実な遮断を達成するために、遮断層は1〜20μm、有利に5〜10μmの厚さを有するのが有利である。遮断層の多孔率は有利に30〜90%、特に有利に60〜80%である。遮断層の材料と支持体の材料の少なくとも一部とが同一である場合が有利である。付加的な遮断層を有しておらず、かつ、材料の細孔の間に完全な閉塞を防止する無機粒子が存在するためにポリマーの支持体材料のみでは遮断材料としては不十分であるセパレータとは対照的に、遮断層の付加的な材料によって確実な遮断が保証される。
【0032】
有利に、本発明によるセパレータは30〜80%の多孔率を有する。この多孔率はこの場合に連絡可能な細孔、つまり連続細孔に当てはまる。この多孔率はこの場合に公知の水銀多孔度測定法を用いて測定することができるか、又は連続細孔だけが存在することを前提とした場合に、使用した材料の体積及び密度から計算することができる。平均孔径及び多孔率とは、水銀多孔度測定法の公知の方法により、例えばCarlo Erba Instruments社製のPorosimeter 4000を用いて測定することができる平均孔径及び多孔率であると解釈すべきである。水銀多孔度測定法はウォッシュバーン(Washburn)の式に基づく(E. W. Washburn, ”Note on a Method of Determining the Distribution of Pore Sizes in a Porous Material”, Proc. Natl. Acad. Sci., 7, 115-16(1921))。
【0033】
遮断機能を有する本発明によるセパレータは、有利に50μm未満の厚さ、有利に5〜40μmの厚さ、極めて特に有利に20〜35μmの厚さを有する。セパレータの厚さはセパレータの特性に大きな影響を及ぼし、それというのも、一方では柔軟性が、他方では電解質で含浸されたセパレータの面積抵抗が、セパレータの厚さに依存するためである。わずかな厚さにより、電解質との適用でセパレータの特に低いイオン抵抗が達成される。このセパレータ自体は、当然のことながら極めて高い電気抵抗を有しており、それというのもセパレータ自体は絶縁特性を有していなければならないためである。更に、より薄いセパレータはバッテリースタック中での高められた充填密度を可能にするため、同じ体積でより大きなエネルギー量を蓄えることができる。
【0034】
遮断機能を有する本発明によるセパレータは、有利に、セパレータの多孔質無機層上に、支持体材料の溶融温度以下であり、かつ無機層の溶融温度よりも低い、定義された所望の溶融温度を有する材料から成る多孔質平面構造物を多孔質層(遮断層)として施与及び固定することを特徴とする、遮断機能を有するセパレータの本発明による製造法により製造される。しかしながら原則的に、本発明によるセパレータの製造のための出発材料として、多孔質支持体上に無機層を有する全てのセパレータを使用することができる。
【0035】
特別なセパレータもしくは本発明による方法でセパレータとして使用することができる膜の製造は、原則としてWO99/15262から公知である。しかしながら、該刊行物に記載された導電性使用物質及び柔軟な支持体、例えば特殊鋼の使用によって、本発明によるセパレータの製造のためには使用が全く不可能であるか又は極めて限定的に使用可能であるに過ぎないセパレータが得られてしまいかねない。下記の方法により製造されたセパレータの使用が、本発明によるセパレータの製造法において特に有利であることが判明した。
【0036】
本発明による有利なセパレータは、無機の非導電性粒子を有する懸濁液を多孔質の非導電性支持体上に施与し、引き続き懸濁液を硬化させ、多孔質支持体の上及び中に無機被覆を形成することにより得られる。
【0037】
懸濁液は例えば印刷、圧縮、圧入、ローラ塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、浸漬塗布、吹き付け塗布又は流延塗布により支持体の上に施与することができる。
【0038】
使用される支持体は有利に30μm未満の厚さ、有利に20μm未満の厚さ、特に有利に10〜20μmの厚さを有する。特に有利に、支持体として、本発明によるセパレータの説明の際に記載された支持体が使用される。従って、使用される多孔質支持体は、有利に製織されたか又は製織されていないポリマー繊維、ガラス繊維又はセラミック繊維を有する。特に有利に、支持体はガラス−又はポリマー織物又は−不織物を有するか、又はそのような織物又は不織物である。
【0039】
有利に、使用される支持体は、100℃を上回る軟化温度及び110℃を上回る溶融温度を有するポリマー繊維を有する。ポリマー繊維が0.1〜10μm、有利に1〜5μmの直径を有する場合が有利である。
【0040】
被覆の製造のために使用される懸濁液は、アルミニウム、ケイ素及び/又はジルコニウムの少なくとも1種の酸化物と、元素Al、Zr及び/又はSiの少なくとも1種のゾルを有し、少なくとも1種の酸化物の粒子を少なくとも1種の前記ゾル中に懸濁させることにより製造される。使用される粒子は有利に0.1〜20μmの平均粒度を有し、本発明によるセパレータの製造のためには有利に0.5〜10μmの平均粒径を有する。
【0041】
ゾルは、元素Zr、Al及び/又はSiの少なくとも1種の化合物の加水分解により得られる。同様に、加水分解すべき化合物を加水分解の前にアルコール又は酸又はこれらの液体の組み合わせに添加することが有利である。加水分解すべき化合物として、有利に元素Zr、Al及び/又はSiの少なくとも1種の硝酸塩、塩化物、炭酸塩又はアルコラート化合物が加水分解される。この加水分解は、有利に水、水蒸気、氷又は酸又はこれらの化合物の組み合わせの存在下に行われる。
【0042】
使用可能なセパレータのための製造法の実施変法において、加水分解すべき化合物の加水分解により粒状のゾルが製造される。この粒状のゾルは、ゾルの中に、加水分解により生じた化合物が粒状に存在することを特徴とする。この粒状のゾルは、上記のように、又はWO99/15262に記載されているように製造することができる。このゾルは、通常では極めて高い含水量を有し、この含水量は有利に50質量%より多い。加水分解すべき化合物を加水分解の前にアルコール又は酸又はこれらの液体の組み合わせに添加することが有利である。この加水分解された化合物は、解膠のために、少なくとも1種の有機酸又は無機酸を用いて、有利に10〜60%の有機酸又は無機酸を用いて、特に有利に、硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸及び硝酸又はこれらの酸の混合物から選択される鉱酸を用いて処理することができる。こうして製造された粒状のゾルは、引き続き懸濁液の製造のために使用することができ、その際、懸濁液の製造は、ポリマーのゾルで前処理されたポリマー繊維不織布上に施与するために有利である。
【0043】
本発明による方法において使用可能なセパレータのための製造法のもう1つの実施変法において、加水分解すべき化合物の加水分解によりポリマーのゾルが製造される。このポリマーのゾルは、ゾルの中に、加水分解により生じた化合物がポリマーで(つまり、大きな空間にわたって鎖状に架橋して)存在することを特徴とする。このポリマーのゾルは、通常では水及び/又は水性の酸を50質量%より少なく、有利に20質量%よりはるかに少なく有する。有利な割合の水及び/又は水性の酸にするために、加水分解すべき化合物を、加水分解可能な化合物の加水分解可能な基に対して0.5〜10倍のモル比、有利に半分のモル比の水、水蒸気又は氷で加水分解するというように加水分解を実施するのが有利である。10倍までの量の水は、極めて緩慢に加水分解する化合物の場合に、例えばテトラエトキシシランの場合に使用することができる。極めて急速に加水分解する化合物、例えばジルコニウムテトラエチラートは、この条件下で既に十分に粒状のゾルを形成することができ、従って、このような化合物の加水分解のために有利に0.5倍の量の水を使用する。有利な量よりも少ない量の水、水蒸気又は氷を用いた加水分解も、同様に良好な結果をもたらす。その際に、半分のモル比の有利な量を、50%よりも多く下回ることも可能であるが、極めて有利であるとは言えず、それというのもこの値を下回る場合には加水分解はもはや完全ではなく、このようなゾルをベースとする被覆は極めて安定とは言えないためである。
【0044】
ゾル中に所望の極めて僅かな割合の水及び/又は酸を有するこのゾルの製造のために、本来の加水分解が行われる前に、加水分解すべき化合物を、有機溶剤、特にエタノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル及び/又はこれらの化合物の混合物中に溶解させる場合が有利である。こうして製造されたゾルは、本発明による懸濁液の製造のために又は前処理工程での定着剤として使用することができる。
【0045】
粒状のゾルも、ポリマーのゾルも、懸濁液の製造方法においてゾルとして使用することができる。前記のように得ることができるゾルの他に、原則として市販のゾル、例えば硝酸ジルコニウムゾル又はシリカゾルを使用することもできる。有利に本発明による方法で使用可能なセパレータを支持体上での懸濁液の施与及び硬化により製造する方法自体は、DE10142622及び類似した形でWO99/15262から公知であるが、全てのパラメータもしくは使用物質を、本発明による方法において使用されるセパレータの製造に転用できるわけではない。WO99/15262に記載されたプロセスは、この形で、特に擦り付けることなしにポリマーの不織布材料に転用することはできず、それというのも、該刊行物に記載された著しい水含有量のゾル系は、しばしば通常の疎水性のポリマー不織布を深部において一貫して湿潤させることができないためであり、それというのもこの著しい水含有量のゾル系は、大抵のポリマー不織布を湿潤させないか又は湿潤させるのが困難であるためである。不織布材料中で湿潤されていない箇所が極めて小さくとも、欠陥(例えば孔又は亀裂)を有するために使用不可能である膜もしくはセパレータが得られてしまいかねないことが確認された。
【0046】
湿潤特性がポリマーに適合されたゾル系もしくは懸濁液が、支持体材料、特に不織布材料を完全に含浸し、ひいては欠陥のない被覆が得られることが見出された。従って、この方法の場合に、ゾルもしくは懸濁液の湿潤特性の適合を行うのが有利である。この適合は、有利にポリマーのゾルもしくはポリマーのゾルからの懸濁液の製造により行われ、その際、このゾルは1種又は数種のアルコール、例えばメタノール、エタノール又はプロパノール、又は1種又は数種のアルコール並びに有利に脂肪族炭化水素を有する混合物を含む。しかしながら、使用された不織布に湿潤特性を適合させるために、ゾルもしくは懸濁液に添加することができる他の溶剤混合物も考慮できる。
【0047】
ゾル系及びそれにより生じた懸濁液の根本的な変更が、ポリマーの不織布材料の上及び中でのセラミック成分の付着特性の明らかな改善をもらすことが確認された。このような良好な付着強度は、粒状のゾル系を用いた場合には通常では得られない。従って、有利に、ポリマー繊維を有する不織布は、ポリマーのゾルをベースとする懸濁液で被覆されるか、又は前の工程で定着剤を有するポリマーのゾルで処理することによって仕上げられる。
【0048】
特に有利に、懸濁液の製造のために、金属酸化物粒子として、有利に0.1〜20μmの平均粒径を有する酸化アルミニウム粒子が使用される。有利に、懸濁された成分(粒子)の質量割合は、使用されたゾルの1〜250倍、特に有利に1〜50倍である。
【0049】
有利な粒径の範囲内の酸化アルミニウム粒子は、例えばMartinswerke社からMZS 3及びMZS 1の商品名及びAlCoA社からCT3000 SG、CL3000 SG、CT1200 SG、CT800 SG及びHVA SGの商品名で販売されている。
【0050】
市販の酸化物粒子の使用は、場合により不十分な結果をもたらすことが判明し、それというのも、頻繁に極めて広い粒径分布が存在するためである。従って、有利に、慣用の方法、例えば空気分級及び湿式分級により分級された金属酸化物粒子が使用される。
【0051】
基材としてのポリマー繊維もしくはポリマー不織布への無機成分の付着性の改善のため、また、後で施与すべき遮断層の付着性の改善のためにも、使用された懸濁液に、定着剤、例えば有機官能性シラン、例えばDegussa−シランGLYMO、MEMO、AMEO、VTEO又はSilfinを添加することが有利である。この場合、定着剤の添加は、ポリマーのゾルをベースとする懸濁液の場合に有利である。定着剤として、特にオクチルシラン、ビニルシラン、アミン官能化シラン及び/又はグリシジル官能化シラン、例えばDegussa社のDynasilaneから選択される化合物を使用することができる。ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)用の特に有利な定着剤は、ビニルシラン、メチルシラン及びオクチルシランであり、その際、メチルシランのみの使用は最適ではなく、ポリアミド及びポリアミンに対してはアミン官能性シランが使用でき、ポリアクリラート、ポリアクリロニトリル及びポリエステルに対してはグリシジル官能化シランが使用できる。他の定着剤も使用可能であるが、それぞれのポリマーに適合させなければならない。この定着剤は、この場合に、この硬化温度が基材として使用されたポリマーの融点又は軟化点を下回りかつその分解温度を下回るように選択されねばならない。定着剤として、特に第1表に記載されたシランを使用することができる。有利に、本発明による懸濁液は、定着剤として機能することができる化合物を25質量%よりはるかに少なく、有利に10質量%よりも少なく有する。定着剤の最適な割合は、定着剤の単分子層で繊維及び/又は粒子が被覆されることから得られる。このために必要な定着剤のグラムで示す量は、使用した酸化物、もしくは繊維の量(g)に材料の比表面積(m−1)を乗じて、引き続き定着剤の比所要量(m−1)で除すことにより得ることができ、その際、この比所要量はしばしば300〜400m−1のオーダーである。
【0052】
以下の第1表は、不織布材料として使用された典型的なポリマーに対する、有機官能性Si化合物をベースとする使用可能な定着剤の例示的な概要を含む。
【0053】
【表1】

【0054】
被覆によって支持体の上及び中に存在する懸濁液は、例えば50〜350℃に加熱することにより硬化されることができる。ポリマーの基材材料を使用する場合にこの最大温度は支持体材料により設定されるため、この温度を相応して適合させねばならない。この方法の実施変法に応じて、支持体の上及び中に存在する懸濁液は、100〜350℃に加熱することにより、極めて特に有利に200〜280℃に加熱することにより硬化される。加熱を150〜350℃の温度で1秒〜60分間行う場合が有利である。特に有利に、硬化のための懸濁液の加熱は110〜300℃の温度で、極めて特に有利に200〜280℃の温度で、有利に0.5〜10分間行われる。複合材料の加熱は、加熱された空気、熱風、赤外線照射又は先行技術による他の加熱方法により行うことができる。
【0055】
本発明による方法で使用可能なセパレータの製造方法は、例えば、支持体を、1m/h〜2m/sの速度で、有利に0.5m/min〜20m/minの速度で、極めて特に有利に1m/min〜5m/minの速度でロールから巻き出し、懸濁液を支持体の上及び中に施与する少なくとも1つの装置、例えばローラ、及び前記の懸濁液を支持体の上及び中で加熱により硬化させることができる少なくとも1つの他の装置、例えば電気加熱炉を通過させて、こうして製造されたセパレータを第二のロールに巻き取ることにより実施することができる。この方法で、セパレータを連続法で製造することができる。前処理工程も、上記のパラメータを維持しながら連続法で実施することができる。
【0056】
そのように製造されたセパレータ又は別の方法で製造されたセパレータは、該セパレータが定着剤を使用せずに製造された場合に、しばしば、極めて親水性の特性を有する無機被覆を有する。親水性多孔質無機層に対しても遮断層の多孔質平面構造物の良好な付着性を達成するために、複数の変法が可能である。
【0057】
本発明による方法の実施変法において、多孔質無機層を遮断層の施与の前に疎水化することが有利であることが判明した。本発明によるセパレータの製造のための出発材料として利用可能な疎水性膜の製造は例えばWO99/62624に記載されている。有利に、多孔質無機層は、例えばDegussa社からDynasilanの商標名で市販されているようなアルキル−、アリール−又はフルオロアルキルシランを用いた処理により疎水化される。この場合に、例えば、特にテキスタイルに対して適用される公知の疎水化方法(D. Knittel ; E. Schollmeyer ; Melliand Textilber. (1998) 79(5), 362-363)を、配合をわずかに変更させて、例えばPCT/EP98/05939に記載された方法により製造された多孔質の物質透過性の複合材料のために適用することもできる。この目的で、物質透過性の複合材料(膜又はセパレータ)は、少なくとも1種の疎水性物質を有する溶液で処理される。溶液は、溶剤として、有利に酸、有利に酢酸、硝酸又は塩酸でpH値1〜3に調節された水、及び/又はアルコール、有利にエタノールを有するのが有利である。溶剤中の、酸で処理された水もしくはアルコールの割合は、それぞれ0〜100体積%であることができる。有利に、溶剤中の水の割合は0〜60体積%であり、アルコールの割合は40〜100体積%である。溶液の製造のために、溶剤中に疎水性物質0.1〜30質量%、有利に1〜10質量%が添加される。疎水性物質として、例えば上記のシランを使用することができる。意外にも、著しく疎水性である化合物、例えばトリエトキシ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−トリデカフルオロオクチル)シランを用いた場合にのみ良好な疎水化が生じるわけでなく、所望の効果を達成するためには、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン又はi−ブチルトリエトキシシランを用いた処理で完全に十分である。この溶液は、溶液中での疎水性物質の均質な分布のために、室温で撹拌され、引き続き多孔質無機層上に施与され、乾燥される。この乾燥は、50〜350℃、有利に150〜200℃の温度で処理することにより促進することができる。
【0058】
本発明による方法のもう1つの実施変法において、遮断層の施与の前に、多孔質無機層を他の定着剤で処理することもできる。第1表に記載された定着剤を用いた処理は前記の方法と同様に行うことができ、つまり多孔質無機層を、定着剤としてシランを有するポリマーのゾルで処理することにより行うことができる。特に、この処理は、セパレータの製造の際に上記したような定着剤を使用して行うことができる。有利に、定着剤は、一連の加水分解されたか又は加水分解されていない官能化アルキルトリアルコキシシランから選択される。極めて特に有利に、MEMO、AMEO及び/又はGLYMOが定着剤として使用される。
【0059】
多孔質平面構造物をベースとする遮断層は、セパレータの多孔質無機層上に、有利に、多孔質平面構造物として織物、編物、フェルト、不織布又は多孔質箔を多孔質無機層上に施与することにより製造される。遮断層の施与は、例えば多孔質無機層上への多孔質平面構造物の積載又は積層により行うことができる。積層は、室温か、又は平面構造物の材料の溶融温度を下回る高められた温度で実施することができる。積層の際、上記の定着剤を積層剤として使用することができる。定着剤は一連の公知のアルキルトリアルコキシシランから選択されていてよい。この定着剤は有利に溶液又はゾルの形で存在し、かつまずポリマー又はセパレータに施与され、そこで硬化されるか、又はシランが積層の直前又は積層の際に導入され、例えばポリマー及びセラミックが接着される。適当なシランは例えばDegussa社から純粋な生成物として又は加水分解されたシランの水溶液として例えばDynasilan 2926、2907又は2781の商品名で入手可能である。
【0060】
(積層剤を使用するか又は使用しない)積層の際、また多孔質平面構造物の積載の際にも、遮断層を多孔質無機層上への施与の後にガラス転移温度を上回る温度に1回加熱することができ、それにより多孔質平面構造物の本来の形状を変化させることなく材料の溶融が達成され、かつ多孔質無機層上に固定される。積層剤又は定着剤を使用した場合、遮断層を多孔質無機層への施与の後に50℃を上回りかつ遮断層の材料の溶融温度を下回る温度に1回加熱することにより加熱し、遮断層を定着剤を介してセパレータと接着させることができる。
【0061】
しかしながらそのような温度処理は、定着剤としてのシランを活性化させるためにも必要であり、それと同時に、そのような温度処理によって遮断層とセラミックセパレータとが接着される。
【0062】
有利な実施態様において、MEMOが定着剤として遮断層とセラミックセパレータとの間で使用される。活性化は有利な波長である200〜300nmでのUV光により行われる。
【0063】
セパレータの多孔質無機層上への遮断層の固定のもう1つの方法は、例えば、遮断層を多孔質無機層の上に施与(積載)し、バッテリーの完成の際に例えば巻回型のセル又は相応してスタックされた角柱形のセルの場合には巻回することにより固定することによって行うことができる。
【0064】
遮断層のための材料として、定義された融点を有する全ての材料を使用することができる。遮断層のための材料は、この場合所望の遮断温度に応じて選択される。大抵のバッテリーの場合には比較的低い遮断温度が望ましいため、材料として、ポリマー、ポリマー混合物、天然及び/又は人工のロウから選択された多孔質平面構造物を遮断層として使用するのが有利である。有利に、前記の多孔質平面構造物は180℃未満、有利に150℃未満、極めて特に有利に130℃未満の融点を有する。特に有利に、遮断層としてポリプロピレン−又はポリエチレン(−ロウ)から成る遮断層が使用される。そのようなポリマーの平面構造物のためのあり得る提供元は、典型的な不織布提供元、例えばFreudenberg社又は有機セパレータの製造元、例えばCelgard社、DSM社、Asahi社又はUbe社である。上記の通り、多孔質の平面構造物を構成する材料と支持体の材料の少なくとも一部とが同一である場合が有利である。
【0065】
多孔質平面構造物及び場合による定着剤の施与並びに場合による加熱は、連続的又はほぼ連続的に実施することができる。柔軟なセパレータを出発材料として使用する場合、該セパレータを再度ロールから巻き出し、被覆装置、乾燥装置及び場合により加熱装置を通過させ、引き続き再度巻き取ることができる。
【0066】
本発明によるセパレータもしくは本発明により製造されたセパレータは、特にバッテリー中のセパレータとして、特にリチウムバッテリー、有利にリチウム高出力バッテリー及び高エネルギーバッテリー中のセパレータとして使用することができる。このようなリチウムバッテリーは、電解質として大きなアニオンを有するリチウム塩を、溶剤としてのカーボナート中に有することができる。適当なリチウム塩は、例えばLiClO、LiBF、LiAsF又はLiPFであり、その際、LiPFが特に有利である。溶剤として適した有機カーボナートは、例えばエチレンカーボナート、プロピレンカーボナート、ジメチルカーボナート、エチルメチルカーボナート又はジエチルカーボナート又はこれらの混合物である。
【0067】
本発明の対象は、更に、本発明による、又は本発明により製造されたセパレータを有するバッテリー、特にリチウムバッテリーである。
【0068】
本発明は以下の実施例により説明されるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0069】
実施例
比較例1:遮断機能なしのS450PET−セパレータ
エタノール160gにまず5質量%のHNO水溶液15g、テトラエトキシシラン10g、メチルトリエトキシシラン2.5g及びDynasilan GLYMO (全てのDynasilann製造元:Degussa AG)7.5gを添加した。まず初めに数時間撹拌したこのゾルの中に、酸化アルミニウムMartoxid MZS-1及びMartoxid MZS-3 (両方の酸化アルミニウムの製造元:Martinswerke)それぞれ125gを懸濁させた。このスラリーを少なくとも更に24時間に亘ってマグネットスターラーで均質化し、その際、溶剤損失を生じさせないために撹拌容器を密閉しなければならなかった。
【0070】
厚さ約22μm、面積重量約15g/mのPET不織布を連続的巻き取り法(ベルト速度約8m/h、T=220℃)でこのスラリーで被覆した。この巻き取り法の際、スラリーをローラを用いてローラ塗布する。不織布を引き続き所定の温度を有する炉(長さ1m)に導通させた。後続の実験において、同様の方法ないし装置を被覆のために使用した。最後に平均孔径450nm及び厚さ約50μmのセパレータが得られた。ガーレー値は約10であった。
【0071】
比較例2:遮断機能なしのハイブリッドセラミックセパレータを有するLi−イオン−バッテリー
比較例1に従って製造されたS450PET−セパレータを、正極材料LiCoO、黒鉛から成る負極材料及びエチレンカーボナート/ジメチルカーボナート中のLiPFから成る電解質から成るLi−イオン−セル中に形成した。このバッテリーの充電特性及び放電特性を試験した。このバッテリーは約250サイクル(C/5での充電/放電)の後に、数パーセント分の容量のわずかな減少を示しただけであった。200回の充電サイクルにおける4.1〜4.2ボルトの充電電圧の上昇も、このバッテリーを損傷しなかった。
【0072】
このバッテリーを外部コンタクトを介して短絡させた。大電流に基づき今や電流が流れ、セパレータの内部抵抗に基づきセルが200℃を超えるまで極めて著しく加熱される。この場合、安全弁が開き、かつセルは噴き出し、即ち電解質がセルから漏出する。しかしながら、セパレータのセラミック特性に基づき、温度が更に上昇して、場合によりセルが爆発しかねないメルトダウンは生じない。最終的にこのセルは完全に放電する。
【0073】
実施例1:遮断機能を有するS450PET/SD−セパレータ(本発明による)
比較例1によるセパレータをAMEO2.5gとGLYMO2.5gとから成るゾル並びにエタノール100g中の5%HNO2gで処理する。なお湿潤したセパレータに、多孔質のPET箔(厚さ10μm、多孔率:60%)を積載し、110℃で乾燥させる。
【0074】
セパレータは約20のガーレー値を有する。130℃で10分間加熱した後、ガーレー値は約500に上昇する。
【0075】
実施例2:遮断機能を有するS450PET/SD−セパレータ(本発明による)
比較例1によるセパレータをMEMO5gから成るゾル並びにエタノール100g中の5%HNO2gで処理した。なお湿潤したセパレータに、多孔質のPET箔(厚さ10μm、多孔率:60%)を積載し、波長254nmのUV光を照射した。
【0076】
セパレータは約20のガーレー値を有する。130℃で10分間加熱した後、ガーレー値は約500に上昇する。
【0077】
実施例3:遮断機能を有するS450PET/SD−セパレータ(本発明による)
比較例1によるセパレータ上に、PE不織布(厚さ:8μm、多孔率:約70%)を高めた圧力で115℃の温度で積層させた。
【0078】
セパレータは約15のガーレー値を有する。130℃で10分間加熱した後、ガーレー値は約500に上昇する。
【0079】
実施例4:実施例1によるセパレータを有するバッテリー
実施例1に従って製造されたS450PET/SD−セパレータを、正極材料LiCoO、黒鉛から成る負極材料及びエチレンカーボナート/ジメチルカーボナート中のLiPFから成る電解質から成るLi−イオン−セル中に形成した。このバッテリーの充電特性及び放電特性を試験した。このバッテリーは約250サイクル(C/5での充電/放電)の後に、数パーセント分の容量のわずかな減少を示しただけであった。200回の充電サイクルにおける4.1〜4.2ボルトの充電電圧の上昇も、このバッテリーを損傷しなかった。
【0080】
このバッテリーを引き続き外部コンタクトを介して短絡させた。大電流に基づき今や電流が流れ、セパレータの内部抵抗に基づきセルが極めて著しく加熱される。しかしながら、130℃の温度で遮断層が溶融し、流れが崩壊する。温度はわずかに更に上昇するに過ぎず、安全弁は開かない。電解質は漏出しない!
BPの測定:
バブルポイント(BP)は、気泡が、完全に湿潤された膜(セパレータ)を通過する際の圧力(バール)である。これは膜内の最大の細孔ないし欠陥箇所のサイズに関する1つの尺度である。BPが小さいほど最大の細孔ないし最大の欠陥(孔)は大きい。
【0081】
バブルポイントの測定のために、膜を直径30mmのサイズにカットした。カットした膜を湿潤液体(脱塩水)中で少なくとも1日放置した。このように準備した膜を、装置内で、支持材料として役立つ約0バールのBP(膜なしでの測定)を有する円形の焼結金属板とシリコーンゴムパッキングとの間に組み込み、その際、装置は膜の上方で上方に向かって開放された容器を有し、この容器は膜と同一の横断面を有しかつ脱塩水で2cm充填されており、かつ、膜の下方には第二の容器を有し、この第二の容器は同様に膜と同一の横断面を有しかつ空気吸込口を備えており、この吸込口を介して圧力空気を減圧バルブを介して容器中に導入することができた。膜はこの場合焼結金属板の下方に組み込まれていたため、焼結金属板は上方の容器の底部を形成し、かつ膜は下方の容器を密閉していた。
引き続き、0.1バールずつ圧力を下方の容器内で高め、その際、各圧力上昇の間は30秒間である。各圧力上昇の後に、上方の容器内の水の表面を約30秒間観察した。水表面上に最初の小さな気泡が発生した際に、BPの圧力が達成され、測定を中断した。
【0082】
ガーレー値の測定
ガーレー値をBPと同一の装置内で測定した。しかしながら、ガーレー値の測定の際には、ガス体積100mlが6.45cmの平面を(ガスの水柱31cmの圧力で)導通するのに必要な時間tを測定した。この時間tがガーレー値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持体と、前記の支持体の上及び中に存在する多孔質の無機の非導電性被覆とを含む、リチウムバッテリーのための遮断機能を有するセパレータにおいて、平均粒径0.5〜10μmの元素Al、Si及び/又はZrの酸化物粒子を有する無機被覆上に、所定の温度で溶融しかつ無機層の細孔を閉塞する材料から成る多孔質遮断層が存在しており、その際、遮断層は多孔質平面構造物により形成され、かつ支持体は製織されたか又は製織されていないポリマー繊維又はガラス繊維を有することを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
遮断層が織物、不織物、フエルト、編物又は多孔質箔により形成されている、請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
支持体が柔軟であり、かつ50μm未満の厚さを有する、請求項1又は2記載のセパレータ。
【請求項4】
支持体がポリマー不織布である、請求項3記載のセパレータ。
【請求項5】
支持体のポリマー繊維が、ポリアクリロニトリル、ポリエステル及び/又はポリアミドの繊維から選択されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のセパレータ。
【請求項6】
遮断層が1〜20μm、有利に5〜10μmの厚さを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のセパレータ。
【請求項7】
遮断層がポリマー、ポリマー混合物、天然ロウ又は人工ロウ又はその混合物から選択された材料から成る、請求項1から6までのいずれか1項記載のセパレータ。
【請求項8】
遮断層が130℃未満の溶融温度を有する材料から成る、請求項1から7までのいずれか1項記載のセパレータ。
【請求項9】
遮断層の材料と支持体の材料の少なくとも一部とが同一である、請求項1から8までのいずれか1項記載のセパレータ。
【請求項10】
遮断機能を有するセパレータの製造法において、セパレータの多孔質無機層上に、支持体材料の溶融温度以下であり、かつ無機層の溶融温度よりも低い、定義された所望の溶融温度を有する材料から成る多孔質平面構造物を多孔質層(遮断層)として施与及び固定することを特徴とする、遮断機能を有するセパレータの製造法。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項記載のセパレータを製造する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
多孔質無機層を遮断層の施与の前に疎水化する、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
多孔質無機層を遮断層の施与の前に定着剤で処理する、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
多孔質無機層を、後で施与すべき遮断層のための定着剤としてシランを有するポリマーのゾルを使用することにより製造する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
定着剤を一連の加水分解されたか又は加水分解されていない官能化アルキルトリアルコキシシランから選択する、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
遮断層を、織物、編物、フェルト、不織布又は多孔質箔の施与により多孔質無機層上に製造する、請求項10から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
遮断層を多孔質無機層上への施与の後に50℃を上回りかつ遮断層の材料の溶融温度を下回る温度に1回加熱することにより加熱し、遮断層を定着剤を介してセパレータと接着させる、請求項10から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
遮断層を多孔質無機層上への施与の後にガラス転移温度を上回る温度に1回加熱し、本来の形状を変化させることなく材料の溶融を達成し、固定させる、請求項10から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
遮断層を積層により多孔質無機層上に施与する、請求項10から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
遮断層を多孔質無機層上に施与し、バッテリーの完成の際に巻回することにより固定する、請求項10から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
遮断層のための材料として、ポリマー、ポリマー混合物、天然及び/又は人工のロウから選択され、かつ180℃未満の溶融温度を有するものを使用する、請求項10から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
遮断材料としてポリエチレン(ロウ)を使用する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
リチウムバッテリー中のセパレータとしての、請求項1から9までのいずれか1項記載のセパレータの使用。
【請求項24】
請求項1から9までのいずれか1項記載のセパレータを有するバッテリー。

【公表番号】特表2007−509464(P2007−509464A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534734(P2006−534734)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051846
【国際公開番号】WO2005/038960
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】