説明

遮水壁

【課題】地盤中の汚染土壌を平面格子状壁で封じ込めても、動水勾配を小さくさせて遮水性能を向上させる。
【解決手段】汚染土壌12を構成する遮水壁100の平面格子状壁110の囲壁112で囲い、更に、囲壁112の内側を平面視において格子状に第一仕切壁114が仕切ることで、汚染土壌12に対する高い封じ込め性能が発揮される。平面格子状壁110の囲壁112の外側に外周壁150が設けられている。よって、外周壁150の外側の地盤10の地下水に水位差(高水位と低水位)があったとしても、囲壁112と外周壁150との間の地盤10の地下水の水位差が小さくなる。つまり、外周壁150の内側と囲壁112の内側との水位差が小さくなる。したがって、地盤10の汚染土壌12を平面格子状壁で封じ込めても、周囲の地盤10との動水勾配が小さくなるので、遮水性能が向上し、この結果、汚染土壌の高い封じ込め性能を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水壁に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌汚染対策法の施行(2003年2月)以来、汚染土壌対策技術の開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、土着の微生物の働きを向上させることにより、原位置で汚染土壌を浄化できる汚染土壌の生物化学的浄化方法が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、特許文献2には、汚染土壌を含む敷地内に、底部遮水層に到達して汚染物質の拡散を防止する遮水壁を、平面視において格子状(平面格子状)に形成して汚染土壌を細かく分割した汚染土壌の封じ込め構造が提案されている(特許文献2を参照)。
【0005】
このように遮水壁を平面格子状とすることで、地盤の地表面付近に滞水する自由水に流れが生じている状況下であっても、複数の壁により高い封じ込め性能が発揮される。
【0006】
しかし、平面視において格子状に仕切られた各領域で水位差が生じ、これにより動水勾配が大きくなり遮水性能が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−71430号公報
【特許文献2】特開2007−330833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記を考慮し、地盤中の汚染土壌を平面格子状壁で封じ込めても、動水勾配を小さくさせて遮水性能を向上させることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、地盤に構築され、地盤中の汚染土壌を囲む囲壁と、前記囲壁の内側の地盤を平面視において格子状に仕切る第一仕切壁と、を有する平面格子状壁と、前記平面格子状壁の前記囲壁の外側に間隔をあけて地盤に構築され、前記囲壁の周囲を囲む外周壁と、を備える。
【0010】
請求項1の発明では、汚染土壌を囲壁で囲い、更に、囲壁の内側を平面視において格子状に第一仕切壁が仕切ることで、高い封じ込め性能が発揮される。
【0011】
また、囲壁の外側に外周壁が設けられている。これにより、囲壁と外周壁との間は地盤中の地下水の水位が一定となるように挙動する。よって、外周壁の外側の地盤の地下水に水位差(高水位と低水位)があったとしても、囲壁と外周壁との間の地盤の地下水の水位差が小さくなる。つまり、外周壁の内側と囲壁の内側との水位差が小さくなる。
【0012】
ここで、地下水の流速は、ダルシー則(v=k×i)に従う(v:流速(m/s)、k:透水係数(m/s)、i:動水勾配(無次元量))。よって、遮水壁の透水係数が一定であると仮定した場合、地下水位の差が小さいと、動水勾配が小さくなるため、地下水の流速が小さくなる。
【0013】
上述したように、外周壁の内側と囲壁の内側との水位差が小さい、つまり、動水勾配が小さくなるので、囲壁の内側から外側(外周壁への内側)に流れる(透水する)地下水の流速が遅くなる、つまり、囲壁の内側から外側(外周壁への内側)への透水が少なくなる。
【0014】
したがって、地盤中の汚染土壌を平面格子状壁で封じ込めても、動水勾配が小さくなるので、遮水性能が向上し、この結果、汚染土壌の高い封じ込め性能が発揮される。
【0015】
請求項2の発明は、前記外周壁の外側の地盤における高水位側の地盤から低水位側の地盤に流れ出る流路が、前記外周壁と前記囲壁との間の地盤に形成されるように、前記外周壁と前記囲壁とに接合され前記外周壁と前記囲壁との間の地盤を仕切る第二仕切壁を有する。
【0016】
請求項2の発明では、外周壁と囲壁とに第二仕切壁が接合され地盤が仕切られているので、遮水壁全体の強度が向上する。また、高水位側の地盤から第一の壁面を透水した地下水が、外周壁と囲壁との間を流れ第二の壁面を透水して低水位側の地盤に流れ出るので、囲壁と外周壁との間の地盤の地下水の水位差が小さくなり、この結果、外周壁の内側と囲壁の内側との水位差が小さくなる、つまり、動水勾配が小さくなる。したがって、遮水性能が向上しつつ、遮水壁全体の強度が向上する。
【0017】
請求項3の発明は、前記外周壁と前記囲壁との間に、上下方向の少なくとも一部に地下水が通過することが可能な部位が形成された補強壁が、前記外周壁及び前記囲壁の少なくも一方に接合されている。
【0018】
請求項3の発明では、外周壁及び囲壁との少なくとも一方に補強壁が接合され構築されているので、遮水壁全体の強度が向上する。また、補強壁には、上下方向の少なくとも一部に地下水が通過することが可能な部位が形成されている。よって、囲壁と外周壁との間の地盤中の地下水の水位差が小さくなり、この結果、外周壁の内側と囲壁の内側との水位差が小さくなる、つまり、動水勾配が小さくなる。したがって、遮水性能が向上しつつ、遮水壁全体の強度が向上する。
【0019】
なお、明細書において、「遮水壁」は、完全に止水しない、つまり透水係数が0でない壁である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、地盤中の汚染土壌を平面格子状壁で封じ込めても、動水勾配を小さくすることができ、その結果、遮水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態に係る遮水壁を示す斜視図である。
【図2】(A)は本発明の第一実施形態に係る遮水壁を示す平面図であり、(B)は(A)の2B−2B線に沿った垂直断面図である。
【図3】(A)は本発明が適用された遮水モデルを示す平面図であり、(B)は(A)の遮水壁モデルの地下水の水位を示す解析結果の図である。
【図4】(A)は本発明が適用されていな比較例の遮水モデルを示す平面図であり、(B)は(A)の遮水壁モデルの地下水の水位を示す解析結果の図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る遮水壁を示す平面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る遮水壁を示す、(A)は断面斜視図であり、(B)は平面図であり、(C)は(B)の6C−6C線に沿った垂直断面図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る遮水壁を示す、(A)は断面斜視図であり、(B)は平面図であり、(C)は(B)の7C−7C線に沿った垂直断面図である。
【図8】(A)は本発明の第五実施形態に係る遮水壁を示す平面図であり、(B)は(A)の8B−8B線に沿った垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一実施形態>
図1〜図4を用いて、本発明の第一実施形態に係る遮水壁について説明する。
【0023】
[遮水壁の構造]
図1と図2に示すように、第一実施形態の遮水壁100は、地中に汚染土壌12(図2参照)がある地盤10(図1、図2(B))の中に構築されている。遮水壁100は、平面格子状壁110と外周壁150とを有している。
【0024】
遮水壁100を構成する平面格子状壁110は、囲壁112と第一仕切壁114とを有している。囲壁112は、地盤10の中の汚染土壌12(図2参照)の周囲を囲むように構築されている。第一仕切壁114は、囲壁112の内側の地盤10を平面視において格子状に仕切るように構築されている。言い換えると、囲壁112の内側は第一仕切壁114によって平面視において格子状に区画されている。
【0025】
なお、図2(B)において、第一仕切壁114の壁面を判りやすくするため、壁面をドット(網点)で図示している。また、以降の他の実施形態における垂直断面図も同様に壁面をドット(網点)で図示している。
【0026】
遮水壁100を構成する外周壁150は、平面格子状壁110の囲壁112の外側に間隔をあけて、囲壁112の周囲を囲むように構築されている。
【0027】
別の観点から説明すると、遮水壁100は、外周壁150と囲壁112との間に第一仕切壁114がなく、遮水壁100の最外周部分が格子状に区画されていない構成となっている。
【0028】
なお、以降の説明で「内側」及び「外側」と記載する場合は、平面視における遮水壁100の中心部に向かう方向を「内側」とし、中心部から外側に向かう方向を「外側」とする。
【0029】
本実施形態においては、遮水壁100は、深層混合処理機を用いて、貫入及び引抜きする際に、スラリー状のセメント系固化材を吐出しながら土と撹拌混合させて形成する「深層混合処理工法(DCM工法(登録商標):Deep Cement Mixing Method」によって構築されている。しかし、遮水壁100の構築方法は、特に限定されない。例えば、シートパイルやRC連壁等で遮水壁100を構築してもよい。
【0030】
本実施形態では、図2(B)に示すように、地盤10は、液状化する可能性のある軟弱な液状化層14と、この液状化層14の下層の底部遮水層16と、を有している。そして、本実施形態の遮水壁100の深さは、液状化層14よりも下の底部遮水層16にまで到達するように構築されている。
【0031】
また、図1に示すように、本実施形態では、遮水壁100の上に、構造物50が構築されている。
【0032】
よって、遮水壁100は、後述する遮水機能に加え、従来の平面格子状壁と同様の地盤改良体としての機能と、基礎としての機能と、を有する。
【0033】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0034】
図2に示すように、汚染土壌12を構成する遮水壁100の平面格子状壁110の囲壁112で囲い、更に、囲壁112の内側を平面視において格子状に第一仕切壁114が仕切ることで、汚染土壌12に対する高い封じ込め性能が発揮される。
【0035】
また、平面格子状壁110の囲壁112の外側に外周壁150が設けられている。これにより、囲壁112と外周壁150との間の地盤10Bは、地下水の水位が一定となるように挙動する。よって、例えば、図2における外周壁150の左外側の地盤10Aと右外側の地盤Dの地下水に水位差(高水位と低水位)があったとしても、囲壁112と外周壁150との間の地盤10Cと地盤10Bの地下水の水位差が小さくなる。
【0036】
ここで、地下水の流速は、ダルシー則(v=k×i)に従う(v:流速(m/s)、k:透水係数(m/s)、i:動水勾配(無次元量))。よって、遮水壁100の透水係数が一定であると仮定した場合、地下水位の差が小さいと、動水勾配が小さくなるため、地下水の流速が小さくなる。
【0037】
本実施形態の遮水壁100では、前述したように外周壁150の内側の地盤10Bと囲壁112の内側10Cとの水位差が小さい。よって、動水勾配が小さくなるので、汚染土壌12を封じ封じ込めている囲壁112の地盤10から内側から外側(外周壁150への内側)地盤10Bに流れる(透水する)地下水の流速が遅くなる。つまり、遮水壁100を構成する囲壁112の内側から外側(外周壁150への内側)への透水が少なくなる。
【0038】
したがって、地盤10の汚染土壌12を平面格子状壁で封じ込めても、動水勾配が小さくなるので、遮水性能が向上し、この結果、汚染土壌12の高い封じ込め性能が発揮される。
【0039】
また、前述したように、本実施形態の遮水壁100は、遮水機能(汚染土壌12の封じ込め機能)に加え、基礎としての機能を有する。そして、遮水壁100は、外周壁150と囲壁112との間に第一仕切壁114がなく、遮水壁100の最外周部分が格子状に区画されていない構成となっている。よって、第一仕切壁114が設けられていない分、低コストとなる。
【0040】
なお、本実施形態の遮水壁100では、外周壁150を含む全体を基礎として利用したがこれに限定されない。遮水壁100を構成する平面格子状壁110の上にのみ構造物を構築してもよい。つまり、平面格子状壁110のみを基礎として利用してもよい。
【0041】
[コンピュータシミュレーションによる解析]
つぎに、本発明が適用された遮水壁の遮水性能をコンピュータシミュレーションによる解析を説明する。また、解析は、図3(A)に示す本発明が適用された遮水壁モデル700と、図4(A)に示す本発明が適用されていない比較例としての遮水壁モデル800と、の両方で行った。
【0042】
なお、図3(A)に示す本発明が適用された遮水壁モデル700は、囲壁704の内側は第一仕切壁706で平面視において格子状に仕切られ、囲壁704と外周壁702との間は第一仕切壁706で仕切られていない構造である。また、図4(A)に示す本発明が適用されていない比較例としての遮水壁モデル800は、囲壁804と外周壁802との間も第一仕切壁806で仕切られている、つまり、全体が平面視において格子状に区画されている構造である。
【0043】
解析は熱伝導解析で実績のある要素分割法のプログラムを改良し、非定常2次元浸透解析を行った。上述した遮水壁モデル700、800は、対称性を考慮して1/2の範囲をモデル化した。また、解析範囲は横40m×縦20mとした。なお、図3(A),図4(A)では、下半分のみが図示されているのは、このことを明確にするためである。
【0044】
また、遮水壁モデル700,800の透水係数は1.0×10−7cm/s、地盤の透水係数は1.0×10−4cm/sとした。境界条件として左側境界の自由水位を11.0(=L1、高水位側)とし、右側境界を10.0m(=L2、低水位側)とし、定常解が得られるまで解析を行った。
【0045】
この条件によるコンピュータシミュレーションによる解析結果を、図3(B)及び図4(B)を用いて説明する。
【0046】
まず、図4(A)に示す本発明が適用されていない比較例としての遮水壁モデル800の解析結果について説明する。
【0047】
図4(B)に示すように、図4(A)における遮水壁モデル800の外周壁802の左外側の地盤の地下水の高水位側の水位L1が11.0mであり、外周802の右外側の地盤の地下水の低水位側の水位L2が10.0mである。そして、囲壁802Aの内側の地盤の水位をLB5とし、囲壁804Bと外周壁802Bとの間の水位をLB8とする。
【0048】
囲壁804と外周壁802との間は、第一仕切壁806で仕切られており遮水されているので、外周壁802Aと囲壁804Aとの間の水位LB5と、外周壁802Aと囲壁804Aとの間の水位LB8と、の水位差が大きくなる。よって、囲壁804Bの内側の水位差LB7と水位LB8との水位差S1Bは約0.19mとなった。
【0049】
つぎに、図3(A)に示す本発明が適用された遮水壁モデル700の解析結果について説明する。
【0050】
図3(B)に示すように、図3(A)における遮水壁モデル700の囲壁704と外周壁702との間は仕切られていないので、囲壁704と外周壁702との間は地下水の水位が一定となるように挙動する。よって、外周壁702Aと囲壁704Aとの間の水位LA5と、外周壁702Bと囲壁704Bとの間の水位LA8と、の水位差が小さくなる。よって、解析結果は囲壁704Bの内側の水位差LA7と水位L8との水位差S1Aは約0.05mとなった。
【0051】
このように、本発明が適用されていない比較例としての遮水壁モデル800の場合の水位差S1B=0.19mに対して、本発明が適用された遮水壁モデル700の場合の水位差0.05mとなった。よって、前述したダルシー則により、遮水壁モデル800における汚染土壌を封じ封じ込めている囲壁804Bから外側へ透水する流速よりも、本発明が適用された遮水壁モデル700における汚染土壌を封じ封じ込めている囲壁704Bから外側に透水する流速の方が遅くなることが判る。つまり、遮水壁モデル800よりも遮水壁モデル700の方が地下水の透水が少ないことが判る。
【0052】
ここで、図3(B)及び図4(B)に示すように、遮水壁モデル700、800の外周壁702B,802Bの内側の水位L8A、L8Bと、その外側の水位L2と、の水位差S2A,S2Bは、本実施形態の遮水壁モデル700の水位差S2Aの方が大きくなっている。つまり、本発明が適用されていない遮水壁モデル800の外周壁802Bから外側へ透水する流速よりも、本発明が適用された遮水壁モデル700の外周壁702Bから外側に透水する流速の方が速い。
【0053】
また、同様に、本発明が適用されていない遮水壁モデル800の外周壁802Aの外側から内側との水位差よりも、本発明が適用された遮水壁モデル700の外周壁702Aの外側から内側に透水する水位差が大きい、つまり、本発明が適用された遮水壁モデル700の外周壁702Bの外側から内側に透水する流速の方が速い。
【0054】
しかし、前述したように遮水壁モデル700の外周壁702Bの内側への流速が遅く、汚染土壌からの地下水の透水が少ない。よって、本発明が適用された遮水壁モデル700の外周壁702を透水しても、汚染土壌の地下水の外周壁702Bから外側への透水は少なくなる。
【0055】
このように、比較例としての遮水壁モデル800は、平面視において格子状に仕切られた各領域で水位差が大きくなり、これにより動水勾配が大きくなり遮水性能が低下する。これに対して本発明が適用された遮水壁モデル700では、水位差が小さくなり、これにより動水勾配が小さくなり遮水性能が向上する。
【0056】
別の観点から説明すると、図3(A)に示す矢印N1〜N5に示すように、外周壁702の外側の地盤における高水位側の地盤から低水位側の地盤に流れ出る流路が形成される、そして、この流路を汚染されていない地下水が高水位側から低水位側へと流れるが、汚染土壌の地下水の外周壁702Bから外側への透水は少なくなる。
【0057】
<第二実施形態>
つぎに、本発明の第二実施形態に係る遮水壁について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0058】
[遮水壁の構造]
図5に示すように、第二実施形態の遮水壁200は、平面格子状壁110と外周壁150とを有している。また、図5における遮水壁200の外周壁150の左外側の地盤が高水位側とされ、右外側の地盤が低水側とされている。
【0059】
遮水壁200の外周壁150における高水位側に地盤に面する壁150Aと囲壁112Aとに第二仕切壁214Aが接合され地盤が仕切られている。また、遮水壁200の外周壁150における低水位側に地盤に面する壁150Bと囲壁112Bとに第二仕切壁214Bが接合され地盤が仕切られている。
【0060】
よって、外周壁150の外側における高水位側の地盤から低水位側の地盤に流れ出る二つの流路MA,MBが、外周壁150と囲壁112との間の地盤に形成される(図3(A)も参照)。
【0061】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0062】
図5に示すように、遮水壁200の外周壁150の外側における高水位側の地盤から低水位側の地盤に流れ出る二つの流路MA,MBが、外周壁150と囲壁112との間の地盤に形成される。よって、囲壁112と外周壁150との間の地盤の地下水の水位差が小さくなる。つまり、外周壁150の内側と囲壁112の内側との水位差が小さくなる。
【0063】
したがって、地盤10の汚染土壌12を平面格子状壁110で封じ込めても、動水勾配が小さくなるので、遮水性能が向上し、この結果、汚染土壌の高い封じ込め性能が発揮される。
【0064】
また、遮水壁200は、外周壁150と囲壁112との間に第二仕切壁214A,214Bが設けられているので、遮水壁200全体の強度が向上する。よって、基礎としての使用する場合に好適である。
【0065】
なお、第二仕切壁214Aと第二仕切壁214Bとのいずれか一方のみが、設けられていてもよい。また、第二仕切壁の配置位置は任意である。
【0066】
要は外周壁150の外側における高水位側の地盤から低水位側の地盤に流れ出る流路が、外周壁150と囲壁112との間の地盤に形成されるように、第二仕切壁が設けられていればよい。
【0067】
<第三実施形態>
つぎに、本発明の第三実施形態に係る遮水壁について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0068】
[遮水壁の構造]
図6に示すように、第二実施形態の遮水壁300は、平面格子状壁110と外周壁150とを有している。
【0069】
遮水壁300の外周壁150と囲壁112とに、補強壁314が接合されている。つまり、遮水壁300全体が第一仕切壁114と補強壁314とで平面視において格子状に仕切られている。そして、各補強壁314には、地下水が通過することが可能な開口部310が形成されている。
【0070】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0071】
図6に示すように、遮水壁300の平面格子状壁110の囲壁112と外周壁150との間が補強壁314で仕切られているが、補強壁314の開口部310を地下水が通過するので、囲壁112と外周壁150との間の地盤は、地下水の水位が一定となるように挙動する。よって、外周壁150の外側の地盤の地下水に水位差(高水位と低水位)があったとしても、囲壁112と外周壁150との間の地盤の地下水の水位差が小さくなる。つまり、外周壁150の内側と囲壁112の内側との水位差が小さくなる。
【0072】
したがって、地盤10の汚染土壌12を平面格子状壁110で封じ込めても、動水勾配が小さくなるので、遮水性能が向上し、この結果、汚染土壌12の高い封じ込め性能が発揮される。
【0073】
また、遮水壁300は、外周壁150と囲壁112との間に補強壁314が設けられているので、液状化を抑制する効果(地盤改良の効果)が向上する。また、遮水壁300全体の強度が向上するので、遮水壁300を基礎として使用する場合に好適である。
【0074】
なお、補強壁314の開口部310の深さ、大きさ、及び形状等は任意である。また、複数箇所に開口部が形成されていてもよい。また、矩形状の開口部でなく、例えば、連通孔や連通管などで地下水が通過するように構成されていてもよい。
【0075】
<第四実施形態>
つぎに、本発明の第四実施形態に係る遮水壁について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0076】
[遮水壁の構造]
図7に示すように、第四実施形態の遮水壁400は、平面格子状壁110と外周壁150とを有している。
【0077】
遮水壁400の囲壁112の外面に補強壁414が設けられ、外周壁150の内面に補強壁416が設けられている。そして、各補強壁414、416と、囲壁112及び外周壁150と、の間に地下水が通過することが可能な隙間410が形成されている。
【0078】
別の言い方をすると、遮水壁400の最外周部がバットレス形状となった構造である。
【0079】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0080】
図7に示すように、遮水壁400の平面格子状壁110の囲壁112と外周壁150とのに設けられた補強壁414、416が形成する隙間410を、地下水が通過するので、囲壁112と外周壁150との間の地盤の地下水の水位が一定となるように挙動する。よって、外周壁150の外側の地盤10の地下水に水位差(高水位と低水位)があったとしても、囲壁112と外周壁150との間の地盤の地下水の水位差が小さくなる。つまり、外周壁150の内側と囲壁112の内側との水位差が小さくなる。
【0081】
したがって、地盤10の汚染土壌12を平面格子状壁110で封じ込めても、動水勾配が小さくなるので、遮水性能が向上し、この結果、汚染土壌12の高い封じ込め性能が発揮される。
【0082】
また、遮水壁400は、外周壁150と囲壁112とに補強壁414,416が設けられているので、遮水壁400全体の強度が向上する。よって、遮水壁400を基礎として使用する場合に更に好適である。
【0083】
なお、補強壁414、416の配置や隙間410の大きさや形状は任意である。
【0084】
<第五実施形態>
つぎに、本発明の第五実施形態に係る遮水壁について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0085】
[遮水壁の構造]
図8に示すように、第四実施形態の遮水壁500は、第一実施形態と同様の遮水壁100と、外側格子状壁510と、を有している。なお、第一実施形態と同様に、遮水壁100の平面格子状壁110の囲壁112は、汚染土壌12の周囲を囲むように構築されている。
【0086】
外側格子状壁510は、外側壁512と第三仕切壁514とを有している。外側壁512は、遮水壁100の外周壁150の外側を囲むように構築されている。第三仕切壁514は、遮水壁100の外周壁150と外側壁512とに接合され、これらの間の地盤を仕切るように構築されている。
【0087】
別の観点から説明すると、遮水壁500は、一部の周が格子状に区画されていない構成となっている。
【0088】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0089】
図8に示すように、第一実施形態と同様に、遮水壁100を構成する外周壁150の内側と囲壁112の内側との水位差が小さい、つまり、動水勾配が小さくなるので、汚染土壌12を封じ封じ込めている囲壁112の内側から外側(外周壁150への内側)への流速が遅くなる、つまり、遮水壁100を構成する囲壁112の内側から外側(外周壁150への内側)への透水が少なくなる。よって、遮水壁500の外側壁512の外側への透水も少なくなる。
【0090】
したがって、地盤10の汚染土壌12を平面格子状壁110で封じ込めても、動水勾配が小さくなるので、遮水性能が向上し、この結果、汚染土壌12の高い封じ込め性能が発揮される。
【0091】
なお、遮水壁500の更に外側に外側格子状壁(外側壁や第三仕切壁)を設けてもよい。或いは、遮水壁500の外側に、第一実施形態と同様の外周壁を設け最外周にも格子状に区画されていない周を設けてもよい。つまり、格子状に区画されていない周が複数周あってもよい。
【0092】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0093】
例えば、上記のいずれの実施形態でも、遮水壁は平面視正方形状であったが、これに限定されない。任意の形状であってよい。
【0094】
また、上記の複数の実施形態及び変形例は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【0095】
例えば、第五実施形態の遮水壁500は、第一実施形態の遮水壁100の外側に外側格子状壁510を設けたがこれに限定されない。第二実施形態の遮水壁200、第三実施形態の遮水壁300、又は第四実施形態の遮水壁400の外側に、外側格子状壁510を設けてもよい。
【0096】
また、例えば、第二実施形態の第二仕切壁214、第三実施形態の補強壁314、第四実施形態の補強壁414,416を、適宜組み合わせてもよい。
【0097】
また、前述したように、上記実施形態の遮水壁は、遮水機能(汚染土壌の封じ込め機能)に加え、基礎としての機能を有したが、これに限定されない。遮水機能(汚染土壌の封じ込め機能)のみを目的とした遮水壁であってもよい。
【0098】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0099】
10 地盤
12 汚染土壌
100 遮水壁
110 平面格子状壁
112 囲壁
114 第一仕切壁
150 外周壁
200 遮水壁
214 第二仕切壁
300 遮水壁
310 開口部(地下水が通過することが可能な部位)
314 補強壁
400 遮水壁
410 隙間(地下水が通過することが可能な部位)
414 補強壁
416 補強壁
500 遮水壁
MA 流路
MB 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に構築され、地盤中の汚染土壌を囲む囲壁と、前記囲壁の内側の地盤を平面視において格子状に仕切る第一仕切壁と、を有する平面格子状壁と、
前記平面格子状壁の前記囲壁の外側に間隔をあけて地盤に構築され、前記囲壁の周囲を囲む外周壁と、
を備える遮水壁。
【請求項2】
前記外周壁の外側の地盤における高水位側の地盤から低水位側の地盤に流れ出る流路が、前記外周壁と前記囲壁との間の地盤に形成されるように、前記外周壁と前記囲壁とに接合され前記外周壁と前記囲壁との間の地盤を仕切る第二仕切壁を有する請求項1に記載の遮水壁。
【請求項3】
前記外周壁と前記囲壁との間に、上下方向の少なくとも一部に地下水が通過することが可能な部位が形成された補強壁が、前記外周壁及び前記囲壁の少なくも一方に接合されている請求項1又は請求項2に記載の遮水壁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−232246(P2012−232246A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101417(P2011−101417)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】