説明

遷移金属錯体

式(I)


[式中、R〜R、R〜R、R12およびR14は、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、互いに隣接した、R〜RおよびR〜Rの任意の2つを一緒にして環を形成することができ、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R10は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R11は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R12またはRと一緒になって環を形成し、R15は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R14またはRと一緒になって環を形成し、ただし、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択されるか、R13はR12またはR14と一緒になって環を形成し、またはR12はR11と一緒になって環を形成し、R14はR15と一緒になって環を形成し、R12、R13およびR14の少なくとも1つは置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシであり;Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Rh、Ru、Mo、Nb、Zr、Hf、Ta、W、Re、Os、IrまたはPtから特に選択された遷移金属原子であり;nは遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しく;Xはハロゲン化物、置換されていてもよいヒドロカルビル、アルコキシド、アミドまたは水素化物である。]を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む、ビス−アリールイミンピリジンMX錯体である遷移金属錯体。本発明の遷移金属錯体、非配位アニオンを有するこれらの錯体およびこのような錯体を含有する触媒系は、無極性媒質および化学的に不活性な無極性溶媒、特に芳香族炭化水素溶媒中で良好な溶解度を有する。この触媒系を、様々な(コ)オリゴマー化、重合および二量体化反応のために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属錯体およびこれから調製された触媒系が、無極性媒質に高度に溶解する、ある特定のビス−アリールイミンピリジン配位子をベースとする遷移金属錯体およびこれから調製された触媒系、およびこのような遷移金属錯体の、オレフィンの二量体化のためのおよびオリゴマー化のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビス−アリールイミンピリジン配位子をベースとするいくつかの遷移金属錯体、特にエチレンおよび/またはオレフィンの(共)重合化反応および(コ)オリゴマー化反応を触媒するための触媒系において使用するもの、およびα−オレフィン二量体化反応を触媒するための触媒系において使用するものは、当技術分野において報告されている。
【0003】
この点に関して、多くの公開された特許出願には、1−オレフィン、特にエチレンの重合化またはオリゴマー化のための触媒系が記載されており、それらは窒素含有遷移金属化合物を含有している。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる以下の特許:WO92/12162、WO96/27439、WO99/12981、WO00/50470、WO98/27214、WO99/02472、WO99/50273、WO99/51550、EP−A−1127987、WO02/12151、WO02/06192、WO99/12981、WO00/24788、WO00/08034、WO00/15646、WO00/20427、WO01/58874およびWO03/000628を参照されたい。
【0004】
特に、これらのすべてが参照により全体が本明細書に組み込まれる、最近公表されたシェル(Shell)社出願の、WO01/58874、WO02/00339、WO02/28805およびWO03/011876には、ビス−イミンピリジン鉄化合物をベースとする新規な種類の触媒が開示されており、これらは、オレフィン、特にエチレンのオリゴマー化において高度に活性であり、シュルツ−フローリ(Schulz−Flory)分布を有するC〜C30の範囲の直鎖αオレフィンを生成し、前記直鎖αオレフィンは高純度である。
【0005】
同時係属のPCT特許出願PCT/EP03/10708(現在は、WO2004/037415として公表されている)には、エチレンを直鎖α−オレフィンにオリゴマー化するための触媒系が記載されており、この触媒系は:
a)1種または複数のビス−アリールイミンピリジン鉄またはコバルト触媒;
b)アルミニウムアルキル、アルミノキサン、およびこれらの混合物から選択された第1の共触媒化合物;および
c)式ZnR’[式中、同一であっても異なっていてもよいそれぞれのR’は、水素、置換されていてもよいC〜C20ヒドロカルビル、フェニル、Cl、Br、I、SR”、NR”、OH、OR”、CN、NCから選択され、R”は、同一分子内で同一であっても異なっていてもよく、C〜C20ヒドロカルビルである。]を有する1種または複数の化合物を含む1種または複数の追加の共触媒化合物;
を含む。
【0006】
同時係属のPCT特許出願、PCT/EP03/10708(現在は、WO2004/037415として公表されている)には、下式:
【0007】
【化2】

[式中、Xは炭素または窒素であり、
nは0または1であり、
mは0または1であり、
zはπ配位された金属フラグメントであり、
〜R、R〜RおよびR12〜R14は、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、互いに隣接した、R〜R、R〜RおよびR12〜R14の任意の2つが一緒になって環を形成することができ;Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し;R10は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し;R11は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはR12と一緒になって環を形成し;およびR15は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはR14と一緒になって環を形成する。]
を有するビス−アリールイミンピリジン配位子が記載されている。
【0008】
同時係属のPCT特許出願、PCT/EP03/10708(現在は、WO2004/037415として公表されている)の実施例には、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体、およびMAOを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体およびメチルアルミノキサン(MAO)を有する2−[1−(2,4,、6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体およびトルエン溶液中のEtZn共触媒からなる触媒系が開示されている。
【0009】
米国特許第6291733号には、ビス−アリールイミンピリジン鉄錯体およびモル過剰のアルキルアルミノキサン共触媒組成物を含む触媒組成物を使用して、αオレフィンをほとんど直鎖内部オレフィン二量体に二量体化する方法が記載されている。この工程の反応は、周囲温度においてさえ急速に進行し、直鎖内部オレフィン二量体に富む二量体化生成物をもたらす。
【0010】
ビス−アリールイミンピリジンコバルト錯体および改質メチルアルミノキサン(MMAO)共触媒をα−オレフィンの二量体化に使用することが、Organometallics 2003、22、3178〜3183において、Brooke L.Smallの論文「Tridentate Cobalt Catalysts for Linear Dimerization and Isomerization of α−Olefins」に記載されている。この参照文献においてはアルキルアルミノキサン共触媒が過剰モルで使用されており、この方法を商業的に不利なものにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ビス−アリールイミンピリジン錯体をベースとする触媒は、重合、オリゴマー化および二量体化工程における有用な触媒前駆体であるが、特に周囲温度において、無極性媒質における溶解度が低いという欠点に苦しめられている。ベンゼン、トルエンおよびパラフィン溶媒などの無極性媒質における、特に周囲温度でのビス−アリールイミンピリジン錯体の溶解度が低いために、特に連続操業において触媒系を正確な量で反応器中に投与することの難しさ、および懸濁した非可溶性触媒粒子の摩耗作用が引き起こしうる、反応器装置(特にポンプおよびシール)に対する損傷を含め、前記錯体の溶解度の低さに伴ういくつかの問題が存在する。
【0012】
したがって、連続式工程、例えば、連続重合、オリゴマー化または二量体化工程において、容易に使用することができるビス−アリールイミンピリジン錯体およびこれらの錯体を含む触媒系が必要とされている。特に、無極性媒質に高度に溶解し、当業界において知られているビス−アリールイミンピリジン触媒組成物が示す、触媒活性に対する有害な影響を有していない錯体を含有するビス−アリールイミンピリジン錯体および触媒系を必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、無極性媒質に高度に溶解し、連続重合、オリゴマー化および二量体化工程のために良好な触媒活性を示す、ある一定のビス−アリールイミンピリジン配位子をベースとする遷移金属錯体およびこれらの触媒系を提供する。
【0014】
本発明の一態様において、式(I):
【0015】
【化3】

を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む、ビス−アリールイミンピリジンMX錯体[式中、R〜R、R〜R、R12およびR14は、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、互いに隣接した、R〜RおよびR〜Rの任意の2つが一緒になって環を形成することができ、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R10は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R11は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R12またはRと一緒になって環を形成し、R15は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R14またはRと一緒になって環を形成し、ただし、R13は、およびR12とR14との少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、またはR13はR12またはR14と一緒になって環を形成し、またはR12はR11と一緒になって環を形成し、R14はR15と一緒になって環を形成し(ここにおいて、好ましくは、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択される。)、およびR12、R13およびR14の少なくとも1つは置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシであり;
Mは、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Pd、Rh、Ru、Mo、Nb、Zr、Hf、Ta、W、Re、Os、IrまたはPtから選択された遷移金属原子であり;好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Ni、PdまたはPtであり;より好ましくは、V、Cr、Mn、Ni、またはPd;特にCrであり;
nは遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しく;および
Xはハロゲン化物、置換されていてもよいヒドロカルビル、アルコキシド、アミドまたは水素化物である。]である遷移金属錯体を提供する。
【0016】
本発明の別の態様において、式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む、ビス−アリールイミンピリジンMX錯体である遷移金属錯体[ただし、R1〜15およびXは式(I)に関して上記で定義された通りであり、Mは遷移金属原子、特にFeおよびCoから選択されたものであり、遷移金属錯体は、2−[1−2(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリド錯体ではない。]を提供する。
【0017】
本発明の別の態様において、式(I):
【0018】
【化4】

を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む、[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体[ただし、R〜R、R〜R、R12およびR14は、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、互いに隣接した、R〜RおよびR〜Rの任意の2つが一緒になって環を形成することができ、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R10は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R11は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R12またはRと一緒になって環を形成し、R15は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R14またはRと一緒になって環を形成し、ただし、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、またはR13はR12またはR14と一緒になって環を形成し、またはR12はR11と一緒になって環を形成し、R14はR15と一緒になって環を形成し(好ましくは、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択される。)、およびR12、R13およびR14の少なくとも1つは置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシであり;
Xはハロゲン化物、置換されていてもよいヒドロカルビル、アルコキシド、アミドまたは水素化物であり;
Mは、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Pd、Rh、Ru、Mo、Nb、Zr、Hf、Ta、W、Re、Os、IrまたはPtから選択された遷移金属原子であり;好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Ni、PdまたはPtであり;より好ましくは、V、Cr、Mn、Ni、またはPd;特にCrであり;またはMは遷移金属原子、特にFeまたはCoであり;
NCは非配位アニオンであり;
p+qは遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しい。]である遷移金属錯体を提供する。
【0019】
本発明の別の態様においては、
(a)式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含むビス−アリールイミンピリジンMX錯体[式中、R1〜15、Xおよびnは、式Iに関して本明細書において定義され、記載されており、Mは、例えば、上述通りの遷移金属原子であるが、好ましくはFe、CoまたはCrである。]、または
(b)式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体[式中、R1〜15、X、p、[NC]およびqは、式(I)に関して本明細書において定義され、記載されており、Mは、例えば上述通りの遷移金属原子であり、好ましくはFe、CoおよびCrから選択され、ただし、前記遷移金属錯体における式(I)の配位子において、Rは、およびRとRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択されるか、RはRまたはRと一緒になって環を形成し、またはRはRと一緒になって環を形成し、およびRはR10と一緒になって環を形成し(好ましくはRは、およびRとRとの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択される。)、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。また、このパラグラフにおいて与えた通りの、R、R、Rの定義を有する式Iの配位子は、式IIの一例として本明細書において記載されている。]
である遷移金属錯体を提供する。
【0020】
本発明の別の態様においては、
(a)遷移金属錯体の1種または複数{この遷移金属錯体は、ビス−アリールイミンピリジンが式Iを有するビス−アリールイミンピリジンMX錯体[式中、R1〜15、X、nは、式Iに関して本明細書において定義され、記載されており、Mは、例えば、FeまたはCoを含む式Iに関して本明細書において記載されている遷移金属原子である。]であるか、ビス−アリールイミンピリジンが式Iを有する[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体[式中、R1〜15、X、p、q、[NC]は、式Iとの関係で本明細書において定義され、記載されており、Mは、例えば、FeまたはCoを含む式Iに関して本明細書において記載されている遷移金属原子である。]であるか、これらの混合物である。};ならびに
(b)(i)ビス−アリールイミンピリジンMX錯体が存在する場合は、(1)アニオンを引き抜き、置換されていてもよいヒドロカルビルもしくは水素化物基を金属原子に移動させることのできる共触媒化合物、または(2)アニオンを引き抜くことができる共触媒化合物および置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物、および/または
(b)(ii)[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体が存在する場合は、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物、
[ただし、遷移金属原子がFeまたはCoである場合は、触媒系は、式ZnR’(式中、それぞれのR’は、同一であっても異なっていてもよく、水素、置換されていてもよいC〜C20ヒドロカルビル、フェニル、Cl、Br、I、SR”、NR”、OH、OR”、CN、イソシアニドから選択され、R”は、同一分子内において同一であることも異なることもできる、C〜C20ヒドロカルビルである。)を有する1種または複数の化合物を含んでおらず、触媒系は、MAOを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体ではない。または、遷移金属がFeである場合は、触媒系は、MAOを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリドまたはMAOおよびZnEtを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリドではない。]
を含む触媒系を提供する。
【0021】
別の態様において、(b)および(a)ビス−アリールイミンピリジンMXまたは[MX][NC錯体[式中、X、p、NCおよびqは、式Iとの関係で本明細書において定義され、記載された通りであり、Mは、例えば、式Iとの関係で本明細書において記載された通りの、FeまたはCoを含む遷移金属原子であり、R1〜15は式Iに関して定義され、記載されている通りであり、ただし、R、RおよびRは、式IIの配位子に関して、上記で定義される。]である遷移金属錯体の1種または複数を含む本発明の改質触媒系を提供する。
【0022】
本発明の別の態様において、少なくとも3個の炭素原子を含むα−オレフィンであるまたはこれらとエチレンの混合物であるオレフィン供給原料を触媒組成物と接触させることを含む二量体化のまたはコオリゴマー化の方法を提供し、
前記触媒組成物は:
(a)以下から選択された1種または複数の遷移金属錯体:
(i)式(I):
【0023】
【化5】

を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含むビス−アリールイミンピリジンMX錯体
[式中、R〜R、R〜R、R12およびR14は、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、互いに隣接した、R〜RおよびR〜Rの任意の2つを一緒にして環を形成することができ、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R10は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R11は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R12またはRと一緒になって環を形成し、R15は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R14またはRと一緒になって環を形成し、ただし、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、またはR13はR12またはR14と一緒になって環を形成し、またはR12はR11と一緒になって環を形成し、R14はR15と一緒になって環を形成し(好ましくは、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択される。)、およびR12、R13およびR14の少なくとも1つは置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシであり;
Mは、遷移金属原子であり;好ましくは、4族から10族の遷移金属;好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、PdまたはPt;より好ましくは、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiまたはPd;特にFe、CoまたはCrであり;
nは遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しく;および
Xはハロゲン化物、置換されていてもよいヒドロカルビル、アルコキシド、アミドまたは水素化物である。]および
(ii)式(I):
【0024】
【化6】

を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体
[式中、R〜R、R〜R、R12およびR14は、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、互いに隣接した、R〜RおよびR〜Rの任意の2つを一緒にして環を形成することができ、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R10は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R11は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R12またはRと一緒になって環を形成し、R15は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R14またはRと一緒になって環を形成し、ただし、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、またはR13はR12またはR14と一緒になって環を形成し、またはR12はR11と一緒になって環を形成し、R14はR15と一緒になって環を形成し(好ましくは、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択される。)、およびR12、R13およびR14の少なくとも1つは置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシであり;
Xはハロゲン化物、置換されていてもよいヒドロカルビル、アルコキシド、アミドまたは水素化物であり;
Mは、遷移金属原子であり;好ましくは、4族から10族の遷移金属;好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、PdまたはPt;より好ましくは、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiまたはPd;特にFe、CoまたはCrであり;
NCは非配位アニオンであり;
p+qは、遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しい。]
およびこれらの混合物;ならびに
(b)(i)ビス−アリールイミンピリジンMX錯体が存在する場合は、(1)アニオンを引き抜き、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を金属原子に移動させることのできる共触媒化合物、または(2)アニオンを引き抜くことができる共触媒化合物および置換されていてもよいヒドロカルビルもしくは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物;および/または
(b)(ii)[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体が存在する場合は、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物;
を含む。
【0025】
供給原料オレフィンが、少なくとも3個の炭素原子を有するαオレフィンである場合、このプロセスは二量体化であるが、供給原料オレフィンがこれらとエチレンとの混合物である場合は、プロセスはコオリゴマー化プロセスである。
【0026】
本発明の別の態様において、
(a)ビス−アリールイミンピリジンが、上式Iを有するビス−アリールイミンピリジンMX錯体[式中、R1〜15、X、nは、式Iに関して本明細書において定義され、記載されており、Mは、例えば、FeまたはCoを含む式Iに関して本明細書において記載されている遷移金属原子である。]であるか、
ビス−アリールイミンピリジンが、特に二量体化の方法に関して、式Iを有する[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体[式中、R1〜15、X、p、q、[NC]は、式Iとの関係で本明細書において定義され、記載されており、Mは、例えば、FeまたはCoを含む式Iに関して本明細書において記載されている遷移金属原子である。]である、遷移金属錯体の1種または複数、およびこれらの混合物;ならびに
(b)(i)ビス−アリールイミンピリジンMX錯体が存在する場合は、(1)アニオンを引き抜き、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を金属原子に移動させることのできる共触媒化合物、または(2)アニオンを引き抜くことができる共触媒化合物および置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物;および/または
(b)(ii)[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体が存在する場合は、置換されていてもよいヒドロカルビルもしくは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物;
[ただし、遷移金属原子がFeまたはCoである場合は、触媒系は、式ZnR’を有する1種または複数の化合物を含んでおらず、式中、同一であっても異なっていてもよく、それぞれのR’は、水素、置換されていてもよいC〜C20ヒドロカルビル、フェニル、Cl、Br、I、SR”、NR”、OH、OR”、CN、NCから選択され、R”は、同一分子内において同一であることも異なることもできる、C〜C20ヒドロカルビルであり、触媒系は、MAOを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体ではない。または、遷移金属がFeである場合は、触媒系は、MAOを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリドまたはMAOおよびZnEtを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリドではない。]
を含む触媒系(本明細書においては触媒とも呼ぶ)組成物に、エチレンであるオレフィン供給原料を接触させることを含むオリゴマー化の方法を提供する。
【0027】
本発明のこの態様の変更形態において、エチレンであるオレフィン供給原料を、本発明の改質触媒系と接触させることを含むオリゴマー化の方法を提供する。
【0028】
本発明の遷移金属錯体および触媒系は、無極性媒質における溶解度に優れ、様々なオリゴマー化、重合化および二量体化反応を触媒するために使用しうる。
【0029】
本発明の別の態様において、無極性媒質、特に化学的に不活性な無極性溶媒、特別には芳香族炭化水素溶媒に、少なくとも5または10mg ml−1の遷移金属錯体が溶解した溶液を提供し、前記遷移金属錯体は、ビス−アリールイミンピリジンMXまたは[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体であり、それぞれ、上記で定義され、記載されている式Iを有するビス−アリールイミンピリジン錯体を含み、R1〜15、X、n、p、NCおよびqのそれぞれは、本明細書において定義され、記載されており、およびMは、遷移金属原子、例えば、4から10族のいずれかからのもの、特にTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Rh、Ru、Mo、Nb、Zr、Hf、Ta、W、Re、Os、IrまたはPtから選択されたもの、好ましくはFe、Co、またはCr、および特別にはCoまたはFeである。好ましい溶液は、トルエン中に遷移金属錯体が少なくとも10mg ml−1、特別には少なくとも50mg ml−1溶解しており、金属Mは鉄またはコバルト、特に2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体である。本発明のさらなる溶液の態様においては、無極性媒質、特に化学的に不活性な無極性溶媒、特別には芳香族炭化水素溶媒に、上記で定義される(a)前記遷移金属錯体および成分(b)を含む触媒系が、少なくとも5または10mg ml−1溶解した溶液を提供する。触媒系溶液を、錯体(a)および成分(b)の溶液を混合することによって製造することができ、場合により、二量体化または(コ)オリゴマー化されるべき反応組成物の存在下または非存在下で製造する。同じ錯体は、本発明の上述の錯体溶液の場合と同様に、触媒溶液において好まれる。
【0030】
本発明の別の態様において、本発明の二量体化、オリゴマー化またはコオリゴマー化の方法を、本発明の溶液、特にベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの芳香族炭化水素、および1−ヘキセン、シス/トランス2−ヘキセンまたは1−オクテンなどのアルケンの1種または複数中に存在する触媒錯体、組成物または系によって実行する。
【0031】
式(I):
【0032】
【化7】

[式中、R〜R、R〜R、R12およびR14は、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、互いに隣接した、R〜RおよびR〜Rのいずれか2つを一緒にして環を形成することができ、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R10は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R11は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R12またはRと一緒になって環を形成し、R15は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R14またはRと一緒になって環を形成し、ただし、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、またはR13はR12またはR14と一緒になって環を形成し、またはR12はR11と一緒になって環を形成し、R14はR15と一緒になって環を形成し(好ましくは、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択される。)、およびR12、R13およびR14の少なくとも1つは置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。]を有するビス−アリールイミンピリジン配位子であり、前記ビス−アリールイミンピリジン配位子は、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンではない、ビス−アリールイミンピリジン配位子が、本発明においても提供される。好ましくは、前記配位子は、上記で定義され、記載されている式IIを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明の詳細な説明
本発明は、式(I)を有し、R1〜15が式Iに関係して定義され、記載されている、ビス−アリールイミンピリジン配位子を含む遷移金属錯体に関する。
【0034】
ある種類の錯体において、R12、R13およびR14は、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、および置換されていてもよいC〜C20アリールからすべて独立に選択され、ただしR12、R13およびR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30(好ましくはC3〜25)アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、および置換されていてもよいC〜C20(好ましくはC3〜25)アリールから独立に選択され、ただしR12、R13およびR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。
【0036】
ある種類のビス−アリールイミンピリジン遷移金属錯体において、式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子は、Rは、およびRとRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲン、および置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択されるか、RはRまたはRと一緒になって環を形成し、またはRはRと一緒になって環を形成し、およびRはR10と一緒になって環を形成し、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。好ましくは、Rは、およびRとRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択されるか、置換されていてもよいC3〜25アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜Cアリールから独立に選択され、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。
【0037】
別の種類の錯体において、式Iを有する配位子は、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールからすべて独立に選択されたR、RおよびRを有し、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。
【0038】
は、およびRとRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、および置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである場合は、Rが、独立にハロゲン、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であること、または互いに隣接したR〜Rのいずれか2つが一緒になって環を形成することは不可能であることが、当業者には直ちに明らかであるはずである。
【0039】
本明細書における遷移金属錯体の1つの種類は、本明細書において定義された式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含むビス−アリールイミンピリジンMXn錯体であり、式中
Mは遷移金属原子であり、
nは遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しく、好ましくは、nは1、2、または3であり、
Xはハロゲン化物、置換されていてもよいヒドロカルビル、アルコキシド、アミドまたは水素化物;好ましくはハロゲン化物または置換されていてもよいヒドロカルビル、より好ましくはハロゲン化物、特に塩素である。
【0040】
本明細書において開示されたビス−アリールイミンピリジンMX錯体は、非配位アニオンと反応させられて、カチオン錯体、本明細書において定義された式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体を形成する種を発生することができ、式中、
NCは非配位アニオンであり、
p+qは2または3であり、遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しく、好ましくはp+qは2または3である。
【0041】
ビス−アリールイミンピリジンMX錯体と同様に、種を発生する、ビス−アリールイミンピリジンMX錯体と非配位アニオンとの反応によって形成されたカチオン錯体は、有利に、無極性媒質およびベンゼンおよびトルエンなどの化学的に不活性な無極性溶媒における溶解度が高い。さらに、本発明のカチオン錯体が、二量体化、コオリゴマー化またはオリゴマー化のために、本発明の方法において使用される場合は、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる、より少量の化合物(b)が必要である。
【0042】
用語「非配位アニオン」は、金属原子Mに実質的に配位しないアニオンを意味する。適切に使用しうる非配位アニオン(NC)には、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BArF)、(Cならびに(RAlX’、RAlClX’、RAlClX’および「RAlOX’」を含む)アルキルアルミニウム化合物のアニオンなど(Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは不活性官能基であり、X’はハロゲン化物、アルコキシドまたは酸素である。)の嵩張ったアニオンが含まれる。本明細書において使用するための好ましい非配位アニオンは、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BArF)である。
【0043】
式(I)のRからR15の基に関する用語「ヒドロカルビル基」は、炭素および水素原子のみを含有する基を意味する。特段の記載がない限り、炭素原子の数は、好ましくは1から30、特に1から6の範囲にある。特段の記載がない限り、ヒドロカルビル基は、飽和または不飽和、脂肪族、脂環式または環式芳香族(例えば、フェニル)でありうるが、好ましくは脂肪族である。適切なヒドロカルビル基には、以下に記載されているものなどの第一級、第二級および第三級炭素原子基が含まれる。
【0044】
式(I)のRからR15の基に関する語句「置換されていてもよいヒドロカルビル」を、1種または複数の「不活性」ヘテロ原子含有官能基を、場合により含有することができるヒドロカルビル基を記載するために使用する。「不活性」は、官能基が、遷移金属錯体を使用することができる触媒プロセスを、実質的にまったく妨げないことを意味する。そのような不活性基の非限定的な例として、フッ化物および塩化物などのハロゲン化物、シラン、スタンナン、エーテル、アルコキシドおよび十分な立体遮蔽を有するアミンがあり、これらはすべて当業者によく知られている。このような基のいくつかの例には、メトキシ、トリメチルシロキシおよびエイコサンオキシが含まれる。前記置換されていてもよいヒドロカルビルは、下記の性質を有する、第一級、第二級および第三級炭素原子基を含むことができる。
【0045】
式(I)のRからR15の基に関する用語「不活性官能基」は、遷移金属錯体を使用することができるいかなる反応または方法に対しても、反応条件下で不活性である、置換されていてもよいヒドロカルビル以外の基を意味する。「不活性」は、官能基が、遷移金属錯体を使用することができる触媒プロセスを、実質的にまったく妨げないことを意味する。本明細書において使用するのに適した不活性官能基の例には、ハロゲン化物、エーテル、および第三級アミンなどのアミンが含まれ、好ましくは、不活性官能基は、ハロゲン化物、特にフッ素および塩素である。
【0046】
本明細書において使用される用語「第一級炭素原子基」は、−CH−R基を意味し、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、または不活性官能基から選択される。適切な第一級炭素原子基の例には、これに限らないが、−CH、−C、−CHCl、−CHOCH、−CHN(Cおよび−CHPhが含まれる。特段の記載がない限り、本明細書において使用するのに好ましい第一級炭素原子基は、Rが水素またはC〜Cの置換されていないヒドロカルビルから選択されたものであり、好ましくは、Rは水素またはC〜Cアルキルである。
【0047】
本明細書において使用される用語「第二級炭素原子基」は、−CH(R)基を意味し、それぞれのRは、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは不活性官能基から独立に選択される。あるいは、2つのR基は、一緒になって二重結合部位、例えば、=CH、またはシクロアルキル基を構成することができる。第二級炭素原子基の例には、これに限らないが、−CH(CH、−CHCl、−CHPh、−CH=CHおよびシクロヘキシルが含まれる。特段の記載がない限り、本明細書において使用するのに好ましい第二級炭素原子基は、RがC〜Cの置換されていないヒドロカルビル、好ましくは、C〜Cアルキルであるものである。
【0048】
本明細書において使用される用語「第三級炭素原子基」は、それぞれのRが、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは不活性官能基から独立に選択された、−C(R)基を意味する。あるいは、3つのR基は一緒になって、三重結合部位、例えば、−C≡CPh、またはアダマンチル誘導体などの第三級炭素原子を含有する環系を構成することができる。第三級炭素原子基の例には、これに限らないが、−C(CH、−CCl、−C≡CPh、1−アダマンチルおよび−C(CH(OCH)が含まれる。特段の記載がない限り、本明細書において使用するのに好ましい第三級炭素原子基は、それぞれのRがC〜Cの置換されていないヒドロカルビル基であるもの、好ましくは、それぞれのRがC〜Cアルキル基であるもの、より好ましくは、それぞれのRがメチルであるものである。それぞれのRがメチル基の場合は、第三級炭素原子基は、tert−ブチルである。
【0049】
互いに隣接したR〜RおよびR〜Rのいずれか2つが一緒になって、RがRと一緒になって、R10がRと一緒になって、R11がR12と一緒になって、およびR15がR14と一緒になって形成されうる環は、好ましくは、置換されていてもよいC〜C20環式ヒドロカルビル基、より好ましくは、置換されていてもよいC〜C20脂環式または芳香族基、さらにより好ましくは、置換されていてもよいC〜C脂環式または芳香族基であり、特にC脂環式または芳香族基である。
【0050】
がRと一緒になって、RがRと一緒になって、R11がRと一緒になって、およびR15がRと一緒になって形成されうる環は、好ましくは、置換されていてもよいC〜C20環式ヒドロカルビル基、より好ましくは、置換されていてもよいC〜C20脂環式基、より一層好ましくは、置換されていてもよいC〜C脂環式基、特にC脂環式基である。
【0051】
12、R13およびR14基に関する、ならびに該当する場合は式(I)のR、RおよびR基に関する用語「置換されていてもよいC〜C30アルキル」は、C〜C30直鎖または分岐アルキル基であり、当業者に知られている1種または複数の「不活性」官能基、特にハロゲン化物、好ましくはフッ素によって置換されうるものを意味する。好ましい、置換されていてもよいアルキル基は、3から25の炭素原子、より好ましくは4から20の炭素原子を含む。好ましくは、アルキル基は置換されていないアルキル基である。適切な「置換されていてもよいC〜C30アルキル」の例には、オクタデシル、テトラデシル、ドデシル、デシル、オクチル、ヘキシル、ペンチル、tert−ブチルおよびイソ−プロピル、特にtert−ブチルおよびイソ−プロピルが含まれる。
【0052】
12、R13およびR14基に関する、ならびに該当する場合は、式(I)のR、RおよびR基に関する用語「置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ」は、酸素原子に結合されている、置換されていてもよいC〜C30アルキル基、酸素原子を経てアリール基に結合されているアルコキシ基を意味する。好ましくは、置換されていてもよいアルキルオキシ基は、6から30の炭素原子、より好ましくは、8から30の炭素原子、および最も好ましくは10から25の炭素原子を含む。好ましくは、アルキルオキシ基は置換されていないアルキルオキシ基である。「置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ」の適切な例には、エイコサンオキシ(これは、好ましい)、オクタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ドデシルオキシ、デシルオキシ、ヘキシルオキシ、ペンチルオキシ、ブチルオキシおよびtert−ブチルオキシ、特にエイコサンオキシ、ドデシルオキシ、ペンチルオキシおよびtert−ブチルオキシが含まれる。
【0053】
12、R13およびR14基に関する、ならびに該当する場合は、式(I)のR、RおよびR基に関する用語「置換されていてもよいC〜C20アリール」は、5から20の環原子を有し、前記環原子の1種または複数は、置換されていてもよいヒドロカルビル(好ましくはC〜Cアルキル、好ましくはメチル)およびハロゲン化物などの「不活性」官能基から好ましくは選択される、当業者に知られている1種または複数の置換基によって置換されうるアリールまたはヘテロアリール基を意味する。ヘテロアリール基において、環原子の1種または複数は、窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子である。ただし、前記へテロ原子は、遷移金属錯体が使用される触媒プロセスに関して不活性である。好ましくは、ヘテロアリール基は完全に置換された芳香族であり、またはヘテロ原子は遷移金属原子から完全に遮蔽されている。好ましいヘテロアリール基は、1−ピロリル基である。好ましくは、環原子のすべては炭素原子である。用語「置換されていてもよいC〜C20アリール」の範囲には、モノおよびポリ芳香族基が包含される。好ましくは、置換されていてもよいC〜C20アリール基は、5から10の環炭素原子、より好ましくは5または6の環炭素原子を含む。好ましくは、アリール基は、1−ピロリル基を含む置換されていないアリール基である。最も好ましいのは、置換されていてもよいフェニル基、特にフェニルである。
【0054】
13がR12またはR14と一緒になって、および該当する場合は、RがRまたはRと一緒になって形成されうる環は、好ましくは置換されていてもよいC〜C20環式ヒドロカルビル基であり、より好ましくは置換されていてもよいC〜C10基、一層好ましくは置換されていてもよいC〜C基、特にCおよびC環式ヒドロカルビル基である。R13がR12またはR14と一緒になって、および該当する場合は、RがRと一緒になって形成されうる環に関係する用語「環式ヒドロカルビル基」の範囲には、脂環式、ポリ脂環式、芳香族およびポリ芳香族基、好ましくは脂環式または芳香族基が含まれる。
【0055】
本明細書における遷移金属錯体の1つの種類において、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、ただし、R12、R13およびR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシであり、Rは、およびRとRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。
【0056】
本明細書における遷移金属錯体の別の種類において、R12、R13およびR14は、すべて、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、ただし、R12、R13およびR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。
【0057】
本明細書における遷移金属錯体の別の種類において、R、R、R、R12、R13およびR14は、すべて、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択され、ただし、R12、R13およびR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシであり、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである。
【0058】
式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子は、対称または非対称のいずれかでありうる。用語「対称の」は、2つのアリールイミノ基の4つのメタ位および2つのパラ位に関して使用され、これらを、置換パターンおよび置換基自体が2つの平等に置換されたアリールイミノ基をもたらすものとして定義する。
【0059】
本発明の好ましい遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、次のR基が生じる:R〜Rは水素であり;ならびに/またはRおよびRは、メチル、水素、ベンジルまたはフェニル、好ましくは、メチル、フェニルまたは水素、より好ましくはメチルである。
【0060】
本発明の遷移金属錯体の好ましい1つの種類は、式(I)に従う配位子を含み、次のR基が生じる:R12およびR14は、C〜C30アルキルおよびC〜C20アリール、好ましくはC〜C20アリール、より好ましくはフェニルから独立に選択され;R13はC〜C30アルキルオキシ、好ましくはC10〜C25アルキルオキシ、より好ましくはエイコサンオキシである。
【0061】
本発明の遷移金属錯体の別の好ましい種類は、式(I)に従う配位子を含み、次のR基が生じる:R12およびR14は、C〜C30アルキルおよびC〜C20アリール、好ましくはC〜C20アリール、より好ましくはフェニルから独立に選択され;R13はC〜C30アルキルオキシ、好ましくはC10〜C25アルキルオキシ、より好ましくはエイコサンオキシであり;RはC〜C30アルキル、好ましくはC〜C10アルキル、より好ましくはC〜Cアルキル、最も好ましくはtert−ブチルまたはイソ−プロピルから選択され;RおよびR10は水素であり;好ましくは、RおよびRは水素である。
【0062】
本発明の遷移金属錯体の別の好ましい種類は、式(I)に従う配位子を含み、次のR基が生じる:R12およびR14は、C〜C30アルキルおよびC〜C20アリール、好ましくはC〜C20アリール、より好ましくはフェニルから独立に選択され;R13はC〜C30アルキルオキシ、好ましくはC10〜C25アルキルオキシ、より好ましくはエイコサンオキシであり;R、RおよびR10は、C〜C30アルキル、好ましくはC〜C10アルキル、より好ましくはC〜Cアルキル、最も好ましくはメチル、エチル、イソ−プロピルまたはtert−ブチルから独立に選択され;および好ましくは、RおよびRは水素である。
【0063】
本発明の遷移金属錯体の別の好ましい種類は、式(I)に従う配位子を含み、次のR基が生じる:R12およびR14は、C〜C30アルキルおよびC〜C20アリール、好ましくはC〜C20アリール、より好ましくはフェニルから独立に選択され;R13はC〜C30アルキルオキシ、好ましくはC10〜C25アルキルオキシ、より好ましくはエイコサンオキシであり;RおよびRは、C〜C30アルキル、好ましくはC〜C10アルキル、より好ましくはC〜Cアルキル、最も好ましくはイソ−プロピルまたはtert−ブチルから独立に選択され;および好ましくは、R、RおよびR10は水素である。
【0064】
本発明の遷移金属錯体の別の種類は、式(I)に従う配位子を含み、次のR基が生じる:RおよびRは、C〜C30アルキルおよびC〜C20アリール、好ましくはC〜C20アリール、より好ましくはフェニルから独立に選択され;RはC〜C30アルキルオキシ、好ましくはC10〜C25アルキルオキシ、より好ましくはエイコサンオキシである。
【0065】
本発明の遷移金属錯体の別の種類は、式(I)に従う配位子を含み、次のR基が生じる:Rは、C〜C30アルキル、好ましくはC〜C10アルキル、より好ましくはC〜Cアルキル、最も好ましくはイソ−プロピルまたはtert−ブチルから独立に選択され;および好ましくは、R、R、RおよびR10は水素である。
【0066】
好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0067】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0068】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0069】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、RおよびR10はフッ素であり、R、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0070】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびR10はフッ素であり、R、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0071】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、RおよびR10はフッ素であり、R、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0072】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、RおよびR10は塩素であり、R、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0073】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびR10は塩素であり、R、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0074】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、RおよびR10は塩素であり、R、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0075】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14はフェニルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0076】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14はフェニルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0077】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14はフェニルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0078】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、Rはtert−ブチルであり、R、R、R、R10、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0079】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、Rはtert−ブチルであり、R、R、R、R10、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0080】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、Rはtert−ブチルであり、R、R、R、R10、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0081】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、RおよびRはイソ−プロピルであり、R、R、R10、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0082】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはイソ−プロピルであり、R、R、R10、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0083】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、RおよびRはイソ−プロピルであり、R、R、R10、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、R13はエイコサンオキシである。
【0084】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、Rはイソ−プロピルであり、R10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0085】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、Rはイソ−プロピルであり、R10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0086】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、Rはイソ−プロピルであり、R10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフェニルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0087】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフッ素であり、R13はエイコサンオキシである。
【0088】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフッ素であり、R13はエイコサンオキシである。
【0089】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14はフッ素であり、R13はエイコサンオキシである。
【0090】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14は塩素であり、R13はエイコサンオキシである。
【0091】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14は塩素であり、R13はエイコサンオキシである。
【0092】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、R、RおよびR10はメチルであり、R、R、R11およびR15は水素であり、R12およびR14は塩素であり、R13はエイコサンオキシである。
【0093】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14はフッ素であり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0094】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14はフッ素であり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0095】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14はフッ素であり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0096】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14は塩素であり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0097】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14は塩素であり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0098】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、R、R10、R11およびR15は水素であり、R、R、R12およびR14は塩素であり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0099】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはメチルであり、R、R、R12およびR15は水素であり、RおよびR14はイソ−プロピルであり、R10およびR11はメチルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0100】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、R、R、R12およびR14は水素であり、RおよびR15はイソ−プロピルであり、R10およびR11はメチルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0101】
別の好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、式(I)に従う配位子を含み、R〜Rは水素であり、RおよびRはフェニルであり、R、R、R12およびR15は水素であり、RおよびR14はイソ−プロピルであり、R10およびR11はメチルであり、RおよびR13はエイコサンオキシである。
【0102】
本発明は、また、
(a)本明細書において定義された1種または複数の遷移金属錯体;および
(b)本明細書において定義され、記載されている共触媒化合物(1)または(2)
を含む触媒系に関する。
【0103】
本発明の触媒系は、また、任意の成分(c)として1種または複数の追加の共触媒化合物を含むことができる。
【0104】
共触媒化合物(b)の目的は、活性化された触媒系を形成することである。
【0105】
アニオン(X基)を引き抜き、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を、遷移金属原子(M)に、好ましくは、−100℃から+300℃の範囲の温度で、移動させることができる共触媒化合物は、アルキルアルミノキサンおよびハロゲン化アルキルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム化合物から選択される。この種類の好ましい化合物は、メチルアルミノキサン(MAO)および改質されたメチルアルミノキサン(MMAO)である。
【0106】
置換されていてもよいヒドロカルビルまたは水素化物基を、好ましくは、−100℃から+300℃の範囲の温度で、遷移金属原子(M)に移動させることができる共触媒化合物は、アルキルアルミノキサンなどのアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物、グリニャール、アルキルスズおよび式ZnR’、[それぞれのR’は同一であっても異なっていてもよく、水素、置換されていてもよいC〜C20ヒドロカルビル、フェニル、Cl、Br、I、SR”、NR”、OH、OR”、CN、NC(イソシアニド)から選択され、R”は、同一分子内で同一であっても異なっていてもよく、C〜C20ヒドロカルビルである。]を有する化合物などのアルキル亜鉛化合物から選択される。好ましくは、R’はC〜C20ヒドロカルビル、より好ましくは、C〜C20アルキル、より一層好ましくは、C〜Cアルキルである。適切なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、などが含まれる。R’基はC〜Cアルキル、特にエチルであることが特に好ましい。この種類の好ましい化合物は、メチルアルミノキサン(MAO)および改質されたメチルアルミノキサン(MMAO)である。
【0107】
遷移金属原子(M)からアニオン(X基)を、好ましくは、−100℃から+300℃の範囲の温度で、引き抜くことができる共触媒化合物は、SbF、BFおよびArB[ただし、ArはCまたは3,5−(CFなどの強力な電子求引性アリール基である。]などの強力な中性ルイス酸から、またはテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル]ボレート(BArF)、(Cなどの非配位アニオン(NC)を有する塩から、およびRAlX’、RAlClX’、RAlClX’および「RAlOX’」[ただし、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビルまたは不活性官能基であり、X’はハロゲン化物、アルコキシドまたは酸素である。]を含むアルキルアルミニウム化合物のアニオンを有する塩から、選択される。本明細書において使用する非配位アニオンを有する好ましい塩は、ナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル]ボレート(NaBArF)である。
【0108】
共触媒化合物(b)に追加して使用することができる追加の共触媒化合物(c)には、必ずしもこれに限らないが、中性ルイス供与体分子が含まれる。
【0109】
本明細書において使用される用語「中性ルイス供与体分子」は、エーテル、アミン、硫化物および有機ニトリル、例えば、トリエチルアミンまたは2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、などのルイス塩基としての役割を適切に果たすことのできる化合物を意味する。
【0110】
本発明の配位子および遷移金属錯体を、化学的方法、および本発明の実施例およびそこにある参考文献において説明されているものと同等の方法、加えて、WO01/58874、WO02/00339、WO02/28805およびWO03/011876およびその中に組み込まれている参考文献から知ることのできる方法を用いて調製することができる。
【0111】
本発明の触媒系を、遷移金属錯体または遷移金属塩の混合物および適切な、式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子、共触媒化合物(b)、および場合により、1種または複数の追加の共触媒化合物(c)を、任意の順序で一緒に混合することによって、形成することができる。
【0112】
好都合には、本発明の触媒系の調製を、反応混合物の存在下において、または極性または無極性でありうる化学的に不活性な溶媒の存在下において、実行することができる。好ましくは、本発明の触媒系を、反応混合物の存在下においてまたは化学的に不活性な無極性溶媒の存在下において、より好ましくは、化学的に不活性な無極性溶媒の存在下において調製する。
【0113】
触媒系の取り扱い、貯蔵および使用を容易にするため、特に、(特に連続操業されている反応プロセスの間に)触媒組成物を正確に投与するために、本発明の触媒系を調製する際に、化学的に不活性な無極性溶媒を使用することが、望まれ得る。適切な化学的に不活性な無極性溶媒の例には、o−、m−またはp−キシレン、トルエン、ベンゼン、ペンタン、イソペンタン、ヘプタン、シクロヘキサンおよびイソオクタンが含まれ、好ましくは、溶媒は、トルエン、イソペンタン、シクロヘキサンおよびイソオクタン、特にトルエンおよびイソオクタンである。
【0114】
一実施例においては、本発明の触媒系は、化学的に不活性な無極性溶媒に溶解した遷移金属錯体の溶液を、化学的に不活性な無極性溶媒に溶解した共触媒化合物(b)および場合により追加の共触媒化合物(c)の溶液と一緒にすることによって形成される。これらの2つの別々の溶液を一緒にすることは、反応物組成物の存在下または不在下において実施することができる。
【0115】
あるいは、本発明の触媒系は、遷移金属塩と、化学的に不活性な無極性溶媒に溶解した式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子との混合物を含む溶液を、化学的に不活性な無極性溶媒に溶解した共触媒化合物(b)および場合により追加の共触媒化合物(c)の溶液と一緒にすることによって形成される。これらの2つの別々の溶液を一緒にすることは、反応物組成物の存在下または不在下において実施することができる。
【0116】
別の実施形態においては、本発明の触媒系を、化学的に不活性な無極性溶媒に溶解した遷移金属ビス−アリールイミンピリジン錯体の溶液を、反応媒質中に存在する化学的に不活性な無極性溶媒に溶解した共触媒化合物(b)および場合により追加の共触媒化合物(c)と一緒にすることにより形成する。
【0117】
あるいは、本発明の触媒系を、遷移金属塩と、化学的に不活性な無極性溶媒に溶解した式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子との混合物を、反応媒質中に存在する共触媒化合物(b)および場合により追加の共触媒化合物(c)と一緒にすることにより形成する。
【0118】
別の実施形態においては、本発明の触媒系を、化学的に不活性な無極性溶媒に溶解した触媒系の成分をすべて一緒にすることにより調製する。
【0119】
別の実施形態においては、本発明の触媒系を、反応媒質中に存在する触媒系の成分をすべて一緒にすることにより調製する。
【0120】
本発明の、式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子、遷移金属錯体、および触媒系は、無極性溶媒、無極性反応物組成物および無極性生成物組成物などの、無極性媒質に高度に溶解する。
【0121】
用語「高度に溶解する」は、特定の成分(例えば、ビス−アリールイミンピリジン配位子またはビス−アリールイミンピリジン遷移金属錯体)が、周囲温度において透明な、および安定した溶液を無極性媒質に形成することを意味する。好ましくは、この特定の成分は、周囲温度において少なくとも1mg ml−1の溶解度、例えば、少なくとも5mg ml−1、より好ましくは少なくとも10mg ml−1、例えば、少なくとも25mg ml−1、最も好ましくは、少なくとも50mg ml−1、例えば、少なくとも75mg ml−1、特に少なくとも100mg ml−1の溶解度を有することを意味する。通常は、これら成分の溶解度は、5g ml−1未満である。
【0122】
本発明の文脈における「透明な、安定した溶液」という用語は、顕微鏡または限外顕微鏡法によって可視化することができず、(限外)濾過または透析によって分離することができない、0.1から1nmの間の直径を有する溶解された粒子を有する溶液、または沈降しない、0.1から0.001μmの間の直径を有する粒子を有するコロイド溶液を意味する。
【0123】
本発明の文脈において、用語「周囲温度」は、低温側の温度が少なくとも−20℃、より好ましくは少なくとも0℃、および最も好ましくは少なくとも10℃であり、高温側の温度が大きくとも120℃、より好ましくは大きくとも50℃、および最も好ましくは大きくとも40℃である範囲内の、任意の温度または温度範囲を意味する。
【0124】
本発明の溶液は、無極性媒質、例えば、化学的に不活性な無極性溶媒に中にある。特定の成分(例えば、ビス−アリールイミンピリジン配位子、ビス−アリールイミンピリジン遷移金属錯体またはこれを含む触媒系)の溶解度は、上で詳細に記載されており、好ましくは少なくとも5、10または25mg ml−1、例えば、少なくとも50または75mg ml−1、特に少なくとも100mg ml−1である。無極性媒質の例は本明細書において与えられており、一方、化学的に不活性な無極性溶媒の種類は、本明細書において言及されているコオリゴマー化またはオリゴマー化のために使用しうる不活性溶媒、すなわち、アルカン(例えば、5〜8炭素原子の)、アルケン(例えば、5〜8炭素原子の、特に1−ヘキセン、シス/トランス2−ヘキセンまたは1−オクタン)、シクロアルカン(例えば、5〜7炭素原子の)および芳香族炭化水素(例えば、6〜8炭素原子の)、およびより特別には、上で化学的に不活性な無極性溶媒と呼ばれたもの、特にトルエン、ベンゼンまたはキシレン、である。
【0125】
無極性反応物組成物の例には、場合により内部オレフィン(例えば、C〜C12直鎖および分岐内部オレフィン、C〜C12パラフィンなど)などの不純物を含むことができるαオレフィン組成物(例えば、エチレン、プロピレンおよびC〜C12直鎖および分岐αオレフィンなど)が含まれる。無極性生成物組成物は、本発明の触媒系を使用して、重合、共重合、オリゴマー化、コオリゴマー化または二量体化またはα−オレフィンから得られた組成物であり、場合により、未反応の供給原料オレフィンを含むことができる。
【0126】
本発明の触媒系は、下記の反応:
重合またはオリゴマー化;
共重合またはコオリゴマー化;
三量体化;および
二量体化
に組み込まれた場合、特に有用である。
【0127】
本発明の触媒系は、エチレンの重合またはオリゴマー化、エチレンおよびα−オレフィンの共重合またはコオリゴマー化、および連続式工程の条件下で少なくとも3個の炭素原子を有するα−オレフィンの二量体化のために特に有用である。
【0128】
本発明の1つの好ましい方法においては、本発明の触媒系は、エチレンのオリゴマー化に使用される。
【0129】
本発発明の別の好ましい方法においては、本発明の触媒系は、α−オレフィンの二量体化に使用される。
【0130】
本発明の触媒系を、エチレンまたはプロピレンが供給原料オレフィンとして使用される場合、重合およびオリゴマー化反応のために使用することができる。
【0131】
本発明の文脈において使用される用語「供給原料オレフィン」は、重合、共重合、オリゴマー化、コオリゴマー化、三量体化または二量体化の条件下で、本発明の触媒系と接触させられた場合、結合させることができる繰り返し構造単位に関係する。
【0132】
本発明の触媒系を、エチレンおよび少なくとも3個の炭素原子を有するα−オレフィンが供給原料オレフィンとして使用される場合、またはプロペンおよび少なくとも4炭素原子を有するα−オレフィンが供給原料オレフィンとして使用される場合に、共重合およびコオリゴマー化反応のために使用することができる。
【0133】
本発明の触媒系を、少なくとも3個の炭素原子を有するα−オレフィンが供給原料オレフィンとして使用される場合に、二量体化反応、特に1−ブテン(例えば、ラフィネートIIに存在する)のオクテンへの二量体化のために、使用することができる。
【0134】
本発明の二量体化反応は、少なくとも3個の炭素原子を有する複数のα−オレフィンの二量体を形成することを含み、ここで、供給原料オレフィン中のα−オレフィンは同一の炭素原子数を有していない。
【0135】
プロペンが、本発明の二量体化反応における供給原料オレフィンとして使用される場合は、二量体の生成物オレフィンは、α−オレフィンでありうる。α−オレフィンがプロペンの二量体化において生成される場合は、前記α−オレフィン生成物オレフィンは、引き続き、別のプロペン供給原料オレフィンによって二量体化され、引き続き二量体化されうる、別のα−オレフィン二量体生成物が形成される結果となりうるか、プロペンの二量体化において生成されたα−オレフィンは、存在している、プロペンではない、他のあらゆるα−オレフィンと一緒に二量体化し、これ以上は二量体化され得ない内部オレフィン生成物を形成することができる。
【0136】
共重合、コオリゴマー化および二量体化反応において使用される好ましい供給原料オレフィンは、少なくとも4炭素原子を有するα−オレフィンである。共重合、コオリゴマー化および二量体化反応のために使用される供給原料オレフィンは、好ましくは多くとも20炭素原子、より好ましくは、多くとも12炭素原子、最も好ましくは多くとも8炭素原子および特に多くとも6炭素原子を有する。本発明の供給原料オレフィンは、直鎖または分岐でありうる。好ましくは、供給原料オレフィンは直鎖である。好ましくは、本発明の共重合、コオリゴマー化および二量体化反応において使用される供給原料オレフィンは、プロペン、1−ブテン、1−ペンテンおよび1−ヘキセン、およびこれらの混合物から選択される。
【0137】
本発明の共重合、コオリゴマー化および二量体化反応において使用される好ましい供給原料オレフィンは、反応物組成物の一部を形成することができる。前記反応物組成物は、他の直鎖または分岐α−オレフィン、直鎖または分岐内部オレフィン、直鎖または分岐パラフィンおよび溶媒などの他の化学的に不活性な成分を、場合により含むことができる。
【0138】
本発明の1つの実施形態において、供給原料オレフィン組成物は、同一温度範囲において沸騰するα−オレフィン、内部オレフィンおよびパラフィン、例えば、主として1−ブテンおよび2−ブテンからなるラフィネートII組成物を含むオレフィン組成物の蒸留留分を含むオレフィン組成物である。
【0139】
本発明のオリゴマー化および/またはコオリゴマー化反応を、好都合には、以下の条件を使用して実行することができる。
【0140】
反応させるべき、エチレンまたはエチレンおよび少なくとも3個の炭素原子を有するα−オレフィン供給原料オレフィンの混合物1モル当たり、10−4から10−9グラム原子の遷移金属原子Mを含有する分量の本発明の触媒系を、オリゴマー化またはコオリゴマー化反応混合物中で通常使用する。
【0141】
オリゴマー化またはコオリゴマー化反応を、最も好都合には、−100℃から+300℃の温度範囲にわたって、好ましくは、0℃から200℃の範囲において、およびより好ましくは50℃から150℃の範囲において実行することができる。
【0142】
オリゴマー化またはコオリゴマー化反応を、0.01から15MPa(0.1から150絶対バール)、より好ましくは、1から10MPa(10から100絶対バール)、および最も好ましくは、1.5から5MPa(15から50絶対バール)の圧力下で、好都合には、実行することができる。
【0143】
当業者は、オリゴマーまたはコオリゴマーの収量を最大にし、二量体化および重合などの競合反応を最小にする、特定の触媒系に使用する温度および圧力の最適条件を、容易に定めることができる。
【0144】
好ましくは、温度および圧力の条件を選択し、0.4から0.90の範囲にある、最も好ましくは0.60から0.80の範囲にあるシュルツ−フローリのK因子を有する生成物スレートを生産するようにする。本発明においては、生成物スレートが0.9を超えるK因子を有する場合に、重合が生じていると考えられる。
【0145】
供給原料オレフィンおよび生成物オレフィンの揮発度に応じて、オリゴマー化またはコオリゴマー化反応を、気相または液相、または気−液混合相において実行することができる。
【0146】
オリゴマー化またはコオリゴマー化反応を、触媒および/または供給原料オレフィンの担体でもありうる不活性溶媒の存在下で実行することができる。適切な溶媒には、アルカン、アルケン、シクロアルカン、および芳香族炭化水素が含まれる。例えば、本発明に従って適切に使用することができる溶媒には、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびキシレンが含まれる。
【0147】
触媒の活性に応じて、0.1から10時間の反応時間が適切であることが分かった。好ましくは、空気または湿気が存在しない状態で、反応を実行する。
【0148】
オリゴマー化またはコオリゴマー化反応を、従来の方法で実行することができる。この反応を攪拌槽型反応器において実行することができ、この場合は、オレフィンおよび触媒または触媒前駆体を連続的に攪拌槽に加え、生成物を分離しながら、供給原料オレフィン、生成物オレフィン、触媒、および触媒を攪拌槽から取り出し、未使用供給原料オレフィンおよび場合により触媒を攪拌槽に再循環させて戻す。
【0149】
あるいは、この反応をバッチ式反応器において実行することができ、この場合は、触媒前駆体または触媒系、および供給原料オレフィンをオートクレーブに充填し、適切な時間、反応させた後、蒸留などの従来の手段によって、生成物を反応混合物から分離する。
【0150】
適切な反応時間の後、エチレンを急速に抜き出して触媒系を失活させるようにし、オリゴマー化またはコオリゴマー化反応を停止させることができる。
【0151】
その結果得られたαオレフィンは、4から100炭素原子、好ましくは4〜30炭素原子、および最も好ましくは4から30炭素原子の鎖長を有する。
【0152】
生成物オレフィンを、適切には、蒸留によって回収することができ、意図されているオレフィンの最終用途に応じて、蒸留技術により、所望通りにさらに分離することができる。
【0153】
本明細書において記載されている種類の、可溶性の遷移金属錯体およびこれらの組成物は、3個の炭素原子またはそれを超える炭素原子を有するα−オレフィンの二量体化、前記αオレフィンおよびエチレンのコオリゴマー化、およびエチレンのオリゴマー化において、いずれの場合にも特に、溶液(特別にはトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒)に溶解した遷移金属錯体および触媒系を使用した場合、特に有用であることが分かった。
【0154】
上記の二量体化反応において使用する遷移金属錯体において、式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子に関するR〜R15置換基、XおよびNCは、上文で定義される。
【0155】
本発明の二量体化反応において使用する好ましい遷移金属錯体において、Mを、4族から10族の任意の遷移金属から選択する。本発明の二量体化の方法の一実施形態においては、Mを、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、PdまたはPt;より好ましくは、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiまたはPd;特にFe、CoまたはCrから選択する。
【0156】
本発明の二量体化の方法の別の実施形態においては、Mを、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Pd、Rh、Ru、Mo、Nb、Zr、Hf、Ta、W、Re、Os、IrまたはPt、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Ni、PdまたはPt、より好ましくは、V、Cr、Mn、Ni、またはPd、特にCrから選択する。
【0157】
本発明の二量体化の方法の別の実施形態においては、MをFeまたはCoから選択する。
【0158】
現在使用されている、エチレンのオリゴマー化の方法は、価値を限定してしまう低分子量のオレフィンを好ましくないほど大量に含有しているα−オレフィン生産物を製造する。加えて、炭化水素を製造するフィッシャー−トロプシュ法は、これもまた価値を限定する、価値の低い低級オレフィンを一定量製造する(例えば、ラフィネートII、1−ブテンを含むブテン組成物)。したがって、これらの留分を、価値の高い生産物、例えばより大きな分子量の直鎖オレフィン(例えば、オクテン)に変換する方法が求められている(すなわち、二量体化)。
【0159】
本発明の二量体化反応は、任意のC〜C12α−オレフィン、特にプロペン、1−ブテン、1−ペンテンおよび1−ヘキセンおよび前記α−オレフィンを含む組成物(例えば、1−ブテンおよび2−ブテンを含むラフィネートII)に、特に適している。
【0160】
本発明の二量体化反応を、好都合には、以下の条件を使用して実行することができる。
【0161】
反応させる少なくとも3個の炭素原子を有する供給原料オレフィンの混合物1モル当たり、10−3から10−9グラム原子の遷移金属原子Mを含有する分量の本発明の触媒系を、二量体化反応混合物中で通常使用する。
【0162】
二量体化反応を、−100℃から+200℃の温度範囲にわたって、好ましくは、−50℃から150℃の範囲において、およびより好ましくは−10℃から120℃、最も好ましくは10℃から100℃、特に20℃から90℃の範囲において、最も好都合には実行しうる。
【0163】
二量体化反応を、0.01から15MPa(0.1から150絶対バール)、より好ましくは、0.1から10MPa(1から100絶対バール)、および最も好ましくは、0.1から5MPa(1から50絶対バール)の圧力下で、好都合には実行することができる。
【0164】
直鎖二量体の収量を最大にし、供給原料オレフィンの異性化などの競合反応を最小にするための、特定の触媒系に使用する温度および圧力の最適条件を、当業者は容易に定めることができる。
【0165】
供給原料オレフィンおよび生成物オレフィンの揮発度に応じて、二量体化反応を、気相または液相、または気−液混合相において実行することができる。
【0166】
二量体化反応を、触媒系および/または供給原料オレフィンの担体でもありうる不活性溶媒の存在下で実行することができる。適切な溶媒には、アルカン、アルケン、シクロアルカン、および芳香族炭化水素が含まれる。例えば、本発明に従って、適切に使用することができる溶媒には、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびキシレンが含まれる。
【0167】
触媒の活性に応じて、0.1から10時間の反応時間が適切であることが分かった。好ましくは、空気または湿気が存在しない状態で、反応を実行する。
【0168】
二量体化反応を、従来の方法で実行することができる。この反応を攪拌槽型反応器において実行することができ、この場合は、供給原料オレフィンおよび触媒系または触媒前駆体を連続的に攪拌槽に加え、供給原料オレフィンおよび触媒系を、すぐ次の段階で分離することができる生成物オレフィンと一緒に攪拌槽から取り出し、場合により未使用供給原料オレフィンおよび/または触媒系を攪拌槽に再循環させて戻す。
【0169】
あるいは、この反応をバッチ式反応器において実行することができ、この場合は、触媒系または触媒系前駆体、および供給原料オレフィンをオートクレーブに充填し、適切な時間、反応させた後、蒸留などの従来の手段によって、生成物を反応混合物から分離する。
【0170】
適切な反応時間の後、触媒組成物を空気に曝すこと、または供給原料オレフィンの反応を衰弱させることにより、二量体化反応を停止させることができる。
【0171】
本発明の二量体化の方法によって製造した生成物オレフィンは、好ましくは、少なくとも6炭素原子および多くとも30炭素原子、より好ましくは多くとも20炭素原子、および最も好ましくは16炭素原子を含有する。本発明の二量体化の方法の一態様においては、生成物オレフィンは、6から12炭素原子、好ましくはヘキセン、オクテン、デセンおよびドデセン、特にオクテンを含む直鎖オレフィンである。
【0172】
生成物オレフィンを、適切には、蒸留によって回収することができ、オレフィンの意図されている最終用途に応じて、蒸留技術により所望通りにさらに分離することができる。
【0173】
本発明を以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0174】
一般的な手順およびキャラクタリゼーション
調製に使用したすべての化学薬品は、アルドリッチ(Aldrich)から購入し、特段の記載がない限り、さらに精製することなく使用した。
【0175】
触媒系に関するすべての操作は、窒素雰囲気下で実施した。使用したすべての溶媒は、標準の手順を用いて乾燥した。
【0176】
無水トルエン(純度、99.8%)を、4Åモレキュラーシーブの上で乾燥した(最終水分含有量は約3ppm)。イソオクタン(2,4,4−トリメチルペンテン、純度、99.8%)を、長時間の窒素パージに引き続き、4Åモレキュラーシーブの上を通過させることによって乾燥した(最終水分含有量は約1ppm)。無水ペンテン(純度、99.8%)を、4Åモレキュラーシーブの上を通過させることによって乾燥した(最終水分含有量は約1ppm)。
【0177】
エチレン(純度、99.5%)を、4ÅモレキュラーシーブおよびBTS触媒(BASF)を収容しているカラムの上で精製し、水および酸素含有量を1ppm未満に低減するようにした。プロペン(純度、99.0%)および1−ブテン(グレード2.0、すなわち、純度、99.0%)を、Hoek Loos N.V.、ディーレン、オランダから購入した。アルドリッチから入手した1−ペンテン(純度、99%)およびシェルケミカルズ(Shell Chemicals)から入手した1−ヘキセン(純度、99%超)を、さらに精製することなく使用した。
【0178】
得られたオリゴマーを、ガスクロマトグラフィー(GC)によるキャラクタリゼーションを行い、HP5890シリーズIIの装置および以下のクロマトグラフの条件:
[カラム:HP−1(橋かけメチルシロキサン)、フィルム厚さ=0.25μm、内径=0.25mm、長さ60m(ヒューレットパッカードによる);射出温度:325℃;検出温度:325℃;初期温度:10分の間40℃;温度プログラム速度:10.0℃/分;最終温度:41.5分の間325℃;内部標準:n−ヘキシルベンゼン]
を使用して、オリゴマー分布を評価するようにした。
【0179】
偶数および奇数の直鎖α−オレフィン、内部ヘキセン(シスおよびトランス−2−ヘキセン、およびシスおよびトランス−3−ヘキセン)、および分岐ヘキセン(3−メチル−1−ペンテンおよび2−エチル−1−ブテン)の、n−ヘキシルベンゼン(内部標準)と比較した応答因子を、標準較正混合物を使用して求めた。分岐および内部ヘプテンおよびドデセンの応答因子は、対応する偶数および奇数の直鎖α−オレフィンに等しいと仮定した。
【0180】
エチレンのオリゴマー化の場合は、C〜C30オレフィンの収量をGC分析から求め、これからC〜C100オレフィンのK因子および理論収量、すなわち、全オリゴマー化生成物(Total Product:全生成物)を、C〜C28のデータを使用して重回帰分析により求めた。
【0181】
α−オレフィンのオリゴマー化または二量体化、またはエチレンおよびα−オレフィンのコオリゴマー化の場合は、分岐および内部、偶数および奇数のオレフィンの収量を、同じGC法によって求めた。
【0182】
GC分析から判明した、全ヘキセン異性体の直鎖1−ヘキセンの相対的な量、全ヘプテン異性体の1−ヘプテンの相対的な量、全デセン異性体の1−デセンの相対的な量、および全ドデセン異性体の1−ドデセンの相対的な量を、直鎖α−オレフィンの形成に対する触媒の選択性の尺度として使用する。
【0183】
NMRデータを、Varian300MHzまたは400MHzの装置により室温で得た。
【0184】
遷移金属錯体の実用上の溶解度を、ドライボックスの不活性雰囲気下において周囲温度で求めた。
【0185】
固体の錯体1mgを、NMR試料管(外径5mm)内で0.5mlのベンゼン−D6と接触させ、穏やかに回転させて混合した。回転させ、または振り動かしながら、固体の錯体および溶媒を1分間接触させた後でも、着色溶液にならず、固体が沈殿したままである場合は、さらに溶媒を最終的に1.0mlの体積になるまで段階的に添加する。ベンゼン−D6の体積を1.0mlまで段階的に増加させ、周囲温度に24時間静置した後でも、溶媒が着色せず、固体が沈殿したままである場合は、この錯体を、1mg/ml未満の溶解度を有するとして分類する。溶液が着色し、錯体1mgが溶媒約1mlに溶解する場合は、これを約1mg/mlの溶解度を有するとして分類する。同様に、錯体のより高い溶解度については、錯体の量を10mgまたは100mgまで増加させ、ベンゼン−D6を、0.5mlから出発して段階的(0.1−mlステップで)に増加させることによって、実用上の溶解度を評価する。錯体の溶解度を、トルエン中で室温において確認したが、ベンゼン−D6の結果と同様の結果をもたらした。これらの遷移金属錯体の溶解度を、これらのNMRスペクトルの測定が可能であることによって確認した。24時間静置したとき、および、また、時々は遠心分離(2500rpmで30分間)したときの、沈殿物の形成を検査し、少なくとも10mg/mlの溶解度を有するとして分類した錯体については、沈殿物が存在しないことが分かった。
【0186】
遷移金属錯体および触媒の調製
(実施例1(比較例))
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体(1)を、WO02/28805に開示されている方法に従って調製した;この錯体は下式を有する:
【0187】
【化8】

【0188】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける溶解度は、20℃において1mg/ml未満である。
【0189】
(実施例2(比較例))
以下に記載の方法に従って調製した、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体:
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、(B)の調製
【0190】
【化9】

【0191】
WO02/28805に開示された方法に従って調製した、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−アセチルピリジン(1.3g、4.64mmol)、および3,5−ジ−tert−ブチルアニリン(1g、4.87mmol)を、トルエン100mlに溶解させた。この溶液に対して、4Åモレキュラーシーブを添加した。2日間静置した後で、混合物を濾過した。溶媒を減圧して除去した。残渣をメタノールで洗浄し、エタノールから晶出させた。収量、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンを1.1g(51%)。
【0192】
H−NMR(CDCl)δ8.43(d,1H,Py−H)、8.37(d,1H,Py−H)、7.87(t,1H,Py−H)、7.16(t,1H,ArH)、6.89(s,2H,ArH)、6.69(d,2H,ArH)、2.42(s,3H,Me)、2.29(s,3H,Me)、2.22(s,3H,Me)、2.01(s,6H,Me)、1.33(s,18H,Bu)。
【0193】
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体、(C)の調製
【0194】
【化10】

【0195】
不活性雰囲気中で、20mlのジクロロメタンに溶解した400mgのジイミン(0.855mmol)の溶液を、30mlのジクロロメタンに溶解した100mgのFeCl(0.789mmol)に添加した。混合物を16時間攪拌した。少量の沈殿物を遠心分離により除去した。ペンタン(40ml)をこの溶液に添加した。青色の沈殿物を濾過によって単離し、減圧して乾燥した。収量、鉄錯体Cを0.420g(90%)。
【0196】
H−NMR(ClCDCDCl,広幅シグナル)δ78.6(1H,Py−H)、76.8(1H,Py−H)、29.7(1H,Py−H)、20.9(3H,Me)、18.3(6H,Me)、15.2(2H,ArH)、0.7(18H,Bu)、−4.1(3H,MeC=N)、−11.5(1H,ArH)、−15.6(2H,o−ArH)、−30.7(3H,MeC=N)。
【0197】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃において、1mg/ml未満であると評価する。
【0198】
(実施例3〜10)
あるいは、以下の実験に使用した触媒は、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリド錯体、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリド錯体、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリドテトラキス[3,5−ビス[トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンクロム[III]トリクロリド錯体、2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリド錯体、2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリド錯体、2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンクロム[III]トリクロリド錯体および2−[1−(2−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリド錯体であり、以下に記載の方法に従って調製したものであった。
【0199】
4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリドの調製
【0200】
【化11】

【0201】
エタノール30mlに溶解した4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルアニリン(4g、15.3mmol)に、無水酢酸1.6mlを添加した。反応を16時間攪拌した。得られた混合物を水中に注いだ。ピンク色の生成物(6g)を、濾過により単離し、水で洗浄し、乾燥して、さらに精製することなく使用した。
【0202】
H−NMR(CDCl,選択データ)δ5.31(s,OH)、2.16(s,Me)。
【0203】
4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリドの調製
【0204】
【化12】

【0205】
4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリド(6g)、1−ブロモエイコサンおよび10gの炭酸カリウムの混合物を、アセトン(70ml)中で16時間還流した。反応混合物を水の中に注いだ。生成物を濾過により単離し、水で洗浄し、乾燥した。ペンタンからの晶出により、4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリド7.2gが、白色の固体として生じた。
【0206】
H−NMR(CDCl,選択データ)δ3.13(t,CHO)、2.17(s,Me)。
【0207】
4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルアニリンの調製
【0208】
【化13】

【0209】
4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリド(7.2g)に、30mlのHOおよび40mlのエタノール中に溶解した24gのNaOHを添加した。得られた混合物を16時間還流した。反応混合物を氷の上に注いだ。生成物を濾過により単離し、水で洗浄した。エタノールからの晶出により、4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルアニリン5.9g(10.9mmol)が白色の固体として生じた。
【0210】
H−NMR(CDCl)δ7.27〜7.63(m,10H,ArH)、6.67(s,2H,ArH)、3.60(br s,2H,NH)、3.09(t,2H,CHO)、0.8〜1.4(m,39H,アルキル)。
【0211】
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、(D)の調製
【0212】
【化14】

【0213】
WO02/28805に開示された方法に従って調製した、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−アセチルピリジン(3g、10.7mmol)および4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルアニリン(5.8g、10.7mmol)を、トルエン200mlに溶解させた。この溶液に、4Åモレキュラーシーブを添加した。1日間静置した後、混合物を濾過した。溶媒を減圧して除去した。残渣を冷えたエタノールから晶出させた。生成物Dを、減圧下において60℃で乾燥した後、黄色の糖蜜(treacle)(6.5g、8.1mmol、76%)として単離した。
【0214】
H−NMR(CDCl)δ8.45(d,1H,Py−H)、8.37(d,1H,Py−H)、7.89(t,1H,Py−H)、7.67(d,4H,ArH)、7.1〜7.5(m,16H,ArH)、6.90(s,2H,ArH)、6.86(s,2H,ArH)、3.19(t,2H,CHO)、2.51(s,3H,Me)、2.29(s,3H,Me)、2.22(s,3H,Me)、2.01(s,6H,Me)、0.8〜1.4(m,39H,アルキル)。
【0215】
(実施例3)
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリド錯体、(E)の調製
【0216】
【化15】

【0217】
不活性雰囲気中で、20mlのジクロロメタンに上記のジイミン(D)5gを溶解した溶液を、30mlのジクロロメタンに溶解した788mgのFeClに添加した。混合物を16時間攪拌した。この溶液を濾過し、溶媒を減圧して除去した。得られた緑青色の生成物を、ペンタンで洗浄し、濾過によって単離し、減圧下で乾燥した。収量、鉄錯体Eを5g(86%)。
【0218】
H−NMR(CDCl,広幅シグナル,選択データ)δ81.4(1H,Py−H)、80.5(1H,Py−H)、21.1(3H,Me)、17.3(6H,Me)、16.0(2H,ArH)、0.21(3H,Me)、−13.8(2H,ArH)、−30.4(3H,Me)。
【0219】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で約50mg/mlであると評価する。
【0220】
(実施例4)
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリド錯体、(F)の調製
【0221】
【化16】

【0222】
不活性雰囲気中で、10mlのジクロロメタンに1.44g(1.79mmol)のジイミンD、(Mes/Sol20)を溶解した溶液を、10mlのジクロロメタンに溶解した220mgのCoCl(1.69mmol)に添加した。混合物を16時間攪拌した。濾過した後、減圧して溶媒の一部を除去することにより、溶液を濃縮した。15mlのペンタンを添加することによって、生成物を、得られた溶液(約5ml)から析出させた。黄褐色の固体を遠心分離により単離し、ペンタンで洗浄し、減圧下で乾燥した。収量、コバルト錯体Fを1.25g(79%)。
【0223】
H−NMR(CDCl,広幅シグナル,選択データ)δ106.5(1H,Py−H)、105.6(1H,Py−H)、12.8(1H,Py−H)、11.8(3H,Me)、3.4(2H)、2.9(4H)、0.1(2H)、−0.2(2H)、−0.7(2H)、−1.5(2H)、−1.8(2H)、−2.4(2H)、−10.5(3H,Me)、−16.6(6H,Me)、−60.9(2H,ArH)。
【0224】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で50mg/mlであると評価する。
【0225】
(実施例5)
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリドテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、(G)の調製
不活性雰囲気中で、ナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(ABCR GmbH & Co.、カールスルーエ、ドイツ)313mg(0.353mmol)を、20mlのトルエンに330mg(0.353mmol)のコバルト錯体Fを溶解した溶液に添加した。溶液を、室温で1時間攪拌した。遠心分離によって沈殿物を除去した後、溶媒を減圧下で除去した。得られた油をペンタンで3回洗浄した。減圧下で乾燥した後、生成物を黄色がかった固体(560mg、90%)として単離した。
【0226】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で約10mg/mlであると評価する。
【0227】
(実施例6)
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンクロム[III]トリクロリド錯体、(H)の調製
【0228】
【化17】

【0229】
不活性雰囲気中で、10mlのジクロロメタンに439mg(0.54mmol)のジイミンDを溶解した溶液を、10mlのジクロロメタンに溶解した195mg(0.52mmol)のクロム[III]クロリドテトラヒドロフラン錯体、CrCl(THF)に添加した。混合物を4時間攪拌した。溶液を濾過した。減圧下で溶媒を除去することにより、溶液を濃縮した(5ml)。ペンタン(20ml)を添加した。得られた緑色の沈殿物をペンタンで洗浄し、減圧下で乾燥した。収量、クロム錯体、Hを0.4g(80%)。
【0230】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で約1mg/mlであると評価する。
【0231】
2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、(J)の調製
【0232】
【化18】

【0233】
ジアセチルピリジン(1.43g、8.77mmol)および4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルアニリン(9.5g、17.53mmol)をトルエン400mlに溶解させた。この溶液に対して、4Åモレキュラーシーブを添加した。1週間静置した後、さらに4Åモレキュラーシーブを添加し、混合物を濾過した。溶媒のほとんどを、減圧下で除去した。静置時に、赤色の沈殿物が形成された。生成物、Jを単離した(5.52g、51%)。
【0234】
H−NMR(CDCl)δ8.35(d,2H,Py−H)、7.88(t,1H,Py−H)、7.66(d,8H,ArH)、7.3〜7.5(m,12H,ArH)、6.86(s,4H,ArH)、3.19(t,4H,CHO)、2.50(s,6H,Me)、0.8〜1.4(m,39H,アルキル)。
【0235】
(実施例7)
2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリド錯体、(K)の調製
【0236】
【化19】

【0237】
不活性雰囲気中で、20mlのジクロロメタンに4g(3.3mmol)のジイミンJを溶解した溶液を、20mlのジクロロメタンに溶解した419mg(3.3mmol)のFeClに添加した。混合物を48時間攪拌した。紫青色の溶液を濾過した。溶媒を減圧下で除去した。得られた、黒ずんだ油様の生成物をペンタンで洗浄し、減圧下で乾燥した。収量、鉄錯体Kを3.5g(79%)。
【0238】
H−NMR(C,広幅シグナル,選択データ)δ70.5(2H,Py−H)、−13.4(4H,ArH)、−26.2(6H,Me)。
【0239】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で約100mg/mlであると評価する。
【0240】
(実施例8)
2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリド錯体、(L)の調製
【0241】
【化20】

【0242】
不活性雰囲気中で、2mlのジクロロメタンに40mg(33μmol)のジイミンJを溶解した溶液を、4mgのCoClに添加した。混合物を5時間攪拌した。溶液を濾過した。溶媒を減圧下で除去した。生成物をペンタンで洗浄し、減圧下で乾燥した。収量、コバルト錯体Lを25mg。
【0243】
H−NMR(C,広幅シグナル,選択データ)δ103(2H,Py−H)、−10(6H,Me)、−50(4H,ArH)。
【0244】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で約100mg/mlであると評価する。
【0245】
(実施例9)
2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンクロム[III]トリクロリド錯体、(M)の調製
【0246】
【化21】

【0247】
不活性雰囲気中で、10mlのジクロロメタンに0.84g(0.92mmol)のジイミンJを溶解した溶液を、10mlのジクロロメタンに溶解した0.25g(0.66mmol)のCrCl(THF)に添加した。混合物を4時間攪拌した。溶液を濾過した。減圧下で溶媒を除去することによって、溶液を濃縮(5ml)した。ペンタン(20ml)を添加した。得られた緑色の沈殿物をペンタンで洗浄し、減圧下で乾燥した。収量、クロム錯体Mを0.6g(84%)。
【0248】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で約50mg/mlであると評価する。
【0249】
2−[1−(2−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、(N)の調製
【0250】
【化22】

【0251】
WO02/28805に記載の方法に従って調製した、2−[1−(2−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]−6−アセチルピリジン(487mg、1.65mmol)、および4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルアニリン(900mg、1.65mmol)をトルエン50mlに溶解した。この溶液に対して、4Åモレキュラーシーブを添加した。1日静置した後で、混合物を濾過した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を、エタノールから晶出させた。生成物Nを、黄色の固体(600mg、0.73mmol、44%)として単離した。
【0252】
H−NMR(CDCl)δ8.38(dd,2H,Py−H)、7.90(t,1H,Py−H)、6.5〜7.7(m,16H,ArH)、3.21(t,2H,CHO)、2.52(s,3H,Me)、2.40(s,3H,Me)、1.37(s,9H,t−Bu)、0.8〜1.35(m,39H,アルキル)。
【0253】
(実施例10)
2−[1−(2−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリド錯体、(O)の調製
【0254】
【化23】

【0255】
不活性雰囲気中で、10mlのジクロロメタンに300mg(0.365mmol)のジイミンNを溶解した溶液を、5mlのジクロロメタンに溶解した40mgのCoCl(0.308mmol)に添加した。混合物を16時間攪拌した。濾過した後、減圧下で溶媒の一部を除去することにより溶液を濃縮した。得られた溶液(約2ml)に10mlのペンタンを添加した後で、生成物はゼリーを形成した。黄褐色の固体を遠心分離によって単離し、ペンタンで洗浄し、減圧下で乾燥した。収量、コバルト錯体Oを234mg(80%)。
【0256】
H−NMR(C,広幅シグナル,選択データ)δ113(1H,Py−H)、112(1H,Py−H)、18(1H,Py−H)、−10.8(9H,t−Bu)、−56.0(2H,ArH)、−85.6(1H,ArH)。
【0257】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で約50mg/mlであると評価する。
【0258】
(実施例11(比較例))
4−ヒドロキシ−2−メチルアセトアニリドの調製
【0259】
【化24】

【0260】
4−ヒドロキシ−2−メチルアニリン5.0g(40.6mmol)を120mlのエタノールに溶解させると、濁った、薄い橙色の懸濁液を生じた。攪拌している混合物に、4.0ml(4.3g、42.3mmol)の無水酢酸を一滴ずつ添加して、懸濁液を溶解させた。溶液を一晩中攪拌し続けた。引き続き、すべての揮発性物質を80℃において減圧下で除去し、次いで、100mlの水で素早く洗浄し、次に真空下で乾燥した。3.85g(58%の収量)の明るい褐色の固体を回収した。
【0261】
4−エイコサンオキシ−2−メチルアニリンの調製
【0262】
【化25】

【0263】
1.51g(9.1mmol)の4−ヒドロキシ−2−メチルアニリンを、100mlのアセトンに溶解させた。これに、6.54g(45mmol、5当量)の炭酸カリウムを添加し、得られた懸濁液を激しく攪拌した。これに、3.65g(10.1mmol)の1−ブロモエイコサンを添加し、次いで、反応混合物を加熱して、22時間還流した。室温に冷却した後、500mlの脱イオン水を添加し、この溶液を激しく攪拌した。懸濁液を減圧下で濾過し、形成された白色固体を75℃において減圧下で一晩中乾燥した。生成物(白色粉末)3.72gを回収した(収量、92%)。
【0264】
4−エイコサン−2−メチルアニリンの調製
【0265】
【化26】

【0266】
9.22g(0.02mol)の4−エイコサンオキシ−2−メチルアセトアニリドを、30mlの水および40mlのエタノールに18.3g(0.45mol)の水酸化ナトリウムを溶解した溶液中でスラリにした。攪拌しながら、スラリを加熱して還流し、40時間還流を続けた。得られた2相液体系を冷却し、500mlの粉砕した氷の上に注ぎ、攪拌した。白色固体生成物を濾過し、25mlの脱イオン水で2回洗浄すると、生成物が生じ、これを真空オーブン内で乾燥した(収量、5.4g、67%)。
【0267】
2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの調製
【0268】
【化27】

【0269】
10.0g(25mmol)の4−エイコサンオキシ−2−メチルアニリンを、250mlの還流トルエン中で、29gの4Åモレキュラーシーブの存在下において、2.3g(14mmol)の2,6−ジアセチルピリジンと、20時間攪拌しながら反応させた。引き続き、化合物を熱い間に濾過し、揮発性物質を減圧下で残渣から除去した。次いで、化合物を高温のエタノール(300ml)で洗浄すると、黄色の固体が生じ、これを真空オーブン内で乾燥した(収量、9.1g、69%)。
【0270】
H−NMR(CDCl中、加熱溶解後)δ8.37(d,2H,Py−H)、7.86(t,1H,Py−H)、6.82(d,2H,ArH)、6.75(dd,2H,ArH)、6.61(d,2H,ArH)、3.95(t,4H,CHO)、2.36(s,6H,Me)、2.12(s,6H,Me)、1.78(m,4H)、1.0〜1.6(m,68H)、0.88(t,6H,Me)。
【0271】
2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体の調製
【0272】
【化28】

【0273】
110mg(0.12mmol)の2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンを、10mlのジクロロメタンに溶解した35mg(0.28mmol)のFeClと、ドライボックス内で周囲温度において16時間攪拌しながら反応させた。得られた緑色の懸濁液を遠心分離し、上澄み液をデカンテーションした。次いで、揮発性物質を減圧下で除去すると、緑色の粉末を生じた(収量、54mg、42%)。
【0274】
H−NMR(CDCl,広幅シグナル,選択データ)δ78.2(2H,Py−H)、39および31(1H,Py−H)、19.5および16.8(6H,MeAr)、40.9および41.2(2H,ArH)、−22.7および−26.1(6H,Me)。
【0275】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で1mg/ml未満であると評価する。
【0276】
(実施例12)
2,6−ビス[1−(2−メチル−4−エイコサンオキシ−5−イソ−プロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの調製
【0277】
【化29】

【0278】
表題の化合物を、上記の2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの調製と同様に、還流トルエン中で20時間、4Åモレキュラーシーブの存在下において、2−メチル−4−エイコサンオキシ−5−イソ−プロピルアニリンと2,6−ジアセチルピリジンとの縮合により調製した。
【0279】
その目的のために、上記の4−エイコサンオキシ−2−メチルアニリンの調製と同様に、2−メチル−4−ヒドロキシ−5−イソ−プロピルアニリン(Specs、Delftechpark 30、2628 XH Delft、オランダから入手できる)を、アミノ基をアセチル化し、次いで、1−ブロモエイコサンと反応させてヒドロキシ基をアルキル化し、最後にアミド官能基のアセチル基を除去することにより、2−メチル−4−エイコサンオキシ−5−イソ−プロピルアニリンに変換した。
【0280】
H−NMR(CDCl)δ8.38(d,2H,Py−H)、7.85(t,1H,Py−H)、6.72(s,2H,ArH)、6.56(s,2H,ArH)、3.95(t,4H,CHO)、3.15(m,2H,CH)、2.36(s,6H,Me)、2.11(s,6H,Me)、1.78(m,4H)、1.2〜1.6(m)、1.2(d,Me)、0.88(t,6H,Me)。
【0281】
2,6−ビス[1−(2−メチル−4−エイコサンオキシ−5−イソ−プロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリドの調製
【0282】
【化30】

【0283】
鉄錯体を、2,6−ビス[1−(2−メチル−4−エイコサンオキシ−5−イソ−プロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジンおよびジクロロメタンに溶解したFeClから調製した。
【0284】
H−NMR(CDCl,広幅シグナル,選択データ)δ75.9(2H,Py−H)、42.0および41.2(1H,Py−H)、21.3および20.2(6H,MeAr)、−12.4および−20.9、(2H,ArH)、−26.0(6H,Me)。
【0285】
CDClを除去した後では、生成物はCに溶解する:H−NMR(大広幅シグナル,選択データ)δ65(Py−H)、23(MeAr)、−37(Me)。
【0286】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で約10mg/mlであると評価する。
【0287】
(実施例13(比較例))
4−プロポキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリドの調製
【0288】
【化31】

【0289】
4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリド(3.45g)、1−ブロモプロパン(1.4g)および4.8gの炭酸カリウムの混合物を、アセトン(50ml)中で16時間還流した。反応混合物を、水の中に注いだ。生成物を濾過により単離し、水で洗浄し、乾燥した。収量、4−プロポキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリドを3.8g。
【0290】
H−NMR(CDCl)δ7.1〜7.7(m,ArH)3.10(t,2H,CHO)、2.14(s,Me)、1.16(m,2H,CH)、0.49(t,3H,Me)。
【0291】
4−プロポキシ−3,5−ジフェニルアニリンの調製
【0292】
【化32】

【0293】
4−プロポキシ−3,5−ジフェニルアセトアニリド(3.8g)に、30mlのHOおよび40mlのエタノールに溶解した22.5gのNaOHを添加した。得られた混合物を16時間還流した。反応混合物を氷の上に注いだ。水で洗浄した後、生成物を油として単離した。
【0294】
H−NMR(CDCl)δ7.3〜7.7(m,10H,ArH)、6.68(s,2H,ArH)、3.61(br s,2H,NH)、3.06(t,2H,CHO)、1.13(m,2H,CH)、0.48(t,3H,Me)。
【0295】
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−プロポキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの調製
【0296】
【化33】

【0297】
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−アセチルピリジン(387mg、1.38mmol)および4−プロポキシ−3,5−ジフェニルアニリン(440mg、1.45mmol)をトルエン50mlに溶解させた。この溶液に、4Åモレキュラーシーブを添加した。1日静置した後、混合物を濾過した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を冷えたエタノールから晶出させた。生成物を、黄色の糖蜜(700mg)として単離し、そのままで使用した。
【0298】
H−NMR(CDCl)δ8.45(d,1H,Py−H)、8.37(d,1H,Py−H)、7.89(t,1H,Py−H)、7.68(d,4H,ArH)、7.1〜7.5(m,16H,ArH)、6.90(s,2H,ArH)、6.87(s,2H,ArH)、3.17(t,2H,CHO)、2.52(s,3H,Me)、2.30(s,3H,Me)、2.23(s,3H,Me)、2.02(s,6H,Me)、1.20(m,2H,CH)、0.54(t,3H,Me)。
【0299】
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−プロポキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリド錯体の調製
【0300】
【化34】

【0301】
不活性雰囲気下で、20mlのジクロロメタンに675mgのジイミンを溶解した溶液を、10mlのジクロロメタンに溶解した140mgのCoClに添加した。混合物を16時間攪拌した。溶液を濾過した。溶媒を減圧下で除去した。得られた茶色の生成物を、ペンタンで洗浄し、濾過によって単離し、減圧下で乾燥した。収量、コバルト錯体を700mg。
【0302】
H−NMR(CDCl,広幅シグナル,選択データ)δ103.0(1H,Py−H)、98.5(1H,Py−H)、−18.1(6H,ArMe)、−62.8(2H,ArH)。
【0303】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で1mg/ml未満であると評価する。
【0304】
(実施例14(比較例))
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの調製
【0305】
【化35】

【0306】
表題の化合物を、4−ヒドロオキシ−3,5−ジフェニルアニリンと、WO02/28805に開示された方法に従って調製した2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−アセチルピリジンとの、4Åモレキュラーシーブを使用した、トルエン中の縮合によって、上記の2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−プロポキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの調製と同様に調製した。
【0307】
H−NMR(CDCl)δ8.43(d,1H,Py−H)、8.35(d,1H,Py−H)、7.90(t,1H,Py−H)、7.62(d,4H,ArH)、7.50(t,4H,ArH)、7.42(m,2H,ArH)、6.89(s,2H,ArH)、6.83(s,2H,ArH)、2.52(s,3H,Me)、2.28(s,3H,Me)、2.21(s,3H,Me)、1.98(s,6H,Me)。
【0308】
2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリドの調製
【0309】
【化36】

【0310】
鉄錯体を、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンおよびジクロロメタンに溶解したFeClから調製した。
【0311】
H−NMR(CDCl,広幅シグナル,選択データ)δ82.6(1H,Py−H)、82.3(1H,Py−H)、21.0(3H,Me)、18.5(6H,Me)、−4.0(3H,Me)、−18(2H,ArH)、−31.3(3H,Ar)。
【0312】
トルエンまたはベンゼン−Dにおける生成物の溶解度を、20℃で1mg/ml未満であると評価する。
【0313】
共触媒
下記の二量体化またはオリゴマー化の実験に使用した第1の共触媒化合物は、ABCR GmbH & Co.(カールスルーエ、ドイツ)から購入したナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(NaBArF)であり、上記のように個別に調製することまたはアルミニウムアルキルまたはアルミノキサンを添加する直前にその場で調製することによって、可溶性遷移金属ピリジン−ジイミン触媒前駆体をカチオン遷移金属触媒錯体に転換するためのものとして使用した。
【0314】
下記の実験において使用する第2のまたは単独で適用される共触媒は、以下から選択した:
メチル基の約25%がイソブチル基に置換されている改質メチルアルミノキサン(MMAO)。ヘプタンに溶解したMMAO−3A([Al]=6.42重量%)、AKZO−NOBEL Chemicals、B.V.、Amersfoort、オランダから入手できる;
トルエンに溶解したメチルアルミノキサン(MAO)、Eurecen AL5100/10Tの商品名で供給された、バッチ:B7683;[Al]=4.88重量%、TMA=35.7重量%(計算による)、分子量=900g/molのものおよびWitco GmbH、Bergkamen、ドイツから供給された[Al]=4.97重量%のもの;および
アルドリッチから入手した、ペンタンに溶解したトリメチルシリルメチルリチウム、MeSiCHLiの1.0M溶液。
【0315】
(実施例15〜23)
バッチ式オートクレーブにおける(コ)−オリゴマー化用の触媒系の調製
Braun MB 200−Gドライボックス内で、遷移金属錯体、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体、2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンクロム[III]トリクロリドまたは2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリド(通常、約22.5μmol)を、ほぼ当モル量のナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(NaBArF)(表1を参照されたい)の存在下または非存在下で、ガラス瓶に置き、隔壁(septum)により封止した。トルエン(通常、約10ml)を添加した。これらの溶液の一部をオリゴマー化反応に使用した。
【0316】
0.5リットルのバッチ式オートクレーブにおけるエチレンの(コ)オリゴマー化
オリゴマー化実験を、加熱/冷却浴(例えば、Julabo、型番ATS−2)により冷却するジャケットおよびタービン/ガス攪拌機および邪魔板を装備した、0.5リットルの鋼鉄オートクレーブにおいて実施した。
【0317】
反応器から水の痕跡を除去するために、反応器を、10Pa未満の圧力において、70℃で一晩中排気した。反応器に250mlのトルエン、MAO(0.3g溶液)を導入し、続いて0.4〜0.5MPaの窒素圧力下において70℃で30分間攪拌することにより、反応器を洗浄(scavenge)した。反応器の内容物は、オートクレーブの底にある蛇口を経由して排出した。反応器を、0.4kPaまで排気し、ほぼ125mlの1−ブテンおよび/または1−ペンテンおよび/またはトルエン(表1を参照されたい)を充填し、40℃に加熱し、エチレンによって表1に示した圧力に加圧した。
【0318】
攪拌しながら、MAO溶液の一定量(表1を参照されたい)を、トルエン(注入した総量は12mlであった:トルエンにより4mlに希釈したMAO溶液を注入し、注入システムを4mlのトルエンで2回すすぎ洗いした)の助けを借りて反応器に添加し、800rpmの攪拌を30分間継続した。
【0319】
上記のように調製した触媒系0.20μmolを、トルエン(注入した総量は12mlであった:トルエンにより4mlに希釈した触媒溶液を注入し、注入器システムを4mlのトルエンで2回すすぎ洗いした)の助けを借りた注入システムを用いて、攪拌している反応器に導入した。反応器の初期装填は、約150mlのα−オレフィンおよび/またはトルエンであった。
【0320】
触媒系を添加すると、一般に1分以内に最大に達する発熱(一般に約5℃)が生じ、続いて表1に示した温度および圧力が定まった。
【0321】
所望の体積のエチレンを消費した後、エチレンを急速に抜き出すことによりオリゴマー化を停止させ、生成物混合物をオートクレーブの底にある蛇口を使用して収集瓶にデカンテーションした。混合物を空気に曝すと、触媒は急速に失活した。
【0322】
n−ヘキシルベンゼン(0.5〜3.5g)を、内部標準として粗生成物に添加した後、C〜C30オレフィンの量およびC、C10およびC12オレフィンの純度を、ガスクロマトグラフィーにより求めた。シュルツ−フローリのK因子およびこの標準誤差を、WO01/58874に詳細に記載されているように、C〜C28オレフィンの量から重回帰分析によって求めた。シュルツ−フローリのK因子から、C〜C100オレフィンの総量を、生成物を単離する間に生じる、特に揮発性の1−ブテンの、損失を補償するようにして計算する。実験データを表1に報告する。
【0323】
クロム触媒を使用する場合は、同様の装備をした1リットルの鋼鉄オートクレーブを使用し、(0.5リットルのオートクレーブの上記手順と同じく)300mlのトルエン、MAO溶液およびn−ヘキシルベンゼン(内部標準として)を、(コ)オリゴマー化または(共)重合反応の開始時に装填し、引き続き、表1に記載の条件で維持した。
【0324】
所望の量のエチレンを消費した後、反応器を急速に室温まで冷却し、揮発性生成物、特にブテンの蒸発を最小限にした。エチレンを急速に抜き出すことによって反応を停止させ、オートクレーブの底にある蛇口を使用して、生成物混合物を収集瓶にデカンテーションした。混合物を空気に曝すと、触媒は急速に失活した。エチレンとの反応を、内部標準(n−ヘキシルベンゼン)の存在下で実施し、生成物を単離した直後に、生成物を上記のガスクロマトグラフィー(GC)法により分析するので、オレフィンがショルツ−フローリ分布する場合に使用することができる方法である、高級オレフィンの重回帰分析を使用する必要なしに、揮発性ブテンのより信頼性のある量を定めることができる。
【0325】
実験データを、下表1に示す。
【0326】
【表1】

a)最初に、300mlのトルエン、MAOおよびn−ヘキシルベンゼン(内部標準)を装填した1リットルのオートクレーブにおいて、2.0μmolの2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンクロム[III]トリクロリドを使用した、エチレンのオリゴマー化。
b)主として二量体化:ブテン類=92.8重量%(1−ブテン=97.5、トランス2−ブテン=1.5およびシス2−ブテン=1.1重量%からなる);ヘキセン類=7.0重量%(1−ヘキセン=30.4、3−メチル−1−ペンテン=1.4、2−エチル−1−ブテン=64.2および内部ヘキセン=3.4重量%からなる)、デセン類<0.1重量%およびポリエチレン(PE)<0.2重量%(ポリエチレンを含む、全生成物を基準として)。
c)主として二量体化:ブテン類=70.5重量%(1−ブテン=97.7、トランス2−ブテン=1.4およびシス2−ブテン1.0重量%からなる);ヘキセン類=9.0重量%(1−ヘキセン=50.6、3−メチル−1−ペンテン=0.9、2−エチル−1−ブテン=46.0および内部ヘキセン=2.6重量%からなる)、デセン類=1.1重量%およびポリエチレン(PE)=16.4重量%(ポリエチレンを含む、全生成物を基準として)。
d)ヘキセン類:1−ヘキセン=98.8、3−メチル−1−ペンテン=0.9、2−エチル−1−ブテン=0.1および内部ヘキセン類=0.2重量%;分岐C10=2.9、内部C10=0.3、分岐C12=3.9および内部C12=0.1重量%。
e)トルエンの代わりに、体積比が1.04の1−ペンテン/トルエンを150mlおよび30μmolの2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリドを使用した、1−ペンテンおよびエチレンのコオリゴマー化。
f)ヘキセン類:1−ヘキセン=97.7、3−メチル−1−ペンテン=1.6、2−エチル−1−ブテン=0.2および内部ヘキセン類=0.4重量%;分岐C10=6.8、内部C10=1.3、分岐C12=8.5および内部C12=0.9重量%。
g)ヘプテン類:1−ヘプテン=66.0、3−メチル−1−ヘキセン=29.2および2−エチル−1−ペンテン=3.8、内部ヘプテン類=1.1重量%;1−ノネン=56.8、1−ウンデセン=61.6および1−トリデセン=58.8重量%。
h)トルエンの代わりに、体積比が0.79である1−ブテン/トルエンを150mlおよび30μmolの2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリドを使用した、1−ブテンおよびエチレンのコオリゴマー化。
i)ヘキセン類:1−ヘキセン=90.0、3−メチル−1−ペンテン=8.3、2−エチル−1−ブテン=0.2および内部ヘキセン類=1.3重量%;分岐C10=12.8、内部C10=2.2、分岐C12=14.1および内部C12=0.9重量%。
j)トルエンの代わりに、体積比が6.67である1−ブテン/トルエンを150mlおよび34μmolの2,6−ビス[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]ジクロリドを使用した、1−ブテンおよびエチレンのコオリゴマー化。
k)ヘキセン類:1−ヘキセン=39.0、3−メチル−1−ペンテン=3.3、2−エチル−1−ブテン=36.2および内部ヘキセン類=19.0重量%;分岐C10=77.0および内部C10=6.2重量%。
【0327】
MAO共触媒(一般に、約300μmolの量で存在する)の微少量(遷移金属のモルを基準として約1.05当量、または約0.21μmol)を、ナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(NaBArF)などの遷移金属錯体カチオンを生成する化合物と交換した場合は、直鎖αオレフィンに対する選択性(それぞれのC、C10およびC12留分の、重量%で表した1−C、1−C10および1−C12によって評価した)は、NaBArFの非存在下で実施した実験と少なくとも同等である(実施例15〜17を参照されたい)。
【0328】
NaBArFを添加した場合は、全オレフィン収量を基準とした直鎖α−オレフィンに対する選択性は、C〜C100オリゴマーの収量およびターンオーバー数(TON=Fe 1mol当たりの、変換されたエチレンのモル数)から明らかなように、NaBArFを添加しない実験の選択性と少なくとも同等である(実施例15および16を参照されたい)。
【0329】
シュルツ−フローリK因子およびこの標準誤差は、NaBArFの存在下および非存在下で実施した実験と同一のままである。WO01/58874に記載の、純粋なシュルツ−フローリ分布からの偏差を表す尺度である標準誤差は、非常に小さく、重質オレフィン(C30〜C100)の分布のスソが、どちらの場合も形成されていないことを示す。
【0330】
MAO共触媒の量を低減してNaBArFと一緒に使用しても、直鎖α−オレフィンに対する触媒の選択性に悪影響を及ぼすことはないことも分かる(実施例15〜17を参照されたい)。
【0331】
可溶性遷移金属触媒前駆体の別の利点は、NaBArFなどの遷移金属錯体カチオンを生成する化合物を使用することによって、ヒドロカルビルまたは水素化物基をMAOまたはMMAOへ移動することができる代替化合物、例えば、RLi、RZnまたはRAlなどの当業者に知られている任意の適切な化合物を容易に使用できることである。
【0332】
NaBArFの存在下または非存在下で、可溶性Cr[III]触媒を使用したエチレンのオリゴマー化および/または重合の概要を表1に示す(実施例18および19)。NaBArFの非存在下では、可溶性クロム錯体は、類似のFe[II]触媒より約一桁低いターンオーバー数(TON)において、多量の二量体を形成する(1−ブテンは、全生成物の90重量%を超える)ことを述べておく。ヘキセン類の1−ヘキセン含有量は低い(30.4重量%);最も多い生成物は、2−エチル−1−ブテンである。少量(70mg)のポリエチレン(PE)も形成される(2つの繰り返し実験において、PEの量は、それぞれ31および91mgであったが、二量体の相対的な量は一定のままであった)。
【0333】
1当量のNaBArFの存在下では、同じCr[III]錯体は、また、いくらか低いTONにおいて、多量の二量体(1−ブテンは全生成物の69重量%である)を形成した。ヘキセン類の1−ヘキセン含有量は、より高く(50.6重量%);多量の副生物は、やはり、2−エチル−1−ブテンであった。さらに、多量の(3.3g;16.4重量%)高分子量ポリエチレン(PE)が形成される。PEの示差走査熱量測定(DSC)は、127℃の融点を示した。実験を繰り返すと、生成物は、より少量(12.4重量%)の高分子量ポリマー(DSC m.p.=129℃)を含有していた。
【0334】
NaBArFの存在下および非存在下において可溶性Fe[II]錯体を使用した、1−ペンテンおよび1−ブテンなどのα−オレフィンとエチレンとのコオリゴマー化の概要を表1(実施例20〜23)に示す。実施例21においては、生成物の39重量%は奇数のオレフィンからなり、1−ペンテンが、用いた条件下でコオリゴマー化されていることを示す。
【0335】
低K因子(低成長(low propagation))を有する触媒である、対称性の可溶性Fe[II]触媒K(実施例23)を使用する場合、生成物スペクトルは、触媒Eを使用する場合のスペクトルとは驚くほど異なっていた。鉄錯体Eを含む触媒系とは対照的に、対称性鉄錯体Kを含む触媒系を使用する場合は、比較的大量の1−ブテンが、鉄−エチルの中に1,2−挿入されて、2−エチル−1−ブテンの形成をもたらすと考えられる。
【0336】
(実施例24〜31)
バッチ式オートクレーブにおける二量体化のための触媒系の調製
Braun MB200−Gドライボックスにおいて、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリドテトラキス[3,5−ビス[トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリド錯体または2−[1−(2−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリド錯体を、ほぼ当モル量のナトリウムテトラキス[3,5−ビス[トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(NaBArF)(通常、約50μmol−表2を参照されたい)の存在下または非存在下において、隔壁により封止されたガラス瓶の中に置いた。トルエン(通常、約10ml)を添加した。得られた混合物を少なくとも30分間攪拌した。これらの溶液の一部を、下記の二量体化実験において使用した。
【0337】
0.5リットルのバッチ式オートクレーブにおけるα−オレフィンの二量体化
二量体化実験を、加熱/冷却浴(例えば、Julabo、型番ATS−2)により冷却するジャケットおよびタービン/ガス攪拌機および邪魔板を装備した、0.5リットルの鋼鉄オートクレーブにおいて実施した。
【0338】
水の痕跡を避けるために、反応器を、窒素圧力下(0.5MPa)において室温で保持した。実験に先立ち、反応器に250mlのトルエン、MAO(0.3g溶液)を導入し、続いて0.5〜0.6MPaの窒素圧力下において70℃で30分間攪拌することにより、反応器を洗浄(scavenge)した。反応器の内容物を、オートクレーブの底にある蛇口を経由して排出した。反応器を0.4kPaまで排気し、20℃に冷却した。その後、反応器に120mlの1−ブテン(等級2.0、Hoek Loos)を装填し、30℃に加熱した。
【0339】
次いで、攪拌しながら、MAO溶液(最小で210mg)(表1を参照されたい)を、トルエンの助けを借りて(MAO溶液を注入した、続いて注入器を2回すすぎ洗いし、全注入量を10mlにした)反応器に添加し、800rpmの攪拌を60分間継続した。
【0340】
触媒溶液(この調製については、上に述べてある)の必要量(50μmol)を、注入システムを使用して攪拌中の反応器に導入し、その後で、注入器を3〜4mlのトルエンで3回すすぎ洗いした(反応器の全内容物は150ml)。
【0341】
触媒系を添加すると、少量の発熱(一般に3〜8℃)が生じるが、この発熱はサーモスタット浴により容易に吸収され、反応器を最初の状態に戻した。
【0342】
約2時間後、オートクレーブの底にある蛇口を用いて、生成物混合物を収集瓶に移すことによって実験を停止した。混合物を空気に曝すと、触媒は急速に失活した。
【0343】
n−ヘキシルベンゼン(0.5〜3.5g)を内部標準として粗生成物に添加した後、C、CおよびC12オレフィンの量および純度を、ガスクロマトグラフィーによって求めた。
【0344】
αオレフィン、主として1−ブテンの二量体化実験の結果を表2に示し、下記に詳細に記載した。
【0345】
あるとき、窒素雰囲気中の周囲温度および圧力下における小規模二量体化実験において、ドライボックス内の攪拌されている容器内で、1−ペンテンを使用した(表2、実施例30および実施例30の詳細な説明を参照されたい)。1当量のNaBArFの後で、MAOまたはMMAOではなく、トリメチルシリルメチルリチウム、MeSiCHLiを1当量添加することによってコバルトカチオン錯体を段階的に活性化することにより、カチオンコバルト錯体の(アルキル化による)活性化を、その場で達成することもできる。このことは、MAOまたはMMAOを使用せずに、触媒を活性化できることを立証している。
【0346】
実施例30(表2を参照されたい):活性化されたカチオンCo[II]錯体Gによって触媒される1−ペンテンの反応
周囲温度における攪拌された容器内で、不活性雰囲気下(ドライボックスにおける)において、11.3μmolのカチオンCo[II]触媒、MAOではなく、1当量のMeSiCHLiを添加(アルキル化)して活性化した2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリドテトラキス[3,5−ビス[トリフルオロメチル)フェニル]ボレートを使用して、1−ペンテン(4.6g;65.7mmol)を、二量体化して直鎖シスおよびトランス3−デセンおよび4−デセン(2.8重量%の2−プロピル−1−ヘプテンが、主たる分岐不純物である)の混合物を得た。1−ペンテンを、直鎖シス/トランス3−デセンおよび4−デセン(2.8重量%の2−プロピル−1−ヘプテンが、主たる分岐不純物である)およびほぼ等しい量のシス/トランス2−ペンテンへ変換した。結果の概要を表2に示す。
【0347】
生成物をGCおよびNMRにより分析したので、この結果を表2に示す。
【0348】
【表2】

a)2001年9月18日付の、B.L Small、E.J Baralt、A.J.Marcucciの米国特許6291733B1号に従って、10.9μmolの2,6−ビス[1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体およびMMAOを使用。
b)B.L.Small、Organometallics 2003、22、3178〜3183、に従って、21.2μmolの2,6−ビス[1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体およびMMAOを使用;この場合は、二量体/異性体の比率がオリゴマー/異性体の比率に置き換えられている。
c)B.L.Small、Organometallics 2003、22、3178〜3183、に従って、53.1μmolの2,6−ビス[1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリド錯体およびMMAOを使用。
d)先行の実験において、MAO(1200〜16000μmol)を段階的に添加し、次いで、17μmolの可溶性Co[II]触媒前駆体を追加しても、二量体化を開始させないことを観測した;二量体化は、この系に、4.6μmolのカチオンCo[II]触媒系、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリドテトラキス[3,5−ビス[トリフルオロメチル)フェニル]ボレートを添加した後、始めて開始した。
e)小規模で、1−ペンテンおよび、MAOではなく、1当量のMeSiCHLiを添加(アルキル化)して活性化した2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]クロリドテトラキス[3,5−ビス[トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(カチオンCo[II]錯体)を使用。1−ペンテンは、直鎖シス/トランス3−および4−デセン類(2.8重量%の2−プロピル−1−ヘプテンが主たる分岐不純物である)およびほぼ等しい量のシス/トランス2−ペンテンに変換された。
f)2−[1−(2−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリド錯体、(O)から誘導された、48μmolの代替トルエン可溶性Co[II]触媒系を使用。
【0349】
これらの実施例から、化学量論のNaBArFを添加することにより中性遷移金属錯体を段階的に活性化し、引き続き、比較的少量のMAOまたはMMAOによる活性化を行うことによって形成させた、可溶性カチオン遷移金属錯体を使用する場合は、MAOまたはMMAOのみで活性化した遷移金属錯体と比較して、アルミニウム(MAO)上でより大きなTONを得ることができることは、明らかである(実施例26および28を参照されたい)。可溶性Co[II]触媒は、高級オリゴマーと比較して二量体に対する選択性を有しており、この選択性は、文献に記載されている非可溶性触媒と同等である(表2、実施例29および比較例26を参照されたい)。同じことが、直鎖二量体をもたらす、頭−頭結合二量体化(head−to−head dimerization)の選択性にも当てはまる。直鎖二量体の形成に対する選択性は、Fe[II]の場合よりもCo[II]触媒の場合の方がはるかに大きいことを述べておく。
【0350】
発明者らは、驚くべきことに、別に調製したまたはその場で調製した可溶性コバルト[II]カチオン触媒を使用すると、文献に記載されているように、非常に過剰のMMAOを添加して活性化させたCo[II]触媒と比較して、二重結合のシフト(異性化)の選択性以上に、二量体に対する選択性を高めることを発見した(表2、実施例26、28および29を参照されたい)。
【0351】
1当量のNaBArFをその場で添加することにより、2−[1−(2−tert−ブチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンコバルト[II]ジクロリド錯体、(O)から誘導した可溶性触媒系を使用することは(表2、実施例31を参照されたい)、文献に記載されている、実施例26のCo[II]触媒と比較して、直鎖二量体の形成に対する非常に大きな選択性(1−ブテンから2−ブテンへの異性化がより少量であること)をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む、ビス−アリールイミンピリジンMX錯体である遷移金属錯体
[式中、R〜R、R〜R、R12およびR14は、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、互いに隣接した、R〜RおよびR〜Rの任意の2つを一緒にして環を形成することができ、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R10は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、RまたはRと一緒になって環を形成し、R11は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R12またはRと一緒になって環を形成し、R15は水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、不活性官能基であるか、R14またはRと一緒になって環を形成し、ただし、R13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから独立に選択されるか、R13はR12またはR14と一緒になって環を形成し、またはR12はR11と一緒になって環を形成し、R14はR15と一緒になって環を形成し、R12、R13およびR14の少なくとも1つは置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシであり;
Mは、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Pd、Rh、Ru、Mo、Nb、Zr、Hf、Ta、W、Re、Os、IrまたはPtから選択された遷移金属原子であり;
nは遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しく;
Xはハロゲン化物、置換されていてもよいヒドロカルビル、アルコキシド、アミドまたは水素化物である。]。
【請求項2】
それぞれ請求項1において定義された通りの、ビス−アリールイミンピリジン配位子、XおよびMを含み、
NCは非配位アニオンであり;
p+qは遷移金属原子Mの形式的な酸化状態に等しい、
[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体である遷移金属錯体。
【請求項3】
12、R13およびR14は、すべて独立に、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから選択され、ただし、R12、R13およびR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである、請求項1または2に記載の遷移金属錯体。
【請求項4】
13は、およびR12とR14の少なくとも1つは、独立に、置換されていてもよいC〜C25アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜Cアリールから選択され、ただし、R12、R13およびR14の少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである、請求項1または2に記載の遷移金属錯体。
【請求項5】
は、およびRとRの少なくとも1つは、独立に、置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシ、ハロゲンおよび置換されていてもよいC〜C20アリールから選択されるか、RはRまたはRと一緒になって環を形成し、またはRはRと一緒になって環を形成し、およびRはR10と一緒になって環を形成し、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである、請求項1から4のいずれか一項に記載の遷移金属錯体。
【請求項6】
、RおよびRは置換されていてもよいC〜C30アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜C20アリールからすべて独立に選択され、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである、請求項1から4のいずれか一項に記載の遷移金属錯体。
【請求項7】
は、およびRとRの少なくとも1つは、独立に、置換されていてもよいC〜C25アルキル、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシおよび置換されていてもよいC〜Cアリールから選択され、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換されていてもよいC〜C30アルキルオキシである、請求項5に記載の遷移金属錯体。
【請求項8】
前記置換されていてもよいC4〜30アルキルオキシ基がエイコサンオキシ基である、請求項1から7のいずれか一項に記載の遷移金属錯体。
【請求項9】
MがCrである、請求項1から8のいずれか一項に記載の遷移金属錯体。
【請求項10】
請求項1において定義された通りの式(I)を有し、R1〜15が請求項1から8のいずれか一項において定義された通りであり、ビス−アリールイミンピリジン配位子が、2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンではないビス−アリールアミンピリジン配位子。
【請求項11】
請求項1において定義された通りの式(I)を有し、R1〜6およびR10〜15が請求項1から4のいずれか一項において定義された通りであり、R〜Rが請求項5から8のいずれか一項において定義された通りのビス−アリールイミニオピリジン配位子。
【請求項12】
請求項1において定義された通りの式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含み、R1〜15、Xおよびnが請求項1から8のいずれかにおいて定義された通りであり、MはFeおよびCoから選択された遷移金属であり、遷移金属錯体が2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリド錯体ではないビス−アリールイミンピリジンMX錯体である遷移金属錯体。
【請求項13】
請求項1において定義された通りの式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含み、R1〜15、X、p、q、NCが、請求項2から7のいずれか一項において定義された通りであり、MはFeおよびCoから選択された遷移金属である[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体である遷移金属錯体。
【請求項14】
〜Rが請求項5から8のいずれか一項において定義された通りの、請求項12または13に記載の遷移金属錯体。
【請求項15】
それぞれ請求項1において定義された通りの式Iを有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含み、R〜R15それぞれは請求項1から8のいずれか一項において定義された通りであり、Xおよびnは請求項1において定義された通りであり、p、NCおよびqは請求項2において定義された通りであり、Mは遷移金属である、ビス−アリールイミンピリジンMX錯体または[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体である遷移金属錯体の、少なくとも10mg ml−1が、無極性媒質、特に化学的に不活性な無極性溶媒に存在する溶液。
【請求項16】
金属Mが鉄またはコバルトである遷移金属錯体の、特に2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリド錯体の少なくとも50mg ml−1がトルエン中に存在している、請求項15に記載の溶液。
【請求項17】
(a)請求項1から9のいずれか一項に記載の1種または複数の遷移金属錯体;およびこれらの混合物;ならびに
(b)(i)ビス−アリールイミンピリジンMX錯体が存在する場合は、(1)アニオンを引き抜き、ヒドロカルビルもしくは水素化物基を遷移金属原子に移動させることのできる共触媒化合物、または(2)アニオンを引き抜くことができる共触媒化合物およびヒドロカルビルもしくは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物;および/または
(b)(ii)[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体が存在する場合は、ヒドロカルビルまたは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物
を含む触媒系。
【請求項18】
下記を含む触媒系:
(a)下記:
(i)請求項1において定義された通りの式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含み、R1〜15、Xおよびnは請求項1から8のいずれか一項において定義された通りであり、MはFeおよびCoから選択された遷移金属である、ビス−アリールイミンピリジンMX錯体、および
(ii)請求項1において定義された通りの式(I)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含み、R1〜15、X、p、qおよびNCは請求項2から8のいずれか一項において定義された通りであり、MはFeおよびCoから選択された遷移金属である、[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体
から選択された1種または複数の遷移金属錯体、ならびに
(b)(i)ビス−アリールイミンピリジンMX錯体が存在する場合は、(1)アニオンを引き抜き、ヒドロカルビルもしくは水素化物基を遷移金属原子に移動させることのできる共触媒化合物、または(2)アニオンを引き抜くことができる共触媒化合物およびヒドロカルビルもしくは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物;および/または
(b)(ii)[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体が存在する場合は、ヒドロカルビルまたは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物;
[ただし、遷移金属原子がFeまたはCoである場合、この触媒系は、式ZnR’(式中、それぞれのR’は、同一であっても異なっていてもよく、水素、置換されていてもよいC〜C20ヒドロカルビル、フェニル、Cl、Br、I、SR”、NR”、OH、OR”、CN、NCから選択され、R”は、同一分子内において同一であることも異なることもできる、C〜C20ヒドロカルビルである。)を有する1種または複数の化合物を含まず、この触媒系は、MAOを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体ではなく、
または、遷移金属がFeである場合は、この触媒系は、MAOを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体またはMAOおよびZnEtを有する2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(4−エイコサンオキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド錯体ではない。]。
【請求項19】
前記ビス−アリールイミノピリジン配位子が、請求項11において定義された通りの、請求項17および18に記載の触媒系。
【請求項20】
共触媒化合物(b)が、アルキルアルミニウム、アルミノキサンおよびこれらの混合物から選択される、請求項17から19のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項21】
(a)請求項15または16において定義された通りの遷移金属錯体を少なくとも1つ、および(b)請求項17において定義された通りの共触媒化合物を含む触媒系を、少なくとも10mg ml−1含有する、無極性媒質または化学的に不活性な無極性溶媒中の溶液。
【請求項22】
少なくとも3個の炭素原子を含むα−オレフィンであるまたは3個の炭素原子およびエチレンを含むαオレフィンである供給原料オレフィンを触媒系と接触させることを含み、該触媒系は、
(a)ビス−アリールイミンピリジンMX錯体、[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体およびこれらの混合物である遷移金属錯体から選択され、これらのそれぞれは、請求項1から8のいずれかにおいて定義された通りの式(I)(式中、R1〜15、Xおよびnは請求項1から8のいずれか一項において定義された通りであり、p、NCおよびqは請求項2において定義された通りであり、Mは遷移金属である。)を有するビス−アリールイミンピリジン配位子を含む、1種または複数の遷移金属錯体、ならびに、
(b)(i)ビス−アリールイミンピリジンMX錯体が存在する場合は、(1)アニオンを引き抜き、ヒドロカルビルもしくは水素化物基を遷移金属原子に移動させることのできる共触媒化合物または(2)アニオンを引き抜くことができる共触媒化合物およびヒドロカルビルもしくは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物および/または
(b)(ii)[ビス−アリールイミンピリジンMX][NC錯体が存在する場合は、ヒドロカルビルまたは水素化物基を遷移金属原子に移動させることができる共触媒化合物
を含む、
二量体化のまたはコオリゴマー化の方法。
【請求項23】
MがFe、CoまたはCrである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
エチレンである供給原料オレフィンを、請求項17または18において定義された通りの触媒系に接触させることを含むオリゴマー化の方法。
【請求項25】
請求項1において定義された通りの式Iを有するビス−アリールイミンピリジンにおいて、R、RおよびRが、請求項5から8のいずれか一項において定義された通りの、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
共触媒化合物(b)が、アルキルアルミニウム、アルミノキサンおよびこれらの混合物から選択される、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
触媒系が、請求項21に記載の溶液中に存在する、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−530506(P2007−530506A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504414(P2007−504414)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051316
【国際公開番号】WO2005/090371
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】