説明

選択性または分離性の改善されたSAWフィルタ

圧電基板表面に形成されているSAWフィルタにおける2つの音響トラックの間に、それぞれ異なるトラック内に配置されている2つの変換器をシールドするために金属のシールド構造が配置されており、このシールド構造はアースと接続されている。このようにしてフィルタ内部においてクロストークが回避され、阻止選択性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
SAWフィルタは少なくとも1つの音響的なトラックから成り、そこには少なくとも1つの電気音響変換器が配置されている。この種の電気音響変換器は少なくとも2つの電流レールを有しており、これらは通常、音響表面波の伝播方向に対し平行に配置されている。電流レール各々に対し垂直に電極フィンガが配置されており、これらはインターディジタル電極構造すなわち交差指電極構造を成している。
【0002】
1つのフィルタから成る1つのトラックあるいは種々のフィルタから成るそれぞれ異なるトラックが、1つの圧電基板上に空間的に互いに密に配置されている場合、変換器のような構成素子構造と電流レールを成す複数の金属化部の間に、殊に2つの異なる音響トラックのトラックに平行に配向された電流レールの間に、容量性の相互作用が引き起こされる可能性がある。両方の音響トラックが互いに結線されており同じフィルタに属する場合には、これによって一般に阻止選択性が変化する。また、別個の2つのフィルタにおける音響トラック間で電磁的な結合が発生すると、これにより分離が劣化してしまうおそれがある。その結果、一方のフィルタの出力側における望ましくない信号成分もしくは未知の信号成分がそのフィルタまたは他方のフィルタの入力側によって受信されてしまうことになり、このような信号成分によって本来の信号が誤ったものとなってしまい、これは避けなければならないものである。広く一般的に言えば、この主の容量性の相互作用をクロストークと称する。
【0003】
DMSフィルタの場合、互いに結線された複数のトラックに変換器を配置することができる。通常、音響トラックはこれらに対し互いに平行に配向されており、コストのかさむチップ面積を節約するためにそれらのトラックは空間的に密接して配置されている。たとえば入出力変換器の場合、互いに対向する変換器もしくはそれぞれ異なる音響トラックにおいて互いに密接して配置されている電流レールが形成され、これによって少なからぬクロストークが引き起こされ、フィルタ選択性が劣化してしまう。この問題点が殊に発生するのは、入力変換器または出力変換器において隣り合うトラックと向き合った電流トラックが、アース電位とは異なる電位と接続されている場合である。変換器の電気的な接続が音響トラックの側で行われているような変換器の場合にも、著しく強い作用が発生する。この場合、そのようなトラックにおいて対応する電流レールが2つの部分レールに分けられており、これらの部分レールが2つの端子と接続されている。互いに対向する電流レールは一体であり、外部から与えられる電位とは接続されておらず、したがって浮いた電位(中間電位)をとる。たとえばDE 100 13 861 A1から知られておりVスプリット変換器とも称されるこの種の変換器を対称的に(バランスをとって)駆動制御する場合には、浮いた電流レールが仮想的なアースを成す。つまり対称的に結線されおり、そのほかには残りのフィルタが最適に対称的に構成されているならば、浮いた電位は正確にアース電位におかれる。ただしこの仮想的なアースの電位がゼロから隔たると対称ノイズが発生し、これによってフィルタ機能が損なわれ、殊に選択性の低下が引き起こされる。この種の2トラック型または複数トラック型のDMSフィルタにおける仮想的なアースのこのような「変位ドリフト」は、電磁的な結合によって引き起こされる可能性がある。
【0004】
したがって本発明の課題は、音響トラック間の電磁的な結合を抑圧し、ひいてはフィルタの選択性または複数フィルタの分離を改善したフィルタを提供することにある。
【0005】
本発明によればこの課題は、請求項1の特徴を備えたSAWフィルタによって解決される。従属請求項には本発明の有利な実施形態が示されている。
【0006】
本発明は、隣り合う2つの音響トラック間にアースと接続された金属のシールド構造を配置したSAWフィルタを提案するものである。このようにすることで、さもないとクロストークを起こしがちであるそれぞれ異なるトラックに配置された変換器を、互いに保護ないしは遮蔽することができる。両方のトラックが1つの共通のフィルタに属しており電気的に互いに結線されているのであれば、このようにすることで阻止選択性が改善され、阻止帯域にある信号がいっそう良好に抑圧される。互いにシールドされる変換器がそれぞれ異なるフィルタに属している場合には、このようにしてそれらのフィルタ間の分離が改善される。
【0007】
シールド構造の役割は、クロストークを引き起こす電磁フィールドラインすなわち磁束および電気力線を、金属製のシールド構造を介してアース端子へ逃がすことである。したがって本発明による金属製のシールド構造を、値のよいアースないしは品質の高いアースとして構成するのが有利である。このことが意味するのは、少なくとも1つの、いっそうよいのは2つまたはそれよりも多くのアース端子が設けられているということである。また、アースの品質は、シールド構造の面積が増すにつれて向上する。シールド構造の金属の厚さを増やすことも可能である。
【0008】
本発明によるシールド構造は、以下のようなフィルタにおいて格別な利点を発揮する。すなわちこのフィルタの場合、互いにシールドすべき変換器がVスプリット変換器として構成されており、この変換器の分割された電流レールが各端子と接続されているのに対し、それぞれ他方の連続した電流レールは浮いた状態におかれている。本発明によるシールド構造をもたないこの種のフィルタにおいては過度に強まったクロストークの発生するおそれがある。その理由は、浮いた状態にある電流レールにおいては端子が欠けていることから、隣り合うレールの間隔が低減されていることによる。
【0009】
本発明によるシールド構造は有利には連続した金属化平面によって構成されており、この平面は有利には少なくとも、互いにシールドすべき変換器の長さにわたって延在している。シールド構造の面積につれてアースの品質も高まるので、音響トラックに対し垂直方向に測定されるシールド構造の幅は最大限に選定される。この場合、音響トラックがまえもって定められた間隔を有しているならば、トラック間に存在する平面がシールド構造によって最適に満たされる。高品質のシールド構造のためのスペースを作る目的で、シールドされていないフィルタによりもトラックの間隔を付加的に広げるのが有利である。これによりフィルタの所要面積が大きくなり、これは本来は欠点を意味するが、このことは阻止選択性もしくは分離性ないしは絶縁性の改善によって相殺される。
【0010】
本発明の1つの実施形態によればフィルタはDMSフィルタとして構成されており、これには第1のトラックに設けられている入力変換器として用いられる第1の変換器および第1の結合変換器と、これに対し第2のトラックに設けられている第2の結合変換器および出力変換器として用いられる第2の変換器が設けられている。これらのほか各トラックには、入力変換器、出力変換器または結合変換器として用いられる任意の個数の変換器をさらに設けることもできる。両方の音響トラックは結合ラインを介して接続されており、この結合ラインは第1および第2の変換器の電流レールとそれぞれ接続されている。第1のトラックの入力変換器と第2のトラックの出力変換器との間に、つまり第1の変換器と第2の変換器との間に、シールド構造が配置されている。
【0011】
本発明の1つの有利な実施形態によればこのシールド構造は、個々の結合変換器において結合ラインと接続されている電流レールとは反対側に位置する電流レールと付加的に接続されている。これはたとえば、結合変換器においてそれぞれ他方のトラックの側の電流レールである。このような配置構成の場合、結合ラインは結合変換器における外側の電流レールとそれぞれ接続されているので、やはり有利なことに結合ラインは音響トラックの外側を、もしくは個々のトラックの周囲を巡って案内される。
【0012】
ただし、反射器を結合ラインに組み込んで、それにより信号を反射器を通して案内することも可能である。この実施形態は著しくスペースを節約するものである。その理由は、これによれば反射器が信号ラインに組み込まれて付加的なラインが不要となるからである。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、シールド構造は反射器と接続される。この場合、シールド構造のアース端子を反射器のために用いることができ、したがって反射器を別個にアース端子と接続することができる。しかしながら、シールド構造だけをアース端子と接続し、反射器をシールド構造と接続してもよい。ただし、反射器もシールド構造もアース端子と接続することができる。
【0014】
有利には、シールド構造は他の金属化部とともに基板上に形成され、したがって有利には同一の構造を有している。他の理由から異なる金属化ステップが必要とされる場合には、組み合わせられた多重の金属化部をシールド構造にもたせることもでき、たとえばこれを変換器、反射器または電流レールとして用いられる金属化部よりも厚く構成することができる。このためシールド構造を、同じステップで他の金属化部といっしょに形成することができ、製造に際して余分なプロセス要求ないしはプロセスコストがかからない。
【0015】
変換器のための適切な金属化部ひいてはシールド構造のために考えられる金属化部の構成部材はたとえばアルミニウム、アルミニウムを含有する合金から成り、あるいはこの種のアルミニウムを含む少なくとも1つの層をもつ多層構造によって形成される。さらに金属化部と基板表面との間に、固着を向上させる付加的な層を設けることができる。
【0016】
金属化部の上にパッシベーション層を配置することができる。この種のパッシベーション層を付加的に設けられた誘電体層とすることができ、たとえば薄いSiO層とすることができる。とはいえ、金属化部の最上層つまりは変換器およびシールド構造の最上層を酸化させて、たとえば相応の酸化物に転換することもできる。したがってアルミニウムを含む金属化部が、有利にはアルミニウム酸化物から成るパッシベーション層によって覆われることになる。アノード酸化あるいは元の金属化部を酸素含有プラズマ中で相応にプラズマ処理することによって、これを生成することができる。
【0017】
さらに、電流レールおよび/またははんだ付け可能な端子面あるいはアンダーバンプ金属化部を付加的に増強することができ、その際、このプロセスにおいてシールド構造も増強することができる。
【0018】
フィルタの金属構造の接続つまりはシールド構造、変換器ならびに場合によってはフィルタのその他の部分に対する接続を、ボンディングワイヤを介して行うことができる。ただし微小化された構成素子の場合には殊にフリップチップ配置が有利であり、これによればフィルタ構造を支持する圧電基板がバンプ接合部を介して支持体基板と以下のように接続される。すなわちこの場合、構成素子構造が支持体基板の方に向けられて、互いに接続すべき電気端子面がじかに向き合うようにし、ついでバンプによって接続される。
【0019】
次に、図面を参照しながら実施例に基づき本発明について詳しく説明する。これらの図面は本発明を具体的に説明するために用いるものであり、したがって概略的に示されているにすぎず、縮尺どおりには描かれていない。また、図示されている素子たとえば電極フィンガの個数も素子の寸法同様、実際のフィルタ構成とは異なるものである。
【0020】
図1は、本発明によるシールド構造を備えた2トラック型DMSフィルタを示す図、図2は、シールド構造が結合変換器のアース端子と接続されている2トラック型DMSフィルタを示す図、図3は、スプリットされていないないしは分割されていない入力変換器および出力変換器を備えた2トラック型DMS装置を示す図、図4は、トラックあたりそれぞれ2つの変換器と、スプリットされていない入出力変換器を備えた2トラック型DMS装置を示す図、図5は、2トラック型DMSフィルタの結線変形例を示す図、図6は、2トラック型DMSフィルタの別の変形結線例を示す図、図7は、本発明によるフィルタの通過特性を公知のフィルタと比較して示す図、図8は、さらに改良された本発明によるフィルタの通過特性を公知のフィルタと比較して示す図である。
【0021】
図1には、2トラック3変換器型フィルタとして実現されている本発明の第1の簡単な実施形態が示されている。(図1の下方に描かれている)第1のトラックに第1の変換器W1が配置されていて、これは2つの端子を介して入力側INと接続されており、したがってこれは入力変換器として用いられる。第1の変換器W1の両側には、第1の結合変換器K1と別の結合変換器K1′が配置されている。
【0022】
第2の音響トラックは第2の変換器W2を有しており、これは出力側OUTと接続されていて、出力変換器を成している。第2のトラックにおいて第2の変換器W2の両側には、それぞれ第2の結合変換器K2,K2′が隣り合って配置されている。第1および第2の結合変換器K1,K2;K1′,K2′は、結合ラインKL,KL′を介して互いに接続されている。各トラックは両側で、それぞれ1つの反射器R1,R1′,R2,R2′によって区切られている。この場合、入力変換器および出力変換器(第1および第2の変換器)W1,W2はVスプリット変換器として構成されており、対称的につまりバランスがとられて駆動される。ただし、第1および第2の変換器の一方または双方を非対称に駆動し、この目的で端子の一方をゼロ電位または基準電位(アース)におくようにしてもよい。双方のトラックの間には、平坦な金属化部としてシールド構造ASが形成されている。シールド構造ASはここでは少なくとも、音響トラックに平行に定められた第1および第2の変換器の長さを超えて延在しており、この場合、これら第1および第2の変換器を相互に遮蔽すなわちシールドしなければならない。音響トラックに対し垂直方向におけるシールド構造の所定の幅は変換器の電流レールにおける幅よりも著しく大きく、これは両方のトラックにおける間隔に合わせて最適化されており、あるいはそのような間隔を最適に満たしている。シールド構造はアース端子と接続されている。この図における別の構成として、結合変換器K1,K2各々において結合ラインKLとは接続されていない電流レールは、じかに隣り合う反射器Rとともにアース端子へと導かれている。
【0023】
図2には本発明の別の実施形態が示されており、この実施形態によれば、結合変換器Kにおいてそれぞれ他方のトラックから離れている側の電流レールもしくは他方のトラックからもっとも離れている電流レールに、結合ラインKL,KL′が接続されている。このように、各トラック間に配置されているシールド構造ASは、実際にまたは仮想的にアースにおかれている電流レールもしくは構造体にのみ隣り合っている。これに加えて、アースと接続すべき結合変換器Kの電流レールはシールド構造ASと接続されている。第1および第2の結合変換器K1,K2は、反射器R1,R2の周囲に案内された結合ラインKLを介して接続されている。これと同じことは、反射器R1′,R′の周囲に案内されている結合ラインKL′についてもあてはまる。この実施形態によれば、反射器はそれぞれ隣り合う結合ラインと接続されている。ただし反射器をアースと接続することもできるし、あるいは浮いた状態に構成することもできる。
【0024】
図3には本発明の別の実施形態が示されており、この実施形態によれば図2による実施形態とは異なり第1の変換器W1と第2の変換器W2が、音響トラックの両側で連続した電流レールを備えた通常の変換器として構成されており、この場合、第1および第2の変換器の各端子は音響トラックの両側において両方の電流レールに設けられている。この実施形態によれば、入力変換器W1と出力変換器W2は対称的な変換器として構成されており、これらの変換器はバランスがとられて駆動される。フィルタのその他の構成は図2による構成と同じである。この実施形態によれば、シールド構造ASによっても両方の変換器W1,W2の各々における浮いた状態の電流レールは分離されておらず、むしろ第1および第2の変換器W1,W2は内側に位置する対称の端子を有している。
【0025】
図4には2トラック型DMS変換器が示されており、これによれば各トラックは2つの変換器を有しており、すなわち第1の変換器と、第1もしくは第2の変換器における第1の結合変換器と、第2のトラックにおける第2の結合変換器とを有している。第1および第2の変換器は、変換器の両側にそれぞれ端子を有している。結合変換器K1,K2は結合ラインKLを介して接続されており、この結合ラインは結合変換器において外側へ向かう電流レールとそれぞれ接続されており、じかに隣り合う2つの反射器の周囲を案内されている。結合変換器K1,K2において内側に位置する電流レールはシールド構造と接続されており、さらにこのシールド構造には、第1および第2の変換器W1,W2のすぐ隣りに配置されている反射R′,R′も接続されている。
【0026】
図5には、図4に示されている実施形態に関する別の変形実施例が示されている。この実施形態によれば結合ラインKLは、じかに隣り合う2つの反射器R1,R2を通り抜けて案内されている。これによって図4の実施形態よりも結合ラインの導体区間が節約され、この場合、両方の反射器がこの導体区間の機能を引き受けている。
【0027】
図6には図4の実施形態に関するさらに別の変形実施形態が示されており、この実施形態の場合もやはり結合ラインKLは2つの反射器R1,R2の周囲に案内されている。ただし図4の実施形態とは異なり、この場合には反射器R1,R2は結合ラインKLと接続されておらず、その代わりにシールド構造ASと接続されている。この目的でシールド構造が長くされており、両方のトラックにおける変換器と反射器全体が互いに分離されている。
【0028】
図7には本発明によるフィルタの周波数特性が描かれており、この周波数特性がシールド構造の設けられていない公知のフィルタの周波数特性と対比されている。ここでは図1に示した3変換器2トラック型DMSフィルタの周波数特性Aを、シールド構造ASをもたない相応のフィルタの周波数特性Bと比較した。この図から明らかなように、(伝達関数S21について測定された)フィルタは改善された阻止選択性をもっており、これについてはたとえば阻止領域において矢印の付された個所における双方の伝達関数の差を参照されたい。
【0029】
図8には、図2に従って構成された本発明によるフィルタの周波数特性Cが描かれており、ここではこの周波数特性Cがシールド構造をもたない相応のフィルタの周波数特性Dと対比されている。この図から明らかなように、図1によるフィルタよりもさらに大きくされたシールド構造と、外側に案内された結合ラインとによって、阻止選択性をさらに改善させることができる一方、パスバンドすなわちフィルタの通過帯域はそのまま維持されている。殊に挿入損および帯域幅はほぼ等しいままである。
【0030】
これまで本発明をごく僅かな実施形態を参照しながら説明してきたけれども、本発明はそれらの実施形態に制限されるものではない。本発明の範囲に含まれるその他の変形実施形態として挙げられるのは、構造の変形たとえばトラックあたりの変換器数の変形である。また、本発明はDMSフィルタに限定されるものでもない。リアクタンスフィルタのトラックにおける変換器にシールドを設けることもできる。さらに別の変形実施形態として挙げられるのは、電気的に互いに分離された2つのトラックに基づき本発明が実現されるよう、変換器と結合変換器を結線することおよび結線を省略することである。
【0031】
また、実施例において示した通常のフィンガ型変換器のほかに、変換器をスプリットフィンガ型変換器、重み付け変換器、分配された励振を伴う変換器として構成することもできるし、たとえばSPUDT変換器として構成することもできる。
【0032】
これに加えて、対応する変換器が扇形変換器ないしはファン状変換器として構成されるよう、電極フィンガの間隔および/または幅を表面波伝播方向に垂直な軸に沿って変えることもできる。また、本発明によるフィルタに、伝播方向で変えられた電極フィンガの間隔および/または幅をもつ変換器を設けることもできる。
【0033】
さらに本発明によるフィルタに第1のトラックと第2のトラックをもたせ、それらのトラックをそれぞれケーシング内に設けられたダブルのいわゆる2in1型フィルタにおけるフィルタの一方に形成することもできる。さらに両方のトラックをデュプレクサにおける2つの部分フィルタに割り当てることも可能であり、これによって一方のトラックをRXフィルタに、他方のトラックをTXフィルタに割り当てることができる。リアクタンスフィルタのケースでは、両方の音響トラックもしくは共振器が互いに遮蔽ないしはシールドされ、その際に有利であるのは、それぞれ異なる分岐から成る共振器をシールド構造によって互いに遮蔽することである。さらにたとえば本発明によれば、直列分岐中の1つの共振器を次の音響トラックにおいてじかに隣り合う並列分岐中の共振器に対しシールドすることができる。このようにすれば改善された分離特性が得られ、このケースではこれによりフィルタ全体として阻止選択性を著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるシールド構造を備えた2トラック型DMSフィルタを示す図
【図2】シールド構造が結合変換器のアース端子と接続されている2トラック型DMSフィルタを示す図
【図3】スプリットされていないないしは分割されていない入力変換器および出力変換器を備えた2トラック型DMS装置を示す図
【図4】トラックあたりそれぞれ2つの変換器と、スプリットされていない入出力変換器を備えた2トラック型DMS装置を示す図
【図5】2トラック型DMSフィルタの結線変形例を示す図
【図6】2トラック型DMSフィルタの別の変形結線例を示す図
【図7】本発明によるフィルタの通過特性を公知のフィルタと比較して示す図
【図8】さらに改良された本発明によるフィルタの通過特性を公知のフィルタと比較して示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の表面に形成されたSAWフィルタにおいて、
互いに隣り合って配置され電気的に互いに接続された2つの音響トラックが設けられており、
該2つの音響トラックには、入力変換器および出力変換器として用いられる電気音響変換器(W1,W2)がそれぞれ配置されており、
前記2つのトラックの間に、アースと接続された金属製のシールド構造(AS)が配置されており、該シールド構造により、それぞれ異なるトラックに配置された少なくとも2つの変換器が互いにシールドされることを特徴とする、
SAWフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のSAWフィルタにおいて、
互いにシールドされている2つの変換器(W1,W2)は、前記シールド構造(AS)の側に配置されたそれぞれ1つの電流レールを有しており、該電流レールのうち少なくとも1つは、浮いた状態にあるかまたはアースとは異なる電位と接続されていることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項3】
請求項1または2記載のSAWフィルタにおいて、
DMSフィルタとして構成されており、
第1のトラックに配置されている第1の結合変換器(K1)および入力変換器(W1)として用いられる第1の変換器と、
第2のトラックに配置されている第2の結合変換器(K2)および出力変換器として用いられる第2の変換器(W2)と、
前記の第1および第2の結合変換器におけるそれぞれ1つの電流レールを電気的に接続する結合ラインとが設けられており、
前記の第1の変換器と第2の変換器との間にシールド構造(AS)が配置されていることを特徴とする、
SAWフィルタ。
【請求項4】
請求項3記載のSAWフィルタにおいて、
前記結合ライン(KL)は各トラックにおいて、他方のトラックとは離れた側に配置されている該当する結合変換器(K1,K2)の電流レールとそれぞれ接続されていることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項5】
請求項4記載のSAWフィルタにおいて、
前記音響トラックは2つの反射器(R,R′)によってそれぞれ区切られており、前記結合ライン(KL)は前記音響トラックの外側で前記反射器の周囲に案内されていることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項記載のSAWフィルタにおいて、
前記シールド構造(AS)は外部のアース端子と接続されており、かつ該シールド構造(AS)は、前記結合変換器(K1,K2)のうち結合ライン(KL)と接続されていない一方の結合変換器の電流レールとそれぞれ接続されていることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載のSAWフィルタにおいて、
前記音響トラックは2つの反射器(R)によりそれぞれ区切られており、前記シールド構造(AS)は外部のアース端子および前記反射器と接続されていることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか1項記載のSAWフィルタにおいて、
前記の第1および第2の変換器(W1,W2)において、それぞれ隣り合うトラックとは離れた側の電流レールが2つの部分レールに分割されており、
第1の変換器(W1)における各部分レールは、入力側(IN)における外部端子の1つと接続されており、第2の変換器(W2)における各部分レールは、出力側(OUT)における外部端子の1つと接続されており、
入力変換器および出力変換器として用いられる第1および第2の変換器(W1,W2)は、対称的な入力側または出力側(IN,OUT)にそれぞれ割り当てられていることを特徴とする、
SAWフィルタ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載のSAWフィルタにおいて、
前記変換器(W1,W2)および前記シールド構造(AS)は同一の金属化部から形成されていることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載のSAWフィルタにおいて、
変換器(W1,W2)とシールド構造(AS)の金属化部は、アルミニウムまたはアルミニウムを含む合金から成る層または該層を含む多層構造を有することを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載のSAWフィルタにおいて、
フリップチップ配置により支持板上に基板が取り付けられており、前記支持板上に配置された端子面と前記シールド構造(AS)との間の導電接続が1つまたは複数のバンプにより行われていることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項記載のSAWフィルタにおいて、
前記シールド構造(AS)は少なくとも、互いにシールドすべき2つの変換器(W1,W2)の全長にわたり延在していることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項記載のSAWフィルタにおいて、
前記シールド構造(AS)は、第1および第2の変換器(W1,W2)において互いに向き合っている電流レールの幅よりも著しく大きいことを特徴とするSAWフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−527516(P2006−527516A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508151(P2006−508151)
【出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004082
【国際公開番号】WO2004/109911
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】