説明

選択的に活性なエストロゲンとしての8β−置換エストラトリエン

本発明は、一般式Iで表される8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン誘導体、インビトロではラット子宮からのエストロゲン受容体調製物に対するよりも高いラット前立腺からのエストロゲン受容体調製物に対する親和性を有し、インビボでは、子宮と比較して卵巣において選択的作用を有する医薬としての有効成分としてのそれらの使用、それらの製造、それらの治療用途、及び新規化合物を含む医薬としての投薬形態に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般式I:
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、
ラジカルR、R、R13、R16、並びにR17及びR17’は、互いに独立して、下記の意味を有する:
は、水素原子又は基R18を意味し、ここで、
18は、
直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和C−Cアルキルラジカル、トリフルオロメチル基;
置換基として、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ−、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)、又は両方のアルキル基が同一又は異なっているジ(C−C)アルキルアミノ、両方のアラルキル基が同一又は異なっているジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、C−C20アシル又はC−C20アシルオキシから独立して選択される少なくとも1つのラジカルで場合により置換されるアリール、ヘテロアリール又はアラルキルラジカル;
19が、最大3箇所置換されるか又は置換されず、部分的に又は完全にハロゲン化されているC−C10アルキルラジカル原子の直鎖又は分岐鎖である、アシルラジカル−(C=O)R19
を意味し、あるいは
【0004】
18は、基R20SOを意味し、ここで、
20は、R2122N基であり、ここで、R21及びR22は、互いに独立して、水素原子;C−Cアルキルラジカル;基−C(=O)R23、ここで、R23は、飽和又は最大3箇所の不飽和であり、部分的又は完全にハロゲン化されている、不飽和若しくは飽和の直鎖又は分岐鎖C−C10アルキルラジカル;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基;シクロアルキル部分で3〜7個の炭素原子を有し、最大8個の炭素原子のアルキル部分、又は、置換基として、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ−、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)、又は両方のアルキル基が同一又は異なっているジ(C−C)アルキルアミノ、両方のアラルキル基が同一又は異なっているジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、C−C20アシル又はC−C20アシルオキシ基から独立して選択される少なくとも1つのラジカルで場合により置換されるアリール、ヘテロアリール又はアラルキル基;あるいは、N原子と一緒になって、4〜6個のC原子又はモルホリノラジカルを含むポリメチレンイミノラジカルを意味する;
は、場合により部分的又は完全にフッ素化され得る、2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル又はアルキニルラジカルであり;
13は、メチル基又はエチル基であり;
16は、α位のフッ素原子であり;
17及びR17’は、いずれの場合も互いに独立して、水素原子及びヒドロキシ基;又は
水素原子、及びR18、R20及びR23基がいずれの場合でもRの下に指示されている意味である基R18O−、R20SO−又はOC(=O)R23である)
で表される新規な8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン誘導体に関する。
【0005】
さらに、本発明は、インビトロでは、ラット子宮からのエストロゲン受容体調製物よりも高いラット前立腺からのエストロゲン受容体調製物に対する親和性を有し、インビボでは、子宮と比較して卵巣における医薬作用を有する、医薬として有効成分として新規な8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン、それらの製造、それらの治療的使用、及び新規な化合物を含む医薬としての投与形態に関する。
【0006】
本発明の8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン誘導体は、改善された効能及び代謝的安定性を有する新規な、ストロイド性の、エストロゲン受容体サブタイプである選択的エストラトリエンである。
【背景技術】
【0007】
本発明の背景
ホルモン欠乏によって誘導される症状、例えば一過性熱感、エストロゲン標的臓器の萎縮及び失禁の治療におけるエストロゲンの効果、並びに閉経期及び閉経後の女性における骨量の喪失を予防するためのエストロゲン治療の成功した使用は、十分に証明されていて、一般に受容されている(Grady et al.1992,Ann Intern Med 117:1016−1037)。また、閉経後の女性、及び他のある方法において引き起こされる卵巣機能不全の女性におけるエストロゲン補充療法により、エストロゲンを用いて治療されていない女性と比較して、心臓血管疾患の危険性を減少させることも十分に証明されている(Grady et al.,loc.cit.)。
【0008】
従来のエストロゲン又はホルモン補充療法(=HRT)では、天然のエストロゲン、例えばエストラジオール、及び、ウマの尿からなるコンジュゲートされたエストロゲンは、それら自体で又はゲスターゲンを併用して使用されている。天然のエストロゲンに代えて、エステル化によって得られる誘導体、例えば17β−エストラジオール−吉草酸塩を使用することもできる。
【0009】
結果として子宮内膜癌の危険性が増大する子宮内膜に使用されるエストロゲンの刺激作用のため(Harlap,S.1992,Am J Obstet Gynecol 166:1986−1992)、エストロゲン/ゲスターゲン配合剤は、好ましくは、ホルモン補充療法に使用される。エストロゲン/ゲスターゲン組み合わせにおける黄体ホルモン作用化合物は、子宮内膜肥大を避けるが、望ましくない嚢内月経出血の発生はゲスターゲン含有配合に関連する。
【0010】
選択的なエストロゲンは、エストロゲン/ゲスターゲン配合剤に対してより最近の代替物を表す。これまで、選択的なエストロゲンは、それらの抗子宮的(即ち、抗エストロゲン性)部分作用のために、脳、骨及び血管系に対するエストロゲン様効果を有する化合物として定義されているが、それらは子宮内膜に増殖促進効果を有しない。
【0011】
選択的なエストロゲンの所望のプロフィールを部分的に満たすある種の物質は、いわゆる「選択的エストロゲン受容体調節因子」(SERM)である(R.F.Kauffman,H.U.Bryant 1995,DNAP 8(9):531−539)。この場合、これらはエストロゲン受容体サブタイプ「ERα」の部分的なエストロゲンである。しかしながら、急性の閉経期症状、例えば一過性熱感に関して、この物質のタイプは効果的でない。SERMの一例として、骨粗鬆症の指標のために最近取り入れられたラロキシフェンに言及することができる。
【0012】
外科的処置、投薬などによって引き起こされる卵巣機能不全によって頻繁に引き起こされる女性の受精障害の治療のために、新しい可能な治療が、新規な選択的エストロゲンの使用によって広がっている。インビトロでの受精処置は、20年未満の間、確立されてきた手法である。外因性のゴナドトロピンを用いた卵巣誘導の不妊を治療するための多数の方法が知られている。FSH(FSH=卵胞刺激ホルモン)などのゴナドトロピンの投与によって、健常な卵胞の成熟を可能にする卵巣の刺激が実現されるべきである。
【0013】
卵胞は卵巣の機能的な単位であり、2つも目的を有する:卵母細胞を収容し、増殖及び成熟のための後者の可能性を提供する。濾胞形成は、始原の段階から、排卵の最終段階を示す連続的に増加する胞状濾胞への成長を含む。最適に発育した胞状濾胞は、排卵によって成熟卵母細胞を放出することができる。
【0014】
卵巣によって誘導される不妊症(PCOS=多嚢胞性卵巣症候群)の患者は、崩壊された卵胞成熟を被り、それはホルモン及び排卵の崩壊並びに不適切な成熟卵母細胞の両方と関連する。一次及び二次卵胞の数は、正常な卵巣の約2倍高い(Hughesden et al.,Obstet.Gynecol.Survey 37,1982,pp.59−77)。
【0015】
濾胞形成の初期の発育段階(原始卵胞から胞状濾胞への成長に関連する)は、ゴナドトロピンに非依存性であるという適応症がある。既知の傍分泌及び自己分泌因子の影響が初期の濾胞形成にどの程度大きいかについては明確に説明されていない(Elvin et al.,Mol.Cell Endocrinol.13,1999,pp.1035−1048;McNatty et al.,J.Reprod.Fertil.Suppl.54,1999,pp.3−16)。
【0016】
FSHなどのゴナドトロピンは、卵胞成熟における濾胞形成の最終の発育段階、即ち、排卵を経ることができる、初期の胞状濾胞から成熟卵胞への発育に主に関与している。
【0017】
インビボ及びインビトロの不妊は、好ましくはゴナドトロピン(FSH及び抗エストロゲン)によって処置される(White et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.81,1996,pp.3821−3824)。インビトロでの受精処置では、卵母細胞は、排卵前の胞状濾胞から外れ、インビトロにおいて、受精することができる卵母細胞内に成熟することができる。受精し、初期胚の発生後、1〜3個の胚は女性の子宮に植え付けられる。
【0018】
多くの点で、外因性ゴナドトロピンによる処置は、多数の危険性及び副作用を伴う。基も大きな危険性は、重篤な症例では、生命に重大な危険を示す可能性がある卵巣の過剰刺激からなる(OHSS=卵巣過剰刺激症候群)。他の副作用は、一組の男女によって引き合いに出されなければならないインビトロでの不妊治療のコスト高である。負の副作用、例えば、体重増加、肥大、吐き気、嘔吐、及び今のところ知られていない癌発生の長期間の危険性は、ゴナドトロピン処置に起因する。
【0019】
上述した欠点及び危険性を避ける1つの方法は、外因性ゴナドトロピンによる処置が開始される前に、適した有効成分を用いて、卵巣によって誘導される不妊症における卵胞成熟のインビボでの成熟及び刺激を確認することである。
【0020】
エストロゲン受容体ベータ(ERβ)
数年前、エストロゲン受容体β(ERβ)は、エストロゲン受容体の第2タイプとして発見された(Kuiper et al.(1996),Proc.Natl.Acad.Sci.93:5925−5930;Mosselman,Dijkema(1996)Febs Letters 392:49−53;Tremblay et al.(1997),Molecular Endocrinology 11:353−365)。ERβの発現パターンは、ERαとは異なっている(Kuiper et al.(1996),Endocrinology 138:863−870)。このようにして、ERβは、ラットの前立腺においてERαより優位であり、ラットの子宮では、ERαはERβよりも優位である。ERβ及びmRNAの最大濃度は卵巣において見出された(Couse et al.Endocrinology 138,1997,pp.4612−4613)。
【0021】
比較的高いERβ発現を含む他の臓器系には、骨(Onoe,Y.et al.,1997,Endocrinology 138:4509−4512)、血管系(Register,T.C,Adams,M.R.1998,J.Steroid Molec Biol 64:187−191)、尿生殖路(Kuiper,G.J.M.et al.1997,Endocrinology 138:863−870)、胃腸管(Campbell−Thopson 1997,BBRC 240:478−483)、並びに精子細胞(Shugrue et al.1998,Steroids 63:498−504)を含む精巣(Mosselmann,S.et al.1996 FEBS Lett.392,49−53)が含まれる。組織分布によって、ERβを介した臓器機能のエストロゲン制御が非常に関連していることが示唆される。また、ERβがこの点において機能的であるという事実は、ERα−(ERKO)又はERβ−(βERKO)ノックアウトマウスにおける試験に従う:卵巣切除により、エストロゲン補充によって排除され得るERK−マウスにおける骨量喪失を生じる(Kimbro et al.1998,Abstract OR7−4,Endocrine Society Meeting,New Orleans)。また、雌性ERKOマウスの血管中のエストラジオールは、血管媒体及び平滑筋細胞増殖を阻害する(Iafrati,M.D.et al.1997,Nature Medicine 3:545−548)。これらのエストラジオールの保護作用は、おそらくはERβを介したERKOマウスにおいて行われる。
【0022】
ERα及びERβが機能的に異なる作用を有するという事実は、ERKO及びβERKOマウスの成功した生産後に確認された。結論として、ERαは、成人子宮、哺乳動物の腺組織、ゴナドトロピン活性の負の制御において重要な役割を果たし、ERβは、卵巣生理学におけるプロセス、特に、濾胞形成及び排卵のプロセスにおいて主に結び付けられる(Couse et al.,Endocrine Reviews 20,1999,pp.358−417)。
【0023】
βERKOマウスの観察は、前立腺及び膀胱におけるERβの機能に指示を与える:老年雄性マウスでは、前立腺及び膀胱の過形成の症状が起こる(Krege,J.H.et al.1998,Proc Natl Acad Sci 95:15677−15682)。さらに、雌性ERKOマウス(Lubahn,D.B.et al.1993,Proc Natl Acad Sci 90:11162−11166)及び雄性ERKOマウス(Hess,R.A.et al.1997,Nature 390:509−512)、並びに雌性βERKOマウス(Krege,J.H.,1998,Proc Natl Acad Sci 95:15677−15682)は受精障害を有する。結論として、精巣及び卵巣機能の維持、並びに受精に関するエストロゲンの重要な機能が確認される。
【0024】
2つのサブタイプのERの異なる組織又は臓器の分布に基づいて、サブタイプに特異的なリガンドによる特定の標的臓器への選択的エストロゲン性作用を達成することが可能である。インビトロでの受容体結合試験における、ERαと比較したERαの優位性を有する物質は、Kuiperら(Kuiper et al.(1996),Endocrinology 138:863−870)に記載されている。エストロゲン感受性のパラメータに対する、エストロゲン受容体のサブタイプ特異的なリガンドの選択的な作用は、これまでに示されていなかった。
【0025】
親出願であるWO01/77139A1は、8β−置換エストラトリエン、それらの製造、それらの治療的使用、及び前記化合物を含む医薬としての調剤形態を記載し、ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖、場合により、部分的に又は完全にハロゲン化された最大5個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルラジアル、エチニル−又はプロパ−1−イニルラジカルを意味し、これらは、ラット子宮のエストロゲン受容体調製物よりも高いラット前立腺のエストロゲン受容体調製物への親和性を有する医薬としての有効成分である。また、化合物である3−メトキシ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(実施例6)もWO01/77139に記載されている。薬剤を製造するための、強力なエストロゲン活性を有し、ラット子宮のエストロゲン受容体調製物よりも高いラット前立腺のエストロゲン受容体調製物に対する親和性を有する化合物は、この技術分野において非常に必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の目的
したがって、本発明の目的は、インビトロにおいて、ラット前立腺及びラット子宮からのエストロゲン受容体調製物への結合に関する高い解離を有する化合物を調製することである。この化合物は、ラット子宮からのエストロゲン受容体調製物に対するよりも高いラット前立腺からのエストロゲン受容体調製物への親和性を示すことである。
【0027】
本発明に係る化合物は、非常に強力なエストロゲン活性及び有効性、即ち、既知の化合物と比較して、ラット前立腺エストロゲン受容体に対するより高い結合親和性、ラット前立腺対ラット子宮のエストロゲン受容体への結合に関してより良好な解離を有する。本発明に係る化合物は、卵巣における増加した受精能力を生むことであり、一方、同時に、卵巣に関連した不妊症の症例において、子宮への影響が非常に少ない。
【0028】
本発明に係る化合物の有利なプロフィールは、置換基R、R13、R16、R17及びR17’の特定の組み合わせによって達成される。
【0029】
本発明によれば、上記の目的は、一般式I:
【0030】
【化2】

【0031】
で表される8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン誘導体の提供によって達成され、式中、
ラジカルR、R、R13、R16、並びにR17及びR17’は、互いに独立して、下記の意味を有する:
は、水素原子又は基R18を意味し、ここで、
18は、
直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和C−Cアルキルラジカル、トリフルオロメチル基;
置換基として、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ−、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)、又は両方のアルキル基が同一又は異なっているジ(C−C)アルキルアミノ、両方のアラルキル基が同一又は異なっているジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、C−C20アシル又はC−C20アシルオキシから独立して選択される少なくとも1つのラジカルで場合により置換されるアリール、ヘテロアリール又はアラルキルラジカル;
19が、最大3箇所置換されるか又は置換されず、部分的に又は完全にハロゲン化されているC−C10アルキルラジカル原子の直鎖又は分岐鎖である、アシルラジカル−(C=O)R19
を意味し、あるいは
【0032】
18は、基R20SOを意味し、ここで、
20は、R2122N基であり、ここで、R21及びR22は、互いに独立して、水素原子;C−Cアルキルラジカル;基−C(=O)R23、ここで、R23は、飽和又は最大3箇所の不飽和であり、部分的又は完全にハロゲン化されている、不飽和若しくは飽和の直鎖又は分岐鎖C−C10アルキルラジカル;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基;シクロアルキル部分で3〜7個の炭素原子を有し、最大8個の炭素原子のアルキル部分、又は、置換基として、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ−、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)、又は両方のアルキル基が同一又は異なっているジ(C−C)アルキルアミノ、両方のアラルキル基が同一又は異なっているジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、C−C20アシル又はC−C20アシルオキシ基から独立して選択される少なくとも1つのラジカルで場合により置換されるアリール、ヘテロアリール又はアラルキル基;あるいは、N原子と一緒になって、4〜6個のC原子又はモルホリノラジカルを含むポリメチレンイミノラジカルを意味する;
は、場合により部分的又は完全にフッ素化され得る、2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル又はアルキニルラジカルであり;
13は、メチル基又はエチル基であり;
16は、α位のフッ素原子であり;
17及びR17’は、いずれの場合も互いに独立して、水素原子及びヒドロキシ基;又は
水素原子、及びR18、R20及びR23基がいずれの場合でもRの下に指示されている意味である基R18O−、R20SO−又はOC(=O)R23である。
【0033】
本発明の特定の態様は、一般式Iで表される化合物であって、式中、Rが水素原子である。
【0034】
本発明の更なる態様によれば、一般式Iで表される化合物は、Rがビニル、エチニル又はプロパ−1−イニル基であるものである。
【0035】
本発明の態様の他の可能な形態は、従属する請求項によって特定される。
【0036】
17及びR17’が水素原子及びヒドロキシ基原子である一般式Iで表される化合物がさらに好ましい。
【0037】
16がα位にある一般式Iで表される化合物、又はR16がβ位にある一般式Iで表される化合物は、本発明の態様の等しく好ましい形態である。
【0038】
さらに、本発明の特定の態様は、Rがビニル、エチニル又はプロパ−1−イニル基であり、R16がフッ素原子であり、R17及びR17’が互い独立して水素原子及びヒドロキシ基原子である、一般式Iで表される化合物である。
【0039】
17及び/又はR17’が水素原子及び基R18−O−又はR19SO−O−(R18及びR19は各々場合においてR下で指示される意味を有する)である一般式Iで表される化合物は、本発明の態様の更なる特待の形態である。
【0040】
本発明の別の変形は、R17が基R18O−又はR20SO−O−(R18及びR20は各々の場合においてR下で指示される意味を有する)を表す化合物を指示する。
【0041】
本発明に係る化合物は下記の通りである:
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール
8β−ビニル−16β−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール
【0042】
ハロ−又はハロゲンとして、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子が本発明によって意図される。
【0043】
アルキルラジカルは、一般に、別に特定されない限り、(C−C)アルキルラジカルを意図し、ここで、残基アルキルラジカルは、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和である。本発明に係るアルキルラジカルの代表的な基は、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、1,1−ジメチルエチル(t−ブチル)及びn−ヘキシルである。C−Cアルキルラジカルは、水素原子、ヒドロキシ基又はC−Cアルコキシ基によって部分的に又は完全に置換されていてもよい。
【0044】
上記の定義によれば、R18は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、又はヘキシルラジカルである。
【0045】
一般式Iの化合物におけるアルコキシ基OR18は、各々の場合、上記で与えられる定義に従うアルキルラジカルを含むこができ、それにより、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びt−ブチロキシが好ましいアルコキシラジカルである。
【0046】
−C−アルキルラジカルであるR21及びR22の典型例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル及びネオペンチルである。
【0047】
直鎖又は分岐鎖C−C10アルキルラジカルの典型例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘプチル、ヘキシル、及びデシルが挙げられ;メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルが好ましい。
【0048】
−Cシクロアルキル基として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基を挙げることができる。
【0049】
−C15シクロアルキルラジカルは、シクロアルキル部分に3〜7個の炭素原子を有する;典型的な例は、直接上述されるシクロアルキル基である。アルキル部分は最大8個の炭素原子を有する。
【0050】
−C15シクロアルキル基の例には、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルプロピル基などが挙げられる。
【0051】
本発明に関して、アリールラジカルは、フェニル、1−又は2−ナフチルラジカルである;フェニルラジカルが好ましい。
【0052】
本発明に係るヘテロアリールラジカルの例には、2−、3−若しくは4−ピリジニル、2−若しくは3−フリル、2−若しくは3−チエニル、2−若しくは3−ピロリル、2−、4−若しくは5−イミダゾリル、ピラジニル、2−、4−若しくは5−ピリミジニル又は3−若しくは4−ピリダジニルラジカルが挙げられる。
【0053】
アリール又はヘテロアリールラジカル上に存在することができる置換基として、例えば、メチル−、エチル−、トリフルオロメチル−、ペンタフルオロエチル−、トリフルオロメチルチオ−、メトキシ−、エトキシ−、ニトロ−、シアノ−、ハロゲン−(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ−、アミノ−、モノ(C−Cアルキル)、又はジ(C−Cアルキル)アミノ(ここで、両方のアルキル基は同一であるか又は異なっている)、ジ(アラルキル)アミノ(ここで、両方のアラルキル基は同一であるか又は異なっている)、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、C−C20アシル、あるいはC−C20アシルオキシ基が挙げられる。
【0054】
アラルキルラジカルは、環中に最大14個、好ましくは6〜10個のC原子、アルキル鎖中に1〜8個、好ましくは1〜4個のC原子を含むラジカルである。したがって、アラルキルラジカルとしては、例えば、ベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル、フリルメチル、チエニルエチル、及びピリジルプロピルが適切である。
【0055】
アルキル基及びラジカルは、1〜5個の水素原子、ヒドロキシ基又はC−Cアルコキシ基によって部分的又は完全に置換されてもよい。
【0056】
ビニル又はアリルラジカルは、第1に、C−Cアルケニルラジカルと定義される。
【0057】
−Cアルキニルラジカルは、好ましくはエチニルラジカル又はプロパ−1−イニルラジカルとして定義される。
【0058】
1−10アシルラジカルとは、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレロイル、イソバレロイル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクチル、ノニル、又はデカノイルを意味する。
【0059】
C原子3及び16の1又は2個のヒドロキシル基は、脂肪族直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和C−C14モノ−又はポリカルボン酸又は芳香族カルボン酸でエステル化され得る。
【0060】
エステル化のためのこのようなカルボン酸としては、下記が適切である:
−モノカルボン酸:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アクリル酸、プロピオン酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸、及びエライジン酸。
酢酸、吉草酸又はピバル酸によるエステル化が好ましい。
【0061】
−ジカルボン酸:シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、ムコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸。
【0062】
−芳香族カルボン酸:安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフトエ酸、0−、m−及びp−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、桂皮酸、ニコチン酸、及びイソニコチン酸。
安息香酸によるエステル化が好ましい。
【0063】
プロドラッグとして、本発明に係る8β−置換エストラトリエンのエステルは、それらの投与方法、それらの作用タイプ、作用の強度及び持続に関して、エステル化されていない有効成分と比較して利点を有する。
【0064】
特に、本発明に係る8β−置換エストラトリエンのスルファミン酸塩は、薬物動態及び薬力学的な利点を有する。関連した効果は、他のステロイド性スルファミン酸塩において既に記載されている(J.Steroid Biochem.Molec.Biol,55,395−403(1995);Exp.Opinion Invest.Drugs 7,575−589(1989))。
【0065】
この特許出願では、8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン骨格は、選択的エストロゲン(ラット前立腺及びラット子宮からのエストロゲン受容体調製物への結合に関するインビトロでの解離を有し、子宮作用と比較して、卵巣作用に関して、好ましくはインビボでの解離を有する)として、エストロゲン受容体β媒介の障害及び状態の治療について記載されている。
【0066】
本発明に係るERβ特異的な化合物は、インビボでは、卵巣における受精前の作用を媒介することである。同時に、化合物は、子宮作用と比較して、卵巣作用に関した解離を示すことである。
【0067】
一般式Iに係る8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンは、対応する標的組織又は標的臓器におけるエストロゲン受容体αよりも高いエストロゲン受容体βの含有量によって特徴付けられる種々の状態及び障害の治療のための選択的エストロゲンとして適切であることが見出された。
【0068】
また、本発明は、一般式Iで表される少なくとも1つの化合物(又は有機酸若しくは無機酸との医薬として相性がよいその付加塩)を含む医薬調製物、並びに、医薬薬物の製造のため、特に後述される指示のための一般式Iで表される化合物の使用に関する。
【0069】
本明細書に記載されている新規な選択的エストロゲンは、医薬調製物における個々の成分として、又は特にゲスターゲンと併用して使用されてもよい。本発明は、末梢において選択的に活性である、即ち、血液脳関門を通過しないERα選択的抗エストロゲン、及び選択的なエストロゲン受容体調節因子(SERM)との選択的エストロゲンの組み合わせである。
【0070】
本発明に係るERβ選択的化合物は、特に、受精障害の治療、前立腺過形成の予防及び治療、女性及び男性におけるホルモン欠乏によって誘導される気分の著しい変化の予防及び治療、男性及び女性におけるホルモン補充療法(HRT)における使用のための医薬薬物の製造のために使用することができる。
【0071】
さらに、本発明に係る化合物は、結腸及び腸過形成のモデルにおける抗増殖効果を有し、したがって、癌の治療及び予防のための結腸及び腸上皮増殖などと関連した疾患の予防及び治療のために投与することができる。
【0072】
本発明に係るERβ特異的化合物は、好都合には、毛髪の発育の選択的刺激のために使用することができる。
【0073】
閉経期又は閉経後の状態の選択的エストロゲン治療のための同時、連続又は別個の使用のためのエストロゲン及び純粋な抗エストロゲンを含む治療生産物は、すでにEP−A0346014号公報に記載されている。子宮の作用と比較して、卵巣における活性の解離のため、それらを含む物質及び医薬薬物は、受精能力の増加に関する単独の治療のための濾胞形成の刺激、インビボでの治療と結び付けたインビトロの不妊治療(IVF)の支持、及び後期における卵巣によって誘導される障害の治療(「後期受精能」)、並びにホルモン補充療法によって誘導される症状の治療のための女性の不妊などの、外科的処置、投薬などによって引き起こされる卵巣機能不全の症例における治療に特に適している。
【0074】
また、本発明の化合物は、多嚢胞性卵巣症候群、POF(早期閉経)症候群、及び排卵障害などの卵巣疾患の治療に適している。
【0075】
最後に、一般式Iで表される化合物は、特に、ホルモン補充療法(HRT)における使用、及び婦人科障害の治療のために、選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)又はラロキシフェンを併用して使用することができる。
【0076】
また、本発明に係る8β−置換エストラトリエンは、閉経期及び閉経後の症状、特に一過性熱感、睡眠障害、興奮性、気分の著しい変化、失禁、膣萎縮及びホルモン欠損によって誘導される精神障害を治療するための個々の成分として適切である。また、上記の8β−置換エストラトリエンは、ホルモン補充に、並びに外科的処置、投薬等によって引き起こされる卵巣機能不全におけるホルモンの欠損によって誘導される症状の治療に適している。
【0077】
さらにまた、本発明に係る8β−置換エストラトリエンは、心臓血管疾患、特に血管疾患、例えば動脈硬化症、高血圧、高血圧性心疾患を予防するために、並びにホルモンの欠損によって誘導される神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、及び記憶及び学習能力のホルモンの欠損によって誘導される機能障害を予防するために使用することができる。
【0078】
さらに、本発明に係る化合物は、炎症性疾患及び免疫系の疾患、特に自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、狼瘡、クローン病及び他の炎症性腸疾患、皮膚の炎症性疾患、例えば乾癬を治療するため、並びに子宮内膜症を治療するための調製物において、有効成分として使用することができる。したがって、ヒト炎症性疾患の前臨床モデルからの証拠に基づくと、ERβ−特異的な化合物は、上述した疾患の予防及び治療のために使用することができる(Heather,H.A.;Mol Endocrinol.2007 Jan,21(1):1−13.Epub 2006 Mar 23.Review)。
【0079】
さらに、本化合物は、呼吸器系、肺及び気管支の炎症性疾患、例えば喘息に対して効果的である。
【0080】
投薬は、女性及び男性の両方におけるエストロゲンの欠乏によって誘導される疾患の治療及び予防に適している。
【0081】
また、本発明の化合物は、前立腺過形成の予防及び治療に適している。
【0082】
本化合物は、ヒトの年齢に関係した機能不全又は疾患の予防及び治療にさらに使用することができる。特に、それらは、テストステロン及びDHEAなどのアンドロゲンの年齢に関係した低下、並びに成長ホルモンの年齢に関係した低下の予防及び治療に使用することができる。
【0083】
投与されるべき一般式Iで表される化合物の量は、広範囲内において変動し、任意の有効量を覆うことができる。治療されるべき状態及び投与タイプに基づいて、投与される化合物の量は、1日あたり0.01μg/kg〜100mg/kg体重、好ましくは0.04μg/kg〜1mg/kg体重であってもよい。
【0084】
ヒトでは、これは、1日1回で、0.8μg〜8g、好ましくは3.2μg〜80mgの投薬量に対応する。
【0085】
本発明によれば、投薬量単位は、一般式Iで表される1以上の化合物の1.6μg〜2000mgを含む。
【0086】
本発明に係る化合物及び酸付加塩は、医薬組成物及び調製物の製造に適している。医薬組成物又は医薬薬物は、有効成分として、本発明に係る1以上の化合物又はそれらの酸付加塩を含み、任意に他の薬理学的又は医薬的に活性な物質と混合される。医薬薬物の製造は、既知の方法によって実施され、そこでは、既知及び通常使用される医薬としてのアジュバント、並びに他の通常使用されるビヒクル及び希釈剤を使用することができる。
【0087】
ビヒクル及びアジュバントと同様に、例えば、医薬品、化粧品及び関連分野のためのアジュバントとして、下記の書誌参考文献において推奨され又は支持されているものが適している:Ullmans Encyklopadie der technischen Chemie[Ullman’s Encyclopedia of Technical Chemistry],Volume 4(1953),pages 1 to 39;Journal of Pharmaceutical Sciences,Volume 52(1963),page 918 ff.,発行Czetsch−Lindenwald,Hilfsstoffe fur Pharmazie und angrenzende Gebiete[Adjuvants for Pharmaceutics and Related Fields];Pharm.Ind.,Issue 2,1961,p.72 and ff.:Dr.H.P.Fiedler,Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie,Kosmetik und angrenzende Gebiete[Dictionary of Adjuvants for Pharmaceutics,Cosmetics and Related Fields], antor KG,Aulendorf in Wurttemberg 1971。
【0088】
本化合物は、経口、又は非経口、例えば腹腔内、筋内、皮下若しくは経皮的に投与されてもよい。また、本化合物は、組織に移植されてもよい。
【0089】
経口投与については、カプセル、丸薬、錠剤、被覆された錠剤などが適している。有効成分に加えて、投薬単位は、医薬として適合可能なビヒクル、例えば、スターチ、糖、ソルビトール、ゼラチン、潤滑剤、ケイ酸、タルクなどを含むことができる。
【0090】
非経口投与については、有効成分は、生理学的に適合可能な希釈剤中に溶解又は懸濁させることができる。希釈剤として、非常に多くは、可溶化剤、界面活性剤、懸濁剤又は乳化剤の添加の有無による油が用いられる。使用される油の例は、オリーブ油、ピーナッツ油、綿実油、大豆油、ヒマシ油、及びゴマ油である。
【0091】
また、本化合物は、有効成分の遅延放出を可能とするように調合され得る蓄積(depot)注射又は移植調製物の形態で使用することもできる。
【0092】
不活性な材料として、インプラントは、例えば生分解性ポリマー、又は合成シリコーン、例えばシリコーンゴムを含んでもよい。さらに、経皮投与については、有効成分は、例えばパッチに添加されてもよい。
【0093】
局所投与のための一般式Iで表される活性な化合物を用いて充填される膣内系(例えば膣環)又は子宮内系(例えばペッサリー、コイル、IUD、Mirena(登録商標))の製造については、種々のポリマーが適切であり、例えばシリコーンポリマー、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン又はポリプロピレンが挙げられる。
【0094】
また、有効成分のより良好な生物学的利用能を達成するために、本化合物は、シクロデキストリン包接化合物として調合されてもよい。この目的のために、本化合物は、α−,β−、若しくはγ−シクロデキストリン又は後者の誘導体(PCT/EP95/02656)と反応される。
【0095】
また、本発明によれば、一般式Iで表される化合物はリポソームでカプセル化され得る。
【0096】
方法
エストロゲン受容体結合試験:
新規な選択的エストロゲンの結合親和性は、ラット前立腺及びラット子宮からのエストロゲン受容体調製物に対するリガンドとして、H−エストラジオールを用いた競合実験において試験された。前立腺細胞質ゾルの調製、及び前立腺細胞質ゾルを用いたエストロゲン受容体試験は、Testasら(1981)(Testas,J.et al.,1981,Endocrinology 109:1287−1289)によって記載されるように実施された。
【0097】
ラット子宮細胞質ゾルの調製、並びにER含有細胞質ゾルを用いて受容体試験は、基本的には、Stack and Gorski,(1985)(Stack,Gorski 1985,Endocrinology 117,2024−2032)に記載されるように実施され、Fuhrmannら(1995)(Fuhrmann,U.et al.1995,Contraception 51:45−52)に記載される幾分の修飾を含む。
【0098】
本明細書に記載される物質は、ラット子宮のエストロゲン受容体よりも高いラット前立腺のエストロゲン受容体に対する結合親和性を有する。この場合には、ERβはERαと比較してラット前立腺において優位であり、ERαはERβに対してラット子宮において優位であることが想定される。表1は、前立腺及び子宮の受容体に対する結合非が、ヒトのERβ及びラットのERαに対する相対的な結合親和性(RBA)の分担(Kuiper et al.(1996),Endocrinology 138:863−870による)と一致する(表1)。
【0099】
【表1】

【0100】
表2は、本発明に係る8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17−ジオール誘導体(化合物1)の1つについての結果を示す。化合物2(8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17−ジオールを参照として示す。
【0101】
【表2】

【0102】
本発明に係る化合物1、並びに化合物2は、ラット子宮のエストロゲン受容体よりも高いラット前立腺のエストロゲン受容体に対する結合親和性を示す。化合物1は、ラット前立腺エストロゲン受容体に対する高い結合親和性によって、ラット前立腺対ラット子宮のエストロゲン受容体への結合に関するよりより良好な解離によって化合物2よりも優れている。
【0103】
さらに、前立腺ER対子宮ER試験システムの予測可能性は、インビボでの試験による組織選択的作用に関して確認される。前立腺ERに対して選択性を有する物質は、インビボにおいて、好ましくは卵巣及び子宮作用に関して、並びに卵巣上の作用を支持して下垂体作用に関して、解離される。
【0104】
子宮及び下垂体の作用の解離に関する試験
子宮成長及び排卵に対する作用(下垂体ホルモンの分泌に影響を及ぼすことによる間接的な効果)に関する試験は、成体雌性ラット(体重220〜250g)において行われる。物質は、4日連続で4回、皮下に投与される。1回目の投与は、発情後期に実施される。最終の投与の翌日、剖検を実施する。ファローピウス管における卵母細胞の数(排卵に対する効果)、並びに子宮重量が測定される。
【0105】
エストラジオールは投薬量に依存した排卵阻害、子宮重量の増加(ED50は0.0004mg/kg体重である)を生じる一方、本発明の物質は、下垂体及び子宮重量に対して何ら効果を発揮しない。
【0106】
卵巣試験:
本化合物は、下垂体が摘出された若年ラットについて、インビボで試験される。この操作法の修飾では、GnRHアンタゴニスト(Cetrorelix)を動物に投与される。物質が卵巣の卵胞増殖(成熟)を刺激するかどうかが調べられる。卵巣重量は、測定パラメータである。
【0107】
各ケースでは、5匹の動物(体重40〜50g)が処置群に無作為に割り当てられる。Makrolonケージ内、空調管理された室内で、照明プログラム(12時間の暗所、12時間の照明)で標準的な食餌(altromin)を用いて自由に飼育され、飲料水に酸性にした水道水を与える。s.c.投与については、試験物質、並びに対照物質(エストラジオールE2)は、安息香酸ベンジル/ヒマシ油(1+4v/v)に溶解される。
【0108】
若年雌性ラットは、第0日で下垂体が摘出され、第1日から第4日まで、本発明に係る化合物であるエストラジオールを皮下に処置(投与1×毎日)されるか、又はビヒクル(ヒマシ油/安息香酸ベンジル)を皮下に処置(投与1×毎日)される。この方法の修飾されたバージョンでは、0.5mg/動物/日のCetrorelixは、処置の4日にわたって、本発明に係る化合物、又はビヒクル及び対照物質エストラジオールを同時に動物に投与される。両ケースでは、最後に投与してから24時間後に動物を屠殺し、卵巣重量及び卵胞段階を測定する。
【0109】
このようにして、本発明に係る化合物は、子宮作用及び下垂体作用と比較して、卵巣における明確な解離の作用を示し、卵胞刺激作用のために、雌性不妊の治療に非常に適している。
【0110】
本発明に係る化合物の製造
本発明に係る一般式Iで表される化合物は、実施例に記載されるように製造される。一般式Iで表される更なる化合物は、実施例に記載される試薬に同種である試薬を用いた類似の手法によって得ることができる。
【0111】
遊離ヒドロキシ基のエーテル化及び/又はエステル化は、当業者に共通の方法に従って実施される。
【0112】
本発明に係る化合物は、α,β−立体異性体として炭素原子16及び17に存在かのうである。記載される手段による化合物の製造では、大部分のケースの化合物は、対応するα,β−異性体の混合物として蓄積される。混合物は、例えばクロマトグラフィー手段によって分離することができる。
【0113】
一般式Iによれば、可能な置換基は、出発生成物、所望の最終生成物にすでに対応する置換されたエストロンにおいてでさえ、最終形態又は前駆体の形態で存在し得る。
【0114】
また、17−置換基は、所望の置換基又はその反応性前駆体の求核付加による既知の手段に従って導入され、場合によりさらに組み立てられる。
【0115】
本発明に係る8β−置換エストラトリエン−カルボン酸エステルは、知られてもいるプロセス(Pharmazeutische Wirkstoffe,Synthesen,Patente,Anwendungen[Pharmaceutical Active Ingredients,Syntheses,Patents,Applications];A.Kleemann,J.Engel’,Georg Thieme Verlag Stuttgart 1978,Arzneimittel,Fortschritte[Pharmaceutical Agents,Improvements]1972 to 1985;A.Kleemann,E.Lindner,J.Engel(Editors),VCH 1987,pp.773−814を参照)と同じように対応するヒドロキシステロイドから製造される。
【0116】
本発明に係るスルファミン酸エストラトリエンは、塩基の存在下で、スルファモイルクロリドを用いたエステル化によって、対応するヒドロキシステロイドから当該技術分野において知られている方法において利用可能である(Z.Chem.15,270−272(1975);Steroids 61,710−717(1996))。
【0117】
その後のスルファミド基のアシル化は、本発明に係る(N−アシル)スルファミン酸塩をもたらし、薬物動態的利点は、8−置換基がない場合にすでに検出された(DE19540223A1参照)。
【0118】
N−置換されたスルファモイルクロリド及びN−置換されていないスルファモイルクロリドを用いたポリヒドロキシル化ステロイドの立体選択的なエステル化は、エステル化されないままであるべきヒドロキシル基の部分的な保護によって実施される。シリルエーテルは、この目的に適した選択的反応性を有する保護基であることがわかった。それは、これらのシリルエーテルが、スルファミン酸塩の形成の条件下で安定であり、シリルエーテルが分子になおも含まれる残りのヒドロキシル基(単数又は複数)の再生のために再度切断される場合、スルファミン酸基がそのままであるためである(Steroids 61,710−717(1996))分子内の1以上の付加的なヒドロキシル基を用いた、本発明に係るスルファミン酸塩の製造はまた、出発物質が適したヒドロキシ−ステロイドケトンである点で可能である。第1に、目的に応じて、存在する1以上のヒドロキシル基はスルファモイル化に供される。次に、場合により、スルファミン酸基は、塩基の存在下、所望の塩化アシルを用いて、対象となっている(N−アシル)スルファミン酸塩に変換可能である。現に存在するオキソスルファミン酸塩又はオキソ−(N−アシル)スルファミン酸塩は、還元によって、対応するヒドロキシスルファミン酸塩又はヒドロキシ−(N−アシル)スルファミン酸塩(Steroids 61,710−717(1996))に変換される。ホウ化水素ナトリウム及びボランジメチルスルフィド複合体は、適した還元剤として適切である。
【0119】
エストラトリエン骨格のD環にある変化し得る置換基、特にC原子16にあるハロゲン原子(例えばフッ素原子)の導入は、基本的には、当業者に知られている化学的な教示に従って実行可能であり、それは、8位で置換されていない対応するエストラトリエン誘導体が製造される(即ち、Steroide[Steroids],L.F.Fieser,M.Fieser,Verlag Chemie,Weinheim/Bergstr.,1961;Organic Reactions in Steroid Chemistry,J.Fried,J.A.Edwards, Van Nostrand Reinhold Company,New York,Cincinnati,Toronto,London,Melbourne,1972;Medicinal Chemistry of Steroids,F.J.Zeelen,Elsevier,Amsterdam,Oxford,New York,Tokyo,1990を参照)。
【0120】
また、一般式Iに従う置換基は、当該技術分野において知られている方法に従って、8位ですでに置換されているエストラトリエンの段階に導入することができる。これは、所望の最終化合物の複数の置換基の場合において有用であるか又は特に必要であり得る。
【0121】
エストロン骨格における代表的な置換パターンの提供に有用であり、同時にいくつかの置換基と組み合わせに有用である特徴的であるが、限定されない合成プロセスは、例えば下記に見出される:C(I)J.Chem.Soc.(C)1968,2915;C(7) Steroids 54,1989,71;C(8α)Tetrahedron Letters 1991,743;C(8β) Tetrahedron Letters 1964,1763;J.Org.Chem.1970,35,468;C(11)J.Steroid Biochem.31,1988,549;Tetrahedron 33,1977,609 and J.Org.Chem.60,1995,5316;C(9)DE−OS 2035879;J.Chem.Soc.Perk.1 1973,2095;C(15)J.Chem.Soc.Perk.1 1996,1269.);C(13αMendeleev Commun.1994,187;C(14β)Z.Chem.23,1983,410。
【0122】
下記の実施例は、本発明のより詳細な説明のために使用される。
【0123】
8β−ビニル集団の分解と同じく、一般式Iで表される他の化合物は、実施例に記載されている試薬と同種である試薬を使用して得ることができる。
【0124】
遊離ヒドロキシ基のエーテル化及び/又はエステル化は、当業者に共通の方法に従って実行される。
【実施例】
【0125】
実施例1
8β−ビニル−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン
65mlのTHF中の7.3g(23.5mol)の3−メトキシ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オンをアルゴン下で、THF/ヘプタン/エチルベゾール中の2M溶液のリチウム−ジイソプロピルアミド(60.0mmol)の30mlに滴下し、−78℃に冷却し、次に、16ml(115.4mmol)のトリエチルアミン及び7.6ml(59.9mmol)のクロロトリメチルシランを順に添加する。その後、反応混合物を質問まで1.5時間で温め、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、n−ヘキサンで抽出した。回収した有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中でエバポレーションにより濃縮する。得られた(3−メトキシ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10),16−トリエン−17−イロキシ)−トリメチルシラン粗生成物(12gの黄色味を帯びた液体残渣)をさらに精製することなしに次の工程に用いる。R=0.54(シクロヘキサン/酢酸エチル=8/2)
【0126】
6.8gの3−メトキシ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10),16−トリエン−17−イロキシ)−トリメチルシラン粗製生成物を50mlの塩化メチレンに溶解させ、5g(15.9mmol)のN−フルオロジベンゼンスルホンイミドを合わせ、遮光して、室温で16時間混合する。25mlの2N塩酸を添加し、有機相を分離し、塩化メチレンで数回抽出する。回収した有機相を、順に重炭酸ナトリウム溶液、水、飽和した塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で濃縮する。得られた粗生成物(8.43gの黄褐色の油状物)をシリカゲル上のクロマトグラフィー(19/1 シクロヘキサン/酢酸エチル)によって精製する。このようにして、1.65g(38%、無色泡状物)の3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン及び2.08g(51%、無色泡状物)の3−メトキシ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オンを得る。3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン:
【0127】
【化3】

【0128】
3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17α−オール及び3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17β−オール
1.65g(5.0mmol)の3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オンを150mlのTHFと150mlのメタノールの混合物に溶解し、5℃に冷却し、1.9g(50.2mmol)のホウ化水素ナトリウムに合わせる。1.5時間で室温に加温中に、反応混合物を撹拌する。次に、10mlの酢酸を添加し、この溶液を最終的には真空中で乾燥させる。水に残渣を溶解し、酢酸エチルで数回抽出する。有機相を回収し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空中で濃縮する。得られる粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(シクロヘキサン//メチル−tert−ブチルエーテル=13/1)によって分離する。この手法によれば、0.68g(40%)の3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17α−オール及び1.00g(60%)の3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17β−オールを無色泡状物の形態で得る。3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17α−オール:
【0129】
【化4】

【0130】
3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17β−オール:
【0131】
【化5】

【0132】
16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール
690mg(1.87mmol)のテトラブチルアンモニウムヨウ化物をアルゴン下で、9mlの塩化メチレン中の70mg(0.21mmol)の3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17β−オールの溶液に添加する。反応混合物を−78℃に冷却し、次に、塩化メチレン中の1Mの三塩化ホウ素の1.9ml(1.9mol)と合わせる。混合物を0.5時間、−78℃で撹拌し、最終的に室温まで加温し、水で反応を停止する。有機相を分離し、水相を塩化メチレンで数回抽出し、有機相を回収し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空中で濃縮する。得られる粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル=9/1)によって分離する。26mg(39%)の16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオールをこの手法に従って得る。16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール:
【0133】
【化6】

【0134】
実施例2
16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール
295mg(0.80mmol)のテトラブチルアンモニウムヨウ化物をアルゴン下、4mlの塩化メチレン中の30mg(0.09mmol)の3−メトキシ−16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17α−オールの溶液に添加する。反応混合物を−78℃に冷却し、次に、塩化メチレン中の1M三塩化ホウ素の0.8ml(0.8mmol)と合わせる。混合物を0.5時間、−78℃で撹拌し、最終的に室温まで加温し、水で反応を停止させる。有機相を分離し、水相を塩化メチレンで数回抽出し、有機相を回収し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空中で濃縮する。得られる粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル=7/3)によって分離する。この手法によれば27mg(94%)である。16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオールが得られる。16α−フルオロ−8−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール:
【0135】
【化7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

(式中、
ラジカルR、R、R13、R16、並びにR17及びR17’は、互いに独立して、下記の意味を有する:
は、水素原子又は基R18を意味し、ここで、
18は、
直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和C−Cアルキルラジカル、トリフルオロメチル基;
置換基として、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ−、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)、又は両方のアルキル基が同一又は異なっているジ(C−C)アルキルアミノ、両方のアラルキル基が同一又は異なっているジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、C−C20アシル又はC−C20アシルオキシから独立して選択される少なくとも1つのラジカルで場合により置換されるアリール、ヘテロアリール又はアラルキルラジカル;
19が、最大3箇所置換されるか又は置換されず、部分的に又は完全にハロゲン化されているC−C10アルキルラジカル原子の直鎖又は分岐鎖である、アシルラジカル−(C=O)R19
を意味し、あるいは
18は、基R20SOを意味し、ここで、
20は、R2122N基であり、ここで、R21及びR22は、互いに独立して、水素原子;C−Cアルキルラジカル;基−C(=O)R23、ここで、R23は、飽和又は最大3箇所の不飽和であり、部分的又は完全にハロゲン化されている、不飽和若しくは飽和の直鎖又は分岐鎖C−C10アルキルラジカル;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基;シクロアルキル部分で3〜7個の炭素原子を有し、最大8個の炭素原子のアルキル部分、又は、置換基として、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ−、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)、又は両方のアルキル基が同一又は異なっているジ(C−C)アルキルアミノ、両方のアラルキル基が同一又は異なっているジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、C−C20アシル又はC−C20アシルオキシ基から独立して選択される少なくとも1つのラジカルで場合により置換されるアリール、ヘテロアリール又はアラルキル基;あるいは、N原子と一緒になって、4〜6個のC原子又はモルホリノラジカルを含むポリメチレンイミノラジカルを意味する;
は、場合により部分的又は完全にフッ素化され得る、2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル又はアルキニルラジカルであり;
13は、メチル基又はエチル基であり;
16は、α位のフッ素原子であり;
17及びR17’は、いずれの場合も互いに独立して、水素原子及びヒドロキシ基;又は
水素原子、及びR18、R20及びR23基がいずれの場合でもRの下に指示されている意味である基R18O−、R20SO−又はOC(=O)R23である)
で表される8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン誘導体。
【請求項2】
が水素原子である、請求項1に記載の一般式Iで表される化合物。
【請求項3】
がビニル、エチニル又はプロパ−1−イニル基である、請求項1又は2に記載の一般式Iで表される化合物。
【請求項4】
17及びR17’が水素原子及びヒドロキシ基原子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の一般式Iで表される化合物。
【請求項5】
がビニル、エチニル又はプロパ−1−イニル基であり、R16がフッ素原子であり、R17及びR17’が水素原子及びヒドロキシ基原子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式Iで表される化合物。
【請求項6】
17及びR17’が水素原子であり、R18及びR19がいずれの場合でもRの下に指示されている意味である基R18−O−又はR19SO−O−である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の一般式Iで表される化合物。
【請求項7】
すなわち、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール;
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール;
8β−ビニル−16β−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール
である、請求項1又は2に記載の一般式Iで表されるエストラトリエン。
【請求項8】
少なくとも請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物と医薬として適合可能なビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項9】
薬剤として使用するための請求項1〜7のいずれか1項に定義される一般式Iで表される化合物の使用。
【請求項10】
医薬品を製造するための請求項1〜7のいずれか1項に定義される一般式Iで表される化合物の使用。
【請求項11】
女性及び男性におけるエストロゲン欠乏によって誘導される疾患及び状態を治療するための請求項10に記載の使用。
【請求項12】
閉経期障害及び閉経後症状を治療するための請求項10に記載の使用。
【請求項13】
女性の不妊のインビトロでの治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項14】
女性の不妊のインビボでの治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項15】
外科的処置、投薬などによって引き起こされる卵巣機能不全におけるホルモン欠乏によって誘導される症状の治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項16】
ホルモン補充療法(HRT)のための請求項10に記載の使用。
【請求項17】
選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)、例えばラロキシフェンと組み合わせた請求項10に記載の使用。
【請求項18】
関節リウマチ、多発性硬化症、及び狼瘡の予防及び治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項19】
炎症性腸疾患、特にクローン病の予防及び治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項20】
皮膚の炎症性疾患、特に乾癬の予防及び治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項21】
心臓血管疾患の予防及び治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項22】
動脈硬化症、高血圧及び高血圧性心疾患の予防及び治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項23】
前立腺過形成の予防及び治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項24】
前立腺過形成の予防及び治療のための抗エストロゲン及び/又は選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)を組み合わせた請求項10に記載の使用。
【請求項25】
免疫系の疾患を治療するための請求項10に記載の使用。
【請求項26】
子宮内膜症の治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項27】
結腸及び小腸の癌の治療のための請求項10に記載の使用。
【請求項28】
毛髪成長の刺激のための請求項10に記載の使用。

【公表番号】特表2010−533152(P2010−533152A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515526(P2010−515526)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059115
【国際公開番号】WO2009/007454
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】