説明

選択的に飛ばされたピクセルを含む自己走査型フォトダイオードアレイ

【課題】分光光度計において、スペクトルのUV部分、可視部分およびIR部分を検出するために自己走査形フォトダイオードアレイを用いて行われる測定の信号対雑音比を改善する。
【解決手段】自己走査フォトダイオードアレイは、読み出される前に低い信号ピクセルが所定の露光時間tの倍数の間、電荷を蓄積することを可能にする。露光のパターン、すなわち整数M(iはアレイ内の1からNまでのピクセル数)は、当該のピクセルが飽和状態を超えずに可能な限り多くの電荷を蓄積するように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2004年3月10日に出願した米国仮特許出願第60/552056号の優先権を主張するものである。この出願の内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は多目的分光光度計または解析用検出器として使用されるように構成された分光光度計に関する。具体的には、本発明はスペクトルのUV部分、可視部分およびIR部分を検出するために自己走査型フォトダイオードアレイを用いて行われる測定の信号対雑音比の改善に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に説明される応用例では、ある波長範囲を含む光が分散されてフォトダイオードアレイ上に結像し、その結果、アレイの出力がスペクトルとなる。典型的には、光量は波長によって大きく変化し、その結果、アレイのピクセルは広く異なる速度で光電荷(photo charge)を生成する。
【0004】
アレイのスキャンはまた、光がシャッタで遮られた状態で行われて、暗電流の寄与および増幅エレクトロニクス(amplifying electronics)に起因する任意のオフセットを判定する。これら暗値は減じられ、N個のピクセルのそれぞれに蓄積された光電荷を時間tで測定するN個のデジタル値を生み出す。通常、いくつかのそのような走査は相互追加され(co−added)、その結果、暗修正された(dark−corrected)ピクセル信号の平均化セットがある所定のサンプル間隔、すなわちサンプル時間で生み出される。
【0005】
ダイオードアレイに当たる光度は変動しないと仮定すると、各ピクセル上に蓄積される電荷の測定精度を低下させる2つの雑音源が存在する。まず、蓄積された電荷の平方根に比例する散弾雑音が存在する。これは電子流の離散的性質の不可避な結果である。これが唯一の雑音源であれば、ピクセルが読み出されるたびに蓄積される電荷の量の平方根として、かつピクセルが読み出される回数の平方根として信号対雑音比は改善するであろう。したがって、信号対雑音比は露光時間tに依存せず、光による電荷生成速度に依存する。しかし、第2の雑音源、いわゆる固定雑音は光度と無関係であり、かつピクセル電荷が読み出されるたびに信号を損なう。この雑音源は2つの構成要素を有する。すなわち、PDAデバイスから発生する読出し雑音、別名kTC雑音、および外部増幅器からの雑音である。ピクセル暗電流からの散弾雑音も存在するが、本明細書で考慮される比較的高い光水準において、この散弾雑音は無視されてもよい。
【0006】
光信号が十分高い場合、信号の平方根に比例する散弾雑音が支配する。しかし当該信号が低下すると、固定雑音は信号対雑音比を支配して、信号対雑音比はその時点で下り信号に正比例して低下する。
【0007】
先行技術の方法では、いずれのピクセルも特定の実験または一連の測定に対する当該のスペクトル範囲(spectral range of interest)内で飽和しないという条件で、tに対して可能な最も長い期間を選択することが標準的技法である。いずれのピクセルも飽和しないことが知られている場合、露光時間tは短い露光時間を用いてサンプルセル中の標準物質で全スペクトルを測定することにより設定される。次いで、露光時間tは短い露光時間をスケーリングすることにより検出され、その結果、当該のスペクトル範囲内の最高信号ピクセルは、例えば、飽和状態の85%になるであろう。
【0008】
HPLC検出では、吸収サンプルが存在しない場合、標準物質は分離開始時に移動相である。可能な限り長いtを選択することはサンプル時間内のアレイの読出し回数を最小限に抑え、それにより、ピクセル信号に加えられる読出し雑音の効果を最小限に抑える。当該のスペクトル範囲外のピクセルは飽和してもよい。自己走査工程はt間隔でアレイ内のピクセルすべてを読み出し、かつ当該の範囲外のそれらピクセルの値は単に無視される。それらピクセルのいくつかは飽和してもよいが、これは所望のスペクトル範囲内のピクセルからのデータに影響を及ぼさない。
【0009】
データ収集および信号対雑音比を最適化するには、露光時間tはデータ転送速度(すなわち、毎秒ピクセル値が報告される回数)の逆数であるサンプル時間の約数でなければならない。この条件は測定時間が失われる場合、待機期間なしでデータ収集が連続的であることを確実にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術の手法は最高信号を有するピクセルにとって最良の露光時間tを選択し、信号対雑音比がこれらピクセルに対して最適化される。しかし、アレイ内の他のピクセルははるかに少ない量の光を受け、かつはるかに低い速度で電荷を蓄積する可能性がある。それぞれの読出しに関係する固定雑音が一定であると同時に、蓄積された電荷信号が低いため、これらピクセルは大きな信号対雑音損失を伴って読み出される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の方法および装置は、スペクトルのUV部分、可視部分およびIR部分を検出するために自己走査型フォトダイオードアレイを用いて行われる測定の信号対雑音比を改善する。本発明によれば、N個のピクセルの線形アレイは光を受けて、ピクセル接合領域において電子および正孔を生み出す。電荷は光度およびフォトダイオードの量子効率に比例する割合でピクセル内および関連するコンデンサ内に蓄積される。先行技術のデバイスでは、露光時間tの後、自己走査工程が始まり、かつ各ピクセル内にある電荷は順次出力ビデオライン上に移し替えられる。それぞれの電荷パケットは増幅され、サンプルホールド回路に伝わり、デジタル値に変換されてデータシステムに伝わる。
【0012】
有利には、本発明の方法は、読み出される前に低い信号ピクセルが露光時間tの倍数の間、電荷を蓄積することを可能にする。例えば、i番目のピクセルは読出し周期のM倍、すなわちM期間の間、露光される。これは読出し信号を無効にするか、または読出し周期の(M−1)倍の間、i番目のピクセルに飛ばして、アレイのM番目の走査ごとに読出し信号を読み出すことにより実現される。この露光パターン、すなわち整数M(iはアレイ内の1からNまでのピクセル数)は、当該のピクセルが、例えば、飽和状態の85%を超えずに可能な限り多くの電荷を蓄積するように選択される。
【0013】
選択されたサンプルレート(例えば、10ポイントすなわち一秒当りスペクトル走査)でアレイからのデータを報告するためには、許容露光値Mはサンプル間隔の約数、この場合100msに限定される。第1の例示的実施形態では、tが12.5msに設定された場合、整数Mの許容値は1、2、4および8となり、生じるピクセル露光は12.5ms、25ms、50msおよび100msとなるであろう。
【0014】
自己走査クロック速度がより短い露光tに求められるものより高い場合、またはサンプル間隔がより長い場合、より多くの露光選択範囲が可能であることが本発明の範囲内で企画される。第2の例示的実施形態では、300msごとに1回アレイの読出しを得ることが望まれ、かつクロック速度はアレイが6.25msごとに走査されることを可能にする場合、msでの許容露光は、6.25、12.5、18.75、25、37.5、50、75、100、150、300であり、1、2、3、4、6、8、12、16、24、48の対応値Mを含む。
【0015】
任意のピクセルに用いられる最も短い露光はやはり12.5msであり、かつ最も長い露光は100msであるが、クロック速度への変化は、第1実施例の場合、4に対して7の露光選択範囲を可能にする場合がある。より多い選択範囲は全体的に個々のピクセル露光時間Mのより良い信号対雑音最適化を意味する。
【0016】
先行技術のデバイスについての議論において上で述べたように、シャッタを閉じた状態で送られる暗信号は各ピクセル信号から減じられて、当該ピクセルに当たる光に帰因するデジタル値を決定する。本実施形態の場合、当然、暗信号は整数Mの同じ露光パターンを用いて測定されなければならない。
【0017】
本発明の一実施形態による自己走査アレイが読み出されると、N個の電荷パケットは走査ごとに測定される。飛ばされたピクセル読出しに関するこれらN個の電荷パケットは名目上ゼロである値を有する。しかし、読出し雑音および増幅器雑音が存在するため、これらは厳密にゼロではない。データシステムはこれらの値を厳密にゼロに設定し、その結果、アレイのいくつかの走査からの値が相互追加され、かつサンプル時間の終わりでスペクトルが報告されると、ピクセルが実際に読み出された場合の雑音だけが追加される。このような方法で、固定雑音は最小限に抑えられる。本発明の方法を用いた手段では、散弾雑音は全アレイを支配し、かつ固定雑音は要因にならないことになる。先行技術のフォトダイオードアレイを用いた方法では、低い信号を有するピクセルの信号対雑音比は、散弾雑音よりも幾倍か大きい可能性のある固定雑音に支配される。
【0018】
添付された図と併せて解釈される以下の例示的実施形態の詳細な説明から、本発明の前述およびその他の特徴および利点をさらに完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による自己走査フォトダイオードの略図である。
【図2】すべてのダイオードが読み出されるまでクロック信号に従う、本発明による自己走査工程の略図である。
【図3A】デバイス動作を例示するスペクトラムのグラフィック図である。
【図3B】デバイス動作を例示するスペクトラムのグラフィック図である。
【図4】本発明による信号対雑音比を改善するための、本発明による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の詳細な実施形態が本明細書で開示されるが、開示された実施形態は本発明の例示に過ぎず、様々な形態で実施することが可能であることを理解されたい。したがって、本明細書で開示されている特定の構造的かつ機能的な詳細は限定的なものとしてではなく、単に特許請求の範囲の基準として、かつ適切に詳述される事実上任意の構造に本発明を様々に用いることを当業者に教示するための代表的基準として解釈されるべきである。
【0021】
本発明による装置および方法は、より高い感度でスペクトルのUV部分、可視部分およびIR部分を検出するための自己走査型フォトダイオードアレイを用いることを可能にする。図1を参照すると、ブロック図は本発明による装置を示す。図1に示されるように、タイミング情報102は電気的信号の形態でデバイスに供給される。本発明によるフォトダイオードアレイ104は個々のピクセル(フォトダイオード)からなる。第1の例示的実施形態では、フォトダイオードアレイ104は、1から512までラベル付けされたコンデンサによって表される512個のピクセルからなる。フォトダイオードアレイは従来の半導体デバイスおよびフォトダイオードアレイ技術の分野において知られている方法で半導体デバイスとして構築される。カリフォルニア州、サンノゼ、Peripheral Imaging Corporationから入手可能な自己走査型フォトダイオードアレイ、部品番号PI 0512 WSNなどで実装されたものなどのフォトダイオードアレイ技術を用いてもよいことが本発明の範囲内で企画される。フォトダイオードアレイ104内のピクセルは当該ピクセルに当たる光出力に比例した割合で電荷を蓄積する。電荷はピコクーロン(pC)で測定することができる。この第1の例示的実施形態では、ピクセルの最大ウェル容量は約60pCである。電荷蓄積速度はナノアンペア(nA)で光電流として表すことができる。
【0022】
従来の自己走査型フォトダイオードアレイは、本発明により実現されるイネーブルスイッチ制御(Enabling Switch Control)108が欠けている。ピクセルはまずリセットされ、電荷は入射光線の量、および波長により異なるピクセル応答に従って蓄積する。所定の露光時間の後、外部から供給されるスタートパルスは自己走査工程を開始し、この工程は図2に示されるように、フォトダイオードアレイ104内のすべてのピクセル(フォトダイオード)が読み出されるまでクロック信号に従う。この第1の例示的実施形態では、スタートパルスの後のクロック信号の次の立ち上がりエッジは電荷を第1ピクセル106(フォトダイオード)から出力ビデオライン110に移し替えさせ、そしてそこで電荷はチャージアンプ、A/D変換器、次いでデータシステムに伝わる。第1ピクセル106(フォトダイオード)はリセットされ、かつ次のクロック立ち上がりエッジは第2ピクセル112(フォトダイオード)からの電荷を出力ビデオライン110に移し替えさせる。この工程はフォトダイオードアレイ104内のピクセル(フォトダイオード)が読み出され、かつリセットされるまで続く。典型的なクロック周波数は約100kHzである。この周波数により、512個のピクセルを有するフォトダイオードアレイ104に対する完全な走査工程は約5msを要することになる。
【0023】
上で説明されたように、露光時間が可能な限り長い場合に最良の信号対雑音比が生じ、その結果、それぞれの読出し周期に関連する雑音は最小限に抑えられる。従来のデバイスでは、ピクセル(フォトダイオード)の一部がその電荷容量の一部分のみ蓄積しているとしても、すべてのピクセル(フォトダイオード)は同じ露光時間で読み出される。
【0024】
本発明によれば、イネーブルスイッチ制御108を用いて、特定のピクセル(フォトダイオード)は一露光時間tの後に読み出されるかどうか、またはその電荷蓄積が最適になるまで当該ピクセルに対する自己走査スイッチ制御114信号は遮断されるかどうかを判定する。すなわち、イネーブルスイッチ制御108は、自己走査スイッチ制御114により行われるようにピクセル走査を動作可能または動作不能にする。
【0025】
図2に示される例示的実施形態では、左から右へ降順に光電流を生成するいくつかのピクセルが示されている。初めの8つの読出し周期に関して、イネーブルスイッチ制御108により停止されるタイミングパルスがその下に示される。この例示的実施形態では、イネーブル信号の高い値は自己走査工程が起こることを可能にし、かつ低い値はピクセルが読み出されるのを防ぐことを可能にする。
【0026】
図2を参照すると、第1の自己走査読出し周期は時間t202で始まるが、この例示的実施形態において、これは開始から約12.5ミリ秒である。第2の読出し周期は時間2t204で始まるが、この例示的実施形態において、これは開始から約25ミリ秒である。第3の読出し周期は3t205で示され、かつ開始から約100ミリ秒である8t208で始まる第8の読出し周期まで以下同様である。
【0027】
最高信号210を有するピクセル(フォトダイオード)は読出し周期ごとに読み出される。最高信号ピクセル210は最大ウェル容量に近いが、飽和状態220より低い電荷を生み出す。最高信号を有するピクセルを含む第1のピクセルグループ210は、最高信号ピクセルの半分またはそれ以上に相当する光電流を生み出す。第2のピクセルグループは中間信号ピクセル212であり、最高信号ピクセル210光電流の50%未満であるが25%を上回る光電流を生み出す。図2の上部に示される2つの露光周期2t204の間、露光することが可能になる場合、これらのピクセルはより最適な電荷を得る。これは時間2t204で示されるイネーブルスィッチ制御信号によって達成される。
【0028】
第3グループ内のピクセルの光電流はより低い信号ピクセル214であり、最高信号ピクセル210の4分の1と8分の1との間を生み出し、かつ時間4t206で読み出される。第4グループ内のピクセルの光電流は最低信号ピクセル216であり、最高信号ピクセル210の8分の1より低い信号を生み出し、かつ時間8t208で読み出される。この時点で、当該のピクセルはすべて読み出され、かつ全ての順序が繰り返される。
【0029】
データシステムソフトウェアは各ピクセルからの読出し値を蓄積し、それぞれ8t208間隔の終わりでスペクトルを再構築する。特定のピクセルへの移し替えが動作可能にされたか否かにかかわらず、自己走査工程はクロック周期ごとに値を生み出す。システムソフトウェアは、ピクセルが読み出されない場合にゼロを記録し、その結果、これら周期に対する読出し雑音は結果に付加されない。
【0030】
本発明による、デバイス動作を説明するスペクトルは図3Aおよび図3Bに示される。図3Aは、自己走査フォトダイオードアレイの一部分を通して分散される200から500nmの重水素アークスペクトルの一部分を示す。このスペクトルの記録において、イネーブルスイッチ制御は常に動作可能にされていた。図上表示(plot)上のそれぞれの点は1つのピクセルからの信号である。各ピクセルは読出し周期ごとに読み出され、その結果は、従来の自己走査フォトダイオードが用いられた場合と同じである。図3Bは、図2に照らして説明されるように、本発明によるイネーブルスイッチ制御が動作した場合のピクセル信号を示す。異なる幾何学的図形は異なるピクセルに対する露光時間を示す。図3Bに示すように、12.5msの露光時間302は菱形、25msの露光時間304は四角形、50msの露光時間306は三角形、かつ100msの露光時間308は円形で示される。すべてのピクセルは最適化された露光時間を有しており、読出し周期の数を最小限にし、かつ信号対雑音比を高める。
【0031】
信号対雑音比を改善するための本発明による方法は図4に示される。測定の信号対雑音比の改善方法は、本明細書において上に説明されたように、光スペクトルの紫外線部分、可視部分および赤外線部分を検出するためにイネーブルスイッチ制御の追加により強化されている自己走査型フォトダイオードアレイを用いて行われる。
【0032】
ゼロの時、ピクセルはすべてリセットされ、かつ電荷を蓄積し始める。ピクセルは溶剤で満たされているが、解析試料(analyte)では満たされていないサンプルセルなどの標準状態に対応する光に曝される。すべてのピクセルは短い露光時間に曝され、その場合、いずれのピクセルも飽和せず、かつ読み出されない(400)。シャッタは閉じ、かつ同じ短い露光時間を用いて暗スペクトル(dark spectrum)が測定されて記録される(402)。暗スペクトルは減じられ、かつ暗修正された基準スペクトルが計算される(404)。これらスペクトルはエネルギースペクトルであり、波長に対するA/Dカウントで測定される光電流を割り付ける(plotting)。
【0033】
頻繁に、サンプルレートは指定されることになるが、これはフローセルを通過する解析試料のピーク時の幅に関連する。例えば、1秒当たり10スペクトルのサンプルレートは、サンプルセルの内容のスペクトルが100ms(T)ごとに出力されることを意味する。全アレイを読み出すのに必要な時間より長く、かつ当該の範囲において任意のピクセルが飽和するための時間より短い、選択された単位露光時間tはTの整数の約数でなければならない。本発明によれば、許可露光時間は単位露光時間tの整数倍(Mt)であり、Tの約数でもある。M=T/tの極大値が多くの因数を有するようにtの値を選択することが有利である。Mの許可選択範囲がより多ければ、それだけ全体的に読出し周期がより少なく、かつピクセル信号の信号対雑音比がより厳密に最適化される。
【0034】
図2に与えられた実施例を用いると、Tが100msであり、かつアレイが10ms足らずで読み出されることが可能な場合、許可露光時間のセットは12.5、25、50および100msになるであろう。整数値M=1、2、4および8と仮定すると、tは12.5msである。整数3、5、6および7はT/tを割り切れないため、Mの許可値でない点に留意されたい。
【0035】
次の工程はMの値を当該の波長範囲ですべてのピクセルに割り当てることである。暗修正された基準スペクトルを用いて、各ピクセルが飽和状態の85%などの所定の水準に達するために個別に必要となる露光時間を判定し、かつそのような水準が計算される(406)。サンプルレートおよびアレイ読出し時間を用いて、単位露光時間tが判定される(408)。所与のピクセルが85%飽和状態に達するのに必要な計算された露光時間がMに関連する露光時間と同じまたはそれ以上になるように、上記のリストから各ピクセルに対するMの最大値が割り当てられる(410)。例えば、第50のピクセルが20msで飽和状態の85%に達する場合はM50=2を設定し、第250のピクセルが65msで飽和状態の85%に達する場合はM250=8を設定し、以下同様である。特定状態のピクセル信号範囲に応じて、任意のピクセルに割り当てられていないいくつかのM値が存在してもよい。
【0036】
基準スペクトルは、割り当てられた整数Mによって指定された露光パターンを用いて再測定される(412)。やはり暗スペクトルも、割り当てられた整数Mによって指定された露光パターンを用いて再測定される(414)。割り当てられた整数Mにより指定された、再測定されたスペクトルを用いて、暗修正された基準スペクトルが計算される(416)。次いで、割り当てられた整数により指定された同じ露光パターンを用いて、サンプルスペクトルが測定される(418)。この測定はサンプル時間Tごとに繰り返され、かつ暗修正されたサンプルスペクトルが計算される。基準スペクトルおよびサンプルスペクトルは組み合わされ、かつ以下のように吸光スペクトルが計算される(420)。暗修正されたサンプルスペクトルと基準スペクトルとを組み合わせることによる、当該の波長範囲に対する吸光単位A:
A=log10(基準/サンプル)。
【0037】
本発明は512個の個々のピクセル(フォトダイオード)を含むフォトダイオードアレイを用いて説明されているが、本発明の方法はより少ないまたはより多い個々のピクセル(フォトダイオード)を有するフォトダイオードアレイを用いて利用することが可能であることを当業者は理解されたい。
【0038】
本発明はピクセル飽和水準に関する選択基準を用いて説明されているが、個々のピクセルまたはピクセルのグループに不定の飽和水準を割り当てることが可能であることを当業者は理解されたい。
【0039】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の形態および詳細に様々なその他の変更、省略および追加を行うことが可能である。したがって、上の説明は限定的なものとしてではなく、様々な実施形態の例示に過ぎないものとして解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の露光時間(t)の後に、個々のピクセルからの電荷が各ピクセルから順次少なくとも1つの出力ビデオライン上に移し替えられる自己走査型フォトダイオードアレイであって、
少なくとも1つの光源と、
前記少なくとも1つの光源から光を受ける手段を有する少なくとも1つのサンプルセルと、
前記少なくとも1つのサンプルセルを通して送られた光を収集するためのピクセルを有する1つのフォトダイオードアレイと、
前記ピクセルを読み出す手段と、
1つまたは複数の追加露光時間の間、選択されたピクセルの読出しを飛ばし、前記選択されたピクセルが前記所定の露光時間の指定された整数(M)倍の間、露光されることを可能にし、それにより、より少ない光を受ける前記選択されたピクセルが、読み出される前に追加電荷を蓄積することを可能にし、かつそれにより、読出し周期を削減しかつ信号対雑音比を改善する手段と
を含む、自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項2】
異なるピクセルが、前記所定の露光時間の同じまたは異なる整数(M)倍の間、露光される、請求項1に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項3】
前記所定の露光時間が、所定のピクセル範囲内で、最高速度で電荷を蓄積する1つまたは複数のピクセルの飽和状態を超えない、請求項1に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項4】
各ピクセル信号が所定のピクセル範囲内で飽和状態に近づくが飽和状態を超えないように、指定された整数Mが選択される、請求項1に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項5】
個々のピクセルの前記露光時間Mtが、そこから電荷が測定されるピクセルの飽和状態を引き起こさない、請求項1に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項6】
各ピクセルの前記露光時間が、前記所定の露光時間の整数M倍であり、整数Mが整数1を含まない、請求項1に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項7】
前記サンプル時間が、フォトダイオードアレイの完全または選択された部分の1つまたは複数の完全測定にかかった時間として定義され、前記個々のピクセル露光時間Mtが、前記サンプル時間の約数である、請求項1に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項8】
前記所定の露光時間tが、標準状態に従って前記フォトダイオードアレイが前記光を受ける場合に設定される、請求項1に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項9】
所定のピクセル範囲が全アレイを含む、請求項3に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項10】
所定のピクセル範囲が全アレイを含む、請求項4に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項11】
不要な読出し雑音の追加を避けるために、ピクセル読出しが飛ばされる場合に記録される値がゼロに設定される、請求項1に記載の自己走査型フォトダイオードアレイ。
【請求項12】
光スペクトルの紫外線部分、可視的部分および赤外線部分の内の光を検出するために自己走査型フォトダイオードアレイを用いた測定の信号対雑音比を改善する方法であって、
前記フォトダイオードアレイのピクセルを標準状態から受けた光に曝し、かつ前記ピクセルの飽和状態を引き起こさずに短い露光時間のスペクトルを測定するステップと、
前記短い露光時間を用いてシャッタを閉じた状態で前記ピクセルの暗スペクトルを測定するステップと、
各ピクセルからの暗修正された基準信号を計算するステップと、
その蓄積電荷が、飽和状態に近いがこれを下回る所定水準に達するように各ピクセルに対する露光時間を計算するステップと、
指定された当該の範囲内のいずれのピクセルも飽和しないだけの短さに所定の露光時間tを設定するステップと、
個々のピクセルが所定の露光時間の整数倍Mtの間、露光されるように、かつ時間Mtの後に前記個々のピクセルが飽和状態に近いがこれを上回らない蓄積電荷を有するように整数Mを割り当てるステップと、
整数によって判定された露光パターンを用いてシャッタを閉じた状態で暗スペクトルを再測定するステップと、
整数によって判定された露光パターンを用いて基準スペクトルを再測定し、それにより、暗修正された基準スペクトルを生み出すステップと、
整数によって判定された同じ露光パターンを用いてサンプルスペクトルを測定し、かつ暗修正されたサンプルスペクトルを生み出すステップと、
サンプルの吸収特性を判定し、それにより、改善された信号対雑音比を有する同一のものを特定しかつ測定するために、基準スペクトルとサンプルスペクトルとを組み合わせるステップと
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−90275(P2012−90275A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−241231(P2011−241231)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【分割の表示】特願2007−502856(P2007−502856)の分割
【原出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(509131764)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (46)
【Fターム(参考)】