説明

選択的アンモニア酸化のための二元金属触媒

ディーゼルエンジン排気流を処理するための触媒、方法、およびシステムが記載される。1つ以上の実施形態において、触媒は、約30未満のシリカ/アルミナ比(SAR)を有するモレキュラーシーブを含み、モレキュラーシーブは、イオン交換銅およびイオン交換白金を含む。また、排気ガスを処理するかかる触媒および方法を含むシステムも、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内燃エンジンのための排出ガス処理触媒、システム、および方法、ならびにその製造、ディーゼルエンジンおよび希薄燃焼ガソリンエンジンを含む、希薄燃焼エンジンにおける使用のための方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン排気物は、煤煙等の粒子状排出物、および一酸化炭素、未燃または部分的に燃焼した炭化水素、ならびに窒素酸化物(集合的にNOxと称される)等のガス状排出物を含有する、不均一混合物である。しばしば1つ以上のモノリス基材上に配置される触媒組成物は、特定の、あるいは全てのこれらの排気成分を無害の化合物に転換するために、エンジン排気物システム中に設置される。
【0003】
アンモニア選択的触媒還元(SCR)は、ディーゼルおよび希薄燃焼エンジンにおける厳しいNOx排出目標を充たすため使用されるであろうNOx減少技術である。アンモニアSCRプロセスにおいて、NOx(NO+NO2から構成される)は、典型的に卑金属から成る触媒を上で二窒素(N2)を形成するため、アンモニア(または尿素等のアンモニア前駆体)と反応する。この技術は、典型的なディーゼル走行サイクル上で90%より大きいNOx転換の能力があり、したがってそれは、挑戦的なNOx減少目標を達成するための最善のアプローチのうちの1つを表す。
【0004】
幾つかのアンモニアSCR触媒材料の特性の特徴は、典型的走行サイクルの低温部分間に、触媒表面上のルイスおよびブレンステッド酸サイト上において多量のアンモニアを保持する傾向である。排気温度のその後の上昇は、アンモニアのアンモニアSCR触媒表面からの脱着を引き起こし、車両の排気管から排出することができる。NOx転換比率を上昇するためのアンモニアの過剰投与は、非反応のアンモニアがアンモニアSCR触媒から排出される場合がある、別の潜在的なシナリオである。
【0005】
アンモニアSCR触媒からのアンモニアのスリップは、多数の問題を提示する。NH3に対する臭気閾値は、空気中で20ppmである。眼および咽喉刺激は100ppmを越えると顕著であり、400ppmを越えると皮膚刺激が生じ、IDLHは空気中で500ppmである。NH3は、特にその水性形態において腐食性である。排気触媒の排気ライン下流のより低温の領域中におけるNH3および水の凝縮は、腐食性の混合物を与えるであろう。
【0006】
したがって、アンモニアがテールパイプ内へ移行する前に、アンモニアを除去または実質的に減少することが望ましい。選択的アンモニア酸化(AMOx)触媒は、過剰アンモニアをN2に転換する目標と共に、この目的のために用いられる。選択的アンモニア酸化のための理想的な触媒は、アンモニアスリップが車両の走行サイクル中に生じる場合、全ての温度でアンモニアを転換することができ、かつ最小の窒素酸化物副生成物を産生であろう。AMOx触媒によるNOまたはNO2のいかなる産生も、排気処理システムの効果的なNOx転換を低下するため、この後者の要求は特に重大である。また、AMOx触媒は、強力な温室効果ガスであるN2Oを最小量だけ産生する。
【0007】
γ−アルミナ等の金属酸化物上に支持されているPtを含む触媒は、知られている最も活性を有するNH3酸化触媒であり、250℃を下回るNH3ライトオフ温度を示している。それらは、酸化条件下でガス流からNH3の除去のために非常に効果的である。しかしながら、N2への選択性は、車両排出システムにおいて適用可能であるために十分な高くはない。250℃で、N2選択性は50%未満であって、NH3酸化の第1の副産物はN2Oである。温度が上昇するにつれて、N2選択性は低下する。450℃で、支持されているPt触媒は20%未満のN2選択性を与え、大部分の生成物はNOおよびNO2から構成される。故に、支持されているPt触媒に匹敵するが、ディーゼル車両走行サイクルに対する温度範囲に関連する250℃〜450℃の温度範囲にわたり60%より大きいN2選択性を伴う、活性を伴うアンモニア酸化触媒に対する要望が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の態様は、排気ガスの処理のための触媒、方法、およびシステムに関連する。
【0009】
窒素およびNOxへのアンモニアの酸化のための触媒の第1の実施形態では、触媒は、約30未満のシリカ/アルミナ比(SAR)を有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブを含み、該モレキュラーシーブはイオン交換銅およびイオン交換白金を含む。具体的な実施形態において、SARは約10または6未満であり得る。1つ以上の実施形態において、触媒はある量のゼロ原子価または金属白金をさらに含む。
【0010】
1つ以上の実施形態において、白金は、白金複合前駆体のカチオン交換プロセスによって触媒へ添加される。例示的白金前駆体は、テトラアミン白金(II)塩、テトラアミン白金(IV)塩、テトラクロロ白金(II)塩、ヘキサクロロ白金(IV)塩、白金水酸化物、白金水和物、白金ビス(アセチルアセトン酸塩)、およびその組み合わせを含む群から選択することができる。
【0011】
アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブは、FAU、MFI、MOR、BEA、HEU、およびOFFから選択される結晶の骨格型を有するゼオライトを含み得る。
【0012】
1つ以上の実施形態において、該触媒は、約250℃で実質的に完全なアンモニアの転換を触媒する能力がある。一実施形態において、触媒は、約250℃で、二窒素にアンモニアを酸化するための約60%を越える選択性を提供する能力がある。1つ以上の実施形態に従うと、触媒は、約400℃で二窒素にアンモニアを酸化するための約60%を越える選択性を提供する能力がある。
【0013】
本発明の別の態様は、ディーゼルまたは希薄燃焼車両の排気ガス流中で産生された排出物を処理するための方法に関連し、該方法は、車両のエンジン排気流を少なくともNOx低減触媒を通過させることと、NOx低減触媒を出、かつアンモニアを含有する該排気流を、酸化触媒を通過させることであって、該酸化触媒は、イオン交換白金およびイオン交換銅を有するモレキュラーシーブを含み、該モレキュラーシーブが、約15未満のシリカ/アルミナ比(SAR)を有することを含む。1つ以上の実施形態に従うと、該NOx低減触媒は、SCR触媒、希薄NOx補足触媒、または該NOx低減触媒からのアンモニアスリップをもたらすNOxの破壊のための他の触媒のうちの1つ以上から選択される。
【0014】
具体的な実施形態において、NOx低減触媒および酸化触媒組成物は、別々の基材上に配置される。代替的に、他の実施形態において、NOx低減触媒および酸化触媒は同一基材上に配置される。
【0015】
本発明の別の態様は、排気ガス流と連通しているSCR触媒と、排気ガス流と連通し、該SCR触媒より上流に位置するアンモニアまたはアンモニア前駆体注入ポートと、排気ガス流と連通し、該SCR触媒より下流に位置する、本明細書で説明されるように窒素およびNOxにアンモニアを酸化するための触媒とを、含む排気ガス流を処理するためのシステムに関連する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】排出物処理システムの実施形態の概略描写を示す図である。
【図2A】[Pt(NH342+のイオン交換によって調製されたPt+ベータゼオライト触媒の20,000X拡大率での透過型電子顕微鏡写真画像を示し、挿入図はPt粒子の詳細を示す図である。
【図2B】Pt(IV)錯体の初期水分含浸によって調製されたPt+ベータゼオライト触媒の50,000X拡大率での透過型電子顕微鏡写真画像を示し、挿入図はPt粒子の詳細を示す図である。
【図3】比較例1D(円)および実施例1G(正方形)に対して、NH3転換(実線)およびN2パーセント選択性(破線)のプロットを温度の関数として示す図である。
【図4】比較例1D(0Cu)、および実施例1E(1.12重量%Cu)、実施例1F(2.12重量%Cu)、実施例1G(3.19重量%Cu)に対して、250℃(円)でのNH3パーセント転換、250℃(正方形)および400℃(三角形)でのN2パーセント選択性のプロットを温度の関数として示す図である。
【図5】新しい状態(実線)および経時状態(破線)における、実施例1Eおよび実施例1H(円)、ならびに実施例1Jおよび実施例1K(正方形)に対して、NH3パーセント転換のプロットを温度の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の幾つかの例示的実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスのステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態で行うことができ、かつ様々な様式で実践または実行される。
【0018】
本明細書および添付の請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別様に示唆しない限り、複数形指示対象を含む。したがって、例えば、「触媒」への言及は、2つ以上の触媒等の混合物を含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「減少する」という用語は、量を低下することを意味し、「減少」は、何らかの手段によっても引き起こされた量の低下を意味する。それらが本明細書に出現する場合、「排気流」および「エンジン排気流」という用語は、エンジンから出る流出物、ならびにディーゼル酸化触媒および/または煤煙フィルターを含むが、それらに限定されない1つ以上の他の触媒システム成分の下流の流出物を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「イオン交換」または「金属交換」(例えば、「銅交換」)は、金属がモレキュラーシーブ材料上、またはモレキュラーシーブ材料中に支持されていることを意味する。少なくとも幾つかの金属はイオン型であり、1つ以上の実施形態において、該金属の一部は、ゼロ原子価または金属型であってもよく、あるいは金属酸化物凝縮物の形態であってもよい。本明細書で用いる場合、触媒中の金属の重量パーセントは、その金属が支持されているウォッシュコート層の重量に対する、特定の金属、例えば銅または白金の重量の比率を指す。
【0021】
本発明の態様は、排気ガス処理のための触媒、方法、およびシステムに関連する。一実施形態において、アンモニアを窒素およびNOxに酸化するための触媒は、約30未満、例えば約10未満、より具体的には、約6未満のシリカ/アルミナ比(SAR)を有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブを含む触媒である。幾つかの実施形態において、イオン交換によってモレキュラーシーブ上で支持される約1重量%未満のPtおよび約5重量%未満の銅を有する触媒は、約250℃未満の温度で実質的に完全なアンモニアの転換を提供する。1つ以上の実施形態において、触媒は、約250℃および約400℃でアンモニアを窒素に酸化させるため、約60%を越える選択性を有する。
【0022】
1つ以上の実施形態に従うと、触媒は、ウォッシュコート層としてモノリス基材上に配置されてもよい。本明細書で使用され、Heck,Ronald and Robert Farrauto,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley−Interscience,2002,pp.18−19で説明されるように、ウォッシュコート層は、モノリス基材または別のウォッシュコート層の表面上に配置される材料の組成的に異なる層を含む。触媒は1つ以上のウォッシュコート層を含有でき、各ウォッシュコート層は独特の触媒機能を有することができる。1つ以上の実施形態において、基材上のモレキュラーシーブの総装填量は、総触媒量に基づき、約0.3g/in3から約3.0g/in3の範囲内である。
【0023】
1つ以上の実施形態において使用される基材は、基材の縦軸に沿って延在する複数の微細で、実質的に平行なガス流通路を含むフロースルーハニカム基材を含み得る。他の実施形態において、基材は壁流基材を含み、触媒は壁流フィルター基材の多孔質壁内に配置され得る。
【0024】
さらなる本発明の態様は、ディーゼルまたは希薄燃焼車両の排気ガス流中で産生された排出物を処理するための方法およびシステムに向けられる。一実施形態において、方法は、自動車のエンジン排気流を、SCR触媒または他のNOx減少デバイズを含み得る少なくともNOx低減触媒を通過させることと、NOx低減触媒を出、かつアンモニアを含有する可能性がある排気流を、選択的アンモニア酸化触媒を通過させることとを、含む。一実施形態において、選択的アンモニア酸化触媒は、モレキュラーシーブ上で支持されている約0.2重量%のイオン交換Ptおよび約3.0重量%のイオン交換銅を有する。1つ以上のシステム実施形態において、NOx低減触媒および選択的アンモニア酸化触媒組成物は、別々の基材上に配置される。代替的なシステム実施形態において、NOx低減触媒および選択的アンモニア酸化触媒は、同一基材上に配置される。
【0025】
1つ以上の実施形態に従い、アンモニア酸化触媒が提供される。N2への純アンモニア酸化プロセスは、2つの化学的に異なるステップで生じる。第1のステップにおいて、化学量論的式1によって表示されるように、NH3は、O2との反応によってNOに転換される。
4NH3+5O2→4NO+6H2O 式1
【0026】
当分野において、NOは、支持された白金族金属(PGM)触媒上のアンモニア酸化の第1の生成物であるという一般的合意が存在する。化学量論的式2に従って、非反応のNH3とNOまたはNO2(集合的にNOxと称される)との反応を組み合わせる第2のプロセスにおいて、二窒素が産生される。

4NOx+4NH3+(3−2x)O2→4N2+6H2O 式2

2つの他の第2のプロセスは、アンモニア酸化触媒の選択性を決定することにおいて重要である。式3に従って、亜酸化窒素(N2O)がNOから産生でき、式4に従って、NO2が産生できる。

2NOx+→N2O+(2x-1)22 式3

NO+122→NO2 式4

式1〜式4の全ては、支持されているPt触媒によって通常触媒され、異なる温度でのこれらのプロセスの相対的比率は酸化生成物の分布を定める。式2はSCRプロセスと同等であり、銅を含有するモレキュラーシーブを含む多数の既知のSCR触媒のいずれかによって触媒されるであろう。触媒する式2の成分の包含は、概して触媒の正味N2選択性を上昇する効果を有するであろう。本発明の幾つかの実施形態において、式2を触媒するための追加の成分は触媒ウォッシュコート中に含まれるであろう。特定の実施形態において、式2を触媒するための成分は銅交換モレキュラーシーブであるであろう。さらにより具体的な実施形態において、PGMは銅交換モレキュラーシーブ上または銅交換モレキュラーシーブ中に直接支持されるであろう。
【0027】
基材
1つ以上の実施形態に従うと、アンモニア酸化触媒のための基材は、典型的に自動車用触媒の調製のために使用されるそれらの材料のいずれであってもよく、金属またはセラミックハニカム構造を典型的には含むであろう。通路を流体流動に対して開くように、基材の入口から出口面へと延在している複数の微細で平行なガス流通路を有するモノリスフロースルー基材等の、いずれの好適な基材も用いられ得る。それらの流体入口からそれらの流体出口まで本質的に直線路である通路は、壁によって画定され、通路を通って流れるガスが触媒材料に接触するように、その壁上に触媒材料はウォッシュコートとしてコーティングされる。モノリス基材の流路は、台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、長円形、円形等の任意の好適な断面形状でもあり得る薄壁チャネルである。かかる構造は、断面積の1平方インチにつき約60〜約1200以上のガス入口開口部(すなわち、「セル」)(cpsi)を含有し得る。代表的な市販のフロースルー基材はCorning400/6菫青石材料であり、それは菫青石から構築され、400cpsiであり、かつ6ミルの壁の厚さを有する。しかしながら、本発明が特定の基材タイプ、材料、または幾何学的形状に限定されないことが理解されるであろう。
【0028】
代替的な実施形態において、基材は壁流基材であり得る。典型的には、非多孔質プラグを用いて、基材本体の一端で各通路が遮断され、反対側の端面で遮断された代替通路を伴う。これは、ガスフローがこの部分を通過するためには、壁流基材の多孔質壁を通過することを必要とする。かかるモノリス基材は、断面の平方インチに当たり最大約700、またはさらに多くの流路を含有し得るが、非常に少ない数が使用されてもよい。例えば、基材は、平方インチに当たり約7〜600、より一般的には約100〜400のセルを有する。セルは長方形、正方形、円形、長円形、三角形、六角形、または他の多角形である断面を有することができる。壁流基材は、典型的に0.002〜0.1インチの壁の厚さを有する。好適な壁流基材は、0.002〜0.015インチの壁の厚さを有する。代表的な市販の壁流基材はCorning CO基材であり、多孔質菫青石から構築される。しかしながら、本発明は、特定の基材タイプ、材料、または幾何学的形状に限定されないことが理解されるであろう。
【0029】
セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、菫青石、菫青石−αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナシリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、珪線石、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、アルミノケイ酸塩等からも作られ得る。
【0030】
また、本発明の実施形態の二元金属触媒合成のために有用な基材は、本質的には金属であり得、1つ以上の金属または金属合金から成り得る。例示的金属支持体は、チタンおよびステンレス鋼等の耐熱金属および金属合金、ならびに鉄が実質的な成分または主要な成分である他の合金を含む。かかる合金は、ニッケル、クロムおよび/またはアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これら金属の総量は、少なくとも15重量%の合金、例えば、10〜25重量%のクロム、3〜8重量%のアルミニウム、および最大20重量%のニッケルを含み得る。また、合金は、マンガン、銅、バナジウム、チタン等のうちの1つ以上の、小量または微量の他の金属をも含有し得る。金属基材は、波板またはモノリシック型等の様々な形状で用いられ得る。代表的な市販の金属基材はEmitecによって製造される。しかしながら、本発明は、特定の基材タイプ、材料、または幾何学形状に限定されないことが理解されるであろう。金属基材の表面は、合金の耐食性を改善し、かつウォッシュコート層を金属表面に接着することを促進するために、基材の表面上に酸化物層を形成するために、例えば、1000℃以上の高温で酸化されてもよい。
【0031】
触媒組成物および調製
本発明がいずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、触媒の1つ以上の実施形態は、以下の仮説に基づいて設計される。(1)NOは、式1に従うNH3酸化の初期の生成物であり、正味NH3転換はこのプロセスに対する比率によって決定付けられる、(2)式2〜式4に従って、NOは、全ての他の窒素生成種へと導く一般的な中間体であり、N2選択性は、NO中間体を含むこれらの第2の反応イオンの相対的比率によって決定付けられる、(3)それ自体が良きSCR触媒であるPGM支持体の利用は追加の化学反応チャネルを開き、これは式2の正味比率を上昇させ、それによってN2の形成を助ける。これらの仮説はともに、選択的アンモニア酸化触媒の設計のための一般的パラダイムを示唆し、そこではPGMが、SCR成分上に支持されるか、あるいはSCR成分と直接関連付けられる。このアプローチは、ニ機能性NH3酸化触媒の設計に対する代替的なアプローチとは異なる、そこではPGMは、SCR成分から化学的および物理的に独立している支持体上に設置される。前者のアプローチは、後者のものを越える幾つかの利点を有する。これは、単一のウォッシュコート層のみが必要とされるため、触媒製造を単純化する。壁流フィルター等の2つの触媒層が実行可能でない状況において、直ちに受け入れられる。最後に、それは、近い物理的近接(同一支持体上)における全ての触媒機能を設置し、所望のN2生成物への選択性を改善する。
【0032】
本発明の1つ以上の実施形態は、モレキュラーシーブ、特に、低いシリカ/アルミナ比(SAR)を有するゼオライトモレキュラーシーブ支持体を利用する。SARを低下させることによって、ゼオライト1グラム当たりイオン交換部位の数が上昇する。これは、白金の活性部位を用いて凝縮物を形成するため、Cuイオンがイオン交換部位から移動するであろう可能性を低下させる。SARを上昇する一般的に受け入れられているパラダイムは、触媒安定性を上昇する、したがって本発明のプロセスおよび触媒から離れて教示する。幾つかの実施形態において用いられた第2の戦略は、白金前駆体を適用する前に高温で焼成することによって、モレキュラーシーブ上に銅を固定することである。これは、また、モレキュラーシーブ(以後、遊離銅と称される)上のイオン交換部位と関連しない銅イオンが、白金の活性部位へと移動し得る可能性を、最小化する。
【0033】
また、銅の種分化が調節されていることが所望される。Ptイオン交換プロセスの間、または触媒コーティングプロセス間に存在する遊離Cu2+は、活性が低く、かつ/または水熱安定性に乏しい触媒を導く。1つ以上の実施形態に従い、支持体上のH+部位の高い密度によって、NH3転換と相対する触媒安定性が上昇し、酸化物凝縮物としてより、別個のCu2+部位として銅の分散を助ける。これは、不活性のPtxCu1-xOアンサンブルの形成を妨げる。
【0034】
上記の設計基準に基づき、本発明の1つ以上の実施形態に従う触媒は、低いSAR有するモレキュラーシーブ上の水性金属前駆体のイオン交換、続いて水性白金前駆体のイオン交換によって調製することができる。第1のステップにおいて、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族のうちの1つからの金属は、適切な溶媒(例えば水)中に溶解できる。概して、経済的および環境的な態様の観点から、可溶性化合物の水溶液、または金属の錯体が好まれる。例示的金属は、銅(IB族)および鉄(VIIB族)を含む。本発明の目的に対して、「金属前駆体」という用語は、触媒活性金属成分を与えるために、モレキュラーシーブ支持体上に分散することができる任意の化合物、錯体等も意味する。例示的IB族金属銅に対して、好適な錯体または化合物は、無水および水和硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、銅アセチルアセトネート、酸化銅、水酸化銅、および銅アミンの塩(例えば、[Cu(NH342+)を含むが、それらに限定されない。代表的な市販の銅供給源はStrem Chemicals,Inc.社からの97%の酢酸銅であり、それは他の金属、特に鉄およびニッケルを微量に含有し得る。しかしながら、本発明が特定の種、組成物、または純度の金属前駆体に制限されないことを理解されるであろう。次いで、所望のモレキュラーシーブは、金属成分の溶液へと、懸濁液を形成するために添加することができる。例示的モレキュラーシーブは、以下の結晶構造、CHA、BEA、FAU、MOR、MFIのうちの1つを有するゼオライトを含むが、それらに限定されない。
【0035】
この懸濁液は、銅成分がモレキュラーシーブ上で分布されるように、反応することを可能とすることができる。幾つかの場合において、懸濁液はイオン交換の比率を上昇し、かつ銅イオンをさらに効果的に分布するために加熱されてもよい。これは、モレキュラーシーブの細孔チャンネル中、ならびにモレキュラーシーブの外表面上で、銅イオンが優先的に分布される結果となる場合がある。銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオン、または酸化銅として分布され得る。モレキュラーシーブ上で銅が分布された後、モレキュラーシーブは懸濁液の液相から分離され、洗浄され、乾燥されることができる。また、モレキュラーシーブは銅を固定するため高温で焼成されてもよく、これは先に記載されたように、完成した触媒のNH3活性を上昇する。
【0036】
第2の調製ステップにおいて、白金前駆体は、好適な溶媒(例えば水)中に溶解される。概して、経済的および環境的な態様の観点から、可溶性化合物の水溶液または白金の錯体が好まれる。典型的に、白金前駆体は、支持体上で前駆体の分散を達成するため、化合物または錯体の形態で利用される。本発明の目的に対して、「白金前駆体」という用語は、焼成、またはその使用の初期段階において分解、あるいは触媒活性の形態に転換される任意の化合物、錯体等を意味する。白金錯合体または化合物は、白金塩化物(例えば、[PtCl42-、[PtCl62-の塩)、白金水酸化物(例えば、[Pt(OH)62-の塩)、白金アミン(例えば、[Pt(NH342+、[Pt(NH344+の塩)、白金水和物(例えば、[Pt(OH242+の塩)、白金ビス(アセチルアセトネート)、および混合化合物または錯体(例えば、[Pt(NH32(Cl)2])を含むが、それらに限定されない。モレキュラーシーブと関連する移動性カチオンと効果的に交換するため、カチオン白金錯体は好ましい。代表的な市販のカチオン白金供給源は、Strem Chemicals,Inc.社からの99%のアンモニウムヘキサクロロプラチネートであり、それは微量の他の貴金属を含有し得る。しかしながら、本発明が特定の種、組成物、または純度の白金前駆体に制限されないことを理解されるであろう。モレキュラーシーブは、好適な溶媒(例えば水)中に再懸濁され、溶液中で白金前駆体と反応し得る。例示的モレキュラーシーブは、以下の結晶構造、CHA、BEA、FAU、MOR、MFIのうちの1つを有するゼオライトを含むが、それらに限定されない。追加のプロセスステップは、酸性成分(例えば、酢酸)もしくは塩基成分(例えば、アンモニウム水酸化物)、化学還元(例えば、水素による)、または焼成による固定化を含み得る。同時に、2つのステップを行うことにより、銅および白金を含有するモレキュラーシーブを与え、先に説明された設計パラダイムに従って、それはモレキュラーシーブ上で物理的に分離されるべきである。
【0037】
ウォッシュコート層
1つ以上の実施形態に従うと、触媒は、基材上に堆積された、すなわち、基材上にコーティングされ、かつ接着されたウォッシュコート層として塗布される。基材に触媒層を塗布するため、白金成分および/または金属ゼオライト成分を含む触媒の微細に分割された粒子は、スラリーを形成するため適切な溶媒(例えば、水)中に懸濁される。他のプロモーターおよび/または安定剤および/または界面活性剤は、水または水混和性溶媒中で、混合物または溶液としてスラリーに添加され得る。1つ以上の実施形態において、スラリーは、結果として、実質的に全ての固体が、約10ミクロン未満の粒子サイズ、すなわち約0.1〜8ミクロンの平均直径を有するように、粉末状にされる。粉砕は、ボールミル、連続的アイガーミル、または他の同様の装置において達成され得る。1つ以上の実施形態において、懸濁液またはスラリーは、約2〜約7未満のpHを有する。スラリーのpHは、適切な量の無機または有機酸のスラリーへの添加によって、必要ならば調整され得る。銅を配位させ、かつ動かし得るいかなる種もスラリーに添加されていないことに注意するべきである。スラリーの固体含有量は、例えば、約20〜60重量%、より具体的には約35〜45重量%であり得る。所望の装填量の触媒層を基材上に堆積するように、基材は、次いでスラリー中に浸漬され得、あるいはスラリーが基材上にコーティングされ得る。その後、コーティングされた基材は約100℃で乾燥され、例えば、300〜650℃で約1〜約3時間、加熱によって焼成される。乾燥および焼成は、典型的には空気中で行われる。コーティング、乾燥、および焼成プロセスは、支持体上で触媒の最終所望の装填量を達成するため、必要であれば繰り返され得る。幾つかの場合において、液体および他の揮発性成分の完全除去は、触媒が使用に設置され、操作の間に遭遇する高温に供されるまで、生じ得ない。
【0038】
焼成後、触媒装填量を、コーティングされた基材とコーティングされていない基材との重量の差の算出を通して決定することができる。当業者には明らかであるように、触媒装填量は、コーティングスラリーの固体含有量およびスラリー粘度を変化させることによって、変更し得る。代替的に、コーティングスラリーへの基材の浸漬を繰り返し行うことができ、その後上述のように過剰のスラリーの除去が続く。具体的な実施形態において、基材上のウォッシュコート層の装填量は、約0.2〜約3.0g/in3、または典型的には約1.0〜2.5g/in3である。
【0039】
排出物を処理するための方法
本発明の1つ以上の実施形態に従うと、希薄燃焼車両またはディーゼル車両の排気ガス流中の産生された排出物を処理するための方法が提供される。1つ以上の実施形態のNOx低減触媒は、選択的触媒還元(SCR)触媒、またはNOx低減触媒からの可能性があるアンモニアの排出またはスリップをもたらすNOxの破壊のための他の触媒を含む。
【0040】
NOx低減触媒および酸化触媒組成物は、同一または別個の基材上にウォッシュコート層として、配置することができる。さらに、SCR触媒および選択的アンモニア酸化触媒は同一の触媒ハウジング内、または異なる触媒ハウジング内にあり得る。
【0041】
1つ以上の実施形態に従うエンジン処理システムは、連続的にまたは周期的間隔で排気流中のアンモニア、またはアンモニア前駆体、もしくは異なるアンモニア前駆体の混合物を計量するための計量システムを含む。
【0042】
本発明の排出物処理システムの一実施形態は、図1に図式的に示される。図1に見られるように、ガス状汚染物質(未燃焼炭化水素、一酸化炭素、およびNOxを含む)および粒子状物質を含有する排気物は、11として示された排出物処理システムを通って運ばれる。ガス状汚染物質(未燃焼炭化水素、一酸化炭素、およびNOxを含む)および粒子状物質を含有する排気物は、エンジン19から排出ガスシステムの下流側の位置に運ばれ、ここで、還元剤、すなわち、アンモニアまたはアンモニア前駆体が排出流に添加される。該還元体は、ノズル(図示せず)を介してスプレーとして排出流に注入される。ライン25で示される水性尿素は、アンモニア前駆体としての機能を果たすことができ、混合ステーション24で、別のライン26上の空気と混合させることができる。バルブ23は、排出流中でアンモニアに変換される水性尿素の正確な量を計量するために使用することができる。
【0043】
添加されたアンモニアを含む排出流は、SCR触媒基材12に運ばれる。基材12を通過する際、排出流のNOx成分は、NH3によるNOxの選択的な触媒還元を通して、N2およびH2Oに変換される。加えて、入口領域から出てくる過剰のNH3は、下流のアンモニア酸化触媒16による酸化を通して変換され、該アンモニアをN2およびH2Oに変換することができる。
【0044】
いかなる様式にも本発明を限定することを意図せず、本発明の実施形態を以下の実施例によってより完全に説明する。
【0045】
実施例1A〜1T触媒調製
ゼオライト触媒上のPt+Cuの一般的調製が、Cu2+の連続的イオン交換、続いてカチオン白金錯体によって達成された。一実施例において、銅交換されたY−ゼオライトを、第1に、75gの(375mmol)酢酸銅水和物を1250mLの脱イオン水中に溶解することによって調製し、全ての酢酸銅が溶解したことを確認した。青色の溶液を得るため、500g(揮発性物質を含まない固体基準)のZeolyst CBV500Yタイプゼオライトをゆっくりと添加し、懸濁液中に約30重量%の固体含有量を得た。pHを4.5(±0.1)に調製し、懸濁液を室温で24時間撹拌した。pHを4.5(±0.1)に再調製し、試料をさらに1時間撹拌した。固体を濾過によって収集し、再懸濁し、10分間撹拌し、次いで濾過によって再収集した。得られたフィルターケークを脱イオン水で3回洗浄した。湿った粉末を130℃で一晩乾燥し、次いで640℃で1時間焼成した。焼成した固体の組成物分析は3.0%(揮発性物質を含まない、銅金属基準)の銅含有量を与えた。
【0046】
[Pt(NH34][OH]2)として0.37g(1.9mmol)のPtを含有する溶液を100mLの脱イオン水中で調製した。水酸化物前駆体の使用は、白金交換プロセスの副産物が水のみである利点を有する。375mLの脱イオン水に、195gの焼成した銅交換されたゼオライトを添加した。白金を含有している溶液を、少なくとも1時間にわたってゼオライト懸濁液に滴加添加した。2滴の濃縮した硝酸を添加し、pHを5.0まで低下させた。固体を濾過によって収集し、500mLの脱イオン水中に再懸濁し、10分間撹拌した。固体を再収集した後、粉末を130℃で一晩乾燥した。組成物分析は3.0%のCuおよび0.23%のPt(揮発性物質を含まない、金属基準)を与えた。白金交換プロセスは、本来の銅交換ゼオライト試料から銅の測定不可能である損失をもたらした。さらに、全ての添加された白金がゼオライトと関連付けられる場合、最終ゼオライトの白金含有量はまさに期待されたとおりであった。白金交換プロセスからの母液の組成物分析は可溶性白金に対する根拠を表示せず、白金種分化の非常に良い制御を示した。
【0047】
反応機試験のために触媒を調製するため、触媒粉末を脱イオン水中に懸濁し、粉にし、典型的にx90=5〜10μmの範囲の目的の粒径を得た。触媒粉末の基材への付着を改善するため、コロイド状ジルコニアバインダーを典型的にスラリーに添加した。コロイド状ジルコニアは、より高い固体含有量で粘度を低下させ、触媒のコーティングを可能とする追加の効果を有する。不安定な銅は乏しい活性をもたらすため、スラリー中の銅の種分化の制御が、銅の可溶化を防ぐために所望される。可溶性Cu2+の最小化を、4を越えるpHを保持することによって、Cu2+を錯体化できる酢酸塩等の種が存在しないことを確実にすることによって達成した。外径1.0インチおよび長さ3.0インチの寸法、400/6.5セル形状のセラミックモノリスを、次いで数秒間スラリー中に浸漬し、取り出し、排水した。過剰のスラリーを、圧縮空気流を使用して除去した。湿った触媒試料を、まず130℃で乾燥させ、次いで空気中で約600℃で焼いた。
【0048】
別様に記載されない限り、全ての触媒は、400cpsiのセルの寸法および6.5ミルの壁の厚さを有する完全に実現されたモノリスとして試験した。試験前、モノリスを約144個の無処置のチャネルを有する正方形の断面に削った。触媒試料を4チャンバー型ガス反応装置中に設置した。標準的な入口ガス状況は以下の通りである。すなわち、NH3=500ppm、NO=0、O2=10%(空気として送達した)、H2O=5%、残部=N2である。総ガス流量を各試料に対して調整し、100,000/時間のガス毎時空間速度(GHSV)を得た。標準的な温度状況は200、215、230、245、および400℃であった。触媒を新しい状態で、および空気中に10%の水を含有する注入流中で、750℃で5時間の熟成手順後、試験した。熟成手順は、車両上における触媒寿命の実質的にわずかな部分の後、水熱熱応力を模倣するように設計された。
【0049】
本発明の1つ以上の実施形態に従い設計された触媒は、新しい状態で高いNH3転換および高いN2選択性を実証した。かかる触媒の水熱安定性はさらにわかりづらく、その上にPtが分布されたSCR成分が銅を含有する場合、特にわかりづらい。先の経験は、白金含浸鉄ベータゼオライトへの外因性銅の添加を表示し、非常に高いN2選択性および新しい状態で250℃〜300℃のNH3ライトオフに対するT50を伴う触媒を得た。650℃の低い水熱熟成後、T50は350℃を越え、750℃のより現実的な温度で熟成後、T50は400℃を越える。組成的により単純な触媒1Qは、イオン交換によって、白金を用いて後処理した銅交換ベータゼオライトを含み、250℃で95%の新しいNH3転換を得たが、熟成後の転換はゼロ、1Rであった。銅無しの比較触媒1N、1O、および1Pは、水素型ベータゼオライト上のPtが非常に活性であり、800℃で安定していることを明確に実証しているため、熟成後の活性の損失は銅の存在のためである。これは、銅が白金と相互作用できることを示唆しており、白金単独よりNH3酸化に対してより活性ではない局所凝縮物を形成する。したがって、銅を含有している材料上に支持された白金触媒の設計において重要な因子の1つは、白金および銅の活性部位が物理的に分離されたまま残存することを主に保証することによって、これらの負の相互作用を最小化することである。
【0050】
表1は、アニオン性のPt(IV)前駆体(比較例1Lおよび1M)の直接的な初期水分含浸によって、または[Pt(NH34][OH]2(比較例1N、1O、および1P)を使用してpH4〜5で溶液イオン交換することによってのどちらかで調製されたベータゼオライト上に支持された0,2重量%のPt(金属基準)に対するNH3活性のデータを表示する。新しい状態で、含浸触媒1Lに対する250℃でのNH3転換は64%のみであるが、イオン交換触媒1Nに対しては93%である。750℃における水熱熟成手順を、車両寿命の実質的にわずかな部分を模倣するように設計した後、イオン交換触媒1OはNH3(1O)の95%を転換するが、含浸触媒1Mは250℃でNH3の7%のみを転換する。800℃(1P)における水熱熟成後、イオン交換触媒は90%を越えるNH3を転換する。
【0051】
イオン交換触媒のより高い活性およびより高い安定性は、含浸触媒とは異なるPt形態と関連付けられる。図2Aは、450℃で調製のための焼成後の[Pt(NH342+イオン交換触媒の200keVの透過型電子顕微鏡写真(TEM)画像(20,000Xの拡大率)を表示する。この試料は、表1中の比較例1Nと同等である。図2A中の挿入図はPt粒子の詳細を表示する。Ptは、大きく、よく面が切り出された粒子として存在し、10nm〜50nmの寸法である。図2Bにおいて、画像は、[Pt(OH)62-の初期水分含浸によって調製し、次いで450℃で焼成したベータゼオライト上の0.2重量%のPt(金属基準)の200keVの透過型電子顕微鏡写真(50,000Xの拡大率)である。この試料は比較例1Lと同等である。図2B中の挿入図はPt粒子の詳細を表示する。イオン交換触媒と対照してみると、図2Bにおいて表される含浸触媒中のPt粒子は非常に小さく、定期的に面が切り出されておらず、5〜10nmの範囲の平均寸法である。より大きいPt粒径を有する試料中のおり高い活性および触媒安定性の観察は、触媒活性は高いPt分散によって有利に働くこと、操作および熟成の間のPt焼結および粒子成長は、触媒非活性化の第1のメカニズムであることの、概して受け入れられている理解に逆行する。本発明がいずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、それは、支持されているPt触媒上のNH3酸化反応は構造感受性が高く、エッジまたはステップよりはむしろ特定のPt結晶面上に優先的に生じることを示唆している。高い収率で優先的に活性Pt結晶面を形成することによって、[Pt(NH342+イオン交換方法は、含浸方法によって調製された組成的に同等の触媒よりもより活性であり、より安定しているNH3酸化触媒へと導く。したがって、設計の1つ以上の実施形態は、以下の新しい理解を組み込む。すなわち、(1)大きく、よく面を切り出したPt粒子は所望の形態であり、非常に活性なNH3酸化触媒を得る(2)モレキュラーシーブ支持体上の大きく、よく面を切り出したPt粒子は、標準的な含浸方法と比較して、Pt前駆体のイオン交換によってより効果的に生成する。
【0052】
図3は、2つの触媒のNH3酸化プロファイルを比較する。比較例1Dは、低いシリカYゼオライト上に分布したPtを含み、典型的なPtのみのNH3酸化触媒と一致する活性および選択性プロファイルを表示する。NH3ライトオフ温度は250℃より低く、N2選択性は上昇する温度と共に単調に低下する。触媒1Gは、上述のように、その上に、イオン交換によって前に配置された銅を有した低いシリカYゼオライト上に分布したPtを含む。したがって、1Gは比較例1Dに対して同等のPt装填量を有するが、加えて2.5%のCuを含有する。実施例1Gの触媒は、比較例1Dと同じNH3転換プロファイルを与えるが、N2選択性はPtのみの触媒と比較して、銅の存在のため実質的に上昇する。これは、1Aから触媒式2における銅イオンの能力の結果であり、N2の産生は動力学的にN2O産生またはNOx脱離と競合的である。したがって、これらのデータは、支持体としてSCR触媒を使用する選択的NH3酸化触媒の設計の一般的パラダイムの妥当性を確認する。
【0053】
【表1】

【0054】
表1中の触媒1A、1B、および1Cを上述のように調製した。これらの試料の評価データは、低いシリカY−ゼオライト上のPt+Cu触媒の高い熱安定性および水熱安定性を示す。250℃でのNH3転換およびN2選択性は、水蒸気が存在する中または不在の中において、750℃で25時間の熟成の影響を受けない。調製されたままの試料1aにおける69%から水熱熟成された試料1bにおける48%までの選択性の低下を伴う10%の水蒸気中で水熱熟成後、400℃においてN2選択性において小さな損失が存在する。これは恐らく、水熱状況下でのYゼオライトの物理的安定性に関しており、SARの低下によって負の影響を受けている。したがって、触媒安定性に対して競合する要求が存在する。すなわち、(1)イオン交換部位の数をSARの低下によって最大にする。(2)SARの上昇によって水熱脱アルミニウムを最小化する。最適な触媒は、それぞれ所与の適用に対して、これら2つの事項を調和しなければならない。
【0055】
触媒1D、1E、1F、および1Gは、一般的に1916〜2150ppmのPt装填量および0〜3.0重量%Cuの銅装填量の範囲を有するPt+Cuである。図4は、銅含有量に対してプロットされたNH3転換およびN2選択性の結果を表示する。全ての4つの触媒は、250℃で93%を越えるNH3選択性を与える。250℃および400℃でのN2選択性は、概して銅含有量と共に上昇するが、N2選択性では、3.0重量%Cuの近くで停滞状態が存在する。水素によって、プログラムされた温度減少は約3.5%を越える銅を示し、2つ以上の銅の種が銅交換Yゼオライト中に存在しはじめ、これが銅イオンの移動を導き、銅イオンは、Ptと相互作用し、活性を低下する。したがって、NH3転換が高い銅装填量の影響を被ることが観察される。したがって、Ptとの負の相互作用を最小化すると同時に最大の選択性を提供するであろう2.5重量%〜3.5重量%Cuの銅装填量の最適な窓が存在するであろう。
【0056】
銅種分化は触媒活性を決定することにおいて重要な因子である。実施例IEを上述のように調製した。実施例1Iは組成的に同様であるが、640℃でのYゼオライト粉末の焼成無しで、酢酸銅とのイオン交換後である。評価データは、焼成ステップが活性触媒を得るのに重要であることを表示する。250℃でのNH3転換は、白金前駆体の適用前に焼成された触媒IEに対する95%である。一方で、250℃でのNH3転換は、白金前駆体の適用前に焼成無しで調製された実施例1Iに対してはゼロである。水素によるプログラムされた温度減少は、これが銅種分化中の相違と関連付けられることを表示する。焼成されていない低いシリカYゼオライトの銅交換試料において、H2減少プロファイルは、明白なH2取り込みピークを表示しないが、非常に可変性の局所環境において銅を示す広域、および非記述のH2取り込みプロファイルのみを表示する。この移動性銅は、その後の白金交換およびコーティングステップの間、白金と負に相互作用し、NH3酸化に対する白金の活性は結果として低下する。対照的に、640℃で焼成後の低いシリカYゼオライト上の同一の銅の試料は、300℃近くで明確なH2の取り込みピークを表示し、0.5のH2/Cu化学量論で、はっきり定義されたイオン交換部位における銅の明確な一電子還元を示す。この銅をよく固定され、移動性ではなく、白金交換後、母液中で銅が観察されないことによって表示される。これは、白金成分との銅の相互作用を防ぎ、高いNH3酸化活性をもたらす。
【0057】
Pt+Cu+Yゼオライトを含む実施例1Hおよび1Jを、上述のように調製する。それらは同等の銅および白金装填量を有するが、2つの触媒はSARにおいて異なる。実施例1Jが30のSARを有する一方、実施例1Hは5.2の低いSARを有する。双方の触媒は、図5中の実線で表示されるように、新しい状態で高活性および優れたN2選択性を与える。実施例1Kを提供するための実施例1Jの高いシリカ触媒の水熱熟成は、7%のみのNH3転換と共に250℃で活性において大きな低下をもたらした。対照的に、低いシリカ触媒、実施例1Hの水熱熟成は、250℃で95%の転換をなおもたらす実施例1Gを提供する。組成的および構造的に同じ2つのPt+Cu+Yゼオライト触媒のこれらのデータは、低いSARがアンモニア酸化に対する触媒安定性を上昇する因子であることを表示する。これは、ゼオライト触媒によって触媒された他の反応に基づく広く普及している理解から離れて教示し、安定性が高いSARによって有利に働く。
【0058】
実施例1J、1Q、および1Sについて、活性およびN2選択性データの比較は、ゼオライト構造のFAUからBEAからCHAへ変化する効果を、それぞれPt+Cu+ゼオライトNH3酸化触媒で表示する。高いシリカBEAゼオライトに基づき、実施例1Qは、250℃で95%のNH3転換を提供し、実施例1Jの高いシリカFAUは58%のNH3転換を提供する。CHAゼオライトに基づく実施例1Sは、新しい状態の20%のNH3転換のみを提供する。新しい状態でCHAに基づく触媒のより低い活性は、CHA骨格における小さなポア開口部半径(3.8Å)と相関し、それは[Pt(NH342+前駆体に対して算出された回転運動の半径(2.6Å)よりもあまり大きいものではない。本発明が特定の仮説に限定されるものではないが、Pt前駆体がCHAゼオライトのポア構造に入ることができないため、CHA微結晶の外表面上での静電結合に制限されることを示唆している。対照的に、BEA(6.6〜7.7Å)およびFAU(7.4Å)のポア開口部半径は、ゼオライトの内部ポア量へのPt前駆体の移行を認可するのに十分な大きさであり、これは、完成した触媒において高活性を得るための補助をすると仮定される。したがって、ゼオライト構造は、初期のPt前駆体の種分化へのその効果を通して、触媒活性に影響を与える小さな役割のみを果たすようである。対応する実施例1K(FAU)、1R(BEA)、および1T(CHA)を提供するための水熱熟成後、どの試料も250℃で7%を越えるNH3転換を提供しない。熟成結果は、構造因子と比較してSARが果たす役割を補強し、SARを最小化し、触媒安定性を維持する必要性を強調する。
【0059】
本明細書を通して言及される「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「実施形態」は、実施形態と関連して説明される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書の様々な場所における、「1つ以上の実施形態において」、「ある実施形態において」、「一実施形態において」、または「実施形態において」等の語句の出現は、必ずしも本発明の同一実施形態に言及しているのではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。
【0060】
本明細書において本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態が本発明の原則および適用の単なる例示であることを理解されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に様々な改善および変化を実施することができることは当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内である改善および変化を含むことを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを窒素およびNOxに酸化するための触媒であって、前記触媒は、約30未満のシリカ/アルミナ比(SAR)を有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブを含み、且つ当該モレキュラーシーブはイオン交換銅およびイオン交換白金を含んでいることを特徴とする触媒。
【請求項2】
所定量のゼロ原子価または金属白金をさらに含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記白金は、白金前駆体を用いてカチオン交換プロセスにより添加される、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブは、FAU、MFI、MOR、BEA、HEU、およびOFFから選択される結晶骨格型を有するゼオライトを含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項5】
前記ゼオライトは約10未満のSARを有する、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記ゼオライトは約6未満のSARを有する、請求項4に記載の触媒。
【請求項7】
ウォッシュコート当たりの重量基準で、約1重量%以下のPtおよび5重量%以下の銅を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒は、耐火性セラミック担体上にコーティングされる、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
前記基材上の前記モレキュラーシーブの総装填量は、総触媒量に基づいて約0.3g/in3〜約3.0g/in3の範囲である、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
ディーゼルまたは希薄燃焼車両の排気ガス流中に生成した排出物を処理するための方法であって、前記方法は、
車両のエンジン排気流を少なくともNOx低減触媒を通過させる工程、
前記NOx低減触媒から出たアンモニア含有前記排気流を、酸化触媒を通過させ工程を含み、前記酸化触媒は、イオン交換白金およびイオン交換銅を有するモレキュラーシーブを含み、且つ当該モレキュラーシーブが15未満のシリカ/アルミナ比(SAR)を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記NOx低減触媒は、SCR触媒、希薄NOx捕捉触媒、または前記NOx低減触媒からのアンモニアスリップをもたらすNOxの破壊のための他の触媒のうちの1つ以上から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モレキュラーシーブはゼオライトを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記SARは約10未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記SARは約6未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
排気ガス流を処理するためのシステムであって、
前記排気ガス流と連通するSCR触媒と、
前記排気ガス流と連通し、前記SCR触媒から上流に位置するアンモニアまたはアンモニア前駆体注入ポートと、
前記排気ガス流と連通し、前記SCR触媒から下流に位置する、請求項1に記載の触媒と、を含む、システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−507400(P2012−507400A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534869(P2011−534869)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063045
【国際公開番号】WO2010/062733
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】