説明

選択的グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)類似体

h[Gly2]GLP−2に比較して1つ以上の置換を含み、かつ増大した小腸/結腸および胃/結腸選択性の特性を有し得るGLP−2類似体を開示する。さらに詳細には、ここに開示する好ましいGLP−2類似体は、野生型GLP−2配列の位置(11、16、20、24)および/または(28)の1つ以上の位置における置換を、位置(2)および(3、5、7)のうち1つ以上の位置、および(10)におけるさらなる置換、および/または(31)ないし(33)のうち1つ以上のアミノ酸の欠失および/またはN−末端またはC−末端安定化ペプチド配列の付加との組み合わせにおいて含む。この類似体は、胃および腸関連疾患の予防または治療、および化学療法の副作用の寛解に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)類似体およびその医学的使用、例えば胃および腸関連疾患の予防または治療、および、化学療法および/または放射線療法の胃腸に関連した副作用の寛解に関する。
【背景技術】
【0002】
GLP−2は、腸の腸管内分泌L細胞および脳幹の特定領域におけるプログルカゴンの特定の翻訳後プロセシングに由来する33アミノ酸のペプチドであり、栄養素の摂取に反応して、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、オキシントモジュリン、およびグリセンチンと共に分泌される。
【0003】
GLP−2は陰窩における幹細胞増殖刺激および絨毛のアポトーシスの阻害を通じ、小腸粘膜上皮の有意な増殖を誘導する(Drucker et al.Proc Natl Acad Sci USA.1996,93:7911−6)。GLP−2はまた、結腸に対する増殖効果も有する。GLP−2はまた、胃排出および胃酸分泌を阻害し(Wojdemann et al.J Clin Endocrinol Metab.1999,84:2513−7)、腸のバリア機能を増強し(Benjamin et al.Gut.2000,47:112−9.)、グルコース輸送体の発現増加を通じた腸ヘキソース輸送を刺激し(Cheeseman,.Am J Physiol.1997,R1965−71.)、かつ腸血流を増大させる(Guan et al.Gastroenterology.2003,125,136−47)。
【0004】
GLP−2は、クラスIIグルカゴンセクレチンファミリーに属する単一のGタンパク質共役型レセプターに結合する。GLP−2レセプターは小腸、結腸および胃、GLP−2に反応することが知られている場に発現する(Yusta et al.Gastroenterology.2000,119:744−55)。しかしながら、胃腸管内におけるGLP−2レセプターからの刺激に対する標的細胞は良く分かっておらず、かつGLP−2レセプターに共役する下流の細胞内メディエーターは良く理解されていない。
【0005】
小腸におけるGLP−2の実証された特異的かつ有益な効果は、腸疾患または傷害の治療にGLP−2を使用することへの大きな関心を引き起こした(Sinclair and Drucker,Physiology 2005:357−65)。さらに、化学療法誘導性腸炎、虚血再灌流障害、デキストラン硫酸誘導性結腸炎、および炎症性腸疾患の遺伝的モデルを含む腸傷害の多数の前臨床モデルにおいて、GLP−2が粘膜上皮損傷を防止または減少させることが示されてきた(Sinclair and Drucker Physiology 2005:357−65)。
【0006】
さらに、胃におけるGLP−2RのmRNA発現(Yusta et al.,2000)、およびGLP−2が腸の運動性および胃酸分泌を低下させるという観察(Meier et al.,2006)の両者は共に、胃が直接的または間接的にGLP−2に反応するということの十分な証拠を提供している。それにもかかわらず、GLP−2またはGLP−2類似体の、胃内面の損傷を特徴とする状態における使用についてはまだ探求されていない。
【0007】
GLP−2は、H−His−Ala−Asp−Gly−Ser−Phe−Ser−Asp−Glu−Met−Asn−Thr−lle−Leu−Asp−Asn−Leu−Ala−Ala−Arg−Asp−Phe−lle−Asn−Trp−Leu−lle−Gln−Thr−Lys−lle−Thr−Asp−OH、の配列を有する33アミノ酸ペプチドとして分泌される。酵素DPP IVによりNH2末端の位置2のアラニン(A)において迅速に切断され、不活性型のヒトGLP−2(3−33)となる。腎クリアランスに加え、この迅速なGLP−2(1−33)の分解によってペプチドの半減期は7分間となる(Tavares et al.,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.278:E134−E139,2000)。
【0008】
米国特許第5,994,500号(Drucker et al.)に、GLP−2のアンタゴニストおよびその胃腸組織の増殖における効果について記載されている。このアンタゴニストは過形成の治療または低形成の誘導に使用するための医薬品として処方されることが提案されており、米国特許第5,994,500号では、GLP−2の構造は置換および欠失のような変異により変化させられている。
【0009】
米国特許第6,184,208号、5,789,379号、および6,184,201号は、GLP−2類似体およびその医学的使用を開示している。これらの類似体は全てヒトGLP−2の置換および/または欠失により得られたものである。
【0010】
DaCambraら(Biochemistry 2000,39,8888−8894)は、GLP−2活性の構造的な決定要因について記載している。このような決定要因の例として、GLP−2レセプターの結合および活性化に決定的であると言われるPhe6およびThr5が挙げられる。
【0011】
国際公開第97/39031号に、GLP−2類似体である[Gly2]GLP−2が開示されている。ここでは位置2のアラニン(A)は、DPP IVによる切断に抵抗性のペプチドを作製するためグリシンに置換されており、このアラニンの置換によりペプチドの安定性および効力が増大されることが示されている。この特許出願は、GLP−2類似体が腸上皮粘膜の炎症および破壊を伴う疾患に対しどのように使用され得るかについて記述している。これらの疾患には、広範囲の小腸切除、炎症性腸疾患、化学療法および/または放射線誘導性腸炎、および虚血性傷害が含まれる。
【0012】
国際公開第02/066511号は、in vivoにおける半減期が延長されたGLP−2類似体と、それを薬剤として炎症性腸疾患のような胃腸疾患の治療に使用することについて記載している。
【0013】
国際公開第01/41779号は、化学療法誘導性のアポトーシスの阻害および小腸上皮細胞の生存を促進するため、前処置としてh[Gly2]GLP−2を使用することについて記載している。
【0014】
ここに引用した全ての参考文献は、その全体が参照によって明確に組み入れられたものとする。
【0015】
これまでに様々な疾患の治療におけるGLP−2またはGLP−2類似体の使用が多くの科学者により提案されてきた。しかしながらなお、改良され、小腸に選択性のあるGLP−2類似体が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は大まかには、野生型GLP−2に比し1つ以上の置換を含み、結腸に対する小腸選択性が増大した性質、in vivoにおける改善された生物活性、および/または改善された化学的安定性(例えばin vitroでの安定性アッセイにより評価された)を有し得るGLP−2類似体に関する。さらに詳しくは、本発明の好ましいGLP−2類似体は、野生型GLP−2配列の位置8、11、12、13、16、17、18、20、21、24および/または28のうち1以上における保存されていない置換と位置2(導入部で述べたように)および位置3、5、7および10のうち1以上におけるさらなる保存されたまたはされていない置換との任意の組み合わせ、および/または野生型GLP−2配列の位置31から33に対応する1以上のアミノ酸の置換または欠失、およびN−末端またはC−末端の安定化ペプチド配列の任意の付加を含む。さらに本発明のGLP−2類似体は、位置9、14、および15に対応するアミノ酸の1以上の保存された置換を含み得る。改善された化学的安定性および/または生物活性を有し得るGLP−2類似体の提供と同様に、本発明はまた、特に野生型GLP−2の位置Asn11および/またはAsn16および/またはArg20および/またはAsn24および/またはGln28の1つ以上に修飾を含むことにより、結腸に比した小腸、またはその逆における腸の優先的な増殖促進活性を有する化合物の提供にも関する。
【0017】
従って、1つの局面において本発明は一般式I
−Z−His−X2−X3−Gly−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−Phe−Ile−X24−Trp−Leu−Ile−X28−Thr−Lys−X31−X32−X33−Z−R
により表され、
【0018】
式中、
は水素、C1−4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイルまたはトリフルオロアセチルであり、
X2はGly、AlaまたはSar、
X3はGluまたはAsp、
X5はSerまたはThr、
X6はPheまたはProまたは保存された置換、
X7はSerまたはThr、
X8はAspまたはSerまたは保存された置換、
X9はGluまたはAspまたは保存された置換、
X10はMet、Leu、Nleまたは酸化的に安定なMet−置換アミノ酸、
X11はY1、
X12はThrまたはLysまたは保存された置換、
X13はIle、GluまたはGlnまたは保存された置換、
X14はLeu、MetまたはNleまたは保存された置換、
X15はAspまたはGluまたは保存された置換、
X16はY2、
X17はLeuまたはGluまたは保存された置換、
X18はAlaまたはAibまたは保存されていない置換、
X19はAlaまたはThrまたは保存された置換、
X20はY3、
X21はAspまたはHeまたは保存された置換、
X24はY4、
X28はY5、
X31はPro、Ileまたは欠失、
X32はThrまたは欠失、
X33はAsp、Asnまたは欠失、
はNHまたはOHであり、
式中、
およびZは独立して存在しないかまたはAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、MetおよびOrnからなる群から選択される1から10アミノ酸単位のペプチド配列であり、かつ式IのX11,X16,X20,X24,X28残基のハイドロファティシティ(hydrophaticity)プロファイル(HPP)は、
HPP=Σhpix11+hpix16+hpiX20+hpiX24+hpiX28は≧−10であり、
式中、
X20がArgの場合X11はSerであり、X16がAla、X24がAla、X28がAla、およびZ2がLysまたは医薬的に許容される塩またはその誘導体である条件下で、
、Y、Y、およびYは、Asn、Asp、Glu、Gln、Lys、His、Arg、Ala、Ser、Thr、Pro、Gly、Leu、Ile、Val、MetおよびPheからなる群から個々に選択でき、かつ
は、Asn,Asp,Glu,Gln,His,Arg,Ala,Ser,Thr,Pro,Gly,Leu,Ile,Val,Met or Pheからなる群から選択できるGLP−2類似体を提供する。1つの態様において、本発明は上に述べたようにHPPが≧−4であるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体を提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は上に述べたようにHPPが≧0であるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体を含む。
【0020】
別の局面において、本発明は一般式II
−Z−His−X2−X3−Gly−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−Ala−X19−X20−X21−Phe−Ile−X24−Trp−Leu−Ile−X28−Thr−Lys−X31−X32−X33−Z−R
により表され、
【0021】
式中、
は水素、C1−4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイルまたはトリフルオロアセチルであり、
X2はGly、AlaまたはSar、
X3はGluまたはAsp、
X5はSerまたはThr、
X6はPheまたはPro、
X7はSerまたはThr、
X8はAspまたはSer、
X9はGluまたはAsp、
X10はMet、Leu、Nleまたは酸化的に安定なMet−置換アミノ酸、
X11はAsn、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X12はThrまたはLys、
X13はIle、GluまたはGln、
X14はLeu、MetまたはNle、
X15はAspまたはGlu、
X16はAsn、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X17はLeuまたはGlu、
X18はAlaまたはAib、
X19はAlaまたはThr、
X20はAsn、Arg、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X21はAspまたはIle、
X24はAsn、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X28はAsn、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X31はPro、Ileまたは欠失、
X32はThrまたは欠失、
X33はAsp、Asnまたは欠失、
はNHまたはOHであり、
X20がArgの場合X11はSerであり、X16がAla、X24がAla、X28がAla、およびZ2がLysである条件下で、
およびZは独立して存在しないかまたはAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、MetおよびOrnからなる群から選択される1から10アミノ酸単位のペプチド配列であるか、または医薬的に許容される塩またはその誘導体であるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体を提供する。
【0022】
1つの態様において、本発明は上に述べたように、
X11はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
X16はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
X20はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
X24はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
X28はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
であるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体を含む。
【0023】
別の態様において、本発明は上に述べたように、
X11はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
X16はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
X20はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
X24はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
X28はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
であるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体を含む。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は上に述べたようにGLP−2類似体が野生型GLP−2(1−33)に対し少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有し、in vivoにおける腸の質量増大の原因となる生物活性を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体を含む。
【0025】
さらなる態様において、本発明は上に述べたようにGLP−2類似体が位置X11、X16、X20、X24および/またはX28における1以上の置換(即ち、上で述べられた野生型配列に比較して1以上の置換)および/または前記置換のうちの1以上と位置X3、X5、X7および/またはX10における1以上の置換との組み合わせを有するグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体を含む。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は位置X10における置換がLeu、Nle、またはMet(O)またはMet(O)のような酸化的に安定なMet−置換アミノ酸であるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体を含む。従って、既に述べた置換に加え、またはそれとは別に、このGLP−2類似体は位置X10にLeu、Nle、またはMet(O)またはMet(O)のような酸化的に安定なMet−置換アミノ酸を有し得る。
【0027】
本発明の幾つかの態様において、このGLP−2類似体は適用の際のバックグラウンドに設定された配列を有する野生型GLP−2(1−33)に対し少なくとも60%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも63%の同一性、さらに好ましくは少なくとも66%の同一性、さらになお好ましくは少なくとも69%の同一性を有する。
【0028】
GLP−2ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、最大のパーセント配列同一性を達成するように配列を整列し、かつ必要であればギャップを導入し、かついずれの保存された置換も配列同一性の一部として考慮しなかった後の、野生型GLP−2配列のアミノ酸残基と同一な候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。配列の整列は、例えばBLAST、BLAST2または整列ソフトウェアのような公表されているソフトウェアを用いた公知の方法を用いることにより、熟練者によって行なうことができる。整列プログラムについては、Altschul et al(Methods in Enzymology,266:460−480(1996);http://blast.wustl/ed u/blast/READM E,html)またはPearson et al(Genomics,46,24,36,1997)およびhttp://molbiol.soton.ac.uk/compute/aliqn.htmlを参照のこと。
【0029】
ここで用いられ、かつ本発明に従ったパーセンテージ配列同一性はこれらのプログラムを初期設定で用いることにより決定された。さらに一般的には、熟練者は比較される配列の完全長を超えた最大の整列を達成するために必要ないずれのアルゴリズムをも含む、整列決定のための適切なパラメーターを容易に決定することができる。
【0030】
本発明の別の態様において、上に述べたGLP−2類似体は位置X3、X5、X7、X11、X16、X20、X24、X28、X31、X32および/またはX33に1を超える置換(即ち、上で述べられた野生型配列に比較して1を超える置換)を含む。
【0031】
本発明のさらに別の態様において、上に述べたGLP−2類似体はX11、X16、X20、X24、X28がIle、Ala、Leu、PheまたはValから選択される1以上の置換、および位置X31、X32およびX33の任意の欠失、または医薬的に許容される塩またはその誘導体を含む。
【0032】
本発明のさらに別の態様において、上に述べたGLP−2類似体はX11、X16、X20、X24および/またはX28における1以上の位置において置換(即ち、上で述べられた野生型配列に比較した置換)を含む。
【0033】
本発明の好ましい態様において、上に述べたGLP−2類似体は本明細書中の表1または表2に開示されたものであるか、または医薬的に許容される塩またはその誘導体である。
【0034】
本発明の好ましい態様において、上に述べたGLP−2類似体は一般式III、
−His−Gly−Glu−Gly−Ser−Phe−Ser−X8−Glu−Leu−X11−Thr−Ile−Leu−X15−X16−Leu−Ala−Ala−X20−Asp−Phe−Ile−X24−Trp−Leu−Ile−X28−Thr−Lys−Ile−Thr−Asp−NH
により表され、
【0035】
式中、
は水素、C1−4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイルまたはトリフルオロアセチルであり、
X8はAspまたはSer、好ましくはAsp、
X11はSer、Ala、Glu、LysまたはAsn、
X15はGluまたはAsp、好ましくはGlu、
X16はSer、AlaまたはGlu、
X20はSer、AlaまたはGlu、
X24はSer、AlaまたはGlu、および
X28はSer、Ala、GlnまたはGlu、または医薬的に許容される塩またはその誘導体である。
【0036】
本発明の興味深い化合物(式I)を以下の表に記載する。ここにおいて、前記の化合物は式IIIにおいてRとして記述したようにN−末端において修飾され得て、かつ医薬的に許容される塩またはその誘導体を含む。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明のさらなる化合物は以下の表1に示される。
【0039】
本発明は、結腸に比した小腸において優先的な増殖促進活性を有する化合物を提供する。特に、ここに記載した実験は、野生型GLP−2の位置X11および/またはX16および/またはAsn20および/またはX24および/またはX28におけるある置換が、試験動物に投与した際に結腸質量の増大に比べて小腸の重量を優先的に増大させることを示している。これらの発見は、例証された化合物が小腸における増大した増殖促進効果を有するが結腸における効果は少ないことが有利である状況、または小腸が傷害されかつ結腸は傷害されていない状況の治療に有用であり得ることを意味する。
【0040】
従って、小腸の増殖を優先的に起こす化合物は一般的に野生型GLP−2の位置11、16、20、24および/またはX28に1以上の置換(即ち、上で述べられた野生型配列に比較して)を含む。このような化合物は選択的に結腸よりも小腸の増殖を起こし得る。それ故にこれらは小腸に影響するかまたは関連する状態において使用され得る。
【0041】
好ましくは、このような小腸選択的化合物はX11、X16、X20、X24、および/またはX28のうちの1を超える位置に置換(即ち、上で述べられた野生型配列に比較して)を含む。従ってこの小腸選択的化合物はX11がSer、X16がAla、X20、X24がAla、X28がAla、X31がIle、X32がThrおよびX33がAspである1を超える置換を含み得る。位置X31、X32およびX33のアミノ酸残基は任意に欠失され得る。
【0042】
小腸選択的化合物において、X11、X16、X20、X24およびX28はそれぞれ独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。
【0043】
例えば、X11およびX16はそれぞれ独立してAlaまたはSerであり得て、かつX20、X24およびX28は独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。
【0044】
例えば、X11およびX16は両者ともAlaであり得て、かつX20、X24およびX28は独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。
【0045】
例えば、X11およびX16は両者ともAlaであり得て、かつX20、X24およびX28の全ては独立してAlaまたはSerであり得る。
【0046】
これらの一般的基準に当てはまらないその他の残基の組み合わせもまた小腸選択性を提供し得ることが認められ得る。
【0047】
位置X11、X16、X20、X24およびX28における好ましい残基の組み合わせは、Ser/Ser/Ser/Ser/Ser; Ala/Ala/Ser/Ser/Ser、Ala/Ala/Ala/Ala/Ser、Ser/Ala/Ser/Ser/Ser、Ala/Ser/Ser/Ser/Ser; Ala/Ala/Ala/Ser/Ala; Ala/Ala/Ser/Ala/Ala; Ser/Ala/Ala/Ala/Ala; Ser/Ala/Arg/Ala/Ala; Ala/Ser/Ala/Ser/Ala; Ala/Ala/Ala/Ala/Alaを含む。
【0048】
小腸において上皮の増殖を優先的に刺激する例証された化合物は、ZP2264、ZP2268、ZP2242、ZP2272、ZP2411、ZP2380、ZP2384、ZP2398、ZP2417、ZP2423、ZP2385、ZP2399、ZP2418、ZP2381、ZP2420およびZP2397を含む。
【0049】
本発明はまた、結腸に比した胃における優先的な増殖促進活性を有する化合物にも及ぶ。それ故にこれらは胃に影響するかまたは関連する状態において使用され得る。
【0050】
好ましくは、このような胃選択的化合物はX11、X16、X20、X24、および/またはX28のうちの1を超える位置に置換(即ち、上で述べられた野生型配列に比較して)を含む。位置X31、X32およびX33のアミノ酸残基は任意に欠失され得る。
【0051】
例えば、胃選択的化合物において、
X11はLeu、PheまたはLysであり得る。
X16はLeu、PheまたはLysであり得る。
X20はAlaまたはSerであり得る。
X24はAla、SerまたはLysであり得る。
X28はAla、SerまたはLysであり得る。
【0052】
例えば、X11およびX16は独立してLeuまたはPheであり得て、X24およびX28は独立してLysまたはSerであり得て、かつX20はSerであり得る。
【0053】
例えば、X11およびX16は独立してLeuまたはPheであり得て、かつX20、X24およびX28はSerであり得る。
【0054】
これらの一般的基準に当てはまらないその他の残基の組み合わせもまた胃選択性を提供し得ることが認められ得る。
【0055】
位置X11、X16、X20、X24およびX28における好ましい残基の組み合わせは、Lys/Lys/Lys/Lys/Lys; Phe/Phe/Ser/Ser/Ser; Leu/Leu/Ala/Ala/Ala; およびLeu/Leu/Ser/Ser/Serを含む。
【0056】
胃において上皮の増殖を優先的に刺激する例示された化合物は、ZP2400、ZP2412、ZP2396、ZP2395、ZP2394およびZP2401を含む。
【0057】
好ましくは、このGLP−2類似体は以下の実施例7に述べる分解試験の少なくとも1つにおける最初の純度に対し少なくとも70%の観察された純度を維持する。それに加えまたはそれとは別に、0.1 M HCl溶液中における最初の純度に対し12日後に少なくとも60%の観察された純度を維持し得る。それに加えまたはそれとは別に、0.1 M NH4HCO3溶液中における最初の純度に対し6日後に少なくとも70%の観察された純度を維持し得る。
【0058】
本発明の別の局面は、少なくとも1nMのEC50を有し、それ故にGLP−2アゴニストとして定義される上に述べたGLP−2類似体に関する。本化合物は実施例9に述べたように分析された。図5に、ZP2264のEC50をGLP−2アゴニストの例として示す。
【0059】
さらなる局面において、本発明はここで定義されるGLP−2類似体、またはその塩または誘導体の、担体との混合物を含む組成物を提供する。好ましい態様において組成物は医薬的に許容される組成物であり、かつ担体は医薬的に許容される担体である。GLP−2ペプチド類似体はGLP−2類似体の医薬的に許容される酸付加塩であり得る。
【0060】
1つの態様において、本発明は前記のGLP−2類似体が注射または点滴による投与に適した液体として処方されるか、または緩慢に放出されるように処方された医薬組成物としての、ここで定義されるGLP−2類似体の使用に関する。
【0061】
さらなる局面において、本発明はここで定義されるGLP−2類似体またはその塩を、治療における使用のために提供する。
【0062】
本発明はさらに、胃および腸関連疾患を治療および/または予防する薬剤の製剤のための、上に述べられたGLP−2類似体の使用も提供する。
【0063】
好ましい態様において本発明は、腸機能に欠陥のある新生児、骨粗鬆症、およびDPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)により媒介される状態の治療のような、胃および腸関連疾患を治療および/または予防する薬剤の製剤のためのGLP−2類似体またはその塩または誘導体の使用に関する。例として胃および腸関連疾患は、潰瘍、ゾリンジャー・エリソン症候群、胃炎、消化障害、吸収不良症候群、短消化管症候群(short−gut syndrome)、カルデサック症候群(cul−de−sac syndrome)、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性結腸炎)、セリアックスプルー(例えばグルテン誘導性腸疾患またはセリアック病)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症スプルー、腸炎、下痢を伴う過敏性腸症候群、小腸損傷、および短腸症候群を含む。
【0064】
別の好ましい態様において、本発明は前記の胃および腸関連疾患が放射線性腸炎、感染性または後感染性腸炎、または有毒剤またはその他の化学療法剤による小腸損傷である際の、上に述べたGLP−2類似体の使用に関する。
【0065】
本発明はさらに、化学療法または放射線治療における副作用を治療および/または予防する薬剤の製剤のための、ここで定義されるGLP−2類似体の使用を提供する。
【0066】
前記の化学療法および/または放射線の副作用は、下痢、腹部けいれん、嘔吐、または化学療法による治療に起因する腸上皮の構造的および機能的損傷である。
【0067】
本発明はさらに新生児、骨粗鬆症、およびDPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)により媒介される状態を治療する薬剤の製剤のための、ここで定義されるGLP−2類似体の使用を提供する。
【0068】
本発明はまた、それぞれが任意に医薬的に許容される担体と組み合わされる癌化学療法薬剤および本発明のGLP−2類似体を含む治療キットを提供する。この2つの治療剤は別々の投与のために別々に包装され得る(例えば別々のバイアルで)か、または1つの組成物として提供され得る。従って本発明はさらに、医薬的に許容される担体と組み合わされた癌化学療法薬剤および本発明のGLP−2類似体を含む医薬組成物を提供する。
【0069】
胃腸粘膜新生物、または胃腸粘膜新生物の増大したリスクを有する患者にとって、胃腸粘膜新生物の刺激または悪化のような副作用のリスクを減少または抑止するための化合物の選択が望まれ得る。例えば、結腸新生物(良性または悪性にかかわらず)、または結腸新生物発生のリスクを有する患者を治療する化合物を選択する際、非選択性化合物または小腸より結腸に選択性のある化合物よりも、結腸より小腸に選択性のある化合物を選択することがより適切であり得る。
【0070】
他の局面において、本発明は栄養障害、例えば消耗症候群、悪液質、食欲不振のような状態を治療および/または予防する薬剤の製剤のためのGLP−2類似体の使用を提供する。
【0071】
さらなる局面において、本発明はここで定義されるGLP−2誘導体をコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0072】
さらなる局面において、本発明はその発現を誘導する配列と任意に組み合わされた上記の核酸配列を含む発現ベクター、およびこの発現ベクターにより形質転換されたホスト細胞を提供する。このホスト細胞は好ましくはGLP−2類似体を発現および分泌することができる。尚、さらなる局面において、本発明はGLP−2類似体の発現に適切な状態の下でホスト細胞を培養すること、およびそれにより産生されたGLP−2類似体を精製することを含む、GLP−2類似体の産生方法を提供する。
【0073】
本発明はさらに、治療における使用のための本発明の核酸、本発明の発現ベクター、またはGLP−2類似体を発現および分泌できる本発明のホスト細胞を提供する。この核酸、発現ベクターおよびホスト細胞は、GLP−2類似体それ自体により治療され得るここに記述されたいずれの疾患の治療にも使用され得ることが理解され得る。従って本発明のGLP−2類似体を含む治療組成物、または本発明のGLP−2類似体の投与についての参考文献は、文脈がそれ以外のものを要求していない限り、本発明の核酸、発現ベクター、またはホスト細胞の投与を包含するものとして解釈されなければならない。
【0074】
本発明は1つの態様において、胃または腸関連疾患の治療および/または予防、または化学療法または放射線治療による副作用の治療および/または予防、または新生児、骨粗鬆症、またはDPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)により媒介される状態を治療する薬剤の製剤における、ここで定義される核酸分子、発現ベクター、またはホスト細胞の使用に関する。
【0075】
さらなる局面において、本発明は患者の必要性に応じ、効果的な量の本発明の核酸、発現ベクターまたはホスト細胞を投与することによる胃および腸関連疾患の治療法を提供する。胃および腸関連疾患の例は上記の通りである。
【0076】
さらなる局面において、本発明は患者の必要性に応じ、化学療法または放射線治療による副作用の治療および/または予防する方法を提供する。この方法は効果的な量の本発明の核酸、発現ベクターまたはホスト細胞の投与を含む。
【0077】
さらなる局面において、本発明は患者の必要性に応じ、栄養障害、例えば消耗症候群、悪液質、食欲不振のような状態を治療または予防する方法を提供する。この方法は効果的な量の本発明の核酸、発現ベクターまたはホスト細胞の投与を含む。
【0078】
ここで本発明の態様は実施例として、付随する図への参照に限定されることなく更に詳しく記述され得る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】リファレンス化合物投与後の溶媒コントロールに対する小腸質量の相対的変化。[Gly2]GLP−2および化合物ZP2264、ZP2266−ZP2268を800nmol/kg、1日1回、3日間投与した。相対的小腸質量は溶媒を投与された動物の小腸質量を100%として示す。:溶媒投与に対しP<0.05。$:[Gly2]GLP−2投与に対しP<0.05。
【0080】
【図2】リファレンス化合物投与後の溶媒コントロールに対する小腸質量の相対的変化。[Gly2]GLP−2および化合物ZP2242、ZP2269およびZP2272を800nmol/kg、1日1回、3日間投与した。相対的小腸質量は溶媒を投与された動物の小腸質量を100%として示す。:溶媒投与に対しP<0.05。$:[Gly2]GLP−2投与に対しP<0.05。
【0081】
【図3】[Gly2]GLP−2投与動物に化合物ZP2264、ZP2266−ZP2268を800nmol/kg、1日1回、3日間投与した後の、小腸質量/結腸質量の比の変化。相対的小腸(SI)質量は溶媒を投与された動物の小腸質量を100%として示す。$:[Gly2]GLP−2 投与に対しP<0.05。
【0082】
【図4】[Gly2]GLP−2投与動物に化合物ZP2242、ZP2269、ZP2272およびZP2271を800nmol/kg、1日1回、3日間投与した後の、小腸質量/結腸質量の比の変化。相対的小腸(SI)質量は[Gly2]GLP−2を投与された動物の小腸質量を100%として示す。$:[Gly2]GLP−2投与に対しP<0.05。
【0083】
【図5】BHK−21細胞に遺伝子組み換え的に発現されたGLP−2レセプターに対するZP2264のアゴニズムのin vitroスクリーニング。ZP2264のIC 50は、アゴニストと定義されるために十分な範囲の3.55E−12であった。
【0084】
【図6】小腸選択性化合物であるZP化合物の小腸/結腸感受性指数。
【図7】胃選択性化合物であるZP化合物の胃/結腸感受性指数。
【0085】
【図8】非選択性化合物であるZP化合物の小腸/結腸感受性指数。
【0086】
発明の詳細な説明
定義
他に特定されない限り、以下の定義は上の記述において使用された特定の用語のために提供されるものである。
【0087】
本明細書およびクレーム中の全般にわたり自然アミノ酸に対する従来のワンレターおよびスリーレターコードが使用され、同様にサルコシン(Sar)、ノルロイシン(Nle)、およびα−アミノイソ酪酸(Aib)のようなその他のα−アミノ酸に対し一般的に許容されるスリーレターコードも使用される。本発明のペプチドの全てのアミノ酸残基は好ましくはL−配置であるが、D−配置アミノ酸もまた存在し得る。
【0088】
ここで使用される「保存された置換」は、天然のヒトGLP−2ペプチド配列のある位置に属するアミノ酸残基が、下の表で定義されるような同じグループ(I、II、III、IV、V、1、2、3)に属するアミノ酸残基と交換されていることを意味する。
【0089】
【表2】

【0090】
ここで使用される「保存されていない置換」は、天然のヒトGLP−2配列のアミノ酸残基のその他の置換、例えば非タンパク質アミノ酸(Sar、Nle、Aib)による置換または同じグループに属していないアミノ酸による置換のような置換を意味する。
【0091】
結果としてのアルファヘリックスの片側のhydrophophaticプロファイルを記述するため、KyteおよびDoolittle(J.Mol.Biol.(1982)157,105−132)により記述された個々のアミノ酸についての疎水性親水性指標(hpix)が選択された。本発明において、関心のあるヘリックスの概要はアミノ酸位置X11−X16−X20−X24−X28により示される。
【0092】
個々のアミノ酸の疎水性親水性指標(HPI)は、KyteおよびDoolittle(J.Mol.Biol.(1982)157,105−132)により導入および定義された疎水性親水性指標、HPIを用いて記述される。
【0093】
個々のアミノ酸に対するHPI値は以下の通りである。
アミノ酸 HPI値
I 4.5
V 4.2
L 3.8
F 2.8
C 2.5
M 1.9
A 1.8
G −0.4
T −0.7
W −0.9
S −0.8
Y −1.3
P −1.6
H −3.2
E −3.5
Q −3.5
D −3.5
N −3.5
K −3.9
R −4.5
【0094】
式Iの残基X11、X16、X20、X24、X28の結果としてのハイドロファティシティ(hydrophaticity)プロファイル(HPP)は、HPP=Σhpix11+hpix16+hpiX20+hpiX24+hpiX28
HPP≧−10
HPP≧−4
HPP≧0
として計算される。
【0095】
、Y、Y、およびYは、Asn、Asp、Glu、Gin、Lys、His、Arg、Ala、Ser、Thr、Pro、Gly、Leu、Ile、Val、MetまたはPheの群から独立して選択できる。Yは、Asn、Asp、Glu、Gin、His、Arg、Ala、Ser、Thr、Pro、Gly、Leu、He、Val、MetまたはPheの群から選択できる。
【0096】
小腸選択性化合物については、HPP≧−10、−4または0という全体的な基準の中で、位置11および16のHPIは独立して−0.8≦HPI≦3.8であることが望まれ得る。例えばHPI=1.8のような、−0.8≦HPI≦2.8である。
【0097】
位置20、24および28については、HPIは独立して−0.8≦HPI20,24,28≦1.8であることが望まれ得る。例えばHPI20,24,28=−0.8のような、−0.8≦HPI20,24,28≦1.8である。
【0098】
従って、X11、X16、X20、X24およびX28の各位置の残基は独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。
【0099】
例えば、X11およびX16はそれぞれ独立してAlaまたはSer、かつX20、X24およびX28はAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。例えばX11およびX16はAla、かつX20、X24およびX28はAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。
【0100】
位置X11、X16、X20、X24およびX28における好ましい組み合わせは、Ala/Ala/Ala/Ser/Ser、Ala/Ala/Ser/Ser/Ser、Ala/Ala/Thr/Ser/SerおよびAla/Ala/Gly/Ser/Serを含み得る。
【0101】
胃選択性化合物については、HPP≧−10、−4または0という全体的な基準の中で、位置11および16のHPIは独立して−3.9≦HPI11,16≦3.8であることが望まれ得る。例えばHPI11,16は2.8≦HPI11,16≦3.8であり得るか、またはHPI11,16は−3.9であり得る。
【0102】
位置20、24および28については、HPIは独立して−3.9≦HPI20,24,28≦1.8であることが望まれ得る。例えばHPI20,24,28は−0.8≦HPI20,24,28≦1.8であり得るか、またはHPI20,24,28は−3.9であり得る。
【0103】
従って、位置X11の残基は、Leu、PheまたはLysであり得る。
【0104】
位置X16の残基は、Leu、Ser、Phe、LysまたはThrであり得る。
【0105】
位置X20の残基は、Ala、Ser、Leu、GlyまたはThrであり得る。
【0106】
位置X24の残基は、Ala、Ser、Lys、Glu、GlyまたはThrであり得る。
【0107】
位置X28の残基は、Ala、Ser、Lys、Gln、GlyまたはThrであり得る。
【0108】
例えば、X11およびX16は独立してLeuまたはPheであり得て、X24およびX28は独立してAlaまたはSerであり得る。
【0109】
本発明の好ましい化合物は、特に腸および胃の増殖の原因となる少なくとも1つのGLP−2生物活性を有する。これは例えば実施例に記載されているような、試験動物をGLP−2類似体で処理するか、またはGLP−2に接触させた後で小腸質量またはその一部を判定するin vivoアッセイにより評価される。
【0110】
本発明のGLP−2類似体は上で定義されたように、天然GLP−2に比較して1以上のアミノ酸置換、欠失、反転、または付加を有する。この定義はまた、同義語であるGLP−2ミメティクスおよび/またはGLP−2アゴニストも含む。さらに、本発明の類似体はそのアミノ酸側基、α−炭素原子、末端アミノ基、または末端カルボン酸基の1つ以上にさらなる化学修飾を有し得る。化学修飾は、化学成分の付加、新しい結合の創造、および化学成分の除去を含むがこれらに限定されない。アミノ酸側基の修飾は、リジンε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンのN−アルキル化、グルタミン酸の、またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミドを含むがこれらに限定されない。末端アミノ基の修飾は、デスアミノ、N−低級アルキル、N−ジ低級アルキル、およびN−アシル修飾を含むがこれらに限定されない。末端カルボキシ基の修飾は、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル修飾を含むがこれらに限定されない。ここで、低級アルキルは好ましくはC−Cアルキルである。さらに、1つ以上の側基、または末端基は、当業のペプチド化学者に公知の保護基によって保護され得る。アミノ酸のα−炭素はモノ−またはジ−メチル化され得る。
【0111】
それらが存在する際、酸化的に安定なMet−置換アミノ酸はMet(O)(メチオニンスルホキシド)、Met(O)(メチオニンスルホン)、Val、Ile、Asn、Glx(GluまたはGln)、Tyr、Phe、Trp、および好ましくはLeu、Nle、Ala、Ser、およびGlyからなる群から選択されるものを意味する。
【0112】
本発明のペプチドはまた、塩またはその他の誘導体の形で提供され得ることが理解されなければならない。塩は、酸付加塩および塩基性塩のような医薬的に許容される塩を含む。酸付加塩の例は、塩酸塩、クエン酸塩、および酢酸塩を含む。塩基性塩の例は、RおよびRが独立して任意にC1−6−アルキルに置換されるか、任意にC2−6−アルケニルに置換されるか、任意にアリールに置換されるか、または任意にヘテロアリールに置換される際に、陽イオンがナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属、カルシウムのようなアルカリ土類金属、およびアンモニウムイオンN(R(R)から選択される塩を含む。その他の医薬的に許容される塩の例は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,17th edition.Ed.Alfonso R.Gennaro(Ed.),Mark Publishing Company,Easton,PA,U.S.A.,1985およびより最近の版、および Encyclopaedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0113】
本発明のGLP−2類似体のその他の誘導体は、Mn2+およびZn2+のような金属イオンとの配位化合物、in vivoでの加水分解性エステルのようなエステル、遊離酸または塩基、水和物、プロドラッグ、または脂質を含む。エステルは化合物中に存在する水酸基またはカルボン酸基と適切なカルボン酸またはアルコール反応パートナーとの間で、公知の方法を用いて形成される。化合物のプロドラッグとしての誘導体は、in vivoまたはin vitroにおいて親化合物の1つへ変換できる。一般的には、化合物のプロドラッグの形においては、少なくとも1つの生物活性が減少され得て、これは化合物またはその代謝産物の放出のためのプロドラッグの変換により活性化される。プロドラッグの例は、in situでの放出活性化合物では除去され得るか、またはin vivoでの薬剤のクリアランスを阻害するために役立つ保護基の使用を含む。
【0114】
およびZが存在する際、これらはそれぞれに独立して3−20または4−20アミノ酸残基、例えば4−15の範囲、さらに好ましくは4−10の範囲特に4−7アミノ酸残基の範囲、例えば6アミノ酸残基のような4、5、6、または7アミノ酸残基のペプチド配列を示す。ペプチド配列Z中のそれぞれのアミノ酸残基は独立して、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Met、Ornから選択され得る。好ましくは、アミノ酸残基はSer、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Orn、およびMet、同様に国際公開第01/04156号で定義される式I内のアミノ酸、例えばDbu(2,4−ジアミノ酪酸)またはDpr(2,3−ジアミノプロパン酸)、さらに好ましくはGlu、Lys、およびMet、特にLysから選択される。上記のアミノ酸はD−またはL−配置のいずれかを有し得るが、好ましくは上記のアミノ酸はL−配置を有する。特に好ましい配列Zは、4、5、または6の連続したリジン残基、および特に6の連続したリジン残基である。典型的な配列Zは国際公開第01/04156号に示されている。
【0115】
ある態様において、Zは存在しない。このような場合、Zは存在してもしなくてもよい。
【0116】
少なくとも1 nMのEC50を有するGLP−2類似体は、GLP−2アゴニストと定義される。
【0117】
本発明は以下の実験部分においてさらに記述されるペプチドを含む。
【0118】
特に好ましい本発明の化合物はZP2264、ZP2267、ZP2268およびZP2270を含む。
【0119】
安定性試験
熟練者は、例えば以下の記述に基づき、GLP−2類似体の分解産物を検出するための適切な方法(例えば定量法)をデザインすることができる。分解は所定のGLP−2類似体いずれにおいても、同一性およびアミノ酸の位置、およびpH、溶液および温度の状態に依存し、酸化、加水分解および脱アミドとして起こり得る。化合物は、ストレスとなる条件下(即ち、分解の原因となるような状態)でインキュベートし、続いて未変化のペプチドの含量を分析することによる化学的安定性に従い順位付けられる。さらに、ストレスとなる条件下で得られた主要な分解産物について得られた知識は、その後のいずれの分析法開発にも重要となり得る。
【0120】
GLP類似体検出のための定量アッセイ
熟練者はまた、GLP類似体の哺乳類への投与後の吸収、分布、代謝および排泄を調査するため、またはin vitro細胞システムでの機能試験の一部として、複雑な環境または溶液(例えば血漿、尿、組織破砕物、細胞破砕物、唾液または類似物)中のGLP類似体を検出するための方法(例えば定量法)をデザインできる。
【0121】
1つの態様において、定量アッセイはGLP類似体に対して作られた抗体またはその断片に基づくことができる。免疫された動物から得られた抗体は定量アッセイに使用できる。1つの例において、マルチウェルプレート中に固定された分子の一部に親和性を有する第1抗体を用いて直接サンドウィッチELISAを用意することができる。その後サンプルをウェルへアプライすると、GLP類似体は第一抗体により捕捉される。捕捉されたGLP類似体はその後、GLP類似体の別の部分に親和性を有する第二抗体により認識される。第二抗体は酵素(西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはベータガラクトシダーゼ)または放射性同位元素により標識できる。捕捉されたGLP類似体の量はその後、発色基質の添加、または放射線放出の直接カウント、またはシンチレーションにより検出できる。また捕捉されたGLP類似体の量は、第二抗体に親和性を有する標識抗体の添加により間接的に検出できる。サンプル中の濃度は既知の量のGLP類似体を含んだ外部の検量線から得られる反応により測定できる。またこの抗体は、GLP類似体に特異的な抗体をマルチウェルプレートに固定化し、サンプルを予め濃度が決定された標識GLP類似体と共にウェル中でインキュベートすることによる直接競合免疫アッセイを準備するために使用できる。標識は酵素、フルオロフォア、放射性同位元素、またはビオチンであることができ、例えば酵素に特異的な基質(例えば比色定量の、蛍光定量の、または化学発光の)、シンチレーション、または酵素に結合したアビジンの使用およびそれに続く上記の検出法により検出できる。結合した標識GLP類似体の量は適切な方法により検出でき、かつサンプル中に存在するGLP類似体の濃度は、上で述べたように外部検量線から得られた反応に由来する。
【0122】
他の態様において、定量アッセイは液体クロマトグラフィータンデム質量分析法に基づくことができる。このようなセットアップにおいて、研究されるべきGLP類似体に特異的な断片からの反応は、不活性ガス(HeまたはAr)との衝突により誘導される親化合物の断片化においてモニターされる。断片化に先立ち、サンプル成分は逆相クロマトグラフィーにより分離することができるか、あるいはサンプルは直接質量分析計中に注入できる。サンプルは、それが適切であれば前処理(即ち、プロテアーゼ阻害剤の添加、タンパク質沈殿、固相抽出、免疫親和性抽出など)される。上に述べたように、外部の検量線から得られる反応に由来するサンプル中に存在するGLP類似体の濃度は、可能性としてGLP類似体と類似の内部標準物質を用いた補正の後に研究される。
【0123】
特異的抗体の産生
GLP類似体に対する特異的抗体またはその断片は哺乳類において誘導することができ、かつ血清より精製できる。GLP類似体または断片は直接アジュバントと共にウサギ、マウスまたはその他の哺乳類の免疫に使用できるか、またはGLP類似体またはその断片は担体分子(即ち、キーホールリンペットヘモシアニン、卵白アルブミン、アルブミンなど)に化学的に結合できアジュバントと共に注射できる。抗体の親和性および選択性を良くするため、注射は2−4週間の間隔で、延長された期間繰り返すことができる。ポリクローナル抗体は血清から直接回収できる。モノクローナル抗体を得るため、免疫動物、好ましくはマウスから分離されたB細胞は抗体産生ハイブリドーマを形成するために腫瘍細胞と融合されなければならない。適切なクローンおよび抗体のスクリーニングと選択は、固定化されたGLP類似体またはそのペプチドの使用とそれに続く標識抗体による検出により行うことができる。あるいは、スクリーニングと選択は、固定化された抗体とそれに続く標識GLP類似体またはその断片による検出に基づき行うことができる。全てのケースにおいて標識は放射性同位元素、酵素、フルオロフォア、またはビオチンであり得て、例えば酵素に特異的な基質(例えば比色定量の、蛍光定量の、または化学発光の)、シンチレーション、または酵素に結合したアビジンの使用およびそれに続く記述された検出法により検出できる。
【0124】
GLP−2類似体の合成
本発明の類似体は固相または液相のペプチド合成により合成されることが好ましい。この状況において、国際公開第98/11125号および、とりわけSynthetic Peptides(2nd Edition)の中のFields,GB et al.,2002,“Principles and practice of solid−phase peptide synthesis”、およびここでの実施例が参考となる。
【0125】
従ってGLP−2類似体は例えば、
【0126】
(a)ペプチドを固相または液相のペプチド合成により合成し、その合成ペプチドを回収により得ること、または
【0127】
(b)ペプチドが天然アミノ酸から構成される場合、そのペプチドをコードする核酸コンストラクトをホスト細胞内で発現させ、ホスト細胞培養から発現産物を回収すること、または
【0128】
(c)ペプチドが天然アミノ酸から構成される場合、そのペプチドをコードする核酸コンストラクトの無細胞in vitroでの発現を達成し、発現産物を回収すること、または
【0129】
ペプチドの断片を得るため(a)、(b)、および(c)の方法を組み合わせ、続いてペプチドを得るため断片を連結し、ペプチドを回収することを含む方法、を含む多数の方法により合成され得る。
【0130】
従って、本発明の幾つかの類似体にとっては、遺伝子工学技術の活用が有利であり得る。これはペプチドが十分に大きく(または融合コンストラクトとして産生され)、かつそのペプチドが生体中でRNAから翻訳される天然アミノ酸のみを含む際に事例となり得る。
【0131】
組み換え遺伝子技術の目的のためには、本発明のペプチドをコードする核酸断片は重要な化学産物である。従って、本発明のさらなる局面は、ペプチドが好ましくは天然アミノ酸から構成される本発明のGLP−2誘導体をコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。本発明の核酸断片はDNA断片またはRNA断片のいずれかである。
【0132】
本発明の核酸断片は通常クローニングまたは発現ベクターを形成するため適切なベクターに挿入され得て、このような新規のベクターもまた本発明の一部である。本発明のこれらのベクターの構築に関する詳細は、以下、細胞および微生物の形質転換に関連して考察される。ベクターは目的および応用のタイプに応じ、プラスミド、ファージ、コスミド、ミニ染色体、またはウィルスであることができるが、ある細胞に一過性にのみ発現されるネイキッドDNAもまた重要なベクターである。本発明の好ましいクローニングベクターおよび発現ベクター(プラスミドベクター)は自律複製でき、それにより高レベル発現、または後のクローニングのための高レベル複製を目的とした高コピー数を可能にする。
【0133】
本発明のベクターの一般的な概要は5’から3’への方向における機能的結合において以下の特徴、即ち本発明の核酸断片の発現を駆動するためのプロモーター、任意に分泌を可能にする(細胞外相(extracellular phase)へ、またはそれが適用される際には周辺質内へ)リーダーペプチドまたは複数の用途、例えば混合性の分泌のためのリーダーペプチドをコードする核酸配列、精製タグおよびペプチドの補正またはポリペプチド断片の膜への融合を目的とした酵素による整形(enzymatic trimming)、本発明のペプチドをコードする核酸断片、および任意に、転写終結区をコードする核酸配列を含む。産生菌種または細胞株中で発現ベクターを操作する際には形質転換細胞の遺伝的安定の目的のため、ホスト細胞中に導入されたベクターはホスト細胞のゲノムに組み込まれることが好ましい。
【0134】
本発明のベクターは、ホスト細胞を形質転換して本発明の修飾ペプチドを産生するために使用される。
本発明の一部でもあるこのような形質転換細胞は、本発明の核酸断片およびベクターの増殖のために使用されるか、または組み換え型の本発明のペプチドの産生のために使用される培養細胞または細胞株であることができる。
【0135】
本発明の好ましい形質転換細胞は細菌(エシェリキア(例えば結腸菌)、バチルス(例えば枯草菌)、サルモネラ、またはマイコバクテリウム(好ましくはウシ型弱毒結核菌のような非病原性のもの)などの種)、酵母(出芽酵母など)、および原生動物のような微生物である。また、形質転換細胞は多細胞生物由来、即ち真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、または哺乳類細胞であり得る。ヒト由来の細胞もまた興味深い(細胞株およびベクターについての下記の考察を参照)。クローニングおよび/または最適化された発現の目的のために、形質転換細胞は本発明の核酸断片を複製する能力のあることが好ましい。核酸断片を発現する細胞は本発明の有用な態様として好ましく、それらは本発明のペプチドをスモールスケールまたはラージスケールで調整するために使用できる。
【0136】
形質転換細胞によって本発明のペプチドを産生する際、発現産物が培養液中に排出されるかまたは形質転換細胞の表面に輸送されることは必須ではないが好都合である。
【0137】
効果的な産生細胞が同定された際、それ自体に基づいた、本発明のベクターを有しかつペプチドをコードする核酸断片を発現する安定化細胞株を樹立することが好ましい。
【0138】
一般に、ホスト細胞に適合する種由来のレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターは、ホスト細胞との関連において使用される。通常、ベクターは複製部位を有し、同様に形質転換細胞における表現型の選択を可能にする標識配列を有する。例えば結腸菌は一般に結腸菌種由来の(例えばBolivar et al.,1977を参照のこと)pBR322(しかし、その他にも多数の有用なプラスミドが存在する)を用いて形質転換される。pBR322プラスミドはアンピシリンおよびテトラサイクリンの耐性遺伝子を含んでおり、そのために形質転換細胞の同定を容易にする。pBRプラスミド、またはその他の微生物プラスミドまたはファージは、発現のために原核微生物により使用することのできるプロモーターを含むか、あるいはプロモーターを含むように改変されていなければならない。
【0139】
これらの原核生物組み換えDNA構築において最も一般的に使用されるプロモーターは、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーターシステム(Chang et al.,1978;ltakura et al.,1977; Goeddel et al.,1979)、およびトリプトファン(trp)プロモーターシステム(Goeddel et al.,1979;EP0036776A)を含む。これらは最も一般的に使用されるが、その他の微生物プロモーターも発見されかつ利用されており、当業者がそれらをプラスミドベクターに機能的に連結することを可能にするヌクレオチド配列に関する詳細は公表されている(Siebwenlist et al.,1980)。
【0140】
原核生物に加え、酵母培養のような真核微生物もまた使用され、そのプロモーターもまた発現を駆動することができなければならない。真核微生物の多数の種が利用可能であるが、中でも出芽酵母、または一般のパン酵母が最も一般的に使用される。出芽酵母内での発現には、例えばYRp7プラスミドが一般的に使用される(Stinchcomb et al.,1979;Kingsman et al.,1979;Tschemper et al.,1980)。このプラスミドは予め、トリプトファン中で増殖できない変異酵母種、例えばATCC番号44076またはPEP4−1(Jones,1977)に対して選択マーカーを提供するtrp1遺伝子を含んでいる。酵母ホスト細胞ゲノムの特徴である破壊されたtrp1は、トリプトファン非存在下での増殖により形質転換を検出するための効果的な環境を提供する。
【0141】
酵母ベクターにおける適切なプロモーター配列は3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzman et al.,1980)、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸脱炭酸酵素、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、およびグルコキナーゼのようなその他の糖分解酵素(Hess et al.,1968;Holland et al.,1978)のためのプロモーターを含む。適切な発現プラスミドの構築において、これらの遺伝子に付随する終止配列もまた、mRNAのポリアデニル化および終止を提供するための発現が望まれるベクターの3’配列に連結される。
【0142】
増殖条件により制御される転写のさらなる利点を有するその他のプロモーターは、アルコール脱水素酵素2、イソチトクロームC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に付随する分解酵素、および前述のグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、およびマルトースおよびガラクトース利用原因酵素のためのプロモーター領域である。酵母適合性のプロモーター、複製開始点および終結配列を含むいずれのプラスミドベクターも適切である。
【0143】
微生物に加え、多細胞生物由来細胞の培養もまたホストとして試用され得る。原理的にはこのような細胞培養のいずれもが、脊椎動物培養または無脊椎動物培養由来にかかわらず機能する。しかしながら脊椎動物細胞への関心は最も高く、近年脊椎動物の培養における増殖(組織培養)は日常的な方法となりつつある(Tissue Culture,1973)。このように有用なホスト細胞株の例として、VEROおよびHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、およびW138、BHK、COS−7 293、ヨトウガ(SF)細胞(完全な発現システムとして、i.a. Protein Sciences、1000 リサーチパークウェイ、メリデン、コネチカット 06450、米国、およびInvitrogenから市販されている)、Invitrogen(私書箱 2312、9704 CH フローニンゲン、オランダ)から市販されているキイロショウジョウバエ細胞株S2、およびMDCK細胞株が挙げられる。
【0144】
このような細胞のための発現ベクターは通常(必要であれば)複製開始点、発現されるべき遺伝子の前に位置するプロモーター、必要ないずれかのリボゾーム結合部位に加え、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列を含む。
【0145】
哺乳類細胞での使用において、発現ベクターの制御機能はしばしばウィルス性の材料により提供される。例えば、一般的に使用されるプロモーターはポリオーマウィルス、アデノウィルス2、および最も頻繁にはシミアンウィルス40(SV40)由来である。SV40ウィルスの初期および後期プロモーターは、両者共に断片としてSV40ウィルス性複製開始点を含むウィルスより容易に得られることから特に有用である(Fiers et al.,1978)。比較的小さな、または大きなSV40断片もまた使用され得て、ここに提供されたものはウィルス性複製開始点に位置するHindIII部位からBglI部位に及ぶ約250 bpの配列に含まれる。さらに、プロモーターおよび望まれる遺伝子配列に通常付随する制御配列を利用することも可能かつしばしば望まれることであり、提供されたこのような制御配列はホスト細胞システムに適合する。
【0146】
複製開始点は、SV40またはその他のウィルス(例えばポリオーマウィルス、アデノウィルス、VSV、BPV)から由来し得るような、外部からの開始点を含むベクターの構築またはホスト細胞の染色体複製メカニズムにより提供され得る。ベクターがホスト細胞染色体に取り込まれるのであれば、しばしば後者が十分である。
【0147】
組み換え体産生の過程において十分な収量を得るためには、ペプチドとアフィニティータグ(精製を容易にするための)として役立つ融合パートナーとの融合および/またはペプチドの複数反復を有することにより、この類似体を融合タンパク質として調整することが有利であり得る。これらの方法はペプチダーゼのための適切な切断部位の存在を必要とするが、熟練者は基礎となる遺伝的コンストラクトをどのように作製するかを知り得る。
【0148】
組み換え調整の後、本発明のペプチドは多段階クロマトグラフィー(イオン交換、サイズ排除、およびアフィニティークロマトグラフィー法)を含む公知の方法により精製できる。
【0149】
また、天然アミノ酸を含むペプチドはin vitroの無細胞システムにより調整できる。これは、ペプチドが想定されたホスト細胞に有毒であり得る場合に特に好都合である。従って、本発明は本発明のペプチドを調整するための、in vitro無細胞翻訳/発現の利用もまた企図する。この状況において、例えばAmbion Inc.(2130ウッドワード、オースティン、テキサス78744−1832、米国)からの市販のin vitro翻訳キット、材料、および技術文書が参考となる。
【0150】
最後に、利用可能な方法は言うまでもなく、例えば半合成の類似体を調整するために組み合わせることができる。このようなセットアップにおいて、ペプチド断片は少なくとも2つの異なった工程または方法の使用により調整され、最終ペプチド産物を得るための断片の連結がそれに続く。
【0151】
医薬組成物および投与
本発明のGLP−2類似体またはその塩または誘導体は、保存または投与のために調整された医薬組成物として処方され得て、これは治療上効果的な量の本発明のGLP−2類似体ペプチドまたはその塩または誘導体を医薬的に許容される担体中に含む。
【0152】
本発明の化合物の治療上効果的な量は、投与経路、治療される哺乳類の型、および検討中の特定の哺乳類の身体的特徴に依存し得る。この量を決定するための、これらの要素およびその関連性は医学当業者に周知である。この量および投与方法は、ペプチドの大腸への送達に最適な効率を達成するため調整できるが、医学当業者に周知の要素である体重、食餌、併用される薬剤、およびその他の要素に依存し得る。
【0153】
胃および腸関連疾患を治療または予防するために効果的な量のGLP−2類似体またはその塩が存在する医薬組成物の提供は、本発明の範囲内である。
【0154】
本発明の化合物の酸性成分を有する医薬的に許容される塩は、有機または無機塩基を用いて形成できる。塩基により形成される適切な塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩のような金属塩、例えばナトリウム、カリウム、またはマグネシウム塩;モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−、ジ−、またはトリ−低級アルキルアミン(例えば、エチル−tert−ブチル−、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−、またはジメチルプロピルアミン)、またはモノ−、ジ−、またはトリヒドロキシ低級アルキルアミン(例えば、モノ−、ジ−、またはトリエタノールアミン)により形成されるようなアンモニア塩および有機アミン塩を含む。内部塩もまた形成され得る。同様に、本発明の化合物が塩基成分を含む際、塩は有機および無機酸を用いて形成できる。例えば、塩は下記の酸、即ち酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、およびカンファースルホン酸、同様にその他の公知の医薬的に許容される酸から形成できる。アミノ酸付加塩もまた、リジン、グリシン、またはフェニルアラニンのようなアミノ酸により形成できる。
【0155】
医学当業者にとって明らかであるように、本発明のペプチドまたは医薬組成物の「治療上効果的な量」とは、年齢、体重、および治療される哺乳類の種、使用される特定の化合物、特定の投与方法、および望まれる効果、および治療上の指示に依存して変化し得る。この量を決定するための、これらの要素およびそれらの関連性は医学分野において公知であるため、治療上有効な量のレベル、ここに述べられた腸および胃関連疾患の予防および/または治療において望まれる結果を達成するために必要な量の決定、同様にここに開示されたその他の医学的指示は、熟練者の領域であり得る。
【0156】
ここで用いられる「治療上有効な量」とは、所定の状態または病態による症状を減少させる量、および好ましくはその状態または病態を有する個体の生理反応を正常化させる量である。症状の減少または生理反応の正常化は当業における日常的方法を用いて決定でき、所定の状態または病態により変化し得る。1つの局面において、1以上のGLP−2類似体または1以上のGLP−2類似体を含む医薬組成物の治療上効果的な量は、測定できる生理的パラメーターを、その状態または病態を持たない個体のパラメーターに対し実質的に同じ値(好ましくはその値の+30%以内、さらに好ましくは+20%以内まで、およびさらに尚好ましくは+10%以内まで)に回復させる量である。
【0157】
本発明の1つの態様において、本発明の化合物または医薬組成物の投与は低用量レベルから開始され、腸および胃関連疾患のような関連する医学的徴候の予防/治療に望まれる効果が達成されるまで増大される。これが治療上効果的な量として定義され得る。本発明のペプチドに関しては単独または医薬組成物の一部として、この量は体重当たり約0.01mg/kgないし10mg/kgのような、体重当たり約0.01mg/kgないし100mg/kg、例えば体重当たり10−100μg/kgであり得る。
【0158】
治療に使用するために選択されたGLP−2類似体は、医薬的に許容されかつ選択された投与経路によるペプチドの送達に適切な担体と共に処方される。本発明の目的のための末梢の非経口投与は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内の投与経路を含む。本発明で使用される特定の化合物は、経口、経直腸、経鼻、または経下気道経路による投与も許容され得る。これらはいわゆる非−非経口経路(non−parenteral route)である。本医薬組成物は、本発明のGLP−2類似体またはその塩または誘導体、および医薬的に許容される担体を含む。医薬的に許容される適切な担体は希釈剤、賦形剤等のような、ペプチドを基礎とする薬剤に従来から用いられているものである。治療に使用するための医薬的に許容される担体は医薬分野において公知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。例えば、わずかに酸性、または生理的なpHの滅菌生理食塩水およびリン酸緩衝食塩水が使用され得る。pH緩衝剤はリン酸、クエン酸、酢酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、重炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、好ましい緩衝液としてのヒスチジン、アルギニン、リジン、または酢酸塩またはそれらの混合物であり得る。好ましい緩衝液の範囲は、pH4−8、pH6.5−8、さらに好ましくはpH7−7.5である。パラ、メタ、およびオルトクレゾール、メチル−およびプロピルパラベン、フェノール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ベンジル、ソルビン酸、プロパン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステルのような保存料がこの医薬組成物中に提供され得る。アスコルビン酸、メチオニン、トリプトファン、EDTA、アスパラギン、リジン、アルギニン、グルタミンおよびグリシンのような、酸化、脱アミド、異性化、ラセミ化、環化、ペプチドの加水分解を防ぐ安定剤がこの医薬組成物中に提供され得る。ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリンのような、凝集、繊維形成および沈殿を防ぐ安定剤がこの医薬組成物中に提供され得る。エタノール、酢酸または酢酸塩およびそれらの塩のような可溶化のための、または凝集を防ぐための有機修飾剤がこの医薬組成物中に提供され得る。塩、例えば塩化ナトリウム、または最も好ましい炭水化物、例えばデキストロース、マンニトール、乳糖、トレハロース、ショ糖またはそれらの混合物のような等張性供給物(isotonicity makers)がこの医薬組成物中に提供され得る。
【0159】
Tween 20、Tween 80、SDS、ポロクサマー、例えばプルロニックF−68、プルロニックF−127のような界面活性剤がこの医薬組成物中に提供され得る。色素および香味料までもがこの医薬組成物中に提供され得る。他の態様において、GLP−2ペプチド類似体の医薬的に許容される酸付加塩が提供される。懸濁剤が使用され得る。エタノール、第3級ブタノール、2−プロパノール、エタノール、グリセロール、ポリエチレングリコールのような有機修飾剤が、凍結乾燥製品の凍結乾燥のための薬理的処方において提供され得る。増量剤、および塩、例えば塩化ナトリウム、炭水化物、例えばデキストロース、マンニトール、乳糖、トレハロース、ショ糖またはそれらの混合物、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン酸塩のような等張性供給物(isotonicity makers)、またはシステイン、レシチンまたはヒト血清アルブミン、またはそれらの混合物のような賦形剤が、凍結乾燥のためにこの医薬組成物中に提供され得る。
【0160】
本発明の医薬組成物は経口投与のための錠剤、カプセル剤またはエリキシル剤、直腸投与のための坐薬、注射投与のための好ましくは無菌溶液、無菌粉末または懸濁液等として処方されかつ使用され得る。投与の用量および方法は最適な効率を達成するため調整できるが、体重、食餌、併用される薬剤、およびその他の要素としての、医学当業者が認識し得るこれらの要素に依存し得る。
【0161】
投与が静脈内投与および皮下投与のように非経口で、例えば毎日投与される際、注射用医薬組成物は従来の形、水溶液または懸濁液のいずれか、凍結乾燥剤、使用直前の再構成または注射に先立つ液体への懸濁に適切な固形剤、または乳剤として調整できる。
【0162】
凍結乾燥製品の再構成のための希釈液は上記のリストからの適切な緩衝液、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、乳糖、トレハロース、ショ糖、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩、またはTween 20、Tween 80、ポロクサマー、例えばプルロニックF−68またはプルロニックF−127のような界面活性剤、ポリエチレングリコール、および/またはパラ、メタ、およびオルトクレゾール、メチル−およびプロピルパラベン、フェノール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ベンジル、ソルビン酸、プロパン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステルのような保存料、および/またはエタノール、酢酸、クエン酸、乳酸またはそれらの塩のような有機修飾剤を加えた注射用の水であり得る。
【0163】
さらに、所望されれば、この注射用医薬組成物は湿潤剤、またはpH緩衝剤のような無毒の補助物質を微量含み得る。吸収促進製剤(例えば、リポソーム、界面活性剤および有機酸)が利用され得る。
【0164】
本発明の1つの態様において、この化合物は、例えば完全非経口栄養を受けている患者(例えば新生児、または悪液質または食欲不振を患う患者)に液体栄養補助剤として使用する際の点滴による投与のため、または例えば皮下、腹腔内、または静脈内への注射による投与のために処方され、従って無菌で発熱物質を含まない形の、かつ生理的に許容されるpH、例えばわずかに酸性または生理的pHに適宜緩衝された水溶液として利用される。筋肉内投与のための処方は溶液、または植物油、例えばキャノーラ油、コーン油、または大豆油への懸濁液に基づき得る。これらの油を基礎とした処方は、抗酸化物質例えばBHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)およびBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)により安定化され得る。
【0165】
従って、本ペプチド化合物は蒸留水または生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、5%デキストロース溶液または油のような溶媒において投与され得る。GLP−2類似体の溶解度は、所望されれば界面活性剤および乳化剤のような溶解度賦活薬の取り込みにより増強され得る。
【0166】
GLP−2類似体の作用が望まれる場で緩慢に放出されるように、注射液に水性の担体または溶媒を、GLP−2類似体を注射部位またはそれに近い部位に蓄えるために役立つ量のゼラチンと共に補うことができる。ヒアルロン酸のような別のゲル化剤も持続性薬剤として有用であり得る。
【0167】
本発明の1つの態様における処方は溶液中に、a.最終濃度が0.5mMから300mM、好ましくは3から200mM、最も好ましくは20から100mMになるよう水に溶解したL−ヒスチジン、b.350mMまで、好ましくは30から300mM、最も好ましくは100mMから230mMのマンニトール、およびc.200mMまで、好ましくは0.05から100mM、最も好ましくは0.5から50mMの酢酸を含む。適切な量の治療化合物が、1から100mg/mL、好ましくは5から50mg/mL、最も好ましくは10から30mg/mLの濃度になるよう添加される。最終pHは4から8、好ましくは6.5から7.5、最も好ましくは6.7から7.3に調整される。得られた溶液は目的の重量に調節され、滅菌フィルターを通した後、薬剤としての使用のためバイアル中に適切な分量で分注される。この処方は更に、液体製品または凍結乾燥製品へと加工される。
【0168】
本発明の別の態様における処方は溶液中に、a.最終濃度が0.5mMから300mM、好ましくは3から200mM、最も好ましくは20から100mMのL−ヒスチジンになるよう水に溶解したL−ヒスチジン、b.200mMまで、好ましくは0.5から100mM、最も好ましくは5mMから50mMのL−アルギニン、c.350mMまで、好ましくは30から300mM、最も好ましくは100から230mMのマンニトール、およびd.200mMまで、好ましくは0.05から100mM、最も好ましくは0.5から50mMの酢酸を含む。適切な量の治療化合物が、1から100mg/mL、好ましくは5から50mg/mL、最も好ましくは10から30mg/mLの濃度になるよう添加される。最終pHは4から8、好ましくは6.5から7.5、最も好ましくは6.7から7.3に調整される。得られた溶液は目的の重量に調節され、滅菌フィルターを通した後、薬剤としての使用のためバイアル中に適切な分量で分注される。この処方は更に、液体製品または凍結乾燥製品へと加工される。
【0169】
さらに本発明の別の態様における処方は溶液中に、a.最終濃度が200mMまで、好ましくは3から100mM、最も好ましくは5から50mMのL−ヒスチジンになるよう水に溶解したL−ヒスチジン、b.200mMまで、好ましくは0.5から100mM、最も好ましくは5mMから50mMのL−アルギニン、c.350mMまで、好ましくは30から300mM、最も好ましくは100から230mMのマンニトール、およびd.200mMまで、好ましくは0.05から100mM、最も好ましくは0.5から50mMの酢酸を含む。
【0170】
適切な量の治療化合物が、1から100mg/mL、好ましくは5から50mg/mL、最も好ましくは10から30mg/mLの濃度になるよう添加される。
【0171】
最終pHは4から8、好ましくは6.5から7.5、最も好ましくは6.7から7.3に調整される。得られた溶液は目的の重量に調節され、滅菌フィルターを通した後、薬剤としての使用のためバイアル中に適切な分量で分注される。この処方は更に、液体製品または凍結乾燥製品へと加工される。
【0172】
尚、さらに本発明の別の態様における処方は溶液中に、a.最終濃度が.0.5から300mMまで、好ましくは3から200mM、最も好ましくは20から100mMのL−ヒスチジンになるよう水に溶解したL−ヒスチジン、b.200mMまで、好ましくは0.5から100mM、最も好ましくは5mMから50mMのL−アルギニン、c.350mMまで、好ましくは30から300mM、最も好ましくは100から230mMのマンニトール、およびd.200mMまで、好ましくは0.05から100mM、最も好ましくは0.5から50mMの酢酸を含む。
【0173】
適切な量の治療化合物が、1から100mg/mL、好ましくは5から50mg/mL、最も好ましくは10から30mg/mLの濃度になるよう添加される。
【0174】
最終pHは4から8、好ましくは6.5から7.5、最も好ましくは6.7から7.3に調整される。得られた溶液は目的の重量に調節され、滅菌フィルターを通した後、薬剤としての使用のためバイアル中に適切な分量で分注される。この処方は更に、液体製品または凍結乾燥製品へと加工される。
【0175】
尚、さらに本発明の別の態様における処方は溶液中に、a.最終濃度が200mMまで、好ましくは3から100mM、最も好ましくは5から50mMのL−ヒスチジンになるよう水に溶解したL−ヒスチジン、b.200mMまで、好ましくは0.5から100mM、最も好ましくは5mMから50mMのL−アルギニン、c.350mMまで、好ましくは30から300mM、最も好ましくは100から230mMのマンニトール、およびd.200mMまで、好ましくは0.05から100mM、最も好ましくは0.5から50mMの酢酸を含む。
【0176】
適切な量の治療化合物が、1から100mg/mL、好ましくは5から50mg/mL、最も好ましくは10から30mg/mLの濃度になるよう添加される。
【0177】
最終pHは4から8、好ましくは6.5から7.5、最も好ましくは6.7から7.3に調整される。得られた溶液は目的の重量に調節され、滅菌フィルターを通した後、薬剤としての使用のためバイアル中に適切な分量で分注される。この処方は更に、液体製品または凍結乾燥製品へと加工される。
【0178】
尚、さらに本発明の別の態様において処方は、a.最終濃度が200mMまで、好ましくは0.5から100mM、最も好ましくは5から50mMのL−ヒスチジンになるよう水に溶解したN−アセテート、b.350mMまで、好ましくは30から300mM、最も好ましくは100から230mMのマンニトールを含む。
【0179】
適切な量の治療化合物が、1から100mg/mL、好ましくは5から50mg/mL、最も好ましくは10から30mg/mLの濃度になるよう添加される。
【0180】
最終pHは4から8、好ましくは6.5から7.5、最も好ましくは6.7から7.3に調整される。得られた溶液は目的の重量に調節され、滅菌フィルターを通した後、薬剤としての使用のためバイアル中に適切な分量で分注される。この処方は更に、液体製品または凍結乾燥製品へと加工される。
【0181】
本発明のGLP−2類似体はまた、GLP−2ペプチド類似体の延長性かつ持続性の投与のための徐放注入手段として処方され得る。このような持続放出処方は、身体の外部に置くパッチの形であり得る。持続放出処方の例は、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、シアル酸、ケイ酸塩、コラーゲン、リポソーム等のような生体適合性ポリマーの複合体を含む。持続放出処方は、本発明のGLP−2類似体の高い局所濃度の提供が望まれる際に特に関心が持たれ得る。
【0182】
このGLP−2類似体は、腸栄養性(intestinotrophic)の量のペプチドを、単位用量または複数回用量のいずれかで含む無菌充填バイアルまたはアンプルの形で利用され得る。このバイアルまたはアンプルは、GLP−2類似体および望ましい担体を直ちに投与できる処方で含み得る。また、このバイアルまたはアンプルは、GLP−2ペプチドを滅菌水またはリン酸緩衝食塩水のような適切な担体中で再構成するために適切な、凍結乾燥型のような形で含み得る。
【0183】
GLP−2類似体は、注射用処方の代替物としての他経路による投与のために処方され得る。錠剤、カプセル剤等のような経口製剤は、標準的な製薬業務に従い処方できる。本発明によると、GLP−2類似体は小腸組織の増殖が有益である個体の治療のために投与される。
【0184】
経鼻製剤は、キトサンまたはTween 20、Tween 80、ポロクサマー、例えばプルロニックF−68またはプルロニックF−127、Brij 35、Brij 72、クレモフォールEL等の界面活性剤のような賦活薬の添加により処方できる。
【0185】
本発明のペプチド化合物は単独、または抗炎症作用を有する化合物と組み合わせて使用され得る。理論には制約されず、このような組み合わせの治療は本ペプチド類似体の有益な治療効果を強化するであろうことが想像される。
【0186】
言うまでもなく、患者を治療するための最も適切な投与量および投与計画は、治療されるべき疾患および状態、および患者の体重およびその他のパラメーターにより異なる。特定の理論による制約を意図せず、μg/kg範囲における投与量、および比較的短いか長い期間または治療頻度は、特に小腸質量の統計的に有意な増大のように治療上有用な結果を生み出し得ることが期待される。幾つかの例において、治療上の投与計画は最初の治療の休止に続いて起こる組織退縮を防ぐための維持量の投与を含み得る。本発明により得られる結果によりヒトへの使用における最も適切な投与量の規模および投与計画が導かれ得て、かつ適切に計画された治験により確認され得る。
【0187】
効果的な量および治療プロトコルは、実験動物において低用量から開始し、その効果をモニターしながら用量を増やしていき、同様に投与計画も系統的に変化させるという従来の方法により決定され得る。所定の患者に対する最適な投与量を決定する際には医師により多数の要素が考慮され得る。このような考慮は熟練者に公知である。本発明によるGLP−2ペプチドのヒトに対する量は、1つの態様において約10μg/kg体重/日から約10mg/kg/日、好ましくは約50μg/kg/日から約5mg/kg/日、および最も好ましくは約100μg/kg/日から1mg/kg/日であり得る。
【0188】
医学的状態
本発明のペプチドは、ここに述べられた効果的な量のGLP−2類似体またはその塩の投与による、食道の上部消化管を含む胃−腸関連疾患を患う個体の予防および治療のための薬剤として有用である。胃および腸関連疾患は、いずれの病因にもよる潰瘍(例えば、消化性潰瘍、ゾリンジャー・エリソン症候群、薬物誘導性潰瘍、感染またはその他の病原体に関連する潰瘍)、消化疾患、吸収不良症候群、短腸症候群、カルデサック症候群(cul−de−sac syndrome)、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性結腸炎)、セリアックスプルー(例えばグルテン誘導性腸疾患またはセリアック病)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症スプルー、および化学療法および/または放射線血液療法誘導性の粘膜炎および下痢を含む。
【0189】
胃腸粘膜新生物、または胃腸粘膜新生物の増大したリスクを有する患者にとって、胃腸粘膜新生物の刺激または悪化のような副作用のリスクを減少または抑止するための化合物の選択が望まれ得る。例えば、結腸新生物(良性または悪性にかかわらず)、または結腸新生物発生のリスクを有する患者を治療する化合物を選択する際、非選択性化合物または小腸より結腸に選択性のある化合物よりも、結腸より小腸に選択性のある化合物を選択することがより適切であり得る。
【0190】
一般には上で述べたように、増大した小腸質量、および結果としてのおよび/または維持されている正常な小腸粘膜構造および機能が有益である個体は、本GLP−2類似体による治療の候補である。GLP−2類似体により治療され得る特定の状態は、熱からアルファグリアジンへの有毒反応に起因し、グルテン誘導性腸疾患またはセリアック病の結果となり得て、かつ小腸絨毛の有意な減少により特徴付けられるセリアックスプルー、感染に起因し、絨毛の部分的な平坦化により特徴付けられる熱帯性スプルー、一般的な可変性の免疫不全または低ガンマグロブリン血症の患者に一般的に見られ、絨毛の高さの有意な減少により特徴付けられる低ガンマグロブリン血症スプルーを含む様々な形のスプルーを含む。GLP−2類似体による治療の治療的有効性は、絨毛の形態を調べるための腸内生検、栄養吸収の生化学的評価、腸透過性の非侵襲的な決定、患者の体重増加、またはこれらの状態に付随する症状の寛解によりモニターされ得る。本発明のGLP−2類似体は、いずれの病因にもよる潰瘍(例えば、消化性潰瘍、ゾリンジャー・エリソン症候群、薬物誘導性潰瘍、感染またはその他の病原体に関連する潰瘍)を含む胃関連疾患の予防または治療のための薬剤として有用であり得る。
【0191】
それに加えて本発明のGLP−2類似体により治療され得るその他の状態、またはGLP−2類似体が予防的に有用である状態は、前記の放射線性腸炎、感染性または後感染性腸炎、および癌化学療法剤または有毒剤による小腸損傷を含む。
【0192】
GLP−2類似体はまた、栄養障害、例えば悪液質および食欲不振の治療に使用され得る。
【0193】
本発明の特定の態様は、本ペプチドを腸損傷および機能不全の予防および/または治療のために使用することに関わる。小腸粘膜の幹細胞はその増殖の割合が速いため、化学療法による細胞傷害性効果に影響されやすい(Keefe et al.,Gut 2000;47:632−7)。本GLP−2ペプチドアゴニストの投与は小腸陰窩における栄養効果を増強し、かつ化学療法および/または放射線療法により損傷された腸上皮と置き換えるための新しい細胞を迅速に供給する。本ペプチド投与により達成される最終的な目標は、化学療法を受けている患者の胃腸損傷に関わる罹患率を減少させ、より侵襲的な化学療法、放射線および化学療法と放射線療法の組み合わせへの耐性を増大させることである。本発明に従い、併用される予防的または治療的処置が、放射線療法を受けているか、または受けようとしている患者に提供され得る。
【0194】
抗癌化学療法の後に起こる胃腸粘膜炎は次第に寛解するものの、一旦起こると基本的には治療できないことからますます問題となっている。一般に使用されている細胞増殖抑制性の癌治療剤5−FUおよびイリノテカンを用いて行われた研究により、これらの薬剤による効果的な化学療法は主に小腸の完全な構造および機能に影響を与えるが、結腸への影響は少なく、主に粘液形成の増大として反応することが示された(Gibson et al.,J Gastroenterol Hepatol.18(9):1095−1100,2003;Tamaki et al.,J lnt Med Res.31(1):6−16,2003)。この潜在的に重要な治療応用は、5−FU、アルトレタミン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クリサンタスペース(Crisantaspase)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、リポソーマルドキソルビシン、ロイコボリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ストレプトゾシン、テガフール−ウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン(Tioguanine/Thioguanine)、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クリサンタスペース(Crisantaspase)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、リポソーマルドキソルビシン、ロイコボリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ストレプトゾシン、テガフール−ウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン(Tioguanine/Thioguanine)、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンのような現在使用されている化学療法剤に応用し得るが、これらに限定されない。
【0195】
本ペプチドは、効果的な量のGLP−2類似体またはその塩の投与による新生児を治療するための方法に使用され得ることが想定される。未発達な腸が原因の、摂食により起こる新生児の合併症は本ペプチドアゴニストの使用によって克服され得る。
【0196】
別の態様において、本発明は患者の必要に応じた効果的な量のGLP−2類似体またはその塩を投与することにより、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)により媒介される状態を治療する方法について述べる。このような疾患はDPP−IV酵素が過剰発現された状態を含む。
【0197】
上に述べたように1つの態様において、この医薬組成物は前記のGLP−2類似体またはその塩またはその誘導体が徐放されるように処方され得る。
【0198】
本ペプチドは、効果的な量のGLP−2類似体またはその塩の投与により新生児を治療するための方法に使用され得ることが想定される。未発達な腸のために、摂食により起こる新生児の合併症は本ペプチドアゴニストの使用により克服され得る。
【0199】
別の態様において、本発明は患者の必要に応じた効果的な量のGLP−2類似体またはその塩を投与することにより、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)により媒介される状態を治療する方法について述べる。このような疾患はDPP−IV酵素が過剰発現された状態を含む。
【実施例】
【0200】
以下の実施例は本発明の好ましい局面を例証するために提供され、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0201】
一般的なペプチド合成
装置および合成ストラテジー
ペプチドは、側鎖官能性のためのN−α−アミノ保護基としての9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)および適切な一般保護基を用いた濾過のためのポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器中でバッチ式に合成された。
【0202】
溶媒
溶媒のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド、Riedel de−Haen、ドイツ)は強力な陽イオン交換樹脂を充填したカラム(Lewatit S 100MB/H強酸、バイエルAG Leverkusen、ドイツ)を通して精製し、遊離アミンについては、遊離アミンが存在すると黄色(Dhbt−O−アニオン)を呈する3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(Dhbt−OH)の添加によって使用前に分析した。溶媒のDCM(ジクロロメタン、分析グレード、Riedel de−Haen、ドイツ)は、精製せず直接使用した。アセトニトリル(HPLC−グレード、Lab−Scan、ダブリン、アイルランド)は、精製せず直接使用した。
【0203】
アミノ酸
Fmoc−保護アミノ酸は側鎖が保護された適切な形でAdvanced ChemTech(ACT)より購入した。
【0204】
共役試薬
共役試薬のジイソプロピルカルボジイミド(DIG)は、Riedel de−Haen、ドイツ、から購入した。
【0205】
固体支持体
ペプチドは0.22−0.31mmol/gのTentaGel S樹脂上で合成した。TentaGel S−Ram、TentaGel S RAM−Lys(Boc)Fmoc(Rapp polymere、ドイツ)はC−末端がアミド化されたペプチドが好ましい場合に使用したが、TentaGel S PHB、TentaGel S PHB Lys(Boc)FmocはC−末端が遊離カルボン酸であることが好ましい場合に使用した。
【0206】
触媒およびその他の試薬
ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)はAldrich、ドイツから、ピペリジンおよびピリジンはRiedel−de Haen、フランクフルト、ドイツから、エタンジチオールはRiedel−de Haen、フランクフルト、ドイツから購入した。3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(Dhbt−OH)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(HOAt)はFluka、スイスから入手した。無水酢酸はFlukaから入手した。
【0207】
共役方法
アミノ酸は、in situで産生されたHOBtまたはHOAtエステルとして共役され、DMF中でDICを用い、適切なN−α−保護アミノ酸およびHOBtまたはHOAtから作られた。
【0208】
N−α−アミノ保護基(Fmoc)の脱保護
Fmoc基の脱保護は、DMF中での20%ピペリジンによる処理(1x5および1x10分)、続くDMFによる洗浄(5x15ml、各5分)により行った。洗浄はDMF廃液中にDhbt−OHを加えた後、黄色が検出されなくなるまで行った。
【0209】
HOBt−エステルの共役
3当量のN−α−保護アミノ酸を3当量のHOBtおよび3当量のDICと共にDMFに溶解し、次いで樹脂に加えた。
【0210】
酸によるペプチドの樹脂からの切断
ペプチドは、95%トリフルオロ酢酸(TFA、Riedel−de Haen、フランクフルト、ドイツ)水v/vまたは95%TFAおよび5%エタンジチオールv/vにより室温で2時間処理し、樹脂から切断した。濾過した樹脂は95%TFA水で洗浄し、濾過物および洗浄液は減圧下で蒸発させた。残渣はエーテルで洗浄し、酢酸水から凍結乾燥した。未精製の凍結乾燥物は高速液体クロマトグラフィーにより分析し、マススペクトロメトリー(MS)により同定した。
【0211】
TentaGel樹脂(PEG−PS)上におけるバッチ式ペプチド合成
TentaGel樹脂(1g、0.23−0.24mmol/g)を、濾過のためのポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器中に配置した。樹脂はDMF(15ml)中で膨潤させ、リンカーTentaGel S RAM上、または樹脂TentaGel S RAM−Lys(Boc)Fmoc上の最初のアミノ酸上のいずれかに存在する最初のFmoc基を除去するため、DMF中の20%ピペリジンで処理した。樹脂を排出し、DMF廃液中にDhbt−OHを加えた後黄色が検出されなくなるまで、DMFにより洗浄した。配列に従ったアミノ酸は、上に述べたように予めFmoc保護されたHOBtエステル(3当量)として共役させた。共役は他に記載のない限り2時間継続した。樹脂を排出し、過剰の試薬を除くためにDMFで洗浄した(5x15ml、各5分)。全てのアシル化は、上に述べたようにニンヒドリン試験によって調べた。合成が完了した後、ペプチド−樹脂はDMF(3x15ml、各5分)、DCM(3x15ml、各1分)および最後にジエチルエーテル(3x15ml、各1分)で洗浄し、真空乾燥した。ペプチドは先に述べたように樹脂から切断し、未精製のペプチド産物は以下に述べるように分析、および精製した。
【0212】
HPLCの条件
勾配HPLC分析は、HP 1100 Quaternaryポンプ、HP 1100オートサンプラー、HP 1100カラムサーモスタット、およびHP 1100多波長検出器から成る、Hewlett Packard HP 1100 HPLCシステムを用いて行った。機器の制御およびデータの取得には、LCソフトウェア(rev. A.06.01)のためのHewlett Packard Chemstationを使用した。以下のカラムおよびHPLCバッファーシステムを使用した。
【0213】
カラム:VYDAC 238TP5415、C−18、5mm、300Å 150x4.6mm
緩衝液:A:MQV中の0.1%TFA;B:0.085%TFA、10%MQV、90%MeCN
勾配:0−1.5分 0%B
1.5−25分 50%B
25−30分 100%B
30−35分 100%B
35−40分 0%B
フロー 1ml/分、乾燥温度40℃、UV検出:I=215nm
【0214】
未精製ペプチドのHPLC精製
未精製のペプチド産物はPerSeptive Biosystems VISION Workstationにて精製した。機器の制御およびデータの取得には、VISION 3.0ソフトウェアを使用した。以下のカラムおよびHPLCバッファーシステムを使用した。
カラム:Kromasil KR 100Å、10mm C−8、250x50.8mm
バッファーシステム:緩衝液:A:MQV中の0.1%TFA;B:0.085%TFA、10%MQV、90%MeCN
勾配:0−37分 0−40%B
フロー 35ml/分、UV検出:I=215nmおよび280nm
【0215】
質量分析法
ペプチドは、1ないし10mg/mlの濃度になるよう、super gradientメタノール(Labscan、ダブリン、アイルランド)、ミリQ水(Millipore、ベッドフォード、マサチューセッツ)、およびギ酸(Merck、ダルムシュタット、ドイツ)(50:50:0.1v/v/v)に溶解した。ペプチド溶液(20ml)はLCT質量分析計(Micromass,Manchester,UK)を用いたESI−TOF−MSによる陽極性モードで、+/−0.1m/zの精度にて分析した。
【0216】
一般的合成方法
全ての合成において、乾燥TentaGel−S−Ram樹脂(1g、0.22−0.31mmol/g)は濾過のためのポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器中に配置した。樹脂はDMF(15ml)中で膨潤させ、樹脂上のプロトン化していないアミノ基の存在を確保するためDMF中の20%ピペリジンで処理した。樹脂を排出し、DMF廃液中にDhbt−OHを加えた後黄色が検出されなくなるまで、DMFにより洗浄した。配列に従ったアミノ酸は、上に述べたように予めFmoc保護されたHOBtエステル(3当量)として共役させた。共役は他に記載のない限り2時間継続した。樹脂を排出し、過剰の試薬を除くためにDMFで洗浄した(5x15ml、各5分)。全てのアシル化は、ニンヒドリン試験を80℃で行なうことにより調べた。合成が完了した後、ペプチド−樹脂はDMF(3x15ml、各5分)、DCM(3x15ml、各1分)および最後にジエチルエーテル(3x15ml、各1分)で洗浄し、真空乾燥した。その後ペプチドは上に述べたように樹脂から切断し、凍結乾燥した。
【0217】
上に述べたように、調製用HPLCを用いた精製の後ペプチド産物を回収し、ペプチドの同一性をES−MSにより確認した。この方法は、以下においてさらに例証される全てのペプチドの合成に使用した。
【0218】
合成された化合物
上記の手法を用いて、1809から1861までの化合物およびリファレンス化合物1559(H−[Gly2]hGLP−2−OH)を上に述べた方法により合成した(表1)。
【0219】
【表3】

【0220】
実施例1.化合物2264の合成
TentaGel S RAM上の、
H−His−Gly−Glu−Gly−Ser−Phe−Ser−Asp−Glu−Leu−Ala−Thr−Ile−Leu−Glu−Ala−Leu−Ala−Ala−Ala−Asp−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Ile−Ala−Thr−Lys−Ile−Thr−Asp−NH2
【0221】
乾燥TentaGel S RAM(0.2mmol/g、1g)を濾過のためのポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器中に配置し、「TentaGel樹脂上のバッチ式ペプチド合成」として記述したように、N−末端のヒスチジンの共役が終了するまで処理した。全ての共役はオーバーナイトで継続した。アシル化は先に述べたように調べた。合成およびN−末端のFmoc基の脱保護が完了した後、ペプチドを上に述べたように樹脂から切断した。先に述べたように調整用HPLCを用いて精製した後、413mgのペプチド産物を93%を超える純度で回収し、ペプチドの同一性をMS(実測M 3488.13、算出M 3487.79)により確認した。
【0222】
実施例2.化合物2268の合成
TentaGel S RAM上の、
H−His−Gly−Glu−Gly−Ser−Phe−Ser−Asp−Glu−Leu−Ala−Thr−Ile−Leu−Glu−Ala−Leu−Ala−Ala−Ser−Asp−Phe−Ile−Ser−Trp−Leu−Ile−Ser−Thr−Lys−Ile−Thr−Asp−NH2
【0223】
乾燥TentaGel S RAM(0.2mmol/g、1 g)を濾過のためのポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器中に配置し、「TentaGel樹脂上のバッチ式ペプチド合成」として記述したように、N−末端のヒスチジンの共役が終了するまで処理した。全ての共役はオーバーナイトで継続した。アシル化は先に述べたように調べた。合成およびN−末端のFmoc基の脱保護が完了した後、ペプチドを上に述べたように樹脂から切断した。先に述べたように調整用HPLCを用いて精製した後、132 mgのペプチド産物を91%を超える純度で回収し、ペプチドの同一性をMS(実測M 3535.88、算出M 3535.77)により確認した。
【0224】
実施例3.化合物2264(Lys6)の合成
TentaGel S RAM−Lys(Boc)−Fmoc上の、
H−His−Gly−Glu−Gly−Ser−Phe−Ser−Asp−Glu−Leu−Ala−Thr−Ile−Leu−Glu−Ala−Leu−Ala−Ala−Ala−Asp−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Ile−Ala−Thr−Lys−Ile−Thr−Asp−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys NH2
【0225】
乾燥TentaGel S RAM−Lys(Boc)−Fmoc(0.24mmol/g、1g)を濾過のためのポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器中に配置し、「TentaGel樹脂上のバッチ式ペプチド合成」として記述したように、N−末端のヒスチジンの共役が終了するまで処理した。全ての共役はオーバーナイトで継続した。アシル化は先に述べたように調べた。合成およびN−末端のFmoc基の脱保護が完了した後、ペプチドを上に述べたように樹脂から切断した。先に述べたように調整用HPLCを用いて精製した後、ペプチド産物を90%を超える純度で回収し、ペプチドの同一性をMS(実測M 4256.40、算出M 4256.36)により確認した。
【0226】
実施例4. 化合物2268(Lys6)の合成
TentaGel S RAM−Lys(Boc)−Fmoc上の、
H−His−Gly−Glu−Gly−Ser−Phe−Ser−Asp−Glu−Leu−Ala−Thr−Ile−Leu−Glu−Ala−Leu−Ala−Ala−Ser−Asp−Phe−Ile−Ser−Trp−Leu−Ile−Ser−Thr−Lys−Ile−Thr−Asp−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys NH2
【0227】
乾燥TentaGel S RAM−Lys(Boc)−Fmoc(0.24mmol/g、1g)を濾過のためのポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器中に配置し、「TentaGel樹脂上のバッチ式ペプチド合成」として記述したように、N−末端のヒスチジンの共役が終了するまで処理した。全ての共役はオーバーナイトで継続した。アシル化は先に述べたように調べた。合成およびN−末端のFmoc基の脱保護が完了した後、ペプチドを上に述べたように樹脂から切断した。先に述べたように調整用HPLCを用いて精製した後、ペプチド産物を90%を超える純度で回収し、ペプチドの同一性をMS(実測M 4304.10、算出M 4304.34)により確認した。
【0228】
実施例5. 化合物2264 A(酢酸塩)の合成
トリフルオロ酢酸塩から化合物2264の酢酸塩への対イオン交換。未精製の合成ペプチド産物の精製に使用したHPLC緩衝液中に存在するトリフルオロ酢酸(0.1% v/v)により、化合物2264の精製合成ペプチド産物をトリフルオロ酢酸塩として分離した。
【0229】
トリフルオロ酢酸塩を酢酸塩に対イオン交換するため、ペプチド溶液を酢酸塩型の強塩基イオン交換樹脂を充填したカラム(Dowex 1x8)に通した。化合物2264Tを水に溶解した。この溶液を酢酸塩型の強塩基イオン交換樹脂を充填したカラム(Dowex 1x8、容量1.33meq/ml樹脂)に通した。樹脂を水で洗浄し、溶出液を集め、純度が90%を超える酢酸塩になるよう凍結乾燥した。
【0230】
実施例6.化合物2264C(塩化物)の合成
トリフルオロ酢酸塩(Tfa)から化合物2264Cの塩化物(Cl−)への対イオン交換。化合物2264Tを0.1Mの塩酸に溶解し、その溶解液を凍結乾燥した。その残留物(remanence)を水に溶解し、純度が90%を超える塩化物になるよう再び凍結乾燥した。
【0231】
さらなる選択的GLP−2類似化合物を表2に示す。
【表4A】

【0232】
【表4B】

【0233】
【表4C】

【0234】
実施例7.相対的化学安定性試験
表3に示した化合物を名目上濃度(nominal concentration)が0.5mMになるように0.1M HClに溶解した。サンプルは遮光下、40℃で7日間インキュベートした後、名目上濃度(nominal concentration)が0.2mg/mLになるよう希釈した。主要ピークの回収率をRP−HPLCにより分析し、主要ピークの質量による同一性の確認をLC−MSにより分析した。化合物は0.2mg/mLの名目上濃度(nominal concentration)において、ミリQ水およびMeCN中の0.1%TFAの移動相と共に、3μm、110Å、3x150mmのPhenomenex Gemini C18カラム上で、39分を超える25%から48%MeCNの段階的な実行によるRP−HPLCおよびLC−MSにより分析した。流速は0.400mL/minであった。カラム乾燥温度は50℃、オートサンプラー温度は4℃であり、UV検出は220nmにおいて測定した。
【0235】
純度の回収率の結果を表3に示す。
【0236】
【表5】

分析用RP−HPLCでの洗浄相における溶出。実施例7に示した改変した分析用RP−HPLC法による反復データ。
【0237】
この分析法により4つの化合物(ZP2264、ZP2267、ZP2268およびZP2272)が後に洗浄相から溶出され、この4つの化合物について以下に述べる改変された方法による実験が反復して行われた。
【0238】
実施例8.相対的化学安定性試験
表4に示した化合物を名目上濃度(nominal concentration)が0.25mMになるように0.1M HClに溶解した。サンプルは遮光下、40℃で2日間インキュベートした後、名目上濃度(nominal concentration)が0.2mg/mLになるよう希釈した。主要ピークの回収率をRP−HPLCにより分析した。化合物は0.2mg/mLの名目上濃度(nominal concentration)において、ミリQ水およびMeCN中の0.1% TFAの移動相と共に、3μm、110Å、3x150mmのPhenomenex Gemini C18カラム上で、39分を超える25%から80%MeCNの段階的な実行によるRP−HPLCおよびLC−MSにより分析した。流速は0.400mL/minであった。カラム乾燥温度は50℃、オートサンプラー温度は4℃であり、UV検出は220nmにおいて測定した。
【0239】
純度の回収率の結果を表4に示す。
【0240】
【表6】

【0241】
実施例9.GLP−2類似体の、BHK−21細胞に遺伝子組み換え的に発現されたGLP−2レセプターに対するアゴニズムのin vitroスクリーニング
スクリーニングはGLP−2レセプターおよびCRE−ルシフェラーゼレポーター遺伝子コンストラクトを一過性にトランスフェクトしたBHK−21細胞を用いて行なった。用量反応曲線およびEC50値は10fMから10nMまでの7濃度および各濃度につき3点を用いて決定した。全ての試験プレートにコントロールペプチドを使用した。
)この試験はAMRI(ブダペスト、ハンガリー)により行なわれた。
【0242】
材料および方法
使用した材料および細胞:
NuncまたはGreiner 組織培養フラスコ
NuncまたはGreiner 10cm TC ペトリ皿(Nunc 172931)
NuncまたはGreiner 娘プレート(daughter plates)用96−ウェルプレート(Nunc 167008)
BHK−21(C13)細胞
白 96−ウェルプレート(PerkinElmer 6005680)希釈用深底ウェルプレート(Nunc 278752)
グラスゴー MEM(Sigma G5154)
フェノールレッド非含有 DMEM(Invitrogen/Gibco 31053−028)
ウシ胎血清(FCS、Invitrogen/Gibco Zealandバッチ)
非必須アミノ酸(100x)(Invitrogen/Gibco 11140−035)
20OmM グルタミン(100x)(Invitrogen/Gibco 25030−024)
ペニシリン/ストレプトマイシン(100x)(Invitrogen/Gibco 15140−122)
ピルビン酸ナトリウム(100x)(Invitrogen/Gibco 11360−039)
D−PBS(Invitrogen/Gibco 14190−094)
1xトリプシン−EDTA溶液(Invitrogen/Gibco 25300−054)
【0243】
Opti−MEM(Invitrogen/Gibco 31985−047)
リポフェクタミン 2000(Invitrogen 11668−027)
CRE−luc ベクター(Zealand バッチ)
hGLP2R ベクター(Zealand バッチ)
10%(w/v)無菌BSA添加DMEM(Sigma 05488)
1OmM(20Ox)IBMX添加DMEM(Sigma I5879)
LucLite キット(Perkin Elmer 6016911)
Topseal−A(Perkin Elmer 6005185)
【0244】
培地および緩衝液
BHK−21(C13)細胞用増殖培地:
グラスゴーMEM+2mMグルタミン(1:100)+10%FCS+1% 非必須アミノ酸+1%ペニシリン/ストレプトマイシン+1mMピルビン酸ナトリウム(1:100).
【0245】
BHK−21(C13)細胞用の抗生剤非含有トランスフェクション培地:
グラスゴーMEM+2mMグルタミン(1:100)+1%非必須アミノ酸+1mMピルビン酸ナトリウム(1:100)
【0246】
BHK−21(C13)細胞用の後トランスフェクション培地:
グラスゴーMEM+2mMグルタミン(1:100)+0.2%FCS+1%非必須アミノ酸+1%ペニシリン/ストレプトマイシン+1mMピルビン酸ナトリウム(1:100)
【0247】
コーティング溶液:
D−PBS+1%BSA
【0248】
ペプチド溶解緩衝液:
D−PBS+0.1%BSA
【0249】
刺激用緩衝液:
フェノールレッド非含有DMEM+2mMグルタミン(1:100)+50μM IBMX+0.3%BSA
【0250】
トランスフェクションしたBHK21(C13)細胞上のペプチドのスクリーニング方法
BHK−21細胞は10cm TC−ペトリ皿に撒き、70−80%の培養密度まで増殖させた。次いで、培地を無血清のトランスフェクション用培地に交換した。DNA(7.5μgのhGLP−2レセプターベクターおよび7.5μgのCRE−ルシフェラーゼベクター)およびリポフェクタミン2000をOpti MEMで希釈し組み合わせ、20−30分後に細胞に加えた。細胞は37℃、5%COのインキュベーター内で4時間インキュベート、トリプシン処理の後、96−ウェルプレートに1ウェル当たり35,000細胞を再び撒いた。細胞は導入遺伝子を発現させるため、完全増殖倍地中でオーバーナイトでインキュベートした。希釈したGLP−2類似体溶液の調整のために使用した全てのプレートは、予め1%BSAを含むリン酸緩衝食塩水で2時間コートし、オーバーナイトで乾燥させた。GLP−2類似体は250μMになるようPBS/0.1% BSAに溶解し、フェノールレッドおよび血清を含まず、ホスホジエステラーゼ阻害剤および0.3%BSAを含む培地(刺激用緩衝液)中に、10μMおよび100nMの各2段階で希釈した。その後GLP−2類似体は、10nMから10fMへと下る濃度になるよう、同刺激用緩衝液で連続的に希釈した。基線となる活性は刺激用緩衝液のみで制御した。これらの溶液は37℃になるよう予め30分間加温した。細胞は加温(37℃)した刺激用緩衝液で洗浄し、100μlの加温したペプチド希釈液およびコントロールと共に37℃、5%COにおいて5時間インキュベートした。LucLite酵素基質/溶解緩衝液はインキュベーションの終了直前に調整した。100μlのLucLite基質を各ウェルに加え、発光を適切なカウンター(例えば、Wallac Victor II)にて測定した。EC50値は、4パラメータロジスティック方程式(Microcal Origin 5.0またはGraphPad 4)を用いてフィッティングした生データに由来する。
【0251】
結果を表5に示す。
【0252】
【表7】

【0253】
結論:この結果は、試験された全ての化合物はGLP−2アゴニストであることを明白に示している。
【0254】
実施例10.in vivo試験(雄C57BLマウスにおいて決定された腸増殖刺激)
本化合物(ZP2264、ZP2266、ZP2267、ZP2268、ZP2242、ZP2269、ZP2270、ZP2272およびZP2242)の結腸質量に比し小腸質量を選択的に刺激する能力を、雄C57BLマウスにおいて決定した。マウスのそれぞれのグループ(n=6−10)に、800nmol/kgの各化合物を1日1回、3日連続で皮下投与した。比較のため、動物の他のグループに等モル量の[Gly2]GLP−2(ZP1559)、または溶媒(リン酸緩衝食塩水、pH7.4)のいずれかを同じ投薬計画にて投与した。化合物の最後の量が投与されてから24時間後にマウスを屠殺し、小腸(幽門から盲腸まで)および結腸(腸末端から盲腸まで)を空にして秤量した。
【0255】
体重(BW)のわずかな違いを補正するため、小腸(SI)および結腸の臓器質量はBWに相対的に表した。非選択性化合物である[Gly2]GLP−2については、食道、胃、小腸および結腸いずれにおいても胃腸増殖を刺激すること、およびこの化合物により誘導される増殖パターンの違いについての評価が報告されており、化合物Xの小腸−結腸感受性指数は以下のように算出される。
【0256】
(SI/Colon)x/(SI/Colon)[Gly2]GLP−2
【0257】
1.10以上の小腸−結腸感受性を有する化合物は、相対的に小腸選択性であると考えられる。
【0258】
【表8】

【0259】
【表9】

【0260】
結果
本発明による試験化合物の効果は、結腸質量に対して選択的に小腸質量を増大させるペプチドの能力に基づき決定した。リファレンス化合物[Gly2]GLP−2およびZP2264、ZP2266、ZP2267、ZP2268、ZP2242、ZP2269およびZP2272の投与後の、溶媒コントロールに対する相対的小腸質量を図1および2に示した。リファレンス化合物[Gly2]GLP−2の小腸質量の結腸質量に対する比への効果に対する試験化合物の同効果を図3および4に示した。[Gly2]GLP−2を投与された動物の結腸質量に対する小腸質量の比を100%に標準化した。リファレンス化合物[Gly2]GLP−2の小腸−結腸感受性指数に対して算出された試験化合物の同指数に基づいた、小腸選択性の試験化合物を表6に示した。[Gly2]GLP−2を投与された動物の小腸−結腸感受性指数は1に標準化した。リファレンス化合物[Gly2]GLP−2に対する試験化合物の小腸および結腸質量に対する効果を表7に示した。[Gly2]GLP−2を投与された動物の結腸質量および小腸質量を100%に標準化した。
【0261】
実施例11.in vivo試験(雄C57BLマウスにおいて決定された腸増殖刺激)
雄C57BLマウスにおいて、さらなる化合物の結腸質量に比し小腸質量を選択的に刺激する能力を決定した。1日当たり200nmol/kgの各化合物を投与すること以外は、上記実施例10と同様のプロトコルを用いた。従って、マウスのそれぞれのグループ(n=6−10)に、200nmol/kgの各化合物を1日1回、3日連続で皮下投与した。動物の他のグループに等モル量の[Gly2]GLP−2(リファレンス化合物)、または溶媒(リン酸緩衝食塩水、pH7.4;ネガティブコントロール)のいずれかを同じ投薬計画にて投与した。化合物の最後の量が投与されてから24時間後にマウスを屠殺し、胃、小腸および結腸を空にして秤量した。
【0262】
図6に示すように、本発明による化合物ZP2380、ZP2381、ZP2384、ZP2385、ZP2397、ZP2398、ZP2399、ZP2411、ZP2417、ZP2418、ZP2420、ZP2423は、結腸質量に比し小腸質量を選択的に刺激する能力を有する。
【0263】
実施例12.in vivo試験(雄C57BLマウスにおいて決定された胃増殖刺激)
本発明による試験化合物の効果は、溶媒コントロールに対して選択的に胃質量を増大させるペプチドの能力に基づき決定した。本化合物(ZP2395、ZP2396、ZP2400、ZP2412、ZP2394、およびZP2401)の結腸質量に比し胃質量を選択的に刺激する能力を、雄C57BLマウスにおいて決定した。マウスのそれぞれのグループ(n=6−10)に、200nmol/kgの各化合物を1日1回、3日連続で皮下投与した。比較のため、動物の他のグループに等モル量の[Gly2]GLP−2、または溶媒(リン酸緩衝食塩水、pH7.4)のいずれかを同じ投薬計画にて投与した。化合物の最後の量が投与されてから24時間後にマウスを屠殺し、胃および小腸(幽門から回盲部まで)を空にして秤量した。体重(BW)のわずかな違いを補正するため、胃の臓器質量はBWに相対的に表した。図7は、化合物ZP2395、ZP2396、ZP2400、ZP2412、ZP2414、ZP2416、ZP2394、およびZP2401が、結腸質量に比し胃質量を選択的に刺激する能力を有することを示している。
【0264】
幾つかのZP化合物は体重に比した胃質量を増加させたが、リファレンス化合物の[Gly2]GLP−2が胃質量を刺激することは報告されていない(図7)。[Gly2]GLP−2に比較して、ZP化合物により誘導された胃における増殖パターンの差異を評価するため、化合物Xの胃−結腸感受性指数を以下のように算出した。
【0265】
(胃/結腸)x/胃/(結腸)[Gly2]GLP−2
【0266】
1.05以上の胃/結腸感受性を有する化合物は、相対的に胃選択性であると考えられる。
【0267】
化合物ZP2267、ZP2386、ZP2404、ZP2413、ZP1415、ZP2402、ZP2403、ZP2382、ZP2266、ZP2378、ZP2414、ZP2416、ZP2424、ZP2379、ZP2269は小腸,結腸、または胃に非選択性である(図8)。
【0268】
実施例10から12において得られたデータの要約を表8に示す。
【0269】
【表10】

【0270】
GLP−2レセプターの特異性
所定のレセプターに対して基質が達成するとみられる生物学的特異性の機序は、水素結合、疎水性、静電性結合等に基づいた、基質とレセプターの間の様々な相互作用に関わる。
【0271】
我々の構造および活性の関連性についての研究の間に、GLP−2配列の位置11、16、20、24および28の残基がGLP−2レセプターの認識および結合に深く関わっていることが示された。従って、これら特定位置のアミノ酸パターンの変化によりGLP−2類似体は3つの異なったグループ、小腸−、胃−、および非特異的ペプチドに分類される。GLP−2類似体のレセプター特異性は、位置11、16、20、24および28のアミノ酸の疎水性および水素結合のポテンシャルに依存することが明らかになった。
【0272】
実施例13.小腸特異性におけるHPIの効果
小腸/結腸感受性指数により小腸選択性であるGLP−2ペプチドのHPIデータを表9に示した。
【0273】
【表11】

【0274】
データは小腸特異的GLP−2類似体の個々の位置11、16、20、24および28のHPI間隔が、位置11および16については独立して少なくとも−0.8≦HPI≦3.8または、好ましくは−0.8≦HPI≦2.8またはさらに好ましくはHPI=1.8でなければならないことを示している。
【0275】
位置20、24および28については、HPI間隔は個々の位置が独立して少なくとも−0.8≦HPI20,24,28≦1.8または好ましくは−0.8≦HPI20≦1.8およびさらに好ましくはHPI24,28=−0.8でなければならない。
【0276】
HPI間隔により小腸選択性ペプチドの可能性のあるアミノ酸置換パターンを表10に示した。
【0277】
【表12】

【0278】
従って、X11、X16、X20、X24およびX28は独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。特に、X11およびX16はそれぞれ独立してAlaまたはSer、かつX20、X24およびX28は独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。例えば、X11およびX16は両者ともAlaであり得て、かつX20、X24およびX28は独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。
【0279】
実施例14.胃特異性におけるHPIの効果
胃/小腸感受性指数により胃特異的であるGLP−2ペプチドのHPIデータを表11に示した。
【0280】
【表13】

【0281】
データは胃特異的GLP−2類似体の個々の位置11、16、20、24および28のHPI間隔が、位置11および16については独立して少なくとも−3.9≦HPI11,16≦3.8または、好ましくは2.8≦HPI11,16≦3.8またはHPI11,16=−3.9、および位置20、24および28については、HPIは独立して少なくとも−3.9≦HPI20,24,28≦1.8または好ましくは−0.8≦HPI20,24,28≦1.8またはHPI20,24,28=−3.9でなければならないことを示している。
【0282】
HPI間隔により可能性のあるアミノ酸置換パターンを表12に示した。
【0283】
【表14】

【0284】
従って、胃特異的化合物X11はLeu、PheまたはLysであり得る。X16 はLeu、PheまたはLysであり得る。X20はAlaまたはSerであり得る。X24はAla、SerまたはLysであり得る。X28はAla、SerまたはLysであり得る。
【0285】
例えば、X11およびX16は独立してLeuまたはPheであり得て、かつX20、X24およびX28はSerであり得る。
【0286】
レセプター特異性における水素結合ポテンシャル(hydrogen bonding potential)(HBP)の効果
先に述べたように、GLP−2類似体のレセプター特異性は上記の位置11、16、20、24および28の水素結合のポテンシャルにより支配されることもまた明らかになった。
【0287】
水素結合ポテンシャル(hydrogen bonding potential)(HBP)は、個々のアミノ酸についてW.D.Stein,“The movement of molecules across cell membranes”;Academic Press N.Y.1967,pp65−125により紹介および定義され、これは所定のアミノ酸側鎖が水素結合を形成する能力を提供している。
【0288】
個々のアミノ酸に対するHBPを表13に示す。
【0289】
【表15】

【0290】
実施例15.胃特異性における水素結合ポテンシャル(hydrogen bonding potential)(HBP)の効果
胃特異的類似体の例を表14に示す。
【0291】
【表16】

【0292】
この表によると、胃特異的GLP−2類似体の個々の位置11、16、20、24および28のHBP間隔が、全ての位置につき独立して少なくとも0≦HBP11,16,20,24,28≦2でなければならない。HBP間隔に従い、可能性のあるアミノ酸置換パターンを表15に示す。
【0293】
【表17】

【0294】
好ましい胃特異的類似体は、位置11および16がHBP11,16,=0、かつ位置20、24および28が独立して0≦HBP20,24,28≦2のHBP間隔を有するGLP−2類似体である。
【0295】
幾つかの胃特異的GLP−2類似体を以下に示す。
X11はLeu、PheまたはLysであり得る。
X16はLeu、PheまたはLysであり得る。
X20はAlaまたはSerであり得る。
X24はAla、SerまたはLysであり得る。
X28はAla、SerまたはLysであり得る。
【0296】
例えば、X11およびX16は独立してLeuまたはPheであり得て、X24およびX28は独立してLysまたはSerであり得て、X20はSerであり得る。
【0297】
例えば、X11およびX16は独立してLeuまたはPheであり得て、かつX20、X24およびX28はSerであり得る。
【0298】
実施例16.小腸特異性における水素結合ポテンシャル(hydrogen bonding potential)(HBP)の効果
小腸特異的GLP−2類似体は、上で特に言及した位置11、16、20、24および28の水素結合のポテンシャルのようなパラメーターに支配されることもまた明らかになった。個々のアミノ酸のHBPを表16に示す。
【0299】
【表18】

【0300】
この表によると、小腸特異的GLP−2類似体の個々の位置11、16、20、24および28のHBP間隔が、全ての位置につき独立して少なくとも0≦HBP11,16,20,24,28≦2でなければならない。
【0301】
好ましい類似体においては、位置11および16のHBP間隔がHBP11,16=0、および位置20、24、および28のHBP間隔が独立して0≦HBP20,24,28≦2である。
【0302】
さらに好ましい、小腸特異性を示すGLP−2類似体は、位置11および16がHBP11,16=0、HBP20=0−2、およびHBP24,28=2のHBP間隔を有するペプチドである。
これに従い、幾つかの置換パターンを表17に示す。
【0303】
【表19】

【0304】
従って、小腸選択性化合物において、X11、X16;X20、X24およびX28はそれぞれ独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。例えば、X11およびX16はそれぞれ独立してAlaまたはSer、かつX20、X24およびX28はそれぞれ独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。例えば、X11およびX16は共にAlaであり得て、かつX20、X24およびX28は独立してAla、Ser、GlyまたはThrであり得る。
【0305】
本発明は上に述べた典型的な態様と共に記述されているが、多数の同等な改変および変化はそれが開示された際当業者には明らかであり得る。従って、説明された本発明の典型的な態様は例示的であり限定的ではないとみなされる。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記述された態様には様々な変更が成され得る。ここに引用された全ての文献は明白に参照により組み入れられたものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
−Z−His−X2−X3−Gly−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−Phe−Ile−X24−Trp−Leu−Ile−X28−Thr−Lys−X31−X32−X33−Z−R
(式中、
は水素、C1−4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイルまたはトリフルオロアセチルであり、
X2はGly、AlaまたはSar、
X3はGluまたはAsp、
X5はSerまたはThr、
X6はPheまたはProまたは保存された置換、
X7はSerまたはThr、
X8はAspまたはSerまたは保存された置換、
X9はGluまたはAspまたは保存された置換、
X10はMet、Leu、Nleまたは酸化的に安定なMet−置換アミノ酸、
X11はY1、
X12はThrまたはLysまたは保存された置換、
X13はIle、GluまたはGlnまたは保存された置換、
X14はLeu、MetまたはNleまたは保存された置換、
X15はAspまたはGluまたは保存された置換、
X16はY2、
X17はLeuまたはGluまたは保存された置換、
X18はAlaまたはAibまたは保存されていない置換、
X19はAlaまたはThrまたは保存された置換、
X20はY3、
X21はAspまたはHeまたは保存された置換、
X24はY4、
X28はY5、
X31はPro、Ileまたは欠失、
X32はThrまたは欠失、
X33はAsp、Asnまたは欠失、
はNHまたはOHであり、
式中、
およびZは独立して存在しないかまたはAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、MetおよびOrnからなる群から選択される1から10アミノ酸単位のペプチド配列であり、かつ式IのX11,X16,X20,X24,X28残基のハイドロファティシティ(hydrophaticity)プロファイル(HPP)は、
HPP=Σhpix11+hpix16+hpiX20+hpiX24+hpiX28 は≧−10であり、
式中、
X20がArgの場合X11はSerであり、X16がAla、X24がAla、X28がAla、およびZ2がLysまたは医薬的に許容される塩またはその誘導体である条件下で、
、Y、Y、およびYは、Asn、Asp、Glu、Gln、Lys、His、Arg、Ala、Ser、Thr、Pro、Gly、Leu、Ile、Val、MetおよびPheからなる群から個々に選択でき、かつ
は、Asn,Asp,Glu,Gln,His,Arg,Ala,Ser,Thr,Pro,Gly,Leu,Ile,Val,Met or Pheからなる群から選択できる)で表されるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体。
【請求項2】
HPPが≧−4である、請求項1に記載のグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体。
【請求項3】
HPPが≧0である、請求項1に記載のグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体。
【請求項4】
一般式II
−Z−His−X2−X3−Gly−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−Ala−X19−X20−X21−Phe−Ile−X24−Trp−Leu−Ile−X28−Thr−Lys−X31−X32−X33−Z−R
(式中、
は水素、C1−4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイルまたはトリフルオロアセチルであり、
X2はGly、AlaまたはSar、
X3はGluまたはAsp、
X5はSerまたはThr、
X6はPheまたはPro、
X7はSerまたはThr、
X8はAspまたはSer、
X9はGluまたはAsp、
X10はMet、Leu、Nleまたは酸化的に安定なMet−置換アミノ酸、
X11はAsn、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X12はThrまたはLys、
X13はIle、GluまたはGln、
X14はLeu、MetまたはNle、
X15はAspまたはGlu、
X16はAsn、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X17はLeuまたはGlu、
X18はAlaまたはAib、
X19はAlaまたはThr、
X20はAsn、Arg、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X21はAspまたはIle、
X24はAsn、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X28はAsn、Ala、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe Ser、ThrまたはVal、
X31はPro、Ileまたは欠失、
X32はThrまたは欠失、
X33はAsp、Asnまたは欠失、
はNHまたはOHであり、
X20がArgの場合X11はSerであり、X16がAla、X24がAla、X28がAla、およびZ2がLysである条件下で、
およびZは独立して存在しないかまたはAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、MetおよびOrnからなる群から選択される1から10アミノ酸単位のペプチド配列であるか、または医薬的に許容される塩またはその誘導体)で表されるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体。
【請求項5】
X11はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
X16はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
X20はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
X24はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
X28はAla、Gly、Ile、Leu、Phe Ser、ThrまたはVal、
である、請求項4に記載のGLPグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体。
【請求項6】
X11はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
X16はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
X20はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
X24はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
X28はAla、Ile、Leu、Phe、またはVal、
である、請求項4に記載のGLPグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)類似体。
【請求項7】
GLP−2類似体が野生型GLP−2(1−33)に対し少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有し、かつin vivoにおける腸の質量増大の原因となる生物活性を有する請求項1から6のいずれか1項に記載のGLP−2類似体。
【請求項8】
GLP−2類似体が位置X11、X16、X20、X24および/またはX28における1以上の置換および/または前記置換のうちの1以上と位置X3、X5、X7および/またはX10における1以上の置換との組み合わせを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のGLP−2類似体。
【請求項9】
前記の位置X10における置換がLeu、Nle、またはMet(O)またはMet(O)のような酸化的に安定なMet−置換アミノ酸である、請求項1または4に記載のGLP−2類似体。
【請求項10】
一般式III
−His−Gly−Glu−Gly−Ser−Phe−Ser−X8−Glu−Leu−X11−Thr−Ile−Leu−X15−X16−Leu−Ala−Ala−X20−Asp−Phe−Ile−X24−Trp−Leu−Ile−X28−Thr−Lys−Ile−Thr−Asp−NH
(式中、
は水素、C1−4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイルまたはトリフルオロアセチルであり、
X8はAspまたはSer、好ましくはAsp、
X11はSer、Ala、Glu、LysまたはAsn、
X15はGluまたはAsp、好ましくはGlu、
X16はSer、AlaまたはGlu、
X20はSer、AlaまたはGlu、
X24はSer、AlaまたはGlu、および
X28はSer、Ala、GlnまたはGlu、または医薬的に許容される塩またはその誘導体)により定義されるGLP−2類似体。
【請求項11】
表1および表2に開示された、請求項1から10のいずれか1項に記載のGLP−2類似体またはその薬理学的に許容される塩または誘導体。
【請求項12】
配列
2263 HGEGSFSDELSTILESLAASDFISWLISTKITD−NH
2264 HGEGSFSDELATILEALAAADFIAWLIATKITD−NH
2266 HGEGSFSDELETILEELAAEDFIEWLIETKITD−NH
2267 HGEGSFSDELSTILESLAAADFIAWLIATKITD−NH
2268 HGEGSFSDELATILEALAASDFISWLISTKITD−NH
2269 HGEGSFSDELKTILESLAAADFIEWLIQTKITD−NH
2270 HGEGSFSDELNTILESLAASDFISWLISTKITD−NH
2272 HGEGSFSDELATILESLAAADFISWLIATKITD−NH
2242 HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDK−OH
で表される、請求項11に記載のGLP−2類似体。
【請求項13】
位置X3、X5、X7、X11、X16、X20、X24、X28、X31、X32および/またはX33に1を超える置換を有する、請求項1から12のいずれか1項に記載のGLP−2類似体。
【請求項14】
X11、X16、X20、X24、X28がIle、Ala、Leu、PheまたはValから選択される1以上の置換、および位置X31、X32およびX33の任意の欠失、または医薬的に許容される塩またはその誘導体を含む、請求項13記載のGLP−2類似体。
【請求項15】
位置X11、X16、X20、X24および/またはX28のうち1以上の位置に置換を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載のGLP−2類似体。
【請求項16】
X11、X16、X20、X24およびX28がそれぞれ独立してAla、Ser、GlyおよびThrから選択され、かつ該類似体が結腸に比し小腸に対して優先的な増殖促進活性を有する、請求項1、4、または10に記載のGLP−2類似体。
【請求項17】
X11およびX16がそれぞれ独立してAlaおよびSerから選択され、かつX20、X24およびX28が独立してAla、Ser、GlyおよびThrから選択される、請求項16に記載のGLP−2類似体。
【請求項18】
X11およびX16が両者ともAlaであり、かつX20、X24およびX28は独立してAla、Ser、GlyおよびThrから選択される、請求項17に記載のGLP−2類似体。
【請求項19】
X11およびX16が両者ともAlaであり、かつX20、X24およびX28が独立してAlaおよびSerから選択される、請求項17に記載のGLP−2類似体。
【請求項20】
位置X11、X16、X20、X24およびX28の残基が、以下の組み合わせSer/Ser/Ser/Ser/Ser; Ala/Ala/Ser/Ser/Ser、Ala/Ala/Ala/Ala/Ser、Ser/Ala/Ser/Ser/Ser、Ala/Ala/Ala/Ser/Ala; Ala/Ala/Ser/Ala/Ala; Ser/Ala/Ala/Ala/Ala; Ser/Ala/Arg/Ala/Ala; Ala/Ser/Ala/Ser/Ala; Ala/Ala/Ala/Ala/Ala のうち1つを含む、請求項16に記載のGLP−2類似体。
【請求項21】
ZP2264、ZP2268、ZP2242、ZP2272、ZP2411、ZP2380、ZP2384、ZP2398、ZP2417、ZP2423、ZP2385、ZP2399、ZP2418、ZP2381、ZP2420またはZP2397である、請求項16に記載のGLP−2類似体。
【請求項22】
X11がLeu、PheおよびLysから選択され、
X16がLeu、PheおよびLysから選択され、
X20がAla、Ser、Leu、GlyおよびThrから選択され、
X24がAlaおよびSerから選択され、
X28がAla、SerまたはLysから選択され、かつ該類似体が結腸に比し胃において優先的な増殖促進活性を有する、請求項1、4、または10に記載のGLP−2類似体。
【請求項23】
X11およびX16が独立してLeuおよびPheから選択され、X24およびX28が独立してLysおよびSerから選択され、かつX20がSerである、請求項22に記載のGLP−2類似体。
【請求項24】
X11およびX16が独立してLeuおよびPheから選択され、かつX20、X24およびX28がSerである、請求項23に記載のGLP−2類似体。
【請求項25】
位置X11、X16、X20、X24およびX28の残基が、以下の組み合わせ
Lys/Lys/Lys/Lys/Lys; Phe/Phe/Ser/Ser/Ser; Leu/Leu/Ser/Ser/Ser; Leu/Leu/Ala/Ala/Ala のうち1つを含む、請求項22に記載のGLP−2類似体。
【請求項26】
ZP2400、ZP2412、ZP2396、ZP2394、ZP2401またはZP2395である、請求項22に記載のGLP−2類似体。
【請求項27】
小腸特異的GLP−2類似体の個々の位置11、16、20、24および28のHBP間隔が、全ての位置につき独立して少なくとも0≦HBP11,16,20,24,28≦2でなければならない、請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体。
【請求項28】
位置11および16がHBP11,16,=0、かつ位置20、24および28が独立して 0≦HBP20,24,28≦2のHBP間隔を有する、請求項27に記載のGLP−2類似体。
【請求項29】
胃特異的GLP−2類似体の個々の位置11、16、20、24および28のHBP間隔が、全ての位置につき独立して少なくとも0≦HBP11,16,20,24,28≦2でなけらばならない、請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体。
【請求項30】
位置11および16のHBP間隔がHBP11,16,=0、かつ位置20、24および28のHBP間隔が独立して 0≦HBP20,24,28≦2である、請求項29に記載のGLP−2類似体。
【請求項31】
治療に用いられる、請求項1から30のいずれか1項に記載のGLP−2類似体。
【請求項32】
請求項1から31のいずれか1項に記載のGLP−2類似体、またはその塩または誘導体を、担体との混合物として含む医薬組成物。
【請求項33】
該GLP−2類似体が医薬的に許容される酸付加塩である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記のGLP−2類似体が注射または点滴による投与に適した液体として処方されるか、または緩慢に放出されるように処方された、請求項32または33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
胃および腸関連疾患を治療および/または予防する薬剤の製剤のための、請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体の使用。
【請求項36】
該胃および腸関連疾患が、潰瘍、ゾリンジャー・エリソン症候群、消化障害、吸収不良症候群、短消化管症候群(short−gut syndrome)、カルデサック症候群(cul−de−sac syndrome)、炎症性腸疾患、セリアックスプルー(例えばグルテン誘導性腸疾患またはセリアック病)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症スプルー、腸炎、局所性腸炎(クローン病)、潰瘍性結腸炎、小腸損傷、または短腸症候群である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
該胃および腸関連疾患が放射線性腸炎、感染性または後感染性腸炎、または有毒剤またはその他の化学療法剤による小腸損傷である、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
化学療法または放射線治療における副作用を治療および/または予防する薬剤の製剤のための、請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体の使用。
【請求項39】
該化学療法の副作用が下痢、腹部けいれん、嘔吐、および化学療法による治療に起因する腸上皮の構造的および機能的損傷である、請求項39に記載の使用。
【請求項40】
新生児、骨粗鬆症、またはDPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)により媒介される状態を治療する薬剤の製剤のための、請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体の使用。
【請求項41】
栄養障害に関わる状態を治療および/または予防する薬剤の製剤のための、請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体の使用。
【請求項42】
該栄養障害に関わる状態が悪液質または食欲不振である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体をコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項44】
請求項40に記載の核酸配列を、その発現を導く制御配列と組み合わせて含む発現ベクター。
【請求項45】
請求項34に記載の発現ベクターにより形質転換されたホスト細胞。
【請求項46】
該GLP−2類似体の発現に適した条件下で請求項41に記載のホスト細胞を培養すること、およびそれにより産生されたGLP−2類似体を精製することを含む、請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体の産生方法。
【請求項47】
請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載の発現ベクター、または請求項41に記載のホスト細胞の治療における使用。
【請求項48】
胃および腸関連疾患を治療および/または予防するための、または化学療法または放射線治療における副作用を治療および/または予防するための、または新生児、骨粗鬆症、またはDPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)により媒介される状態を治療するための薬剤の製剤における、請求項43に記載の核酸分子、請求項40に記載の発現ベクター、または請求項45に記載のホスト細胞の使用。
【請求項49】
効果的な量の請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載の発現ベクター、または請求項45に記載のホスト細胞を投与することによる、患者の必要性に応じて胃および腸関連疾患を治療する方法。
【請求項50】
該胃および腸関連疾患が、潰瘍、ゾリンジャー・エリソン症候群、消化障害、吸収不良症候群、短消化管症候群(short−gut syndrome)、カルデサック症候群(cul−de−sac syndrome)、炎症性腸疾患、セリアックスプルー(例えばグルテン誘導性腸疾患またはセリアック病)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症スプルー、腸炎、局所性腸炎(クローン病)、潰瘍性結腸炎、小腸損傷、または短腸症候群である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
該胃および腸関連疾患が放射線性腸炎、感染性または後感染性腸炎、または有毒剤またはその他の化学療法剤による小腸損傷である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
効果的な量の請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載の発現ベクター、または請求項45に記載のホスト細胞を投与することを含む、患者の必要性に応じて化学療法または放射線治療における副作用を治療または予防する方法。
【請求項53】
該化学療法の副作用が下痢、腹部けいれん、嘔吐、または化学療法による治療に起因する腸上皮の構造的および機能的損傷である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
効果的な量の請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載の発現ベクター、または請求項45に記載のホスト細胞を投与することを含む、患者の必要性に応じて新生児疾患、肥満、骨粗鬆症、またはDPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)により媒介される状態を治療する方法。
【請求項55】
癌化学療法薬剤および請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載の発現ベクター、または請求項45に記載のホスト細胞それぞれを任意に医薬的に許容される担体と組み合わせて含む治療キット。
【請求項56】
癌化学療法薬剤および請求項1から26のいずれか1項に記載のGLP−2類似体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載の発現ベクター、または請求項45に記載のホスト細胞を医薬的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−509197(P2010−509197A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535132(P2009−535132)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004273
【国際公開番号】WO2008/056155
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(502453045)ジーランド ファーマ アクティーゼルスカブ (13)
【Fターム(参考)】