説明

還元型コルチゾール接合体

【課題】コルチゾール接合体の新規な製造方法の提供。
【解決手段】本発明は、コルチゾール接合体の製造方法であって、3−コルチゾールカルボキシメチルオキシムのウシ血清アルブミン接合体(3−CMO−BSA)と水素化ホウ素ナトリウムとを反応させることを含んで成る方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗コルチゾール抗体に対する改善された特異性を有するハプテンおよび接合体標識、それらの製造方法、並びにコルチゾールの検出のためのイムノアッセイにおける使用方法に関する。より詳しくは、本発明は西洋ワサビペルオキシダーゼと還元型コルチゾールを含んで成る接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
コルチゾールはヒトに存在する主要な糖質コルチコイドである。それは副腎皮質の束状体と網状体により合成されそして分泌される。それは炭水化物、タンパク質および脂質代謝の調節に関与している。ステロイドは血管虚脱を防ぎ、炎症を減らし、そして免疫系を抑制する働きをするので、手術後または他の大きな外傷後にはコルチゾールレベルが10倍上昇し得る。
【0003】
高アドレナリン症に関連する3つの主要な医学疾患がある:クッシング症候群、高アルドステロン症、および先天性副腎過形成。クッシング症候群は、循環中の糖質コルチコイド、特にコルチゾールの濃度の増加から生じるいずれかの状態を説明するのに用いられる用語である(Clinical Chemistry: Theory, Analysis and Correlation; Lawrence A. Kaplan, Amedeo J. Pesce, CV Mosby Company, 1989, 673-4頁)。
【0004】
コルチゾール関連状態の診断、治療および追跡には、ヒト血清、血漿または尿中のコルチゾールの検出および定量が必要である。
【0005】
コルチゾールについての競合結合イムノアッセイは、通常は固定化されたまたは固定化可能な支持体に結合された抗コルチゾール抗体、および標識コルチコールまたはコルチゾールの標識類似体(誘導体)を含んで成る。標識コルチゾールに言及するときは常に、特に断らない限り、標識コルチゾールという用語はコルチゾールの標識類似体(誘導体)を包含するものであると解釈すべきである。標識コルチゾールは、限定数の抗コルチゾール抗体結合部位を目当てにコルチゾールと競争する。コルチゾールの量の指標として、遊離のまたは結合した標識コルチゾールかた誘導されるシグナルが測定される。
【0006】
コルチゾールについてのイムノアッセイの感度および特異性は標識コルチゾールに依存する。標識コルチゾールが、限定数の抗コルチゾール結合部位を目当てに、試料中に存在するかもしれないコルチゾールに構造的に類似したステロイドと効率的に競争することが重要である。そうでなければ、試料中のコルチゾールの量の臨床的に許容される測定は得られないだろう。
【0007】
酵素11β−ヒドロキシラーゼ欠損を有する個体、またはメチラポンを投与された個体は、コルチゾールに構造的に類似しており、そして抗コルチゾール抗体への結合を目当てに標識コルチゾールと潜在的に競争することができる、11−デオキシコルチゾールのレベルが大きく増加するだろう(Fundamentals of Clinical Chemistry, Tietz, N.W., W.B. Saunders Co., 1987, 569 頁)。抗コルチゾール抗体を目当てに標識コルチゾールと潜在的に競争することができる、試料中に存在することがある他のコルチゾール様ステロイドとしては、プレドニソロン、コルチゾンおよびコルチコステロイドが挙げられる。抗コルチゾール抗体を目当てにした標識コルチゾールとのそのような競争は、交差反応性と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
市販のコルチゾールアッセイは、上述したステロイドの全てと交差反応を示し得る。例えば、10%より大きい11−デオキシコルチゾールとの交差反応性が観察されており、これはコルチゾールについてのアッセイの正確度を大きく害する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
コルチゾールについての従来技術のアッセイに伴う課題は、本明細書に記載する接合体標識を使って解決される。
【0010】
本発明は、新規還元型コルチゾール接合体を含んで成る組成物、それらの製造方法およびコルチゾールについてのイムノアッセイにおけるそれらの使用方法に関する。
【0011】
別の面では、本発明は、抗コルチゾール抗体または抗還元型コルチゾール抗体を惹起させるための免疫原またはハプテンとしての還元型コルチゾールの接合体に関する。
【0012】
意外にも、本発明の標識還元型コルチゾール接合体が、抗コルチゾール抗体への結合を目当てにコルチゾール様ステロイドと効率的に競争し、それによって従来技術の標識コルチゾール接合体と比較して有意に低い交差反応性を示すことがわかった。本発明の標識還元型コルチゾール接合体を含んで成るコルチゾールについてのイムノアッセイは、コルチゾールの測定のための改善された特異性と感受性の両方を示す。
【0013】
従って、本発明は、下式
【化1】

(上式中、XはO、S、スルホニルまたはホスホノであり;X1 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y1 は連結基または結合であり;X2 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y2 は連結基または結合であり;A1 とA2 は各々水素であるか、またはA1 とA2 が一緒になって単結合を形成し、B1 とB2 は各々水素であるか、またはB1 とB2 が一緒になって単結合を形成し、E1 とE2 は各々水素であるか、またはE1 とE2 が一緒になって単結合を形成し、ただしA1 とA2 、またはB1 とB2 、またはE1 とE2 の少なくとも1つが各々水素である)
を有する還元型コルチゾール接合体を提供する。
【0014】
別の面では、本発明は還元型コルチゾール接合体の製造方法にも関する。従って、本発明者らは、下式
【化2】

(上式中、X,X1 ,Y1 ,X2 ,Y2 ,A1 ,A2 ,B1 ,B2 ,E1 およびE2 は前に定義した通りである)
を有する還元型コルチゾール接合体の製造方法であって、
下式の化合物
【化3】

を還元剤と反応させることを含んで成る方法を提供する。
【0015】
本発明者らは、下式
【化4】

(上式中、X,X1 ,Y1 ,X2 ,Y2 ,A1 ,A2 ,B1 ,B2 ,E1 およびE2 は前に定義した通りである)を有する還元型コルチゾール接合体の別の製造方法であって、
(i)下式の化合物
【化5】

を還元剤と反応させ、それにより化合物IAまたはICを形成させ;そして
(ii)場合により、化合物IAまたはICを第一のカップリング剤と反応させて、下式の化合物
【化6】

(上式中、G1 はカップリング基である)を形成させ;
(iii)場合により、X2 を第二のカップリング剤と反応させて、X2 −G2 (ここでG2 はカップリング基G1 と共に共有結合を形成することができるカップリング基であり、そしてG1 とG2 は同じであってもよい)を形成させ;
(iv)場合により、化合物IAまたはICをX2 −G2 (ここでG2 はX1 の官能基と共有結合することができる)と反応させて、還元型コルチゾール接合体IBまたはIDを形成させ;
(v)場合により、化合物 IIIAまたは IIICをX2 (ここでG2 はX2 の官能基と共有結合することができる)と反応させて、還元型コルチゾール接合体IBまたはIDを形成させ;
(vi)場合により、化合物 IIIAまたは IIICをX2 −G2 と反応させて、還元型コルチゾール接合体IBまたはIDを形成させる
ことを含んでなる方法も提供する。
【0016】
別の面では、本発明は、新規標識還元型コルチゾール接合体を使用するコルチゾールの定性または定量測定方法に関する。
【0017】
従って、コルチゾールについての競合アッセイの実施方法であって、
A)コルチゾールを含む疑いのある試料を
i)コルチゾールを結合する固定化されたまたは固定化可能なレセプターと接触させ、それにより固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合したコルチゾールと、固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合しないコルチゾールとを形成させ、
ii)前に定義した式IA,IB,ICまたはIDの標識還元型コルチゾール接合体と接触させ、それにより固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体と、固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体とを形成させ;
B)試料中のコルチゾールの量の指標として、前記固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体か、前記固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体のいずれかを検出する
という各段階を含んで成る方法を提供する。
【0018】
別の態様では、上述したアッセイ方法に、固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体から、固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体を分離するという段階を組み合わせることができる。
【0019】
更に、コルチゾールについての競合結合アッセイの別の実施方法であって、該方法は
a)展開区画、
b)1または複数の試薬区画、
c)支持体、並びに
前記区画の1区画または複数区画において一緒にまたは別々に、コルチゾールを結合する固定化されたレセプター、および場合により前に定義した式IA,IB,ICまたはIDの標識還元型コルチゾール接合体
を含んで成る乾式分析要素を使用し、
A)前記乾式分析要素の展開区画を
i)コルチゾールを含む疑いのある試料と接触させ、それにより固定化されたレセプターに結合したコルチゾールと、固定化されたレセプターに結合しないコルチゾールとを形成させ、
ii)前記標識還元型コルチゾール接合体が乾式分析要素中に存在しない場合には、その標識還元型コルチゾール接合体と接触させ、それにより前記固定化されたレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体と、前記固定化されたレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体とを形成させ;
B)場合により、前記固定化されたレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体から前記固定化されたレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体を分離し;そして
C)試料中のコルチゾールの量の指標として、前記固定化されたレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体か、前記固定化されたレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体のいずれかを検出する
という各段階を含んで成る方法も提供する。
【0020】
別の面では、本発明は前に定義した式IA,IB,ICまたはIDのハプテンまたは免疫原およびそのような免疫原を含んで成る組成物に関する。本発明はまた、抗コルチゾール抗体の産生方法であって、本発明の免疫原を使用して宿主動物を免疫し、前記宿主動物から血液を採取し、そして前記宿主動物の血清または血漿からコルチゾールを結合する抗体を分離することを含んで成る方法にも関する。別の関連した方法では、免疫した宿主動物から抗体産生細胞が存在する脾臓、胸腺または他の組織を除去し、除去された前記脾臓、胸腺または他の組織の抗体産生細胞を使って抗体を分泌するハイブリドーマを作製し、そしてコルチゾールを結合する抗体を選択する。
【0021】
別の態様では、本発明は、コルチゾールについてのイムノアッセイにおける交差反応性を減少させる方法であって、式IA,IB,ICまたはIDの標識還元型コルチゾール接合体を使用することを含んで成る方法にも関する。
【0022】
上述した本発明の標識還元型コルチゾール接合体は、抗コルチゾール抗体への結合を目当てにコルチゾール様ステロイドと効率的に競争し、それによって従来技術の標識コルチゾール接合体と比較して有意に少ない交差反応性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ウシ血清アルブミンと西洋ワサビペルオキシダーゼを含んで成る特定の還元型コルチゾール接合体に関して本発明を詳細に説明する。これは、本発明を例示するために行うのであって、決してこの特定例に本発明を限定するつもりではない。別の還元型コルチゾール接合体、それらの合成、および免疫原としての使用または競合もしくは非競合イムノアッセイにおける還元コルチゾール標識としての使用、並びに本明細書中に与えられる教示から明らかであるかまたは当業者に既知である他の面も包含される。
【0024】
本発明の目的上、「天然ポリマー」は、下記のものを含むがそれに限定されない生物学的起源より得られるものとして定義される:微生物、真菌、ウイルス、ヒト、ウシ、ブタ、マウス、ネコ、イヌ、ラットまたは昆虫。そのような天然ポリマーとしては、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、並びにそれらの組換え種および化学的に修飾された種、多糖類、セルロース、コラーゲン、並びにラテックスが挙げられる。幾分具体的な例としては、デキストラン、ブタ、ヒト、マウス、ラットおよびウシ血清アルブミンまたはグロブリン、ストレプトアビジン、抗体、酵素、例えばペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼが挙げられる。
【0025】
「合成ポリマー」は、本明細書中では必ずしも生物学的起源より直接得られないポリマーとして定義される。それは当業者に周知である方法により調製されるものである。例えば、乳化重合、イオン重合、カルボニル重合、ラジカル重合などを使ったモノマー縮合によって調製される。合成ポリマーとしては、ホモポリマー、例えばポリアクリルアミド、ポリスチレン、置換ポリアクリルアミド、ポリメタクリルレートおよびポリスチレン、並びに2以上の異なるモノマー単位を含んで成るコポリマー、例えばアクリルアミドまたは置換アクリルアミド、スチレンおよび置換スチレンなどが挙げられ、それらは当業者に周知であろう。それはブロックコポリマー、グラフトコポリマー、水性可溶性および水性不溶性ポリマー、並びに天然ポリマーとの共有結合および非共有結合体も包含する。
【0026】
本明細書中で定義される用語「標識」としては、例えば吸収、蛍光もしくは反射分光光度法、または放射線検出法を使って、直接または間接的に検出することができる化学要素、化合物および酵素が挙げられる。標識は天然または合成ポリマーであってもよい。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは標識と天然ポリマーの両方である。しかし標識は必ずしも天然または合成ポリマーでなくてもよい。
【0027】
直接検出できる標識は、本質的に検出可能なシグナルを生成することができるものである。そのような標識としては、蛍光またはリン光を生成できる有機および無機物質、例えば非限定的にフルオレセインおよびその誘導体、並びにN−(3−フルオロアントリル)マレイミド、放射性核種、例えば炭素14、トリチウムおよびリン32などが挙げられる。適当なスペクトル吸収を有する物質、例えば非限定的にアゾ−オキソ、アゾ−テトラゾ、アジン、オキサジン、チアジン、キノリン、インダミン、ピロンおよびピラゾロン色素も含まれる。
【0028】
間接検出できる標識は、検出可能なシグナルの生成のために1または複数の追加の物質の存在を必要とする。そのような標識としては、典型的には、1または複数の基質、補因子、金属などの存在を必要とする酵素が挙げられるが、それらに限定されない。ペルオキシダーゼ、特に一般的な標識である西洋ワサビペルオキシダーゼは、化学発光生成物または色素を生成するのに、それぞれ電子供与体と酸化剤、例えばルミノール、ジ−もしくはトリアリールイミダゾールロイコ色素および過酸化水素を必要とする。他の酵素、例えばβ−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼなども含まれる。
【0029】
一般に、標識としては放射性標識、酵素、発色団、蛍光団、安定な遊離基、並びに酵素補因子、阻害剤およびアロステリックエフェクターが挙げられる。
【0030】
本発明の目的上、「還元剤」は、二重結合、例えば炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−酸素および炭素−硫黄二重結合を水素化することができる任意の化合物または試薬混合物である。
【0031】
有用な還元剤としては、非限定的に、水素化アルミニウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素、およびそれらの塩が挙げられる。パラジウム、白金もしくはニッケル上での接触水添、または他の水素化法を使用することもできる。水素化ホウ素ナトリウムが好ましい還元剤である。
【0032】
「連結基」は、本明細書中では、1または複数の原子を含んで成る化学基として定義される。連結基は、各分子との共有結合を通して、例えば天然ポリマーを天然ポリマーに、合成ポリマーを合成ポリマーに、天然ポリマーを合成ポリマーに、標識を天然または合成ポリマーに、標識を還元型コルチゾールに、標識をコルチゾールになどというように或る分子を別の分子に結合する。
【0033】
連結基は、置換されたまたは未置換の直鎖また分枝鎖アルキルまたはヘテロアルキル、例えばオキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、置換されたもしくは未置換のアルケニル、単置換もしくは多置換されたまたは未置換の炭化水素複素環、単置換もしくは多置換されたまたは未置換のアリールまたはヘテロアリール環、例えば非限定的に、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル、キノリニルおよびキナゾリニルが挙げられる。
【0034】
別の巨大分子への天然および合成ポリマーのような巨大分子の連結もしくはカップリング、または巨大分子へのコルチゾールまたはコルチゾールの類似体のような小分子の連結は当該技術分野で周知である。コルチゾールに特に関連して、炭素3(C3)は求核試薬、例えばアミン、オキシムおよびチオオキシム並びに当該技術分野で既知の他のものと反応性である。求核性種は、カップリング(結合)剤、標識、天然または合成ポリマーであることができる。コルチゾールのC3に共有結合する際に、それがカップリング剤または反応性官能基を有する他の種(例えば標識)である場合、それは別のカップリング剤または適当な反応性官能基を有する他の種と更に反応させることができる。そのように誘導体化されたコルチゾールは、本発明の還元型コルチゾール化合物を調製するための出発点として使用することができる。カップリング化学および連結基の詳細は、多数の刊行物中に見つけることができ、例えば、米国特許第3,654,090 号;同第3,791,932 号;同第3,875,011 号;同第4,016,043 号;同第4,040,907 号;同第4,092,479 号;同第4,213,894 号;同第4,243,749 号;同第4,376,165 号;同第4,410,643 号;同第4,752,658 号;同第4,828,978 号;同第4,879,249 号;同第4,997,772 号;同第5,053,497 号;同第5,106,732 号;同第5,147,777 号;同第5,155,166 号;同第5,162,219 号;同第5,177,023 号;同第5,284,948 号;同第5,298,403 号;同第5,308,749 号;同第5,374,516 号;同第5,391,483 号;同第5,397,695 号;同第5,401,633 号;同第5,527,709 号;同第5,543,311 号;同第5,578,457 号;同第5,652,346 号;同第5,763,588 号;同第5,770,390 号明細書およびその中に引用された参考文献;Yoshitake 他, Eur. J. Biochem., 101, 395 (1979) およびTjssen, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, 221-278頁(1985) およびその中に引用された参考文献中に見つけることができる。
【0035】
簡単に言えば、連結基およびそれに共有結合される分子は、アミド、エステル、エーテル、チオエステルおよびジスルフィド結合を会して連結され得る。例えば分子を縮合剤(例えばカルボジイミド、マレイミド、エチルクロロホルメートおよびグルタルアルデヒド)とカップリングさせるために分子を反応させることを含むカップリングおよび連結化学は、当該技術分野で周知である。
【0036】
「試料」なる語は、着目の分析物を含むことがある任意の物質を言う。試料は生物学的液体、例えば脳脊髄液、精液、膣分泌物、痰、腹水、涙液、汗、血清、血漿、尿、全血、赤血球、白血球および血小板などの全血成分、並びに着目の分析物を含む場合がある他の体液または体組織であることができる。場合により、試料は水、土壌および植物から得られる。
【0037】
自然の免疫反応を利用するイムノアッセイは、臨床化学における分析手段として広範囲な用途が見出されている。反応の特異性のために、イムノアッセイは生物学的液体中にごく低濃度で存在する生物学的分析物を定量する場合に特に有利である。そのような分析物としては、例えば、抗体、治療薬、麻酔薬、酵素、ホルモン、タンパク質などが挙げられる。
【0038】
競合結合イムノアッセイでは、標識分析物(この用語は免疫応答能のある分析物の類似体も包含する)が、一定量の適当なレセプター(これはしばしば固体支持体上に固定化されているか、またはそれに固定化することができる)との反応を目当てに未標識の分析物と競争状態に置かれる。レセプターに結合した標識分析物を遊離の標識分析物から分離する。分析物の未知濃度は、結合した標識分析物かまたは遊離の標識分析物のいずれかの測定シグナルから求めることができる。反応は次のように進行する:
【0039】
【化7】

【0040】
イムノアッセイは溶液中で、可溶性成分と不溶性成分を分離できる試験装置中で、または乾式分析要素中で実施することができる。イムノアッセイは不均一または均一アッセイであることができ、これらの用語は当該技術分野で既知である。不均一アッセイでは、シグナル測定の前に、結合した標識免疫反応体と遊離の標識免疫反応体(標識分析物または分析物に対する標識レセプター)が分離され;一方、均一アッセイでは、結合した標識免疫反応体から遊離の標識免疫反応体を分離する必要がない。本発明の還元型コルチゾール接合体は、均一アッセイと不均一アッセイの両方に使用できる。
【0041】
連結基およびカップリング化学に関する多数の上記刊行物も包含する、イムノアッセイおよびイムノアッセイ法に関する多数の刊行物が入手可能である。追加の刊行物としては次のものが挙げられる:米国特許第4,372,745 号;同第4,670,381 号;同第4,483,921 号;同第4,517,288 号;同第4,822,747 号;同第4,824,778 号;同第4,829,012 号;同第4,839,299 号;同第4,847,194 号;同第4,847,195 号;同第4,853,335 号;同第4,855,226 号;同第4,857,453 号;同第4,857,454 号;同第4,859,610 号;同第4,863,876 号;同第4,868,106 号;同第4,868,130 号;同第4,879,219 号;同第5,663,054 号;同第5,776,973 号明細書およびその中に引用された参考文献;並びに Immunoassays in the Clinical Laboratory, Nakamura他編, Alan R. Liss, Inc., (1979) ; Quantitative Enzyme Immunoassay, Engvell 他編, Blackwell Scientific Publications (1978) ; Clinical Chemistry, Sommer 他, Vol.32, 1770-1774 頁 (1986) ; Clinical Chemistry, Sommer他, 201-206 頁 (1990) ; A Primer for Multilayer Immunassay, Berke, American Chemical Society Conference Proceeding, 303-312 頁, Plenum Press (1988) ; およびその中に引用された参考文献。
【0042】
競合イムノアッセイでは、標識分析物と遊離の分析物を含む試料とを同時にまたは別々に、該分析物を結合する固定化されたまたは固定化可能なレセプターを含む混合物に添加することができる。
【0043】
乾式分析要素の場合、標識分析物と固定化されたレセプターは、試料との接触前に要素中に一緒に存在する場合、好ましくは別々の区画に存在する。
【0044】
乾式薄膜分析要素を組み立てるための常用の材料および手段は、例えば、米国特許第3,867,258 号;同第3,992,158 号;同第4,042,435 号;同第4,050,898 号;同第4,066,403 号;同第4,153,668 号;同第4,258,001 号;同第4,292,272 号および同第4,430,436 号明細書に記載されている。
【0045】
適当な宿主動物を免疫することにより特定の分子を結合する抗体を獲得する方法は周知である。そのような方法は十分に確立されており、そして例えば、次の刊行物に記載されている: Methods in Immunology, Garvey, J.S., Cremer, N.E. & Sussdorf, D.H., W.A. Benjamin, Inc., 第3版 (1977) および Handbook of Experimental Immunology, Weir, D.M.編, Blackwell Scientific Publications,第3版 (1978) 。
【0046】
抗体の分泌のためのハイブリドーマ細胞系の作製方法も周知であり、例えば、米国特許第4,950,592 号;同第5,338,671 号および同第5,650,324 号明細書に記載されている。
【0047】
HRP標識還元型コルチゾール−3−CMO−BSAの調製
下記に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識還元型コルチゾール接合体の調製方法を与える。この方法では、水素化ホウ素ナトリウムでのウシ血清アルブミン−コルチゾールオキシム接合体(コルチゾール−3−CMO−BSA)の還元を、HRPとの接合前に実施した。しかしながら、コルチゾールの還元はHRPとのカップリングの後に実施することができる。
【0048】
コルチゾール−3−CMO−BSAの還元部位は3箇所あり、それらは下記に示す構造中に星印により記してある。
【0049】
【化8】

【0050】
これらの部位のいずれかまたは全部を、二重結合を水素化することができる還元剤または還元性混合物での処理により還元すると、当業者には容易に明らかなように、下記に示す構造のように1部位だけが還元された生成物:
【0051】
【化9】

【0052】
並びに、それらの部位のいずれか2部位が還元された化合物(3つの異なる還元種を与える)、および3部位全部が還元された化合物を与えることができる。コルチゾールを含んで成る他の接合体は、還元すると構造IA,IBおよびIDに包括的に示される化合物を生じるが、コルチゾール−3−CMO−BSAについて前に例示したような還元型コルチゾール種とは異なる還元種を生成するだろう。水素化できないコルチゾールのC3に共有結合を有する化合物は、コルチゾールの環炭素−炭素二重結合および/または炭素−酸素二重結合(カルボニル基)のところだけで還元されるだろう。全ての還元形態が個々にまたは任意の組合せで本発明に含まれる。
【実施例】
【0053】
実施例1:
ウシ血清アルブミンに結合した3−コルチゾールカルボキシメチルオキシムの調製(3−CMO−BSA)
ヒドロコルチゾン−3−(O−カルボキシメチル)オキシム:
ウシ血清アルブミン(コルチゾール−3−CMO−BSA)を下記に記載の通り調製した。あるいは、それは Sigma Chemical Co., St. Louis, Missouriより購入することができる。20 mg のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を3.0 mLのジオキサンに溶かすことにより、NHSの原液を調製した。30 mg のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を2.50 mL のジオキサンに溶かすことによりDCCの原液を調製した。40 mg のコルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム(コルチゾール−3−CMO)の入ったガラス製バイアルに、1.744 mLのNHS原液と1.744 mLのDCC原液を添加した。混合物を攪拌しそして周囲温度で3時間インキュベートした。1.00 gのウシ血清アルブミン(BSA)に12 mLの0.1 M炭酸水素ナトリウム溶液を添加した。この溶液を透明になるまで混合し、そして3時間インキュベーションの終わりに、このBSA溶液に3.0 mLの活性化コルチゾール−3−CMOを添加した。混合物を攪拌し、周囲温度で2時間インキュベートした。2時間のインキュベーション後、0.1 Mリン酸ナトリウム+0.3 M塩化ナトリウム緩衝液(pH 6.0)15 mL を添加した。5.0 μm と0.45μmのSartorius Minisarts を通して混合物を濾過し、次いで8.0 mL/分の流速で5×70 cm のSuperdex 200PGカラム上でのクロマトグラフィーにかけた。主ピークに相当する最初の試験管と、その後の10画分(1分間ずつ)を収集し、そしてプールした。プールした画分を水に対して約15時間透析した。透析を繰り返した。透析物を0.2 μm Sartorius Minsart を通して濾過し、次いで少量のアリコートを凍結乾燥し、必要になるまで凍結保存した。
【0054】
実施例2:
コルチゾール−3−CMO−BSAの還元および活性化
コルチゾール−3−CMO−BSA(24 mg)を50 mM 炭酸ナトリウムと100 mM塩化ナトリウムの溶液(pH 9.5)4 mL中に溶かした。水素化ホウ素ナトリウムの水溶液(4 mg/mL)の0.60 mL アリコートをコルチゾール−3−CMO−BSA溶液に添加し、次いで20℃で30分間連続攪拌した。次いで約200 μL の0.5 Mリン酸ナトリウム溶液を使って、pH 7.2〜7.5 の範囲内の値にpHを調整して過剰な水素化ホウ素を分解した。発泡が静まるまで溶液を穏やかに混合し、約15分間放置しておいた。次いで反応混合物を0.45μm フィルターを通して濾過し、そして0.02Mリン酸塩(pH 7.0)で予め平衡化しておいたSephadex G25 1.6×14.5 cm カラム上で約40 mL/時間の流速でクロマトグラフィーを行った。集めた画分サイズは約0.67 mL(1分間)であった。最も濃縮された15画分、即ち、280 nmで大きな吸収を有する画分をプールした。
【0055】
スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)を9.6 mg/mLの最終濃度になるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶かした。上記のクロマトグラフィー段階より収集した還元型コルチゾール−3−CMO−BSA 10 mLに、SMCC溶液 186μLを添加した。この溶液を穏やかに混合し、次いで20℃で1時間インキュベートした。800 μL のグリシン水溶液(10%, 重量/容量)を使って反応をクエンチングした。クエンチングした反応混合物を、0.1 Mリン酸塩+5 mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の溶液(pH 6.0)で予め平衡化しておいたSephadex G25を充填した3.2 ×10 cm カラム上で約161 mL/時間の流速でクロマトグラフィーを行った。1mL画分を集めた。最も濃縮された8画分(280 nmで大きな吸収を有する)をプールし、そして活性化HRPへの接合に使用した。
【0056】
実施例3:
HRPの活性化
西洋ワサビペルオキシダーゼを10 mg/mLの最終HRP濃度になるように0.1 Mリン酸塩(pH 7.5)に溶かした。このHRP溶液 5 mL を20 mL の反応バイアルに移した。HRP溶液を含む反応バイアルに、DMF中のS−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(SATA)溶液(25 mg/mL)の0.5 mLアリコートを添加した。この溶液を穏やかに混合し、次いで20℃で60分間インキュベートした。0.05M EDTA と2.5 Mヒドロキシルアミンを含む溶液(pH 7.0)のアリコート(500 μL)を反応混合物に添加し、穏やかに混合し、次いで20℃で15分間インキュベートした。次いで混合物を、約63 mL/分の流速を使って、0.1Mリン酸塩+5 mM EDTA 溶液(pH 6.0)で予め平衡化されたSephadex G25の2.0 ×10 cm カラム上でのクロマトグラフィーにかけた。1分間ずつ画分を集めた。最も濃縮された11画分(403 nmで大きな吸収を有する)をプールした。
【0057】
実施例4:
活性化HRPと活性化された還元型コルチゾール−3−CMO−BSAとのカップリング
活性化された還元型コルチゾール−3−CMO−BSA 21.47 mL を活性化HRP 11.55 mL と合わせた。溶液を穏やかに混合し、そして20℃で20時間インキュベートした。メルカプトエタノールを含む水溶液(容量で1%のチオール)のアリコート(224 μL)を反応混合物に添加し、生じた溶液を穏やかに混合し、そして約15分間放置しておいた。次いで、DMF中に 10 mg/mL のN−エチルマレイミドを含む溶液の476 μL アリコートを反応混合物に添加し、そして混合した後、更に20分間インキュベートした。反応混合物を、約344 mL/時間の流速を使って、0.1 Mリン酸塩+0.3 M NaCl 溶液(pH 6.0)で予め平衡化されたSuperdex 200を充填した4.4 ×50 cm カラム上でのクロマトグラフィーにかけた。1分間ずつ画分を集めた。280 nmで大きな吸収を有する最初の溶出液のあたりを中心として最も濃縮された26画分をプールした。
【0058】
接合体プール(cj)の吸収とHRP溶液(実施例2に記載,活性化前で且つ正確な吸収測定値を得るためにリン酸緩衝液中に十分に希釈する前)の吸収を280nmと403 nmで測定した(それぞれA403cj ,A280cj およびA403HRP, A280HRP)。BSA濃度に基づいた還元型コルチゾール−3−CMO−BSA−HRP接合体の濃度を、それらの測定値から次の式を使って求めた:
BSA(mg/mL)=A280cj−(A403cj /〔A403HRP/A280HRP〕)/0.76
【0059】
実施例4:
接合体の評価
HRP標識還元型コルチゾール−3−CMO−BSA(以後、HRP−RC接合体と称する)の評価は、オルソ−クリニカル ダイアグノスティクス社のVITROS ECi化学発光アッセイ方法論を使って評価した。
VITROS ECi系での使用のために下記の試薬を調製した。
【0060】
標識溶液
− 100 ng/mL の還元型コルチゾール−3−CMO−BSA−HRP(または、本発明の接合体標識でないけれども、還元段階を除いて本発明の標識と同じ手順で担持された、20ng/mL の比較用HRP−コルチゾール接合体標識)
− 2.86 g/Lの第二リン酸ナトリウム,無水
− 7.3 g/L の第一リン酸ナトリウム,一水和物
− 0.01 g/Lのフェリシアン酸カリウム
− 2.5 g/L の8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸
− 20 g/Lのウシ血清アルブミン
− 0.03 g/Lのアポ西洋ワサビペルオキシダーゼ
− 0.2 %のウシαグロブリン(Cohn画分IV-I)
− 1 g/L のウシγグロブリン
− 5 g/L の正常ヒツジ血清
− 100 g/L の活性炭処理したヒト血漿
− 20 g/LのKathon(5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む保存剤)
− pH 6.4
【0061】
ビオチン化ヒツジポリクローナル抗コルチゾール溶液
− 1.5 μg/mLのビオチン化ヒツジ抗コルチゾールγグロブリン
− 21 g/Lの第二リン酸ナトリウム,無水
− 1.8 g/L の塩化ナトリウム
− 1.1 g/L のクエン酸
− 20 g/Lのウシ血清アルブミン
− 20 g/LのKathon
− pH 5.4
【0062】
洗浄試薬
− 0.39 g/Lのホウ酸
− 0.35 g/Lの四ホウ酸二ナトリウム
− 0.58 g/Lの塩化ナトリウム
− 0.50 g/LのTRITON X-100(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)
− 0.5 % w/w BRONIDOX(5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサンを含む保存剤)
− pH 8.4
【0063】
シグナル試薬
A部
− 3.88 g/Lのホウ酸
− 14.2 g/Lの四ホウ酸ナトリウム
− 1.06 g/Lのクエン酸ナトリウム
− 0.08 g/Lの安息香酸ナトリウム
− 0.10 g/Lのアジ化ナトリウム
− 0.008 g/L のジエチレントリアミンペンタ酢酸
− 0.58 g/Lのグリシン
− 0.40 g/Lのルミノール
B部
− 0.90 g/Lのクエン酸
− 1.68 g/Lのクエン酸ナトリウム
− 0.08 g/Lの安息香酸ナトリウム
− 0.62 g/Lの過ホウ酸ナトリウム
− 0.06 g/Lの3−クロロ−4−ヒドロキシアセトアニリド
− 5.84 g/Lの塩化ナトリウム
【0064】
抗コルチゾールビオチン化ヒツジ抗体のアリコート(75μL)、コルチゾールまたはコルチゾールに構造的に類似しているステロイドを含む血清(後述)の試料 30 μL 、およびHRP−RC接合体 75 μL を、ストレプトアビジンが予め結合されているVITROS ECi試料容器に添加した。溶液を37℃で30分間インキュベートし、次いで上記の洗浄試薬を使って洗浄した。
【0065】
上記シグナル試薬溶液の200 μL アリコート(A部 100μL とB部 100μL を使用直前に混合したもの)を試料容器に添加した。溶液を37℃で5分間インキュベートし、次いで化学発光強度を測定した。
【0066】
実施例5:
交差反応性
上記方法を使って、一定量の抗コルチゾール抗体に結合した一定量の比較用HRP標識コルチゾール接合体(非還元型コルチゾール、HRP−NRC)またはHRP−RC接合体の50%を置換する潜在的な交差反応体(コルチゾールに構造的に類似しているステロイド:11−デオキシコルチゾール、プレドニソロン、コルチコステロンおよびコルチゾン)の濃度を測定した。
【0067】
様々なレベルの潜在的な交差反応体を、比較用標識コルチゾール接合体(非還元型コルチゾール、HRP−NRC)または本発明のHRP−RC接合体のいずれかを含む試料容器へと添加した。
【0068】
到達し得る最大値(全ての接合体が置換された値)の50%に相同する光シグナル測定値を生じる交差反応体の濃度を測定し、それを使って後述のように交差反応性%を計算した。その結果を表1に列挙する。
【0069】
交差反応性%は、上述のアッセイ方法ごとに測定した、HRP−NRC比較用接合体(またはHRP−RC接合体)の50%を置換するコルチゾールの濃度を、HRP−NRCひ比較用接合体(またはHRP−RC接合体)の50%を置換する交差反応体の濃度で割った値に、100 を乗じた値として定義される。
【0070】
【表1】

【0071】
これらのデータは、本発明の代表的なHRP−RC接合体が、コルチゾールについてのイムノアッセイにおいて有意に低い交差反応性を提供することを示す。従って、本発明の標識還元型コルチゾールを使ったコルチゾールアッセイは、改善された正確度を示し、改善された診断、治療および追跡を提供するだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式
【化1】

(上式中、XはO、S、スルホニルまたはホスホノであり;X1 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y1 は連結基または結合であり;X2 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y2 は連結基または結合であり;A1 とA2 は各々水素であるか、またはA1 とA2 が一緒になって単結合を形成し、B1 とB2 は各々水素であるか、またはB1 とB2 が一緒になって単結合を形成し、E1 とE2 は各々水素であるか、またはE1 とE2 が一緒になって単結合を形成し、ただし、A1 とA2 、またはB1 とB2 、またはE1 とE2 の少なくとも1つが各々水素である)
を有する還元型コルチゾール接合体。
【請求項2】
XがOでありそしてX1 がウシ血清アルブミンである、請求項1に記載の還元型コルチゾール接合体。
【請求項3】
Y1 がメチレンカルボニルオキシである、請求項2に記載の還元型コルチゾール接合体。
【請求項4】
X2 がペルオキシダーゼであり、そしてY2 が(4−〔2,5−ジオキソ−3−{(2−エチルカルボニル)スルファニル}テトラヒドロ−1H−1−ピロリル〕メチル)−1−シクロヘキサンカルボニルである、請求項3に記載の還元型コルチゾール接合体。
【請求項5】
水性組成物中の請求項1に記載の還元型コルチゾール接合体。
【請求項6】
下式
【化2】

(上式中、XはO、S、スルホニルまたはホスホノであり;X1 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y1 は連結基または結合であり;X2 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y2 は連結基または結合であり;A1 とA2 は各々水素であるか、またはA1 とA2 が一緒になって単結合を形成し、B1 とB2 は各々水素であるか、またはB1 とB2 が一緒になって単結合を形成し、E1 とE2 は各々水素であるか、またはE1 とE2 が一緒になって単結合を形成し、ただしA1 とA2 、またはB1 とB2 、またはE1 とE2 の少なくとも1つが各々水素である)
を有する還元型コルチゾール接合体の製造方法であって、
下式の化合物
【化3】

を還元剤と反応させることを含んで成る方法。
【請求項7】
前記還元剤が水素化ホウ素塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
XがOであり、X1 がウシ血清アルブミンであり、そしてY1 がメチレンカルボニルオキシである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
X2 がペルオキシダーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Y2 が(4−〔2,5−ジオキソ−3−{(2−エチルカルボニル)スルファニル}テトラヒドロ−1H−1−ピロリル〕メチル)−1−シクロヘキサンカルボニルであり、そしてX2 が西洋ワサビペルオキシダーゼである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
下式
【化4】

(上式中、XはO、S、スルホニルまたはホスホノであり;X1 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y1 は連結基または結合であり;X2 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y2 は連結基または結合であり;A1 とA2 は各々水素であるか、またはA1 とA2 が一緒になって単結合を形成し、B1 とB2 は各々水素であるか、またはB1 とB2 が一緒になって単結合を形成し、E1 とE2 は各々水素であるか、またはE1 とE2 が一緒になって単結合を形成し、ただしA1 とA2 、またはB1 とB2 、またはE1 とE2 の少なくとも1つが各々水素である)
を有する還元型コルチゾール接合体の製造方法であって、
(i)下式の化合物
【化5】

を還元剤と反応させ、それにより化合物IAまたはICを形成させ;そして
(ii)場合により、化合物IAまたはICを第一のカップリング剤と反応させて、下式の化合物
【化6】

(上式中、G1 はカップリング基である)を形成させ;
(iii)場合により、X2 を第二のカップリング剤と反応させて、X2 −G2 (ここでG2 はカップリング基G1 と共に共有結合を形成することができるカップリング基であり、そしてG1 とG2 は同じであってもよい)を形成させ;
(iv)場合により、化合物IAまたはICをX2 −G2 (ここでG2 はX1 の官能基と共有結合することができる)と反応させて、還元型コルチゾール接合体IBまたはIDを形成させ;
(v)場合により、化合物 IIIAまたは IIICをX2 (ここでG1 はX2 の官能基と共有結合することができる)と反応させて、還元型コルチゾール接合体IBまたはIDを形成させ;
(vi)場合により、化合物 IIIAまたは IIICをX2 −G2 と反応させて、還元型コルチゾール接合体IBまたはIDを形成させる
という各段階を含んでなる方法。
【請求項12】
XがOであり、そしてX1 がウシ血清アルブミンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Y1 がメチレンカルボニルオキシである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
X2 がペルオキシダーゼであり、第一のカップリング剤が4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルであり、そして第二のカップリング剤がS−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コルチゾールについての競合アッセイの実施方法であって、
A)コルチゾールを含む疑いのある試料を
i)コルチゾールを結合する固定化されたまたは固定化可能なレセプターと接触させ、それにより固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合したコルチゾールと、固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合しないコルチゾールとを形成させ、
ii)下式
【化7】

(上式中、XはO、S、スルホニルまたはホスホノであり;X1 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y1 は連結基または結合であり;X2 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y2 は連結基または結合であり;A1 とA2 は各々水素であるか、またはA1 とA2 が一緒になって単結合を形成し、B1 とB2 は各々水素であるか、またはB1 とB2 が一緒になって単結合を形成し、E1 とE2 は各々水素であるか、またはE1 とE2 が一緒になって単結合を形成し、ただしA1 とA2 、またはB1 とB2 、またはE1 とE2 の少なくとも1つが各々水素であり、そしてX1 とX2 の少なくとも1つが標識された天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識である)
を有する還元型コルチゾール接合体と接触させ、それにより固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体と、固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体とを形成させ;そして
B)試料中のコルチゾールの量の指標として、前記固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体か、前記固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体のいずれかを検出する
という各段階を含んで成る方法。
【請求項16】
XがOであり、そしてX1 がウシ血清アルブミンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Y1 がメチレンカルボニルオキシであり、そしてX2 がペルオキシダーゼである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
X1 がペルオキシダーゼであり、Y2 が(4−〔2,5−ジオキソ−3−{(2−エチルカルボニル)スルファニル}テトラヒドロ−1H−1−ピロリル〕メチル)−1−シクロヘキサンカルボニルであり、そしてX2 が西洋ワサビペルオキシダーゼである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体から、前記固定化されたまたは固定化可能なレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体を分離することを更に含んで成る、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
コルチゾールについての競合結合アッセイの実施方法であって、該方法は
a)展開区画、
b)1または複数の試薬区画、
c)支持体、並びに
前記区画の1区画または複数区画において一緒にまたは別々に、コルチゾールを結合する固定化されたレセプター、および場合により下式
【化8】

(上式中、XはO、S、スルホニルまたはホスホノであり;X1 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y1 は連結基または結合であり;X2 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y2 は連結基または結合であり;A1 とA2 は各々水素であるか、またはA1 とA2 が一緒になって単結合を形成し、B1 とB2 は各々水素であるか、またはB1 とB2 が一緒になって単結合を形成し、E1 とE2 は各々水素であるか、またはE1 とE2 が一緒になって単結合を形成し、ただしA1 とA2 、またはB1 とB2 、またはE1 とE2 の少なくとも1組が各々水素であり、そしてX1 とX2 の少なくとも1つが標識された天然もしくは合成ポリマーであるか、または標識である)
を有する標識還元型コルチゾール接合体
を含んで成る乾式分析要素を使用し、
A)前記乾式分析要素の展開区画を
i)コルチゾールを含む疑いのある試料と接触させ、それにより固定化されたレセプターに結合したコルチゾールと、固定化されたレセプターに結合しないコルチゾールとを形成させ、
ii)前記標識還元型コルチゾール接合体が乾式分析要素中に存在しない場合には、その標識還元型コルチゾール接合体と接触させ、それにより前記固定化されたレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体と、前記固定化されたレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体とを形成させ、
B)試料中のコルチゾールの量の指標として、前記固定化されたレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体か、前記固定化されたレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体のいずれかを検出する
という各段階を含んで成る方法。
【請求項21】
XがOであり、そしてX1 がウシ血清アルブミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
Y1 がメチレンカルボニルオキシである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
X1 がペルオキシダーゼであり、Y2 が(4−〔2,5−ジオキソ−3−{(2−エチルカルボニル)スルファニル}テトラヒドロ−1H−1−ピロリル〕メチル)−1−シクロヘキサンカルボニルであり、そしてX2 が西洋ワサビペルオキシダーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記固定化されたレセプターに結合しない標識還元型コルチゾール接合体から、前記固定化されたレセプターに結合した標識還元型コルチゾール接合体を分離することを更に含んで成る、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
抗コルチゾール抗体の産生方法であって、
A)下式
【化9】

(上式中、XはO、S、スルホニルまたはホスホノであり;X1 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y1 は連結基または結合であり;X2 は標識されたもしくは未標識の天然もしくは合成ポリマーであるかまたは標識であり;Y2 は連結基または結合であり;A1 とA2 は各々水素であるか、またはA1 とA2 が一緒になって単結合を形成し、B1 とB2 は各々水素であるか、またはB1 とB2 が一緒になって単結合を形成し、E1 とE2 は各々水素であるか、またはE1 とE2 が一緒になって単結合を形成し、ただしA1 とA2 、またはB1 とB2 、またはE1 とE2 の少なくとも1つが各々水素である)
を有する還元型コルチゾール接合体を用いて宿主動物を免疫し、それによりコルチゾールを結合する抗体を産生させ;
B)前記宿主動物の血清または血漿からコルチゾールを結合する抗体を単離し;または
C)抗体産生細胞を含有する脾臓、リンパ系組織または他の組織を取り出し;
D)前記抗体産生細胞を取り出し;
E)前記抗体産生細胞からハイブリドーマを作製し;
F)コルチゾールを結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択し;そして
G)コルチゾールを結合する抗体を単離する
という各段階を含んで成る方法。

【公開番号】特開2011−148821(P2011−148821A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−90267(P2011−90267)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【分割の表示】特願平11−282460の分割
【原出願日】平成11年10月4日(1999.10.4)
【出願人】(594199337)オルソ−クリニカル ダイアグノスティクス,インコーポレイティド (14)
【Fターム(参考)】