説明

部品の実装処理方法および部品実装システム

【課題】多面取り基板を生産する際の表面実装機のタクトタイムを短縮する。
【解決手段】部品実装システムは、多面取り基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置2およびその印刷後の基板に部品を実装する表面実装機3〜5を含む。このシステムでは、多面取り基板に含まれる各エリアのバットマークの有無をスクリーン印刷装置2において予め画像認識しておき、その有無結果データ(不良エリアに関する情報)を表面実装機3〜5に転送することにより、この有無結果データに基づき、表面実装機3〜5においてバットマークが形成された不良エリア以外のエリアに対して部品の実装処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置と表面実装機とを備えた部品実装システムにおいて、いわゆる多面取り基板の処理を合理的に行うための方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、回路パターンが形成された基板(PWB)を搬送しながら、まず印刷装置において基板のクリーム半田、導電ペースト等のペーストを被実装位置に印刷(印刷)し、次いで表面実装機(以下、単に実装機という)によりその印刷位置に順次部品を搭載して基板(PCB)を生産するようにした部品実装システムが知られている。
【0003】
また、この種の部品実装システムにおいて、同一回路が形成された複数のエリアを含むいわゆる多面取り基板を生産する場合に、例えば、重度の欠陥をもつエリアについては当該エリアに事前にマーク(バットマークという)を形成しておき、実装機でこのバットマークを認識することにより当該エリアの実装処理を省略することも行われている(例えば特許文献1)。なお、バットマークの認識は、実装機に設けられる移動可能なカメラを順次バットマークの座標位置に移動させながらその有無を認識することにより行われる。
【特許文献1】特開平10−098297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような部品実装システムでは、近年、基板の高密度化に伴い一枚の基板に対してより多くの部品を実装することが求められている。他方、基板の小型化も進んでおり、多数のエリアを含む多面取り基板を処理することも求められている。そのため、例えば実装機において、多数のエリアを含む多面取り基板に対して部品を実装しようとすると、多くの部品を実装することが求められる上、これに各エリアのバットマークを含む多数のマーク座標位置にカメラを移動させることが求められる結果、タクトタイムを短縮することが難しくなるという問題が生じている。
【0005】
また、印刷装置において基板に印刷処理を施した後は、その印刷状態の検査を行い、印刷不良が発生した場合には、当該基板を撤去することが行われるが、通常、印刷処理は、一枚のマスクシートを基板に重装してその全体に一体に処理を施すため、印刷状態の検査も基板の種類に拘わらず常に全点検査が行われている。そのため、多面取り基板についても、エリアの概念はなく常に全点検査が行われており、一部のエリアに印刷不良がある場合でもその基板全体が不良扱いされる結果、有効なエリアが無駄になる場合があった。従って、この点を改善することも望まれる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、印刷装置と表面実装機とを備えた部品実装システムにおいて、多面取り基板を生産する際の表面実装機のタクトタイムを効果的に短縮することにあり、また、第2の目的は、多面取り基板の生産に関してその歩留まりを向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の部品の実装処理方法は、基板に部品を実装する表面実装機を少なくとも備えた部品実装システムを用いて、互いに独立する回路が形成された複数のエリアをもつ多面取り基板に対して部品の実装処理を行う方法であって、前記多面取り基板の各エリアのうち実装処理が不要な不良エリアを前記表面実装機への搬入前に予め調べておき、この不良エリアに関する情報を表面実装機に転送することにより、この情報に基づき、表面実装機において不良エリア以外のエリアに対して部品の実装処理を施すようにしたものである(請求項1)。
【0008】
このように基板(多面取り基板)の不良エリアを表面実装機への搬入前に事前に特定しておくようにすれば、表面実装機において不良エリアを特定する手間(時間)が省け、その分、部品の実装処理を速やかに進めることが可能となる。
【0009】
なお、この方法において、前記部品実装システムが、基板にペーストを印刷する印刷装置を含みその印刷後の基板に部品を前記表面実装機により実装するものについては、前記印刷装置において前記不良エリアに関する情報を取得し、この情報を印刷装置から表面実装機に転送するようにするのが好適である(請求項2)。
【0010】
すなわち、多面取り基板を被処理基板とする場合、通常、印刷装置のタクトタイムは表面実装機よりも短くなるため、上記のように印刷装置の作業負担を増やすことにより合理的に表面実装機の作業負担を軽減することが可能となる。
【0011】
具体的には、前記エリアのうち部品の実装が不要な欠陥エリアに予めバットマークが形成される多面取り基板については、前記バットマークが形成されるエリアを予め調べ、バットマークが形成されるエリアを不良エリアとして前記情報を表面実装機に転送するようにすれば(請求項3)、表面実装機のタクトタイムを効果的に短縮することができる。
【0012】
また、前記印刷装置による印刷処理後、その印刷状態を検査するとともに印刷不良が検出された場合には前記各エリアのうち当該印刷不良が属するエリアを特定し、この特定エリアを不良エリアとして前記情報を表面実装機に転送するようにしてもよい(請求項4)。
【0013】
この方法によれば、多面取り基板の各エリアのうちその印刷状態が悪いエリア(印刷不良が属するエリア)についてだけ実装処理を省略することが可能となる。すなわち、印刷処理が適正に行われたエリアを有効に生かすことが可能となる。
【0014】
一方、本発明に係る部品実装システムは、互いに独立する回路が形成された複数のエリアをもつ多面取り基板を被処理基板として当該基板にペーストを印刷する印刷装置およびその印刷後の基板に部品を実装する表面実装機を少なくとも備えた部品実装システムであって、前記印刷装置が、前記基板に対して相対的に移動可能な基板撮像用のカメラと、このカメラにより撮像した基板の画像データに基づいて前記エリアのうち実装処理が不要な不良エリアを特定する特定手段と、この特定手段により特定された不良エリアに関する情報を前記表面実装機に送信する送信手段とを備える一方、前記表面実装機が、前記送信手段により送信される不良エリアに関する情報を受信する受信手段と、受信した前記情報に基づき不良エリア以外のエリアに対して部品の実装処理を施すべく部品の実装動作を制御する制御手段とを備えているものである(請求項5)。
【0015】
この部品実装システムによると、印刷装置に設けられたカメラにより基板(多面取り基板)が撮像され、その画像データに基づき不良エリアが特定される。そして、この不良エリアに関する情報が印刷装置の送信手段および表面実装機の受信手段を介して表面実装機側に転送されることにより、この情報に基づき部品の実装動作が制御手段により制御される。そのため、部品実装システムにおいて、請求項1,2に係る部品の実装処理方法が具現化される。
【0016】
なお、この装置において、各エリアのうち部品の実装が不要な欠陥エリアに予めバットマークが形成される多面取り基板が被処理基板となる場合には、前記カメラは、前記基板のバットマークの座標位置を順次撮像し、前記特定手段は、その画像データに基づきバットマークの有無を判定するとともにバットマークが形成されたエリアを不良エリアとして特定するものであればよい(請求項6)。
【0017】
また、前記カメラは、印刷処理後の前記基板の印刷位置を順次撮像し、前記特定手段は、その画像データに基づき印刷不良の検出を行うとともに、印刷不良を検出した場合に前記各エリアのうち当該印刷不良が属するエリアを不良エリアとして特定するものであってもよい(請求項7)。
【0018】
これらの構成によると、部品実装システムにおいて、請求項3および請求項4の部品の実装処理方法がそれぞれ具現化される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1〜4に係る部品の実装処理方法、および請求項5〜7に係る部品実装システムによると、表面実装機において実装不要な不良エリアを特定する手間(時間)が省け、その分、多面取り基板を生産する際の表面実装機のタクトタイムを効果的に短縮することができる。特に、請求項4に係る部品の実装処理方法、および請求項7に係る部品実装システムによると、多面取り基板の各エリアのうち一部に印刷不良が発生した場合でも、それ以外のエリア(印刷処理が適正に行われたエリア)を有効に生かすことが可能となり、その結果、ライン落ちする基板を低減させて歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る部品実装システム(本発明に係る部品の実装処理方法が適用される部品実装システム)である実装ラインを概略的に示している。このラインは、その上流側からローダ1、スクリーン印刷装置2、第1表面実装機3、第2表面実装機4、第3表面実装機5、リフロー炉6およびアンローダ7が直列に並んだ構成となっている。そして、ローダ1からプリント基板(以下、単に基板という)を順次繰り出しながらはんだペーストの印刷、部品の実装(搭載)およびペースト硬化の各処理を順次基板に施してアンローダ7に取り出すように構成されている。
【0022】
各装置1〜7は、制御装置1A〜7Aを備えた自律型の装置であって、各装置1〜6が各自の制御装置により個別に駆動制御されるようになっている。また、スクリーン印刷装置2および各表面実装機3〜5はそれぞれLAN8に接続されており、このLAN8を通じて基板の生産に関する各種情報を互いに送信できるようになっている。なお、同図中、符号9はサーバを示している。
【0023】
図2および図3は、スクリーン印刷装置2を概略的に示しており、図2はカバーを取外した状態の要部側面図で、図3は正面図でそれぞれスクリーン印刷装置2を示している。
【0024】
これらの図に示すように、スクリーン印刷装置2(以下、印刷装置2と略す)の基台11上には、印刷ステージ13が設けられ、この印刷ステージ13を挟んでその両側に、プリント基板P(以下、基板Pと略す)を印刷ステージ13上に搬入および搬出するための上流側コンベア12Aおよび下流側コンベア12Cが搬送ラインに沿って配置されている。なお、以下の説明では、これらコンベア12A、12Cによる基板Pの搬送方向(部品実装システムにおける基板Pの搬送方向、すなわち各装置1〜7の並び方向に同じ)をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることにする。
【0025】
印刷ステージ13は、基板Pを保持してこれを後記マスクシート35に対してその下側から位置決めするもので、主に後述するメインコンベア12B、昇降テーブル28およびクランプ機構14等により構成されている。
【0026】
この印刷ステージ13は、4軸ユニット20に支持されており、同ユニット20の作動によりX軸、Y軸、Z軸およびR軸(Z軸回りの回転)に移動するようになっている。
【0027】
詳しく説明すると、基台11上には、水平面内においてY軸方向に沿ってレール21が配設されるとともに、このレール21にY軸テーブル22がスライド自在に取り付けられている。そして、基台11上に設けられたボールねじ機構(図示省略)がY軸テーブル22に連結され、このボールねじ機構が駆動されることによりY軸テーブル22が基台11に対しY軸方向に移動するように構成されている。
【0028】
Y軸テーブル22上にはX軸方向に沿ってレール23が配設されるとともに、このレール23にX軸テーブル24がスライド自在に取り付けられる。そして、Y軸テーブル22上に設けられたボールねじ機構(図示省略)がX軸テーブル24に連結され、このボールねじ機構が駆動されることによりX軸テーブル24がY軸テーブル22に対しX軸方向に移動するように構成されている。
【0029】
X軸テーブル24には、R軸テーブル26がZ軸方向の軸線回りに回転自在に設けられており、このR軸テーブル26が図外の駆動手段によりX軸テーブル24に対してZ軸回りに回転駆動されるようになっている。
【0030】
R軸テーブル26にはスライド支柱27が上下方向(Z軸方向)に沿ってスライド自在に取り付けられるとともに、このスライド支柱27の上部に昇降テーブル28が取り付けられている。そして、昇降テーブル28とR軸テーブル26との間にボールねじ機構29が設けられ、このボールねじ機構29が駆動されることにより昇降テーブル28がスライド支柱27によりガイドされながらR軸テーブル26に対しZ軸方向(上下方向)に移動するよう構成されている。
【0031】
このように4軸ユニット20は、上記各テーブル22,24,26,28を個別に駆動することにより印刷ステージ13をX軸、Y軸、Z軸およびR軸(Z軸回りの回転)に移動させるように構成されている。
【0032】
昇降テーブル28上には、X軸方向に沿って一対のメインコンベア12Bが設けられるとともに、クランプ機構14および載置テーブル30等が設けられている。そして、上記の通り昇降テーブル28、メインコンベア12B等により、基板Pを保持するための上記印刷ステージ13が構成されている。
【0033】
メインコンベア12Bは、昇降テーブル28の昇降に伴いこれと一体に移動し、昇降テーブル28が所定のホームポジション(下降端位置であって、かつX軸、Y軸およびR軸方向の予め定められた原点位置)にセットされた状態で、上流側コンベア12Aおよび下流側コンベア12Cに対してX軸方向に並ぶように構成されている。そして、このように昇降テーブル28がホームポジションにセットされることにより上流側コンベア12Aから印刷ステージ13(メインコンベア12B)への基板Pの搬入、および印刷ステージ13から下流側コンベア12Cへの基板Pの搬出が行われるようになっている。
【0034】
クランプ機構14は、作業中、基板Pを固定的に保持するもので、Y軸方向に接離可能な一対のクランプ片14aを有し、これらクランプ片14aにより基板PをY軸方向両側から挟み込むことにより固定するように構成されている。
【0035】
載置テーブル30は、メインコンベア12B上の基板Pをその下側から持上げることにより基板Pを支持するもので、スライド支柱31により昇降テーブル28上に昇降可能に支持され、図外の駆動機構により昇降テーブル28に対してZ軸方向(上下方向)に移動するよう構成されている。
【0036】
一方、印刷ステージ13等の上方には、マスク保持ユニット16、スキージユニット17および撮像ユニット18等が配置されている。
【0037】
マスク保持ユニット16は、印刷用のマスクシート35を着脱可能に保持するもので、図外のマスククランプによってマスクシート35を前記印刷ステージ13の上方において水平に張り渡した状態で保持するように構成されている。
【0038】
スキージユニット17は、図外のノズルから前記マスクシート35上に供給されるクリームはんだ、導電ペースト等のペーストをマスクシート35上でローリング(混練)させながら拡張するものである。このスキージユニット17は、一対のスキージ33,33と、これらスキージ33,33を個別に昇降させる昇降機構とを備えており、図外の駆動機構によりY軸方向に一体に移動可能に構成されている。そして、印刷時には、Y軸方向に往復移動しながらこれらスキージ33,33を交互にマスクシート35の表面に沿って摺動させることにより、マスクシート35上でペーストを拡張するように構成されている。
【0039】
撮像ユニット18は、基板Pおよびマスクシート35を撮像するためのもので、マスク保持ユニット16の下側に設けられている。この撮像ユニット18は、マスクシート35を撮像すべく上向きに設けられるマスク認識カメラ36および基板Pを撮像するために下向きに設けられる基板認識カメラ37を一体的に備えたカメラヘッド38と、このカメラヘッド38を移動させる駆動機構とを有しており、前記カメラヘッド38をX軸方向およびY軸方向に平面的に移動させることによりマスクシート35および基板Pを撮像するように構成されている。なお、各カメラ36,37は、共に照明装置を備えたCCDカメラ等から構成され、かつ光軸が同軸上に並ぶように上下対称な位置関係でカメラヘッド38に組み付けられており、これによってX−Y座標平面上の同じ座標位置の対象物を上下同時に撮像できるようになっている。
【0040】
以上の構成により、印刷装置2では、前記印刷ステージ13に搬入される基板Pを4軸ユニット20の駆動によりマスクシート35に対してその下側から重装し、この状態でスキージユニット17を駆動することによりペーストを拡張しつつマスクシート35の印刷用開口35a(図7(b)参照)を介して印刷する。そして、印刷後は、4軸ユニット20の駆動によりマスクシート35から基板Pを引き離し、この状態で基板認識カメラ37により基板Pを撮像することにより印刷状態を検査し、検査後、基板Pを装置外へ搬出するようになっている。なお、詳しい印刷動作等については後に詳述する。
【0041】
図4及び図5は、第1表面実装機3の構成を平面図で概略的に示している。
【0042】
同図に示すように第1表面実装機3の基台51上には、X軸方向に延びるコンベア52が配置され、基板Pがこのコンベア52に搬送されて所定の実装作業位置(図示の位置)で停止されるようになっている。実装作業位置には、図示を省略するが基板Pの位置決め機構が設けられており、基板Pがコンベア52に沿って搬入されると、この位置決め機構が作動して基板Pを前記実装作業位置に位置決め固定するように構成されている。
【0043】
コンベア52の両側には、部品供給部54が配置されており、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ部品を供給可能な多数列のテープフィーダ54aがこれら部品供給部54に配置されている。
【0044】
また、上記基台51の上方には、部品装着用のヘッドユニット56が装備されている。このヘッドユニット56は、部品供給部54と実装作業位置の基板Pとにわたって移動可能とされ、X軸方向およびY軸方向に移動することができるようになっている。
【0045】
すなわち、基台51上には、Y軸方向の固定レール57と、Y軸サーボモータ59により回転駆動されるボールねじ軸58とが配設され、上記固定レール57上にヘッドユニット56の支持部材61が配置され、この支持部材61に設けられたナット部分62がボールねじ軸58に螺合している。また、上記支持部材61には、X軸方向のガイド部材63と、X軸サーボモータ65により駆動されるボールねじ軸64とが配設され、上記ガイド部材63にヘッドユニット56が移動可能に保持され、このヘッドユニット56に設けられたナット部分(図示せず)がボールねじ軸64に螺合している。そして、Y軸サーボモータ59の作動により上記支持部材61がY軸方向に移動するとともに、X軸サーボモータ65の作動によりヘッドユニット56が支持部材61に対してX軸方向に移動するようになっている。
【0046】
ヘッドユニット56には部品装着用の複数の実装用ヘッド66が搭載されており、当実施形態では6本の実装用ヘッド66がX軸方向に等間隔で一列に並んだ状態で搭載されている。各実装用ヘッド66は、ヘッドユニット56のフレームに対してZ軸方向の移動及びR軸(ノズル中心軸)回りの回転が可能とされ、図外の昇降駆動機構および回転駆動機構により駆動されるようになっている。また、各実装用ヘッド66には、その先端(下端)にノズル66aが装着されており、図外の負圧供給手段からノズル66a先端に負圧が供給されることにより部品を吸着保持するようになっている。
【0047】
ヘッドユニット56には、さらに基板認識用カメラ67が搭載されている。この基板認識用カメラ67は、照明装置を備えたCCDカメラ等から構成されており、ヘッドユニット56の移動に伴い実装作業位置に位置決めされた基板P上の各種マークを撮像するようになっている。
【0048】
また、基台51上には、部品認識用カメラ68が配設されている。この部品認識用カメラ68も基板認識用カメラ67と同様に、照明装置を備えたCCDカメラ等から構成されており、ヘッドユニット56の各実装用ヘッド66に吸着された部品をその下側から撮像するようになっている。
【0049】
以上のような構成により、この第1表面実装機3では、ヘッドユニット56が部品供給部54と実装作業位置に位置決めされた基板Pとの間を移動しながら、各実装用ヘッド66により部品供給部から部品を吸着し、この吸着部品を基板P上に搬送して実装するようになっている。なお、詳しい実装動作については後述することにする。
【0050】
以上は、第1表面実装機3の構成であるが、第2表面実装機4および第3表面実装機5もこの第1表面実装機3とほぼ同様に構成されている。
【0051】
一方、リフロー炉6については図示を省略するが、例えば、基板搬送用のコンベアおよび熱風機等を有しており、部品実装後の基板Pに対して熱処理を施すことによりはんだ等を硬化させて部品を基板P上に固定するように構成されている。
【0052】
次に、印刷装置2および表面実装機3〜5の制御系について図6を用いて説明する。
【0053】
この図は印刷装置2および表面実装機3〜5の各制御装置2A〜5Aの機能構成のうち本発明に関連する機能構成部分だけをブロック図で示している。なお、各制御装置2A〜5Aの機能構成は基本的に共通しており、従って、以下の説明では重複した説明を避けるために同一図面を用いて両者の機能構成を説明するものとし、特に区別する必要がある場合には、表面実装機3〜5の機能構成にダッシュ( ′)を付した符号を用いることにより区別することとにする。
【0054】
同図に示す各制御装置2A〜5Aは、論理演算を実行する周知のCPU、そのCPUを制御する種々のプログラムなどを予め記憶するROM、印刷動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM、各種データやソフトを記憶するHDD等から構成されており、その機能構成として、主制御手段71、プログラム記憶手段72、各種データ記憶手段73、画像処理手段74およびデータ通信手段75を含んでいる。また、印刷装置2の制御装置2Aは、さらにエリアデータ作成手段76を含んでいる。
【0055】
主制御手段71は、プログラム記憶手段72に記憶されているプログラムに従って一連の作業(印刷作業、あるいは部品の実装作業)を進めるべく各装置の駆動を統括的に制御するとともに、その作業に伴う各種演算処理を行うものである。
【0056】
なお、印刷装置2の主制御手段71は、後に詳述するが、基板認識カメラ37の画像データに基づいて多面取り基板に形成されるバットマークの有無や、当該マークが形成されるエリア等を認識(特定)し、また、印刷不良がある場合にはその不良が該当するエリアを特定するものあり、当実施形態では、この主制御手段71が本発明に係る特定手段として機能する。
【0057】
プログラム記憶手段72は、上記の通り印刷、あるいは実装に関する各種プログラムを記憶するものである。
【0058】
各種データ記憶手段73は、印刷装置2や表面実装機3〜5での作業に必要な各種データを記憶するものである。例えば、印刷装置2の各種データ記憶手段73には、マスク関連データ(マスクシート35の各印刷用開口35aの座標位置データ、同形状データ、マスクシート35に形成される各種マークの座標位置データ、同形状データ等)が記憶される一方、表面実装機3〜5の各種データ記憶手段73′には、部品関連データ(部品の種類、形状、寸法等のデータ)および基板関連データ(基板の種類、部品の搭載位置データ、搭載エリアデータ、基板に形成される各種マークの座標位置データ、同形状データ等)が記憶されている。
【0059】
画像処理手段74は、各カメラから出力される画像データに所定の画像処理を施すもので、主制御手段71は、この画像データに基づいて対象物の認識、およびその認識に基づく各種の判別および演算等を行う。
【0060】
データ通信手段75は、通信制御を行うもので、必要な場合には、このデータ通信手段75を介してサーバ9、印刷装置2および各表面実装機3〜5との間で各種情報の送信が行われるようになっている。具体的には、被処理基板Pが後述する多面取り基板である場合には、データ通信手段75,75′を介して表面実装機3〜5から印刷装置2に上記部品関連データおよび基板関連データが送信され、また、印刷装置2から表面実装機3〜5に対して後述する不良エリアに関するデータが送信されるようになっている。すなわち、これらデータ通信手段75,75′が本発明に係る送信手段および受信手段に相当する。
【0061】
エリアデータ作成手段76は、上記の通り印刷装置2の制御装置2Aにのみ設けられる特有の機能構成である。このエリアデータ作成手段76は、被処理基板Pが多面取り基板である場合に、各種データ記憶手段73に記憶されているマスク関連データと、LAN8を通じて表面実装機3〜5から送信される部品および基板関連データとに基づいて、マスクシート35の各印刷用開口35aと基板Pの各エリアとを関連づけるデータ(エリアデータという)を作成するものである。
【0062】
ここで、エリアデータ作成手段76によるエリアデータの作成方法の概要について多面取り基板の構成とこれに対応するマスクシート35の構成と共に説明することにする。
【0063】
図7(a)は、いわゆる多面取り基板Pの一例を、同図(b)はその基板Pに対応するマスクシート35をそれぞれ概略的に示している。
【0064】
多面取り基板Pは、例えば同一回路が形成された複数のエリア(図示の例では6つのエリアE1〜E6)を含むもので、一枚の基板としてペーストの印刷をおよび部品の実装処理を施した後、各エリアE1〜E6をそれぞれ切り離して個別に使用される構造となっている。この基板Pには、その位置を認識するための一対のフィデューシャルマークM1(FIDマークM1という)が形成され、また、各エリアE1〜E6には、表面実装機3〜5による実装精度を高めるためのフィデューシャルマークM2(FIDマークM2という)が個別に形成されている。さらに、回路に損傷がある等、実装処理を行えない重度の欠陥があるエリアE1〜E6については、表面実装機3〜5において当該エリアを判別して実装処理を省略するためのバットマークM3が各エリアE1〜E6の特定の位置に形成される。なお、このバットマークM3は、欠陥があるエリアE1〜E6についてのみ形成されるが、同図では、説明の便宜上、全てのエリアE1〜E6にバットマークM3が形成されたものを示している。
【0065】
一方、マスクシート35には、同図に示すように多面取り基板Pのパターン、すなわち印刷位置(図7(a)に示す各エリアE1〜E6の白抜き部分)に対応する印刷用開口35aが形成されている。そして、マスクシート35の下面(印刷ステージ13に固定される基板Pへの対向面)には、その角部に位置認識用のフィデューシャルマークMa(FIDマークMa)が形成されている。
【0066】
エリアデータ作成手段76は、上記のような各種データ記憶手段73に記憶されているマスク関連データと、各表面実装機3〜5から送信される部品および基板関連データとに基づき上記エリアデータを作成する。具体的には、マスクシート35の印刷用開口35aの座標位置データおよび形状(寸法)データと、部品の搭載位置データおよび部品(形状、寸法)データとに基づき、図8に示すように各印刷用開口35aと部品Cとの重なり状態を仮想的に求めて互いに重合するもの同士を調べ、その結果に基づき印刷用開口35aの座標位置と部品の搭載位置とを関連づける(リンク付けする)。つまり、印刷用開口35aの座標位置と基板P上の実装位置とは互いに対応するため、上記のような重なり状態を調べることにより、印刷用開口35aと部品の実装位置との関連を特定することができる。そして、この関連付けの後、基板関連データに含まれる上記搭載エリアデータ、すなわち部品の搭載位置がどのエリアE1〜E6に属するかを定めたデータに基づき、各印刷用開口35aの座標位置とエリアE1〜E6とを関連付け、このデータ(エリアデータ)を記憶するようになっている。
【0067】
すなわち、この印刷装置2では、後に詳述するように、各印刷位置を基板認識カメラ37により撮像してその印刷状態を検査し、エリアE1〜E6毎の検査結果を各表面実装機3〜5に転送するが、印刷装置2はマスクシート35の各印刷用開口の座標位置データしか持たないため、マスクシート35の各印刷用開口35aの当該座標位置データから基板P上の印刷位置を求めることはできるものの、基板P上の各印刷位置がどのエリアE1〜E6に含まれるかは、エリアE1〜E6に関するデータを持たないため求めることができない。そこで、上記のように表面実装機3〜5から基板関連データを送信することにより、このデータと印刷装置2のもつマスク関連データとに基づいて、マスクシート35の各印刷用開口35aとエリアE1〜E6との対応関係を調べて上記エリアデータを作成するようにしている。
【0068】
次に、制御装置2Aによる印刷装置2の印刷動作制御、および制御装置3A〜5Aによる表面実装機3〜5の実装動作制御についてフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明では多面取り基板Pを処理するものとしてそれぞれ説明する。
【0069】
図9は、制御装置2Aによる印刷装置2の印刷動作制御をフローチャートで示している。この印刷装置2において生産が開始されると、まず、上流側コンベア12Aを駆動して基板Pをローダ1から印刷ステージ13上に搬入して固定する(ステップS1)。この際、印刷ステージ13は予めホームポジション(4軸ユニット20において印刷ステージ13が下降端位置であって、かつX軸、Y軸およびR軸方向の予め定められた原点位置にセットされた状態)にセットされているものとする。なお、印刷ステージ13における基板Pの固定は、まず、載置テーブル30を上昇させることによりメインコンベア12Bに搬入された基板Pを持上げ、位置決め機構15により基板Pを位置決めしながらクランプ機構14により基板Pを挟み付けることにより行う。
【0070】
次いで、カメラヘッド38を印刷作業領域外の所定のホームポジションから印刷ステージ13上方に移動させ、基板Pの各マークM1,M3の座標位置を基板認識カメラ37により順次撮像することにより、FIDマークM1およびバットマークM3の認識を行うとともに、マスク認識カメラ36によりマスクシート35のFIDマークMaを撮像、認識する(ステップS2)。なお、マスクシート35のFIDマークMaについては、例えば基板Pの品種変更等に伴うマスクシート35の交換直後のみ認識するようにしてもよい。
【0071】
そして、バットマークM3の認識結果、具体的には各エリアE1〜E6におけるバットマークM3の有無結果データを、LAN8を通じて表面実装機3〜5に転送する(ステップS2,S3)。なお、この実施形態では、バットマークM3が有るエリアE1〜E6が本発明に係る不良エリアに相当し、上記有無結果データが本発明に係る不良エリアに関するデータに相当する。
【0072】
次いで、カメラヘッド38をホームポジションにリセットし、4軸ユニット20を作動させて印刷ステージ13と一体に基板Pを上昇させることにより、マスクシート35に対してその下側から基板Pを重装する(ステップS4)。この際、ステップS2でのマークMa,M1の認識結果に基づき主制御手段71においてマスクシート35と基板Pとの相対的な位置関係を求め、この位置関係に基づき4軸ユニット20等を駆動制御することによって、マスクシート35に対して基板Pを位置決めする。
【0073】
また、この重装動作とほぼ並行してスキージユニット17のスキージ33,33を所定の刷開始位置に移動させるとともに、一方のスキージ33を下降させてマスクシート35表面に接触させ、この動作が完了すると、図外の供給装置によりマスクシート35上にはんだペーストを供給した後、スキージ33をY軸方向に移動させてペーストを拡張する(ステップS5)。これによりマスクシート35の印刷用開口35aを介して基板Pの所定位置にペーストを印刷(塗布)する。
【0074】
そして、基板Pへの印刷作業が終了すると、印刷ステージ13を少量下降させることによりマスクシート35から基板Pを離脱(版離れ)させ、速やかにホームポジションにリセットする(ステップS6)。
【0075】
次いで、基板P上の各印刷位置を対象として画像認識による印刷検査を実施する(ステップS7,S8)。具体的には、カメラヘッド38を駆動し、基板PのエリアE1〜E6毎に基板認識カメラ37を順次各印刷位置に移動させながら当該各印刷位置を撮像する。この際、ステップS2におけるバットマークM3の認識結果に基づき、バットマークM3が認識されていないエリアE1〜E6に属する印刷位置のみ撮像を行う。これはバットマークM3が認識されたエリアE1〜E6については部品の実装が行われないため印刷検査の必要がないためである。
【0076】
なお、上記のような基板認識カメラ37による印刷位置の撮像に関しては、主制御手段71は、マスクシート35の各印刷用開口35aの座標位置データと上記エリアデータ作成手段76により作成されるエリアデータとに基づいてカメラヘッド38を駆動制御する。このように主にマスクシート35のデータを用いてカメラヘッド38の駆動を制御するのは、上述した通り、基板P上の印刷位置は、マスクシート35の各印刷用開口35aの位置に対応しているため、印刷用開口35aの座標位置データをそのまま用いることが可能であり、また、データを共有化できる分、合理的なためである。
【0077】
こうしてバットマークM3が認識されたエリア以外の各エリアE1〜E6に属する印刷位置の撮像が終了すると(ステップS8でYES)、その画像データに基づき、主制御手段71によりエリアE1〜E6毎に印刷状態の合否判定を行い(ステップS9)、全検査結果が不合格か否か、つまり撮像した全てのエリアE1〜E6に印刷不良があるか否かを判断し、ここでNOと判断した場合には、当該検査結果データを、LAN8を通じて表面実装機3〜5に転送する(ステップS10)。なお、この実施形態では、印刷不良があるエリアE1〜E6が本発明に係る不良エリアに相当し、上記検査結果データが本発明に係る不良エリアに関するデータに相当する。
【0078】
そして、印刷ステージ13の基板Pの固定状態を解除するとともにコンベア12B,12Cを駆動し、これにより基板Pを印刷装置2から搬出することによって一連の基板Pに対する印刷処理を終了する。
【0079】
これに対してステップS9でYESと判断した場合、つまり撮像したエリアE1〜E6の全てに印刷不良が見つかった場合には、印刷装置2を停止させて図外の報知手段を作動させることによりオペレータに報知し、これに対してオペレータがマニュアル操作で基板Pを撤去することにより(ステップS12)、一連の印刷処理を終了する。
【0080】
なお、不合格となったエリアE1〜E6の一部又は全部についてオペレータの目視確認により合格とできる場合には、例えばオペレータのマニュアル操作により検査結果を修正した上で、当該基板Pの処理を続行するようにしてもよい。この場合には、修正後の検査結果データを表面実装機3〜5に転送するようにすればよい。
【0081】
図10は、制御装置3Aによる第1表面実装機3の実装動作制御をフローチャートで示している。この第1表面実装機3において生産が開始されると、コンベア52を駆動し、印刷装置2により印刷処理が施された基板Pを装置内に搬入するとともに上記実装作業位置に位置決めする。そして、ヘッドユニット56を駆動し、基板認識用カメラ67により基板P上のFIDマークM1,M2上を撮像、認識することにより、基板Pの位置ずれを求めるとともにその補正データを主制御手段71′により演算する(ステップS21,S22)。なお、この際、バットマークM3の撮像、認識は行わない。
【0082】
FIDマークM1,M2の認識が終了すると、LAN8を通じて印刷装置2から転送された当該基板Pに関するバットマークM3の有無結果データおよび検査結果データを主制御手段71′に読み込み、このデータに基づいて以下のステップS23〜ステップS27の処理に従って部品の実装処理を実行する。すなわち、基板Pの各エリアE1〜E6のうちバットマークM3が認識されていないエリアE1〜E6であって、かつ印刷検査に合格したエリアE1〜E6(有効エリアという)についてのみ部品を搭載すべく主制御手段71′によりヘッドユニット56等を駆動制御する。
【0083】
まず、ヘッドユニット56を部品供給部54に移動させて各実装用ヘッド66により部品の取り出しを行わせる(ステップS23)。具体的には、ヘッドユニット56を部品供給部54の上方に移動させ、部品を吸着すべき所定の実装用ヘッド66を昇降させることによりテープフィーダ54aから部品を吸着した状態でピックアップさせる。この際、可能な場合には、複数の実装用ヘッド66により同時に部品吸着を行わせる。
【0084】
全ての実装用ヘッド66による部品の吸着が完了すると、ヘッドユニット56を部品認識用カメラ68の上方に移動させて各実装用ヘッド66による吸着部品の撮像を行い、その撮像結果に基づき各部品の吸着状態を認識する(ステップS24)。
【0085】
そして、ヘッドユニット56を基板P上に移動させて最初の部品搭載位置の上方に配置した後、実装用ヘッド66を昇降させることにより吸着部品を基板P上に実装する(ステップS25)。こうして最初の部品を実装したら、次の搭載位置にヘッドユニット56を移動させることにより各吸着部品を順次基板P上に実装する。この際、ステップS24での認識結果に基づいてヘッドユニット56の目標移動位置を補正することにより各搭載位置に対して部品を正確に実装する。
【0086】
こうして各実装用ヘッド66による吸着部品の実装が終わると、全部品の搭載が完了したか、つまり有効エリアE1〜E6に対して全ての部品を実装したか否かを判断する(ステップS26)。ここでNOと判断した場合には、ステップS23にリターンし、ヘッドユニット56を部品供給部54に移動させて部品吸着、部品認識、部品実装の各処理を繰り返し実行する。
【0087】
これに対して、ステップS26でYESと判断した場合には、コンベア52を駆動して基板Pを装置外に搬出し(ステップS27)、これにより基板Pに対する一連の実装処理を終了する。
【0088】
以上は、制御装置3Aによる第1表面実装機3の実装動作制御の例であるが、制御装置4A,5Aによる第2表面実装機4および第3表面実装機5の実装動作制御も同様にして行われる。
【0089】
以上説明したように、この部品実装システムでは、多面取り基板Pを搬送しながら、まず印刷装置2において基板Pにペーストを印刷する印刷処理を施した後、その下流側に配置される表面実装機3〜5により部品の実装処理を施すが、上記の通り、この部品実装システムでは、基板PのバットマークM3の有無を印刷装置2において事前に画像認識しておき、その結果データを表面実装機3〜5に転送することにより、表面実装機3〜5ではバットマークM3の認識を行うことなく実装作業を進め得るようにしているので、表面実装機3〜5においてバットマークM3の認識処理を省略でき、その分、各表面実装機3〜5のタクトタイムを短縮することができる。
【0090】
特に、部品供給部54と基板Pとの間を何度も往復しながら多数の部品を基板P上に実装する表面実装機3〜5のタクトタイムに比べると、基板P全体に一度に印刷処理を施す印刷装置2のタクトタイムは通常短くなるため、上記のようにバットマークM3の画像認識処理を印刷装置2に負担させて表面実装機3〜5の作業負担を軽減することにより合理的に各表面実装機3〜5のタクトタイムを短縮することができる。そしてその結果、各装置2〜6のタクトタイムを良好にバランスさせることが可能となり、部品実装システムとしてのスループットを向上させることが可能となる。
【0091】
その上、この部品実装システムでは、印刷装置2での多面取り基板Pの印刷検査について、エリアE1〜E6毎に印刷状態の合否判定を行い、全てのエリアE1〜E6が不合格の場合を除いて当該基板Pを有効なものとして取り扱うとともに当該検査結果データを表面実装機3〜5に転送し、他方、表面実装機3〜5では、前記検査結果データに基づき印刷検査に合格したエリアE1〜E6について部品を実装するようにしているので、多面取り基板Pの一部のエリアE1〜E6に印刷不良が発生した場合でも、それ以外のエリアE1〜E6を有効に生かすことができる。従って、一部のエリアに印刷不良が見つかった場合でも一律に基板全体をライン落ちさせていた従来のこの種のシステムと比較すると、歩留まりを向上させることができるという利点もある。
【0092】
さらに、印刷装置2における多面取り基板Pの印刷検査についは、バットマークM3の有無結果を利用することにより、当該バットマークM3が認識されていないエリアE1〜E6に属する印刷位置のみ印刷検査を実施するようにしているので、必要最小限の印刷検査で済み無駄がない。そのため、印刷装置2のタクトタイムを効果的に短縮することができるという利点もある。
【0093】
なお、以上説明した部品実装システムは、本発明に係る部品実装システム(本発明に係る部品の実装処理方法が適用される部品実装システム)の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成、例えば各印刷装置2や表面実装機3〜5の具体的な構成等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0094】
例えば、実施形態の印刷装置2では、その印刷動作制御において基板Pを印刷ステージ13へ搬入、固定した後、直ちにバットマークM3の認識およびデータ転送を行うようにしているが(図9のステップS2,S3)、印刷処理が終了した直後にこれらの動作を実施するようにしてもよい。具体的には、図11に示すように、図9のフローチャートのステップS2〜S6の処理をステップS2′〜S7′に置き換えた印刷動作制御を採用してもよい。つまり、基板Pを搬入、固定した後、FIDマークM1,Maだけを画像認識してから印刷動作を実行し(ステップS1,S2′〜S5′)、印刷終了後、バットマークM3の認識およびデータ転送を行うようにする(ステップS6′S7′)。また、同図において、ステップS6′S7′とステップS7〜S12の処理順序を入れ替えることにより、印刷検査が終了した後、基板Pの搬出前にバットマークM3の認識等を行うようにしてもよい。要は、印刷装置2の具体的な構成および印刷動作との関係で、タクトタイム的にみて有利なタイミングでバットマークM3の認識を行うようにすればよい。但し、上記のように印刷検査後にバットマークM3の認識を行う場合には、その認識結果を印刷検査において利用することができないため、すなわちバットマークM3の有無に基づいて印刷検査を省略することができないため、印刷検査の効率化を図る上では、印刷検査前にバットマークM3の認識を行うようにするのが好ましい。
【0095】
また、実施形態の印刷装置2では、LAN8を通じて表面実装機3〜5から印刷装置2に基板関連データ(バットマークM3の座標位置データ、部品の搭載エリアデータ等)を転送することにより、このデータに基づいてバットマークM3の認識や、エリアE1〜E6と関連づけた印刷検査を行うようにしているが、勿論、上記基板関連データを印刷装置2の各種データ記憶手段73に予め記憶させておくようにしてもよい。
【0096】
また、実施形態では、上記のようにマスクシート35の各印刷用開口35aとエリアE1〜E6とを関連づけたエリアデータを作成し、このエリアデータに基づいて印刷検査を行うようにしているが、勿論、基板P上の印刷位置とエリアE1〜E6とを関連づけたデータを予め作成し、各種データ記憶手段73に記憶しておくことにより、エリアデータ作成手段76の機能を省略するようにしてもよい。
【0097】
また、実施形態では、印刷装置2が基板Pの印刷状態を検査する印刷検査機能を一体に有しているが、換言すれば、印刷検査装置が印刷装置2に一体に組み込まれているが、例えば移動式のカメラを備えた専用の印刷検査装置を印刷装置2と第1表面実装機3との間に介設するようにしてもよい。この場合には、この印刷検査装置においてバットマークM3の画像認識を行い、バットマークM3の有無結果データと印刷検査の検査結果データとを併せて表面実装機3〜5に転送するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る部品実装システム(本発明に係る部品の実装処理方法が適用される部品実装システム)の一例を示す正面略図である。
【図2】部品実装システムを構成するスクリーン印刷装置を示す側面図である。
【図3】スクリーン印刷装置を示す正面図である。
【図4】部品実装システムを構成する第1表面実装機を示す平面図である。
【図5】第1表面実装機を示す正面図である。
【図6】スクリーン印刷装置および第1表面実装機の制御系を示すブロック図である。
【図7】(a)は多面取り基板の構成の一例を示す平面図で、(b)は(a)に示す多面取り基板に対応するマスクシートを示す平面図である。
【図8】エリアデータ作成手段によるエリアデータの作成方法を説明するための概念図である。
【図9】スクリーン印刷装置における印刷動作制御の一例を示すフローチャート図である。
【図10】第1表面実装機における実装動作制御の一例を示すフローチャート図である。
【図11】スクリーン印刷装置における印刷動作制御の変形例を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0099】
1 ローダ
2 スクリーン印刷装置
3 第1表面実装機
4 第2表面実装機
5 第3表面実装機
6 リフロー炉
7 アンローダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する表面実装機を少なくとも備えた部品実装システムを用いて、互いに独立する回路が形成された複数のエリアをもつ多面取り基板に対して部品の実装処理を行う方法であって、
前記多面取り基板の各エリアのうち実装処理が不要な不良エリアを前記表面実装機への搬入前に予め調べておき、この不良エリアに関する情報を表面実装機に転送することにより、この情報に基づき、表面実装機において不良エリア以外のエリアに対して部品の実装処理を施すことを特徴とする部品の実装処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の部品の実装処理方法において、
前記部品実装システムが、基板にペーストを印刷する印刷装置を含みその印刷後の基板に部品を前記表面実装機により実装するものについては、前記印刷装置において前記不良エリアに関する情報を取得し、この情報を印刷装置から表面実装機に転送することを特徴とする部品の実装処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部品の実装処理方法において、
前記エリアのうち部品の実装が不要な欠陥エリアに予めバットマークが形成される多面取り基板については、前記バットマークが形成されるエリアを予め調べ、バットマークが形成されるエリアを不良エリアとして前記情報を表面実装機に転送することを特徴とする部品の実装処理方法。
【請求項4】
請求項2に記載の部品の実装処理方法において、
前記印刷装置による印刷処理後、その印刷状態を検査するとともに印刷不良が検出された場合には前記各エリアのうち当該印刷不良が属するエリアを特定し、この特定エリアを不良エリアとして前記情報を表面実装機に転送することを特徴とする部品の実装処理方法。
【請求項5】
互いに独立する回路が形成された複数のエリアをもつ多面取り基板を被処理基板として当該基板にペーストを印刷する印刷装置およびその印刷後の基板に部品を実装する表面実装機を少なくとも備えた部品実装システムであって、
前記印刷装置は、前記基板に対して相対的に移動可能な基板撮像用のカメラと、このカメラにより撮像した基板の画像データに基づいて前記エリアのうち実装処理が不要な不良エリアを特定する特定手段と、この特定手段により特定された不良エリアに関する情報を前記表面実装機に送信する送信手段とを備える一方、
前記表面実装機は、前記送信手段により送信される不良エリアに関する情報を受信する受信手段と、受信した前記情報に基づき不良エリア以外のエリアに対して部品の実装処理を施すべく部品の実装動作を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする部品実装システム。
【請求項6】
請求項5に記載の部品実装システムにおいて、
前記多面取り基板は、前記エリアのうち部品の実装が不要な欠陥エリアに予めバットマークが形成されるものであって、前記カメラは、前記基板のバットマークの座標位置を順次撮像し、前記特定手段は、その画像データに基づきバットマークの有無を判定するとともにバットマークが形成されたエリアを不良エリアとして特定することを特徴とする部品実装システム。
【請求項7】
請求項5に記載の部品実装システムにおいて、
前記カメラは、印刷処理後の前記基板の印刷位置を順次撮像し、前記特定手段は、その画像データに基づき印刷不良の検出を行うとともに、印刷不良を検出した場合に前記各エリアのうち当該印刷不良が属するエリアを不良エリアとして特定することを特徴とする部品実装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−184498(P2007−184498A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2831(P2006−2831)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】