説明

部材の取付構造

【課題】大型スイッチのケース等の被装着部材を壁面等の固定板に取り付ける際に、固定板の内側が狭い場合等でも表面側からのみの作業で取り付けられる部材の取付構造を提供する。
【解決手段】被装着部材1の取付用平面部1Aに嵌合、保持されたボルト5のねじ棒5Aに、弾性材料からなる弾性ナット7の孔にねじ棒5Aを圧入して保持された可動体6を、固定板2に設けた所定形状の開口部2Aから固定板2の裏面側へ通した後、ボルト5を回転させることによって固定板2裏面の開口部2Aでない部分に圧接させて固定する取付構造とすることにより、表面側からのみの作業で取り付けができる取付構造が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型のスイッチやコントローラ、計器のケースなど、外部に取付用平面部を有する被装着部材を各種設備の壁面などの固定板に取り付ける際に、固定板の内側の空間が狭かったり、他の部材の陰になったりしている場合などに、表面側からのみの作業で取り付けをすることができる部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような取付用平面部を有する被装着部材を、表面側からのみの作業で壁面などの固定体に固定する取付構造としては、図11の従来の取付構造の要部分解斜視図および図12の同正面断面図に示すような取付構造が知られている。
【0003】
同図において、41は上部弾性円筒体で、中央にボルト挿通孔41Aを有して下端面に傾斜面41Bが形成され、42は下部弾性円筒体で、中央にボルト挿通孔42Aを有して、傾斜面41Bと同一傾斜角の傾斜面42Bが上端面に形成されており、何れもゴムやポリウレタン樹脂などを素材とした弾性体であり、また43は偏心ねじ孔43Aが設けられたナットである。
【0004】
このような取付部材を用いて、壁面等の固定体47に取付用平面部45Aを有するアングル45を固定する場合について説明する。
【0005】
図12に示すように、ボルト44をワッシャ46とアングル45の取付用平面部45Aの孔45Bに通すとともに、上部弾性円筒体41のボルト挿通孔41Aおよび下部弾性円筒体42のボルト挿通孔42Aに通してナット43の偏心ねじ孔43Aにねじ込み、固定体47にあけた固定穴47A内に挿入する。
【0006】
そして、ボルト44を締め付けていくと、ナット43はそのねじ孔43Aが偏心しているため固定穴47A内において供回りをしないので、さらにボルト44を締め付けることによりナット43が上昇するのに伴って下部弾性円筒体42が上昇し、この上昇過程において傾斜面41B,42Bの作用で上部弾性円筒体41に心ズレ(偏心)を起こし、この作用で上部弾性円筒体41が固定穴47Aの内面に圧接する。
【0007】
さらに締め付けが進むと図13の従来の取付構造の取付状態を説明する正面断面図に示すように、上部弾性円筒体41は固定穴47A内において逃げ場がなくなり大径化して固定穴47A全体に圧接するとともに、下部弾性円筒体42も膨大化して固定穴47Aの内面に圧接する。
【0008】
このようにして、表面側からのみの作業で、取付用平面部45Aを有するアングル45を固定体47に固定するものであった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−317735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の取付構造では、被装着部材を取り付ける固定体の表面に対して垂直に細長い穴を設ける必要があるため、固定体があまり厚みのない壁面のような場合には、壁面の裏面に専用の筒状体などを設けなければならないという課題があった。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、固定体があまり厚みのない壁面のような場合であっても、表面側のみからの作業で容易に被装着部材を取り付けることができて、しかも確実な固定ができる部材の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の部材の取付構造は、取付用平面部を有する被装着部材と、回転工具との係合部を有する大径の頭部および決められた長さで一定径のねじ棒からなり、被装着部材の取付用平面部に設けられた貫通孔に嵌合して、表面に頭部が露出し裏面にねじ棒が垂直に突出するように保持されたボルトと、ボルトのねじ棒の谷径に相当する孔が設けられた柔軟性を有する樹脂または硬質ゴム製で円筒形状の弾性ナット、および弾性ナットが嵌めこまれた軸受部ならびに軸受部から伸ばされ先端に支持用突出部が設けられた一定長さのアーム部を有する剛性材料製の支持体からなり、弾性ナットの孔にねじ棒がねじ込み挿通されてボルトに保持された可動体と、ねじ棒の回転時に可動体の一部が当接して回動範囲を規制されて向きを変えるように、被装着部材の取付用平面部の裏面から一体に垂直に設けられたガイド棒と、可動体の一方の終端位置においてボルトに保持された可動体とガイド棒とが通過可能な開口部を有する固定板とで構成される。
【0012】
このような構成とすることにより、被装着部材の取付用平面部の裏面と可動体の支持用突出部との間隔を固定板の厚さよりも大きく設定し、可動体を一方の終端位置においた状態で開口部から可動体およびガイド棒を固定板裏面側へ通して、被装着部材の取付用平面部の裏面を固定板に重ね合わせ、ボルトの大径の頭部に回転工具を係合してねじ棒を回転させて、可動体を他方の終端位置においた状態で可動体を固定板に近付けて、アーム部の支持用突出部が固定板裏面の開口部でない部分に圧接して被装着部材を固定板に固定できるとともに、ガイド棒が垂直に設けられた被装着部材の取付用平面部の貫通孔にねじ棒を挿通してボルトを保持し、さらにこのボルトを弾性ナットにねじ込んで可動体も含めてあらかじめ一体化しておくことができるので、固定板に所定形状の開口部を設けるだけで、固定板の表面側のみからの作業で容易に取り付けることができて、しかも確実な固定ができる取付構造を実現することができる。
【0013】
また、上記構成において、被装着部材の取付用平面部の裏面側に垂直に設けられた壁部を利用してガイド棒を形成するようにしてもよい。
【0014】
このような構成とすることにより、被装着部材の取付用平面部の裏面において、取付用部材が占める容積が少なく、強度の安定した固定をすることができる。
【0015】
また、本発明の部材の取付構造は、取付用平面部を有する被装着部材と、回転工具との係合部を有する大径の頭部および決められた長さで一定径のねじ棒からなり、被装着部材の取付用平面部に重ねて配設されたベース板に設けられた貫通孔に嵌合して、表面に頭部が露出し裏面にねじ棒が垂直に突出するように保持されたボルトと、ボルトのねじ棒の谷径に相当する孔が設けられた柔軟性を有する樹脂または硬質ゴム製で円筒形状の弾性ナット、および弾性ナットが嵌めこまれた軸受部ならびに軸受部から伸ばされ先端に支持用突出部が設けられた一定長さのアーム部を有する剛性材料製の支持体からなり、弾性ナットの孔にねじ棒がねじ込み挿通されてボルトに保持された可動体と、ボルトのねじ棒の回転時に可動体の一部が当接して回動範囲を規制されて向きを決めるように、ベース板の裏面側に垂直に設けられたガイド棒と、可動体の一方の終端位置においてボルトに保持された可動体とガイド棒とが通過可能な開口部を有する固定板とで構成される。
【0016】
このような構成とすることにより、ベース板の裏面と可動体の支持用突出部との間隔を所定の寸法に設定し、可動体を一方の終端位置においた状態で開口部から可動体およびガイド棒を固定板裏面側へ通して、被装着部材の取付用平面部の裏面を固定板に重ね合わせた後、ボルトの大径の頭部に回転工具を係合してねじ棒を回転させて、可動体を他方の終端位置においた状態で可動体を固定板に近付け、アーム部の支持用突出部を固定板裏面の開口部でない部分に圧接して被装着部材を固定板に固定できるとともに、ガイド棒が垂直に設けられたベース板の貫通孔にねじ棒を挿通してボルトを保持し、さらにこのボルトを弾性ナットにねじ込んで可動体も含めてあらかじめ一体化した取付ブロックとしておくことができるので、固定板に所定形状の開口部を設けるだけで、固定板の表面側のみからの作業で容易に取り付けることができて、しかも確実な固定ができる取付構造を実現することができる。
【0017】
また、上記構成において、ボルトの頭部よりも大きな丸孔を有する被装着部材の取付用平面部の裏面側の凹部内に、固定板の開口部よりも広い金属ベース板を、固定手段も含めて取付用平面部の裏面から出ないように固定し、取付用平面部の裏面と可動体の支持用突出部との間隔を固定板の厚さよりも大きい寸法に設定して、取付用平面部の裏面を固定板に重ね合わせるようにしてもよい。
【0018】
このような構成とすることにより、上記構成による効果に加えて、あらかじめ一体化した取付ブロックをさらに被装着部材と一体化しておいてから、非常に簡単に固定板に固定することができる。
【0019】
また、上記構成において、可動体の一方の終端位置においてボルトに保持された可動体とガイド棒とが貫通可能な開口部を有する被装着部材の取付用平面部を固定板上に重ね合わせておき、開口部よりも広いベース板の裏面と可動体の支持用突出部との間隔を取付用平面部と固定板を合わせた厚さよりも大きい寸法に設定して、取付用平面部の表面上に重ね合わせるようにしてもよい。
【0020】
このような構成とすることにより、上記構成による効果に加えて、あらかじめ一体化した取付ブロックをそのまま、被装着部材の取付用平面部と固定板の開口部内に挿入して、被装着部材を固定板に固定することができる。
【0021】
また、上記構成において、被装着部材の取付用平面部または取付用平面部に重ねて配設されたベース板に設けられた貫通孔がボルトのねじ棒に嵌合する長さが、ねじ棒の直径の1.5倍以上であるようにしてもよい。
【0022】
このような構成とすることにより、ボルトのねじ棒を回転させて可動体の支持用突出部を固定板の裏面に圧接させる際に、ボルトが傾いて圧接力が弱くなることを防止できる。
【0023】
また、上記構成において、ボルトのねじ棒の、可動体の弾性ナットとの係合部よりも先端の決められた位置にセルフロックナットを装着するようにしてもよい。
【0024】
このような構成とすることにより、回転工具でボルトを回転させて被装着部材を取り付ける際や取り外す際に、被装着部材や固定板の陰になって見えない可動体を、誤ってねじ棒の先端から外してしまうというトラブルを無くすことができる。
【0025】
また、上記構成において、一定高さで内径に対する外径の比が1.5〜3.5である中空円筒形状の弾性ナットを、その外径に等しい内径の軸受部の円形孔内に圧入して、可動体を形成するようにしてもよい。
【0026】
このような構成とすることにより、弾性ナットと可動体の軸受部との組合せを容易にでき、しかも組合せ後の、ねじ棒のねじ谷径に相当する内径を有する弾性ナットの孔にねじ棒をねじ込むことにより弾性ナットの外径が膨れようとして、弾性ナットは支持体の軸受部の孔に強固に圧接、固定される。
【0027】
また、上記構成において、一定高さで内径に対する外径の比が1.5〜3.5であり、中空円筒形状の高さ方向中間部の外形断面形状が、円形部よりも狭い幅の開口部分を有するΩ字形状である弾性ナットを、支持体の同寸法のΩ字形状の切込み内に圧入して、可動体を形成してもよい。
【0028】
このような構成とすることにより、弾性ナットの高さ方向中間部のΩ字形状断面の部分を支持体の同寸法のΩ字形状の切込み内に圧入して、安定した状態で仮保持させることができ、その後に、ねじ棒の谷径に相当する内径を有する弾性ナットの孔にねじ棒をねじ込むことにより弾性ナットの外径が膨れようとして、弾性ナットは支持体の支持体の切込みに強固に圧接、固定される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の部材の取付構造は、被装着部材の取付用平面部に直接または間接に保持されたボルトのねじ棒に、弾性ナットを介して保持された可動体を、固定板に設けた所定形状の開口部から固定板の裏面側へ通した後、ボルトを回転させることによって固定板の裏面に圧接させて固定するものである。
【0030】
この結果、あまり厚みのない固定体に対して片側面のみからの作業で容易に取り付けることができて、しかも確実な固定ができる、取付用平面部を有する部材の取付構造を実現するという大きな効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態による取付構造の正面断面図、図2は図1のD−D線における断面図である。
【0033】
同図において、1は被装着部材で、2は被装着部材1を取り付ける固定板である。
【0034】
そして、大型のスイッチや計器のケースなどである被装着部材1は、剛性の高い樹脂製で底面が取付用平面部1Aであり、この取付用平面部1Aには垂直な円形の貫通孔3と、裏面から垂直に略四角形断面のガイド棒4が設けられている。
【0035】
この貫通孔3には、金属製のボルト5の決められた長さで一定径のねじ棒5Aが、その直径の1.5倍以上の長さに亘って回転可能に嵌合、保持されており、その大径の頭部5Bが取付用平面部1Aの表面に露出している。
【0036】
そして、ボルト5のねじ棒5Aには、弾性ナット7と支持体8からなる可動体6が保持されている。
【0037】
すなわち、可動体6は、図3の本実施の形態による取付構造における可動体の分解斜視図に示すように、エラストマーなどの柔軟性のある樹脂や合成ゴムなどの弾性を有する材料で形成された中空円筒形状で、内径がねじ棒5Aの谷径に相当する大きさであって、外径が内径の1.5〜3.5倍である弾性ナット7を、この弾性ナット7の外径に等しい内径を有する、剛性の高い樹脂や亜鉛ダイカストで形成された支持体8の軸受部8Aの円形孔内に圧入したものである。
【0038】
このように、可動体6は弾性ナット7の孔内にボルト5のねじ棒5Aをねじ込むことによってねじ棒5Aに保持されているが、ねじ棒5Aの谷径に相当する内径である弾性ナット7の孔の中にねじ棒5Aをねじ込むことによって弾性ナット7の外径が膨れようとして、支持体8の軸受部8Aの孔の壁部に強固に圧接、固定されるとともに、ねじ棒5Aに対しても強い摩擦力で保持されている。
【0039】
そして、支持体8のアーム部9の先端に設けられた支持用突出部9Aが固定板2の底面に当接している。
【0040】
すなわち、固定板2の開口部2Aを貫通したボルト5の頭部5Bと支持体8の支持用突出部9Aとの間に、取付用平面部1Aと固定板2が挟まれることによって、被装着部材1は固定板2に固定されている。
【0041】
なお、被装着部材1の取付用平面部1Aの底面に垂直に設けられたガイド棒4は、ボルト5の回転操作時のねじ棒5Aの回転に伴って可動体6の支持体8の一部が当接して可動体6の回動範囲を規制してその向きを決めるためのものである。
【0042】
また、ボルト5のねじ棒5Aの先端近くにねじ込まれたセルフロックナット10は、金属製ナットのねじ山の端部にゴム製の摩擦リング10Aを嵌めこんだものであり、ボルト5の回転操作により可動体6がねじ棒5Aの先端側に動く時にねじ棒5Aの先端から外れることを防止するために装着されている。
【0043】
次に、本実施の形態による取付構造を用いて、被装着部材1を固定板2に取り付ける方法について説明する。
【0044】
まず、図4(a)の正面断面図に示すように、被装着部材1の表面側から貫通孔3にボルト5のねじ棒5Aを挿入して、その大径の頭部5Bのみを表面に露出させる。
【0045】
次に、ボルト5の頭部5Bを回転工具で(一般に時計方向に)回してねじ棒5Aの先端部を可動体6の弾性ナット7の孔にねじ込んで可動体6をねじ棒5Aの中間位置に保持させた後、セルフロックナット10を、その摩擦リング10Aの先にねじ棒5Aの先端が突出する位置までねじ込む。
【0046】
この後、ボルト5の頭部5Bを回転工具で回して可動体6を上下動させて、被装着部材1の取付用平面部1Aの裏面と可動体6の支持用突出部9Aとの間の寸法を固定板2の厚さ寸法よりも少し大きくするとともに、図4(b)の下面図に示すように、支持体8のアーム部9の一側面9Bをガイド棒4に当接させて、可動体6をその回動角度範囲の一方の終端位置におく。
【0047】
次に、図4(a)に矢印で示すように、固定板2に所定の形状、大きさ(可動体6およびガイド棒4が通過可能)に設けられた、開口部2Aから可動体6およびガイド棒4を固定板2の裏面側へ通して、被装着部材1の取付用平面部1Aの裏面を固定板2に重ね合わせた後、ボルト5の大径の頭部5Bに回転工具(図示せず)を係合してねじ棒5Aを(一般に時計方向に)回転させて、可動体6の支持体8のストッパー9Cをガイド棒4に当接させて、可動体6を、図2に示した、その回動角度範囲の他方の終端位置におく。
【0048】
そして、この状態でねじ棒5Aをさらに回転させて可動体6を固定板2に近付け、支持用突出部9Aを固定板2の裏面の開口部2Aでない部分に圧接させることによって、図1に示した状態で、被装着部材1を固定板2に固定することができる。
【0049】
この時、ボルト5に少し強い回転力を加えてねじ棒5Aを回転させ、可動体6の支持用突出部9Aを固定板2の裏面に多少強く圧接させても、ねじ棒5Aは被装着部材1の貫通孔3によりその直径の1.5倍以上の長さに亘って嵌合されているので、ボルト5が傾いて圧接力が弱くなることはない。
【0050】
また、図1に示した、被装着部材1を固定板2に固定した状態において、ボルト5の頭部5Bを回転工具で上記とは反対の方向(一般に反時計方向)に回転させると、可動体6の支持用突出部9Aが固定板2の裏面に圧接する力が次第に小さくなり、やがて支持用突出部9Aが固定板2の裏面から離れるとともに可動体6が少しだけ回動し、ストッパー9Cがガイド棒4から離れて支持体8のアーム部9の一側面9Bがガイド棒4に当接し、可動体6は、図4(b)に示した、回動角度範囲の一方の終端位置となる。
【0051】
この状態になると、可動体6の支持用突出部9Aは固定板2の開口部2Aの範囲内となるので、可動体6とガイド棒4を開口部2Aを通して表面側に引き抜いて、被装着部材1を固定板2から取り外すことができる。
【0052】
なお、ボルト5の頭部5Bを回転工具で上記とは反対の方向(一般に反時計方向)に回転させる際に、回転させすぎて可動体6がねじ棒5Aの先端近くまで移動すると、可動体6がセルフロックナット10に当たってその動きを止められるようになっているので、可動体6がねじ棒5Aから外れることはない。
【0053】
以上のように、本実施の形態による取付構造によれば、ガイド棒4が垂直に設けられた被装着部材1の取付用平面部1Aの貫通孔3にねじ棒5Aを挿通してボルト5を保持し、さらに、このボルト5を弾性ナット7にねじ込んで可動体6も含めてあらかじめ一体化しておくことができるので、固定板2に所定形状の開口部2Aを設けるだけで、固定板の表面側のみからの作業で容易に取り付けることができて、しかも確実な固定ができるものである。
【0054】
なお、以上の説明においては、図1に示したように、被装着部材1は大型のスイッチや計器のケースなどで取付用平面部1Aは底面であり、その裏面から垂直にガイド棒4が設けられているとしてきたが、図5の本実施の形態による取付構造における他の取付構造の正面断面図に示すように、被装着部材11の側面に取付用平面部11Aがあり、取付用平面部11Aの裏面側に略垂直に壁部12が設けられている場合には、この垂直に設けられた壁部12を利用してガイド棒14を形成するようにしてもよい。
【0055】
この場合でも、ボルト5や可動体6など他の部分の構成や、被装着部材11を大きな開口部13Aを有する固定板13に取り付ける方法は上記の場合と同じなので詳しい説明は省略するが、このような構成とすることにより、被装着部材11の取付用平面部11Aの裏面において、取付部材が占める容積が少なく、取付強度の安定した固定ができる。
【0056】
また、可動体6も、図3に示したような、中空円筒形状の弾性ナット7を支持体8の軸受部8Aの円形孔内に圧入したものであるとしたが、図6の本実施の形態による取付構造における他の可動体15の分解斜視図に示すように、弾性を有する材料で形成され、一定高さの中空円筒形状の高さ方向中間部の外形断面形状が、円形部分16Aよりも狭い幅の開口部分16Bを有するΩ字形状である弾性ナット16を、金属板の打ち抜き、折り曲げ加工などにより作られた支持体17の同寸法のΩ字形状の切込み17A内に圧入して形成した可動体15としてもよい。
【0057】
このような可動体15にすると、弾性ナット16の高さ方向中間部の、円形部分16Aよりも狭い幅の開口部分16Bを有するΩ字形状断面の部分を支持体17の同寸法のΩ字形状の切込み17A内に圧入して、安定した状態で仮保持させることができ、その後に、ねじ棒5Aの谷径に相当する内径を有する弾性ナット16の孔にねじ棒5Aをねじ込むことにより弾性ナット16の外径が膨れようとして、弾性ナット16は支持体17の切込み17Aに強固に圧接、固定される。
【0058】
そして、このような可動体15としても、取付構造全体としての構成や取付方法は変わらないので詳しい説明は省略する。
【0059】
(第2の実施の形態)
図7は本発明の第2の実施の形態による取付構造の正面断面図、図8は図7のE−E線における断面図である。
【0060】
同図に示すように、本実施の形態による取付構造は、第1の実施の形態において説明したものに対し、ボルト5のねじ棒5Aを回転可能に嵌合、保持する貫通孔23と可動体6の向きを決めるガイド棒24が、被装着部材21の取付用平面部21A裏面の凹部21B内に固定されたベース板25に設けられている点が異なるものであり、その他の部分の構成は第1の実施の形態による取付構造とほぼ同じである。
【0061】
すなわち、被装着部材21の少し厚目の取付用平面部21Aには、ボルト5の頭部5Bよりも大きな丸孔21Cを有する凹部21Bが設けられて、この中に金属板製のベース板25が取付用平面部21Aに重ねてリベット26により固定されており、このベース板25には、ボルト5のねじ棒5Aをその直径の1.5倍以上の長さで嵌合、保持するように、金属板をバーリング加工して円筒部を形成した貫通孔23と、ベース板25の側面部を折り曲げ加工した略四角形断面のガイド棒24が一体に設けられている。
【0062】
そして、ねじ棒5Aが弾性ナット7の孔内にねじ込まれて保持された可動体6およびその先端近くにセルフロックナット10がねじ込まれていることは、第1の実施の形態の場合と同じである。
【0063】
次に、本実施の形態による取付構造を用いて、被装着部材21を固定板2に取り付ける方法について説明する。
【0064】
まず、ベース板25の貫通孔23に、円筒部のない側からボルト5のねじ棒5Aを挿入して、ねじ棒5Aを円筒部側に突出させ、次に、ボルト5の頭部5Bを回転工具で回してねじ棒5Aの先端部を可動体6の弾性ナット7の孔にねじ込んで可動体6をねじ棒5Aの中間位置に保持させた後、セルフロックナット10を、その摩擦リング10Aの先にねじ棒5Aの先端が突出する位置までねじ込むことも第1の実施の形態の場合と同じであるが、これによって、図9の本実施の形態による取付構造における取付ブロックの外観斜視図に示すような取付ブロック27ができる。
【0065】
この後、取付ブロック27のベース板25の2つの小孔27Aにリベット26を通して、被装着部材21の取付用平面部21Aに重ねて凹部21Bの天井面に固定する。
【0066】
なお、ベース板25を固定する手段はビス止めなど他の方法でもよいが、凹部21Bよりも突出しないようにしておく必要がある。
【0067】
この後、ボルト5の頭部5Bを回転工具で回して可動体6を上下動させて、被装着部材21の取付用平面部21Aの裏面と可動体6の支持用突出部9Aの間の寸法を固定板2の厚さ寸法よりも少し大きくするとともに、支持体8のアーム部9の一側面9Bをガイド棒24に当接させて、可動体6をその回動範囲の一方の終端位置におき、固定板2の開口部2Aから可動体6およびガイド棒4を固定板2の裏面側へ通して、被装着部材21の取付用平面部21Aの裏面を固定板2に重ね合わせた後、ボルト5を回転させて、可動体6の支持体8のストッパー9Cをガイド棒24に当接させて、可動体6を、その回動範囲の他方の終端位置におく。
【0068】
そして、この状態でボルト5をさらに回転させて可動体6を固定板2に近付け、支持用突出部9Aを固定板2の裏面の開口部2Aでない部分に圧接させることによって、図7に示した状態で、被装着部材21を固定板2に固定することができることも第1の実施の形態の場合と同じである。
【0069】
以上のように、本実施の形態による取付構造によれば、ガイド棒が24が設けられたベース板25の貫通孔23に保持されたボルト5のねじ棒5Aを弾性ナット7にねじ込んで、可動体6も含めてあらかじめ一体化した取付ブロック27としておくことができ、さらに取付ブロック27を被装着部材21と一体化しておいてから、固定板2の表面側のみからの作業で、非常に容易に固定板2に取り付けることができて、しかも確実な固定ができるものである。
【0070】
なお、貫通孔23とガイド棒24を備えたベース板25は金属板製に限るものでなく、亜鉛ダイカストや剛性の高い樹脂材料で形成してもよい。
【0071】
(第3の実施の形態)
図10は本発明の第3の実施の形態による取付構造の正面断面図である。
【0072】
同図に示すように、本実施の形態による取付構造は、第2の実施の形態において説明したものに対し、被装着部材31の取付用平面部31Aと固定板2を、取付ブロック32でそのまま挟み付けて固定するようにしたものであり、その他の部分の構成は第1の実施の形態および第2の実施の形態による取付構造とほぼ同じである。
【0073】
すなわち、本実施の形態による取付構造を用いて被装着部材31を固定板2に取り付ける方法は、まず固定板2の開口部2Aと同様の、可動体6の一方の終端位置においてボルト5に保持された可動体6とガイド棒34とが貫通可能な開口部33を設けた被装着部材31の取付用平面部31Aを、固定板2に重ね合わせる。
【0074】
そして、取付ブロック32のベース板36の裏面と可動体6の支持用突出部9Aとの間隔を両者を合わせた厚さよりも少し大きい寸法に設定して、取付用平面部31Aの開口部33と固定板2の開口部2Aから固定板2の裏側に通して、取付ブロック32のベース板36の裏面を被装着部材31の取付用平面部31Aに重ねた状態でボルト5を回転させて、可動体6を固定板2に近付け、支持用突出部9Aを固定板2の裏面の開口部2Aでない部分に圧接させることによって、図10に示した状態で、被装着部材31を固定板2に固定することができることは、第1の実施の形態および第2の実施の形態の場合と同じである。
【0075】
以上のように、本実施の形態による取付構造によれば、ガイド棒34が設けられたベース板36の貫通孔36Aに保持されたボルト5のねじ棒5Aを弾性ナット7にねじ込んで、可動体6も含めてあらかじめ一体化した取付ブロック32をそのまま、被装着部材31の取付用平面部31Aと固定板2の開口部2A内に挿入して、被装着部材31を固定板2に固定することができる。
【0076】
なお、詳細な説明は省略するが、第2の実施の形態による取付構造の取付ブロック27に対して、本実施の形態による取付構造の取付ブロック32は、ベース板36が広く、ボルト5のねじ棒5Aが少し長いものである。
【0077】
以上の説明において、固定板に装着される大型のスイッチや計器のケースなどである、被装着部材の1ヶ所だけに取付構造が設けられているように説明したが、実際には被装着部材の両端部2ヶ所に設けてもよく、また一端はコの字型の切込みなどで固定板を挟み付け、他端に本発明のような取付構造を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の部材の取付構造は、固定体があまり厚みのない壁面のような場合であっても、表面側のみからの作業で容易に被装着部材を取り付けることができ、しかも確実な固定ができる。
【0079】
したがって、大型のスイッチやコントローラ、計器のケースなどを各種設備の壁面などの固定板に取り付ける際に、固定板の内側の空間が狭かったり、他の部材の陰になったりしている場合などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態による取付構造の正面断面図
【図2】図1のD−D線における断面図
【図3】同取付構造における可動体の分解斜視図
【図4】(a)同取付方法を説明する正面断面図(b)同取付方法を説明する下面図
【図5】同取付構造における他の取付構造の正面断面図
【図6】同取付構造における他の可動体の分解斜視図
【図7】本発明の第2の実施の形態による取付構造の正面断面図
【図8】図7のE−E線における断面図
【図9】同取付構造における取付ブロックの外観斜視図
【図10】本発明の第3の実施の形態による取付構造の正面断面図
【図11】従来の取付構造の要部分解斜視図
【図12】同正面断面図
【図13】同取付状態を説明する正面断面図
【符号の説明】
【0081】
1,11,21,31 被装着部材
1A,11A,21A,31A 取付用平面部
2,13 固定板
2A,13A,33 開口部
3,23,36A 貫通孔
4,14,24,34 ガイド棒
5 ボルト
5A ねじ棒
5B 頭部
6,15 可動体
7,16 弾性ナット
8,17 支持体
8A 軸受部
9 アーム部
9A 支持用突出部
9B 一側面
9C ストッパー
10 セルフロックナット
10A 摩擦リング
12 壁部
16A 円形部分
16B 開口部分
17A 切込み
21B 凹部
21C 丸孔
25,36 ベース板
26 リベット
27,32 取付ブロック
27A 小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付用平面部を有する被装着部材と、
回転工具との係合部を有する大径の頭部および決められた長さで一定径のねじ棒からなり、前記被装着部材の取付用平面部に設けられた貫通孔に嵌合して、表面に前記頭部が露出し裏面に前記ねじ棒が垂直に突出するように保持されたボルトと、
前記ボルトの前記ねじ棒の谷径に相当する内径の孔が設けられた柔軟性を有する樹脂または硬質ゴム製で円筒形状の弾性ナット、およびこの弾性ナットが嵌めこまれた軸受部ならびにこの軸受部から伸ばされ先端に支持用突出部が設けられた一定長さのアーム部を有する剛性材料製の支持体からなり、前記弾性ナットの孔に前記ねじ棒がねじ込み挿通されて前記ボルトに保持された可動体と、
前記ボルトのねじ棒の回転時に前記可動体の一部が当接して回動範囲を規制されて向きを決めるように、前記被装着部材の取付用平面部の裏面から一体に垂直に設けられたガイド棒と、
前記可動体の一方の終端位置において前記ボルトに保持された前記可動体とガイド棒とが通過可能な開口部を有する固定板とで構成され、
前記被装着部材の取付用平面部の裏面と前記可動体の支持用突出部との間隔を前記固定板の厚さよりも大きく設定し、前記可動体を一方の終端位置においた状態で前記開口部から前記可動体およびガイド棒を前記固定板裏面側へ通して、前記被装着部材の取付用平面部の裏面を前記固定板に重ね合わせ、前記ボルトの大径の頭部に前記回転工具を係合して前記ねじ棒を回転させて、前記可動体を他方の終端位置においた状態で前記可動体を前記固定板に近付けて、前記支持用突出部を前記固定板裏面の開口部でない部分に圧接させることにより、前記被装着部材を前記固定板に固定したことを特徴とする部材の取付構造。
【請求項2】
前記被装着部材の取付用平面部の裏面側に略垂直に設けられた壁部を利用して前記ガイド棒が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の部材の取付構造。
【請求項3】
取付用平面部を有する被装着部材と、
回転工具との係合部を有する大径の頭部および決められた長さで一定径のねじ棒からなり、前記被装着部材の取付用平面部に重ねて配設されたベース板に設けられた貫通孔に嵌合して、表面に前記頭部が露出し裏面にねじ棒が垂直に突出するように保持されたボルトと、
前記ボルトのねじ棒の谷径に相当する内径の孔が設けられた柔軟性を有する樹脂または硬質ゴム製で円筒形状の弾性ナット、およびこの弾性ナットが嵌めこまれた軸受部ならびにこの軸受部から伸ばされ先端に支持用突出部が設けられた一定長さのアーム部を有する剛性材料製の支持体からなり、前記弾性ナットの孔に前記ねじ棒がねじ込み挿通されて前記ボルトに保持された可動体と、
前記ボルトのねじ棒の回転時に前記可動体の一部が当接して回動範囲を規制されて向きを決めるように、前記ベース板の裏面側に垂直に設けられたガイド棒と、
前記可動体の一方の終端位置において前記ボルトに保持された前記可動体とガイド棒とが通過可能な開口部を有する固定板とで構成され、
前記ベース板の裏面と前記可動体の支持用突出部との間隔を所定の寸法に設定し、前記可動体を一方の終端位置においた状態で前記開口部から前記可動体およびガイド棒を前記固定板裏面側へ通して、前記被装着部材の取付用平面部の裏面を前記固定板に重ね合わせた後、前記ボルトの大径の頭部に前記回転工具を係合して前記ねじ棒を回転させて、前記可動体を他方の終端位置においた状態で前記可動体を前記固定板に近付けて、前記支持用突出部を前記固定板裏面の開口部でない部分に圧接させることにより、前記被装着部材を前記固定板に固定したことを特徴とする部材の取付構造。
【請求項4】
前記ボルトの頭部よりも大きな丸孔を有する前記被装着部材の取付用平面部の裏面側の凹部内に、前記固定板の開口部よりも広い前記ベース板を、固定手段も含めて前記取付用平面部の裏面から出ないように固定し、前記取付用平面部の裏面と前記可動体の支持用突出部との間隔を前記固定板の厚さよりも大きい寸法に設定して、前記取付用平面部の裏面を前記固定板に重ね合わせたことを特徴とする請求項3に記載の部材の取付構造。
【請求項5】
前記可動体の一方の終端位置においてボルトに保持された前記可動体とガイド棒とが貫通可能な開口部を有する、被装着部材の前記取付用平面部を前記固定板上に重ね合わせておき、前記開口部よりも広いベース板の裏面と前記可動体の支持用突出部との間隔を前記取付用平面部と固定板を合わせた厚さよりも大きい寸法に設定して、前記取付用平面部の表面上に重ね合わせることを特徴とする請求項3に記載の部材の取付構造。
【請求項6】
前記被装着部材の前記取付用平面部または取付用平面部に重ねて配設されたベース板に設けられた前記貫通孔が前記ボルトのねじ棒に嵌合する長さが、前記ねじ棒の直径の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の部材の取付構造。
【請求項7】
前記ボルトのねじ棒の、前記可動体の弾性ナットとの係合部よりも先端の決められた位置にセルフロックナットを装着したことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の部材の取付構造。
【請求項8】
前記可動体が、一定高さの中空円筒形状で内径に対する外径の比が1.5〜3.5である弾性ナットを、その外径に等しい内径の本体部の円形孔内に圧入して形成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の部材の取付構造。
【請求項9】
前記可動体が、一定高さの中空円筒形状で内径に対する外径の比が1.5〜3.5であり、高さ方向中間部の外形断面形状が、円形部分よりも狭い幅の開口部分を有するΩ字形状である弾性ナットを、支持体の同寸法のΩ字形状の切込み内に圧入して形成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−275116(P2008−275116A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122065(P2007−122065)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】