説明

配光制御部材及び照射装置

【課題】 より一層光の利用効率を高める。
【解決手段】 配光制御部材2は、光軸Oを含む断面内において所定の発散角度を持つ入射光束を前記所定断面内において前記発散角度より小さい照射角度を持つ出射光束として出射する。配光制御部材2は、領域R3に、入射光束の入射側に複数の断面四角形状の凸条部23を備える。各凸条部23は、光軸Oに近い側において当該凸条部の基部から立ち上がる面23aと、光軸Oから遠い側において当該凸条部23の基部から立ち上がる面23bと、面23a,23b間を接続する先端側の面23cと、を有する。凸条部23の面23cした入射光は、凸条部内へ進行し、面23bで反射された後に出射面21から出射する。光の利用効率が高まるように、領域R3内の凸条部23の面23b,23c間の角部23dの光軸O方向位置が変化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光束を異なる配光の出射光束として出射する透光材料からなる配光制御部材、及びこれを用いた照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、入射光束を異なる配光の出射光束として出射する透光材料からなる種々の配光制御部材が提供されている。
【0003】
このような配光制御部材の1つとして、下記の特許文献1に開示された車両用灯具のインナーレンズが提供されている。このインナーレンズは、光源バルブからの入射光を平行光として出射させるフレネルレンズから構成された車両用灯具のインナーレンズにおいて、前記フレネルレンズの反射系プリズムの中心側の面を、先端側の有効面と基側の肉厚成形面とになし、これにより、反射系プリズムの断面形状を四角形状にしたものである。また、このインナーレンズでは、前記反射系プリズムが外周側に配置され、反射系プリズムに対する中心側に断面三角形状の屈折系プリズムが配置されている。さらに、このインナーレンズでは、反射系プリズムの先端の高さ(すなわち、反射系プリズムの有効面と外周側の面との間の角部の光軸方向の位置)は、全ての反射系プリズムについて同一であった。
【0004】
このインナーレンズでは、反射系プリズムの基部が肉厚となるので、成形時間を長くしたり、圧力を加えたりしないで、反射系プリズムの先端まで樹脂を行き渡らせることができる。この結果、反射系プリズムの先端が丸くならずに鋭角となる。このために、前記インナーレンズによれば、プリズムの先端に入射した光は平行光として出射され、光のロスが少なくなり、光の利用効率が上がる。さらに、前記インナーレンズでは、反射系プリズムを断面三角形状とした場合に比べて、反射系プリズムの中心とは反対側の面(光全反射側の面)が増すため、その分、光のロスが少なくなり、光の利用効率が上がる。
【0005】
また、下記の特許文献1には、配光制御部材と光源とを有する照射装置として、前記インナーレンズと光源バルブとを有する車両用灯具が開示されている。この車両用灯具では、上側が開口したカップ状の筐体内に光源バルブを配置し、インナーレンズが、カップ状の筐体の上部開口を閉塞するようにカップ状の筐体の上縁部によって保持されることで、光源バルブ上に間隔をあけて配置されている。
【特許文献1】特開平10−3803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のインナーレンズでは、前述したように光の利用効率が高いが、より一層光の利用効率を高めることが要請されていることは、言うまでもない。このような要請は、インナーレンズ以外の他の配光制御部材についても、同様である。
【0007】
また、前記従来の車両用灯具では、光源上に配光制御部材を保持する構造として前述したような構造を採用しているが、このような保持構造を、光源が例えば表面実装型発光デバイスなどのように直方体状の外形を有する場合にも適用すると、当該照射装置の大型化を招くことになる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、より一層光の利用効率を高めることができる配光制御部材、及び、これを用いることでより一層効率良く照射光量を高めることができる照射装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、より一層効率良く照射光量を高めることができるとともに、光源上への配光制御部材の保持構造を改善することで小型化を図ることができる照射装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、光源上への配光制御部材の保持構造を改善することで小型化を図ることができる照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者の研究の結果、前記従来のインナーレンズでは全ての反射系プリズムの先端の高さが同一であるのに対し、この高さを異ならせることで、より一層光の利用効率を高めることができることが判明した。また、光源が直方体状の外形を有する場合、配光制御部材を保持するホルダに筒状内面を持たせ、この筒状内面を光源の4つの辺部のみにそれぞれ略々線状に接触させて嵌合させることで、光源に対する接触面積を低減して光源の放熱性を高めつつその構造を小型化することができることが、判明した。
【0012】
本発明のこのような知見に基づいてなされたもので、前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による配光制御部材は、光軸を含む所定断面内において所定の発散角度を持つ入射光束を前記所定断面内において前記発散角度より小さい照射角度を持つ出射光束として出射する透光材料からなる配光制御部材であって、前記入射光束の入射側に複数の第1の凸条部を備え、前記複数の第1の凸条部は、前記光軸方向から見た平面視で互いに並列し、前記各第1の凸条部は、前記光軸に近い側において当該第1の凸条部の基部から立ち上がる第1の面と、前記光軸から遠い側において当該第1の凸条部の基部から立ち上がる第2の面と、前記第1及び第2の面間を接続する先端側の第3の面と、を有し、前記入射光束のうちの前記各第1の凸条部の前記第3の面に到達した部分光束の大部分又は全部が、当該第1の凸条部の前記第3の面から当該第1の凸条部内へ進入した後に当該第1の凸条部の前記第2の面で反射された後に、前記出射光束の一部をなす部分光束となるように、当該第1の凸条部の前記第2及び第3の面の前記所定断面内における角度が設定され、前記所定断面内における前記複数の第1の凸条部の前記第2及び第3の面間の角部の前記光軸方向の位置が全て同一である場合に比べて、前記出射光束に対する前記入射光束の利用効率が高まるように、前記複数の第1の凸条部のうちの少なくとも1つの凸条部の前記所定断面内における前記角部の前記光軸方向の位置が、前記複数の第1の凸条部のうちの他の少なくとも1つの凸条部の前記所定断面内における前記角部の前記光軸方向の位置と異なるように設定されたものである。
【0013】
この第1の態様における前記第1乃至第3の面が、前記従来のインナーレンズにおける、反射系プリズムの基側の肉厚成形面、先端側の有効面及び中心とは反対側の面に、それぞれ対応している。したがって、この第1の態様によれば、前記従来のインナーレンズと同様の理由で、光の利用効率が上がる。
【0014】
そして、前記第1の態様では、前記従来のインナーレンズとは異なり、前述した本発明者による新たな知見に従って、前記所定断面内における前記複数の第1の凸条部の前記第2及び第3の面間の角部の前記光軸方向の位置が全て同一である場合に比べて、前記出射光束に対する前記入射光束の利用効率が高まるように、前記複数の第1の凸条部のうちの少なくとも1つの凸条部の前記所定断面内における前記角部の前記光軸方向の位置が、前記複数の第1の凸条部のうちの他の少なくとも1つの凸条部の前記所定断面内における前記角部の前記光軸方向の位置と異なるように設定されている。したがって、前記第1の態様によれば、前記従来のインナーレンズと同様に前記所定断面内における前記複数の第1の凸条部の前記第2及び第3の面間の角部の前記光軸方向の位置を全て同一にする場合に比べて、より一層光の利用効率が高まる。
【0015】
本発明の第2の態様による配光制御部材は、前記第1の態様において、前記複数の第1の凸条部は、前記光軸方向から見た平面視で前記光軸を中心として同心円状に配列されたものである。
【0016】
この第2の態様は、2次元方向の配光を制御する配光制御部材の例を挙げたものである。
【0017】
本発明の第3の態様による配光制御部材は、前記第1の態様において、前記複数の第1の凸条部は、前記光軸方向から見た平面視で前記所定断面と直交する方向に直線状に延びるように配列されたものである。
【0018】
この第3の態様は、1次元方向の配光を制御するいわゆるリニアタイプの配光制御部材の例である。この第3の態様による配光制御部材は、例えば、線状光源と組み合わせて用いられる。
【0019】
本発明の第4の態様による配光制御部材は、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記入射光束の入射側に、前記断面内において三角形状をなす第2の凸条部を備え、前記第2の凸条部は、前記光軸方向から見た平面視で前記複数の第1の凸条部と並ぶようにかつ前記前記複数の第1の凸条部より前記光軸に近い側に位置するように、配列されたものである。
【0020】
この第4の態様によれば、前記第2の凸条部を前記従来のインナーレンズにおける屈折系プリズムとして利用することで、光軸側の光の利用効率をより高めることができる。また、この第4の態様によれば、前記第2の凸条部を利用することで、前記第2の凸条部の代わりに前記第1の凸条部を前記光軸付近にまで形成する場合に比べて、当該配光制御部材の光軸方向の厚さを薄くすることができる。
【0021】
本発明の第5の態様による配光制御部材は、前記第1乃至第4のいずれかの態様において、前記出射光束の出射側の面における少なくとも前記出射光束の出射領域が、平面をなすものである。
【0022】
本発明の第6の態様による配光制御部材は、前記第1乃至第4のいずれかの態様において、前記出光束の出射側の面における少なくとも前記出射光束の出射領域が、凸曲面又は凹曲面をなすものである。
【0023】
前記第4乃至第6の態様は、配光制御部材の出射側の面形状の例を挙げたものであるが、前記第1乃至第3の態様はこれらの例に限定されるものではない。前記第5及び第6の態様の場合、当該曲面によっても、出射光の照射角度を調整することができる。
【0024】
本発明の第7の態様による照射装置は、前記第1乃至第6のいずれかの態様による配光制御部材と、前記入射光束となる光を発する光源と、を備えたものである。
【0025】
この第7の態様によれば、前記第1乃至第6の態様による配光制御部材が用いられているので、従来に比べてより一層効率良く照射光量を高めることができる。
【0026】
本発明の第8の態様による照射装置は、前記第7の態様において、前記光源は、直方体状の外形を有しかつ1つの面側から光を発し、前記配光制御部材を前記光源の前記1つの面上に間隔をあけて保持するホルダを更に備え、前記ホルダが筒状内面を有し、前記筒状内面が、前記光源における前記1つの面を上面としたときの4つの側面間の4つの辺部のみにそれぞれ略々線状に接触して嵌合したものである。
【0027】
この第8の態様によれば、前記第7の態様と同じくより一層効率良く照射光量を高めることができるだけでなく、ホルダの筒状内面が、光源の4つの辺部のみにそれぞれ略々線状に接触して嵌合しているので、ホルダが光源に接触する面積が抑えられることから光源の放熱性を高めることができるとともに、配光制御部材の保持構造を小型化することができ、ひいては、照射装置全体の小型化を図ることができる。
【0028】
なお、前記筒状内面の形状は、前記光源の前記1つの面の形状に応じて適宜定めればよく、例えば、前記1つの面が正方形状である場合は円筒状にすればよいし、前記1つの面が正方形以外の場合は楕円筒状にすればよい。この点は、下記の第9の態様についても同様である。
【0029】
本発明の第9の態様による照射装置は、入射光束を配光の異なる出射光束として出射する、透光材料からなる配光制御部材と、直方体状の外形を有しかつ1つの面側から前記入射光束となる光を発する光源と、前記配光制御部材を前記光源の前記1つの面上に間隔をあけて保持するホルダと、を備え、前記ホルダが筒状内面を有し、前記筒状内面が、前記光源における前記1つの面を上面としたときの4つの側面間の4つの辺部のみにそれぞれ略々線状に接触して嵌合したものである。
【0030】
この第9の態様によれば、ホルダの筒状内面が、光源の4つの辺部のみにそれぞれ略々線状に接触して嵌合しているので、ホルダが光源に接触する面積が抑えられることから光源の放熱性を高めることができるとともに、配光制御部材の保持構造を小型化することができ、ひいては、照射装置全体の小型化を図ることができる。
【0031】
本発明の第10の態様による照射装置は、前記第8又は第9の態様において、前記ホルダに、前記4つの側面付近の空間を側方外部へ連通させる連通路が形成されたものである。
【0032】
この第10の態様によれば、前記連通路により光源の4つの側面付近の空間が側方外部へ連通するので、光源の放熱性を格段に高めることができる。
【0033】
本発明の第11の態様による照射装置は、前記第8乃至第10のいずれかの態様において、前記光源が、回路基板上に実装される表面実装型発光デバイスであるものである。
【0034】
本発明の第12の態様による照射装置は、前記第8乃至第11のいずれかの態様において、前記光源がLEDであるものである。
【0035】
前記第11及び第12の態様は、光源の例を挙げたものであるが、前記第8乃至第10の態様では、これらに限定されるものではない。
【0036】
なお、前記第7乃至第12の態様による照射装置は、例えば、カメラの閃光装置や、携帯電話機に内蔵されたカメラ用閃光装置や、スポットライトやダウンライトなどの各種の照明装置などとして用いることができる他、種々の装置を構成するために用いられる発光ユニットなどでもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、より一層光の利用効率を高めることができる配光制御部材、及び、これを用いることでより一層効率良く照射光量を高めることができる照射装置を提供することができる。
【0038】
また、本発明によれば、より一層効率良く照射光量を高めることができるとともに、光源上への配光制御部材の保持構造を改善することで小型化を図ることができる照射装置を提供することができる。
【0039】
さらに、本発明によれば、光源上への配光制御部材の保持構造を改善することで小型化を図ることができる照射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明による配光制御部材及び照射装置について、図面を参照して説明する。
【0041】
図1は、本発明の一実施の形態による照射装置を示す断面図である。図2は、この照射装置の分解斜視図である。図3は、図1及び図2中のホルダ本体3aを下側から見た斜視図である。図4は、図1中のLED1とホルダ本体3aとの嵌合状態を示す斜視図である。
【0042】
本実施の形態による照射装置は、種々の装置を構成するために用いられる発光ユニットとして構成され、図1及び図2に示すように、光源としての表面実装型発光デバイスの一種であるハイパワーLED1と、LED1からの入射光束を配光の異なる出射光束として出射する配光制御部材2と、配光制御部材2をLEDから間隔をあけて保持するホルダ3とを備えている。
【0043】
LED1は、直方体状の外形を有し、図中の上面側から光を発する。また、LED1は、光軸Oを含むいずれの断面内においても、ほぼ同一の発散角度(照射角度)θin(例えば、110゜〜120゜程度)の光束を発する。LED1から配光制御部材2へ入射される入射光束の様子を、図5に示している。
【0044】
配光制御部材2は、透光材料で構成され、発散角度θinの入射光束を発散角度θinより小さい照射角度θoutを持つ出射光束として出射する。配光制御部材2の材料としては、例えば、アクリル等の透光樹脂や、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)等の透光性を有する耐熱樹脂などを用いることができる。本実施の形態では、配光制御部材2は、円板状に構成され、光軸Oを含むいずれの断面形状も同一とされており、いずれの断面内においても同一の配光制御特性を有している。配光制御部材2については、後に詳述する。
【0045】
ホルダ3は、図1乃至図4に示すように、ホルダ本体3aと、リング状部材3bとから構成されている。ホルダ本体3a及びリング状部材3は、例えば、PPA(ポリフタルアミド)などの耐熱樹脂で構成される。
【0046】
ホルダ本体3aは、上下に開口した孔部11を有している。孔部11の上側部分は配光制御部材2の径に応じて比較的大径となっているのに対し、孔部11の下側部分はLED1の大きさに合わせて比較的小径となっている。孔部11の下側部分の周壁が、円筒状内面12となっている。図1及び図4に示すように、円筒状内面12は、LED1の4つの側面間の4つの辺部のみに接触して嵌合している。この嵌合により、ホルダ本体3aがLED1に対して固定されている。
【0047】
そして、ホルダ本体3aの上部の内側段差部13に配光制御部材2の外周部が係合され、配光制御部材2の外周部は、更に、ホルダ本体3aの上部の外側段差部14に嵌合されたリング状部材3bによって押さえられている。これにより、配光制御部材2がホルダ本体3aの上部に保持されて、配光制御部材2がLED1の発光側の面上に間隔をあけて保持されている。
【0048】
ホルダ本体3aには、LED1の4つの側面付近の空間を側方外部へ連通させる連通路15が形成されている。本実施の形態では、連通路15は、下側に開口して溝状に形成されているが、必ずしも下側に開口する必要はない。
【0049】
本実施の形態によれば、ホルダ3の円筒状内面12がLED1の4つの辺部のみにそれぞれ略々線状に嵌合しているので、ホルダ3がLED1に接触する面積が抑えられることからLED1の放熱性を高めることができるとともに、配光制御部材2の保持構造を小型化することができ、ひいては、照射装置全体の小型化を図ることができる。特に、本実施の形態では、連通路15によってLED1の4つの側面付近の空間が側方外部へ連通しているので、LED1の放熱性を格段に高めることができる。
【0050】
次に、配光制御部材2について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、配光制御部材2を示す断面図であり、前述したようにLED1からの入射光束も示している。図6は配光制御部材2の一部を拡大した図であり、図6(a)は配光制御部材2の半断面図、図6(b)は図6(a)中の領域R2の一部の領域R2’の拡大図、図6(c)は図6(a)中の領域R3の一部の領域R3’の拡大図である。
【0051】
説明の便宜上、図5及び図6に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する(後述する図についても同様である。)。なお、Z軸方向の+側を上側、Z軸方向の−側を下側という場合がある。Z軸は、光軸Oと平行となっている。−Z側が光の入射側、+Zが光の出射側である。
【0052】
本実施の形態による配光制御部材2は、LED1からの発散角度θinの入射光束を、照射角度θout(ただし、θout<θin)を持つ出射光束として出射するように設計されている。
【0053】
本実施の形態では、配光制御部材2は、図6(a)に示す半断面を光軸O回りに回転させた回転体として構成されている。配光制御部材2の+Z側の面は、出射面21であり、XY平面と平行な平面となっている。
【0054】
配光制御部材2の−Z側における光軸O付近の領域R1は、XY平面と平行な平面とされている。配光制御部材2の−Z側における領域R1の外周側の領域R2には、複数の断面三角形状の凸条部(第2の凸条部)22がZ軸方向(光軸O方向)から見たときに同心円状に並列されている。図6(b)に示すように、各凸条部22は、光軸Oに近い側の面22aと光軸Oから遠い側の面22bとを有し、面22bに入射した光が面22bで屈折した後にそのまま出射面21が出射するように、面22bの角度が、当該面22bへの入射光束の各光線の入射角度と、当該光束に対して設定した所望の出射角度とに応じて、設定されている。領域R1,R2に入射する光線の様子を図7に示している。
【0055】
図5及び図6に示すように、配光制御部材2の−Z側における領域R2の外周側の領域R3には、複数の断面四角形状の凸条部(第1の凸条部)23がZ軸方向(光軸O方向)から見たときに同心円状に並列されている。各凸条部23は、光軸Oに近い側において当該凸条部23の基部から立ち上がる第1の面23aと、前記光軸から遠い側において当該凸条部23の基部から立ち上がる第2の面23bと、前記第1及び第2の面23a,23b間を接続する先端側の第3の面23cと、を有している。本実施の形態では、第1の面23aは、光軸Oを含む断面において、直線をなしているが、光学的に有効な面ではないので、曲線をなすようにしてもよい。
【0056】
発散角度θinの入射光束のうちの各凸条部23の第3の面23cに到達した部分光束の大部分又は全部が、当該凸条部23の第3の面23cから当該凸条部23内へ進入した後に当該凸条部23の第2の面23bで反射された後に、照射角度θoutの出射光束の一部をなす部分光束となるように、第2及び第3の面23b,23cの、光軸Oを含む断面内における角度が設定されている。
【0057】
このような角度設定について、図8を参照して説明する。今、図8に示すように、1つの凸条部23において、LED1からZ軸方向に対して角度θで面23cから入射して、当該凸条部23内へ進入した後に面23bで反射された後に、出射面21から出射する光線について、考える。ここで、図8に示すように、面23cがZ軸方向に対してなす角度をA、面23bがZ軸方向に対してなす角度をB、面23aがZ軸方向に対してなす角度をC、出射面21から出射した光線がZ軸方向に対してなす角度をθ、配光制御部材2の材料の屈折率をn、空気中から配光制御部材2へ光が進行する場合の臨界角をθ、面23cから凸条部23内へ進入した後に面23bに到達するまでの光線の進行方向がZ軸方向に対してなす角度をθ、面23bで全反射された後に出射面21に到達するまでの光線の進行方向がZ軸方向に対してなす角度をθとする。
【0058】
すると、光線がZ軸方向に対して角度θで面23cから入射して凸条部23内へ進入するためには、角度Aが、下記の数1を満たさなければならない。
【0059】
【数1】

【0060】
また、光線が面23bで反射した後に出射面21から角度θで出射するためには、角度Bが下記の数2かあるいは下記の数3を満たさなければならない。なお、数2及び数3も実際は同じ条件である。
【0061】
【数2】

【0062】
【数3】

【0063】
ここで、臨界角θは下記の数4で表され、角度θは下記の数5で表され、角度θは下記の数6で表される。
【0064】
【数4】

【0065】
【数5】

【0066】
【数6】

【0067】
したがって、各凸条部23について、当該凸条部23の面23cに入射する入射部分光束のうちの全部又は大部分の光線について、数1と数2又は数3を満たすように、角度A,Bを設定すればよい。このとき、角度θ2については、予め角度θ1に対応づけた角度を用いればよい。例えば、角度θ=θ・θout/θinとする。また、配光制御部材2を樹脂成形により製造する場合は、樹脂成形の容易性等も考慮して角度A,Bを定める。なお、角度Cは、樹脂成形の容易性等を考慮して定めればよい。
【0068】
そして、本実施の形態では、配光制御部材2は、光軸Oを含む断面内における領域R3内の凸条部23の面23b,23c間の角部(稜線)23dのZ軸方向(光軸O方向)の位置が全て同一である場合に比べて、照射角度θoutの出射光束に対する発散角度θinの入射光束の利用効率が高まるように、領域R3内の凸条部23のうちの少なくとも1つの凸条部23の角部23dのZ軸方向の位置が、領域R3内の凸条部23のうちの他の少なくとも1つの凸条部23の角部23dのZ軸方向の位置と異なるように設定されている。
【0069】
ここで、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置を異ならせることにより、迷光が少なくなり入射光束の利用効率が高まる様子の例を、図9に示す。図9(a)は、4つの凸条部23の角部23dのZ軸方向位置が互いに異なりこれらの角部23dを結ぶラインL1がX軸方向に対して傾いている場合の、光線を示す。図9(b)は、4つの凸条部23の角部23dのZ軸方向位置が互いに同一でありこれらの角部23dを結ぶラインL2がX軸方向と平行である場合の、光線を示す。図9(a)と図9(b)とでは、最も右側の凸条部23の角部23dのXZ座標位置を同一とし、この位置を基準とした各入射光線の位置及び方向を同一とし、対応する凸条部23同士の角度A,B,Cをそれぞれ同一とし、左側の3つの凸条部23の角部23dのX軸方向位置を同一とし、左側の3つの凸条部23の角部のZ軸方向位置を変えた。
【0070】
図9(a)では、4本の入射光線は迷光とならずに有効な出射光束となり、入射光束の利用効率が高い。これに対し、図9(b)では、2本の入射光線が迷光となって有効な出射光束とならず、入射光束の利用効率が低い。
【0071】
図9から、領域R3内の凸条部23の角部23dのZ軸方向位置を適宜異ならせることで、入射光束の利用効率を向上させることができることがわかる。このことは、後述するシミュレーション結果によっても裏付けられた。
【0072】
具体的には、例えば、入射光束の発散角度θinなどに応じて凸条部23等の数をほぼ決め、当該凸条部23が受け持つ入射部分光束の角度や出射部分光束の角度に従ってシミュレーションによる光線追跡等を行いながら、迷光が少なくなるように、光軸から遠い側の凸条部23から順に角度A,B,C及び角部23dのZ軸方向位置を決めていけばよい。なお、領域R2内の凸条部24の設計手法については、凸条部23を適切に利用できなくなった(すなわち、凸条部23を用いると角度A,Bを変更しても迷光が増大してしまう)場所に、凸条部22を配置し、その面22a,22bの角度をシミュレーションによる光線追跡等を行いながら、迷光が少なくなるように、決めればよい。領域R1内の凸条部22の
【0073】
図1、図5及び図6には、入射光束の発散角度θinを120゜とし出射光束の照射角度θoutを5゜とした場合において前述した手法により設計した第1の設計例による配光制御部材2を示している。図5及び図6からわかるように、この第1の設計例による配光制御部材2では、領域R3内の凸条部23の角部23dのZ軸方向位置は同一ではない。この第1の設計例による配光制御部材2は、本発明の一実施例による配光制御板である。
【0074】
この第1の設計例による配光制御部材2に対して、領域R3内の凸条部23の角部23dのZ軸方向位置を全て同一にするように変え、それ以外の点については第1の設計例による配光制御部材2と同一にした配光制御部材を、比較例として設計した。この配光制御部材を、第1の比較設計例による配光制御部材と呼ぶ。
【0075】
また、図10及び図11には、入射光束の発散角度θinを120゜とし出射光束の照射角度θoutを70゜とした場合において前述した手法により設計した第2の設計例による配光制御部材2を示している。図10は、この第2の設計例による配光制御部材2を示す断面図である。図11は、図10に示す配光制御部材2の半断面図である。図10及び図11において、図5及び図6中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。図10及び図11からわかるように、この第2の設計例による配光制御部材2では、領域R3内の凸条部23の角部23dのZ軸方向位置は同一ではない。この第2の設計例による配光制御部材2は、本発明の他の実施例による配光制御板である。
【0076】
さらに、この第2の設計例による配光制御部材2に対して領域R3内の凸条部23の角部23dのZ軸方向位置を全て同一にするように変え、それ以外の点については第2の設計例による配光制御部材2と同一にした配光制御部材を、比較例として設計した。この配光制御部材を、第2の比較設計例による配光制御部材と呼ぶ。
【0077】
前記第1及び第2の設計例、並びに、第1及び第2の比較設計例について、シミュレーションにより、光線追跡を行うとともに、配光制御部材から+Z軸方向に50cm離れX軸と平行な直線上の照度分布を得た。このとき、LED1は、図12に示す指向特性を有するとともに、配光制御部材を設けない場合にLED1から同一距離だけ+Z軸方向に離れたX軸と平行な直線上の照度分布が図13に示す通りとなる特性を有しているものとした。これらのシミュレーション結果を図14乃至図21に示す。
【0078】
図14乃至図16は、前記第1の設計例(θout=5゜、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置の変化あり。)による配光制御部材2のシミュレーション結果を示す。図14は光線追跡結果、図15は図14中のE部付近の拡大図、図16は照度分布を示す。
【0079】
図17及び図18は、前記第1の比較設計例(θout=5゜、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置の変化なし。)による配光制御部材のシミュレーション結果を示す。図17は図14に対応する光線追跡結果、図18は照度分布を示す。
【0080】
図14乃至図16と図17及び図18とを比較すると、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置が変化している第1の設計例による配光制御部材2では、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置が変化していない第1の比較設計例による配光制御部材に比べて、迷光が少なくなって有効な出射光量が増大していることがわかる。
【0081】
図19及び図20は、前記第2の設計例(θout=70゜、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置の変化あり。)による配光制御部材2のシミュレーション結果を示す。図19は光線追跡結果、図20は照度分布を示す。
【0082】
図21は、前記第2の比較設計例(θout=70゜、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置の変化なし。)による配光制御部材のシミュレーション結果を示す。図21は照度分布を示す。
【0083】
図19乃至図20と図21とを比較すると、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置が変化している第2の設計例による配光制御部材2では、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置が変化していない第2の比較設計例による配光制御部材に比べて、迷光が少なくなって有効な出射光量が増大していることがわかる。
【0084】
本実施の形態によれば、凸条部23を有していることに伴い、前記特許文献1に開示されているインナーレンズと同様の理由で、光の利用効率が上がる。そして、本実施の形態によれば、前記特許文献1に開示されているインナーレンズとは異なり、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置を変えているので、凸条部23の角部23dのZ軸方向位置を全て同一にする場合に比べて、より一層光の利用効率が高まる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施の形態や実施例に限定されるものではない。
【0086】
例えば、本発明では、ホルダ3の構造は前述した構造に限定されないし、また、光源もパワーLEDに限定されるものではなく、任意の光源を用いてもよい。
【0087】
また、本発明による配光制御部材は、図5や図10に示す断面形状をY軸方向に移動して得られる立体形状を有するいわゆるリニアタイプの配光制御部材としてもよい。このようなリニアタイプの配光制御部材に対しては、Y軸方向に延びた直線状光源を用いてもよい。
【0088】
また、前記実施の形態では、配光制御部材2の出射面21がXY平面と平行な平面となっていたが、本発明ではこの出射面21を球面などの凸曲面や凹曲面としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施の形態による照射装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す照射装置の分解斜視図である。
【図3】図1及び図2中のホルダ本体を下側から見た斜視図である。
【図4】図1中のLEDとホルダ本体との嵌合状態を示す斜視図である。
【図5】図1中の配光制御部材の設計例を示す断面図である。
【図6】図5に示す配光制御部材の一部を拡大した図である。
【図7】配光制御部材の所定領域に入射する光線の様子を示す図である。
【図8】角度の設定方法を説明するための説明図である。
【図9】凸条部23の角部の光軸方向位置を変えることにより光の利用効率が高まる様子の例を示す図である。
【図10】配光制御部材の他の設計例を示す断面図である。
【図11】図10に示す配光制御部材の半断面図である。
【図12】LEDの指向特性図である。
【図13】配光制御部材を用いない場合のLEDによる照度分布を示す図である。
【図14】第1の設計例による配光制御部材の光線追跡結果を示す図である。
【図15】図14中のE部付近の拡大図である。
【図16】第1の設計例による配光制御部材の照度分布を示す図である。
【図17】第1の比較設計例による配光制御部材の光線追跡結果を示す図である。
【図18】第1の比較設計例による配光制御部材の照度分布を示す図である。
【図19】第2の設計例による配光制御部材の光線追跡結果を示す図である。
【図20】第2の設計例による配光制御部材の照度分布を示す図である。
【図21】第2の比較設計例による配光制御部材の照度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 パワーLED(光源)
2 配光制御部材
3 ホルダ
15 連通路
21 出射面
22 第2の凸条部
23 第1の凸条部
23a 第1の面
23b 第2の面
23c 第3の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を含む所定断面内において所定の発散角度を持つ入射光束を前記所定断面内において前記発散角度より小さい照射角度を持つ出射光束として出射する透光材料からなる配光制御部材であって、
前記入射光束の入射側に複数の第1の凸条部を備え、
前記複数の第1の凸条部は、前記光軸方向から見た平面視で互いに並列し、
前記各第1の凸条部は、前記光軸に近い側において当該第1の凸条部の基部から立ち上がる第1の面と、前記光軸から遠い側において当該第1の凸条部の基部から立ち上がる第2の面と、前記第1及び第2の面間を接続する先端側の第3の面と、を有し、
前記入射光束のうちの前記各第1の凸条部の前記第3の面に到達した部分光束の大部分又は全部が、当該第1の凸条部の前記第3の面から当該第1の凸条部内へ進入した後に当該第1の凸条部の前記第2の面で反射された後に、前記出射光束の一部をなす部分光束となるように、当該第1の凸条部の前記第2及び第3の面の前記所定断面内における角度が設定され、
前記所定断面内における前記複数の第1の凸条部の前記第2及び第3の面間の角部の前記光軸方向の位置が全て同一である場合に比べて、前記出射光束に対する前記入射光束の利用効率が高まるように、前記複数の第1の凸条部のうちの少なくとも1つの凸条部の前記所定断面内における前記角部の前記光軸方向の位置が、前記複数の第1の凸条部のうちの他の少なくとも1つの凸条部の前記所定断面内における前記角部の前記光軸方向の位置と異なるように設定されたことを特徴とする配光制御部材。
【請求項2】
前記複数の第1の凸条部は、前記光軸方向から見た平面視で前記光軸を中心として同心円状に配列されたことを特徴とする請求項1記載の配光制御部材。
【請求項3】
前記複数の第1の凸条部は、前記光軸方向から見た平面視で前記所定断面と直交する方向に直線状に延びるように配列されたことを特徴とする請求項1記載の配光制御部材。
【請求項4】
前記入射光束の入射側に、前記断面内において三角形状をなす第2の凸条部を備え、
前記第2の凸条部は、前記光軸方向から見た平面視で前記複数の第1の凸条部と並ぶようにかつ前記前記複数の第1の凸条部より前記光軸に近い側に位置するように、配列されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配光制御部材。
【請求項5】
前記出射光束の出射側の面における少なくとも前記出射光束の出射領域が、平面をなすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の配光制御部材。
【請求項6】

前記出光束の出射側の面における少なくとも前記出射光束の出射領域が、凸曲面又は凹曲面をなすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の配光制御部材。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の配光制御部材と、前記入射光束となる光を発する光源と、を備えたことを特徴とする照射装置。
【請求項8】
前記光源は、直方体状の外形を有しかつ1つの面側から光を発し、
前記配光制御部材を前記光源の前記1つの面上に間隔をあけて保持するホルダを更に備え、
前記ホルダが筒状内面を有し、
前記筒状内面が、前記光源における前記1つの面を上面としたときの4つの側面間の4つの辺部のみにそれぞれ略々線状に接触して嵌合したことを特徴とする請求項7記載の照射装置。
【請求項9】
入射光束を配光の異なる出射光束として出射する、透光材料からなる配光制御部材と、
直方体状の外形を有しかつ1つの面側から前記入射光束となる光を発する光源と、
前記配光制御部材を前記光源の前記1つの面上に間隔をあけて保持するホルダと、
を備え、
前記ホルダが筒状内面を有し、
前記筒状内面が、前記光源における前記1つの面を上面としたときの4つの側面間の4つの辺部のみにそれぞれ略々線状に接触して嵌合したことを特徴とする照射装置。
【請求項10】
前記ホルダに、前記4つの側面付近の空間を側方外部へ連通させる連通路が形成されたことを特徴とする請求項8又は9記載の照射装置。
【請求項11】
前記光源が、回路基板上に実装される表面実装型発光デバイスであることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の照射装置。
【請求項12】
前記光源がLEDであることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−172772(P2006−172772A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360593(P2004−360593)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(392034746)吉川化成株式会社 (22)
【Fターム(参考)】