説明

配列用マスク

【課題】電極間隔が狭小化されたチップ・パッケージに対しても、半田ボールを精度良く搭載することができる配列用マスクを提供する。
【解決手段】所定の配列パターンに対応した通孔12内に半田ボール2を振り込むことで、ワーク3上の所定位置に半田ボール2を搭載する配列用マスクであって、マスク本体10下面に突起部15を備えており、突起部15の径はマスク本体10下面に向かうにつれて大きくなるように形成している。これにより、突起部15の付け根において強度をしっかりと確保しつつ、突起部15の先端を微小ピッチの電極6間に対応して当接できるので、半田ボール6を所定の位置に確実に載置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半田バンプを形成するのに用いられる、配列用マスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半田バンプの形成方法としては、ウエハ・フレキシブル基板・リジッド基板などのワーク上の電極にフラックスを塗布する印刷工程と、フラックス上に半田ボールを配列・搭載する配列工程と、半田ボールを加熱・溶解する加熱工程を経てバンプを形成している。そして、前述の配列工程において、ワーク上に半田ボールを配列する方式としては、マスクを用いた振込方式がある。振込方式では、電子部品の電極の配列パターンに対応して半田ボールが挿通可能な位置決め用の通孔を有する配列用マスク(以下、適宜に単に「マスク」と称す)を用いて、半田ボールをワーク上に搭載させている。具体的には、通孔と電極とが一致するようにワークに対しマスクを位置合わせしたうえで、マスクの上に置かれた半田ボールをスキージやブラシ等で掃引して、各通孔に一つずつ半田ボールを投入する。そして、フラックスに半田ボールを吸着させることにより、ワーク上の所定位置に半田ボールを仮止め的に搭載させている。
【0003】
係るマスクとしては特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に記載のマスクは、通孔を有するマスク本体の下面に多数本の支持用の突起部を設けており、突起部の突出寸法は同一寸法に設定されている。これにより、ワーク上にマスクを設置した際に、全ての支持用の突起部の下端がワークの上面に当接され、通孔を有するマスク本体とワークとの対向間隙が確保されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−287215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年では電子機器の小型化に伴い、チップ・パッケージにおけるパッド間隔の狭小化が進んできている。このような要求に対応するため、突起部の幅寸法を小さくしたマスクが望まれるが、単に突起部の幅寸法を小さくすれば、突起部の根元の強度が不十分であるため、根元への応力集中により破損しやすいものとなってしまう。
本発明の目的は、上記要求を満足することができる配列用マスク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の配列パターンに対応した通孔12を有し、この通孔12内に半田ボール2を振り込むことで、ワーク3上の所定位置に半田ボール2を搭載する配列用マスクであって、マスク本体10下面に突起部15を備えており、突起部15の径はマスク本体10下面に向かうにつれて大きくなっていることを特徴とする。また、突起部15の付け根は通孔12に向かって拡がるように形成されていることを特徴とする。ここで、「突起部15の付け根は通孔12に向かって拡がるように形成されている」とは、図7に示すように、通孔12内面とマスク本体10下面との交点を終点とし、突起部15の付け根はそれに向かって突起部15の径が突起部15先端から次第に大きくなるように形成されているもの(図7(a))に限らず、上述した終点に近づくように形成されてあって、マスク本体10下面において通孔12から間隙をとったところに突起部15の付け根が位置しているもの(図7(b)、図7(c))も実質的に含まれる。要するに、突起部15の付け根が通孔12内面とマスク本体10下面との交点に向かって形成され、末拡がり状となっていることが特徴である。また、突起部15の先端の径と突起部15の付け根の径との比が1対3以上であることを特徴とする。この突起部15の側面は、円弧状に形成されていることが望ましい。さらに、突起部15のアスペクト比が3以上であることが望ましい。なお、ここで言う「アスペクト比」とは、突起部15の高さと突起部15の先端(下面)の径との比のことである。さらには、突起部15の下端面は細長形状とし、長手方向や長径方向を一定方向とすると良い。ここで、突起部15の下端面を細長形状とした場合、突起部15のアスペクト比が3以上を達成するには、突起部15の高さと突起部15先端の短径との比においてこれを満足すれば良い。
【0007】
また本発明は、通孔12に半田ボール2を振り込むことで、ワーク3上の所定位置に半田ボール2を搭載する配列用マスクの製造方法であって、母型30の表面に、突起部15に対応するレジスト体34aを有する一次パターンレジスト34を形成する工程と、レジスト体34aを用いて、母型30上に電着金属を電鋳して、一次電鋳層35を形成する第一の電鋳工程と、一次電鋳層35上に、通孔12に対応するレジスト体38aを有する二次パターンレジスト38を形成する工程と、レジスト体38aを用いて、母型30及び一次電鋳層35上に電着金属を電鋳して、突起部15を一体に有するマスクとなる二次電鋳層39を形成する第二の電鋳工程と、二次パターンレジスト38を除去するとともに、母型30、一次電鋳層35から二次電鋳層39を剥離する工程とを含むことを特徴とする。また、第二の電鋳工程の前に、母型30及び一次電鋳層35の表面に導電層40を形成する工程を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マスク本体10下面に突起部15を備え、突起部15の径はマスク本体10下面に向かうにつれて大きくなるよう形成されているので、突起部15の付け根の強度が向上し、突起部15の先端を電極6間にしっかりと当接して対応することができ、電極6に塗布されたフラックス17がマスク本体10や突起部15に付着することを回避して、半田ボール2を所望の位置に載置することができる。また、突起部15の付け根が通孔12に向かって拡がるように形成すれば、突起部15の付け根の強度をより確実に確保でき、突起部15の先端をより細くすることが可能となり、電極6が微小ピッチで設けられているワーク3に対しても、しっかりと対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の配列用マスクとワークの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る配列用マスクを模式的に示す縦断側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る配列用マスクの平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る配列用マスクの別実施形態を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る配列用マスクの製造方法の説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る配列用マスクの製造方法の説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る配列用マスクを模式的に示す縦断側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る配列用マスクの製造方法の説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る配列用マスクの製造方法の説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る配列用マスクの別の製造方法の説明図である。
【図11】本発明の別実施形態に係る配列用マスクの部分拡大図である。
【図12】本発明に係る配列用マスクにおける突起部の下端面形状を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1乃至図3に、本発明の第1実施形態に係る半田ボールの配列用マスクを示す。この配列用マスク(以下、単にマスクと記す)1は、半田バンプ形成における半田ボール2の配列工程において使用に供されるものである。
図2において、符号3は、マスク1による半田ボール2の搭載対象となるワークを示す。このワーク3は、例えば、ガラスエポキシ基板のベース4に複数個の半導体チップ5を搭載し、ワイヤボンドで配線した後トランスファモールド封止してなるものであり、半導体チップ5を囲むように、ワーク3の上面には、入出力端子である電極6が所定のパターンで形成されている。なお、ワーク3は、バンプの形成後に個片に切断され、個々のLSIチップとされる。
【0011】
図1に示すように、マスク1は、ニッケルやニッケルコバルト等のニッケル合金、銅やその他の金属を素材として形成されたマスク本体10から成り、このマスク本体10にはこれを囲むように枠体11を装着できる。マスク本体10の盤面中央部には、各半導体チップ5に対応して、半田ボール2を投入するための多数独立の通孔12からなるパターン領域が多数形成されている。
図2に示すように、通孔12は、ワーク3上における各半導体チップ5の電極6の配列位置に対応した配列パターンに対応している。半田ボール2は、50μm以下の半径寸法を有するものであり、これに合わせて各通孔12は、当該ボール2の半径寸法よりも僅かに大きな内径寸法を有する平面視で円形状に形成されている。
【0012】
マスク本体10には、補強用の枠体11を装着することができる。この枠体11は、アルミ、42アロイ、インバー材、SUS430等の材質からなる平板体であり、その盤面中央に、マスク本体10に対応する一つの四角形状の開口を備えており、本実施形態では、一枚のマスク本体10を一枚の枠体11で保持している。枠体11は、マスク本体10よりも肉厚の成形品であり、マスク本体10の外周縁と不離一体的に接合される。ここでは枠体11の厚み寸法は、例えば0.05〜1.0mm程度とし、本実施形態においては0.5mmに設定した。また、マスク本体10の厚みは、好ましくは10μm以上の範囲として、本実施形態では200μmに設定した。
【0013】
図2に示すように、マスク本体10(マスク1)の下面側、すなわちワーク3に対する対向面側には、ワーク3との対向間隙を確保する突起部15が、下方向に突出状に設けられている。突起部15は、配列作業時においてワーク3の上面に当接してマスク本体10とワーク3との対向間隙を確保する。図2および図3に示すように、各々の突起部15は、通孔12間であって、マスク本体10の下面から先窄まるように形成されており、本実施形態では円錐台状を呈している。この突起部15の付け根はマスク本体10の下面の通孔12付近に位置していることが好ましく、本実施形態では、通孔12の内面とマスク本体10の下面との交点に位置している。本マスク1においては、突起部15の高さとマスク本体10の厚みとの比が2対1以上とするのが好ましい。これは、上記マスク本体10の厚さが10〜300μmの範囲内においてこれを満足するようにするのが好ましい。また、突起部15の先端の径L1と付け根の径L2との比が1対3以上であることが好ましい。さらに言えば、突起部15の先端の径と付け根の径と通孔12間の幅との比が1対3対3以上であることが好ましい。また、この突起部15は、アスペクト比(突起部15の高さと先端径との比)が大きいものが好ましく、本実施形態では、アスペクト比3としている。ここで、図3においては、隣り合うパターン領域間には突起部15と同じ高さの凸部を設けて、マスク1をワーク3に載置した時に当接するようにしているが、図4に示すように、隣り合うパターン領域間を凹ませた形態(凸部を設けない形態)であっても良い。これによれば、マスク1をワーク3に対して追随性良く載置することが可能である。なお、図3及び図4において、符号15で図示しているのは突起部15の下端面であり、突起部15の付け根は図示していない。
【0014】
ここで、図1の斜視図、図2の縦断面図、および図3、図4の平面図は、実際のマスク1の様子を示したものではなく、それを模式的に示している。さらに言うと、図1等における通孔12の開口寸法やマスク本体10等の厚み寸法等は、図面作成の便宜上、そのような寸法に示したものである。
【0015】
マスク1を用いた半田ボール2の配列作業は、以下のような手順で行われる。なお、この配列作業は、専用の配列装置(特許文献1の図1、図5等を参照)によって行われる。
まず、ワーク3の電極6上にフラックス17(図2参照)を印刷塗布する。次に、通孔12と電極6とが一致するように、ワーク3上にマスク1を位置合わせしたうえで、マスク1を固定する。かかる位置合わせ作業は、実際には枠体11とワーク3との外周縁を位置合わせすることで行われる。位置合わせ作業が終了すると、ワーク3の下方に磁石を配置して、該かかる固定状態において、突起部15の下端面がワーク3の表面に当接することで、マスク本体10は、図2に示すようなワーク3との対向間隙が確保された離間姿勢に姿勢保持される。ワーク3の表面が僅かにうねっている場合にも、突起部15の下端面をワーク3の表面に当接させて、該ワーク3の表面のうねりに合わせて、マスク本体10を不離一体的に固定することができる。
【0016】
次に、マスク1上に多数個の半田ボール2を供給し、スキージブラシを用いてマスク1上で半田ボール2を分散させて、通孔12内に一つずつ半田ボール2を投入する。これにて、半田ボール2はフラックス17に仮止め状に粘着保持される。かかるスキージブラシを用いた半田ボール2の投入作業において、スキージブラシ圧がマスク1に大きくかかったとしても突起部15によってマスク1が撓むことを防止でき、投入作業を作業効率良くスムーズに進めることができる。
【0017】
以上のように本実施形態に係るマスク1によれば、マスク本体10とワーク3との対向間隙を形成する突起部15を備えているので、突起部15によってワーク3との対向間隙を確実に確保でき、通孔12内への半田ボール2の投入作業を効率的に漏れなく進めることが可能となる。
【0018】
マスク本体10の外周縁に、補強用の枠体11を設けることができ、マスク本体10がそれ自体に内方に収縮する方向の応力が作用するようなテンションを加えた状態で形成すれば、周囲温度の変化に伴うマスク本体10の膨張分を、当該収縮方向へのテンションで吸収できる。これにて、ワーク3に対するマスク本体10の位置ズレの発生を防ぐことができる。また、マスク本体10の全体に均一なテンションを与えることができるので、ワーク3に対して半田ボール2を位置精度良く搭載させることができる。
【0019】
図5及び図6は本実施形態に係る配列用マスク1の製造方法を示す。まず、図5(a)に示すごとく、導電性を有する例えばステンレス製や真ちゅう鋼製の母型30の表面にフォトレジスト層31を形成する。このフォトレジスト層31は、ネガタイプの感光性ドライフォトレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。ついで、フォトレジスト層31の上に、突起部15に対応する透光孔32aを有するパターンフィルム32(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、図5(b)に示すように、先窄まり状の突起部15に対応するレジスト体34aを有する一次パターンレジスト34を母型30上に形成した。この時、紫外線が透過しにくいフォトレジストを用いたり、露光量を弱めたりして、レジスト体34aにテーパが付いたものが好ましい。
【0020】
続いて、上記母型30を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図5(c)に示すごとく、先のレジスト体34aの高さの範囲内で、母型30のレジスト体34aで覆われていない表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して、一次電鋳層35を形成した。ここでは、母型30の略全面にわたって、一次電鋳層35を形成した(第一の電鋳工程)。次に、図5(d)に示すごとく、一次パターンレジスト34を除去する。ここで、一次電鋳層35の表面に研磨処理を施しておくと良い。
【0021】
次いで、図6(a)に示すごとく、一次電鋳層35および母型30の表面の全体に、フォトレジスト層36を形成したうえで、当該フォトレジスト層36の表面に、前記通孔12に対応する透光孔37aを有するパターンフィルム37を密着させたのち、紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、図6(b)に示すように、マスク本体10に対応するレジスト体38aを有する二次パターンレジスト38を一次電鋳層35の表面に形成した。
【0022】
続いて、所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図6(c)に示すごとく、先のレジスト体38aの高さの範囲内で、母型30及びのレジスト体38aで覆われていない一次電鋳層35の表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して、二次電鋳層39を形成した(第二の電鋳工程)。次に、二次パターンレジスト38を溶解除去したうえで、母型30及び一次電鋳層35から二次電鋳層39を剥離することにより、図6(d)および図2に示すようなマスク1を得た。そして、マスク1に枠体11を装着すれば、図1に示すような配列用マスク1が得られる。
【0023】
二次電鋳層39、つまりマスク1は、それ自体に内方に収縮する方向の応力が作用するようなテンションを加えた状態で、枠体11に保持することが可能である。かかる応力の付与は、例えば、枠体11とマスク1との熱膨張係数の差を利用して、高温環境下でマスク1の外周縁に枠体11の装着作業を行い、常温時ではマスク1を内方側に収縮させることで実現できる。
【0024】
以上のようなマスク1の製造方法によれば、電鋳法により高精度に配列用マスクを作製することができるので、半田ボール2を位置精度良くワーク3上に搭載させることができる。突起部15を有するマスク1を一回の電鋳作業(第二の電鋳工程)により不離一体に形成することができるのですれば、突起部15を後付けする形態に比べて、該突起部15の破損などの不都合が生じるおそれが少なく、信頼性に優れたマスク1を高精度に得ることができる点でも優れている。また、突起部15をマスク本体10の下面に近づくにつれて大きくなるように形成すれば、突起部15の特に付け根(根元)に応力が集中することが回避されるため、突起部15の強度をしっかりと補強できつつ、突起部15をフラックス17が塗布された電極6から離間した状態で電極6間に当接できるので、電極6に塗布されたフラックス17がマスク本体10に付着することによる半田ボール2の搭載不良を防止することができる。これは、突起部15の先端の径と付け根の径との比を1対3以上にすること、突起部15のアスペクト比を3以上とすることでより効果的となる。
【0025】
また、レジストパターンを調整することによって所望のアスペクト比を有する突起部15が容易に得られる。なお、本実施形態においては、通孔12及び突起部15はストレート状としているが、テーパ状としても良い。かかる形状は、フォトレジスト層31・36の感光度や露光条件を変更することによって得られる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る配列用マスクについて説明する。本実施形態では、図7に示すように、突起部15はマスクの下面に近づくにつれて径が大きくなる末拡がり形状となっており、突起部15の側面が円弧状となっている。これ以外の点は第1実施形態と基本的に同じなので、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0027】
図8および図9に、本発明の第2実施形態に係る半田ボールの配列用マスクの製造方法を示す。まず、図8(a)に示すごとく、導電性を有する例えばステンレス製や真ちゅう鋼製の母型30の表面にフォトレジスト層31を形成する。このフォトレジスト層31は、ネガタイプの感光性ドライフォトレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。ついで、フォトレジスト層31の上に、通孔12に対応する透光孔32aを有するパターンフィルム32(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、図8(b)に示すように、通孔12に対応するレジスト体34aを有する一次パターンレジスト34を母型30上に形成した。
【0028】
続いて、上記母型30を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、先のレジスト体34aの高さの範囲内で、母型30のレジスト体34aで覆われていない表面にニッケル等の電着金属を電鋳して、マスク1に対応する一次電鋳層35を母型30の略全面にわたって、一次電鋳層35を形成し、一次電鋳層35の表面に研磨処理を施したのち、図8(c)に示すように、レジスト体34aを溶解除去した。ここまでの工程は、第1実施形態とほぼ同じである。
【0029】
次いで、図8(d)に示すように、母型30及び一次電鋳層35の表面にニッケルや銅などといった導電層40をめっきによって形成する。この時、一次電着層35の角部上における導電層40は、円弧状に形成される。かくして、側面が円弧状の突起部に対応するパターンが得られる。なお、円弧状部分の曲率は、導電層40の厚みを調整することによって所望のアールが得られる。また、導電層40を形成する工程は、一次電鋳層35上に後述する二次レジストパターン38を形成した後に行っても良い。なおここで、導電層40を形成することによって、この導電層40が剥離層として機能するので、第1実施形態のように母型30上に二次電鋳層35を直接形成するのに比べ、母型30から二次電鋳層35の剥離が容易となる。マスク1は、二次電鋳層35と導電層40とが一体的に積層してなるものでも良いが、導電層40は除去する方が好ましいので、二次電鋳層35の剥離をさらに容易にするため、母型30上にストライクめっきといった密着処理を施すことにより、導電層40が母型30に固着されるため、二次電鋳層35の剥離がより容易となる。
【0030】
次に、図9(a)に示すように、導電層40の表面上に、フォトレジスト層36を形成したうえで、当該フォトレジスト層36の表面に、前記通孔12に対応する透光孔37aを有するパターンフィルム37を密着させたのち、紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、図9(b)に示すように、レジスト体38aを有する二次パターンレジスト38を導電層40の表面に形成した。次いで、所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図9(c)に示すように、先のレジスト体38aの高さの範囲内で、レジスト体38aで覆われていない導電層40の表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して、二次電鋳層39を形成した(第二の電鋳工程)。最後に、二次パターンレジスト38を除去するとともに、母型30、一次電鋳層35、及び導電層40から二次電鋳層39を剥離することにより、図9(d)および図7に示すようなマスク1が得られる。
【0031】
このように、本実施形態のマスクは、母型30及び一次電鋳層35上に導電層40を形成することで通孔内面12aとマスク本体下面10aとの交点を付け根15bとし、先端にいくにつれて窄まっていく先窄まり形状であって、側面が円弧状の突起部15を容易に形成することができる。これにより、突起部15の特に根元に応力が集中することにより生じる破損を防止できる。これに加えて、マスク1をワーク3に載置した際に、仮に突起部15にフラックス17が付着したとしても、突起部15の側面が円弧となっていることにより、フラックス17の通孔12への回り込みを防止できるので、通孔12にフラックス17が付着することによる半田ボール2の搭載不良を招くおそれをなくすことができる。なお、突起部15の付け根15bの位置については、図7(a)に示すような、マスク本体下面10aと通孔内面12aとの交点に位置しているものに限らず、図7(b)に示すように、マスク本体下面10a上の通孔12から十分距離をとった(離間された)位置であっても、図7(c)に示すように、マスク本体下面10a上の通孔12から微小な間隙をとった位置であっても良い。また、突起部15の側面は、凸状円弧でも凹状円弧でもどちらでも良く、凸状円弧とすれば、強度の良いものに、凹状円弧とすれば、突起部15側面のどの位置においても、フラックス17が付着された電極6に近づく部分がない、つまり、フラックス17が付着された電極6から一定距離を保った状態となって良い。また、図7(a)の突起部15の拡大図に示すように、突起部15の側面や付け根15bだけでなく、先端15aにも所望のアールを設けてあっても良い。これは、導電層40の厚みを調整することで実現でき、これにより、突起部15のワーク3への接触面積をより小さくすることができ、突起部15にフラックス17が付着するおそれが可及的に減少する。このように、突起部15の先端15a及び/又は付け根15bにアールを設けることで、上記効果が得られる。ここで、特に突起部15の付け根15bにおいて、直線に限りなく近い程に曲率が小さい円弧で形成されているものももちろん含まれる。この突起部15は、ストレート状と先窄まり状とを組み合わせた形状であっても良い。
【0032】
上記実施形態においては、突起部15が一体となったマスク1としているが、突起部15が別部材で一体的に形成されたものでも良い。これは、上記マスクにおいて、例えば、突起部15を銅やアルミ等といった非磁性体で形成すれば、上述したように磁石の磁力吸引力によってワーク3にマスク1を固定する場合に、マスク1に対して磁力が均一に働くことになるので、マスク1が不用意に撓むおそれがなく、電極6に対する通孔12の位置精度を向上することができる。係るマスク1は、第二の電鋳工程(図6(c)、図9(c)参照)において、突起部15のパターンに対応する一次電鋳層35の高さと同等にまでは、非磁性体金属をめっき等によって形成し、その後他は鉄、ニッケル、ニッケル−コバルト等といった磁性体の金属を電鋳等によって形成することで製造することができる。
【0033】
また、突起部15を非磁性体で形成するものにおいて、金属に限らず樹脂によって形成したものでも良い。係るマスク1の製造方法は、図8及び図9において、図8(a)〜図8(d)に示す工程までは同じであり、次いで、導電層40の表面上に、フォトレジスト層を形成したうえで、当該フォトレジスト層の表面に、前記突起部15に対応する透光孔を有するパターンフィルムを密着させたのち、紫外光ランプで紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、若しくは、液状の樹脂を前記突起部15に対応する部分に埋め込んで硬化させることにより、図10(a)に示すように、レジスト体41aを有する二次パターンレジスト41を導電層40の表面に形成した。続いて、導電層40及び二次パターンレジスト41の表面上に、フォトレジスト層を形成したうえで、当該フォトレジスト層の表面に、前記通孔12に対応する透光孔を有するパターンフィルムを密着させたのち、紫外光ランプで紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、図10(b)に示すように、レジスト体42aを有する三次パターンレジスト42を導電層40の表面に形成した。なお、二次パターンレジスト41は、先に三次パターンレジスト42を形成した後に形成しても良いし、二次パターンレジスト41及び三次パターンレジスト42は同時に形成しても良い。
【0034】
その後は、好ましくは三次パターンレジスト42で覆われていない導電層40及び二次パターンレジスト41の表面に密着処理を施すとともに、少なくとも二次パターンレジスト41の表面に蒸着やスパッタなどにより導電層を付与してから、所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図10(c)に示すように、先のレジスト体42aの高さの範囲内で、レジスト体42aで覆われていない導電層40及びレジスト体41aの表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して、二次電鋳層43を形成した(第二の電鋳工程)。最後に、三次パターンレジスト42を除去するとともに、母型30、一次電鋳層35、及び導電層40から二次電鋳層43を剥離することにより、図10(d)に示すようなマスク1を得ることができる。もちろん、蒸着やスパッタなどのみによってマスク1を形成することもできる。
【0035】
このように、突起部15を非磁性体である樹脂で形成すれば、当該樹脂の弾力性に由来するクッション作用が発揮され、突起部15がワーク3に当接した際に、ワーク3が損傷するおそれが少なくなる。この効果を顕著に奏するために、マスク1においては、突起部15だけでなく、ワーク3と当接する部分の全てを樹脂で形成するのが好ましい。これによって、マスク1に対して磁力が均一に働くことにもなるので、マスク1が不用意に撓むおそれがなく、電極6に対する通孔12の位置精度を向上させることもできる。
【0036】
上記製造方法にて得られたマスク1に枠体11を設ける場合、接着レジストであるソルダーレジストの粘着性を利用して、枠体11を形成することができる。よって、別途接着剤等により枠体11を貼り付ける形態に比べて、マスクの生産工程が少なくて済み、マスクの製造コストの削減化に貢献できる。また、この製造方法では、ソルダーレジストを変質させて突起部15としているため、非磁性体の突起部15を有するマスクを生産効率良く形成できる点でも優れている。
【0037】
本発明における突起部15は、一次レジストパターン34によって所望の形状を、また導電層40によって任意のアールを設けることが可能である。なお、上記実施形態においては、突起部15と通孔12の配置は、図11(a)に示すような形態となっているが、これに限らず、通孔12を電極6に対応する位置に形成しつつ、図11(b)〜図11(d)に示すように、突起部15が一つの通孔12を囲むように、一つの突起部15が通孔12に囲まれるように配置しても良い(図11では、通孔12と突起部15の先端面との配置関係を示しており、突起部15の付け根15bは図示していない)。また、突起部15の下端面の形状は円に限らず、ひし形・六角形などといった多角形や楕円でも良い。さらに、これら形状においては、細長形状及び/又は角が丸みを帯びたものが好ましい(図12(a)〜(h)参照)。このように、これら形状の長手方向・長径方向を一定方向に合わせることで、例えば、マスク1の裏面を洗浄する際に、洗浄手段(布やスポンジなど)が突起部15に引っかかることによる洗浄手段や突起部15が破損するおそれを可及的になくすことができるとともに、スムーズに洗浄することが可能となる。よって、突起部15全ての長手方向・長径方向を一方向に合わせることが望ましい。なお、細長形状とするのはあくまでも突起部15の下端(先端)面においてであり、突起部15の付け根15bの面においては強度等の点で必ずしも細長形状とする必要はない。
【符号の説明】
【0038】
1 マスク
2 半田ボール
3 ワーク
6 電極
10 マスク本体
12 通孔
15 突起部
15a 先端部
15b 付け根部
30 母型
31 フォトレジスト層
34 一次パターンレジスト
34a レジスト体
35 一次電鋳層
36 フォトレジスト層
38 二次パターンレジスト
38a レジスト体
39 二次電鋳層
40 導電層
41 二次パターンレジスト
41a レジスト体
42 三次パターンレジスト
42a レジスト体
43 二次電鋳層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列パターンに対応した通孔(12)を有し、この通孔(12)内に半田ボール(2)を振り込むことで、ワーク(3)上の所定位置に半田ボール(2)を搭載する配列用マスクであって、
マスク本体(10)下面に突起部(15)を備えており、突起部(15)の径はマスク本体(10)下面に向かうにつれて大きくなっていることを特徴とする配列用マスク。
【請求項2】
前記突起部(15)の付け根は通孔(12)に向かって拡がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項3】
前記突起部(15)の先端の径と付け根の径との比が1対3以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の配列用マスク。
【請求項4】
前記突起部(15)の側面は、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配列用マスク。
【請求項5】
前記突起部(15)のアスペクト比が3以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の配列用マスク。
【請求項6】
前記突起部(15)の下端面が細長形状となっており、該形状の長手方向・長径方向を一定方向としていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の配列用マスク。
【請求項7】
通孔(12)に半田ボール(2)を振り込むことで、ワーク(3)上の所定位置に半田ボール(2)を搭載する配列用マスクの製造方法であって、
母型(30)の表面に、突起部(15)に対応するレジスト体(34a)を有する一次パターンレジスト(34)を形成する工程と、
レジスト体(34a)を用いて、母型(30)上に電着金属を電鋳して、一次電鋳層(35)を形成する第一の電鋳工程と、
一次電鋳層(35)上に、通孔(12)に対応するレジスト体(38a)を有する二次パターンレジスト(38)を形成する工程と、
レジスト体(38a)を用いて、母型(30)及び一次電鋳層(35)上に電着金属を電鋳して、突起部(15)を一体に有するマスクとなる二次電鋳層(39)を形成する第二の電鋳工程と、
二次パターンレジスト(38)を除去するとともに、母型(30)、一次電鋳層(35)から二次電鋳層(39)を剥離する工程とを含むことを特徴とする配列用マスクの製造方法。
【請求項8】
前記第二の電鋳工程の前に、母型(30)及び一次電鋳層(35)の表面に導電層(40)を形成する工程を施すことを特徴とする請求項7に記載の配列用マスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−19236(P2012−19236A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214840(P2011−214840)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2008−18458(P2008−18458)の分割
【原出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】